説明

熱式湿度センサ

【課題】湿度を高精度に検出できる熱式湿度センサを得る。
【解決手段】熱式湿度センサは、温度センサ4、5、6、7と、温度センサ4、5、6、7の出力に基づいて湿度に応じた信号を出力する湿度検出手段と、温度センサ4、5、6、7の周囲を流れる空気流量を計測する空気流量計測手段80、82と、空気流量計測手段80、82により計測した空気流量を基に、湿度検出手段の出力信号を補正する補正手段を有する。これにより、湿度の誤差要因となる空気流の影響を取り除き、湿度の計測精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱式湿度センサに係り、例えば自動車のような振動の多い環境で使用される熱式湿度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
湿度センサとして、空気中の水蒸気量によって高温体からの放熱量が変化することを利用した熱式湿度センサがある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−184576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱式湿度センサは、発熱体から空気へ放出される熱量が空気流によって変化するので、センサ上を流れる空気流が湿度計測の誤差要因となり、湿度の計測精度を向上させることが困難であるという課題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、湿度計測の精度を向上させることができる熱式湿度センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の熱式湿度センサは、温度センサと、温度センサの出力に基づいて湿度に応じた信号を出力する湿度検出手段と、温度センサの周囲を流れる空気流量を計測する空気流量計測手段と、空気流量計測手段により計測した空気流量を基に、湿度検出手段の出力信号を補正する補正手段とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温度センサの周囲を流れる空気流量を計測して、その空気流量に基づいて湿度検出手段の出力信号を補正するので、湿度計測の誤差要因となる空気流による影響を取り除くことができ、湿度計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【図2】図1のA−A’線断面図。
【図3】図1のA−A’線断面における温度分布図。
【図4】第1の参考例の熱式湿度センサの駆動回路。
【図5】第2の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【図6】第2の参考例の熱式湿度センサの駆動回路図。
【図7】第3の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【図8】第4の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【図9】第1の実施例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【図10】第2の実施例の熱式湿度センサの検出素子の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、本発明の前提として、第1の参考例である熱式湿度センサを図1、2、3、4により説明する。なお、図1は第1の参考例の熱式湿度センサの検出素子1の平面図、図2は図1のA−A’線断面図、図3は図1のA−A’線断面における温度分布図、図4は第1の参考例の熱式湿度センサの駆動回路図である。
【0009】
まず、本熱式湿度センサの検出素子1の構成を図1、2により説明する。検出素子1はシリコンやセラミック等の熱伝導率の良い材料で構成される平板基板16に絶縁膜14、15を形成し、平板基板16を裏面からエッチングすることで絶縁膜14、15の下部に空間を形成し、平板基板16にダイアフラム2を形成する。ダイアフラム2は絶縁膜14、15で構成される薄膜の架橋構造体であり、絶縁膜14、15の熱伝導率が小さいことからダイアフラム2は熱絶縁部として機能する。
【0010】
ダイアフラム2には、所定の温度に加熱されるループ状の発熱体である発熱抵抗体3と、発熱抵抗体3に囲まれた内側に温度センサとして温度検出抵抗体4、5、6、7が形成されている。発熱抵抗体3は、温度検出抵抗体4、5、6、7の周りを取り囲むように、矩形状に連続して配置された4本の直線状部分3a〜3dからなり、直線状部分3aと3cが設けられている位置、および、直線状部分3bと3dが設けられている位置が、それぞれ、温度センサを間に介在させて互いに対向する2つの発熱位置となる。
【0011】
なお、発熱抵抗体3は、ポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、電流を流すことで発熱すると共に抵抗体の温度に応じて抵抗体自体の温度が変化する。
【0012】
また、温度検出抵抗体4、5、6、7もポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、これらの温度検出抵抗体4、5、6、7の抵抗値が温度により変化することを利用して、温度検出抵抗体4、5、6、7の配置された場所(中間位置)の温度を検出する。
【0013】
温度検出抵抗体4、5、6、7はブリッジ回路(温度検出手段)を構成しており、発熱抵抗体3の内側で発熱抵抗体3の近傍の温度と発熱抵抗体3の内側の中央部の温度との温度差を検出できるようにしている。ここでは、一方の温度センサである温度検出抵抗体4、7を、他方の温度センサである温度検出抵抗体5、6よりも、発熱抵抗体3の直線状部分3b、3dに近づけて配置している。
【0014】
また、発熱抵抗体3は接続端子8、13を介して外部に電気的に接続され、温度検出抵抗体4、5、6、7で構成されるブリッジ回路は接続端子9、10、11、12を介して外部に電気的に接続される。
【0015】
次に、本参考例の湿度センサの基本動作について説明する。本湿度センサでは発熱抵抗体3を所定の温度に加熱する。加熱温度は高い程、湿度に対する感度は高くなるが、発熱抵抗体3が劣化するので300〜500℃が適当である。
【0016】
発熱抵抗体3を所定の温度に加熱すると、図1のA−A’線断面における温度分布は図3の様になる。つまり、発熱抵抗体3の配置された場所(発熱位置)の温度は一定に保たれ、発熱抵抗体3で囲まれた内側の温度は空気への放熱によって温度低下が生じ、図3に示す様な温度分布が生じる。
【0017】
また、空気への放熱は空気中の湿度の量に応じて変化するので、この温度分布の変化を温度検出抵抗体4、5、6、7によって検出することで湿度に応じた信号を取り出すことができる。なお、温度分布の計測は温度検出抵抗体4、5、6、7の配置された4箇所の温度の温度差を温度検出抵抗体4、5、6、7で構成したブリッジ回路で検出する。
【0018】
ここで、温度検出抵抗体4、7は発熱抵抗体3の近傍に配置し、温度検出抵抗体5、6は発熱抵抗体3で囲まれた部分の中央付近に配置して、発熱抵抗体3で囲まれた部分の温度分布の変化に応じて温度検出抵抗体4、5、6、7で構成したブリッジ回路の出力電圧が変化する様にした。
【0019】
本参考例では、発熱抵抗体3の配置された場所の温度は一定に保たれるので発熱抵抗体3の内側の温度分布は空気への放熱のみで決まる。つまり、発熱抵抗体3の内側の温度分布は発熱抵抗体3から平板基板16への放熱の影響を受けない。したがって、発熱抵抗体3から平板基板16への放熱量を減らす為にダイアフラム2の支持部を狭くする必要が無く、ダイアフラム2の支持部の強度を向上させることができる。このことから、自動車の様な振動の大きい環境で使用してもダイアフラム2の支持部の破損を防ぐことができ、信頼度の高い湿度センサを提供することができる。
【0020】
また、本参考例では湿度に応じた出力を温度検出抵抗体4、5、6、7で構成したブリッジ回路の出力電圧から得るので、自動車応用で良く使用されるレシオメトリック特性(出力電圧が電源電圧に比例する特性)が容易に得られる。
【0021】
また、湿度に応じた出力を温度検出抵抗体4、5、6、7で構成したブリッジ回路から得ることで、従来例に比べて抵抗体の抵抗変動に対して特性変動を小さく抑えることができる。これは、従来例の様に発熱抵抗体の発熱量を求める方法では発熱抵抗体の抵抗値が変化するとセンサ出力に直接影響するが、本参考例の様にブリッジ回路の出力電圧で湿度に応じた信号を得る場合、全てのブリッジ抵抗が同様に変化すると仮定できる場合、センサ特性への影響は小さいからである。
【0022】
次に、本熱式湿度センサの駆動回路を図4により説明する。本駆動回路は発熱抵抗体3を駆動するトランジスタ17と、発熱抵抗体3と共にブリッジ回路を構成する固定抵抗18、20、21と、発熱抵抗体3と固定抵抗18、20、21で構成されるブリッジ回路の出力電圧を増幅してトランジスタ17を駆動する差動増幅器19と、温度検出抵抗体4、5、6、7により構成されるブリッジ回路の出力電圧を増幅する差動増幅器22により構成される。
【0023】
本熱式湿度センサの発熱抵抗体3と固定抵抗18、20、21で構成されるブリッジ回路の出力電圧は発熱抵抗体3の温度が変化すると発熱抵抗体3の抵抗値が変化するので発熱抵抗体3の温度に応じて変化する。従って、発熱抵抗体3と固定抵抗18、20、21で構成されるブリッジ回路の出力電圧から発熱抵抗体3の温度を検出し、発熱抵抗体3の温度が一定になる様にトランジスタ17を制御して発熱抵抗体3に流す電流を制御する(温度制御手段)。
【0024】
なお、固定抵抗18、20、21に適当な温度係数を設けたり、発熱抵抗体3に並列あるいは直列に固定抵抗を接続することにより、周囲温度の変化に応じて発熱抵抗体3の温度を変化させることで、本熱式湿度センサの感度を変化させて本熱式湿度センサの温度特性を改善することもできる。
【0025】
次に、本発明の第2の参考例である熱式湿度センサを図5、6により説明する。なお、図5は第2の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図、図6は第2の参考例の熱式湿度センサの駆動回路である。
【0026】
まず、本熱式湿度センサの検出素子23の構成を図5により説明する。なお、検出素子23の断面構造は第1の参考例で示した検出素子1と同様にシリコンやセラミック等の熱伝導率の良い材料で構成される平板基板に絶縁膜を形成し、平板基板を裏面からエッチングすることで絶縁膜の下部に空間を形成し、平板基板にダイアフラム24を形成したものである。
【0027】
ダイアフラム24には、所定の温度に加熱されるループ状の発熱体である発熱抵抗体26と、発熱抵抗体26の傍に配置され発熱抵抗体26の温度に応じて抵抗値の変化する発熱体温度検出抵抗体27と、発熱抵抗体26に囲まれた内側に配置された温度検出抵抗体(温度センサ)28と、ダイアフラム24の外側の平板基板上に配置され周囲温度に応じて抵抗値の変化する周囲温度検出抵抗体(周囲温度センサ)25が形成される。
【0028】
発熱抵抗体26は、温度検出抵抗体28の周りを取り囲むように、矩形状に連続して配置された4本の直線状部分26a〜26dからなり、直線状部分26aと26cが設けられている位置、および、直線状部分26bと26dが設けられている位置が、それぞれ、温度センサを間に介在させて互いに対向する2つの発熱位置となる。
【0029】
なお、発熱抵抗体26は、ポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、電流を流すことで発熱する。また、発熱体温度検出抵抗体27、温度検出抵抗体28、周囲温度検出抵抗体25もポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、これらの抵抗値は温度により変化する。
【0030】
また、発熱抵抗体26は接続端子31、34を介して外部に電気的に接続され、発熱体温度検出抵抗体27は接続端子32、33を介して外部に電気的に接続され、温度検出抵抗体28は接続端子35、36を介して外部に電気的に接続され、周囲温度検出抵抗体25は接続端子29、30を介して外部に電気的に接続される。
【0031】
次に、本熱式湿度センサの駆動回路を図6により説明する。本駆動回路は発熱抵抗体26を駆動するトランジスタ37と、発熱体温度検出抵抗体27と周囲温度検出抵抗体25と固定抵抗39、40により構成されるブリッジ回路と、発熱体温度検出抵抗体27と周囲温度検出抵抗体25と固定抵抗39、40により構成されるブリッジ回路の出力電圧を増幅してトランジスタ37を駆動する差動増幅器38と、発熱体温度検出抵抗体27と温度検出抵抗体28と固定抵抗40、41により構成されるブリッジ回路の出力電圧を増幅する差動増幅器42により構成される。
【0032】
本熱式湿度センサの駆動回路では、発熱体温度検出抵抗体27と周囲温度検出抵抗体25と固定抵抗39、40により構成されるブリッジ回路の出力電圧から発熱抵抗体26の温度と周囲温度との温度差を検出し、発熱抵抗体26の温度が周囲温度と一定の温度差になる様にトランジスタ37を制御して発熱抵抗体26へ流す電流を制御する(温度制御手段)。
【0033】
なお、固定抵抗39、40に適当な温度係数を設けたり、発熱体温度検出抵抗体27に並列あるいは直列に固定抵抗を接続することにより、周囲温度の変化に応じて発熱抵抗体26の加熱温度を変化させることで、本熱式湿度センサの感度を変化させて本熱式湿度センサの温度特性を改善することも本駆動回路では可能である。
【0034】
また、固定抵抗39、40を周囲温度検出抵抗体25と同様に平板基板上に配置しても本駆動回路は正常に動作する。また、発熱部から空気への放熱量は空気の温度と発熱部の温度に比例するので本駆動回路の様に周囲温度と発熱抵抗体26の温度差を一定にすることで良好な温度特性を得ることができる。
【0035】
また、本熱式湿度センサの駆動回路では発熱体温度検出抵抗体27と温度検出抵抗体28と固定抵抗40、41により構成されるブリッジ回路の出力電圧から発熱抵抗体26の温度と温度検出抵抗体28の温度との差を検出することで湿度に応じた信号を得る。
【0036】
これは、本参考例の湿度センサにおいても、第1の参考例の湿度センサと同様に、湿度に応じて発熱抵抗体26に囲まれた内側の温度分布が変化するので、この温度分布の変化を温度検出抵抗体28の温度と発熱体温度検出抵抗体27の温度を発熱体温度検出抵抗体27と温度検出抵抗体28と固定抵抗40、41により構成されるブリッジ回路で検出することができる。
【0037】
本参考例の湿度センサでも発熱抵抗体26の配置された場所(中間位置)の温度は一定に保たれるので、発熱抵抗体26の内側の温度分布(発熱抵抗体26によって囲まれる領域の温度分布)は、空気への放熱のみで決まる。つまり、発熱抵抗体26の内側の温度分布は、発熱抵抗体26から平板基板への放熱の影響を受けない。
【0038】
したがって、発熱抵抗体26から平板基板への放熱量を減らす為にダイアフラム24の支持部を狭くする必要が無く、ダイアフラム24の支持部の強度を強くすることができる。このことから自動車の様な振動の大きい環境で使用してもダイアフラム24の支持部の破損を防ぐことができ、信頼度の高い湿度センサを提供することができる。
【0039】
次に、本発明の第3の参考例である熱式湿度センサを図7により説明する。なお、図7は第3の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図である。
【0040】
まず、本熱式湿度センサの検出素子43の構成を図7により説明する。なお、検出素子43の断面構造は、第1の参考例で示した検出素子1と同様にシリコンやセラミック等の熱伝導率の良い材料で構成される平板基板に絶縁膜を形成し、平板基板を裏面からエッチングすることで絶縁膜の下部に空間を形成し、平板基板にダイアフラム46を形成したものである。
【0041】
ダイアフラム46には、所定の温度に加熱される発熱抵抗体47、52と、発熱抵抗体47、52に挟まれた内側に配置された温度検出抵抗体48、49、50、51が形成されており、温度検出抵抗体48、49、50、51はブリッジ回路を構成している。発熱抵抗体47、52は、温度検出抵抗体48、49、50、51を間に介在させて対をなし、互いに平行に延在するように設けられている。そして、互いに離間する距離よりも、平行に延在する長さの方が長くなるように設けられている。
【0042】
なお、発熱抵抗体47、52は、ポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、電流を流すことで発熱する。また、温度検出抵抗体48、49、50、51もポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、これらの抵抗体の抵抗値は温度により変化する。
【0043】
また、発熱抵抗体47は接続端子53、54を介して外部に電気的に接続され、発熱抵抗体52は接続端子57、58を介して外部に電気的に接続され、温度検出抵抗体48、49、50、51により構成されるブリッジ回路も接続端子55、56、44、45を介して外部に電気的に接続される。
【0044】
次に、本熱式湿度センサの基本動作を説明する。本湿度センサでは発熱抵抗体47、52を所定の温度に加熱する。発熱抵抗体47、52を所定の温度に加熱すると、図7のA−A’線断面における温度分布は第1の参考例で説明した図3の様になる。つまり、発熱抵抗体47、52の配置された場所(発熱位置)の温度は一定に保たれ、発熱抵抗体47、52で挟まれた内側の温度は空気への放熱によって温度低下が生じ、図3に示す様な温度分布が生じる。
【0045】
また、空気への放熱は空気中の湿度の量に応じて変化するので、この温度分布の変化を温度検出抵抗体48、49、50、51によって検出することで湿度に応じた信号を取り出すことができる。
【0046】
なお、本参考例では図7に示す左右2方向のみに発熱体47、52を配置した。したがって、発熱体47、52の間隔に対して、ダイアフラム46の図7での上下方向の長さを長くし、図7の上下方向への放熱が温度分布に影響を与えない様にした。温度分布の計測は、温度検出抵抗体48、49、50、51の配置された4箇所の温度の温度差を温度検出抵抗体48、49、50、51で構成したブリッジ回路で検出する。
【0047】
ここで、温度検出抵抗体48、51は発熱抵抗体47、52の近傍に配置し、温度検出抵抗体49、50は発熱抵抗体47、52で挟まれた部分の中央付近に配置して、発熱抵抗体47、52で挟まれた部分の温度分布の変化に応じて温度検出抵抗体48、49、50、51で構成したブリッジ回路の出力電圧が変化する様にした。
【0048】
本参考例でも発熱抵抗体47、52の配置された場所の温度は一定に保たれるので、発熱抵抗体47、52で挟まれた内側の温度分布は空気への放熱のみで決まる。つまり、発熱抵抗体47、52で挟まれた内側の温度分布は、発熱抵抗体47、52から平板基板への放熱の影響を受けない。
【0049】
したがって、発熱抵抗体47、52から平板基板への放熱量を減らす為にダイアフラム46の支持部を狭くする必要が無く、ダイアフラム46の支持部の強度を向上させることができる。
【0050】
このことから、自動車の様な振動の大きい環境で使用してもダイアフラム46の支持部の破損を防ぐことができ、信頼度の高い湿度センサを提供することができる。なお、本参考例では、図7に示す左右2方向のみに発熱体47、52を配置したので、温度検出抵抗体48、49、50、51で構成したブリッジ回路からの配線を図7の上下方向両側に引き出すことができ、ダイアフラム46上の配線を容易にできる。
【0051】
次に、本発明の第4の参考例である熱式湿度センサを図8により説明する。なお、図8は第4の参考例の熱式湿度センサの検出素子の平面図である。
【0052】
まず、本熱式湿度センサの検出素子59の構成を図8により説明する。なお、検出素子59の断面構造は、第1の参考例で示した検出素子1と同様にシリコンやセラミック等の熱伝導率の良い材料で構成される平板基板に絶縁膜を形成し、平板基板を裏面からエッチングすることで絶縁膜の下部に空間を形成し、平板基板にダイアフラム61を形成したものである。
【0053】
ダイアフラム61には所定の温度に加熱される発熱抵抗体62、66と、発熱抵抗体62、66に挟まれた内側に配置された熱電対群63、64、65が形成されている。発熱抵抗体62、66は、それぞれ略コ字形を有しており、熱電対群63、64、65の周りを取り囲むように、互いに向き合って配置されている。
【0054】
なお、発熱抵抗体62、66は、ポリシリコン薄膜、白金薄膜、ニッケル合金薄膜、モリブデン薄膜などで作られた抵抗体であり、電流を流すことで発熱する。また、熱電対群63、64、65は、ポリシリコンと金属(例えば白金、ニッケル合金、モリブデン)とで作られており、温度差により出力電圧が変化する。
【0055】
なお、熱電対群63、64、65は感度を上げる為に複数の熱電対を直列に接続した。また、発熱抵抗体62は接続端子67、68を介して外部に電気的に接続され、発熱抵抗体66は接続端子70、71を介して外部に電気的に接続され、熱電対群63、64、65は接続端子60、69を介して外部に電気的に接続される。
【0056】
次に、本熱式湿度センサの基本動作を説明する。本湿度センサでは発熱抵抗体62、66を所定の温度に加熱する。発熱抵抗体62、66を所定の温度に加熱すると、図8のA−A’線断面における温度分布は第1の参考例で説明した図3の様になる。つまり、発熱抵抗体62、66の配置された場所(発熱位置)の温度は一定に保たれ、発熱抵抗体62、66で挟まれた内側の温度は空気への放熱によって温度低下が生じ、図3に示す様な温度分布が生じる。
【0057】
また、空気への放熱は空気中の湿度の量に応じて変化するので、この温度分布の変化を熱電対群63、64、65によって検出することで、湿度に応じた信号を取り出すことができる。なお、本参考例では熱電対群63、64、65によって温度分布を検出するので、温度検出抵抗を使用するのに比べて自己発熱を低減することができ、より高精度に湿度を検出することができる。
【0058】
次に、本発明の第1の実施例である熱式湿度センサを図9により説明する。なお、図9は第1の実施例の熱式湿度センサの検出素子の平面図である。
【0059】
まず、本熱式湿度センサの検出素子72の構成を図9により説明する。なお、検出素子72の図9の下側に配置した湿度検出部は第1の参考例と同一である。本実施例では図9の上側に熱式空気流量検出部を配置した。本実施例の熱式空気流量検出部は湿度検出部と同一のダイアフラム79に配置することでチップサイズの小型を図った。
【0060】
本実施例の空気流量検出部は発熱抵抗体81と、発熱抵抗体81の両側に配置した温度検出抵抗体80、82(上流側温度検出抵抗体と下流側温度検出抵抗体)と、接続端子73、74、75、76、77、78により構成される。本実施例の空気流量検出部は湿度検出部と同一の断面構造で構成できるので、製造プロセスを変更すること無しに、同一のダイアフラム79に配置することが可能である。熱式空気流量計の従来例には特開2008−2896号公報に示された技術などがある。なお、本実施例では、温度検出抵抗体80を上流側温度検出抵抗体とし、温度検出抵抗体82を下流側温度検出抵抗体として説明したが、これに限定されず、空気の流れに対する検出素子72の配置の向きによって例えば逆になる場合もある。
【0061】
次に、本発明の第2の実施例である熱式湿度センサを図10により説明する。なお、図10は第2の実施例の熱式湿度センサの検出素子の平面図である。
【0062】
まず、本熱式湿度センサの検出素子89の構成を図10により説明する。なお、検出素子89の湿度検出部は第1の参考例と同一である。本実施例では発熱抵抗体3の両側に温度検出抵抗体83、84(上流側温度検出抵抗体と下流側温度検出抵抗体)と、接続端子85、86、87、88を追加して、発熱抵抗体3の両側の温度差を検出することで空気流量に応じた信号を得るものである。熱式空気流量計の従来例には特開2008−2896号公報に示された技術などがある。なお、本実施例では、温度検出抵抗体83を上流側温度検出抵抗体とし、温度検出抵抗体84を下流側温度検出抵抗体として説明したが、これに限定されず、空気の流れに対する検出素子89の配置の向きによって例えば逆になる場合もある。
【0063】
また、ここで得られる空気流量に応じた信号は湿度センサの出力信号を補正する為に使用できる。熱式湿度センサでは検出素子89上を流れる空気流が誤差要因となる。これは発熱体から空気へ放熱される熱量が空気流よって変化するからである。この影響を取り除くために本実施例の湿度センサでは発熱抵抗体3の両側に温度検出抵抗体83、84を設けて空気流量を計測し、この信号を基に補正可能とした。なお、本検出素子89で得られた空気流量の計測信号はそのまま空気流量信号としても利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1‥検出素子、2‥ダイアフラム、3‥発熱抵抗体(発熱体)、4‥温度検出抵抗体、
5‥温度検出抵抗体、6‥温度検出抵抗体、7‥温度検出抵抗体、8‥接続端子、
9‥接続端子、10‥接続端子、11‥接続端子、12‥接続端子、13‥接続端子、
14‥絶縁膜、15‥絶縁膜、16‥平板基板、17‥トランジスタ、
18‥固定抵抗、19‥差動増幅器、20‥固定抵抗、21‥固定抵抗、
22‥差動増幅器、23‥検出素子、24‥ダイアフラム、
25‥周囲温度検出抵抗体、26‥発熱抵抗体(発熱体)、27‥発熱体温度検出抵抗体、28‥温度検出抵抗体、29‥接続端子、30‥接続端子、31‥接続端子、
32‥接続端子、33‥接続端子、34‥接続端子、35‥接続端子、
36‥接続端子、37‥トランジスタ、38‥差動増幅器、39‥固定抵抗、
40‥固定抵抗、41‥固定抵抗、42‥差動増幅器、43‥検出素子、
44‥接続端子、45‥接続端子、46‥ダイアフラム、47‥発熱抵抗体(発熱体)、
48‥温度検出抵抗体、49‥温度検出抵抗体、50‥温度検出抵抗体、
51‥温度検出抵抗体、52‥発熱抵抗体(発熱体)、53‥接続端子、54‥接続端子、55‥接続端子、56‥接続端子、57‥接続端子、58‥接続端子、
59‥検出素子、60‥接続端子、61‥ダイアフラム、62‥発熱抵抗体(発熱体)、
63‥熱電対群、64‥熱電対群、65‥熱電対群、66‥発熱抵抗体(発熱体)、
67‥接続端子、68‥接続端子、69‥接続端子、70‥接続端子、
71‥接続端子、72‥検出素子、73‥接続端子、74‥接続端子、
75‥接続端子、76‥接続端子、77‥接続端子、78‥接続端子、
79‥ダイアフラム、80‥上流側温度検出抵抗体、81‥発熱抵抗体(発熱体)、
82‥下流側温度検出抵抗体、83‥上流側温度検出抵抗体、84‥下流側温度検出抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、
該温度センサの出力に基づいて湿度に応じた信号を出力する湿度検出手段と、
該温度センサの周囲を流れる空気流量を計測する空気流量計測手段と、
該空気流量計測手段により計測した空気流量を基に、前記湿度検出手段の出力信号を補正する補正手段と、
を有することを特徴とする熱式湿度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱式湿度センサであって、
前記空気流量計測手段は、発熱抵抗体と、該発熱抵抗体の空気流れ方向上流側に設けられた上流側温度検出抵抗体と、前記発熱抵抗体の空気流れ方向下流側に設けられた下流側温度検出抵抗体と、
を有することを特徴とする熱式湿度センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱式湿度センサであって、
前記湿度検出手段と前記空気流量計測手段は、基板に設けられたダイアフラム上に配置されていることを特徴とする熱式湿度センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の熱式湿度センサであって、
前記湿度検出手段と前記空気流量計測手段は、同一のダイアフラム上に配置されていることを特徴とする熱式湿度センサ。
【請求項5】
請求項3に記載の熱式湿度センサであって、
前記湿度検出手段と前記空気流量計測手段は、前記空気流れ方向に対して直交する方向に互いに離れて配置されていることを特徴とする熱式湿度センサ。
【請求項6】
請求項3に記載の熱式湿度センサであって、
前記発熱抵抗体は、前記温度センサの周りを取り囲むループ形状を有していることを特徴とする熱式湿度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−177702(P2012−177702A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90695(P2012−90695)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2009−198159(P2009−198159)の分割
【原出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】