説明

熱接着性複合繊維およびクッション材

【課題】耐熱性を有するクッション材に好適に用いられ、且つクッション材の製造工程でのトラブルが発生することのない熱接着性繊維とその熱接着性繊維を用いたクッション材繊維を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが少なくとも繊維表面に露出している複合繊維であって、該ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルの融解温度が140〜190℃であり、且つ、特定の油剤が付与されてなることを特徴とする熱接着性複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性繊維およびこれを用いてなるクッション材に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、車輌用等の比較的高い温度環境下に晒される機会の多い用途に対し、特に耐熱性を有するクッション材などに好適に用いられ、且つクッション材の製造工程でのトラブルが発生することのない熱接着性繊維およびクッション材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維、特にポリエステル繊維は、その優れた寸法安定性、耐候性、機械的特性および耐久性、さらにはリサイクル性等の点から、衣料や産業資材などの用途において不可欠なものとなっており、不織布の分野においても広く使用されている。ルーフィング基材、自動車天井材および緩衝材等に用いられる繊維クッション材として使用される不織布繊維構造体においては、該不織布繊維構造体の構成繊維(以下、母材繊維という)相互間を接着する目的で、熱接着性繊維が広く使用されている。
【0003】
繊維クッション材の母材繊維としては、比較的安価で優れたポリエステル繊維が多く使用されており、該母材繊維を接着する熱接着性繊維もリサイクルの容易性から、ポリエステル系素材を用いたものが多く使用されている。例えば、芯成分がポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)であり、鞘成分がイソフタル酸(以下、IPAという)成分を共重合した低融点の共重合PETとする芯鞘型のポリエステル系の熱接着性繊維では、該熱接着性繊維を接着する温度に合わせて、低融点の共重合PETにおけるIPA成分の共重合率を設計する。
【0004】
一般にPETに対してIPAの共重合率が高くなると、該共重合PETの示差走査熱量計(以下、DSCという)で測定される融解温度は低下する。融解温度とはこの場合、DSCで測定される吸熱ピークに該当する温度をいう。例えば、共重合成分を含有しないホモPETの融解温度をDSCで測定すると250〜260℃の範囲に吸熱ピークが確認されるが、IPA20モル%共重合PETでは該吸熱ピークは210℃まで低下するとともに、吸熱ピークが観測される範囲が広くなる傾向にある。更に、IPA40モル%共重合PETでは、融解温度は110℃程度まで低下するが、融解する温度領域が広くなりすぎるとともに、融解温度の際の吸熱量が低下し、融解ピークが観測できなくなる。この場合、DSCでは融解温度の測定が不可能となるので、融解温度は融点顕微鏡などで測定する。
【0005】
一方、例えばポリエステル繊維を母材繊維としたクッション材を熱融着性繊維とともに熱処理する場合、母材繊維の耐熱性を考慮して、通常は220℃以下の熱処理される。このような熱接着温度に対応すべく、IPA40モル%共重合PETを熱融着成分とすることで融解温度を110℃程度にまで低下させて使用する方法がとられている(特許文献1,特許文献2および特許文献3参照)。しかしながら、IPAを40モル%共重合させると融解温度は低下するが、該融解温度も広くなり、融解開始温度も大幅に低下し、70℃近辺から徐々に融解を開始する。このように、ポリエステル熱融着繊維は、実用的な接着温度で接着を可能にするとともに、一般的にIPAを30〜50モル%共重合した共重合PETが広く使用されている。しかしながら、熱融着成分である共重合PETの融解開始温度も70〜80℃に低下しているために、熱接着されたクッション材を90〜100℃の環境に晒すと、接着点の一部が再融解し、接着点が外れてクッション材が変形するなどの欠点を有している。従って例えば、自動車天井材用途などのように、90〜100℃の環境下に晒される用途では、IPA共重合PETで構成されるポリエステル熱融着性繊維は、クッション材の耐熱性の面で使用できなかった。
【0006】
上記課題の耐熱性を改善すべく、特殊共重合ポリエステルが提案されているが、いずれも特殊な成分を共重合成分に用いる必要があり、原材料コストやポリマーの複雑な製造工程を要し、製造コストが高くなるという問題点がある(特許文献4および特許文献5参照)。
【0007】
また、クッション材は熱接着性繊維と母材繊維とを混綿し、カード機にかけ、不織ウェッブとした後、所定の温度にて熱処理を施し、熱接着性繊維を溶融し接着させることによって得ることができる。ウェッブを形成するカード工程では、通常カードを通過しやすい摩擦特性、静電気を抑制させることが要求される。
【特許文献1】特開昭58−41912号公報
【特許文献2】特開平2−139466号公報
【特許文献3】特開平6−280147号公報
【特許文献4】特開平7−119011号公報
【特許文献5】特開2000−160430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点を解決し、従来技術では達成できなかった、耐熱性を有するクッション材に好適に用いられ、且つクッション材の製造工程でのトラブルが発生することのない熱接着性繊維とその熱接着性繊維を用いたクッション材繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが少なくとも繊維表面に露出している複合繊維であって、該ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルの融解温度が140〜190℃であり、且つ、該繊維表面に(a)平均炭素数が16〜22の飽和脂肪族炭化水素基を有する燐酸エステルカリウム塩50〜70重量%、(b)パラフィンワックス10〜20重量%、(c)カチオン系界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤10〜15重量%、(d)一般式[I]および/または[II]に示される成分4〜15重量%からなる油剤が付与されてなることを特徴とする熱接着性複合繊維。
【0010】
【化1】

【0011】
(ただし、R1は炭素数10〜14の脂肪族炭化水素基、l、mはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、l+m=5〜15である。)
【0012】
【化2】

【0013】
(ただし、R2は炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基、nはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、n=5〜10である。)。
【0014】
2.ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが全酸成分のうち、テレフタル酸または/およびその誘導体が75〜60モル%、イソフタル酸または/およびアジピン酸成分が25〜40モル%で構成されることを特徴とする1.記載の熱接着性複合繊維。
【0015】
3.母材繊維が、1.もしくは2.記載の熱接着性複合繊維により接着されてなることを特徴とするクッション材。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車輌用等の比較的高い温度環境下に晒される機会の多い用途に対し、特に耐熱性を有するクッション材などに好適に用いられ、且つクッション材の製造工程でのトラブルが発生することのない熱接着性繊維および耐熱性に優れたクッション材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱接着性複合繊維は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)系ポリエステルと融解温度が140〜190℃のポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)系共重合ポリエステルからなり、該PBT系共重合ポリエステルが少なくとも一部繊維表面に露出してなる複合繊維である。本発明でいう融解温度とは、DSCで測定される融解曲線において、吸熱ピークに該当する温度をいう。また、DSCで測定される融解曲線において、吸熱ピークが確認できないものは融点顕微鏡で測定した温度をいう。
【0018】
本発明に用いられるPET系ポリエステルとは、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレート単位よりなるポリエステルである。ここで、主たる繰り返し単位よりなるポリエステルとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。但し、10モル%、より好ましくは、5モル%以下の割合でエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。
共重合可能な成分としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等のジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてのヒンダードフェノール誘導体、着色顔料、安定剤、蛍光剤、抗菌剤、消臭剤、強化剤などを添加してもよい。
【0020】
また、本発明に用いられるPBT系共重合ポリエステルとは、繰り返し単位の75〜60モル%がブチレンテレフタレート単位よりなり、25〜40モル%がイソフタル酸成分および/またはアジピン酸成分からなるポリエステルである。ここで、主たる繰り返し単位よりなるポリエステルとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。
【0021】
本発明で用いられる熱接着性複合繊維は、上記のPBT系ポリエステルが少なくとも一部繊維表面に露出してなることが重要であり、形態としては、同心または偏芯の芯鞘型の複合繊維とすることが好ましい。同心の芯鞘型にすると製糸性が良く、偏芯型にすると潜在捲縮性となるので、用途に応じて適切な複合形態を選択することができる。芯鞘型複合繊維の場合の複合比率は、製糸性の面から、20/80〜80/20が好ましく、接着性および高次加工性の面から、より好ましくは40/60〜60/40である。
【0022】
本発明の熱接着性複合繊維は紡糸を行った後、延伸することなく用いても良く、あるいは延伸して用いても良く、所望に応じたけん縮を付与しても良い。また、本発明の熱接着性複合繊維は、長繊維のまま用いることができるが、所望の繊維長に切断して短繊維として用いることができる。
【0023】
繊維長は、3mm以上100mm以下の範囲であることが好ましい。繊維長が3mm未満では、ベース綿との間を架橋する割合が少なくなり、構造体としての剛性に劣るものとなる。また、繊維長が100mmを越える範囲になると、カード通過性等悪化し、製品加工での不具合が生じたりする。製品加工時のカード通過性と不織布の地合を良くするという点から、繊維長は、20〜70mmの範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明の熱接着性複合繊維を用いてクッション材となしたときの、接点数による強度特性へ与える影響を鑑み、熱接着性複合繊維の単繊維繊度は50dtex以下が好ましく、ベースとなる母材繊維との混綿性や高次加工性を考慮すると、より好ましくは10dtex以下である。また、単繊維繊度が0.5dtex以下の範囲になると、溶融後の接点自体が小さくなるため、目標とする剛性が劣るものとなり、好ましくない。単繊維繊度は、接点の十分な剛性を得るという面から、2dtex以上であることが好ましい。
【0025】
本発明において用いられる油剤は、(a)〜(d)の成分を特定の割合で配合したものであり、さらに必要に応じて、抗菌剤、消臭剤、難燃剤などを配合し、低粘度鉱物油などで希釈したストレート型あるいは水溶性エマルジョン型のものである。以下、(a)〜(d)の成分について詳細に説明する。
【0026】
(a)成分は炭素数が16〜22の飽和脂肪族炭化水素基を有する燐酸エステルカリウムであって、主に複合繊維の平滑性を高める作用を有するものであり、特に、ステアリルホスフェートカリウム(C18)、セチルホスフェートカリウム(C16)が好ましい。飽和脂肪族炭化水素基の炭素数が16より小さいと、この成分の脱落が起こり易くなりローラー巻き付きが起こるので好ましくない。一方、炭素数が22を越えると、制電性が悪化するので好ましくない。また、この成分の全油剤に占める配合比率は50〜70重量%であり、50重量%未満であると平滑性および制電性が損なわれ、逆に70重量%を越えると繊維の集束性が不足し、ローラー巻き付きが起こるので好ましくない。
【0027】
(b)成分は、好ましくは融点が40〜80℃のパラフィンワックスであり、金属部分やローラー部分に油剤の粘着性付着物(以下、スカムという)を少なくし、(a)成分の作用をさらに助長するものである。また、この成分の全油剤に占める配合比率は10〜20重量%であり、10重量%未満であるとスカム防止効果が不十分となり、逆に20重量%を越えるとワックスの離型効果が増大し、繊維絡合性が不十分となりローラー巻き付きが起こるので好ましくない。
【0028】
(c)成分は、主に、(a)成分と(b)成分の併用による制電性不足を補う作用を有し、帯電防止能を有するカチオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤であり、特に、カチオン界面活性剤としては第4級アンモニウム塩型、アミド型、スルホニウム型が、またアニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンサルフェート塩がそれぞれ好ましい。この成分の全油剤に占める配合比率は10〜15重量%であり、10重量%未満であると十分な静電気抑制効果が得られず、逆に15重量%を越えると(a)および(b)成分の割合が相対的に少なくなり、平滑性やスカム防止効果が低下するので好ましくない。
【0029】
(d)成分は、(c)成分の作用をさらに助長するものであり、一般式[I]、[II]で示され、特にポリエチレンオキサイドアミノエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを用いるのが好ましい。この成分の全油剤に占める配合比率は4〜15重量%であり、4重量%未満であると低湿時の制電性に欠け、逆に15重量%を越えると(a)〜(c)成分の割合が相対的に少なくなり、平滑性、制電性やスカム防止効果が低下するので好ましくない。
【0030】
【化3】

【0031】
(ただし、R1は炭素数10〜14の脂肪族炭化水素基、l、mはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、l+m=5〜15である。)
【0032】
【化4】

【0033】
(ただし、R2は炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基、nはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、n=5〜10である。)
本発明にかかる上述した油剤の熱接着性複合繊維への付着量は、繊維重量対比0.10〜0.20重量%が好ましく、0.10〜0.16重量%がより好ましい。
【0034】
本発明にかかるクッション材は、本発明の上述した熱接着性複合繊維により母材繊維が接着されて構成されるものである。該クッション材に含まれる熱接着性複合繊維の重量比率は、用途によって選択することができ、また本発明の効果が損なわれない範囲であれば、本発明の熱接着繊維以外の熱接着繊維と併用してもよい。
【0035】
本発明のクッション材は、本発明の熱接着性複合繊維からなる短繊維を、通常のポリエステル繊維等の短繊維(母材繊維)と混綿し、カード機にかけ、不織ウェッブとした後、必要に応じて、ニードルパンチや水流絡合を施した後、上記PBT系共重合ポリエステルの溶融温度以上の温度にて熱処理を施し、熱接着性複合繊維を溶融し接着させることにより得ることができる。
【0036】
本発明のクッション材に用いられる母材繊維は、コストとリサイクル性の面でポリエステル繊維が好ましく用いられる。母材繊維は用途によっても相違するが、一般的には、例えば、クッション材や嵩高が要求されるものであれば、6〜30dtexのポリエステル繊維が用いられ、ソフトな風合いが要求されるものであれば、1〜6dtexのポリエステル繊維が用いられる。また、資源の再利用や環境保護の観点から再生ポリエステル繊維を母材繊維として用いてもよい。さらに2種類以上の母材繊維を用いてもよい。これらの母材繊維は、母材の剛性と接着程度のバランスから、母材繊維/熱接着性複合繊維の混合比が20/80〜80/20重量%の範囲で混合されていることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0038】
(1)融解温度
A.示差走査型熱量計(DSC)で窒素気流下、10℃/分の昇温速度で測定した。
B.上記のDSCで融解温度が確認できないものは融点顕微鏡を用い、10℃/分の昇温速度下で、融解開始温度と融解完了温度を観測し、下式で求めた。
融解温度(℃)=(融解開始温度+融解完了温度)/2。
【0039】
(2)耐熱ヘタリ性評価
適宜条件にて作成したクッション材から、130mm×25mm×10mmの形状に切り出して得られたサンプルの縦方向(130mm)の一端から20mmの領域を台上に固定し、残りの110mmを台から突出させた。次いで、この状態を維持したまま、90℃の温度に設定した恒温槽に8時間放置し、直方体の台から突出した部分の先端における垂れ下がり量(mm)を測定した。判定は次のとおりである。垂れ下がり量が12mm以下のものは耐熱性に優れていると評価できる。
◎:非常に良好(垂れ下がり量 9mm以下)
○:良好 (垂れ下がり量が9mmより大きく12mm以下)
×:不良 (垂れ下がり量が12mmより大きい)。
【0040】
(3)単繊維繊度
JIS L−1015(1999)−8−5−1に示される方法により単繊維繊度の測定を行った。
【0041】
(4)制電性
温度30℃、相対湿度40%の条件下でのカード工程において、ウェッブ上10cmの帯電電位[mV]を測定し、帯電し難い順に以下の3段階で評価した。
1.良好 :−500mV以上0mV以下
2.やや不良:−1000mV以上−500mV未満
3.不良 :−1000mV未満。
【0042】
(実施例1〜3、比較例1〜6)
酸成分としてテレフタル酸ジメチル65mol%とイソフタル酸35mol%を用い、グリコール成分として1,4−ブタンジオール100mol%を用いてエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させ得られたPBT系共重合ポリエステル(A成分、融点160℃)と、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート(B成分)とを、紡糸温度280℃で紡糸口金から吐出させ、引取速度1500m/分にて、複合溶融紡糸し、芯成分がB成分からなり、かつ鞘成分がA成分からなる、芯鞘の複合比率が50:50の芯鞘型複合未延伸糸を得た。次いで、得られた芯鞘複合未延伸糸を、80℃の温度の温水中で3倍に延伸して4.4dtexの延伸糸とし、けん縮付与後、表1に示す油剤をスプレー方式により付与し、次いで、繊維長38mmに切断し短繊維形状の熱接着性複合繊維を得た。
【0043】
得られた熱接着性複合繊維70重量%と、別に開繊機で開繊して得られた繊維長38mm、繊度14.4dtexのポリエチレンテレフタレート繊維30重量%を混綿し、カード機で厚みが30mmで目付が800g/m2のウェッブとなし、このウェッブを表面温度が180℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内で180℃の温度で2分間熱処理し不織布を得た。次いで、得られた不織布を、表面温度が220℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内にて220℃の温度で3分間処理しクッション材を得た。結果を表2および表3に示す。
【0044】
(実施例4)
酸成分としてテレフタル酸ジメチル70mol%とイソフタル酸25mol%及びアジピン酸5mol%を用い、グリコール成分として1,4−ブタンジオール100mol%を用いてエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させ得られたPBT系共重合ポリエステル(A成分、融点169℃)と、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート(B成分)とを、紡糸温度280℃で紡糸口金から吐出させ、引取速度1500m/分にて、複合溶融紡糸し、芯成分がB成分からなり、かつ鞘成分がA成分からなる、芯鞘の複合比率が50:50の芯鞘型複合未延伸糸を得た。次いで、得られた芯鞘複合未延伸糸を、80℃の温度の温水中で3倍に延伸して4.4dtexの延伸糸とし、けん縮付与後、表1に示す油剤をスプレー方式により付与し、次いで、繊維長38mmに切断し短繊維形状の熱接着性複合繊維を得た。
【0045】
得られた熱接着性複合繊維70重量%と、別に開繊機で開繊して得られた繊維長38mm、繊度14.4dtexのポリエチレンテレフタレート繊維30重量%を混綿し、カード機で厚みが30mmで目付が800g/m2のウェッブとなし、このウェッブを表面温度が180℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内で180℃の温度で2分間熱処理し不織布を得た。次いで、得られた不織布を、表面温度が220℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内にて220℃の温度で3分間処理しクッション材を得た。結果を表3に示す。
【0046】
(比較例7)
酸成分としてテレフタル酸ジメチル85mol%とイソフタル酸15mol%を用い、グリコール成分として1,4−ブタンジオール100mol%を用いてエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させ得られたPBT系共重合ポリエステル(A成分、融点200℃)と、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート(B成分)とを、紡糸温度280℃で紡糸口金から吐出させ、引取速度1500m/分にて、複合溶融紡糸し、芯成分がB成分からなり、かつ鞘成分がA成分からなる、芯鞘の複合比率が50:50の芯鞘型複合未延伸糸を得た。次いで、得られた芯鞘複合未延伸糸を、80℃の温度の温水中で3倍に延伸して4.4dtexの延伸糸とし、けん縮付与後、表1に示す油剤をスプレー方式により付与し、次いで、繊維長38mmに切断し短繊維形状の熱接着性複合繊維を得た。
【0047】
得られた熱接着性複合繊維70重量%と、別に開繊機で開繊して得られた繊維長38mm、繊度14.4dtexのポリエチレンテレフタレート繊維30重量%を混綿し、カード機で厚みが30mmで目付が800g/m2のウェッブとなし、このウェッブを表面温度が180℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内で180℃の温度で2分間熱処理し不織布を得た。次いで、得られた不織布を、表面温度が220℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内にて220℃の温度で3分間処理しクッション材を得た。結果を表3に示す。
【0048】
(比較例8)
酸成分としてテレフタル酸ジメチル65mol%とイソフタル酸35mol%を用い、グリコール成分としてエチレングリコール100mol%を用いてエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させ得られたPET系共重合ポリエステル(A成分、融点110℃)と、融点が260℃のポリエチレンテレフタレート(B成分)とを、紡糸温度280℃で紡糸口金から吐出させ、引取速度1500m/分にて、複合溶融紡糸し、芯成分がB成分からなり、かつ鞘成分がA成分からなる、芯鞘の複合比率が50:50の芯鞘型複合未延伸糸を得た。次いで、得られた芯鞘複合未延伸糸を、80℃の温度の温水中で3倍に延伸して4.4dtexの延伸糸とし、けん縮付与後、表1に示す油剤をスプレー方式により付与し、次いで、繊維長38mmに切断し短繊維形状の熱接着性複合繊維を得た。
【0049】
得られた熱接着性複合繊維70重量%と、別に開繊機で開繊して得られた繊維長38mm、繊度14.4dtexのポリエチレンテレフタレート繊維30重量%を混綿し、カード機で厚みが30mmで目付が800g/m2のウェッブとなし、このウェッブを表面温度が180℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内で180℃の温度で2分間熱処理し不織布を得た。次いで、得られた不織布を、表面温度が220℃となった鉄板間に挟み、厚み10mmまで圧縮して熱風乾燥機内にて220℃の温度で3分間処理しクッション材を得た。結果を表3に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1中で使用した化合物はつぎのとおりである。
ステアリルホスフェートカリウム:(製品名:T246(竹本油脂社製))
セチルホスフェートカリウム
パラフィンワックス:(製品名:T246(竹本油脂社製))
トリメチルオクチルアンモニウムジメチルホスフェート:(製品名:T247(竹本油脂社製))
アマイドカチオン
POE燐酸エステル
POEラウリルアミノエーテル:(製品名:T247(竹本油脂社製))
POEパルミチルエーテル:(製品名:T247(竹本油脂社製))
POEラウリルエーテル:(製品名:T246(竹本油脂社製))
ラウリルホスフェートカリウム
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとポリエチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが少なくとも繊維表面に露出している複合繊維であって、該ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルの融解温度が140〜190℃であり、且つ該繊維表面に(a)平均炭素数が16〜22の飽和脂肪族炭化水素基を有する燐酸エステルカリウム塩50〜70重量%、(b)パラフィンワックス10〜20重量%、(c)カチオン系界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤10〜15重量%、(d)一般式[I]および/または[II]に示される成分4〜15重量%からなる油剤が付与されてなることを特徴とする熱接着性複合繊維。
【化1】

(ただし、R1は炭素数10〜14の脂肪族炭化水素基、l、mはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、l+m=5〜15である。)
【化2】

(ただし、R2は炭素数8〜10の脂肪族炭化水素基、nはオキシエチレン基の付加モル数をそれぞれ示し、n=5〜10である。)
【請求項2】
ポリブチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが全酸成分のうち、テレフタル酸または/およびその誘導体が75〜60モル%、イソフタル酸または/およびアジピン酸成分が25〜40モル%で構成されることを特徴とする請求項1記載の熱接着性複合繊維。
【請求項3】
母材繊維が、請求項1もしくは2記載の熱接着性複合繊維により接着されてなることを特徴とするクッション材。

【公開番号】特開2007−154323(P2007−154323A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347302(P2005−347302)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】