説明

熱成型用シートの製造方法、熱成型用シート、及び成型物

【課題】 導電性に優れた成型物が得られる熱成型用シートの製造方法と熱成型用シート、及び該シートを用いて製造される成型物を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂シート上に、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銅粉末含有塗膜を形成した後、銅粉末含有塗膜上に無電解銅めっきを施すことで、熱成型用シートが得られる。該シートを用いて熱成型を行うことにより、導電性が良好な成型物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れた成型物が得られる熱成型用シートの製造方法と熱成型用シート、及び該シートを用いて製造される成型物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波を利用した通信機器等の電子機器が広範囲に普及しているが、その一方で、不要な電磁波による機器の誤動作や故障等が問題となっている。電磁波対策材料としては、外部からの電磁波の進入防止と発生電磁波の外部への伝播防止を目的とする電磁波遮蔽材と、電磁波を吸収する電磁波吸収材がある。
【0003】
携帯電話では筐体外部を電磁波遮蔽するシールド構造が求められている。シールド構造には筐体に金属ケースを用いる方法あるいは樹脂筐体への導電塗装、導電性物質の蒸着やスパッタリング、電解めっきや無電解めっき等により導電層を形成する方法等が知られている。しかしながら、金属ケースは重量が大きいため、軽量化が要求される携帯電話では不適当である。また、電子機器の搭載が急増している自動車においても電磁波遮蔽は課題となっているが、重量化は好ましくない。
【0004】
特許文献1にはシート上に銅とニッケルの薄層をスパッタリングで設けた、成型性に優れたシールドボックス用シートが開示されている。しかしながら、スパッタリングを行うには高価な真空装置が必要であり、またバッチ処理であるため、生産性が悪い。
【0005】
特許文献2にはシールドボックスとしてステンレス鋼等の金属粉を混合したエンジニアリングプラスチックが開示されている。しかし、金属粉の混合だけでは良好な電磁波遮蔽性を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−5297号公報
【特許文献2】特開2000−196278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、導電性が優れるだけでなく熱成型性や生産性が優れた熱成型用シートの製造方法を提供することである。本発明の好ましい実施態様においては、ロール・ツ・ロール方式で熱成型物を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 熱可塑性樹脂シート上に、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銅粉末含有塗膜を形成した後、銅粉末含有塗膜上に無電解銅めっきを施すことを特徴とする熱成型用シートの製造方法。
(2) 基材上に、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銅粉末含有塗膜を形成し、熱可塑性樹脂シート上に銅粉末含有塗膜を転写した後、銅粉末含有塗膜上に無電解銅めっきを施すことを特徴とする熱成型用シートの製造方法。
(3)(1)又は(2)に記載の製造方法により製造される熱成型用シート。
(4) (3)に記載の熱成型用シートを熱成型することにより製造される成型物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱成型用シートの製造方法は、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて銅粉末含有塗膜を熱可塑性樹脂シート上に形成後、該塗膜上に無電解銅めっき処理を施す工程を含む。無電解銅めっき処理により、銅粉末含有塗膜中の銅粉末の表面酸化層を還元でき、銅粒子間の連結が起こる。その結果、銅粉末含有塗膜の導電性が向上する。たとえ、熱成型により銅めっき層にクラックが発生しても、銅粉末含有塗膜により導電性を保持できる。また、高価な真空装置を使わず、ロール・ツ・ロールで連続処理ができるため、経済性や生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いる銅ペーストは、銅粉末、バインダー樹脂及び硬化剤を溶剤中に分散させたものである。銅粉末は加熱処理により粒子間が融着するものでも融着しないものでもよい。銅粉末は、銅を主成分とする金属粒子、又は銅の割合が80重量%以上の銅合金であり、該銅粉末の表面が銀で被覆された金属粉であってもよい。該銅粉末への銀の被覆は完全に被覆しても、一部の銅を露出させて被覆したものでもよい。また、銅粉末はその粒子表面に導電性を損なわない程度の酸化被膜を有していてもよい。銅粉末の形状は、略球状、樹枝状、フレーク状等のいずれでも使用できる。銅粉末又は銅合金粉末としては、湿式銅粉、電解銅粉、アトマイズ銅粉、気相還元銅粉等を用いることができる。
【0011】
本発明で用いる銅粉末は平均粒径が0.01〜20μmであることが好ましい。銅粉末の平均粒径が20μmより大きいと、銅ペーストでの粒子の沈降が激しいため、塗布作業性が悪くなる。また、平均粒径が0.01μmより小さい場合には分散が困難となることや、乾燥時の加熱による微粒子間融着に起因する歪の発生により、熱可塑性樹脂シートとの接着性が低下することが起こる。銅粉末の平均粒径が0.02μm〜15μmの範囲がより好ましく、更に好ましくは0.04〜4μm、更により好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径の測定は、透過電子顕微鏡、電界放射型透過電子顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡のいずれかにより粒子100個の粒子径を測定して平均値をもとめる方法による。本発明で用いる銅粉末は平均粒径が0.01〜20μmであれば、異なる粒径のものを混合して使用してもかまわない。
【0012】
本発明で用いる銅ペーストに使用される溶剤は、バインダー樹脂を溶解するものから選ばれ、有機化合物であっても水であってもよい。溶媒は、銅ペースト中で銅粉末を分散させる役割に加えて、分散体の粘度を調整する役割がある。有機溶媒の例として、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アミド等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いる銅ペーストに使用されるバインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいはアクリル等の樹脂が挙げられる。樹脂中にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合等を有するものが、銅粉末の安定性から、好ましい。本発明で使用されるバインダー樹脂は数平均分子量が1万以上のものが好ましく、より好ましくは2万以上のものである。数平均分子量が1万以上のものを用いることにより、硬化剤との反応後でも熱成型性を保持できる。数平均分子量の上限は銅ペーストの粘度等から、20万が望ましい。本発明で使用されるバインダー樹脂のガラス転移温度は50℃以下が好ましく、特に好ましくは30℃以下のものを用いる。ガラス転移温度が50℃を超えると、熱成型時の温度を高くしても成型性が不十分になることがある。
【0014】
本発明で用いる銅ペーストには、硬化剤を配合する。本発明の銅ペーストに使用できる硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。硬化剤はバインダー樹脂に応じて選ばれるが、ポリエステルとポリイソシアネート化合物、ポリエステルとブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリエステルと熱硬化フェノール樹脂が特に好ましい。硬化剤の使用量はバインダー樹脂の1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0015】
本発明で用いる銅ペーストは、銅粉末とバインダー樹脂との割合が95:5〜80:20重量比の範囲であることが好ましく、92:8〜85:15重量比の範囲が好ましい。銅粉末とバインダー樹脂の比率が95:5よりも銅粉末が多くなると、バインダー樹脂の分子量やガラス転移温度を最適化しても熱成型性が悪化する。また、銅粉末とバインダー樹脂との比率が80:20よりも銅粉末が少なくなると、無電解銅めっきでのめっき膜の付着性が悪くなり、導電性が悪化する。
【0016】
本発明で用いる銅ペースト中の溶剤量は銅ペーストの塗布作業性や目標とする塗布厚み等から決定される。例えば、銅ペーストの固形分濃度を30〜90重量%の範囲で設定することが望ましい。
【0017】
本発明で用いる銅ペーストは、スルフォン酸塩基やカルボン酸塩基等の金属への吸着能力のある官能基を含有するポリマーをバインダー樹脂として含んでもよい。さらに分散剤を配合してもかまわない。分散剤としてはステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、燐酸エステル、スルフォン酸エステル等が挙げられる。分散剤の使用量は有機バインダーの0.1〜5重量%の範囲が好ましい。
【0018】
次に、銅ペーストの製造方法について述べる。
【0019】
銅ペーストを得る方法としては、粉末を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、銅粉末とバインダー樹脂溶液、硬化剤、必要により追加の溶媒からなる混合物を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
【0020】
本発明で用いる熱可塑性樹脂シートの素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂等の非晶性シート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィンシート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートのブレンド樹脂、ポリカーボネートとABS樹脂のブレンド樹脂等が挙げられる。特に耐熱性や機械的物性からポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンが望ましい。
【0021】
本発明で用いる熱可塑性樹脂シートは熱成型性とめっき適性を悪化させない範囲でシリカやカーボンブラック等の無機フィラーをブレンドしたものでも良く、表面にハードコート層や、接着性改善層、あるいは、耐溶剤性向上層を設けたものでも良い。さらに、熱可塑性樹脂シートはコロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理等の表面処理を行ったものでもよい。
【0022】
本発明で形成される銅粉末含有塗膜は乾燥後の厚みが10μm以下、特に5μm以下とすることが望ましい。厚みが10μmを超えると、樹脂硬化時に発生する硬化歪等により、接着性が低下することがある。厚みが0.01μm以下では熱成型時による変形により、接着性が低下することがある。
【0023】
本発明で用いる銅ペーストを用いて、熱可塑性樹脂シート上に銅粉末含有塗膜を形成する方法を説明する。なお、銅粉末含有塗膜は熱可塑性樹脂シート上に全面に設けられたものでも、導電回路あるいは網目状等のパターン物でもかまわない。また、銅粉末含有塗膜は熱可塑性樹脂シートの片面に設けても、両面に設けてもかまわない。
【0024】
熱可塑性樹脂シート上に銅ペーストを用いて銅粉末含有塗膜を形成するには、銅ペーストをフィルムやシートに塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。印刷あるいは塗布により形成された塗膜から加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、銅粉末含有塗膜を形成することができる。一般的に、この段階での銅粉末含有塗膜は1Ω・cm以上の比抵抗で、導電回路や電磁波遮蔽に必要な導電性は得られていない。
【0025】
ポリカーボネートのように耐溶剤性の乏しい熱可塑性樹脂シートの場合には、直接シート上に塗布するのではなく、耐溶剤性を有する素材でできた基材上に銅ペーストを塗布乾燥して設けた銅粉末含有塗膜をシートに転写することによって、本発明に用いられる熱可塑性樹脂シート上に銅粉末含有塗膜を形成した熱成形用シートを得ることができる。転写方法は、公知の転写方法が使用可能であり、例えば、圧着により転写する方法、ラミネーターで転写する方法、プレス機で転写する方法、サーマルヘッドで熱転写する方法などを用いることができる。
【0026】
本発明に係る熱成型用シートは、熱可塑性樹脂シート上に形成した銅粉末含有塗膜の上に無電解銅めっき処理をすることにより製造される。無電解銅めっきにより形成される金属皮膜は銅であるが、無電解銅めっき後、無電解ニッケルめっきあるいは電解ニッケルめっきを施す等の二種以上の金属を積層してもよい。また、無電解銅めっき後、電解銅めっきを施してもかまわない。
【0027】
無電解銅めっきは、熱可塑性樹脂シート上に銅粉末含有塗膜を形成した後、銅イオンを含有する無電解めっき液に浸漬することにより行われる。無電解銅めっき液としてはホルマリンを還元剤とし、酒石酸塩、エチレンジアミン四酢酸あるいはクワドロールを錯化剤とする系、あるいは還元剤として、ホルマリンの代わりにグリオキシル酸を使うホルマリンフリー系、次亜リン酸塩を還元剤とし錯化剤としてクエン酸、緩衝剤としてホウ酸を使った次亜リン酸塩系等が挙げられる。これらのうちホルムアルデヒドが還元剤として汎用的に使われる。ホルムアルデヒドの還元力はpHが12以上、めっき浴温度が50℃以上で強くなる。従って、ホルムアルデヒドを使用する無電解銅めっきの高速タイプは、一般的に高アルカリかつ高温の条件で行われる。本発明の銅ペーストを用いた銅粉末含有塗膜は特に無電解銅めっきの高速タイプに適している。プラスチックのめっきにおいて、めっき付着性を改善するために汎用的に用いられるパラジウム/スズ等による触媒化工程は、本発明では必ずしも必要としない。
【0028】
無電解銅めっき後、ベンゾトリアゾール化合物、イミダゾール系化合物、長鎖脂肪酸化合物等の防錆剤をめっき面にコートしてもかまわない。
【0029】
本発明においては前記熱成型用シートを熱成型することにより成型物を製造する。熱成型は真空成型や圧空成型とも呼ばれる成型方法である。真空成型では、所定の大きさの熱可塑性樹脂シートは両端をクランプで保持されながら上下からヒーターで加熱される。加熱により軟化したシートは金型上に移動され、金型とシートの間の空気を抜きとり、真空にすることで金型に密着させて成型される。圧空成型では軟化したシートに空気圧をかけ、金型に密着させて成型する。空気の代わりにプラグを使って金型に密着させて成型してもよい。
【実施例】
【0030】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例や比較例に記載された評価結果は以下の方法によって測定したものである。
【0031】
比抵抗:三菱化学社製低抵抗率計ロレスターGPとASPプローブを用いて測定した。電気抵抗値は比抵抗で記載した。
【0032】
接着性:成型物上の導電性塗膜あるいはめっき層にセロハンテープを張り合わせて、急速に剥離した。
○---導電性塗膜あるいはめっき層で剥離が起こらない。
△---剥離が認められるが、剥離はセロハンテープ張り合わせ部の10%未満。
×---剥離が認められ、剥離はセロハンテープ張り合わせ部の10%以上。
【0033】
電磁遮蔽性:KEC法により周波数100MHzで測定した。
【0034】
<用いた銅粉末>
銅粉末1:酒石酸ナトリウムを錯化剤として含む硫酸銅(II)水溶液を水酸化ナトリウムによりpH12.5に調整することにより、水酸化銅を生成させた。系内に無水ブドウ糖を投入し、水酸化銅を亜酸化銅に還元後、さらに水和ヒドラジンにより銅粉末まで還元した。これらの反応は50〜60℃で行った。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径0.25μmの球状の粒子である。
銅粉末2:亜酸化銅を、グリシンを錯化剤として含有する水に懸濁させ、水和ヒドラジンにより銅粉末まで還元した。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径1.5μmの球状の粒子である。
銅粉末3:三井金属鉱業社製アトマイズ銅粉「MA−COJ」(平均粒径4.2μ)
【0035】
実施例 1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み50μmの東洋紡績社製二軸延伸ポリエステルフィルム「ソフトシャインA1597」上に、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布し、120℃で5分間、熱風乾燥して銅粉末含有塗膜を得た。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.25μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.1部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
【0036】
得られた銅粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムを下記の組成の無電解銅めっき浴に浸漬した。めっき浴温度は55℃、pHは水酸化ナトリウムにより12.5に調整し、浸漬時間は15分間として無電解銅めっきを実施した。銅粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムをめっき浴から取り出し、水洗浄、乾燥を行った。厚み計で測定したところ、銅粉末含有塗膜上には2μmのめっき層が形成されており、比抵抗は3.8μΩ・cmであった。
無電解銅めっき浴
硫酸銅5水和物 3.8部
エチレンジジアミン4酢酸 35部
ホルマリン(ホルムアルデヒド37%水溶液) 8.1部
水 500部
【0037】
得られためっき層付き熱成型用シートを、めっき層を内側として熱成型した。熱成型は浅野研究所製輻射加熱方式真空圧空成型機FKS−0631−20型にて開口部120mm×120mm、底部100mm×100mm、深さ20mmのトレー状の金型を取り付け、あらかじめ余熱した後、金型温度90℃にて真空成型を行った。成型物の外観を観察したところ、成型性は良好であった。成型物の比抵抗、接着性及び電磁波遮蔽性を測定した。結果を表−1に示す。
【0038】
実施例 2〜4
実施例1で用いた銅粉末とバインダー樹脂の比率を表−1に記載したものに変更したこと以外は実施例1と同様にして成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
【0039】
実施例 5〜6
実施例1で用いた銅粉末を表−1に記載したものに変更したこと以外は実施例1と同様にして成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
【0040】
実施例 7〜10
実施例1で用いたバインダー樹脂を表−1に記載したものに変更したこと以外は実施例1と同様にして成型物を得た。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。実施例8、9ではバインダー樹脂としてレゾルシノール骨格を有するグリコールを原料の一部として使ったポリエステルを用い、p−トルエンスルフォン酸を触媒とするフェノール樹脂硬化を用いた。また、実施例8、9は銅ペーストの乾燥を150℃で5分間行った。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
【0041】
実施例 11
実施例1で作成した銅ペーストを、二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に乾燥後の厚みが5μmになるように塗布し、120℃で5分間乾燥させた。銅粉末含有塗膜面を、厚み100μmのポリカーボネートシートと重ね、120℃で10分間圧着後、ポリプロピレンフィルムを剥離し、ポリカーボネート上に銅粉末含有層を転写した。その後、実施例1と同様に無電解銅めっきと熱成型を行った。得られた成型物の評価結果を表−1に示す。
【0042】
比較例1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み50μmの東洋紡績社製二軸延伸ポリエステルフィルム「ソフトシャインA1597」上に、乾燥後の厚みが5μmになるように塗布し、120℃で5分間、熱風乾燥して銅粉末含有塗膜を得た。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.25μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.1部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
【0043】
得られた銅粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムにめっきを施すことなく、銅粉末含有塗膜を内側にして、熱成型を施した。熱成型は浅野研究所製輻射加熱方式真空圧空成型機FKS−0631−20型にて開口部120mm×120mm、底部100mm×100mm、深さ20mmのトレー状の金型を取り付け、あらかじめ余熱した後、金型温度90℃にて真空成型を行った。成型物の外観を観察したところ、成型性は良好であった。成型物の比抵抗、接着性、電磁波遮蔽性を測定した。結果を表−1に示す。
【0044】
比較例2
実施例1と同様にして、ただし、ブロックイソシアネートを使わずに銅ペーストを得た。実施例1と同様にして、銅粉末含有塗膜付きポリエステルフィルムを下記の組成の無電解銅めっき浴に浸漬した。めっき浴温度は55℃、pHは水酸化ナトリウムにより12.5に調整した。浸漬時間が5分経過すると、銅粉末含有塗膜のポリエステルフィルムからの剥離が起こった。
無電解銅めっき浴
硫酸銅5水和物 3.8部
エチレンジジアミン4酢酸 35部
ホルマリン(ホルムアルデヒド37%水溶液) 8.1部
水 500部
【0045】
比較例3
厚み100μmのポリカーボネートシートにクロム酸/硫酸溶液中でのエッチング工程及びパラジウム/スズのコロイドによる触媒化工程を施した後、下記の組成の無電解銅めっき浴に浸漬した。めっき浴温度は55℃、pHは水酸化ナトリウムにより12.5に調整した。厚み計で測定したところ、得られた銅粉末含有塗膜には2μmのめっき層が形成されており、比抵抗は2.2μΩ・cmであった。
無電解銅めっき浴
硫酸銅5水和物 3.8部
エチレンジジアミン4酢酸 35部
ホルマリン(ホルムアルデヒド37%水溶液) 8.1部
水 500部
【0046】
得られためっき層付き熱成形用シートを、めっき層を内側として熱成型した。熱成型は浅野研究所製輻射加熱方式真空圧空成型機FKS−0631−20型にて開口部120mm×120mm、底部100mm×100mm、深さ20mmのトレー状の金型を取り付け、あらかじめ余熱した後、金型温度90℃にて真空成型を行った。成型物の外観を観察したところ、めっき層に亀裂や剥離が認められた。成型物の評価結果を表−1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によって得られる熱成型用シートは導電性が優れるだけでなく、熱成型性や生産性が良好である。該熱成型用シートを用いた成型物は、電磁波遮蔽材料、導電回路付きの成型物等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シート上に、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銅粉末含有塗膜を形成した後、銅粉末含有塗膜上に無電解銅めっきを施すことを特徴とする熱成型用シートの製造方法。
【請求項2】
基材上に、銅粉末、バインダー樹脂、硬化剤及び溶剤を主成分とする銅ペーストを用いて塗膜を形成し乾燥させることにより銅粉末含有塗膜を形成し、熱可塑性樹脂シート上に銅粉末含有塗膜を転写した後、銅粉末含有塗膜上に無電解銅めっきを施すことを特徴とする熱成型用シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造される熱成型用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の熱成型用シートを熱成型することにより製造される成型物。

【公開番号】特開2013−28114(P2013−28114A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166665(P2011−166665)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】