説明

熱水生成装置およびこれを用いた蒸気給湯システム

【課題】所定温度の熱水に見合った蒸気通路の開度調節が適正に行える熱水生成装置を提供する。
【解決手段】蒸気Sの熱で冷水Cを加熱して熱水Hを生成する熱交換器11と、熱水Hが所定温度となるように熱交換器11への蒸気Sの供給量を調節する蒸気調節弁17とを備え、蒸気調節弁17は、ハウジング50内に、熱交換器11へ蒸気Sを供給する蒸気通路13の開度を調節する調節弁部55と、熱水Hの温度に応じて伸縮する感熱素子54により、調節弁部55を駆動する駆動部53とを有し、ハウジング50に、感熱素子54の感熱部の端面に接触するとともに外周の少なくとも一部分を隙間を介して覆い、熱交換器11からの熱水Hを導出する熱水通路14の一部を形成するカバー51が取り付けられており、カバー51がハウジング50よりも熱伝導率の高い材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気で冷水を加熱することにより熱水を生成する熱水生成装置およびこれを用いた蒸気給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気の熱で冷水を加熱して熱水を得る熱水生成装置として、蒸気の熱で冷水を加熱することにより熱水を生成する熱交換器と、熱水が所定温度となるように前記熱交換器への蒸気の供給量を調節する蒸気調節弁とを備えたものがある。蒸気調節弁は、ハウジング内に前記熱交換器へ蒸気を供給する蒸気通路の開度を調節する調節弁部と、前記熱水の温度に応じて伸縮する感熱素子により前記調節弁部を駆動する駆動部とを有し、前記ハウジングの底部には、前記感熱素子に接触して熱水通路の一部を形成するカバーが設けられた構成となっている。このような熱水生成装置によれば、熱水の温度は常に駆動部の感熱素子で検知され、検知した熱水の温度に応じて調節弁部を駆動することにより熱交換器への蒸気の供給量が調節されて、所定温度の熱水が得られるようになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記熱水生成装置の場合、蒸気調節弁のハウジングとこのハウジング底部に設けられるカバーとがステンレスのような比較的熱伝導率の低い材料で形成されているため、蒸気調節弁の熱水通路内の熱水の温度が変化しても、カバーの温度がこれに追従して変化するのが遅れる。その結果、カバーに接触している感熱素子の温度検知にも遅れが生じ、蒸気の供給量の調節が遅れて、熱水が所定温度からずれてしまう問題があった。
【0005】
本発明の目的は、所定温度の熱水に見合った蒸気通路の開度調節が行える熱水生成装置およびこれを用いた蒸気給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明にかかる熱水生成装置は、蒸気の熱で冷水を加熱することにより熱水を生成する熱交換器と、前記熱水が所定温度となるように熱交換器への蒸気の供給量を調節する蒸気調節弁とを備え、前記蒸気調節弁は、ハウジング内に、前記熱交換器へ蒸気を供給する蒸気通路の開度を調節する調節弁部と、前記熱水の温度に応じて伸縮する感熱素子により前記調節弁部を駆動する駆動部とを有し、前記ハウジングに、前記感熱素子の感熱部の一端面に接触するとともに外周の少なくとも一部分を隙間を介して覆い、前記熱交換器からの熱水を導出する熱水通路の一部を形成するカバーが取り付けられており、前記カバーが前記ハウジングよりも熱伝導率の高い材料により形成されている。
【0007】
この構成によれば、熱交換器により蒸気の熱で冷水を加熱して熱水を生成する際、熱水が所定温度となるように、蒸気調節弁により熱交換器への蒸気の供給量が調節される。このとき、蒸気調節弁のハウジングに取り付けられたカバーは前記ハウジングよりも熱伝導率の高い材料により形成されているので、熱水の温度変化に速やかに追従して温度が変化する。駆動部の感熱素子は一端面がカバーに接触し、かつ外周の少なくとも一部分が隙間を介してカバーにより覆われているので、カバーとともに速やかに温度変化し、調節弁部を駆動する。これにより、熱交換器へ蒸気を供給する蒸気通路の開度が適正に調節される。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記カバーが、隙間を介して前記感熱部の外周の全体を覆っている。これにより、感熱素子の温度がカバーとともに一層速やかに変化するので、熱交換器へ蒸気を供給する蒸気通路の開度がより適正に調節される。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記カバーが、100℃での熱伝導率60W/(m・K)以上の材料、例えば黄銅(89W/(m・K))からなる。蒸気調節弁のハウジングは、強度向上のため通常、ステンレス(熱伝導率17W/(m・K))のような熱膨張率の低い材料により形成されている。したがって、カバーが熱伝導率60W/(m・K)以上の材料、例えば黄銅で形成されることで、熱水温度変化に速やかに追従して温度変化する。
【0010】
本発明にかかる第1の蒸気給湯システムは、本発明の熱水生成装置と、その熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁とを備え、前記蒸気調節弁よりも下位に前記湯水混合弁が配置され、前記蒸気調節弁から湯水混合弁までの熱水通路は、前記湯水混合弁に向かって下降する下降部分と水平部分、または下降部分のみを有している。
【0011】
この構成によると、一般に、熱は上方へ伝わるので、給湯停止時に、熱水通路の熱が前記下降部分を伝わって上昇し、蒸気調節弁へ向かう。その結果、湯水混合弁が停止した熱水により長時間加熱することが防止される。また、下降部分に滞留した熱水は放熱により温度低下が生じる。これにより、湯水混合弁の耐久性が向上する。
【0012】
また、本発明にかかる第2の蒸気給湯システムは、本発明の熱水生成装置と、その熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記冷水を湯水混合弁に供給する混合用冷水通路に設けられた第1逆止弁とを備え、前記第1逆止弁は下部に冷水入口を、上部に冷水出口をそれぞれ有し、前記混合用冷水通路は、少なくとも下流部が、下方から前記冷水入口に冷水を流入させるように設定されている。
【0013】
この構成によると、第1逆止弁は縦置きに設けられることになり、冷水は下側から第1逆止弁の冷水入口に入り、上側の冷水出口から出るので、冷水出口には湯水混合弁内の熱水からの熱伝導が及ぶとしても、下方の冷水入口、これに連なる混合用冷水通路および第1逆止弁内部は、熱水による熱伝達の影響をうけない。したがって、給湯開始時に、熱伝達の影響を受けずに温度上昇していない冷水が湯水混合弁で熱水と混合されるので、設定温度の温水が得られる。
【0014】
さらに、本発明にかかる第3の蒸気給湯システムは、本発明の熱水生成装置と、その熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記冷水を湯水混合弁に供給する混合用冷水通路に設けられた第1逆止弁と、冷水を前記熱交換器に供給する熱交換器用冷水通路に設けられた第2逆止弁とを備え、さらに、冷水を前記両冷水通路に分岐させて導入する主冷水通路を有し、この主冷水通路に第3逆止弁が設けられている。
【0015】
この構成によると、第1および第2逆止弁が不具合により閉弁しないとき、第3逆止弁を設けたことで給水側への熱水の逆流を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蒸気調節弁のハウジングに取り付けられたカバーは前記ハウジングよりも熱伝導率の高い材料により形成されているので、熱水の温度変化に速やかに追従して温度が変化する。駆動部の感熱素子は、端面がカバーに接触し、かつ外周の少なくとも一部分が隙間を介してカバーにより覆われているので、カバーとともに速やかに温度変化し、調節弁部を駆動する。これにより、熱交換器の蒸気供給量が適正に調節されて、熱交換器から所定温度の熱水が安定して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかる蒸気給湯システムの系統図である。
【図2】同蒸気給湯システムの正面図である。
【図3】同蒸気給湯システムの平面図である。
【図4】同蒸気給湯システムの側面図である。
【図5】開弁時の蒸気調節弁の縦断面図である。
【図6】閉弁時の蒸気調節弁の縦断面図である。
【図7】湯水混合弁の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら詳述する。図1において、本発明の第1実施形態にかかる蒸気給湯システム10は、設定給湯温度の温水Mを給湯する用途に適用できるものであり、加熱流体として飽和蒸気Sの熱で被加熱流体である冷水C(例えば水道水)を加熱することにより高温の熱水Hを生成する熱交換器11を備えている。このような熱交換器11としては、例えば複数のプレートを重ねて、その間に図示しない加熱流体Sの通路と冷水Cの通路とを、前記プレートを介して交互に配置したプレート型熱交換器と呼ばれるものが、小型で熱交換容量が比較的大きいことから望ましい。
【0019】
前記蒸気給湯システム10は、外部の給水源WAから供給される冷水Cを前記熱交換器11に導く主冷水通路12と、蒸気供給源(例えばボイラ)VAから供給される飽和蒸気Sを前記熱交換器11に導く蒸気通路13と、前記熱交換器11で生成された高温の熱水Hを導出する熱水通路14と、熱交換器11を通った加熱後のドレンDを排出する復水排出通路15を有している。
【0020】
蒸気通路13には蒸気調節弁17が設けられており、この蒸気調節弁17は、熱交換器11から導入される熱水Hが所定温度、例えば90℃となるように熱交換器11への蒸気Sの供給量を調節するようになっており、詳しくは後述する。
【0021】
熱交換器11からの熱水通路14には湯水混合弁44が設けられており、この湯水混合弁44は、熱交換器11からの高温の熱水Hに給水源WAからの冷水Cを混合して、所望の設定給湯温度に調節された温水Mとし、ダンパー36を経て、給湯出口となる給湯口弁(カラン)24を介して給湯する。湯水混合弁44の具体的構成については後述する。
【0022】
主冷水通路12から分岐して前記湯水混合弁44に至る混合用冷水通路42には第1逆止弁31が、また主冷水通路12から分岐して熱交換器11に冷水Cを供給する熱交換器用冷水通路43には第2逆止弁32が、それぞれ設けられている。前記主冷水通路12には前記混合用冷水通路42と熱交換器用冷水通路43との分岐点の上流側に第3逆止弁33が設けられている。また、復水排出通路15には、ドレンDのみを排出し、蒸気Sをトラップする周知の蒸気トラップ34が設けられている。
【0023】
つぎに、熱水生成装置を含む蒸気給湯システムの具体的構造について図2から図4を参照しながら説明する。図2は蒸気給湯システムの正面図を示したもので、図1と同一部分には同一の符号が付されている。
【0024】
図2に示すように、各部品や部材は鉛直な取付板50の前面にコンパクトに配置されている。蒸気通路13の入口13aは左上に、主冷水通路12の入口12aは右上に、復水排出通路15の出口15aは左下に、ダンパー36の排出口36aは右下に、それぞれ配置されている。熱交換器11は左側に配置され、その上部の右側に蒸気調節弁17が、下部の右側に第2逆止弁32が配置され、蒸気Sは蒸気調節弁17を経て熱交換器11の上部の蒸気導入孔11aから熱交換器11に導入される。冷水Cは第2逆止弁32を経て熱交換器11の下部の冷水導入孔11bから熱交換器11に導入される。蒸気調節弁17の右側で蒸気調節弁17よりも下位に前記湯水混合弁44が配置され、湯水混合弁44の右側下方に第1逆止弁31が配置されている。混合用冷水通路42は主冷水通路12の分岐点Pから下降して湯水混合弁44の後方を通り、上方へ折り返して第1逆止弁31につながり、さらに湯水混合弁44に連結される。熱交換器用冷水通路43は分岐点Pから下降して湯水混合弁44および第1逆止弁31の後方を通り、下側から回り込んで上方へ折り返して第2逆止弁32に連結される。蒸気トラップ34は第2逆止弁32の後方に配置される。第3逆止弁33は二点鎖線で示すように、オプションとして右上の主冷水通路12に設けられる。
【0025】
前記蒸気調節弁17から湯水混合弁44までの熱水通路14は湯水混合弁44に向かって下降する下降部分141と水平部分142とを有している。ただし、下降部分141(例えば斜め下り勾配の部分)のみを有する構造でもよい。このようにすることで、一般に、熱は上方へ伝わるので、給湯停止時に、熱水通路14の熱が前記下降部分141を伝わって上昇し、蒸気調節弁17へ向かう。また、下降部分141に停滞した熱水Hは、放熱により温度低下する。熱交換器11から導出される熱水Hの熱は、最上部である熱交換器11の導出口と同じ高さに配置されている蒸気調節弁17の出口で滞留する。その結果、湯水混合弁44が停止した熱水により長時間加熱することが防止される。これにより、湯水混合弁44の耐久性が向上する。
【0026】
冷水Cを湯水混合弁44に供給する混合用冷水通路42に設けられた第1逆止弁31は下部に冷水入口31aを、上部に冷水出口31bをそれぞれ有し、前記混合用冷水通路42は、少なくとも下流部42aが、下方から前記冷水入口31aに冷水Cを流入させるように設定されている。つまり、第1逆止弁31は縦置きに設けられており、冷水Cは下側から第1逆止弁31の冷水入口31aに入り、上側の冷水出口31bから出るので、冷水出口31bには湯水混合弁44内の熱水Hからの熱伝導が及ぶとしても、下方の冷水入口31a、これに連なる混合用冷水通路42および第1逆止弁31内部は、熱水Hによる熱伝達の影響を受けない。したがって、給湯開始時に、温度上昇していない冷水Cが湯水混合弁44で熱水Hと混合されるので、設定温度の温水Mが得られる。これに対し、第1逆止弁31の冷水入口31aが上向きに、または横向きになるように混合用冷水通路42に設けられている場合、第1逆止弁31内部および冷水入口31aへの熱伝達によって給水される冷水Cの温度が上昇し、給湯開始時に、この温度が上昇した冷水Cが湯水混合弁44で熱水Hと混合されるので、設定温度より高温の温水Mが吐出するおそれがある。
【0027】
湯水混合弁44で熱水Hと冷水Cが所定割合で混合された温水Mは、ダンパー36で急激な温度上昇が抑制されて排出口36aから排出される。
【0028】
つぎに、蒸気調節弁17について図5および図6により具体的に説明する。図5は蒸気調節弁17の開弁時を、図6はその閉弁時を示す。図5に示すように、この蒸気調節弁17は、ハウジング50内に熱交換器11へ蒸気Sを供給する蒸気通路13の開度を調節する調節弁部55と、熱水Hの温度に応じて伸縮する感熱素子54により、前記調節弁部55を駆動する駆動部53とを有する。前記ハウジング50に、前記感熱素子54の感熱部54aの一端面である下端面に接触するとともに外周の少なくとも一部分を隙間69を介して覆い、熱交換器11からの熱水Hを導出する熱水通路14の一部を形成するカバー51が取り付けられている。
【0029】
前記カバー51はハウジング50よりも熱伝導率の高い材料により形成されている。ハウジング50は強度向上のために、ステンレス(熱伝導率17W/(m・K))のような熱伝導率が比較的低い材料で形成されているのに対し、カバー51は、100℃での熱伝導率60W/(m・K)以上の材料、例えば黄銅(89W/(m・K))で形成されている。このカバー51の材料としては、熱伝導率が60〜500W/(m・K)、好ましくは70から450W/(m・K)、より好ましくは80〜400W/(m・K)である。
【0030】
蒸気調節弁17の開弁時、図1の蒸気供給源VAからの蒸気Sが、蒸気調節弁17の蒸気導入通路13aから調節弁部55内に導入され、弁体57と弁口52との間を通って蒸気導出通路13bから導出され、図1の熱交換器11に向かう。熱交換器11での蒸気Sと冷水Cとの熱交換により生成された熱水Hは、図5の熱水導入通路14aから駆動部53内に導入され、熱水導出通路14bを経て図1に示す湯水混合弁44に導入される。温度に応じて感熱素子54が伸縮し、調節弁部55の開度を調整する。例えば、図5の蒸気調節弁17に導入される熱水Hが所定温度よりも高温の場合、感熱素子54の筒状のガイド54bにより案内されたピストン54cが弁軸58を押し上げて、調節弁部55の弁体57を復帰ばね49Aのばね力に抗して上方へ駆動する。これにより、調節弁部55の弁開度が小さくなる。蒸気Sの供給量が多い場合には、図6に示すように、弁口52が弁体57によって塞がれて閉弁される。弁体57と弁軸58の間に、感熱素子54の過大な押圧力が弁体57に作用するのを防止するダンパーばね49Bが介装されている。
【0031】
つぎに、湯水混合弁44の具体的構成について図7を参照しながら説明する。同図に示すように、この湯水混合弁44は、左側に熱水Hが導入される熱水導入通路66が、右側に冷水Cが導入される冷水導入通路67が設けられ、上部寄りに熱水Hと冷水Cとが混合された温水Mを取出す温水出口70が設けられている。この温水出口70は図1のダンパー36を経て給湯口弁24に接続される。この湯水混合弁44は、周知の構造のものであって、駆動部60と調節弁部61とからなり、駆動部60の感熱素子62が、その感熱部62aで温水Mの温度を検知し、ガイド62bからピストン62cを突出または後退させることで調節弁部61の弁体68を上下動させ、この弁体68の外周に設けられたリング68aを上下させる。これにより、リング68aの下端の熱水側弁口66aと、上端の冷水側弁口67aの開度を調節する。この開度調節により、湯水混合弁44内に導入する熱水Hと冷水Cとの混合割合を決め、所定温度の温水Mが温水出口70から取り出される。リング18aの外周面には、熱水側と冷水側を分離するためのOリング73が装着されている。温水Mの温度の設定は、上部に設けられた温度調節ダイヤル44aの回動により行われる。
【0032】
以上説明した本発明の動作について説明する。図1において、冷水Cと蒸気Sとは熱交換器11で熱交換され、冷水Cが蒸気Sにより加熱されて熱水Hが生成される。この熱水Hは蒸気調節弁17を経由して湯水混合弁44に導入され、湯水混合弁44で冷水Cと混合されて温水Mが得られる。熱水Hの温度は常に、図5に示す蒸気調節弁17の感熱素子54の感熱部54で検知され、熱水Hが所定温度となるように、蒸気調節弁17により熱交換器11への蒸気Sの供給量が調節される。
【0033】
このとき、図5の蒸気調節弁17のハウジング50の底部に取り付けられたカバー51は、前述したとおり、ハウジング50よりも熱伝導率の高い材料により形成されているので、熱水Hの温度変化に速やかに追従してその温度が変化する。駆動部53の感熱素子54の感熱部54aは、下端面がカバー51に接触し、かつ外周の少なくとも一部分が隙間69を介してカバー51により覆われているので、カバー51とともに速やかに温度変化する。例えば、熱水Hの温度が上昇したとき、カバー51の温度も速やかに上昇するので、カバー51と接触している感熱素子54も速やかに温度上昇し、調節弁部55を駆動する。これにより、熱交換器11へ蒸気Sを供給する蒸気通路13の開度が速やかに調節されて、熱水Hが所定温度に維持される。
【0034】
比較として、前記カバー51をハウジング50と同一の熱伝導率が比較的低いステンレスのような材料で形成されている場合、カバー51が熱水Hの温度変化に直ちに追従できないので、駆動部53の感熱素子54の温度変化が遅れる結果、駆動部53により駆動される調節弁部55は、所定温度に見合った蒸気通路13の開度調節が適正に行えない。例えば、熱交換器用冷水通路43の給水圧力が0.1MPa、蒸気通路13の蒸気圧力が0.2MPa、蒸気温度(飽和温度)が133℃の条件において、熱水Hが蒸気調節弁17の閉弁温度90℃よりも高温となっても、蒸気通路13の開度調節が遅れて、蒸気調節弁17の調節弁部55は開弁状態のままとなり、蒸気Sが図1の熱交換器11に過剰に供給され続ける結果、熱交換器11内の液側(熱水側)では、熱水Hが120℃以上まで上昇することにより、飽和圧力0.1MPa以上まで上昇し、冷水Cの圧力を超えるため、第2逆止弁32が作動し、熱交換器11内の液側に冷水Cが供給されなくなる。これにより、熱交換器11の液側の残留水が蒸気Sで加熱されてフラッシュ蒸気になる。このフラッシュ蒸気に湯水混合弁44で冷水を混合しても、湯水混合弁44は液体同士の混合を前提としており、気体と液体との混合には不適であるために、設定温度の温水Mを安定に生成することができない。また、フラッシュ蒸気により、温水Mの給湯量が不測に変動するなどの異常作動が生じるとともに、高温のフラッシュ蒸気により、温水混合弁44内の弁体68の外周面に施している樹脂コーティングが剥がれ易くなる。さらに、弁体68のリング68aの外周面をシールしているOリング73が劣化し易くなる。上記の2点から、リング68aの動作が円滑でなくなることにより、所定の弁開度が得られず、温水混合弁44からの給湯温度にばらつきが生じる。
【0035】
また、図1に示したように、冷水Cを両冷水通路42,43に分岐させて導入する主冷水通路12に第3逆止弁33を設けているので、第1および第2逆止弁31,32が不具合により閉弁しないときでも、第3逆止弁33によって給水側への熱水の逆流を防止できる。
【0036】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0037】
10 蒸気給湯システム
11 熱交換器
12 主冷水通路
13 蒸気通路
14 熱水通路
141 下降部分
142 水平部分
15 復水排出通路
17 蒸気調節弁
24 給湯口弁(カラン)
31 第1逆止弁
31a 冷水入口
31b 冷水出口
32 第2逆止弁
33 第3逆止弁
36 ダンパー
34 蒸気トラップ
42 混合用冷水通路
43 熱交換器用冷水通路
44 湯水混合弁
50 ハウジング
51 カバー
53 駆動部
54 感熱素子
54a 感熱部
55 調節弁部
69 隙間
VA 蒸気供給源
WA 給水源
C 冷水
D ドレン
H 熱水
S 蒸気
M 温水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気の熱で冷水を加熱することにより熱水を生成する熱交換器と、
前記熱水が所定温度となるように熱交換器への蒸気の供給量を調節する蒸気調節弁とを備え、
前記蒸気調節弁は、ハウジング内に前記熱交換器へ蒸気を供給する蒸気通路の開度を調節する調節弁部と、前記熱水の温度に応じて伸縮する感熱素子により前記調節弁部を駆動する駆動部とを有し、
前記ハウジングに、前記感熱素子の感熱部の一端面に接触するとともに外周の少なくとも一部分を隙間を介して覆い、前記熱交換器からの熱水を導出する熱水通路の一部を形成するカバーが取り付けられており、
前記カバーが前記ハウジングよりも熱伝導率の高い材料により形成されている熱水生成装置。
【請求項2】
請求項1において、前記カバーが、隙間を介して、前記感熱部の外周の全体を覆っている熱水生成装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記カバーが、100℃での熱伝導率60W/(m・K)以上の材料からなる熱水生成装置。
【請求項4】
請求項3において、前記カバーが黄銅(89W/(m・K))からなる熱水生成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱水生成装置と、その熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁とを備え、
前記蒸気調節弁よりも下位に前記湯水混合弁が配置され、前記蒸気調節弁から湯水混合弁までの熱水通路は、前記湯水混合弁に向かって下降する下降部分と水平部分、または下降部分のみを有している蒸気給湯システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱水生成装置と、前記熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記冷水を湯水混合弁に供給する混合用冷水通路に設けられた第1逆止弁とを備え、
前記第1逆止弁は下部に冷水入口を、上部に冷水出口をそれぞれ有し、前記混合用冷水通路は、少なくとも下流部が、下方から前記冷水入口に冷水を流入させるように設定されている蒸気給湯システム。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱水生成装置と、その熱交換器から蒸気調節弁を通って供給される熱水に冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記冷水を湯水混合弁に供給する混合用冷水通路に設けられた第1逆止弁と、冷水を前記熱交換器に供給する熱交換器用冷水通路に設けられた第2逆止弁とを備え、
さらに、冷水を前記両冷水通路に分岐させて導入する主冷水通路を有し、この主冷水通路に第3逆止弁が設けられている蒸気給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−27297(P2011−27297A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171764(P2009−171764)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000137889)株式会社ミヤワキ (19)
【Fターム(参考)】