説明

熱成形用の装置と成形方法

【課題】 熱成形の賦形から離型の過程において、賦形体を高速で加熱し、あるいは高速で加熱すると共に冷却行程に賦し、特に賦形前の予熱シート温度以上の高温で熱処理を行って離型する熱成形を高速で効率良く連続的に行うことのできる熱成形装置と成形方法を提供する。
【解決手段】
熱可塑性樹脂シートの加熱板による予熱と圧空成形を可能に装備した熱成形装置において、冷却手段を成形型周辺に配置して、加熱板の上昇離反後に成形型の上部に対して上記冷却手段を進退させるか、又は成形型を上記冷却手段の下部に進退可能にして、上記冷却手段から冷却媒体を噴射して上記樹脂シートの賦形体を冷却するように構成し、更に成形型として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により成る表面層と、この表面層の背後に接してこの層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段を含む構成のものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑樹脂のシート又フイルムを用いた熱成型品の製造方法に関るものであり、熱成形中の賦形体を高速で加熱及びまたは冷却することに関し、更には結晶性熱可塑性樹脂の熱成形の過程において、樹脂シートの予熱温度より高温の熱処理を行い、耐熱性、透明性等、機械強度等の特性の高い熱成形品を高速で効率よく製造することに関し、なかんずく結晶性樹脂の延伸シートを用いてこの熱成形を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
熱成形法は予熱された熱可塑性樹脂シートまたはフイルムを成形型に押圧または真空引きにて賦形し離型する方法であるが、通常は賦形体は低温の金型で冷却された状態で離型される。金型材料としてはアルミニウム、亜鉛合金などの軽量で加工性がよく、かつ熱伝導率の良い材料が使われ自然放熱で連続成形されることも多い。しかしそれでも特に温度調節を行いたい場合は成形型内部に設けたジャケットに熱媒体を通じて冷却することも行われる。一方、木材、プラスチックのような安価で加工し易い材料が使用されることがあるがこうしたものは、耐久性がなく、また温度調節が難しく熱蓄積などが問題となるため連続大量生産には向かず、枚葉成形機でのサンプル試作あるいは少量生産などに使用が限られる。
そして、特殊な成形方法として成形サイクル中に賦形体を任意に加熱したり冷却しようとするときは、上記のジャケットに通す熱媒を途中で熱媒を変更したり、あるいは賦形体を別に温度調整した金型へ移しかえたりすることが行われる。しかしこのような方法では所望の熱処理を行った成形品を高速で連続的に効率よく製造することはできない。
【0003】
特別な加熱あるいは冷却を必要とする具体的な熱成形方法として、(1)特公昭56−7855号はポリエステルシートを1軸延伸配向させて加熱収縮させたシートを用いて熱成形する方法で、成形時に熱風を用いるなどにより熱固定する方法が開示されているが、熱処理に非常に長い時間がかかっており実用的ではない。また、(2)特公平5−45412号では、特定条件で2軸延伸し熱収縮させたシートを用いて熱成形と熱処理を行う方法が開示されている.ここでは、加熱型へ移し替える方法、熱風、熱水、赤外線になどよる加熱法が提案されているが、具体的には記載されておらず、単純にこれらを実行してもその効果はなく、またあったとしても高速で効率のよい実用的な方法とはならない。(3)特公昭60−031651号も特定のポリエステル延伸シートを熱成形し熱処理する方法で、加熱された金型で成形することは示されているが、金型あるいは成形品を冷却して離型することについては触れられていない。しかし、このような材料の熱処理成形には成形体を少なくとも熱処理温度より低い温度に冷却して離型することが望ましいが、知られた方法でこれを行うとすれば、金型自体を電熱ヒーターで予め加熱しておいて成形直後に金型のジャケットに通水して冷却する方法、あるいは金型マニホールドに高温熱媒、低温熱媒を交互に通ずる方法などが考えられる。しかしこうした方法では高速で連続成形を行うことはできない。また(4)特許2532730号では、非延伸の結晶性PETシートを加熱された雌型で成形しこれを低温の雌型に移して冷却し離型する方法が示されているが、金型移行に際しては、成形品の変形、位置ずれ、シワの発生が問題となり、またそのような操作ができる特殊な専用成形装置をつくる必要がある。
また(5)特公平7−102608号は、高温の雌型で成形し、これに嵌合する低温の雄型に引き取って冷却し離型する方法を示しているが、これも金型移行の方法と云ってよく(4)同様に成形の変形やシワが問題となり、又オフセットやアンダーカットのある成形品には適用し難い。またこうした例とは別に、(4)(5)のようないわゆるCPETの成形では最初から高温の金型で成形すると、金型面で成形材料の滑りが悪いため波や凹凸などの不均一模様が出やすいというような問題もあり、これを避けるために最初低温金型で成形し高温金型に移行するプロセスも知られているが、これもやはり煩雑である。
また(6)特許4044876号の開示は、シート予熱時にサグ(加熱時のシートの垂れ下がり)が問題となりやすい樹脂材料の熱成形に関するもので、このような材料では通常、多孔の加熱板に材料シートを短時間吸着させて後、そこから離して賦形がなされる。この方法の場合は、熱板吸着時の傷あとなどを回避しようとするもので、加温された弱い空気の圧力でシートを下支えしながら加熱し、次いで熱板を通過させた空気で追加予熱しながら圧空成形するもので、賦形後に予熱温度以上の温度で熱処理することも、積極的に冷却して離型することも必要ではなく、これを行う示唆もされていない。なお、本発明の主対象である延伸シートを成形では、予熱時に収縮作用を起こすのでシートを固定してこれを行えばサグの問題は発生せず、引例の作用機構は必要としない。
また(7) 特許4057487号の開示する方法は、結晶性樹脂の熱成形に関し、加熱板に接触させて予熱されたシートを、熱板を通過する高温空気と成形金型にて圧空賦形し、次いで別に準備した冷却空気噴射の手段を運び込んで冷却するものであるが、この加熱板はシート予熱適温に調整されており、背後から加熱された空気が供給されて加熱圧空がなされる。この場合、加熱気体は加熱板中を通る導管内で冷やされ、また熱処理には非常な高温度気体を通す必要があの、その場合加熱板温度を局部的にして不均一にし、また材料シートを局部的に過熱し良好な成形に支障きたしやすく、また高温気体からの熱は容易に金型に逸散して短時間に容易にシートを高温にできず、高速成形ができない。
また(8)本発明者は、本発明に関わりのある5件の先行出願先行っている。これら関しては、本文の関連箇所で適宜に紹介説明することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭56−7855号公報
【特許文献2】特公平5−45412号公報
【特許文献3】特公昭60−031651号公報
【特許文献4】特許2532730号公報
【特許文献5】特公平7−102608号公報
【特許文献6】特許4044876号公報
【特許文献7】特許4057487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。その主な目的は、熱成形の賦形から離型までの過程において、賦形体を高速で加熱しそして必要により高速で冷却し、特に賦形前の予熱シート温度以上の高温で熱処理を行って離型する熱成形を高速で効率良く連続的に行うことができ、また良好な状態の成形品を得ることができる熱成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)樹脂シートの加熱板による予熱と圧空成形を可能にした熱成形装置において、冷却手段を成形型周辺に配置して、加熱板の上昇離反後に成形型の上部に対して上記冷却手段を進退させるか、又は成形型を上記冷却手段の下部に進退可能にして、上記手段から冷却媒体を噴射して賦形体を冷却するように構成し、更に成形型として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により成る表面層と、この表面層の背後に接してこの層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段を含む構成のものを用いる熱可塑性樹脂シートの成形装置を提供するものである。
なお、本発明において、成形型の成形用全表面を形成している表面最近の層を表面層と称するものとする。
なお、本発明における上記の加熱板は、材料シートの接触予熱と圧空気体の送出の両機能を有する平板状部材であり、一般には単に熱板とも呼ばれる。
なお、本発明においては、「賦形」ならびに「賦形工程」は成形の中の一部の操作を示し、上記の「賦形体」は、成形型に保持された状態にある成形品を意味するものとする。なお、上記の表面層は、成形型の表層部であって成形用表面を形成する層を意味する。また、上記の展開面は、表面層の厚み断面にたいする広がり断面を意味し、下層との界面も外部表面も含まれるものする。
なお、上記の「表面層」は成形型の成形用表面を形成する概ね均一な厚み
有する層である。この成形型の表面層の材料の熱浸透率は10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。また表面層の厚みは0.04mm以上であることが好ましい。
なお、加熱板と成形型の位置関係は相対的なものであり、上記の「加熱板の上昇」は「成形型の降下」と同義であって成形型を降下させてもよく、いずれでも本発明に含まれる。また加熱板と成形型の関係を倒置して、加熱板を下に成形型上に倒置させてもよく、またそれぞれを横転して対置させて水平移動させてもよく、何れも本発明に含まれる。
【0007】
(2)上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層と熱浸透率が表面層のそれより大きな材料からなる背後層を構成に含むものであることを特徴とする上記(1)に記載の成形装置を提供する。
なお、背後層の熱浸透率は表面層のそれより2倍以上であるこが好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。また、背後層の熱浸透率は3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。またこの成形用表面層の厚みは0.04mm以上であることが必要であり、また0.06mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましい。又同厚みは30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることが更に更に好ましい。
なお、表面層、背後層ともそれぞれが層として上記の制約を満たす限りにおいて単層であってもよく多層であってもよい。
【0008】
(3)上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層と、熱浸透率が表面層のそれよりも大きな材料からなる背後層から成り、更に背後層に温調手段が設けられていること特徴とする上記(1)または(2)に記載の成形装置を提供する。
なお、背後層の好ましい厚み範囲、好ましい熱浸透率の範囲は上記(2)の記載と同じである。
なお、表面層、背後層ともそれぞれが層として上記の制約を満たす限りにおいて単層であってもよく多層であってもよい。
なお、温調手段は上記背後層の内部にあってもよくまた外部に付加されてもよい。また上記温調手段は加熱温調手段であることが好ましい。
【0009】
(4)上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層の背後の略全面に直接して加熱温調手段を展開したことを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の成形装置を提供する。
【0010】
(5)上記加熱板において、加熱板温度以上の高温の加熱気体を送出するように装備されていることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の成形装置を提供する。
【0011】
(6)樹脂シートの賦形後に、上記加熱板と成形型に保持された賦形体で形成する閉鎖空間から、外部へ空気を任意に逸散させながら上記加熱板から気体送出を行う手段を備えていることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の成形装置を提供する。
【0012】
(7)賦形後の熱可塑性樹脂シートに向けて揮発性液体を噴射する手段を備えたことを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の成形装置を提供する。
なお、揮発性液体を分割噴射する手段は、上記の進退可能な冷却手段に単独で搭載してもよく、また気体噴射手段と共に搭載してもよい。しかし、上記冷却手段に冷却媒体として気体噴射手段が搭載されている場合は、揮発性液体を分割噴射する手段は別の任意の場所に設置してもよい。なお、揮発性液体を分割噴射する手段は、気体噴射手段と併用されることは好ましい。なお、分割噴射(以下単に液体の噴射と呼ぶ場合もある)には、液適噴射、噴霧、気化噴射の何れも含まれるものとする。
【0013】
(8)上記(1)から(7)のいずれかに記載の成形装置を用いた樹脂シートの成形方法であって、樹脂シートの予熱工程と、賦形工程と、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を遂行する熱可塑性樹脂シートの成形方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成形装置の主要部を示す断面図である。
【図2】本発明の別の成形装置の主要部を示す断面図である。
【図3】本発明の成形装置の別の加熱板を示す断面図である.
【図4】本発明の成形装置の別の冷却部を示す断面図である.
【図5】本発明の成形装置の別の冷却部を示す断面図である。
【図6】本発明の成形装置の成形型を示す断面図である。
【図7】本発明の成形装置の別の成形型を示す断面図である。
【図8】本発明の成形装置の別の成形型を示す断面図である。
【図9】本発明の別の成形装置の主要部を示す断面図である。
【図10】本発明の成形装置を使用した熱成形プロセスのモデル温度パター ンを示す図である。
【図11】本発明の成形装置を使用した熱成形プロセスのモデル温度パター ンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<成形装置の全体構成>
本発明の成形装置は、熱成形機である真空圧空成形機、若しくは圧空成形機、若しくは真空成形機を構成するものである。真空賦形機能を持たない圧空成形機の場合は、少なくとも冷却工程で、賦形体を成形型へ吸引固定する機構を付加して構成させることが望ましい。プレス機構を有しない真空成形機の場合は、圧空賦形の圧力能力はなくても、加熱板または成形型を上下可動できる機構を付加して構成させることができる。なお、本発明では、樹脂シートの予熱は加熱板との接触による直接加熱で行われ、加熱板は気体噴射の可能な公知のどのようなものも利用できる。しかし、樹脂シートの予熱は赤外線オーブン、熱風オーブン等の間接加熱で行い、加熱板はその気体機能のみ利用するように構成してもよい。
本発明ではプレス機の底板に特定構成の成形型を固定し、その直上の天板に後述の構造の加熱板を固定し、両方又はそのどちらかが上下可動すなわち両者の接触と離反が可能なようにして、更に上記成形型の周辺に冷却手段を配置し、加熱板の離反移動後に成形型の上部に対して進退し、冷却媒体を噴射して賦形体を冷却できるようにする。成形型は後述する特定の構造と加熱する手段を有するものを用いる。
成形用の熱可塑性樹脂シートは、成形型と加熱板との間に導入され、次いで加熱板に押圧または吸引されて予熱され、次いで圧空賦形とそれに続く熱処理がなされる。その後、加熱板の離反移動した空間に後述の冷却手段が進入して賦形体を冷却して離型させる。図1及び図2は上記の装置構成の例を示すものである。 図1の構成では常温の気体を用いて圧空成形がなされるが、図2の構成では外部で加熱された高温圧縮気体を導入して圧空成形がなされる。各図に基づく説明は後に譲る。
なお、加熱板あるいは成形型の移動は、必ずしも垂直な上下動でなくてもよく、それぞれ任意に斜め方から接合して離反させてもよく、又少し上昇させて水平移動させてもよく、また特定の軌道で接合して離反してもよい。
なお、加熱板と成形型の位置関係は相対的なものであり、加熱板の上昇は成形型の降下と同義であって成形型を降下させてもよく、また両者の関係を倒置して加熱板を下に成形型上に配置してもよい。また、特異な態様として、プレス機を横転させてもよく、重量の大きい成形型等を、軽快に開閉でき好ましい方式として利用できる。
なお、特別な態様として、上記のように冷却手段を成形型上部に移動する代わりに、賦形体を保持した成形型を冷却手段の下部に移動させてもよい。
なお、本発明を構成する熱成形機は、短尺の材料シートを一枚ずつ成形する枚葉成形機であってもよく、また長尺の材料シートを一方の端から順次に成形する連続成形機でもよい。しかし、後者であることが特に好ましく、本発明の特徴を発揮して高速で効率的な繰り返し成形を可能にする。
本発明の発明者(以下本発明者と称する)は同発明者の先行出願である特願2010−118555に開示している成形型を用いた具体的な装置構成を特願2011−41294として出願している。
本発明は、特願2010−118555に開示している成形型、及び新たに手続き中の出願に開示している新規の成形型を用いた別の装置構成を考案したものである。また、本発明とは別に本発明者は、同様の成形型を用いた別の装置構成を考案し出願手続き中である。
【0016】
本発明の上記装置構成例の1つを図1に示す。10は最もよく使われる公知の形態の加熱板である。11本体ボディであり、炭素鋼、ステンレス鋼などで作られる。40は冷却媒体を噴出する冷却手段、100は成形素材の樹脂シートである。60は本発明に用いる特別な成形型構成の1つであり、本明細書の「問題解決の手段」の欄の(2)に述べたものである。60は、61の表面層、62の背後層からなる成形型を、ヒーターカートリッジ65を内蔵するプレート66に固定した構成のものである。本図は、樹脂シートが導入されたところで、予熱前の状態を示したものである。この成形型及び装置構成の各要素については、後述のそれぞれの欄で詳述する。
【0017】
本発明の上記装置構成の別の例を図2に示す。20は上記とは別の加熱板で、本体ボディ21にヒーターカートリッジ22を内包し、高温高圧気体の導入路23及び送出口24が設けられている。本図では導入される高温高圧気体の生成手段は省略されている。40は冷却手段の1例で、41は冷却媒体導入路、42は空洞、43は噴出孔を示す。冷却手段には<冷却手段について>の欄で説明する。成形型は図7に示す構成の加熱手段を内蔵したもので、これを固定板66に固定したものである。
なお、本図は樹脂シートの加熱板との接触による予熱と、高温気体による圧空と昇温が行われた後に、加熱板の上昇後に成形型群の上部に進入した冷却手段40による冷却工程を示したものである。
【0018】
<成形型について>
成形型は、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により成る表面層と、この表面層の背後に接してこの層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段を含む構成のものを用いる。
このような成形型の一部については、本発明者を発明者とする先行出願の特願2010−118555に開示しているものでる。また成形型の他の一部については、本発明者を発明者として別途出願手続き中のものである。
熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料は、プラスチックス、セラミックス、選ばれた少数の種類の金属材料等を挙げることができ、これらは熱成形の金型として通常使われるアルミニウム材、亜鉛合金材等よりも小さな値のものである。参考のために、幾つかの材料の熱浸透率を表1に示す。この表の記載は材料を限定するものではなく、表に記載のないものも任意に利用してよい。
なお、表面層材料の上記の熱浸透率は、10以下であることが好ましく、5以下であることが更に好ましい。またこの表面層の厚みは0.04mm以上であることが好ましく、また0.06mm以上であることが更に好ましく、0.1mm以上であることがまた更に好ましい。又同厚みは30mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが更に好ましく、5mm以下であることがまた更に好ましい。
なお、成形型は、熱成形型の通常の方法として賦形時の排気を行う微細孔が設けられ、真空吸引できるように装備される。
なお、上記熱浸透率の意味と各種材料のデータについては後に「本発明の内容についての補足説明」の欄と表1で詳述する。そして、また上記の数値限定の意義にいても同欄で説明する。
【0019】
(1)このような成形型の代表的な態様として、上記所定の熱浸透率を有する材料により表面層を形成させ、更に、表面の背後をなす背後層を表面層より大きな熱浸透率を有する材料で形成させた構成のものである。本発明の装置で気体噴射等による加熱あるいは冷却を繰り返した場合、表面層が部分的に熱が蓄積し、過熱あるいは、過冷となりやすい。この態様では、表面層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段は背後層が担い、この層の大きな熱浸透率により面方向の熱移動が促進される。しかしこの態様で成形型自体に加熱手段を付加しない場合は、赤外線を照射するか、加熱気体を噴射して賦形体を加熱昇温する手段を備えることが必要であり、これにより賦形体を経由して表面層が加熱される。
なお、背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくかつ、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍
以上であることが特に好ましい。なお、背後層は表面層の全背面に接触しておりばよく、厚みはあるいは形状等は限定するものではない。またこれを単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にすることができる。
【0020】
上記(1)の態様の具体例は図9の成形型構成60に示されるものである。それは、61の表面層、62の背後層(背後体)、63の真空排気孔、64の排気通路からなる成形型を、加熱温調手段を有しない固定板66に固定し、成形型収納ボックス67に収納した構成である。この成形型は図6に示されている成形型のから温調手段を除去したものである。具体的には、アルミニウム材A5052の背後層の上に、0.5mmのエポキシ樹脂層をつくり、背後層と表面層を通じ成形面に微細な熱電対先端を露出させて製作した成形型は高性能である。用いたA5052材とエポキシ樹脂のb値はそれぞれ17.4と0.67であり、背後層は表面層に均等に熱を伝え又表面層で発生した温度の不均一を是正する働きを十分になすこができる。この他には例えば、鉄など等の熱浸透率の比較的に大きい材料を背後層とし、ポリイミド(b値0.36)、PEEK、エポキシ樹脂など高耐熱樹脂、あるいはジルコニヤなどの熱浸透率の比較的に小さな材料により表面層を形成させればよい。それぞれの熱浸透率は表1に示すように、本発明に該当するものである。
【0021】
上記(1)の態様の別の具体例を図 6に示す。 成形型50は、51の表面層、52の蓄熱均一化層、53の真空排気孔、54の真空排気通路、55の保持体(背後体)から構成されている。より具体的には、上記と同じ表面層の背後に、銅(b値33.9)、アルミニウム(b値23.3)などの熱浸透率の非常に大きな材料により比較的に薄い背後層すなわち蓄熱均一化層形成させ、その背後を保持体(背後体)で保持する。この保持体(背後体)は、出来うるかぎり熱浸透率が小さい材料であることが好ましく、例えばエンジニヤリングプラスチック、選ばれたセラミックス材料を用いるとよい。そして、場合によってはその背後体はないことが好ましい。こうした構成で蓄熱均一化層は前の成形サイクルの加熱気体噴射で得た熱を蓄積して、次のサイクルで全面に温度均一化しながら表面層を昇温する働きする。この態様は、定義の上では、上記(1)の中の特殊な態様であるということができる。
【0022】
(2)成形型の代表的な別の態様として、上記所定の熱浸透率を有する材料により表面層を形成させ、表面層の背後をなす背後層を表面層より大きな熱浸透率を有する材料で形成させ、この背後層の内部または外部に温調手段を付加させた構成を示すことができる。
背後層の熱浸透率は、表面層のそれより大きくかつ、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることか更に更に好ましい。また表面層のそれより2倍以上であることが好ましく、10倍以上であることが特に好ましい。なお、背後層の厚みは限定するものではなく、また一定の厚みあるいは形状に限定するものではない。またこれを単一材料の層に限定するものではなく任意の多層にしてもよい。
背後層の大きな熱浸透率により、熱を均等化して表面層に伝え、また成形過程で発生した表面層の温度不均衡を均等化することができる。
なお温調手段は流体熱媒体、ジュール熱発熱ヒーター等の利用など公知の任意の方法を採用することができる。なお、上記温調手段は加熱温調手段であることが好ましい。
【0023】
上記(2)の態様の具体例を図7に示す。成形型60は、表面層61と背後層62から構成され、63は真空排気孔、64は排気通路、65は加熱温調用の熱媒通路を示している。より具体的には、アルミニウム材5052の背後層の上に、0.5mmのエポキシ樹脂層をつくり、背後層と表面層を通じ成形面に微細な熱電対先端を露出させて製作した成形型は高性能である。
なお、熱媒通路65などの加熱手段はこの位置に設けず、成形型を固定する固定板に任意の加熱手段を設けるようにしてもよい。
【0024】
(3)成形型の上記とは別の態様として、上記所定の熱浸透率を有する材料により表面層を形成させ、その背後の略全面に直接して加熱温調手段を展開した構成とする。この場合の表面層の構成は材料、寸法形状ともに上記態様と同じであり、望ましい構成も同じである。一方加熱手段の更なる背後については背後物体の有無、あるいは材質、形状ともに特に制約するものではない。
【0025】
上記(3)の態様の具体例を図8に示す。成形型本体70は、71の表面層、75の発熱層、72の背後層からなり、73は真空排気孔、74は排気通路、76はリード電線を示す。より具体的なものの1つは、セラミックスの背後層とし、その上にステンレス薄膜とPEEK樹脂薄膜からなる面状発熱体を敷き詰めて貼り、更にその上に表面層として0.2mmのPEEK樹脂フイルムを圧空賦形し、そのままの状態で本体と共に380℃に加熱焼成して製作することができる。
【0026】
<加熱板と付帯装置について>
加熱板は、成形型または成形型群の略全面を覆う寸法と形状を有する金属板等の物体で、これに加熱機構を有していて樹脂シートに直接に接してしてこれを予熱することができ、更に外部から導入した気体を憤出させて圧空賦形を行う機能を有する本発明の構成要素である。このような機能を要するならばどのようなものもでもよく、公知のどのようなものも利用することができる。
1)加熱板の公知の最も通常的な態様例では、金属板等の物体で、これには加熱手段が付加されており、又外部から導入した圧縮気体を、内部で分岐して全面に通路を巡らして広げ、無数の細孔を通じて表面から噴出する構成となっている。この構成で、成形材料の樹脂シートを加熱板に押圧又は吸引接触させて賦形適温に予熱し、続いて圧空賦形または真空賦形する。この場合、導入される圧縮気体は公知の通常方法では非加熱のものが用いられるが、加熱したものを用いても良い。しかし加熱されたもの導入しても、加熱板に熱を奪われ加熱板温度以上の高温気体を排出することは難しい。圧縮気体は、空気、窒素、二酸化炭素などを圧縮したものが用いられる。
この具体的な構造は図1の一部として示されている。10の加熱板は、本体11,加熱ヒーター12、圧縮気体の導入管13、圧縮気体の分配通路14、噴射孔兼吸引孔15、接触予熱面16から構成されている。予熱際しては15を通じて樹脂シートを吸引吸着し、予熱に続く圧空賦形時には15から圧縮気体を噴射するようになっている。このような加熱板は、金属板にマニホールドと多数の空気噴出孔を穿って製作することができる。また金属多孔体等を利用して空気噴出孔を形成させることもできる。
【0027】
2)加熱板の上記とは別の態様例として、金属板等の物体に加熱手段を付加し、更にこの物体を貫通する通路を設け、外部で加熱された圧縮空気を導いて通し、圧空成形できるようにした構成を示すことができる。 このような構成では、成形材料の樹脂シートは加熱板に押圧又は吸引密着されて予熱温度に予熱され、続いて高温の圧縮気体の送出により圧空賦形と加熱がなされる。
【特許文献7】の特許4057487号公報に開示されているものはこの態様のものである。しかし、ここに開示された装置では、加熱気体の排出口付近では熱板温度が上がり、又部分的に集中して加熱気体が噴射されるため、賦形体に部分的なマークをつけやすく、望ましい高温の加熱気体は用いることはできないなどから温度等の諸条件設定は制約をうける。本発明に置いて用いる成形型はこうした不利を改善して、制約された条件範囲でも成形状態を改善し、更に非常な高速成形を可能にする。この態様の加熱体の例を図2の一部として示す。20の加熱板は、本体ボディ21、カートリッジヒーター22、高温高圧気体通路23、排出口24、接触予熱面25より構成されている。図2では導入される高温高圧気体の生成手段は省略されている。 なお、上記の条件制約や不利は別にすれば、加熱気体の温度により熱処理の昇温を行う場合は、排出する気体温度は熱板温度より遙かに高いことが必要であり、具体的には導入される段階で圧縮気体の温度は250〜600℃であることが望ましい。例えば延伸PETシートの賦形に伴う熱固定では、熱板予熱は90〜100℃程度が適正であり、排出口からの排出気体温度は250〜500℃にできることが望ましい。気体の熱容量は小さいので、その熱量は賦形体を通じ成形型に散逸するので、この排出気体温度がこれ以下では迅速な昇温ができない。なお、高温の圧縮気体は、空気、窒素、二酸化炭素などを圧縮しさらに別の装置で加熱したものが利用することができる。なお、これらに水分を含んだものや乾燥過熱蒸気も好適に利用できる。
【0028】
3)加熱板の更に別の新規な態様例として、高温気体通路を加熱体の本体と熱遮断し、上記2)の態様上記欠点を改良した例を示すことができる。なお、成形品への高温気体排出口の跡マーク等の影響を小さくするために、排出口は分散角をもって分散排出できるノズル構造とすることは望ましく、また、排出口周辺又はノズル部分を加熱体本体とできるだけ同じ温度にすることが望ましい。樹脂シートを予熱できれば高温気体の排出口は、成形品中央付近等に限定する必要性もなくなり、またその数も限定されるものではなくなる。
改良された望ましい新規の加熱体の例を図3に示す。本図のものは、高温高圧気体の導入路23は断熱性の高いセラミックス等でつくられたものが奥深く挿入されて設けられ、その奥底は本体ボディ21材料で一体にし、ここに複数の孔を穿って排出口(噴射ノズル)24を形成させている。26は断熱空間である。排出口(噴射ノズル)24の数は限定するものではなく任意に設けることができる。
【0029】
4)加熱板装置を用いる場合の特別な態様として、上記加熱板と成形型に保持された賦形体で形成する閉鎖空間から、外部へ制御して空気を逸散させながら上記加熱板から気体噴射を行う手段を備える。この手段は、噴射気体の量を多くし、熱伝達率を大きくするので、上記のように加熱板温度以上の高温気体を噴射吹き付けて賦形体を昇温しようとする時に望ましい。具体的には、これら限るものではないが、例えば(a)加熱板の周辺部に切欠を設けるか、(b)加熱板の周辺部に部分的に低いスペーサーを設けてもよく、あるいは切欠のある低いフレーム様スペーサーを設けてもよく、また(c)成形型をこれより壁面の高い収納ボックス内に納め、壁面上部に切欠をつくっておいてもよく、また(d)収納ボックスのこの切欠は、賦形直後に開くようにしてもよく、あるいはまた(e)圧空賦形後わずかに加熱板を浮上させて気体噴射を続けるように、微動の制御機構設けてもよく、様々な方法を挙げることができる。(a)、(b)あるいは(c)の場合は、圧空賦形開始中から空気が逃げ圧空賦形圧が低下することになるが、それを見込んで設計すれば問題はない。
【0030】
図8に上記(c)の具体例を示す。20の加熱板は図2で示したものと同じ構造である。また、60成形型構成は図2の60で示した構成で、67の収納ボックスは、高さを成形型上面より高くし、外周部に切欠68を設けたものとなっている。111は賦形体の賦形部分、112は賦形体周辺部、113は切欠68によって出来た賦形体周辺の窪み部を示す。図8は、賦形後もなお、切欠68から排気が行われて高温気体の噴射が続き、賦形体の加熱昇温が続けられている状態を示す。
【0031】
<冷却手段について>
冷却手段は、成形型周辺に配置して、加熱板の上昇離反後に成形型の上部に対して進退させるか、又は成形型を下部に進退可能にして構成する。このとき用いる冷却手段は、成形型または成形型群の略全面を覆う寸法と形態を有し、成形型に向けて多数の開口を設けるか又はノズルを装着し、成形型または成形型群全面に対して冷却媒体をさせるように構成したものである。
なお、本発明に用いられる冷却媒体としては、水やアルコール等の揮発性液体、空気、窒素、二酸化炭素などの圧縮された気体を単独、あるいは併用して用いることができる。揮発性液体の場合は、単独で噴霧してもよく、噴射前の気体中へ噴霧するなどしてもよい。冷却用気体は通常温度のものでもよいが、冷却したものも好ましく利用でき、ドライアイス粒塊を潜らせ冷却した気体噴射、あるいはドライアイスの粉粒の混合した気体噴射も好ましい。
(1)このような冷却手段の具体的な態様例の1つを図2の一部として示すが、これも上記加熱板1例と同じく特許4057487号公報に開示されているものと同じである。この例では、成形型または成形型群の略全面を覆う寸法と形状を有する函体に、成形型に向けて多数の開口を設けるか又はノズルを装着し、この函体に導入した冷却用気体を噴出させるようにした構造のものである。
40の冷却手段は、函体状の本体41、冷却媒体の流入空間42、多数の噴射孔43より構成され、導入された圧縮気体が、43から噴射される。
なお、本発明の構成に使用するこの態様の冷却手段では上記ノズルは個々に拡散噴射のできる構造であることが好ましく、また、大きい成形型あるいは複数個の成形型を用いる場合は複数の噴射ノズルをもった冷却手段が好ましい。なおまた、すくなくとも冷却工程では、賦形体を成形型へ吸引固定する機能が作動するように構成することが必要である。
なお、上記態様に限らず本発明に用いられる冷却手段は、作動位置に進入後に下降しながらあるいは、下降して冷媒噴射をする手段が付加されたものであることは望ましい。
【0032】
(2)上記の冷却手段の別の例を図4に示す。枝別れした管材から成る本体44が、フレーム46に固定してまとめられ、導入された冷却媒体はノズル43から噴射され、噴射された冷却媒体は賦形体110の面で反射され、管材の間空間45を通過した放散される。この態様では、排気が容易であり賦形体の全面を均一に能率的に冷却することができて好ましい。
【0033】
(3)上記の冷却手段の新規の態様として、 上記のような気体噴射手段に更に、賦形後の樹脂シートに向けて揮発性液体を噴射する手段を備えた構造のものを示すことができる。なお、この噴射手段を構成する先端噴射部は圧空ボックスの内部にあってもよく、又その外部にあってもよい。また、この噴霧先端部は、独立したノズルであってもよく、また前記冷却用気体の噴射ノズルと兼用または複合する機構のものでもよい。液体噴射は気体噴射と同時におこなってもよく、また交互に行ってもよい。あるいは又、噴射前の冷却気体中にこの液体を噴霧混入させながら噴射するようにしてもよい。なお、なお気体噴射冷却と併用する場合は、この液体噴射による冷却手段は進退動する上記冷却手段に必ずしも搭載されていなくてもよく、どこかに固定されていて必要な時点に成形型表面に向けて噴射できるものでもよい。揮発性液体の噴射による冷却は、液体の比熱と蒸発潜熱により効果的にこれを行うことができる。
【0034】
上記(3)の態様の例の1つを図5に示す。冷却手段40は、本体44、圧縮気体の導入空間42、気体噴射ノズル43、揮発性液体導入路48、揮発性液体の噴霧ノズル49から構成される。気体噴射と液体噴霧は同時に行っても
よく、また任意に時間を分けておこなってもよい。この態様は強力な冷却ができ好ましい。
【0035】
<成形方法について>
前記した本発明の装置を用いて、樹脂シートの予熱工程、賦形工程、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を備える熱可塑性樹脂シートの成形方法を実施することができる。又これらの工程を高速で進めることができ、長尺の成形材料樹脂シートを用いて効率的な連続成形を行うことができる。
予熱工程は、長尺の樹脂シートを導いて予熱温度に加熱調整されている加熱板の下に潜らせて停止させ、加熱板及び又は成形型を上下動させてこれを挟み、樹脂シートを加熱板側から真空吸着するか、又は成形型側から空気押圧して密着させながら予熱を行う。これに次ぐ賦形工程では、加熱温調された成形型に対して加熱板から放出される空気による圧空賦形、そしてあるいは成形型側からの真空吸引による真空賦形が瞬時になされる。これに次ぐ熱処理工程では、高温の成形型表面層で、そしてあるいは加熱板から噴射される高温気体により賦形体の温度は予熱温度以上に高められる。これに次ぐ冷却工程では、加熱板を上昇させ、開いた加熱板と成形型との間に冷却手段を進入させ、冷却媒体を噴射させて賦形体を冷却し離型させる。なお、賦形体の変形を防ぐために、賦形体を成形型の真空引きによる賦形体の固定を、少なくとも冷却工程を通して行うことが望ましく、なお賦形以後の各工程を通じてこれを行う事がなお望ましい。
なお、本装置では、真空賦形に続いて、前記の高温圧縮気体による昇温熱処理も行うこともできる。後者の方法は、樹脂シートが薄くて熱に敏感すぎる場合などに好適である。
通常の熱成形は、樹脂シートの予熱、賦形、冷却、離型の過程を経てなされる。これに対して本発明では賦形から冷却までの間に、樹脂シートの賦形時以上の高温の熱処理を行うことが特徴であり、またこれを高速連続で実施できることが特徴である。
本発明の方法に適する成形材料については後の「本発明の応用分野と利点」の欄で述べる。
【0036】
なお、本発明の成形方法について、模式図を用いて更に詳述することとする。本発明の装置を用いて行う熱成形方法は、幾つかにパターン化して説明することができる。そのパターンは、連続成形に伴う成形型の表面温度軌跡を模式図化したもので、図10はその代表の1つのパターンAを示したものである。これは、成形型の背後層温度測定したときに示される一定の定常温度(S線)を、表面温度の最高点と最下点との間となるように任意に設定制御し、加熱気体又は加熱気体ブロウ(ブロウは噴射と同意、以下同じ)、および冷却ブロウを行う方法である。このパターンが可能であるのは、S線温度を超えた高温への昇温を、十分な高温の圧縮気体に依存できる場合であり、それは図2の装置構成で可能性であるが、図1の構成では実現できない。
図10の太線部分は賦形体が成形型表面と接触した状態を、細線部分は賦形体が除去されている状態を示す。ここでは、シートの予熱温度は示されていないが、当然上記最高点より下回り、延伸PET材料の例を挙げるなら、予熱適温は80〜100℃程度であり、熱処理適温は上記表面温度(賦形体との界面温度)で160−190℃程度であり大きな差がある。
なお、図10に示すaゾーンで賦形体の高温気体による加熱ブロウが行われ、bゾーンでは冷却ブロウがおこなわれ、cゾーンでは賦形体の離型排出と新成形材料の配置が同時に行われる。なお、賦形工程は、実際的には高温気体による圧空賦形を行うかあるいは真空賦形を行いながら高温気体ブロウを行えばよい。賦形は瞬時なされ、実質的に賦形と殆ど同時にaゾーンが始まる。
また、図10では、aからcまでの1サイクルの更なる詳細を1〜5のように区分して示しているが、1では、背後層の高温により表面温度の自然回復がなされ、2では背後層温度と高温気体の両者により、3では高温気体のみにより表面温度の上昇がなされる、4背後層温度と冷却ブロウの両者により、5では冷却ブロウによってのみ表面温度が冷却されて離型可能な状態になる。
【0037】
上記とは別の代表的パターンCを図11に示す。 背後層の定常化温度(S線)を表面温度の最高点 ほぼ同温又はそれ以上になるように設定し、圧空賦形、熱処理に次いで冷却ブロウを行う方法である。熱処理温度への昇温は、背後層からの伝熱依存するところが大きく、加熱ブロウの気体温度が比較的に低い場合でも実現できる。しかし加熱ブロウの温度が高ければ高速で昇温できる。一方このパターンでは、冷却は冷却ブロウに専ら異存することになるのでより強力な冷却ブロウが望ましく、冷却による降下温度が小さくてもよい用途に適する。このパターンは図1の装置構成で実施でき、又図2の構成でも実施できる。
なお、図11に示すaゾーンでは成形型からの伝熱により賦形体の昇温加熱が行われ、bゾーンでは冷却ブロウがおこなわれ、cゾーンでは賦形体の離型排出と新成形材料の配置が同時に行われる。なお、賦形工程は圧空賦形又は真空賦形の方法で瞬時に行われ、工程の終了と殆ど同時にaゾーンが始まる。aゾーンでは、圧空賦形後の空気ブロウは停止される。パターン場合と同じに、賦形工程に続けて加熱ブロウを行うことも可能であるが、その場合は加熱ブロウ温度が十分高いことが望ましい。それが十分に高くない場合は昇温を阻害し好ましくなく、図1の装置構成では十分に高い空気温度が得られない。
【0038】
上記とは別のBパターン(図示省略)として、背後層の定常化温度(S線)を表面温度の最下点ないしはそれ以下になるように設定し、加熱気体圧空又は加熱気体ブロウを行う方法がある。この場合、冷却ブロウは行わなくてもかなりの冷却が進むがやはり冷却ブロウを行って短時間に冷却離型を行うことができる。この場合は、熱処理温度への昇温は加熱気体に専ら異存することになるので、熱処理温度が比較的に低くてよく、冷却を強くしなければならないような成形に向く。具体的には、例えば成形品の耐熱性向上をそれほど必要としない場合などである。成形型としては表面層をb値のより小さい材料で製作したものが適する。
【0039】
なお、これらのパターンは代表例として区分したもので、方法を限定するものでなく種々の変形が可能であり、例えば(1)賦形あるいは離型を温度軌跡の最高点や最底点に限るものではなく、最低点より高いところで賦形を始めてもよく、また最高点到達以前に離型を行ってもよく、また最高点を過ぎてから賦形を始めてもよく、又最低点以前に離型してもよい、また(2)加熱気体や冷却気体を賦形体の不在時に直接型表面にブロウして温度回帰を促進することもできる。 あるいはまた、(3)賦形後に加熱手段適用または冷却ブロウ適用を任意の時点で一時的に停止し、成形型からの伝熱を利用してもよく、これらの変形どのようなものであれ、上記最高点、最下点を一定に定常化が可能であればよい。
(本発明の応用分野と利点)
【0040】
本発明の装置は、樹脂シートを予熱賦形し離型するまでの過程において樹脂シートの予熱温度を大幅に上回る高温で熱処理し、次いで冷却して離型するプロセスを効率的に行うことができる。
このような熱処理を必要とする具体的な用途を挙げると、(1)延伸ポリエステルの熱固定成形に特に好適に利用でき、その他にも、熱可塑性ポリエステル樹脂、PLA樹脂、ポリプロピレン、ポリアミド、PEEK等の結晶性樹脂の延伸シートの熱固定成形り利用できる。またその中でも延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂シートの熱固定を伴う熱成形に特に好適に利用することができ、予熱の適温の80〜100℃に加熱し、熱固定に適する160〜190℃に迅速に加熱しそして迅速冷却離型するというプロセスを担うことができる。そして安定で効率よくまた連続的に高透明、高耐熱で高剛性の好ましい成形品を得ることができる。
また特に延伸処理を行っていない材料、例えば(1)通常の結晶性PET(CPET)の成形、あるいはまた(3)ポリプロピレンのSPPF成形(固相高圧成形)に応用し、この成形方法の欠点を解決(残留応力歪みを緩和して耐熱寸法安定性を向上)する新規の方法等を提案することができる。
(本発明の内容についての補足説明)
【0041】
(1)<熱浸透率について>
本発明の規定値として用いた熱浸透率(b値)(kJ/m2s1/2K)は接触する物体と界面を通過して移動する熱量にかかわる物体の特性値であり、次の式で求められる。
b= (λρC)1/2 ・・・・・(1)
λ; 熱伝導率(Js−1m−1K−1)
ρ; 密度(kgm−3)
C; 比熱(Jkg−1K−1)
このb値が小さい物体は界面に少ない熱量しか流さず相手物体に大きな温度変化を与えず、また界面間近では相手物体から大きな温度影響をうける。
従って、このb値が小さい材料を成形型表面材料として用いた場合は賦形体からの熱を拡散させないので、高温気体と冷却用気体により賦形体を容易に加熱冷却することができる。しかし背後層の熱を容易に表面層表面(賦形体体との界面)に伝えないので、表面温度の均一性が高く、高速で安定な条件設定のためには、表面層の厚みを小さくするか、あるいはこのb値をある程度大きくすることにより、成形材料に合わせて最適にすることができる。
なお、b値の参考例を示すと例えば、アルミニウム材は17〜23程度、鉄材は13〜16程度、銅34程度、不錆鋼(SUS306)は8.0で、多くの合成樹脂は0.2〜0.8程度、多くのセラミックスは1〜20の間に入る。
なお、表1にいくつかの材料のb値を例示する。なお、b値も測定温度により若干違った値を示すが、本願においては、厳密には20℃の測定値にて規定することする。 ただし、20℃から200℃の間の変化に直線性を有しない材料、例えば相変化を伴う蓄熱剤などとの複合材料の場合は、100℃、150℃の値の平均値を採用することとする。 なお、同じ材質でも、発泡体あるいは多孔体などに形状が変われば、この値が大きく変わることは留意を要する。
【表1】

【0042】
(2)<成形型構成の数値限定の意義について>
上記成形型の表面層として熱浸透率b値の大きな表面材料を用いた場合は、賦形体から容易に熱を背後に分散させてしまうので、熱容量の比較的に熱容量の小さい加熱空気や冷却空気では容易に賦形体を加熱冷却できなくなり、この値が10を超える材料である場合は、能率的に熱処理を行う成形を行うことができない。この値は小さいほうが好ましいが、0.01より小さいものは強度など使用に耐える材料がない。
上記の成形型において表面層と背後層からなる構造とし、表面層の背後を一定温度に加熱制御して、賦形体を介して加熱気体および冷却気体により昇温降温変化する表面層の表面温度を所望の基準温度へ迅速に回帰させることができ、又表面の部位による温度バラツキを均一化させることができる。
この場合、表面層の厚みが30mmを超える場合は背後層の制御が、上記表面温度と呼応して定常状態に至る時間がかかりすぎ、実施的に効果がない。また、この厚みが0.03mmを下回る場合は背後層の温度の影響を大きく受けて、迅速な賦形体の昇温降温を促進する効果がなくなる。例えば、公知の成形方法において、潤滑離型のために金型に仮に弗素樹脂等のコートが成されることがあったしても、そのコート厚みは30μm以下の薄いものであり、それを厚くする必要もなく又困難もあって、本発明の効果を発揮させるようなものは従来製作されていない。
【0043】
(3)<賦形体の温度測定について>
なお、本発明の装置においては、なんらかの方法で成型型表面温度あるいはと型と賦形体の界面温度の変化、または賦形体の温度変化を測定することは重要である。具体的には例えば、成形型の成形面上に、極めて繊細な測定プローブ、例えば線径0.1mm程度の熱電対先端を突出させておいてこれを測定することができる。別の方法としては賦形体を反対面から赤外線温度計非接触で測定する方法がある。しかし、これらには留意すべき点がある。
前記のS線の温度はパターンA、Cでは、成形型自体を積極的に温度調節制御を行うが、それでも成形表面からの距離、あるいは熱源からの距離によっては温度傾斜をもって、成形サイクルを繰り返す中で定常化する値でもある。
賦形材料の熱処理温度あるいは離型可能温度を厳密に考えるとき、これらの温度はここで示される表面温度あるいは界面温度とはかなり乖離があることは留意する必要がある。秒単位あるいはそれ以下の単位で加熱冷却を行う場合は、賦形体の厚み方向で大きな温度傾斜が発生するからである。また、赤外線等で賦形体裏面から温度測定も、材料温度を正確に表すものでなない。また本発明では表面温度(界面温度)で表現しているがこの温度とも乖離があり、相対的な値として考慮する必要がある。
【実施例1】
【0044】
図1の装置構成で、延伸PETシートの熱処理を伴う成形をおこなった。
1)成形材料;ホモポリエチレンテレフタレート樹脂の2.5倍一軸延伸シート(但し 熱固定を行っていないもの)、厚み0.23mm非熱固定品を使用した。
2)成形装置
成形機; 枚葉真空圧空成形機、圧空能力10tonのものを使用した。
加熱板; 図1の10に示す通常圧空方式の、炭素鋼製で寸法320×360m mの予熱面を持ち、間隔10mmの碁盤格子の交点毎に径1mmφの 噴射吸引孔を穿ったものを使用した。
冷却手段;図4に示す単純方式のものを使用した。
成形型; 図1の60に示す表面層/背後層方式のもので、アルミニウムA 5052を背後層とし、その上にPEEK樹脂(b値は0.35) 0.2mmの表面層を形成させたものを使用した。
成形物は深さ直径90mm、深さ30mmの丸皿形状物で、成形型
外寸を110mm角としたもの6個をヒーター内包の固定板に固定
し、内寸222×332mmの収納ボックスに収めた。なお、成形型 の上面は収納ボックス側壁より3mm低くなるようにし、又側壁とは 1mmの間隙を設けた。
温度測定;成形面には細線熱電対先端露出させて這わせ、成形面温度 及び 賦形体界面温度を測定できるようにした。また、同様に細線熱 電対を加熱板の裏から貫通させて配置して噴射空気温度の測定ができ るようにした。
3)成形方法と成形条件;
樹脂シートの予熱; 95℃に設定した加熱板に2秒間吸着して接触させ予 熱。なお、これでシート温度がほぼ95℃に予熱されていることは、 別途確認済みである。
背後層温度; 195℃(固定板温度とほぼ等しい)
成形面予熱温度; 180℃
加熱板への導入空気; 25℃ 元圧力0.4MPa
圧空真空圧空賦形;6秒、 圧空圧0.4MPa、
圧空空間は閉鎖空間であり、実質的に賦形後のブロウは行われていない。 圧空温度約60℃(センサー位置により少し変わる)熱処理温度(界面温 度);約172〜177℃(部位によるバラツキ)、賦形時に上記表面温 度は瞬間的に約160℃に低下し、回復してこの温度になった。
冷却手段作動時間 ; 3秒
離型時に表面(界面)温度は120℃に低下し、その後数秒で元の設定温 度に回復した。
4)成形結果;
得られた成形品は良好な形状、透明なものであった。耐熱120℃のシリコンオイルに2分間浸漬の試験を行い、変形、目立った収縮はなく、耐熱性の優れたものであった。使用した成形型では、表面温度設定が容易で、又容易にブロウ冷却ができ、そして、表面温度の回復が速く、高速成形ができることがわかった。
なお、なお、短尺シートによる、繰り返しテストでも安定に成形できることがわかった。
【実施例2】
【0045】
実施例1に用いたものと同じ成形型を、図9のような切欠を有する収納ボックスに収納して、実施例1と同じ材料により熱処理を伴う成形を行った。但し加熱板は図3に示すもので、冷却手段は図4に示すものを用いた。
1)成形材料; 実施例1と同じもの
2)成形装置
成形機;実施例1と同じものを使用した。
加熱板;図3の20に示す構造の炭素鋼製のものを用いた。
寸法320×360mmの予熱面を持つ本体に、背面から内径10mm の断熱性をセラミックス製の筒状通気パイプ6本を配置して深く差し込 み、貫通させずに残したわずかな底部分に複数個の細孔は穿ったものに した。
成形型 ; 実施例1と同じものを、同じヒーター内蔵の固定板に固定し、同 様に収納ボックスに収納した。ただし収納ボックスのみ外壁の上部には 数カ所の切欠を設けた図9のような構成にした。
3)成形方法と成形条件 ;
樹脂シートの予熱;実施例1と同様にした。
背後層温度;220 ℃設定(固定板温度とほぼ等しい)
成形型設定表面温度;185℃
成形型/賦形体界面の到達最高点温度 ;195℃
加熱板への導入空気; 温度330℃、元圧0.4MPa
圧空真空圧空賦形; 3秒、 圧空圧0.2MPa、
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と 賦形体の昇温が行われた。
圧空温度は約280℃(センサー位置により変わる)となった。
冷却手段の空気ブロウ時間 ; 6秒
離型時に表面(界面)温度は130℃に低下し、その後数秒で元の設定 温度に回復した。
4)成形結果 ;得られた成形品は良好な形状、透明なものであった。但し、熱板接触の孔マーク等は残った。耐熱性は実施例1と同様のテストで、150℃で変形、目立った収縮はなく優れたものであった。なお、短尺シートによる、繰り返しテストでも安定に高速成形ができることがわかった。
(比較例1)
【0046】
実施例1の装置構成(図1の構成)で、成形型のみ公知の通常用いられるものを装着し、実施例1と同じ成形材料シートを使用して以下のテストを行った。
成形型;一般的に用いられるアルミニウム材A5052製の単純構成の
ものを、ヒーターを内包した固定板に固定して使用した。
樹脂シートの予熱; 95℃の加熱板に2秒間吸着して接触させ予熱。
加熱板への導入空気温度; 25℃
真空圧空賦形; 0.4MPa、3秒(但し成形型側の真空引きも同時作動さ せた)圧空空間は閉鎖されており、実質的に賦形後のブロウは行われ ていない。圧空温度約70℃(センサー位置により変わる)成形型表 面温度;固定板温度調整により185℃予熱して成形テスト。
賦形の瞬間に、成型型表面温度(界面温度)は約10℃低下し、熱処 理温度は約175℃となった。
冷却手段作動時間;20秒
離型時の成型型表面温度(界面温度)は大約155℃であった。
テストの結果;
成形品は、上記表面温度の予熱を175℃とし、冷却ブロウ時間を20秒として、一応の形状を保って離型できたが、十分に精密なものではなかった。
更にこの方法は、長い冷却時間とともに、離型後の上記表面温度の予熱温度への回帰に少なくとも10秒程度の時間を要し、高速の連続成形に適し難いことがわかった。
(比較例2)
【0047】
比較例1に用いた装置で、成形型のみ公知のものに変更し、同様に成形テストした。
成形型;ウレタン樹脂発泡体(三洋化成製、サンモジュール33)から切削加工に より製作した公知の単純構成ものを、加熱ヒーターを内臓するアルミ ニウム製固定板に固定した構成とした。
樹脂シートの予熱;比較例1と同様に行った。
成形型表面温度;34〜54℃(部位による差20℃)
固定板温度を成型型材料の耐熱(70℃)を超える90℃設定して予 熱してもこの程度にしか上昇させることができなかった。
(なお、テストの最後に固定板温度を120℃に設定したとき成形 型は破損した。)
賦形圧空;0.4MPa、4秒 圧空空間の温度約75℃
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
冷却手段作動時間;4秒。
テストの結果;
熱処理には成形型表面温度は少なくとも160℃程度に達することが必要であるが、この温度への到達は全く無理であった。
得られた成形品は透明であるが、耐熱性は65℃程度しかなかった。
(比較例3)
【0048】
実施例2の装置構成で、成形型のみ公知のアルミニウム製単純構造のものに変更し、実施例1と同じ成形材料シートを使用して以下のテストを行った。
成形型;比較例1のテスト1に使用したものを同じ固定板に固定して使用した。 樹脂シートの予熱;95℃の加熱板に2秒間吸着して接触させ予熱。
成形型表面温度;固定板温度の設定調整により、155℃に予熱してテストし た。
加熱板への導入空気; 温度400℃、元圧0.4MPa
真空圧空賦形;0.2MPa、6秒
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦形と 賦形体の昇温が行われた。
成形型表面(界面)温度の降下はなく、約10℃上昇し約170℃に なった。
冷却手段作動;空気ブロウを20秒作動させて離型、
テストの結果;
成形品は、20秒という長時間冷却ブロウで、一応の形状を保持して離型できたが、十分に精密なものではなかった。
なお、成形品には、高温気体排気口の跡が表れ、繰り返しテスト中に、排気口付近の高温化しその欠陥が大きくなった。なお、離型後の上記表面温度の設定予熱温度への回帰も少なくとも10秒程度の時間を要し、この装置構成は高速の連続成形に適し難いことがわかった。
(比較例4)
【0049】
比較例3の装置構成(すなわち実施例2の装置構成)で、成形型のみ公知のウレタン樹脂性単純構造のものに変更し、同様に成形テストした。
成形型;比較例1のテスト2に使用したものを同じ固定板に固定して使用した。
樹脂シートの予熱;比較例3と同様に行った。
成形型表面予熱温度;75℃
但し固定板加熱に合わせて約300℃の熱風ブロウによりこの温度 に予熱した。
加熱板への導入空気温度; 400℃
真空圧空賦形;0.2MPa、 8秒
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
圧空空間は完全閉鎖でなく、高温圧空空気の排気がなされながら賦 形と賦形体の昇温が行われた。
成形型表面(界面)温度の降下はなく、183℃に上昇した。
冷却手段作動;空気ブロウを5秒作動させて離型、離型時の成形型表面(界面) 温度は113℃であった。
テストの結果;
最初に得られた成形品は、良好で耐熱性もあった。
この装置構成では、冷却は非常に容易であるが、大幅な昇温のために過酷な加熱条件設定が必要であった。そのため繰り返しテストを行うと、成形型表面層の部位による温度ムラが次第に大きくなり、遂には、エッジ部などが過熱で亀裂を生ずるなど成形に支障を来し下した。
(比較例5)
【0050】
比較例4の装置構成の一部変更、すなわち成形型収納ボックスを壁面上部の切欠をないものにしてテストした。成形型構成及びテスト材料は比較例4と同じものを用いた。
樹脂シートの予熱;比較例4と同様に行った。
成形型表面予熱温度;75℃ 上記(テスト4)と同様に予熱
加熱板への導入空気; 400℃ 元圧0.4MPa
真空圧空賦形;0.4MPa、 10秒
(但し成形型側の真空引きも同時作動)
冷却手段作動;空気ブロウを10秒作動させて離型、
テスト結果;
圧空空間は実質的に閉鎖空間であり、高温圧空空気は停滞して、成形型表面(界面)温度の昇温は20℃程度であり、有効な熱処を伴う成形はできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の成形装置を用いる熱成形には下記のような効用がある。
(1)賦形のための予熱温度以上に賦形体の加熱する熱処理と冷却離型を伴う成形プロセスを、非常な高速で、連続的に、効率的にそして安定に実行することができる。
(2)結晶性樹脂の延伸シート、例えば延伸PETシート材を上記のような熱処理を行う熱成形を行うことにより、耐熱性、透明性、剛性等の機械強度の優れた熱成形品を能率よく生産することができる。又、剛性を利用し省材料の成形品を得ることができる。
(3)変動温度の測定結果を反映させ、加熱条件及び冷却条件を調整または制御することにより、最適製品、最短サイクルを容易に実現でき、安定な制御を行うことができる。また、短時間に安定生産条件に移行することができる。
(4)均一な成形品、多数個成形ではバラツキの少ない成形品を効率良く生産することができる。
(5)広範囲種類の成形型あるいは成形材料を選んで成形に利用することができる。
(6)エネルギー消費を節約した生産を行うことができる。
(7)なお、本発明の装置は結晶性樹脂の延伸シート以外の材料、例えば延伸されていない材料、例えばCPET材料など広範囲に応用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 加熱板(通常圧空方式)
11 加熱板本体
12 加熱ヒーター
13 圧縮気体導入管
14 圧縮気体の分配通路
15 噴射孔 兼 吸引孔
16 接触予熱面
20 加熱板(高温気体導入方式)
21 加熱板本体
22 加熱ヒーター
23 高温圧縮気体の導入管
24 高温圧縮気体通路
25 接触予熱面
40 冷却手段
41 固定フレーム
42 冷却用気体の導入空間
43 噴射ノズル
44 冷却手段本体
48 揮発性液体導入管
49 噴霧ノズル
50 成形型(蓄熱均一化層つき)
51 表面層
52 蓄熱均一化層
53 真空排気孔
54 真空排気通路
55 保持体(背後体)
60 成形型(高熱浸透率背後層)
61 表面層
62 背後層(背後体)
63 真空排気孔
64 真空排気通路
65 加熱ヒーター又は熱媒通路
66 成形型固定板
67 成形型収納ボックス
68 収納ボックスの切欠
70 成形型(全面加熱層つき)
71 表面層
72 背後層(ボディ)
73 真空排気孔
74 排気通路
75 発熱層
76 リード電線
100 熱可塑性樹脂シート(樹脂シート)
110 熱可塑性樹脂シートの賦形体(全体)
111 熱可塑性樹脂シートの賦形体の主要部
112 熱可塑性樹脂シートの賦形体の周辺部
113 熱可塑性樹脂シートの賦形体の周辺部の窪み部
A 圧縮気体
HA 高温圧縮気体
VL 揮発性液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの加熱板による予熱と圧空成形を可能に装備した熱成形装置において、冷却手段を成形型周辺に配置して、加熱板の上昇離反後に成形型の上部に対して上記冷却手段を進退させるか、又は成形型を上記冷却手段の下部に進退可能にして、上記冷却手段から冷却媒体を噴射して上記樹脂シートの賦形体を冷却するように構成し、更に成形型として、熱浸透率(kJ/m2s1/2K)が0.01〜15である材料により成る表面層と、この表面層の背後に接してこの層の全展開面を定常的に均一な温度に調整する手段を含む構成のものを用いる熱可塑性樹脂シートの成形装置。
【請求項2】
上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層と熱浸透率が表面層のそれより大きな材料からなる背後層を構成に含むものであることを特徴とする請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層と、熱浸透率が表面層のそれより大きな材料からなる背後層から成り、更に背後層に温調手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の成形装置。
【請求項4】
上記成形型が、上記所定の熱浸透率の材料からなる表面層の背後の略全面に直接して加熱温調する手段を展開したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の成形装置。
【請求項5】
上記加熱板において、加熱板温度以上の高温の加熱気体を送出するように装備されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の成形装置。
【請求項6】
樹脂シートの賦形後に、上記加熱板と成形型に保持された賦形体で形成する閉鎖空間から、外部へ気体を逸散させながら上記加熱板から気体送出を行う手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の成形装置。
【請求項7】
賦形後の熱可塑性樹脂シートに向けて揮発性液体を噴射する手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の樹脂シートの成形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の樹脂シートの成形装置を用いた樹脂シートの成形方法であって、樹脂シートの予熱工程と、賦形工程と、この予熱工程よりも高温で熱処理する熱処理工程と、そして冷却工程を遂行する熱可塑性樹脂シートの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28047(P2013−28047A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165068(P2011−165068)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500044755)
【Fターム(参考)】