説明

熱検査・機械加工システムおよび使用方法

【課題】機械加工、移送および検査のステップ数を減らすと同時に構成要素の品質全体を改善するような改善された熱検査システム、機械加工システム、および使用方法を提供すること。
【解決手段】本出願は、機械の構成要素(130)のための熱画像化・機械加工システム(100)を提供する。熱画像化・機械加工システム(100)は、機械の構成要素(130)に1つまたは複数の孔(140)を穿孔するための機械加工装置(300)を備えた機械加工サブシステム(120)、および機械加工サブシステム(120)のまわりに位置決めされた熱検査サブシステム(110)を含むことができる。熱検査サブシステム(110)は、機械の構成要素(130)内の孔(140)の熱応答を決定することができるように、イメージャ(160)および1つまたは複数の流体供給ライン(205)を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、熱検査・機械加工システムおよびその使用方法に関し、より詳細には、タービンの構成要素などにおける冷却孔の自動化された穿孔および検査のための、関連する機械加工システムと統合された熱検査システム、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンのエーロフォイルなどの高温ガス経路の構成要素は一般に、きわめて高い動作温度に耐えるように先進の冷却技術を使用している。こうした先進技術は、膜冷却の使用を含むことができる。膜冷却された構成要素は通常、手作業のピンチェックなどによって検査される。ピンチェックは一般に、サイズの小さいピンゲージの使用および/または水流の可視化を含む。そうした水流の可視化技術には、水を構成要素を通して流し、水が各フィルム孔から流れていることをオペレータに目視で確認させることが必要である。しかしながら、こうした手作業による手法は定性的であり、オペレータの判断に依存する。
【0003】
赤外線検査技術によって、ほとんど自動化された形で、膜冷却された構成要素の定量的かつ客観的な検査を実施できる可能性がある。しかしながら、赤外線検査システムおよび現行の空気流点検システムは通常、別個の赤外線検査システムおよび空気流点検システムを使用するような矛盾した技術要件を有することがある。そのように別個に使用することによって、時間がかかり、かなり高価になる可能性がある。
【0004】
赤外線検査システムも空気流点検システムも、一般的には、問題の構成要素にすべてのまたはほとんどのフィルム孔が穿孔されるか、あるいは機械加工されて完成した後に用いられる。そのため、例えば不適切に穿孔されたフィルム孔などが検出された場合には、その構成要素を穿孔装置または他の装置に戻してさらに機械加工することが必要になる場合がある。さらに、特に冷却流路内へのレーザ穿孔の場合には、穿孔中に孔の貫通を検知することが難しいことがしばしばである。したがって、周知の機械加工装置および検査技術を用いた複数の検査、移送および機械加工のステップが必要になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0250155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、機械加工、移送および検査のステップ数を減らすと同時に構成要素の品質全体を改善するような改善された熱検査システム、機械加工システム、および使用方法が所望されている。そうした改善されたシステムおよび方法によって、質のよい構成要素を提供する同時に、周知の手動操作に見られる時間的および主観的影響を回避することが可能になる。同様に、そうした改善されたシステムおよび方法によって、より短時間でかつオペレータの関与を少なくして全体的な費用を削減し、質のよい構成要素を提供することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しがたって、本出願は、機械の構成要素のための熱画像化・機械加工システムを提供する。熱画像化・機械加工システムは、機械の構成要素に1つまたは複数の孔を穿孔するための機械加工装置を備えた機械加工サブシステム、および機械加工サブシステムのまわりに位置決めされた熱検査サブシステムを含むことができる。熱検査サブシステムは、機械の構成要素内の孔の熱応答を決定することができるように、イメージャおよび1つまたは複数の流体供給ラインを含むことができる。
【0008】
本出願はさらに、機械の構成要素を機械加工および検査する方法を提供する。方法は、機械の構成要素を通る流体の定常の流量および/または圧力を維持するステップと、機械の構成要素内に少なくとも1つの孔を穿孔するステップと、流量および/または圧力の変化を検出したどうかを判定するステップと、流体を第1の温度、次いで第2の温度で機械の構成要素を通して流すステップと、機械の構成要素内の少なくとも1つの孔を画像化するステップと、機械の構成要素内の少なくとも1つの孔の熱応答が所定の範囲の値を満たすかどうかを判定するステップとを含むことができる。
【0009】
本出願はさらに、高温ガス経路の構成要素のための熱画像化・機械加工システムを提供する。熱画像化・機械加工システムは、高温ガス経路の構成要素に1つまたは複数の孔を穿孔するための穿孔装置を備えた機械加工サブシステム、および機械加工サブシステムのまわりに位置決めされた熱検査サブシステムを含むことができる。熱検査サブシステムは、高温ガス経路の構成要素内の孔の過渡熱応答を決定することができるように、赤外線カメラ、高温空気ラインおよび低温空気ラインを含むことができる。
【0010】
いくつかの図面および添付の特許請求の範囲と併せて以下の詳細な記述を考察すると、当業者には、本出願のこれらのおよび他の特徴ならびに改善点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本明細書に記載される熱検査・機械加工システムの概略図である。
【図2】本明細書に記載される熱検査・機械加工システムの使用における方法ステップの一例の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照するが、複数の図面を通じて、同様の番号は同様の要素を指す。図1は、本明細書において記載される熱検査・機械加工システム100を示している。熱検査・機械加工システム100は、熱検査サブシステム110および機械加工サブシステム120を含むことができる。本明細書において、他のサブシステムおよび他の構成を用いることもできる。
【0013】
熱検査サブシステム110は、複数の冷却用フィルム孔140、複数の内部流路および他のタイプの内部構成を備えた、いくつかの高温ガス経路の構成要素または他のタイプの機械の構成要素130を検査することが可能である。構成要素130の例は、静翼(ノズル)、タービン羽根(ロータ)、燃焼ライナ、他の燃焼システムの構成要素、トランジションピース、シュラウドなど、膜冷却される高温ガス経路の構成要素を含むことができる。
【0014】
熱検査サブシステム110は、流体源150を含むことができる。流体源150は、高温の流れおよび低温の流れを、直接的にまたは間接的に構成要素130の少なくとも1つの内部流路に供給するように構成することができる。本明細書で使用するとき、「流体」という用語は、液体および気体を包含することを理解すべきである。例示的な流体は、圧縮空気などの圧縮ガス、窒素、蒸気、水および任意のニュートン流体を含むことができる。同様に「高温の」および「低温の」という用語は、相対的な意味に用いるにすぎず、特定の値を示すものではない。例えば図1に示す配置では、流体源150は工場空気、すなわち、熱検査・機械加工システム100が内部に収容された組立施設または他の場所の内部の環境条件における「低温の」空気の供給源とすることができる。
【0015】
熱検査サブシステム110はさらに、イメージャ160を含むことができる。イメージャ160は、構成要素130を通る高温および低温の流れに対する構成要素130の過渡熱応答に対応する、時系列の画像を取り込むように構成することができる。熱応答は、構成要素130の外面に対するいくつかの強度または温度の値に対応する。強度の値は、温度を決定するように温度の値と関係付けることができる。それだけに限らないが、赤外線カメラ170などの赤外線検出装置を含めたいくつかのイメージャ160を使用することができる。例として、赤外線カメラ170を、InSb検出器を備えたFLIR SC4000赤外線カメラ16とすることができる。カメラ170は名目上、約3〜5ミクロンの波長範囲で動作し、範囲を約3.9〜5にさらに狭めるフィルタを有することができる。イメージャ160の他の例は、作動高温計(actuating pyrometer)および単点高温計(single point pyrometer)を含むことができる。本明細書において、他のタイプの画像化装置および他の構成を用いることもできる。
【0016】
熱検査サブシステム110はさらに、マニピュレータ180を含むことができる。マニピュレータ180は、イメージャ160および/または構成要素130の他方に対する動きを制御および自動化するように構成することができる。マニピュレータ180は、ロボットアーム190または他のタイプの自動化手段を含むことができる。例えばイメージャ160を、FANUC LR Mate200 iC 6軸ロボットアーム190に取り付けることができる。ロボットアーム190は基部に取り付けることができ、基部は適切な安全インタロックで完全に囲むことができる。本明細書において、他のタイプの位置決め装置および他の構成を用いることもできる。
【0017】
熱検査サブシステム110はさらに、構成要素130に供給された高温および低温の流れを測定するように構成された少なくとも1つの流量計200を含むことができる。特定の実現方法に応じて、流れを加熱から冷却へ、または冷却から加熱へ切り換えることができる。流量計200の例は、音速ノズル、コリオリメータ、層流流量計、オリフィス板、亜音速ベンチュリなどを含むことができる。本明細書において、他のタイプの流れ制御装置および他の構成を用いることもできる。
【0018】
熱検査サブシステム100はさらに、いくつかの空気供給ライン205を含むことができる。この例では、少なくとも1つの低温空気ライン210および少なくとも1つの高温空気ライン220を用いることができる。低温空気ライン210は工場空気を供給することができ、高温空気ライン220は加熱された空気を提供する。したがって、高温空気ライン220は、その内部またはそのまわりにヒータ230を含むことができる。ヒータ230は、所望の加熱過渡プロファイルを与えるプログラム可能なロジックを備えるDC電源(図示せず)に接続された、ニクロムVのワイヤメッシュ30などのメッシュヒータとすることができる。本明細書において、他のタイプのヒータ230を用いることもできる。流れ指示器240(flow director)は、空気の流れを流量計200から低温空気ライン210または高温空気ライン220へ方向付けることができる。流れ指示器240は、ソレノイド弁によって作動される空気圧式の三方弁とすることができる。本明細書において、他のタイプの弁および他の構成の空気供給装置を用いることもできる。
【0019】
検査される構成要素130は、標準的な空気流フィクスチャ(fixture)250内に位置決めすることができる。空気フィクスチャ250は、構成要素がフィルム孔の空気流の仕様を満たすかどうかなどを判定するために現在用いられているものと同様とすることができる。空気フィクスチャ250は構成要素130の底部を密閉し、低温空気ライン210および高温空気ライン220と連通する内側のプレナム260から内部流路へ空気が流れるのを可能にする。本明細書において、他のタイプの支持装置および他の構成を用いることもできる。
【0020】
熱検査サブシステム110はさらに、プレナム260内の圧力を測定するための少なくとも1つの圧力センサ270、およびプレナム260内の流体の温度を測定するための少なくとも1つの温度センサ280を含む。追加の圧力センサ270および温度センサ280を、流量計200のまわりおよび他の場所に位置決めすることもできる。本明細書において、他のタイプのセンサ、ならびに他のタイプの装置および構成を用いることもできる。
【0021】
熱検査サブシステム110はさらに、イメージャ160および本明細書において使用される他の装置と通信するプロセッサ290を含むことができる。プロセッサ290は、構成要素130の過渡熱応答を決定し、その過渡熱応答を1つまたは複数の所定の値もしくはベースライン値、または許容可能な範囲の値と比較して、以下にさらに詳しく記載するように構成要素130が所望の仕様を満たすかどうかを判定するように構成することができる。プロセッサ290は、圧力センサ270および温度センサ280、ならびに流量計200に動作可能に接続することもできる。プロセッサ290はさらに、プレナム260内の圧力および温度、ならびに流量計200によって測定された質量流量に基づいて、内部流路の少なくとも1つを通る流量を決定するように構成することができる。具体的には、プロセッサ290は、測定された質量流量、圧力および温度の値を標準的な条件に合わせ、標準化された質量流量、圧力および温度の値をそれぞれのベースライン値と比較して、構成要素130が所望の仕様を満たしているかどうかを判定するように構成することができる。
【0022】
構成要素130は、内部にプレナム260を備えた空気フィクスチャ250内に入れることができる。一連の自動化されたステップによって、構成要素130を適所に固定し、流量計200および圧力センサ270を介して構成要素130を通る所望の空気の質量流量を確立することができる。ロボットアーム190に取り付けられた赤外線カメラ170は、構成要素130上のフィルム孔140を検査するために様々な位置に位置決めすることができる。カメラ170は、構成要素130が高温空気ライン220内のヒータ230を用いて短い加熱過渡状態を経ると、所望の位置における表面温度応答を記録するように作動させることができる。高温の空気によって、ほぼ階段状の温度変化がもたらされる。次いで、ヒータ230が切られると同時に、低温空気ライン210を介してプレナム260に低温の工場空気が送られると、冷却過度状態が生じる。
【0023】
画像処理アルゴリズムを用いて、各フィルム孔140を画定する画素を識別することができる。具体的には、プロセッサ290は、過渡状態の間の1つまたは複数の適当な時間に、強度または温度の値の2次導関数を問い合わせることによって、過渡熱応答を決定するように構成することができる。1次導関数を用いることもできる。プロセッサ290は、強度または温度の値の導関数を、1つまたは複数の所定の値もしくはベースライン値、または許容可能な範囲の値と比較して、構成要素130が所望の仕様を満たすかどうかを判定することによって比較を行うように構成することができる。通常、画像のそれぞれはいくつかの画素に対応し、プロセッサ290はさらに、画像における画素の相対的な強度などに基づいて、構成要素130の外面上のフィルム孔140のそれぞれの位置を識別するように構成することができる。一般的に記述すると、赤外線カメラ170が、特定の波長範囲について物体から放射された赤外線放射を測定し画像化する。その放射の強度または大きさは、放射率、周囲の反射および周囲の大気条件を含めた多くの要素に依存する。
【0024】
開放されたフィルム孔140の場合、高温から低温の空気への過渡状態における2次導関数の最大点の大きさは、一般的に高い絶対値になる。フィルム孔140が配置された場所などの要素が、この一般論に影響を及ぼす可能性がある。フィルム孔140はそれぞれ、特徴付けなければならない熱過渡状態に対する特有の応答を有し得る。塞がれたフィルム孔140では対流による付加的な冷却の利点が失われ、伝導のみに依存し、したがって、開放されたフィルム孔140に比べて温度または強度の2次導関数の大きさが減少する。
【0025】
画像化・機械加工システム100の機械加工サブシステム120は、機械加工装置300を含むことができる。機械加工装置300は、穿孔装置310とすることができる。穿孔装置310は、レーザドリル、EMD(放電加工)、機械的ドリル、電気化学的穿孔、アブレシブジェット穿孔、CNCフライス加工(計算機数値制御)などとすることができる。穿孔装置310または他のタイプの機械加工装置300は、多軸装置とすることができる。本明細書において、他のタイプの機械加工装置300を用いることもできる。
【0026】
穿孔装置310または他のタイプの機械加工装置300を、マニピュレータ180のロボットアーム190、または同様のタイプの位置決め装置に取り付けることができる。穿孔装置310も、プロセッサ290と通信することができる。穿孔装置310は、構成要素130内にフィルム孔140を穿孔する。本明細書において、他のタイプの孔または他の操作を用いることもできる。穿孔装置310は、正確な位置決めのために、構成要素130および/または空気フィクスチャ250に関する1つまたは複数の基準点を必要とすることがある。穿孔装置310と構成要素130の間には、一般に少なくとも1つの既知の空間的な関係が必要である。
【0027】
使用時には、熱画像化・機械加工システム100の熱検査サブシステム110および機械加工サブシステム120は、フィルム孔140を提供するとともに、フィルム孔の貫通の検出および確認を行う。したがって、これらのサブシステム110、120を組み合わせることによって、不正確に穿孔された孔140をその場で補正することができる。具体的には、仕様を満たす質のよいフィルム孔140の存在は、それまでの孔の穿孔状態に比べて予想される空気流量の増加を伴う適切な赤外線信号および分析の示度によって認識することができる。
【0028】
各フィルム孔140またはフィルム孔140の並びは、穿孔装置310による穿孔の直後に、自動化された形で検査することができる。室温の工場(「低温の」)空気を、流量計200および低温空気ライン210を介して構成要素130に導入することができる。同じ供給圧力が維持された、または圧力センサ270およびプロセッサ290によって再度確立されたとすれば、孔140を穿孔した後、それまでの孔の穿孔ステップに比べて空気流の既知のまたは予想される増加が観察されるはずである。高温空気ライン220およびヒータ230を介して「高温の」空気を構成要素130に簡単に導入し、続いて、低温空気ライン210および流れ指示器240を介して低温である室温の工場空気を導入することができる。温度の過渡状態は、赤外線カメラ170を用いて記録することができる。換言すれば、初期温度とは異なる温度における制御された流体の流れによって生成される過渡条件に対する構成要素の熱応答を評価する。したがって、空気流および赤外線の測定値によって、(内部の形状の影響などを受けやすい)適切に穿孔され流動させるフィルム孔140の存在が確かめられる。したがって、赤外線データと組み合わせた空気流量および供給圧力の変化によって、貫通を検出することが可能になる。他の過渡状態を用いることもできる。
【0029】
図2は、熱画像化・機械加工システム100の使用の一例における、いくつかの高レベルの方法ステップに関する流れ図320を示している。ステップ330では、熱検査サブアセンブリ110が、流量計200および圧力センサ270によって測定された、構成要素130内への定常のもしくは少なくとも繰り返し可能な圧力および/または流量を維持する。定常の流量または圧力は、通常の器具および測定装置に関連付けられる許容可能な精度および不確定な制限の範囲内で一定であるか、または繰り返し可能であると考えられる。この時点で、流れのデータを記録することが可能であり、使用される穿孔方法および装置に応じて、流れを継続させるまたは終わらせることができる。ステップ340では、機械加工サブアセンブリ120が穿孔装置310によってフィルム孔140を穿孔するか、または既存のフィルム孔140を修正する。ステップ350では、継続された流れまたは再度確立された流れに基づいて、プロセッサ290が流量計200によって検査された流量の増加を、かつ/または圧力センサ270によって圧力の低下を調べる。予想される変化は、ステップ360で方法が継続するような、適切なフィルム孔140が穿孔されたことを示すものである。変化がない(貫通がない)こと、または変化が小さいこと(不適切に穿孔された孔)が検出された場合には、方法はステップ340に戻り、穿孔を継続することができる。
【0030】
ステップ360では、高温空気ライン220およびヒータ230を介して、プレナム260および構成要素130のフィルム孔140に高温の空気を流入させることによって、熱画像化サブアセンブリ110が熱遷移状態を開始する。次いで低温の空気を、低温空気ライン210を通して、プレナム260および構成要素130のフィルム孔140に流入させる。次いでステップ370では、赤外線カメラ170が、問題の1つまたは複数のフィルム孔140の1つまたは複数の画像を撮り、ステップ380において、プロセッサ290により強度を決定する。信号が所定の期待値もしくはベンチマークの期待値、またはある範囲の期待値を満たす(孔が適切に穿孔された)場合には、ステップ390において新しいフィルム孔140のためにプロセスを繰り返すこと、またはさらに穿孔するために、プロセスがステップ340に戻ることができる。次いで、方法が終了する。本明細書において、他のステップを任意の所望の順序で用いることもできる。流動のステップ350および熱遷移状態のステップ360は、構成要素130の処理における他の中間点で所望されるように繰り返すことが可能であり、図2に示すものに限定されないことを認識すべきである。構成要素の加熱およびそれに続く冷却について記載してきたが、構成要素の冷却およびそれに続く加熱によって熱過渡状態を得ることも可能であることをさらに認識すべきである。
【0031】
熱検査サブシステム110は完全に自動化することが可能であり、したがって、現行の検査システムより高速になり、精度が改善される。そのような場合には、熱検査サブシステム110によって、生産のスループットを高めるようにオペレータが他の仕事を行うことが可能になると同時に、検査した構成要素すべてのアーカイブを生成することが適宜可能になる。再加工を要することが確認されたフィルム孔140を、機械加工サブシステム120によって自動的に補正することができる。
【0032】
したがって、熱検査・機械加工システム100によって、生産工場では、空気流の設計仕様および開放された孔の検査に関するガスタービンの構成要素の検査について、費用節約および生産性向上の可能性がもたらされる。節約は、設備費および人件費の削減によって実現することができる。赤外線のピンチェックによって、面倒な手作業によるピンチェックおよび目視による水流の検査が省かれる。オペレータは通常、1つの構成要素の検査に5〜10分を費やすことがある。赤外線のピンチェックを自動化すると、その時間を他の製造領域に再配分することが可能になる。
【0033】
熱検査・機械加工システム100の他の利益には、赤外線のピンチェックの方法によって孔の開放状態の定量的な測定が可能になることが含まれ、一方、ピンチェックおよび水流の操作は定性的であり、オペレータの判断に依存する。さらに、赤外線のピンチェックの示度は電子的に記録することが可能であるが、ピンチェックおよび水流は通常、検査および製造品質を監視するためのデータベースの生成には用いられない。
【0034】
前述のことは、本出願の特定の実施形態のみに関するものであり、以下の特許請求の範囲およびその等価物によって定められる本発明の全体的な趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者が本明細書に関して多くの変更および修正を加えることが可能であることを明確にすべきである。
【符号の説明】
【0035】
100 熱検査・機械加工システム
110 熱検査サブシステム
120 機械加工サブシステム
130 構成要素
140 フィルム孔
150 流体源
160 イメージャ
170 赤外線カメラ
180 マニピュレータ
190 ロボットアーム
200 流量計
205 空気供給ライン
210 低温空気ライン
220 高温空気ライン
230 ヒータ
240 流れ指示器
250 空気フィクスチャ
260 プレナム
270 圧力センサ
280 温度センサ
290 プロセッサ
300 機械加工装置
310 穿孔装置
320 流れ図
330 ステップ
340 ステップ
350 ステップ
360 ステップ
370 ステップ
380 ステップ
390 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の構成要素(130)のための熱画像化・機械加工システム(100)であって、
前記機械の構成要素(130)に1つまたは複数の孔(140)を穿孔するための機械加工装置(300)を備える機械加工サブシステム(120)と、
前記機械加工サブシステム(120)のまわりに位置決めされた熱検査サブシステム(110)であって、前記機械の構成要素(130)内の前記1つまたは複数の孔(140)の熱応答を決定することができるように、イメージャ(160)および1つまたは複数の流体供給ライン(205)を備える熱検査サブシステム(110)と
を含む熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項2】
前記熱検査サブシステム(110)が、前記1つまたは複数の流体供給ライン(205)のまわりに位置決めされた流量計(200)および1つまたは複数の圧力センサ(270)を備える請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項3】
前記熱検査サブシステム(110)が、前記1つまたは複数の流体供給ライン(205)と連通する空気フィクスチャ(250)を備える請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項4】
前記空気フィクスチャ(250)が、前記機械の構成要素(130)と連通する空気プレナム(260)備える請求項3記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項5】
前記1つまたは複数の流体供給ライン(205)が複数の流体供給ライン(205)を含み、前記複数の流体供給ライン(205)が高温空気ライン(220)および低温空気ライン(210)を含む請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項6】
前記高温空気ライン(220)が、そのまわりに位置決めされたヒータ(230)を備える請求項5記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項7】
前記熱検査サブシステム(110)が、前記高温空気ライン(220)および前記低温空気ライン(210)と連通する流れ指示器(240)を備える請求項5記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項8】
前記イメージャ(160)が赤外線カメラ(170)を備える請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項9】
前記熱検査サブシステム(110)がマニピュレータ(180)を備え、その上に前記イメージャ(160)が位置決めされる請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項10】
前記マニピュレータ(180)がロボットアーム(190)を備える請求項9記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項11】
前記機械加工装置(300)が穿孔装置(310)を備える請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項12】
プロセッサ(290)をさらに備え、前記プロセッサ(290)が、過渡状態のために前記イメージャ(160)によって取り込まれた1つまたは複数の強度または温度の値の導関数を問い合わせることによって、前記熱応答を決定する請求項1記載の熱画像化・機械加工システム(100)。
【請求項13】
機械の構成要素(130)を機械加工および検査する方法であって、
前記機械の構成要素(130)を通るガスの繰り返し可能な流量および/または圧力を維持するステップと、
前記機械の構成要素(130)内に孔(140)を穿孔するステップと、
前記流量および/または前記圧力の変化を検出したどうかを判定するステップと、
前記ガスを第1の温度、次いで第2の温度で前記機械の構成要素(130)を通して流すステップと、
前記機械の構成要素(130)内の前記孔(140)を画像化するステップと、
前記機械の構成要素(130)内の前記孔(140)の熱応答が所定の範囲の値を満たすかどうかを判定するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記流量および/または前記圧力の変化が検出されなかった場合に、さらなる穿孔ステップを含む請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記熱応答が前記所定の値を満たさない場合に、さらなる穿孔ステップを含む請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−127959(P2012−127959A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272884(P2011−272884)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】