説明

熱拡散部材を備える電子機器、熱拡散部材を備える電子機器の製法及び熱拡散部材

【課題】発熱部品等から生じた熱を筺体外面から均一ないし効率的に熱拡散することを可能とする熱拡散部材を備える電子機器、熱拡散部材を備える電子機器の製法及び熱拡散部材を提供する。
【解決手段】本発明の電子機器は、発熱部品3の熱を筺体1に放熱する熱拡散部材5を備える電子機器であって、前記熱拡散部材5は、熱拡散層51と部分的な断熱層52とからなり、厚みを略均一に形成し、前記熱拡散部材5の部分的な断熱層52を有する側を前記筺体1の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材5の熱拡散層を有する側を前記発熱部品3と熱的に結合した構成を備える(図1(a))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱拡散部材を備える電子機器、熱拡散部材を備える電子機器の製法及び熱拡散部材を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
昨今の携帯端末等の電子機器においては、小型化、薄型化により内部部品の発熱による筐体の温度上昇が問題になっており、発熱部品の発熱の筺体外部への熱拡散が重要となってきている。
【0003】
図10は本発明の関連技術の携帯端末の発熱部品の熱拡散の構成例を示す図であり、図11は図10に示す熱拡散による携帯端末の筺体の表面温度分布を示す図である。
【0004】
図10に示す携帯端末は、筺体1の内部に発熱部品3と他の部品4を実装したプリント配線基板2が配置されている。また、前記筺体1の上部の裏面に熱拡散シート50の上面が熱的に接続され、前記熱拡散シート50の下面の一部に前記発熱部材3の上面が熱的に接続されている。
【0005】
以上の構成により、発熱部品3で発生した熱は矢印に示すように熱拡散シート50に伝導され、該熱拡散シート50に伝導された熱は面方向に熱拡散して、図11に示すように筺体1の上部の内壁から外壁(表面)を経て、筺体外面に放熱される。
【0006】
図12は本発明の他の関連技術の電子機器の発熱部品の熱拡散の構成例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は分解図である。図12(a)に示すように、筺体1と、発熱部品3を実装した基板2と、筺体1上の前記発熱部品3に対応する筺体1の内壁面18に押当部材17と、押当部材17を含む領域に被覆、接着した熱拡散シート16から構成されている。
【0007】
ここで熱拡散シート16は、発熱部品3に対応する領域に交差する切込み19を有するものであり、該熱拡散シート16にて筐体1の内壁面18及びその上の押当部材17を被覆したときに切込み19が広がることにより、図12(b)に示すように切込み19があることにより山型収納部20が形成される。
【0008】
このため、押当部材17を収納する山型収納部20の近傍において熱拡散シート16になだらかな傾斜形状が現れることを抑制することができる。また、樹脂材料や異方性熱伝道材料の熱拡散シート16の使用により、筺体表面温度の変化をなだらかにすることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−229287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
携帯端末等の筐体内部で発生した熱は、必ず筐体表面から放熱されるため、部分的な発熱を分散できれば最大温度部の温度を小さくすることができる。しかし、図10に示すような熱拡散シート50を使用した熱拡散では、筐体の薄型化により十分な熱の拡散性能が得られないので、図11に示すように筺体1の表面に温度差の大きい高温部13a、中高温部13b、低温部13cが生じるため使用者に違和感を与えることがあり、発熱部品上部のみが極端に高温になることによる危険性も起こりうる。
【0011】
これは、熱拡散シート50の面方向の熱拡散が均一にはできず、図10に示すように熱伝導量15の平均化ができないため、熱拡散シートの温度分布が発熱部品3に近い点で極端に高くなり、筺体1の上部外面の発熱部品3の位置する箇所を中心に高温部分が生じることによるものである。
【0012】
このように図10に示す本発明の前記関連技術では、熱拡散シート50による面方向の熱拡散が可能であるものの、熱拡散の均一化が不十分なため、筐体の発熱部品上部に熱が集中する。
【0013】
また、図12に示す押当部材17に熱拡散シート16を被せる構成の本発明の前記関連技術では、熱拡散シート16に交差する切込み19を形成する必要があり、熱拡散シート16の柔軟性(可撓性)等により製作上の困難を伴うだけでなく、押当部材17の周辺への熱拡散シート16の十分な湾曲と筺体内壁面18への密着を実現することが困難であるから、熱拡散シートから筺体内壁面への効率的な熱放散も不十分となる。
【0014】
(発明の目的)
本発明の目的は、以上のような問題を解決するものであり、発熱部品等から生じた熱を筺体外面から均一ないし効率的に熱拡散することを可能とする熱拡散部材を備える電子機器、熱拡散部材を備える電子機器の製法及び熱拡散部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の熱拡散部材を備える電子機器は、発熱部品の熱を筺体に放熱する熱拡散部材を備える電子機器であって、
前記熱拡散部材は、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成し、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を有する側を前記筺体の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材の熱拡散層を有する側を前記発熱部品と熱的に結合したことを特徴とする。
【0016】
本発明の熱拡散部材を備える電子機器の製法は、発熱部品の熱を筺体に放熱する熱拡散部材を備える電子機器の製法であって、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成した熱拡散部材を製作する第1の工程と、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を有する側を前記筺体の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材の熱拡散層を有する側を前記発熱部品と熱的に結合する第2の工程と、からなることを特徴とする。
【0017】
本発明の熱拡散部材は、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成した熱拡散部材の断熱層側を筺体の内壁面に熱的に結合し、熱拡散層側を筺体内の発熱部品と熱的に結合したことにより、熱拡散シートのみの場合よりも筺体外面から均一に放熱でき、且つ効率的に発熱を拡散することが可能である。
【0019】
また、熱拡散部材を略均一な厚みに構成することにより、筺体の内壁面に対して隙間無く密着させることが可能であるから効率的に発熱を放熱することが可能である。また、熱拡散部材をシート状にすることで、筺体内壁面の形状にかかわらず装着可能であり、装置厚みを大きく増加させることなく、発熱を拡散させることができる。
【0020】
更に、各層の材料、形状及び配置は容易に設計変更できるため、部品配置や部品の発熱量に応じて、必要な拡散性能が得られるよう簡単に調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態の構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の第2の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図3】図3は第2の実施形態の熱拡散部材の構成を示す図である。
【図4】図4は第2の実施形態の熱拡散部材の温度分布を示す図である。
【図5】図5は本発明の第3の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図6】図6は本発明の第4の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図7】図7は本発明の第5の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図8】図8は本発明の第6の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図9】図9は本発明の第7の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。
【図10】図10は本発明の関連技術の携帯端末の発熱部品の熱拡散の構成例を示す図である。
【図11】図11は図10に示す熱拡散による携帯端末の筺体の表面温度分布を示す図である。
【図12】図12は本発明の他の関連技術の電子機器の発熱部品の熱拡散の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について以下説明する。
【0023】
図1は本発明の熱拡散部材を備える電子機器、熱拡散部材を備える電子機器の製法及び熱拡散部材の第1の実施形態の構成を示す図であり、(a)は電子機器の断面構造、(b)は電子機器の製法、(c)は熱拡散部材である。
【0024】
本発明の第1の実施形態の電子機器は、図1(a)に示すように、プリント配線基板2上等の発熱部品3の熱を筺体1に放熱する熱拡散部材5を備える電子機器であって、前記熱拡散部材5は、熱拡散層51と部分的な断熱層52とからなり、例えば熱伝導層53等により厚みを略均一に形成し、前記熱拡散部材5の部分的な断熱層52を有する側を前記筺体1の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材5の熱拡散層を有する側を前記発熱部品3と熱的に結合した構成を備える。
【0025】
本発明の第1の実施形態の電子機器の製法(製造方法)は、図1(b)に示すように、発熱部品の熱を筺体に放熱する電子機器の製法であって、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成した熱拡散部材を製作する第1の工程s1と、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を有する側を前記筺体の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材の熱拡散層を有する側を前記発熱部品と熱的に結合する第2の工程s2と、を含む。
【0026】
本発明の熱拡散部材は、図1(c)に示すように、熱拡散層51と部分的な断熱層52とからなり、例えば熱伝導層53等により厚みを略均一に形成した構成を備える。
【0027】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について以下説明する。第2の実施形態は、携帯電話機等の携帯端末において電気部品の発熱による筐体の温度上昇を効率的に分散させるようにした構成例である。
【0028】
(構成の説明)
図2は本発明の第2の実施形態の携帯端末の筐体の断面構造を示す図である。
【0029】
第2の実施形態の携帯端末の筐体1内部に、発熱部品3及び発熱しない又は発熱量が小さい部品4等が実装されたプリント配線基板2と、筺体1とプリント配線基板2の部品との間に熱拡散部材6を内蔵する。
【0030】
ここで、熱拡散部材6は、熱拡散層としての熱拡散シート61と、断熱層としての部分的に設けた断熱シート62と、熱伝導層としての熱伝導シート63と、により構成され、熱拡散部材6の熱拡散シート61側が発熱部品3に熱的に接続され、熱拡散部材6の断熱シート62及び熱伝導シート61側が筺体1の内壁面に熱的に接続されている。つまり、筐体1の内壁面と発熱部品3の間及び筐体1の内壁面と発熱しない部品4の間には、熱拡散シート62、熱伝導シート63及び断熱シート61が挿入され、発熱部品3の上面が熱拡散シート62の下面と熱的に接続されている。
【0031】
図3は第2の実施形態で使用する熱拡散部材の詳細構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。熱拡散シート61には、携帯端末に実装された際、発熱部品の上部周辺に対応する箇所に断熱シート62が貼られ、それ以外の箇所に熱伝導シート63が貼られて、略均一な厚みとして構成されている。
【0032】
熱拡散シート61には、グラファイトシート等のように面方向に熱伝導率が高く、厚み方向に熱伝導率が低い特性の材料が使用される。熱伝導シート63には、全方向もしくは厚み方向に熱伝導率が高い材料が使用される。断熱シート62には、全方向もしくは厚み方向に熱伝導率が低い材料が使用される。
【0033】
図2、3に示す構成例では、発熱部品3の上部とその周辺には断熱シート62が配置され、発熱しない部品4等の上部には熱伝導シート63が配置されている。
【0034】
以上のように、本実施形態の発熱部品3の上部とその周辺には断熱シート62、発熱しない部品4等の上部には熱伝導シート63を配置しているため、図11に示すように熱拡散シート61のみで熱拡散する場合よりも、筐体1の温度上昇を平均化するとともに効率的に熱を拡散させることが可能である。
【0035】
(動作の説明)
次に本発明の第2の実施形態の動作を説明する。
【0036】
図4は第2の実施形態の熱拡散シートの温度分布を示す図である。発熱部品3で発生した熱は熱拡散シート61で面方向に拡散される。また、熱拡散シート61の温度分布は面方向の温度分布を均一にはできないため、発熱部品3に近いほど高く、発熱部品3から遠いほど低くなり、発熱部品3が接続された領域を含む周辺領域まで高温部11aとなり、その周囲が中高温部11bとなり、更にその他の領域が低温部11cとなる。
【0037】
本発明の第2の実施形態では、図2に示すように発熱部品3の上部周辺には筐体1と熱拡散シート61の間に断熱シート62があるため、熱拡散シート61が高温になっても、筐体1に熱が直接伝わりにくく、また、発熱部品3の上部以外の箇所では、熱伝導シート63があるため、熱拡散シート61が低温であっても、筐体1に熱が伝わりやすい。よって、筐体1の発熱は発熱部品3の上部に集中することがなく、筐体1の全体に分散される。
【0038】
このように高温部11aの領域に相当する範囲に断熱シート62を配置することにより、当該高温部11aから筺体の内壁面への熱伝導量を抑制し、中高温部11b及び低温部11cから熱伝導シート63を介して筺体1の内壁面への熱伝導量を効率化し、筺体1の内壁面に熱拡散シート61を熱的に接続した範囲で熱伝導量15を均一化するように制御することができる。
【0039】
以上のような構成及び制御により、筺体表面への熱伝導量の面方向の温度分布を図2の矢印15の長さで示すように均一にすることが可能である。また、熱拡散部材6は、略均一な厚みに構成することにより筺体1の内壁面に対して隙間無く密着させることが可能であるから効率的に発熱を放熱することが可能である。
【0040】
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、熱拡散部材を断熱シート、熱拡散シート及び熱伝導シートにより構成した例を示したが、本発明の第3の実施形態として、熱拡散シートの形状を工夫して断熱シート及び熱拡散シートを用いた熱拡散部材の構造とすることができる。
【0041】
図5は本発明の第3の実施形態の携帯端末の断面構造を示す図である。第2の実施形態と同一の構成は同一符号で示している。
【0042】
第3の実施形態の熱拡散部材7は、熱拡散シート71と断熱シート72とで構成し、熱拡散シート71の発熱部品3に位置する領域に凹部を形成し、当該凹部の領域に断熱シート72を埋め込むことで略均一な厚みとしている。
【0043】
第3の実施形態の構成でも、熱拡散部材7の発熱部品3の上部には断熱シート72が存在するため、発熱部品3の上部の筐体のみが高温に発熱することを防止することが可能であり、断熱シート72がない部分では、熱拡散シート71から直接筐体1に熱が伝わるため、第2の実施形態と同様に筐体1の温度上昇を分散することが可能である。
【0044】
第3の実施形態では熱拡散の構成部品として熱伝導シートを削減することで、低コスト化が可能となるという利点も有する。
【0045】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態として、熱拡散部材を熱拡散シートと熱伝導シートにより構成し、断熱シートを削減した構成とすることが可能である。
【0046】
図6は本発明の第4の実施形態の携帯端末の断面構造を示す図である。以上の実施形態と同一の構成は同一符号で示している。
【0047】
第4の実施形態では、熱拡散部材8として、熱拡散シート81と熱伝導シート83で構成し、熱拡散シート81の発熱部品3の位置の断熱層として空間(空気)層82を利用するように構成する。
【0048】
発熱部品3の上部の熱拡散シート81の筺体1側に空間82が存在し、空気の熱伝導率は低いため発熱部品3の上部の筐体1のみが高温になることを防止することができる。また、それ以外の部分は熱伝導シート83を貼っており、当該部分では熱が筐体1に伝わりやすいため筐体1の部分的な温度上昇の分散が可能である。
【0049】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態として、熱拡散部材を熱拡散シートと空気により構成し、断熱シートを削減することが可能である。
【0050】
図7は本発明の第5の実施形態の携帯端末の断面構造を示す図である。以上の実施形態と同一の構成は同一符号で示している。
【0051】
第5の実施形態は、熱拡散部材9として熱拡散シート91と発熱部品3の位置に設けた空間(空気)92とにより構成し、空間92を断熱層として利用するものである。
【0052】
第5の実施形態は熱拡散の構成部品として熱伝導シートを削減することで、低コスト化が可能となるという利点もある。
【0053】
(第6の実施形態)
本発明の熱拡散部材の利用形態は筺体の厚みや材質、熱伝導特性等に応じて適宜変更することが可能である。これは筺体壁の厚みや材質等により熱伝達量が異なるものであり、発熱部品と当該発熱部品の上部の筺体壁の厚み、材質の関係等から、前記断熱層の配置箇所を選択することで、熱拡散部材の筺体の熱的な接続領域の発熱の均一化が可能であるからである。
【0054】
図8は本発明の第6の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。以上の実施形態と同一の構成は同一符号で示している。本実施形態は筺体1の筺体壁の構造が発熱部品3の上部に筐体の厚みの厚い部分が存在する例である。第3の実施形態と同様の熱拡散部材10を使用し、熱拡散シート101の断熱シート102を発熱部品3の上部ではなく、筐体1の厚みが薄い箇所に位置するように配置している。
【0055】
このような筺体構造の場合、発熱部品3で発生した熱を熱拡散シート101で拡散するものの、厚みのある箇所では熱は筐体表面に伝わり難く、それ以外の筐体の厚みが薄い部分では筐体内部の熱が筐体表面に伝わり易い。このため、筐体の厚みが薄い部分に断熱シート102を追加することで、筐体表面の温度上昇を均一にすることができる。
【0056】
第6の実施形態は筺体壁の厚みが同一であっても、筺体壁の使用材料により部分的に熱伝達量の差異が生じる場合にも、適宜、断熱シート102の位置を設定することで同様に実施することが可能である。
【0057】
第6の実施形態は第2、4、5の実施形態の構成の熱拡散部材を用いて実施することができることは明らかである。
【0058】
(第7の実施形態)
以上の実施形態では、熱拡散部材について熱拡散層、断熱層及び熱伝導層の部材の各組み合わせの例を示したが、1つの熱拡散部材について熱拡散層、断熱層及び熱伝導層の部材の複数の組み合わせを構成することが可能である。
【0059】
図9は本発明の第7の実施形態の筐体の断面構造を示す図である。以上の実施形態と同一の構成は同一符号で示している。本実施形態は単一の熱拡散シートの断熱層を断熱シートと空間の2つで構成した熱拡散部材11を用いた例である。熱拡散部材11は熱拡散シート111と熱伝導シート113と断熱層とからなり、断熱層は発熱部品3の上部の断熱シート112aと他の筺体の位置の空間112bとで構成している。
【0060】
第7の実施形態は第2〜5の実施形態の熱拡散シートの構成の組み合わせにより同様に実施できることは明らかである。
【0061】
(他の実施形態)
更に、本発明の熱拡散部材の利用形態はユーザーの携帯端末等の使用形態等に応じて適宜変更することが可能である。例えば、ユーザーが携帯端末等を手で握って使用する際、樹脂筐体等に比べ手に対する熱伝導率が高い金属等が露出している箇所や、温度上昇により不快感を与えやすい箇所の下部には断熱層(シート)等を設け、ユーザーが触らない箇所には熱伝導層(シート)を設ける等、筐体の構造(デザイン)、挿入可能な層(シート)の厚みに応じて、基板上の発熱部品から筐体への熱の伝わり方を制御することで、各種の構成の変更が可能である。
【0062】
また、以上説明した実施形態において、熱拡散層(シート)、熱伝導層(シート)及び断熱層(シート)の少なくとも1つをシート状部材により構成することができ、また、少なくともその何れかを接着テープの役割を兼ねるように構成することができる。
【0063】
例えば、熱拡散層(シート)に対し、両面接着テープの役割を兼ねる熱伝導シート及び断熱シートを接着することで熱拡散部材を熱拡散シート部材等とすると、製作の容易化が可能である。更に、筐体1、発熱部品3との固定のための接着テープの役割を兼ねるように構成することが可能である。
【0064】
また、熱伝導シートと断熱シートは相対的に熱伝導率が十分に異なっていれば良いので、必ずしも専用に作られたシートに限られるものではなく、一般的な接着シートであって、熱伝導シートとしては熱伝導率が高いものを用い、断熱シートとして熱伝導率が低いものを用いることができる。
【0065】
更に、熱伝導シート及び断熱シートとしては、熱伝導率が異なる3種類以上のシートを組み合わせることで、より効率的に熱拡散を行うことを可能に構成することができる。
【0066】
以上のように本発明により、熱拡散層(シート)と断熱層(シート)、熱伝導層(シート)を組み合わせて使用することにより、筺体の表面温度分布の均一化を可能とし、より効率的に筺体の熱を拡散することが可能な構造を提供することができる。
【0067】
特に熱拡散部材をシート状として構成することにより、筺体内壁形状にかかわらず設置可能であり、装置厚みを増加させることなく、発熱を拡散させることができる。
【0068】
また、各シートの材料、形状及び配置は容易に変更できるため、部品配置や部品の発熱量に応じて、必要な拡散性能を実現可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、携帯電話機やPHS、携帯型TVゲーム機等の携帯型電子機器の他に電子機器一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 筺体
2 プリント配線基板(基板)
3 発熱部品
4 部品
5、6、7、8、9、10、11 熱拡散部材
15 熱伝導量
16、50、61、71、81、91、101、111 熱拡散シート
17 押当部材
18 内壁面
19 切込み
51 熱拡散層
52 断熱層
53 熱伝導層
62、72、102a、112 断熱シート
63、83、113 熱伝導シート
82、92、112b 空間(空気)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品の熱を筺体に放熱する熱拡散部材を備える電子機器であって、
前記熱拡散部材は、熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成し、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を有する側を前記筺体の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材の熱拡散層を有する側を前記発熱部品と熱的に結合したことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記熱拡散部材の部分的な断熱層以外の部分に熱伝導層を形成したことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記機熱拡散部材の部分的な断熱層を前記熱拡散層の一面を含む内側に形成したことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記熱拡散部材の部分的な断熱層は、前記熱拡散部材を熱的に結合した筺体の外壁面の温度分布を均一化するように形成したことを特徴とする請求項1から3の何れかの請求項記載の電子機器。
【請求項5】
前記熱拡散部材の部分的な断熱層を筺体内の前記発熱部品を含む領域に形成したことを特徴とする請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
前記熱拡散部材の部分的な断熱層を空気層として形成したことを特徴とする請求項1から5の何れかの請求項記載の電子機器。
【請求項7】
前記熱拡散層、断熱層又は熱伝導層の少なくとも何れかをシート状部材で形成したことを特徴とする請求項2から6の何れかの請求項記載の電子機器。
【請求項8】
前記シート状部材は接着テープの機能を備えることを特徴とする請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
携帯端末であることを特徴とする請求項1ないし8の何れかの請求項記載の電子機器。
【請求項10】
発熱部品の熱を筺体に放熱する熱拡散部材を備える電子機器の製法であって、
熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成した熱拡散部材を製作する第1の工程と、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を有する側を前記筺体の内壁面に熱的に結合し、前記熱拡散部材の熱拡散層を有する側を前記発熱部品と熱的に結合する第2の工程と、からなることを特徴とする電子機器の製法。
【請求項11】
前記第1の工程は、前記熱拡散部材の部分的な断熱層以外の部分に熱伝導層を形成することを特徴とする請求項10記載の電子機器の製法。
【請求項12】
前記第1の工程は、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を前記熱拡散層の一面を含む内側に形成することを特徴とする請求項10記載の電子機器の製法。
【請求項13】
前記第2の工程は、前記熱拡散部材を熱的に結合した筺体の外壁面の温度分布を均一化させることを特徴とする請求項10から12の何れかの請求項記載の電子機器の製法。
【請求項14】
前記第2の工程は、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を筺体内の前記発熱部品に熱的に結合することを特徴とする請求項13記載の電子機器の製法。
【請求項15】
前記第1の工程は、前記熱拡散部材の部分的な断熱層を空気層として形成することを特徴とする請求項11から14の何れかの請求項記載の電子機器の製法。
【請求項16】
前記第1の工程は、前記熱拡散層、断熱層又は熱伝導層の少なくとも何れかをシート状部材で形成する工程を含むことを特徴とする請求項11から15の何れかの請求項記載の電子機器の製法。
【請求項17】
前記シート状部材は接着テープの機能を備えることを特徴とする請求項16記載の電子機器の製法。
【請求項18】
熱拡散層と部分的な断熱層とからなり、厚みを略均一に形成したことを特徴とする熱拡散部材。
【請求項19】
前記部分的な断熱層以外の部分に熱伝導層を形成したことを特徴とする請求項18記載の熱拡散部材。
【請求項20】
前記部分的な断熱層を前記熱拡散層の一面を含む内側に形成したことを特徴とする請求項18記載の熱拡散部材。
【請求項21】
前記部分的な断熱層を有する側が電子機器の筺体の内壁面に結合可能であり、前記熱拡散層を有する側が電子機器の筺体内の発熱部品に結合可能であり、筺体内の熱を筺体に放熱可能であることを特徴とする請求項18から20の何れかの請求項記載の熱拡散部材。
【請求項22】
前記断熱層は、前記筺体の外壁面の温度分布を均一化するように形成したことを特徴とする請求項21記載の熱拡散部材。
【請求項23】
前記断熱層は前記筺体内の前記発熱部品を含む領域に熱的に結合可能であることを特徴とする請求項18から22の何れかの請求項記載の熱拡散部材。
【請求項24】
前記部分的な断熱層を空気層として形成したことを特徴とする請求項18から23の何れかの請求項記載の熱拡散部材。
【請求項25】
前記熱拡散層、断熱層又は熱伝導層の少なくとも何れかをシート状部材で形成したことを特徴とする請求項19から23の何れかの請求項記載の熱拡散部材。
【請求項26】
前記シート状部材は接着テープの機能を備えることを特徴とする請求項25記載の熱拡散部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−251386(P2010−251386A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96505(P2009−96505)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】