説明

熱圧着装置

【課題】圧着ヘッドの移動機構へのヒータブロックからの熱影響を抑制できかつ圧着ツール先端の平行度と平面度を確保できる熱圧着装置を提供する。
【解決手段】圧着ツール17と圧着ツール17の先端部を除く部分を覆って加熱するヒータブロック18とを備えた圧着ヘッド11を受け台10に向けて移動させ、圧着ツール17の先端と受け台10との間で被圧着部材を加熱加圧する熱圧着装置1において、受け台10に対して遠近方向に移動駆動可能な可動支持部12に対して圧着ヘッド11を間隔をあけて配設し、圧着ヘッド11のヒータブロック18はその長手方向に間隔をあけて配設された複数の固定ボルト機構21にて可動支持部12に対して間隔をあけて固定し、圧着ツール17はその長手方向に間隔をあけてかつヒータブロック18を貫通させて配設した複数の調整ねじ機構30にて位置調整可能に可動支持部12に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱圧着装置に関し、 特に圧着ヘッドの移動機構へのヒータブロックからの熱影響を抑制できかつ圧着ツール先端の平行度と平面度を確保できる熱圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶パネルやプラズマディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネルの製造工程において、図7に示すように、基板としてのパネル2にTCP(Tape Carrier Package)やFPC(Flexible Printed Circuit)などの部品3を圧着して実装したり、図8に示すように、パネル2に実装されたTCPやFPCなどの部品3を回路基板5に圧着することでパネル2に回路基板5を実装したりする工程があり、その圧着工程に熱圧着装置が用いられている。
【0003】
熱圧着装置としては、圧着ツールと圧着ツールの先端部を除く部分を覆って加熱するヒータブロックとを備えた圧着ヘッドを受け台に向けて移動させ、圧着ツールの先端と受け台との間で被圧着部材を加熱加圧するように構成したものが知られている。さらに、圧着ヘッドの具体的な構成として、所要の剛性を有するヘッドベースをリニアガイドを介して上下移動可能に支持し、このヘッドベースにヒータブロックをボルトにて締結固定し、圧着ツールは、ヒータブロックを貫通させて配設した調整ボルト機構にて位置調整可能にヘッドベースに固定して、圧着ツールの先端面の受け台との平行度と平面度を調整できるようにした構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この特許文献1には、ヘッドベースの下部に上下位置調整可能にブロックを装着し、このブロックにヒータブロックを固定し、ヒータブロックに圧着ツールを装着固定した構成も記載されている。
【0005】
また、シリンダ機構にて移動駆動可能な基準ブロックに、ボルトにて間隔をあけてヒータブロックを固定し、このヒータブロックの下面に圧着ツールをねじ固定し、さらにヒータブロック及び圧着ツールの表面を隙間をあけて覆うように断熱部材を配設した構成も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、昇降ブロックの下部に第1の断熱材を挟んで圧着ツールを装着し、圧着ツールの背面にヒータブロックを装着し、昇降ブロックの前面に、第2の断熱材を内面に有する屈曲部を下端部に設けた保持部材を装着し、圧着ツールの前面のテーパ面に第2の断熱材を押接させて圧着ツールを保持するようにしたものも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−151835号公報
【特許文献2】特許第3885949号明細書
【特許文献3】特許第3344223号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載された構成では、調整ボルト機構にて圧着ツールの先端面の平行度と平面度を精度良く調整することができるが、リニアガイドにて上下移動可能に支持されているヘッドベースにヒータブロックを当接させて固定しているため、ヒータブロックの熱がヘッドベースを通して移動機構に伝達され、移動機構に大きな熱影響を与え、移動機構に熱歪を生じて圧着ツールの先端面の位置精度を悪化させたり、移動抵抗にばらつきを発生させて加圧力にばらつきを発生させたりして、精度の良い圧着を安定的に確保することができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された構成では、移動機構にて移動される基準ブロックに対して、複数のボルトにて間隔をあけてヒータブロックを固定し、その下面に圧着ツールを固定し、かつヒータブロック及び圧着ツールの表面を隙間をあけて覆う断熱部材を配設しているので、ヒータブロックの熱が基準ブロックを通して移動機構に伝達されるのを抑制できて上記問題は解消されるが、圧着ツールの長手方向の各部位を直接位置調整するように構成されていないので、圧着ツールの先端面の位置を精度良く調整することができず、精度の良い圧着を安定的に確保することができないという問題がある。
【0009】
また、特許文献1と特許文献2を組み合わせ、特許文献2のボルトに代えて、特許文献1記載の調整ボルト機構を適用し、ヒータブロックの熱が移動機構に伝達するのを抑制しつつ、ヒータブロックと圧着ツールの位置調整を調整ボルト機構にて行うように構成したとしても、ヒータブロックの下面に圧着ツールが固定されているので、ヒータブロックや圧着ツールの熱歪等による圧着ツールの先端面の平面度のばらつき等に対して精度の高い位置調整は不可能であり、精度の良い圧着を安定的に確保することができないという問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載された構成では、昇降ブロックと圧着ツールの間、及び圧着ツールと昇降ブロックに装着された保持部材との間に、それぞれ断熱材が介在されているので、圧着ツールの熱が昇降ブロックに伝達されるのをある程度抑制できるが、圧着ツールの位置調整機構を備えていないので、特に長尺の圧着ツールの場合、熱歪等による先端面の平行度と平面度を精度良く調整することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、圧着ヘッドの移動機構へのヒータブロックからの熱影響を抑制できかつ圧着ツール先端の平行度と平面度を確保でき、精度の良い圧着を安定的に確保することができる熱圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の熱圧着装置は、圧着ツールと圧着ツールの先端部を除く部分を覆って加熱するヒータブロックとを備えた圧着ヘッドを受け台に向けて移動させ、圧着ツールの先端と受け台との間で被圧着部材を加熱加圧する熱圧着装置において、受け台に対して遠近方向に移動駆動可能な可動支持部に対して圧着ヘッドを間隔をあけて配設し、圧着ヘッドのヒータブロックはその長手方向に間隔をあけて配設された複数の固定ボルト機構にて可動支持部に対して間隔をあけて固定し、圧着ツールはその長手方向に間隔をあけてかつヒータブロックを貫通させて配設した複数の調整ねじ機構にて位置調整可能に可動支持部に固定したものである。
【0013】
この構成によれば、可動支持部に対して、ヒータブロックと圧着ツールを備えた圧着ヘッドを間隔をあけて配設しているので、ヒータブロックの熱が可動支持部及びその移動機構に伝達されるのを効果的に抑制することができ、かつヒータブロックは複数の固定ボルト機構にて可動支持部に固定する一方、圧着ツールはヒータブロックを貫通する別の調整ねじ機構にて位置調整可能に可動支持部に固定しているので、固定のヒータブロックに対して独自に圧着ツールのみの位置調整を精度良く行うことができる。したがって、ヒータブロックからの熱影響を抑制するとともに圧着ツール先端の平行度と平面度を精度良く調整できるため、精度の良い圧着を安定的に確保することができる。
【0014】
また、複数の調整ねじ機構は、圧着ツールの中心軸上に基準調整ねじ機構を配設し、この基準調整ねじ機構を中央にして等間隔置きに他の調整ねじ機構を配設し、複数の固定ボルト機構は任意の調整ねじ機構間に配設すると、設備の立ち上げ時などの圧着ツールの再加熱時に、圧着ツールの熱膨張が長手方向の中心基準で行われるため、圧着ツールの位置調整を作業性良く行うことができる。また、固定ボルト機構の両側に調整ねじ機構が存在するので、固定ボルト機構から可動支持部に伝わって温度変化が生じても、それによる圧着ツールのたわみを容易かつ確実に調整することができる。
【0015】
また、固定ボルト機構は、可動支持部とヒータブロックの間に配置したスリーブと、可動支持部とスリーブを通してヒータブロックに螺合した固定ボルトにて構成し、調整ねじ機構は、可動支持部に位置調整可能に螺合固定され先端部がヒータブロックを貫通して圧着ツールに当接した中空調整ねじと、中空調整ねじを通して圧着ツールに螺合した固定ねじにて構成すると、固定ボルトの締結にてヒータブロックを強固に固定できるとともに、中空調整ねじを位置調整して固定ねじにて固定することで圧着ツールを容易に位置調整して固定することができる。
【0016】
また、可動支持部に圧着ヘッドの長手方向に沿って冷却エア通路を設け、冷却エア通路から分岐して各調整ねじ機構の螺合部に接して可動支持部の側面で開放する冷却エア吹き出し通路を設けると、可動支持部及び主要な熱伝達経路である調整ねじ機構を冷却エアにて積極的に冷却することができてヒータブロックからの熱影響を一層確実に抑制することができるとともに、可動支持部の側面から冷却エアが吹き出すことで、周囲の雰囲気に対流を生じさせて周囲の雰囲気温度上昇による弊害を抑制することができる。
【0017】
また、ヒータブロックの可動支持部に対向する面及び両側面を隙間をあけて覆うように断熱カバーを配設すると、ヒータブロックからの輻射熱による可動支持部の加熱を効果的に抑制できるとともに、ヒータブロックの熱の放散を、ヒータブロックと断熱カバーの間の空気層と断熱カバーを構成する断熱材とによって効果的に防止できるので、ヒータブロック加熱効率を向上することができる。
【0018】
また、圧着ツールの中心軸上に、可動支持部を移動駆動する加圧手段を配設すると、加圧時に、可動支持部の移動機構に偏芯荷重が作用してたわみを生じ、圧着ツールに位置ずれを発生させたりすることなく、圧着ツールの先端面の中央に垂直に荷重が負荷されるので、精度の良い圧着を安定的に確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の熱圧着装置によれば、可動支持部に対して圧着ヘッドを間隔をあけて配設しているので、圧着ヘッドのヒータブロックの熱が可動支持部及びその移動機構に伝達されるのを効果的に抑制することができ、かつヒータブロックを可動支持部に固定する一方、固定のヒータブロックに対して圧着ツールの位置調整を独自に行うことができるので、ヒータブロックからの熱影響を抑制するとともに圧着ツール先端の平行度と平面度を精度良く調整できるため、精度の良い圧着を安定的に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の熱圧着装置を、基板としてのフラットパネルディスプレイ(FPD)におけるパネルにTCPやFPCなどの部品を加熱・加圧して、パネルに部品を本圧着する本圧着装置に適用した一実施形態について、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の熱圧着装置1では、図7(a)、(b)に示すように、部品3が仮圧着された状態でパネル2が搬入され、そのパネル2に対して部品3を加熱・加圧して本圧着することでパネル2に部品3を実装する。具体的には、パネル2の側端部に接合材としての異方性導電材(ACF)4(図7(b)参照)を介して部品3が仮圧着されており、その部品3を加熱・加圧することで、異方性導電材4にて部品3の電極とパネル2の電極を電気的に接続させた状態でパネル2に部品3が接合される。
【0022】
熱圧着装置1は、図1〜図3に示すように、パネル2の圧着部位を下方から支持する受け台10と、受け台10と協働してパネル2と部品3を本圧着する圧着ヘッド11を備えている。受け台10は、石英やセラミックスからなる受け部材10aを台部10b上に設置して構成され、圧着工程で、受け部材10aの上面にパネル2の側端部を載置し、圧着ヘッド11との間でパネル2の側端部と部品3を挟み、加熱加圧して圧着するものである。
【0023】
圧着ヘッド11は、可動支持部12の下部に間隔をあけて装着されている。可動支持部12は、受け台10の上方空間を取り囲むように配設された門型のフレーム13の背面側に配設された背面支持板13aの両側部に配設されたガイドレール14に沿って昇降自在に支持されている。15は、ガイドレール14に沿って移動自在なスライドガイドであり、可動支持部12の背面に固定されている。圧着ヘッド11及び可動支持部12の中心軸上で、フレーム13の上面に加圧手段としての加圧シリンダ16が配設され、そのシリンダロッド16aの先端が可動支持部12に固定され、可動支持部12を昇降移動させるとともに加圧力を負荷するように構成されている。
【0024】
圧着ヘッド11は、図2〜図4に示すように、圧着ツール17とヒータブロック18にて構成されている。圧着ツール17は、全体形状が細長い直方体状でかつその下部に下方に向かって先細状に延出された加圧部17aを有しており、加圧部17aの先端面で部品3を加圧する。ヒータブロック18は、圧着ツール17の加圧部17aを除く部分を覆う断面形状がコ字状の細長い形状で、断面L字状のブロック本体18aと、押さえ板18bを組み合わせて構成され、これらブロック本体18aと押さえ板18bにて形成された下面開放の空間に圧着ツール17を収容した状態で、ブロック本体18aと押さえ板18bをボルト19にて締結することで、圧着ツール17を保持するように構成されている。そのため、押さえ板18bの上端部にブロック本体18aの側面に当接する段部20aを、下部に圧着ツール17の側面に当接して押圧固定する固定部20bを設けてそれらの間を凹入させた形状とし、この押さえ板18bの中間部をボルト19にて押圧するように構成されている。
【0025】
圧着ヘッド11のヒータブロック18は、図2、図4に示すように、長手方向に間隔をあけて配設された複数(図示例では4つ)の固定ボルト機構21にて、可動支持部12の下端の取付板部12aの下方に間隔をあけて固定されている。固定ボルト機構21は、取付板部12aとヒータブロック18の上面との間に配置した熱伝導率の低い材料からなるスリーブ22と、取付板部12aとスリーブ22を通してヒータブロック18に螺合させた固定ボルト23にて構成され、かつ固定ボルト23の頭部23aと取付板部12aの上面との間には断熱材24が介在されている。これにより、固定ボルト23として強度の高いステンレス鋼を用いても熱伝達が抑制される。
【0026】
ヒータブロック18には、図1、図5に示すように、長手方向に適当ピッチ間隔で複数本(図2の例では18本)のヒータ25が挿入配置され、かつその直下に温度検出手段26が挿入配置されて、ヒータブロック18をその長手方向に均等に加熱制御するように構成されている。ヒータ25は、例えば加圧時の圧着ツール17の加圧部17aの下面の温度を190〜200℃程度に加熱できるように、最高で500℃程度の温度まで加熱制御される。
【0027】
ヒータブロック18には、その上面及び両側面を隙間をあけて覆うように断熱カバー27が配設されている。断熱カバー27には、例えば熱伝導率が1.5〜2.0(W/m・K)程度のセラミック系断熱材が好適に用いられる。断熱カバー27は、前後(図5の左右)に2分割されてヒータブロック18に前後から被せて配置するように構成されている。この断熱カバー27は、長手方向に間隔をあけた2箇所の上面の上に前後に設けられた取付ブラケット28を、可動支持部12の取付板部12aの下面に装着固定された取付ブロック29の前後の側面に締結固定することで可動支持部12に取付けられている。29aは取付ブロック29の位置決めピンである。なお、断熱カバー27におけるヒータ25の配置箇所には、図5(b)に示すように、ヒータ25及び温度検出手段26を挿通させる切欠27aが設けられている。
【0028】
ヒータブロック18内の下端開放の空間に収容保持されている圧着ツール17は、図2、図6に示すように、複数(図示例では9つ)の調整ねじ機構30にて位置調整可能に可動支持部12に固定されている。これらの調整ねじ機構30は、圧着ツール17の中心軸上に基準の調整ねじ機構30(S)を配設し、この基準の調整ねじ機構30(S)を中央にして等間隔置きに他の調整ねじ機構30を配設している。そして、各調整ねじ機構30のそれぞれの両側に上記ヒータ25が配置され、上記固定ボルト機構21は調整ねじ機構30、30間でかつヒータ25、25間に配設されている。
【0029】
調整ねじ機構30は、可動支持部12の取付板部12aに位置調整可能に螺合固定され、先端部がヒータブロック18を貫通して圧着ツール17の上面に当接する中空調整ねじ31と、中空調整ねじ31を通して圧着ツール17に螺合した固定ねじ32にて構成されている。中空調整ねじ31は、上部外周に可動支持部12の取付板部12aに貫通形成されたねじ穴12bに螺合するねじ部31aを有し、かつねじ部31aにロックナット33が螺合され、ロックナット33と取付板部12aにて中空調整ねじ31を任意の調整位置で締結固定するように構成されている。これら中空調整ねじ31及び固定ねじ32は、ヒータブロック18の中心部に広い面積で接触して熱を直接受けるので、クロムモリブデン耐熱鋼などの耐熱性の高い材料にて構成するのが好ましい。
【0030】
可動支持部12の取付板部12aには、調整ねじ機構30の背部の位置に、長手方向に沿って冷却エア通路34が貫通して形成され、その両端にエア供給源(図示せず)に接続された接続金具35が取付けられている。冷却エア通路34は、各調整ねじ機構30に対応して冷却エア吹出し通路36が分岐されている。冷却エア吹出し通路36は、中空調整ねじ31のねじ部31aが螺合するねじ穴12bに接して一部開口するように形成され、かつ取付板部12aの前側面で開口されるとともに、その開口部にフィルタとしても機能するサイレンサー37が装着されている。
【0031】
なお、本実施形態では、図1及び図4〜図6に仮想線で示すように、圧着ツール17の加圧部17aの先端面と受け台10上の部品3との間に、シート40を供給するように構成されている。図示例では、シート40は、圧着時にはみ出した異方性導電材4が付着するのを防止するポリテトラフルオルエチレンのシート40aと、パネル2や部品3の寸法ばらつきを吸収して均一な圧着状態を確保するためのクッション性を有するシリコンゴムのシート40bにて構成され、これらシート40a、40bを別々に供給して加圧部17aの近傍で重ねて供給するように、熱圧着装置1の後部にシート供給部41が、前部にシート回収部43が配設されている。
【0032】
シート供給部41は、シート40a、40bを巻回した供給ロール42a、42bを備えている。供給ロール42a、42bは、回転自在に支持されるとともに、所要時に回転制動する制動手段(図示せず)を備えている。シート回収部43は、シート40a、40bを巻き取る巻取ロール44a、44bと巻取ロール44a、44bを回転駆動するモータ(図示せず)とテンション部45a、45bを備えている。テンション部45a、45bは一対のガイドローラ46a、46bとそれらの間にこれらローラに対して遠近方向に移動可能にかつ離間する方向に移動付勢されたテンションローラ46cにて構成されている。47a、47bは、シート供給部41及びシート回収部43と圧着ヘッド11との間で、シート40をガイドするガイドローラ、48a、48bは、圧着ヘッド11の前後両側で、圧着ヘッド11とともに昇降移動してシート40をガイドするガイドローラである。
【0033】
以上の構成の熱圧着装置1にてパネル2に部品3を圧着する圧着工程を説明する。まず、部品3が仮圧着されたパネル2を熱圧着装置1に搬入し、パネル2の部品3が仮圧着されている側端部を受け台4上に配置して支持させる。次に、圧着動作に入り、加圧シリンダ16を動作させて可動支持部12を介して圧着ヘッド11を下降させ、圧着ヘッド11の圧着ツール17にて部品3の圧着部位をシート40を介して加圧・加熱する本圧着動作を行う。本圧着が終わると、圧着ヘッド11を上昇させ、パネル2を熱圧着装置1から搬出する。その後、次のパネル2の搬入動作を開始し、上記動作を繰り返すことで、パネル2に対する部品3の本圧着動作を順次行う。
【0034】
以上の実施形態によれば、可動支持部12に対して、ヒータブロック18と圧着ツール17を備えた圧着ヘッド11を間隔をあけて配設しているので、ヒータブロック18の熱が可動支持部12及びその移動機構であるスライドガイド15等に伝達されるのを効果的に抑制することができ、移動機構に熱歪を生じて圧着ヘッド11に位置ずれが発生するのを防止できる。さらに、ヒータブロック18の可動支持部12に対向する上面及び両側面を隙間を介して断熱カバー27で覆っているので、高い断熱性能が発揮され、ヒータブロック18からの輻射熱による可動支持部12の加熱を効果的に抑制できるため、上記効果が一層発揮される。また、ヒータブロック18の熱の放散が、ヒータブロック18と断熱カバー27の間の空気層と断熱カバー27を構成する断熱材とによって効果的に防止されることで、ヒータブロック18の加熱効率も向上する。
【0035】
しかも、ヒータブロック18が複数の固定ボルト機構21にて可動支持部12に間隔をあけて固定されている一方、圧着ツール17はヒータブロック18を貫通する別の調整ねじ機構30にて位置調整可能に可動支持部12に固定されているので、固定のヒータブロック18に対して圧着ツール17の長手方向の任意の部位の位置調整を独自に精度良く行うことができる。したがって、ヒータブロック18からの熱影響を抑制するとともに、圧着ツール17の先端の受け台10に対する平行度と平面度を精度良く調整できるため、精度の良い圧着を安定的に確保することができる。
【0036】
また、複数の調整ねじ機構30を、圧着ツール17の中心軸上に基準調整ねじ機構30(S)を配設し、この基準調整ねじ機構30(S)を中央にして等間隔置きに他の調整ねじ機構30を配設しているので、設備の立ち上げ時などの圧着ツール17の再加熱時に、圧着ツール17の熱膨張が長手方向の中心基準で行われるため、圧着ツール17の位置調整を基準調整ねじ機構30(S)を基準にして作業性良く行うことができる。また、複数の固定ボルト機構21を任意の調整ねじ機構30、30間に配設し、固定ボルト機構21の両側に調整ねじ機構30が存在するようにしているので、固定ボルト機構21から可動支持部12に熱が伝わって温度変化が生じても、それによる圧着ツール17のたわみを容易かつ確実に調整することができる。
【0037】
また、固定ボルト機構21を、可動支持部12とヒータブロック18の間に配置したスリーブ22と、可動支持部12とスリーブ22を通してヒータブロック18に螺合した固定ボルト23にて構成し、調整ねじ機構30を、可動支持部12に位置調整可能に螺合固定し、先端部をヒータブロック18を貫通して圧着ツール17に当接させた中空調整ねじ31と、中空調整ねじ31を通して圧着ツール17に螺合した固定ねじ32にて構成しているので、固定ボルト21の締結にてヒータブロック18を強固に固定でき、その状態で中空調整ねじ31を位置調整して固定ねじ32にて固定することで圧着ツール17を作業性良く容易に位置調整して固定することができる。
【0038】
また、可動支持部12の取付板部12aに圧着ヘッド11の長手方向に沿って冷却エア通路34を設け、冷却エア通路34から分岐して各調整ねじ機構30の取付板部12aとの螺合部に接して取付板部12aの前側面で開放する冷却エア吹出し通路36を設けているので、可動支持部12の取付板部12aを冷却エアにて積極的に冷却することができるとともに、ヒータブロック18から取付板部12aへの主要な熱伝達経路となる調整ねじ機構30も冷却エアにて積極的に冷却することができる。そのため、ヒータブロック18からの熱影響を確実に抑制することができるとともに、取付板部12aの前側面からサイレンサー37を通して冷却エアが吹き出すことで、周囲の雰囲気に対流を生じさせて周囲の雰囲気温度上昇による弊害を抑制することができる。
【0039】
また、圧着ツール17の中心軸上に、可動支持部12を移動駆動する加圧シリンダ16を配設しているので、加圧時に、可動支持部12の移動機構に偏芯荷重が作用してたわみを生じ、圧着ツール17に位置ずれを発生させる恐れもなく、圧着ツール17の先端面の中央に垂直に荷重が負荷されるので、圧着ツール17にて精度の良い圧着を安定的に確保することができる。
【0040】
以上の説明では、パネル2に異方性導電材4を介して仮圧着された部品3を本圧着する例について説明したが、本発明の本圧着装置1は、図8(a)、(b)に示すように、異方性導電材や非導電性接合材などの各種接合材6を介して、パネル2に接合された部品3が仮圧着された回路基板5を搬入して、部品3を加熱加圧して回路基板5に本圧着して接合し、パネル2に回路基板5を実装する場合にもそのまま適用することができる。
【0041】
また、以上の説明では熱圧着装置1をパネル2や回路基板5と部品3を本圧着する本圧着装置に適用した例について説明したが、任意の基板に部品を本圧着する場合にも同様に適用できる。さらに、必ずしも本圧着に限らず、仮圧着装置等にも適用することができるが、本圧着装置においては、圧着ツールの加熱温度が高いので、本発明による効果が特に顕著に発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の熱圧着装置によれば、圧着ヘッドのヒータブロックの熱が可動支持部及びその移動機構に伝達されるのを効果的に抑制することができ、かつヒータブロックを可動支持部に固定する一方、固定のヒータブロックに対して圧着ツールの位置調整を独自に行うことができるので、ヒータブロックからの熱影響を抑制するとともに圧着ツール先端の平行度と平面度を精度良く調整できて精度の良い圧着を安定的に確保することができるので、各種基板に部品を圧着する電子部品圧着装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の熱圧着装置の一実施形態の構成を示す、図2のA−A矢視断面側面図。
【図2】同実施形態の正面図。
【図3】同実施形態の要部構成を示す斜視図。
【図4】断熱カバーを省略して示した図2のB−B矢視拡大断面図。
【図5】(a)は図2のC−C矢視拡大断面図、(b)は(a)のE−E矢視図。
【図6】(a)は断熱カバーを省略して示した図2のD−D矢視拡大断面図、(b)は(a)のF−F矢視図。
【図7】同実施形態の熱圧着装置の適用例の本圧着装置を示し、(a)は斜視図、(b)は同要部の縦断面図。
【図8】同実施形態の熱圧着装置の他の適用例の本圧着装置を示し、(a)は斜視図、(b)は同要部の縦断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 熱圧着装置
10 受け台
11 圧着ヘッド
12 可動支持部
16 加圧シリンダ(加圧手段)
17 圧着ツール
18 ヒータブロック
21 固定ボルト機構
22 スリーブ
23 固定ボルト
27 断熱カバー
30 調整ねじ機構
30(S) 基準調整ねじ機構
31 中空調整ねじ
32 固定ねじ
34 冷却エア通路
36 冷却エア吹出し通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着ツールと圧着ツールの先端部を除く部分を覆って加熱するヒータブロックとを備えた圧着ヘッドを受け台に向けて移動させ、圧着ツールの先端と受け台との間で被圧着部材を加熱加圧する熱圧着装置において、受け台に対して遠近方向に移動駆動可能な可動支持部に対して圧着ヘッドを間隔をあけて配設し、圧着ヘッドのヒータブロックはその長手方向に間隔をあけて配設された複数の固定ボルト機構にて可動支持部に対して間隔をあけて固定し、圧着ツールはその長手方向に間隔をあけてかつヒータブロックを貫通させて配設した複数の調整ねじ機構にて位置調整可能に可動支持部に固定したことを特徴とする熱圧着装置。
【請求項2】
複数の調整ねじ機構は、圧着ツールの中心軸上に基準調整ねじ機構を配設し、この基準調整ねじ機構を中央にして等間隔置きに他の調整ねじ機構を配設し、複数の固定ボルト機構は任意の調整ねじ機構間に配設したことを特徴とすることを特徴とする請求項1記載の熱圧着装置。
【請求項3】
固定ボルト機構は、可動支持部とヒータブロックの間に配置したスリーブと、可動支持部とスリーブを通してヒータブロックに螺合した固定ボルトにて構成し、調整ねじ機構は、可動支持部に位置調整可能に螺合固定され先端部がヒータブロックを貫通して圧着ツールに当接した中空調整ねじと、中空調整ねじを通して圧着ツールに螺合した固定ねじにて構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の熱圧着装置。
【請求項4】
可動支持部に圧着ヘッドの長手方向に沿って冷却エア通路を設け、冷却エア通路から分岐して各調整ねじ機構の螺合部に接して可動支持部の側面で開放する冷却エア吹き出し通路を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の熱圧着装置。
【請求項5】
ヒータブロックの可動支持部に対向する面及び両側面を隙間をあけて覆うように断熱カバーを配設したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の熱圧着装置。
【請求項6】
圧着ツールの中心軸上に、可動支持部を移動駆動する加圧手段を配設したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の熱圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−76775(P2009−76775A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245899(P2007−245899)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】