熱延コイルの冷却方法と製造方法および冷却装置
【課題】高強度鋼板の母材である熱延コイルを冷間圧延する際に起こる板厚変動を効果的に防止することができる熱延コイルの冷却方法とその方法で熱延コイルを製造する方法を提案すると共に、それらの方法に用いる冷却装置を提供する。
【解決手段】熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却するに当たり、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法、あるいは、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法のいずれかの方法で等しくなるよう冷却する。
【解決手段】熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却するに当たり、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法、あるいは、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法のいずれかの方法で等しくなるよう冷却する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延コイルの冷却方法と製造方法ならびに冷却装置に関し、具体的には、冷間圧延されて製造される引張強さが980MPa以上の高強度鋼板の母材となる熱間圧延直後の熱延コイルを、熱延設備から搬出し、コイル置場等に搬送する搬送装置および/またはコイル置場で熱延コイルを冷却する方法とその方法で熱延コイルを製造する方法ならびにその冷却に用いる冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、CO2排出量削減のための自動車車体軽量化による燃費改善と、安全性向上の観点から、自動車車体の高強度化が強く求められている。斯かる相反する要求に応えるための1手段として、引張強さが980MPa以上の高強度冷延鋼板や、その表面に溶融亜鉛めっきや合金化溶融亜鉛めっきあるいは電気亜鉛めっき等の表面処理を施した高強度表面処理鋼板の自動車車体への採用が積極的に進められている。
【0003】
上記高強度冷延鋼板や高強度表面処理鋼板(以降、単に「高強度鋼板」とも略記する)は、一般に、高強度化を図るために強化元素を多量に添加した鋼素材(スラブ)を熱間圧延して得た熱延鋼帯をコイルに巻き取って熱延コイルとし、冷却した後、酸洗し、冷間圧延し、その後、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきライン、電気めっきライン等で熱処理や表面処理を施して製造されている。
【0004】
しかし、上記冷却された熱延コイルを冷間圧延する際、特許文献1に開示されているように、AGC(自動板厚制御装置)では制御することができないような大きな板厚変動を生じることがある。特許文献1の発明は、この現象について調査した結果、この板厚変動は主として熱延鋼帯の尾端(テール)から約200m以内の範囲で発生すること、板厚変動はほぼ同じ周期で発生し、その、ピッチはホットコイル(熱延コイル)外周ピッチと一致すること、冷間圧延時の板厚変動は、正常部の硬質なベイナイト組織に対し、軟質なパーライト組織が局部的に形成されていることが原因であり、斯かる軟質部は、巻取り後にコイルの巻き緩みや尾端のばたつきを防止する目的でコイルに押し付けられるラッパーロールなどにより局所的に冷却速度の遅い部分が発生することが原因であることを明らかにしている。そして、特許文献1の発明は、上記板厚変動を、板厚変動が生じやすい熱延コイルの尾端から少なくとも200m以内の範囲をベイナイト主体の組織とし、組織中のパーライト分率を15%以下とすることで解決できることを開示している。
【0005】
因みに、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った熱延コイルの冷却方法に着目した技術としては、例えば、特許文献2には、熱延巻き取り後にコイル徐冷装置を用いることで、高炭素鋼またはC,Si,Mnを多く含む材料を熱延ラインで巻き取る際に生じるコイルの変形を抑制し、生産性や歩留りの向上を図る技術が開示されている。これは、高炭素鋼や強度クラスの高いハイテン鋼は、ホットランテーブルでの冷却ではほとんど変態が進まず、むしろ、熱延コイルに巻き取られて以降の冷却過程で変態が進む場合があり、このような場合、熱延コイルは外周側から冷却して変態が進むため、外周側で体積膨張が起こって面圧が下がり、熱延コイルの巻き状態が緩んでコイルがつぶれるのを防止する技術である。
【0006】
また、特許文献3には、複数のコイルを整列させた熱延コイル列に対して、その列に沿って配置した送風ダクトに送風ファンから大気を送り込み、送風ダクトから各コイルを指向して設置したノズルから空気をコイルに吹きつけてコイルの冷却を行うに当たり、伝熱面の大きいコイルの側面に空気を吹きつけることで冷却効率を高め、また空気の吹きつけ角度を最適化することによってコイル側面における熱気流の上昇速度を一定化することで、各コイルおよびコイル列における均一な冷却を実現する技術である。
したがって、特許文献2および特許文献3は、板厚変動とは無関係の技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−111708号公報
【特許文献2】特開2010−94710号公報
【特許文献3】特開平10−328737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般冷延鋼板の母材となる熱延鋼板のコイル巻き取り後の組織は、フェライトとパーライトからなるものであることが普通である。これは、コイル巻き取りまでの間にフェライト変態とパーライト変態が完了していることによる。
一方、高強度鋼板の母材となる熱延鋼板の場合、その巻き取り後の組織は、上記特許文献1のように、ベイナイト組織であることが多い。これは、高強度冷延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板等を製造する熱処理設備の冷却速度が遅いため、MnやCr,Mo,Bのような焼入性を高める元素が多量に添加されており、熱間圧延直後のフェライト変態が抑制される結果、出現するまでの時間が長い(フェライト+パーライト)組織とならずにベイナイト主体の組織となるためである。
【0009】
しかし、CrやMoのような焼入性を高める強化元素は高価であり、また、世界的に産地が限定されていることから、安定してかつ安価に入手することが難しいという問題がある。そこで、これらの強化元素の添加を極力控えた成分系、例えば、C,SiおよびMnを主体とした成分系の高強度鋼板の開発が望まれている。
【0010】
しかしながら、発明者らは、C,SiおよびMnを主体とした成分系で、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板の開発を進めようとしたところ、特許文献1と同様の大きな板厚変動が発生することがわかった。そして、その発生状況について詳細な調査を行ったところ、特許文献1の板厚変動とはまったく異なる現象であることがわかった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度鋼板の母材である熱延コイルを冷間圧延する際に起こる板厚変動を効果的に防止することができる熱延コイルの冷却方法とその方法で熱延コイルを製造する方法を提案すると共に、それらの方法に用いる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記課題を解決し、CrやMo等の高価な合金元素を添加しない成分系で引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を安定して製造するため、鋼の成分組成、熱延鋼板のミクロ組織に着目して検討を重ねた。その結果、冷間圧延における板厚変動は、Cr,Mo,B等の合金元素を含有せず、主に、C,Si,Mnで鋼の強化を図っている引張強さが980MPa以上の高強度鋼板おいて顕著であること、また、板厚変動のピッチがコイルの外周ピッチと一致する点において特許文献1に記載の板厚変動と類似しているものの、特許文献1の板厚変動とは逆に、その原因が軟質な正常部に対して硬質な部分が局部的に形成されていることにあること、したがって、この板厚変動の原因は、巻取設備のラッパーロールなどによるものではないことが明らかになった。
【0013】
そこで、発明者らは、さらに調査を重ねた結果、本発明において認められた板厚変動は、熱間圧延直後の熱延コイルを次工程に搬送する搬送装置および/または熱延コイルを一時保管しておくコイル置場においてコイル置台や地面と接している熱延コイルの外周部分が局所的に急速冷却され、その部分が硬質化したことが原因であること、したがって、本発明の板厚変動を防止するためには、コイル置台や地面と接している部分と、接していない部分の冷却速度を等しくし、熱延板組織の周期的な変動を防止してやることが重要でることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する方法であって、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を等しくなるよう冷却することを特徴とする熱延コイルの冷却方法である。
【0015】
本発明の冷却方法における上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の冷却方法における上記加熱する手段は、ヒーター加熱、赤外線加熱、火炎加熱および誘導加熱から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の冷却方法における上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の冷却方法における上記強制冷却する手段は、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水から選ばれる1種または2種以上の冷媒を噴射する手段であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の冷却方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度差に基づいて、加熱投入熱量あるいは冷媒噴射量を制御することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記いずれかに記載の方法で熱延コイルを冷却することを特徴とする熱延コイルの製造方法である。
【0021】
また、本発明における上記熱延コイルは、C:0.05〜0.20mass%、Si:1.0〜2.5mass%およびMn:1.0〜2.5mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする。
なお、本発明の熱延コイルは、上記成分組成以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、P:0.05mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.1mass%以下、N:0.01mass%以下であれば含有してもよい。
【0022】
また、本発明における上記熱延コイルは、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板用の母材であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、上記搬送装置のコイル置台下方および/またはコイル置場の地面に加熱手段を設けてなることを特徴とする熱延コイルの冷却装置である。
【0024】
本発明の冷却装置は、上記に加熱手段に加えてさらに、熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な加熱手段を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な冷却手段を有することを特徴とする熱延コイルの冷却装置である。
【0026】
本発明の上記冷却装置は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と、接していない部分の温度を監視し、両部分の温度差に基づいて加熱投入熱量または冷媒噴射量を制御する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱延コイルの外周面を全周にわたって均一に冷却することができるので、CやSi,Mnを多量に含有する場合でも、コイル外周方向における熱延組織を均一化し、その後の冷間圧延における板厚変動を効果的に抑制することができるので、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が解決すべき課題とする冷間圧延時の板厚変動を示す板厚チャート例である。
【図2】図1の板厚チャートの時間軸を拡大して示した図である。
【図3】冷却中の熱延コイルの外周方向の温度分布を実測した結果を示す図である。
【図4】TTT図上に、熱延コイルの冷却曲線を重ねて示した図である。
【図5】熱延後のコイルを搬送する搬送装置を説明する例図である。
【図6】熱延コイルがコイル置場で冷却されるときの様子を説明する例図である。
【図7】図4のコイル巻き取り後の部分を拡大した図である。
【図8】熱延コイル外周の急速冷却部分を緩冷却し、鋼板組織を均一化する方法を説明する図である。
【図9】熱延コイル外周の緩冷却部分を急冷し、鋼板組織を均一化する方法を説明する図である。
【図10】加熱手段を有する本発明の冷却装置の一実施形態を説明する模式図である。
【図11】加熱手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図12】加熱手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図13】冷却手段を有する本発明の冷却装置の一実施形態を説明する模式図である。
【図14】冷却手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図15】本発明の冷却方法を適用した熱延コイルを冷間圧延した時の板厚チャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明を開発する契機となった板厚変動について説明する。
C:0.08mass%、Si:1.5mass%、Mn:2.3mass%、P:0.008mass%およびS:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を890℃、巻取温度を500℃とする熱間圧延を行ない、板厚:2.6mmの熱延コイルとした後、冷却ヤードに搬送し、室温まで冷却させた。
【0030】
その後、上記熱延コイルを酸洗した後、冷間圧延して、板厚1.6mmの冷延コイルとしたところ、AGC(自動板厚制御装置)では板厚を制御しきれないような大きな板厚変動が発生した。このときの板厚チャートを図1に示したが、最大で±150μm程度の板厚変動が生じていることがわかる。また、図2は、上記板厚変動が大きな部分の時間軸を拡大したものであり、この図から、この板厚変動は、熱延コイルの外周ピッチで発生していることがわかった。
【0031】
そこで、この板厚変動の原因を調査するため、同一成分かつ同一条件で熱間圧延され、コイルヤードに置かれている、コイルに巻き取ってから150分経過後の熱延コイルについて、コイル内周から外周方向に向かってコイル肉厚の20%(内巻側先端から80mの位置)、50%(同230mの位置)および80%(同420mの位置)位置における温度分布をコイル側面からサーモビュアで測定し、その結果を図3に示した。図3から、熱延コイルの上方部分に比較して下方部分が冷却が進んでいること、特に、地面に接している周方向0°の位置(以降、「接地位置」ともいう)が最も冷却が進んでいること、そして、その最も冷却が進んでいる接地位置は外周ピッチで発生し、板厚変動のピッチと一致していることがわかる。これは、熱延コイルの接地位置では、他の部分よりもコイルの熱が地面に放出され、より早く冷却が進んでいることを示している。
【0032】
図4は、熱間圧延後、ランナウトテーブル(ROT)で冷却され、巻取温度:500℃で巻き取られた熱延コイルの温度履歴を、TTT図(恒温変態曲線図)上に記載したものである。図中の破線は、図3の周方向±150°位置の冷却曲線を示したものであり、パーライト変態開始曲線Psを通過していること、一方、図中の実線は、図3の接地位置(周方向0°位置)の冷却曲線を示したものであり、パーライト変態開始曲線Psを通過しないまま、ベイナイト変態していることがわかる。すなわち、熱延コイルの地面に接していない部分は冷却速度が遅く、パーライト変態が起きるため、フェライトとパーライトからなる軟質組織となるのに対して、熱延コイルの接地位置は、その他の部分より急速冷却されるため、ベイナイト主体の組織となることが推察された。なお、図4において着目すべき点は、パーライト変態が起こるまでの時間は103秒(16.7分)を大きく超えている、つまり、コイル巻き取り時点では変態が完了していないという点である。
【0033】
上記調査の結果から、本発明が解決しようとしている板厚変動の発生メカニズムについては、以下のように考えている。
特別な合金元素を含有していない一般熱延鋼板では、熱間圧延し、所定の巻取温度まで冷却され、コイルに巻き取られるまでの間には、フェライトとパーライトへの変態はほぼ完了している。一方、CやSi,Mn等を多量に含んでいる高強度鋼板の場合には、上記添加成分によってフェライト変態が遅延するため、上記のように、コイルに巻き取った時点では、変態が完了しないか、殆ど変態が進行していない。そのため、熱間圧延後、コイルに巻取られた熱延コイルは、次工程への搬送途中および/またはコイルが一時保管されるコイル置場(コイルヤード)において変態を起こすことになる。
【0034】
図5は、コイル搬送装置2(コイル台車)で熱延コイル1を搬送する状態を、図6は、コイル置場において熱延コイル1が冷却されている状態を示す模式図である。熱延コイルの外周部分は、例えば、コイル搬送装置では、コイル置台3上に載置された状態で移送されるため、コイル置台3と接する部分は、熱伝導により冷却が促進されてその他の部分より冷却速度が大きくなる。同様に、コイル置場では、コイル置台3または地面4に載置された状態で冷却されるため、コイル置台3や地面4と接する部分は、熱伝導により冷却が促進される。その結果、熱延コイルのコイル置台や地面と接していない部分は、フェライトとパーライトからなる軟質組織となるのに対して、接している部分は急速冷却されるため、ベイナイト主体の組織となる。そして、この急速冷却部分は外周ピッチという短周期で発生するため、AGCでは板厚を制御することができず、大きな板厚変動を誘発することになると考えられる。
【0035】
次に、本発明の熱延コイルの冷却方法について説明する。
上述したように、本発明が解決しようとする板厚変動は、熱延コイルの周方向の一部が急速冷却され、その部分が他の部分と比較して硬質な鋼板組織となることによって引き起こされるものである。したがって、この板厚変動をなくすには、熱延コイルの周方向の材質変動を防止する、すなわち熱延コイルの周方向の鋼板組織を均一化することが必要である。
【0036】
図7は、図4のTTT図のうち、熱延コイル巻き取り後の部分を拡大したものであり、曲線Aは、コイル置台や地面に接している部分の冷却曲線、Bは、その他の緩冷却される部分の冷却曲線、Psはパーライト変態開始曲線であり、冷却曲線Aで冷却される部分はベイナイト主体の組織となり、Ps線を横切っている冷却曲線Bで冷却される部分は(フェライト+パーライト)主体の組織となることを示している。この図から、熱延コイルの周方向の鋼板組織を均一化するには、以下の2つの方法が考えられる。
【0037】
(1)コイル置台や地面に接する部分を加熱してやる方法
この方法は、急速冷却されるコイル置台や地面に接している部分を緩冷却側に移行させる、すなわち、図7の冷却曲線Aを、図8に示した冷却曲線A´のように冷却曲線Bに近づけてやる方法である。これによって、熱延コイルの周方向の鋼板組織を全周にわたって均一な(フェライト+パーライト)主体の組織とすることができ、コイルの外周ピッチで発生する材質変動を防止することができる。なお、熱延コイル外周面を部分的に加熱する具体的な手段としては、特に制限はないが、電熱加熱、赤外線加熱、火炎加熱、誘導加熱あるいはこれらを適宜組み合わせた加熱方法であれば好適に用いることができる。
【0038】
(2)コイル置台や地面に接していない部分を強制冷却してやる方法
この方法は、コイル置台や地面に接していない緩冷却される部分を急速冷却側に移行させる、すなわち、図7の冷却曲線Bを、図9に示した冷却曲線B´のように冷却曲線Aに近づけてやる方法である。これによって、熱延コイルの周方向の鋼板組織を全周にわたって均一なベイナイト主体の組織とすることができ、コイルの外周ピッチで発生する材質変動を防止することができる。なお、熱延コイル外周面を部分的に強制冷却する具体的な手段としては、特に制限はないが、冷却空気、冷却フォグ、冷却水あるいはこれらを適宜組み合わせた冷却方法であれば好適に用いることができる。
【0039】
なお、(1)の加熱してやる方法、(2)の強制冷却してやる方法のいずれの場合も、ただ単に加熱したり、冷却したりするだけでなく、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度を実測し、その温度差に基づいて、加熱する投入熱量や噴射する冷媒量を適正範囲に制御してやることが、熱延コイルの周方向の材質を均一化させる上では好ましい。
【0040】
次に、上記(1)の加熱手段を有する本発明に係る冷却装置の具体例を説明する。
図10は、コイル置台や地面と接する熱延コイル外周の急速冷却部分を加熱してやる本発明の冷却装置の一実施形態を示したものであり、図10(a)は、コイル搬送装置2のコイル置台3の下方に加熱手段5を設置した例、図10(b)は、コイル置場に置かれた熱延コイルが接する地面4に加熱手段5を設置した例である。(なお、以降の図11〜14についても、同様に(a)はコイル搬送装置、(b)はコイル置場に設置された冷却装置を示す。)これらの加熱手段5を有する冷却装置を用いることで、コイルがコイル置台や地面などに接している部分の冷却速度を小さくし、その他の部分との冷却速度差を小さくすることができるので、コイル外周ピッチの材質変動(組織変動)を防止し、板厚変動を解消することができる。
【0041】
また、図11は、上記図10の加熱手段5を備えた冷却装置に、コイルの外周面に向けた電熱加熱、赤外線加熱、火炎加熱、誘導加熱あるいはそれらを適宜組み合わせた加熱手段6を複数設置したものであり、これにより、コイルが搬送装置や地面などに接地している部分と接地していない部分の冷却速度をより等しくすることができる。
というのは、最も冷却速度が速いコイル置台や地面に接する部分を加熱してやることで、最も冷却速度が遅い部分と冷却速度を一致させることが可能となる。しかしながら、上記の中間の冷却速度の部分も存在するので、加熱手段を複数設置することで、コイル全体の冷却速度をより等しくすることができるからである。
【0042】
なお、上記図10や図11の加熱手段を有する冷却装置では、コイル置台や地面に接している部分と接していない部分のコイル表面温度をサーモビュア等の温度監視装置7で測定し、その測定結果に基づき、両部分の温度(冷却速度)が等しくなるよう、加熱投入熱量を制御するようにするのが好ましい。
【0043】
また、熱延コイルの周方向全ての冷却速度を制御したい場合には、図11のように、加熱手段6を熱延コイルの外周に沿って多数設置する必要があり、設備費が高くなるという問題がある。そこで、図12に示すように、コイルに対して相対移動可能な外枠フレーム8と、コイルの高さに応じて昇降可能な昇降枠9とを備え、この昇降枠9に加熱手段6を設置し、これをコイル外周面に沿って循環移動するようにしてやれば、1台の加熱手段でもコイルの外周全ての部分について冷却速度を均一に制御することが可能となる。
【0044】
次に、上記(2)の強制冷却手段を有する本発明に係る冷却装置の具体例を説明する。
図13は、コイル置台や地面と接していない熱延コイルの外周部分を強制冷却してやる本発明の冷却装置の一実施形態を示したものであり、図13(a)は、コイル搬送装置2上に載置された熱延コイル外周面に向けて、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水等の冷媒を噴射する冷却手段10を複数設置した例を、図13(b)は、コイル置場に置かれた熱延コイルのコイル置台や地面に接していない外周面に向けて、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水等の冷媒を噴射する冷却手段10を複数設置した例である。これらの冷却手段10を有する冷却装置を用いることで、熱延コイルのコイル置台や地面と接していない外周部分の冷却速度を大きくし、接している部分との冷却速度差を小さくすることができるので、コイル外周ピッチの材質変動(組織変動)を防止し、板厚変動を解消することができる。
【0045】
なお、上記図13の冷却装置においても、図10〜図12と同様、コイル置台や地面に接している部分と接していない部分のコイル表面温度をサーモビュア等の温度監視装置7で測定し、その測定結果に基づき、両部分の温度(冷却速度)が等しくなるよう、冷媒の噴射量を制御するようにするのが好ましい。
【0046】
また、熱延コイルの外周全ての冷却速度を制御したい場合には、図13のように、冷却手段10を熱延コイルの外周に沿って多数設置する必要があり、設備費が高くなるという問題がある。そこで、図14に示すように、コイルに対して相対移動可能な外枠フレーム8と、コイルの高さに応じて昇降可能な昇降枠9とを備え、この昇降枠9に冷却手段10を設置し、これをコイル外周面に沿って循環移動するようにしてやれば、1台の冷却手段でもコイルの外周全ての部分について冷却速度を均一に制御することが可能となる。
【0047】
そして、本発明の冷却方法を実施するに当っては、上記図10〜図14の冷却装置を複数台作製し、コイル搬送装置の進行方向に設置すれば、複数のコイルを同時に均一冷却することが可能となる。同様に、これらの冷却装置を複数台作製し、コイル置場に設置すれば、多数のコイルを均一冷却することができる。
なお、上述した図10〜図14の冷却装置は、本発明に係る冷却装置の数例を示したものであり、本発明はそれらの冷却装置に限定されるものではなく、例えば、加熱手段5と冷却手段10の両方を併せもつ冷却装置としてよい。
【実施例】
【0048】
C:0.08mass%、Si:1.5mass%、Mn:2.3mass%、P:0.008mass%およびS:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を890℃、巻取温度を500℃とする熱間圧延を行い、板厚:2.6mmの熱延コイルとした後、冷却ヤードに搬送し、室温まで冷却させた。
なお、この際、コイル搬送装置およびコイル置場に設置した、加熱手段を有する図10の本発明に係る冷却装置を用いて、コイル巻き取り終了後〜10時間後まで冷却した。
その後、上記熱延コイルを酸洗した後、タンデム式連続圧延機を用いて板厚:1.6mmに冷間圧延した。このときの冷間圧延機出側の板厚チャートを図15に示した。
この図から、板厚変動幅が±20μm以内に収まっており、コイルに巻き取り直後の熱延コイルを本発明の冷却方法(冷却装置)を用いて冷却することにより、ほぼ完全にコイル周方向の材質が均一化され、板厚変動を防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1:熱延コイル
2:コイル搬送装置(コイル台車)
3:コイル置台
4:地面
5、6:加熱手段
7:温度監視装置(温度計)
8:外枠フレーム
9:昇降枠
10:冷却手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱延コイルの冷却方法と製造方法ならびに冷却装置に関し、具体的には、冷間圧延されて製造される引張強さが980MPa以上の高強度鋼板の母材となる熱間圧延直後の熱延コイルを、熱延設備から搬出し、コイル置場等に搬送する搬送装置および/またはコイル置場で熱延コイルを冷却する方法とその方法で熱延コイルを製造する方法ならびにその冷却に用いる冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、CO2排出量削減のための自動車車体軽量化による燃費改善と、安全性向上の観点から、自動車車体の高強度化が強く求められている。斯かる相反する要求に応えるための1手段として、引張強さが980MPa以上の高強度冷延鋼板や、その表面に溶融亜鉛めっきや合金化溶融亜鉛めっきあるいは電気亜鉛めっき等の表面処理を施した高強度表面処理鋼板の自動車車体への採用が積極的に進められている。
【0003】
上記高強度冷延鋼板や高強度表面処理鋼板(以降、単に「高強度鋼板」とも略記する)は、一般に、高強度化を図るために強化元素を多量に添加した鋼素材(スラブ)を熱間圧延して得た熱延鋼帯をコイルに巻き取って熱延コイルとし、冷却した後、酸洗し、冷間圧延し、その後、連続焼鈍ラインや連続溶融亜鉛めっきライン、電気めっきライン等で熱処理や表面処理を施して製造されている。
【0004】
しかし、上記冷却された熱延コイルを冷間圧延する際、特許文献1に開示されているように、AGC(自動板厚制御装置)では制御することができないような大きな板厚変動を生じることがある。特許文献1の発明は、この現象について調査した結果、この板厚変動は主として熱延鋼帯の尾端(テール)から約200m以内の範囲で発生すること、板厚変動はほぼ同じ周期で発生し、その、ピッチはホットコイル(熱延コイル)外周ピッチと一致すること、冷間圧延時の板厚変動は、正常部の硬質なベイナイト組織に対し、軟質なパーライト組織が局部的に形成されていることが原因であり、斯かる軟質部は、巻取り後にコイルの巻き緩みや尾端のばたつきを防止する目的でコイルに押し付けられるラッパーロールなどにより局所的に冷却速度の遅い部分が発生することが原因であることを明らかにしている。そして、特許文献1の発明は、上記板厚変動を、板厚変動が生じやすい熱延コイルの尾端から少なくとも200m以内の範囲をベイナイト主体の組織とし、組織中のパーライト分率を15%以下とすることで解決できることを開示している。
【0005】
因みに、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った熱延コイルの冷却方法に着目した技術としては、例えば、特許文献2には、熱延巻き取り後にコイル徐冷装置を用いることで、高炭素鋼またはC,Si,Mnを多く含む材料を熱延ラインで巻き取る際に生じるコイルの変形を抑制し、生産性や歩留りの向上を図る技術が開示されている。これは、高炭素鋼や強度クラスの高いハイテン鋼は、ホットランテーブルでの冷却ではほとんど変態が進まず、むしろ、熱延コイルに巻き取られて以降の冷却過程で変態が進む場合があり、このような場合、熱延コイルは外周側から冷却して変態が進むため、外周側で体積膨張が起こって面圧が下がり、熱延コイルの巻き状態が緩んでコイルがつぶれるのを防止する技術である。
【0006】
また、特許文献3には、複数のコイルを整列させた熱延コイル列に対して、その列に沿って配置した送風ダクトに送風ファンから大気を送り込み、送風ダクトから各コイルを指向して設置したノズルから空気をコイルに吹きつけてコイルの冷却を行うに当たり、伝熱面の大きいコイルの側面に空気を吹きつけることで冷却効率を高め、また空気の吹きつけ角度を最適化することによってコイル側面における熱気流の上昇速度を一定化することで、各コイルおよびコイル列における均一な冷却を実現する技術である。
したがって、特許文献2および特許文献3は、板厚変動とは無関係の技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−111708号公報
【特許文献2】特開2010−94710号公報
【特許文献3】特開平10−328737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般冷延鋼板の母材となる熱延鋼板のコイル巻き取り後の組織は、フェライトとパーライトからなるものであることが普通である。これは、コイル巻き取りまでの間にフェライト変態とパーライト変態が完了していることによる。
一方、高強度鋼板の母材となる熱延鋼板の場合、その巻き取り後の組織は、上記特許文献1のように、ベイナイト組織であることが多い。これは、高強度冷延鋼板や溶融亜鉛めっき鋼板等を製造する熱処理設備の冷却速度が遅いため、MnやCr,Mo,Bのような焼入性を高める元素が多量に添加されており、熱間圧延直後のフェライト変態が抑制される結果、出現するまでの時間が長い(フェライト+パーライト)組織とならずにベイナイト主体の組織となるためである。
【0009】
しかし、CrやMoのような焼入性を高める強化元素は高価であり、また、世界的に産地が限定されていることから、安定してかつ安価に入手することが難しいという問題がある。そこで、これらの強化元素の添加を極力控えた成分系、例えば、C,SiおよびMnを主体とした成分系の高強度鋼板の開発が望まれている。
【0010】
しかしながら、発明者らは、C,SiおよびMnを主体とした成分系で、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板の開発を進めようとしたところ、特許文献1と同様の大きな板厚変動が発生することがわかった。そして、その発生状況について詳細な調査を行ったところ、特許文献1の板厚変動とはまったく異なる現象であることがわかった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高強度鋼板の母材である熱延コイルを冷間圧延する際に起こる板厚変動を効果的に防止することができる熱延コイルの冷却方法とその方法で熱延コイルを製造する方法を提案すると共に、それらの方法に用いる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記課題を解決し、CrやMo等の高価な合金元素を添加しない成分系で引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を安定して製造するため、鋼の成分組成、熱延鋼板のミクロ組織に着目して検討を重ねた。その結果、冷間圧延における板厚変動は、Cr,Mo,B等の合金元素を含有せず、主に、C,Si,Mnで鋼の強化を図っている引張強さが980MPa以上の高強度鋼板おいて顕著であること、また、板厚変動のピッチがコイルの外周ピッチと一致する点において特許文献1に記載の板厚変動と類似しているものの、特許文献1の板厚変動とは逆に、その原因が軟質な正常部に対して硬質な部分が局部的に形成されていることにあること、したがって、この板厚変動の原因は、巻取設備のラッパーロールなどによるものではないことが明らかになった。
【0013】
そこで、発明者らは、さらに調査を重ねた結果、本発明において認められた板厚変動は、熱間圧延直後の熱延コイルを次工程に搬送する搬送装置および/または熱延コイルを一時保管しておくコイル置場においてコイル置台や地面と接している熱延コイルの外周部分が局所的に急速冷却され、その部分が硬質化したことが原因であること、したがって、本発明の板厚変動を防止するためには、コイル置台や地面と接している部分と、接していない部分の冷却速度を等しくし、熱延板組織の周期的な変動を防止してやることが重要でることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する方法であって、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を等しくなるよう冷却することを特徴とする熱延コイルの冷却方法である。
【0015】
本発明の冷却方法における上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の冷却方法における上記加熱する手段は、ヒーター加熱、赤外線加熱、火炎加熱および誘導加熱から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の冷却方法における上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の冷却方法における上記強制冷却する手段は、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水から選ばれる1種または2種以上の冷媒を噴射する手段であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の冷却方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度差に基づいて、加熱投入熱量あるいは冷媒噴射量を制御することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記いずれかに記載の方法で熱延コイルを冷却することを特徴とする熱延コイルの製造方法である。
【0021】
また、本発明における上記熱延コイルは、C:0.05〜0.20mass%、Si:1.0〜2.5mass%およびMn:1.0〜2.5mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする。
なお、本発明の熱延コイルは、上記成分組成以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、P:0.05mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.1mass%以下、N:0.01mass%以下であれば含有してもよい。
【0022】
また、本発明における上記熱延コイルは、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板用の母材であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、上記搬送装置のコイル置台下方および/またはコイル置場の地面に加熱手段を設けてなることを特徴とする熱延コイルの冷却装置である。
【0024】
本発明の冷却装置は、上記に加熱手段に加えてさらに、熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な加熱手段を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な冷却手段を有することを特徴とする熱延コイルの冷却装置である。
【0026】
本発明の上記冷却装置は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と、接していない部分の温度を監視し、両部分の温度差に基づいて加熱投入熱量または冷媒噴射量を制御する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱延コイルの外周面を全周にわたって均一に冷却することができるので、CやSi,Mnを多量に含有する場合でも、コイル外周方向における熱延組織を均一化し、その後の冷間圧延における板厚変動を効果的に抑制することができるので、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が解決すべき課題とする冷間圧延時の板厚変動を示す板厚チャート例である。
【図2】図1の板厚チャートの時間軸を拡大して示した図である。
【図3】冷却中の熱延コイルの外周方向の温度分布を実測した結果を示す図である。
【図4】TTT図上に、熱延コイルの冷却曲線を重ねて示した図である。
【図5】熱延後のコイルを搬送する搬送装置を説明する例図である。
【図6】熱延コイルがコイル置場で冷却されるときの様子を説明する例図である。
【図7】図4のコイル巻き取り後の部分を拡大した図である。
【図8】熱延コイル外周の急速冷却部分を緩冷却し、鋼板組織を均一化する方法を説明する図である。
【図9】熱延コイル外周の緩冷却部分を急冷し、鋼板組織を均一化する方法を説明する図である。
【図10】加熱手段を有する本発明の冷却装置の一実施形態を説明する模式図である。
【図11】加熱手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図12】加熱手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図13】冷却手段を有する本発明の冷却装置の一実施形態を説明する模式図である。
【図14】冷却手段を有する本発明の冷却装置の他の実施形態を説明する模式図である。
【図15】本発明の冷却方法を適用した熱延コイルを冷間圧延した時の板厚チャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明を開発する契機となった板厚変動について説明する。
C:0.08mass%、Si:1.5mass%、Mn:2.3mass%、P:0.008mass%およびS:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を890℃、巻取温度を500℃とする熱間圧延を行ない、板厚:2.6mmの熱延コイルとした後、冷却ヤードに搬送し、室温まで冷却させた。
【0030】
その後、上記熱延コイルを酸洗した後、冷間圧延して、板厚1.6mmの冷延コイルとしたところ、AGC(自動板厚制御装置)では板厚を制御しきれないような大きな板厚変動が発生した。このときの板厚チャートを図1に示したが、最大で±150μm程度の板厚変動が生じていることがわかる。また、図2は、上記板厚変動が大きな部分の時間軸を拡大したものであり、この図から、この板厚変動は、熱延コイルの外周ピッチで発生していることがわかった。
【0031】
そこで、この板厚変動の原因を調査するため、同一成分かつ同一条件で熱間圧延され、コイルヤードに置かれている、コイルに巻き取ってから150分経過後の熱延コイルについて、コイル内周から外周方向に向かってコイル肉厚の20%(内巻側先端から80mの位置)、50%(同230mの位置)および80%(同420mの位置)位置における温度分布をコイル側面からサーモビュアで測定し、その結果を図3に示した。図3から、熱延コイルの上方部分に比較して下方部分が冷却が進んでいること、特に、地面に接している周方向0°の位置(以降、「接地位置」ともいう)が最も冷却が進んでいること、そして、その最も冷却が進んでいる接地位置は外周ピッチで発生し、板厚変動のピッチと一致していることがわかる。これは、熱延コイルの接地位置では、他の部分よりもコイルの熱が地面に放出され、より早く冷却が進んでいることを示している。
【0032】
図4は、熱間圧延後、ランナウトテーブル(ROT)で冷却され、巻取温度:500℃で巻き取られた熱延コイルの温度履歴を、TTT図(恒温変態曲線図)上に記載したものである。図中の破線は、図3の周方向±150°位置の冷却曲線を示したものであり、パーライト変態開始曲線Psを通過していること、一方、図中の実線は、図3の接地位置(周方向0°位置)の冷却曲線を示したものであり、パーライト変態開始曲線Psを通過しないまま、ベイナイト変態していることがわかる。すなわち、熱延コイルの地面に接していない部分は冷却速度が遅く、パーライト変態が起きるため、フェライトとパーライトからなる軟質組織となるのに対して、熱延コイルの接地位置は、その他の部分より急速冷却されるため、ベイナイト主体の組織となることが推察された。なお、図4において着目すべき点は、パーライト変態が起こるまでの時間は103秒(16.7分)を大きく超えている、つまり、コイル巻き取り時点では変態が完了していないという点である。
【0033】
上記調査の結果から、本発明が解決しようとしている板厚変動の発生メカニズムについては、以下のように考えている。
特別な合金元素を含有していない一般熱延鋼板では、熱間圧延し、所定の巻取温度まで冷却され、コイルに巻き取られるまでの間には、フェライトとパーライトへの変態はほぼ完了している。一方、CやSi,Mn等を多量に含んでいる高強度鋼板の場合には、上記添加成分によってフェライト変態が遅延するため、上記のように、コイルに巻き取った時点では、変態が完了しないか、殆ど変態が進行していない。そのため、熱間圧延後、コイルに巻取られた熱延コイルは、次工程への搬送途中および/またはコイルが一時保管されるコイル置場(コイルヤード)において変態を起こすことになる。
【0034】
図5は、コイル搬送装置2(コイル台車)で熱延コイル1を搬送する状態を、図6は、コイル置場において熱延コイル1が冷却されている状態を示す模式図である。熱延コイルの外周部分は、例えば、コイル搬送装置では、コイル置台3上に載置された状態で移送されるため、コイル置台3と接する部分は、熱伝導により冷却が促進されてその他の部分より冷却速度が大きくなる。同様に、コイル置場では、コイル置台3または地面4に載置された状態で冷却されるため、コイル置台3や地面4と接する部分は、熱伝導により冷却が促進される。その結果、熱延コイルのコイル置台や地面と接していない部分は、フェライトとパーライトからなる軟質組織となるのに対して、接している部分は急速冷却されるため、ベイナイト主体の組織となる。そして、この急速冷却部分は外周ピッチという短周期で発生するため、AGCでは板厚を制御することができず、大きな板厚変動を誘発することになると考えられる。
【0035】
次に、本発明の熱延コイルの冷却方法について説明する。
上述したように、本発明が解決しようとする板厚変動は、熱延コイルの周方向の一部が急速冷却され、その部分が他の部分と比較して硬質な鋼板組織となることによって引き起こされるものである。したがって、この板厚変動をなくすには、熱延コイルの周方向の材質変動を防止する、すなわち熱延コイルの周方向の鋼板組織を均一化することが必要である。
【0036】
図7は、図4のTTT図のうち、熱延コイル巻き取り後の部分を拡大したものであり、曲線Aは、コイル置台や地面に接している部分の冷却曲線、Bは、その他の緩冷却される部分の冷却曲線、Psはパーライト変態開始曲線であり、冷却曲線Aで冷却される部分はベイナイト主体の組織となり、Ps線を横切っている冷却曲線Bで冷却される部分は(フェライト+パーライト)主体の組織となることを示している。この図から、熱延コイルの周方向の鋼板組織を均一化するには、以下の2つの方法が考えられる。
【0037】
(1)コイル置台や地面に接する部分を加熱してやる方法
この方法は、急速冷却されるコイル置台や地面に接している部分を緩冷却側に移行させる、すなわち、図7の冷却曲線Aを、図8に示した冷却曲線A´のように冷却曲線Bに近づけてやる方法である。これによって、熱延コイルの周方向の鋼板組織を全周にわたって均一な(フェライト+パーライト)主体の組織とすることができ、コイルの外周ピッチで発生する材質変動を防止することができる。なお、熱延コイル外周面を部分的に加熱する具体的な手段としては、特に制限はないが、電熱加熱、赤外線加熱、火炎加熱、誘導加熱あるいはこれらを適宜組み合わせた加熱方法であれば好適に用いることができる。
【0038】
(2)コイル置台や地面に接していない部分を強制冷却してやる方法
この方法は、コイル置台や地面に接していない緩冷却される部分を急速冷却側に移行させる、すなわち、図7の冷却曲線Bを、図9に示した冷却曲線B´のように冷却曲線Aに近づけてやる方法である。これによって、熱延コイルの周方向の鋼板組織を全周にわたって均一なベイナイト主体の組織とすることができ、コイルの外周ピッチで発生する材質変動を防止することができる。なお、熱延コイル外周面を部分的に強制冷却する具体的な手段としては、特に制限はないが、冷却空気、冷却フォグ、冷却水あるいはこれらを適宜組み合わせた冷却方法であれば好適に用いることができる。
【0039】
なお、(1)の加熱してやる方法、(2)の強制冷却してやる方法のいずれの場合も、ただ単に加熱したり、冷却したりするだけでなく、熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度を実測し、その温度差に基づいて、加熱する投入熱量や噴射する冷媒量を適正範囲に制御してやることが、熱延コイルの周方向の材質を均一化させる上では好ましい。
【0040】
次に、上記(1)の加熱手段を有する本発明に係る冷却装置の具体例を説明する。
図10は、コイル置台や地面と接する熱延コイル外周の急速冷却部分を加熱してやる本発明の冷却装置の一実施形態を示したものであり、図10(a)は、コイル搬送装置2のコイル置台3の下方に加熱手段5を設置した例、図10(b)は、コイル置場に置かれた熱延コイルが接する地面4に加熱手段5を設置した例である。(なお、以降の図11〜14についても、同様に(a)はコイル搬送装置、(b)はコイル置場に設置された冷却装置を示す。)これらの加熱手段5を有する冷却装置を用いることで、コイルがコイル置台や地面などに接している部分の冷却速度を小さくし、その他の部分との冷却速度差を小さくすることができるので、コイル外周ピッチの材質変動(組織変動)を防止し、板厚変動を解消することができる。
【0041】
また、図11は、上記図10の加熱手段5を備えた冷却装置に、コイルの外周面に向けた電熱加熱、赤外線加熱、火炎加熱、誘導加熱あるいはそれらを適宜組み合わせた加熱手段6を複数設置したものであり、これにより、コイルが搬送装置や地面などに接地している部分と接地していない部分の冷却速度をより等しくすることができる。
というのは、最も冷却速度が速いコイル置台や地面に接する部分を加熱してやることで、最も冷却速度が遅い部分と冷却速度を一致させることが可能となる。しかしながら、上記の中間の冷却速度の部分も存在するので、加熱手段を複数設置することで、コイル全体の冷却速度をより等しくすることができるからである。
【0042】
なお、上記図10や図11の加熱手段を有する冷却装置では、コイル置台や地面に接している部分と接していない部分のコイル表面温度をサーモビュア等の温度監視装置7で測定し、その測定結果に基づき、両部分の温度(冷却速度)が等しくなるよう、加熱投入熱量を制御するようにするのが好ましい。
【0043】
また、熱延コイルの周方向全ての冷却速度を制御したい場合には、図11のように、加熱手段6を熱延コイルの外周に沿って多数設置する必要があり、設備費が高くなるという問題がある。そこで、図12に示すように、コイルに対して相対移動可能な外枠フレーム8と、コイルの高さに応じて昇降可能な昇降枠9とを備え、この昇降枠9に加熱手段6を設置し、これをコイル外周面に沿って循環移動するようにしてやれば、1台の加熱手段でもコイルの外周全ての部分について冷却速度を均一に制御することが可能となる。
【0044】
次に、上記(2)の強制冷却手段を有する本発明に係る冷却装置の具体例を説明する。
図13は、コイル置台や地面と接していない熱延コイルの外周部分を強制冷却してやる本発明の冷却装置の一実施形態を示したものであり、図13(a)は、コイル搬送装置2上に載置された熱延コイル外周面に向けて、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水等の冷媒を噴射する冷却手段10を複数設置した例を、図13(b)は、コイル置場に置かれた熱延コイルのコイル置台や地面に接していない外周面に向けて、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水等の冷媒を噴射する冷却手段10を複数設置した例である。これらの冷却手段10を有する冷却装置を用いることで、熱延コイルのコイル置台や地面と接していない外周部分の冷却速度を大きくし、接している部分との冷却速度差を小さくすることができるので、コイル外周ピッチの材質変動(組織変動)を防止し、板厚変動を解消することができる。
【0045】
なお、上記図13の冷却装置においても、図10〜図12と同様、コイル置台や地面に接している部分と接していない部分のコイル表面温度をサーモビュア等の温度監視装置7で測定し、その測定結果に基づき、両部分の温度(冷却速度)が等しくなるよう、冷媒の噴射量を制御するようにするのが好ましい。
【0046】
また、熱延コイルの外周全ての冷却速度を制御したい場合には、図13のように、冷却手段10を熱延コイルの外周に沿って多数設置する必要があり、設備費が高くなるという問題がある。そこで、図14に示すように、コイルに対して相対移動可能な外枠フレーム8と、コイルの高さに応じて昇降可能な昇降枠9とを備え、この昇降枠9に冷却手段10を設置し、これをコイル外周面に沿って循環移動するようにしてやれば、1台の冷却手段でもコイルの外周全ての部分について冷却速度を均一に制御することが可能となる。
【0047】
そして、本発明の冷却方法を実施するに当っては、上記図10〜図14の冷却装置を複数台作製し、コイル搬送装置の進行方向に設置すれば、複数のコイルを同時に均一冷却することが可能となる。同様に、これらの冷却装置を複数台作製し、コイル置場に設置すれば、多数のコイルを均一冷却することができる。
なお、上述した図10〜図14の冷却装置は、本発明に係る冷却装置の数例を示したものであり、本発明はそれらの冷却装置に限定されるものではなく、例えば、加熱手段5と冷却手段10の両方を併せもつ冷却装置としてよい。
【実施例】
【0048】
C:0.08mass%、Si:1.5mass%、Mn:2.3mass%、P:0.008mass%およびS:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1200℃に加熱後、仕上圧延終了温度を890℃、巻取温度を500℃とする熱間圧延を行い、板厚:2.6mmの熱延コイルとした後、冷却ヤードに搬送し、室温まで冷却させた。
なお、この際、コイル搬送装置およびコイル置場に設置した、加熱手段を有する図10の本発明に係る冷却装置を用いて、コイル巻き取り終了後〜10時間後まで冷却した。
その後、上記熱延コイルを酸洗した後、タンデム式連続圧延機を用いて板厚:1.6mmに冷間圧延した。このときの冷間圧延機出側の板厚チャートを図15に示した。
この図から、板厚変動幅が±20μm以内に収まっており、コイルに巻き取り直後の熱延コイルを本発明の冷却方法(冷却装置)を用いて冷却することにより、ほぼ完全にコイル周方向の材質が均一化され、板厚変動を防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1:熱延コイル
2:コイル搬送装置(コイル台車)
3:コイル置台
4:地面
5、6:加熱手段
7:温度監視装置(温度計)
8:外枠フレーム
9:昇降枠
10:冷却手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する方法であって、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を等しくなるよう冷却することを特徴とする熱延コイルの冷却方法。
【請求項2】
上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法であることを特徴とする請求項1に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項3】
上記加熱する手段は、ヒーター加熱、赤外線加熱、火炎加熱および誘導加熱から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項4】
上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法であることを特徴とする請求項1に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項5】
上記強制冷却する手段は、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水から選ばれる1種または2種以上の冷媒を噴射する手段であることを特徴とする請求項4に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項6】
熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度差に基づいて、加熱投入熱量あるいは冷媒噴射量を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で熱延コイルを冷却することを特徴とする熱延コイルの製造方法。
【請求項8】
上記熱延コイルは、C:0.05〜0.20mass%、Si:1.0〜2.5mass%およびMn:1.0〜2.5mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする請求項7に記載の熱延コイルの製造方法。
【請求項9】
上記熱延コイルは、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板用の母材であることを特徴とする請求項7または8に記載の熱延コイルの製造方法。
【請求項10】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、
上記搬送装置のコイル置台下方および/またはコイル置場の地面に加熱手段を設けてなることを特徴とする熱延コイルの冷却装置。
【請求項11】
上記に加熱手段に加えてさらに、
熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、
その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、
その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な加熱手段を有することを特徴とする請求項10に記載の熱延コイルの冷却装置。
【請求項12】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、
熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、
その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、
その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な冷却手段を有することを特徴とする熱延コイルの冷却装置。
【請求項13】
熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と、接していない部分の温度を監視し、両部分の温度差に基づいて加熱投入熱量または冷媒噴射量を制御する機能を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の熱延コイルの冷却装置。
【請求項1】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する方法であって、上記熱延コイルの外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の冷却速度を等しくなるよう冷却することを特徴とする熱延コイルの冷却方法。
【請求項2】
上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接していない部分に対して接している部分を加熱する方法であることを特徴とする請求項1に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項3】
上記加熱する手段は、ヒーター加熱、赤外線加熱、火炎加熱および誘導加熱から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項4】
上記冷却速度を等しくする方法は、熱延コイル外周面のコイル置台または地面と接している部分に対して接していない部分を強制冷却する方法であることを特徴とする請求項1に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項5】
上記強制冷却する手段は、冷却空気、冷却フォグおよび冷却水から選ばれる1種または2種以上の冷媒を噴射する手段であることを特徴とする請求項4に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項6】
熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と接していない部分の温度差に基づいて、加熱投入熱量あるいは冷媒噴射量を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱延コイルの冷却方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で熱延コイルを冷却することを特徴とする熱延コイルの製造方法。
【請求項8】
上記熱延コイルは、C:0.05〜0.20mass%、Si:1.0〜2.5mass%およびMn:1.0〜2.5mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする請求項7に記載の熱延コイルの製造方法。
【請求項9】
上記熱延コイルは、引張強さが980MPa以上の高強度鋼板用の母材であることを特徴とする請求項7または8に記載の熱延コイルの製造方法。
【請求項10】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、
上記搬送装置のコイル置台下方および/またはコイル置場の地面に加熱手段を設けてなることを特徴とする熱延コイルの冷却装置。
【請求項11】
上記に加熱手段に加えてさらに、
熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、
その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、
その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な加熱手段を有することを特徴とする請求項10に記載の熱延コイルの冷却装置。
【請求項12】
熱間圧延した熱延鋼帯を巻き取った直後の熱延コイルを、上記熱延コイルを搬送する搬送装置および/またはコイル置場において冷却する冷却装置であって、
熱延コイルに対して相対移動する外枠フレームと、
その外枠フレームに設けられたコイルの高さに応じて昇降する昇降枠と、
その昇降枠に設けられたコイル外周面に沿って移動可能な冷却手段を有することを特徴とする熱延コイルの冷却装置。
【請求項13】
熱延コイル外周面のコイル置台または地面に接する部分と、接していない部分の温度を監視し、両部分の温度差に基づいて加熱投入熱量または冷媒噴射量を制御する機能を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の熱延コイルの冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−81990(P2013−81990A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224441(P2011−224441)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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