説明

熱硬化装置、および、熱硬化方法

【課題】導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制する。
【解決手段】比較的遅い昇温速度で、熱硬化性樹脂の最低粘度を比較的高く維持して、熱硬化性樹脂の熱硬化を行い、その後、比較的速い昇温速度で、急速に熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を備える圧力容器における熱硬化性樹脂を熱硬化する熱硬化装置、および、熱硬化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ライナー(内容器)の外表面に繊維強化プラスチック層を形成することによって製造された圧力容器が知られている。この圧力容器において、繊維強化プラスチック層は、例えば、熱硬化性樹脂が含浸された繊維を、フィラメントワインディング法によって、ライナーの外表面に巻き付けた後に、熱硬化性樹脂を熱硬化することによって形成される。そして、熱硬化性樹脂の熱硬化には、一般に、温風や赤外線等によって、繊維強化プラスチック層の外側から加熱を行う加熱炉が用いられる(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−223243号公報
【特許文献2】特開2011−012764号公報
【特許文献3】特開2007−015226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、繊維強化プラスチック層に利用される繊維が、炭素繊維等の導電性繊維である場合には、熱硬化性樹脂の熱硬化に、電磁誘導加熱(高周波加熱)を用いることができる。この電磁誘導加熱では、電磁誘導により、繊維強化プラスチック層内の導電性繊維が発熱することによって、熱硬化性樹脂が加熱される。そして、電磁誘導加熱によれば、繊維強化プラスチック層の外部から加熱を行う場合よりも、熱硬化性樹脂の硬化温度までの昇温時間を短縮し、熱硬化に要する時間を短縮することができる。
【0005】
しかし、ライナーの外表面に上記繊維を巻き付ける際に、上記繊維は、張力が加えられた状態で、複数層巻き付けられる。また、熱硬化性樹脂は、加熱初期に、熱硬化する前に、一旦、粘度が低下して、流動性が高くなる。このため、熱硬化性樹脂の加熱時に、繊維強化プラスチック層における内層側の流動性が高くなった熱硬化性樹脂が、繊維に加えられた張力によって、外層側に染み出す。そして、この熱硬化性樹脂の染み出しが多いほど、繊維強化プラスチック層の内層側の熱硬化性樹脂の体積率が低くなり、換言すれば、繊維体積率が高くなり、圧力容器の疲労強度の低下を招く。さらに、熱硬化性樹脂は、加熱時の昇温速度が速いほど、最低粘度(加熱初期に、一旦、粘度が低下してから増加するときの最低値)が低くなり、流動性が高くなる傾向にある。このため、電磁誘導加熱によって、熱硬化性樹脂を急速に加熱する場合には、繊維強化プラスチック層の外側から加熱を行う場合よりも、繊維強化プラスチック層の内層側の繊維体積率が高くなりやすく、圧力容器の疲労強度の低下は、より顕著になる。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における前記熱硬化性樹脂を熱硬化する熱硬化装置であって、
前記圧力容器が配置される空間を取り巻くように設けられ、前記空間内に交流磁界を発生させて、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行うための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに交流電流を流すための交流電源と、
を含む誘導加熱部を備え、
前記誘導加熱部は、第1の昇温速度で、前記誘導加熱を行った後に、前記第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で、前記誘導加熱を行うように構成されている、
熱硬化装置。
【0009】
適用例1の熱硬化装置では、まず、第2の昇温速度よりも遅い第1の昇温速度で上記誘導加熱を行い、熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。すなわち、第2の昇温速度で熱硬化性樹脂の加熱を行う場合よりも、熱硬化性樹脂の最低粘度を高く維持して、熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。このとき、熱硬化性樹脂の粘度が、一旦、最低粘度に低下し、熱硬化によって増加した場合には、その後、昇温速度を増加させても、熱硬化性樹脂の粘度が再度低下することはない。そして、熱硬化性樹脂の粘度が最低粘度よりも増加した後に、第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で上記誘導加熱を行い、急速に熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。こうすることによって、上記圧力容器における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0010】
なお、第1の昇温速度は、熱硬化性樹脂の最低粘度が、所望の値(例えば、1(Pa・s))以上となるように設定される。
【0011】
[適用例2]
適用例1記載の熱硬化装置であって、
前記誘導加熱コイルは、
前記第1の昇温速度で、前記誘導加熱を行うための第1のコイル部と、
前記第2の昇温速度で、前記誘導加熱を行うための第2のコイル部と、
を含み、
前記熱硬化装置は、さらに、前記圧力容器を、前記第1のコイル部内から前記第2のコイル部内に搬送する搬送機構を備える、
熱硬化装置。
【0012】
適用例2の熱硬化装置では、搬送機構によって、上記圧力容器を、第1のコイル部内から第2のコイル部内に搬送することによって、第1の昇温速度での上記誘導加熱、および、第2の昇温速度での上記誘導加熱を順次行うことができる。
【0013】
[適用例3]
適用例2記載の熱硬化装置であって、
前記第1のコイル部の直径は、前記第2のコイル部の直径よりも大きく、
前記交流電源は、前記第1のコイル部、および、前記第2のコイル部に、同一の交流電流を流す、
熱硬化装置。
【0014】
適用例3の熱硬化装置では、第1のコイル部内の中心軸上、および、第2のコイル部内の中心軸上に、上記圧力容器を配置したときに、第1のコイル部内における上記圧力容器とコイルとのギャップ(距離)は、第2のコイル部内における上記圧力容器とコイルとのギャップよりも大きくなる。したがって、第1のコイル部、および、第2のコイル部に同一の交流電流を流しても、第1のコイル部による昇温速度を、第2のコイル部による昇温速度よりも遅くすることができる。なお、同一の交流電流とは、同一位相、同一周波数、同一電流値の交流電流である。
【0015】
また、適用例3の熱硬化装置では、第1のコイル部、および、第2のコイル部に、それぞれ、異なる交流電流を流すことができる交流電源を必要としない。したがって、熱硬化装置の簡素化を図ることができる。
【0016】
[適用例4]
適用例3記載の熱硬化装置であって、
前記第1のコイル部と、前記第2のコイル部とは、直列に接続されており、
前記誘導加熱コイルは、該誘導加熱コイルの内部に、冷却水を流すための冷却水流路を有しており、
前記熱硬化装置は、さらに、
前記冷却水流路に冷却水を流すための冷却システムを備える、
熱硬化装置。
【0017】
適用例4の熱硬化装置では、第1のコイル部と、第2のコイル部とが、直列に接続されているので、交流電源を1つとすることができる。したがって、熱硬化装置の小型化を図ることができる。
【0018】
また、適用例4の熱硬化装置では、第1のコイル部と、第2のコイル部とが、直列に接続されているので、第1のコイル部、および、第2のコイル部に、連続的に冷却水を流すことができる。したがって、第1のコイル部用の冷却システム、および、第2のコイル部用の冷却システムを個別に備える場合よりも、熱硬化装置の小型化を図ることができる。
【0019】
[適用例5]
適用例2記載の熱硬化装置であって、
前記交流電源は、
前記第1のコイル部に第1の交流電流を流すための第1の電源部と、
前記第2のコイル部に前記第1の交流電流よりも大きい第2の交流電流を流すための第2の電源部と、
を備える熱硬化装置。
【0020】
適用例5の熱硬化装置では、第1のコイル部による第1の昇温速度、および、第2のコイル部による第2の昇温速度を、個別に変更することができる。したがって、熱硬化装置の利便性を向上させることができる。
【0021】
[適用例6]
適用例1記載の熱硬化装置であって、
前記誘導加熱コイルは、直径が一定の単一のコイルからなり、
前記交流電源は、前記誘導加熱コイルに、第1の交流電流を流した後に、前記第1の交流電流よりも大きい第2の交流電流を流す、
熱硬化装置。
【0022】
適用例6の熱硬化装置では、誘導加熱コイルとして、単一のコイルを用いるので、複数のコイルを用いる場合よりも、熱硬化装置の小型化を図ることができる。
【0023】
[適用例7]
適用例1ないし6のいずれかに記載の熱硬化装置であって、さらに、
前記誘導加熱コイルの中心軸に平行または略平行な軸を中心として、前記空間内に配置された前記圧力容器を回転させるための回転機構を備える、
熱硬化装置。
【0024】
適用例7の熱硬化装置では、上記圧力容器が誘導加熱コイルの中心軸とずれた位置に配置された場合であっても、上記誘導加熱を均一に行うことができる。
【0025】
[適用例8]
導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における前記熱硬化性樹脂を熱硬化する熱硬化方法であって、
第1の昇温速度で、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行う第1の誘導加熱工程と、
前記第1の誘導加熱工程の後に、前記第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行う第2の誘導加熱工程と、
を備える熱硬化方法。
【0026】
適用例8の熱硬化方法では、適用例1の熱硬化装置と同様に、上記圧力容器における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0027】
なお、適用例8の熱硬化方法においても、適用例1と同様に、第1の昇温速度は、熱硬化性樹脂の最低粘度が、所望の値(例えば、1(Pa・s))以上となるように設定される。
【0028】
本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略したり、適宜、組み合わせたりして構成することができる。また、本発明は、上述の熱硬化装置、熱硬化方法としての構成の他、上記圧力容器の製造装置、製造方法の発明として構成することもできる。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施例としての熱硬化装置100の概略構成を示す説明図である。
【図2】第1実施例の熱硬化装置100による熱硬化性樹脂の熱硬化方法を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての熱硬化装置100Aの概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明の第3実施例としての熱硬化装置100Bの概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の第4実施例としての熱硬化装置100Cの概略構成を示す説明図である。
【図6】交流電源20Cが誘導加熱コイル10aに流す交流電流(コイル電流)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
A.第1実施例:
A1.熱硬化装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例としての熱硬化装置100の概略構成を示す説明図である。この熱硬化装置100は、導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器200における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する装置である。
【0031】
なお、本実施例では、圧力容器200は、高圧水素を貯蔵するための高圧水素タンクであるものとした。そして、図示は省略するが、この圧力容器200は、ライナーと、繊維強化プラスチック層と、を備えている。ライナーは、圧力容器200の内殻をなし、内容器とも言われる中空状の部材である。本実施例では、ライナーは、円筒形状を有する円筒部と、ドーム形状を有し円筒部の両端部に設けられたドーム部と、を有しているものとした。ライナーは、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の合成樹脂や、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属を用いて作製される。本実施例では、ライナーは、ナイロン系樹脂を用いて一体成形されるものとした。繊維強化プラスチック層は、熱硬化性樹脂が含浸された導電性繊維(例えば、炭素繊維)を、フィラメントワインディング法によって、ライナーの外表面に巻き付けた後に、熱硬化性樹脂を熱硬化することによって形成される。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を用いることができる。本実施例では、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いるものとした。
【0032】
図示するように、熱硬化装置100は、誘導加熱コイル10と、交流電源20と、搬送機構30と、回転機構40と、を備えている。また、図示は省略しているが、熱硬化装置100は、誘導加熱コイル10を冷却するための冷却システムも備えている。誘導加熱コイル10は、パイプ形状を有しており、誘導加熱コイル10の内部には、冷却水を流すための冷却水流路が形成されている。そして、この冷却水流路に冷却水を流すことによって、誘導加熱コイル10を冷却することができる。誘導加熱コイル10、および、交流電源20は、[課題を解決するための手段]における誘導加熱部に相当する。
【0033】
誘導加熱コイル10は、圧力容器200が配置される空間を取り巻くように設けられ、交流電流が流れたときに、この空間内に交流磁界を発生させる。圧力容器200は、誘導加熱コイル10内の中心軸AX上に配置される。誘導加熱コイル10は、第1コイル部12と、第2コイル部14と、第3コイル部16と、第4コイル部18と、を備えている。そして、第1コイル部12の直径は、d1である。また、第2コイル部14の直径は、d2(<d1)である。また、第3コイル部16の直径は、d3(<d2)である。また、第4コイル部18の直径は、d4(<d3)である。すなわち、第1コイル部12の直径d1と、第2コイル部14の直径d2と、第3コイル部16の直径d3と、第4コイル部18の直径d4との関係は、d1>d2>d3>d4である。そして、第1コイル部12と、第2コイル部14と、第3コイル部16と、第4コイル部18とは、この順に、直列に接続されている。
【0034】
第1コイル部12は、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部に相当する。また、第2コイル部14、第3コイル部16、第4コイル部18は、それぞれ、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部に相当する。なお、第1コイル部12、および、第2コイル部14を、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部として把握し、第3コイル部16、および、第4コイル部18を、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部として把握してもよい。また、第1コイル部12、第2コイル部14、第3コイル部16を、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部として把握し、第4コイル部18を、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部として把握してもよい。
【0035】
交流電源20は、図示するように、誘導加熱コイル10の両端部に接続されており、誘導加熱コイル10に交流電流Iを流す。したがって、第1コイル部12と、第2コイル部14と、第3コイル部16と、第4コイル部18には、同一の交流電流Iが流れる。このとき、第1コイル部12の直径d1と、第2コイル部14の直径d2と、第3コイル部16の直径d3と、第4コイル部18の直径d4との関係は、先に説明したように、d1>d2>d3>d4であるので、第1コイル部12内における圧力容器200とコイルとのギャップ(距離)g1と、第2コイル部14内における圧力容器200とコイルとのギャップg2と、第3コイル部16内における圧力容器200とコイルとのギャップg3と、第4コイル部18内における圧力容器200とコイルとのギャップg4との関係は、g1>g2>g3>g4となる。したがって、第1コイル部12による圧力容器200における熱硬化性樹脂の昇温速度r1と、第2コイル部14による圧力容器200における熱硬化性樹脂の昇温速度r2と、第3コイル部16による圧力容器200における熱硬化性樹脂の昇温速度r3と、第4コイル部18による圧力容器200における熱硬化性樹脂の昇温速度r4との関係は、r1<r2<r3<r4となる。
【0036】
搬送機構30は、圧力容器200を、誘導加熱コイル10の第1コイル部12内に搬入する。その後、搬送機構30は、圧力容器200を、第2コイル部14内、第3コイル部16内、第4コイル部18内の順に搬送する。第1コイル部12内、第2コイル部14内、第3コイル部16内、第4コイル部18内では、順次、圧力容器200の繊維強化プラスチック層における熱硬化性樹脂の誘導加熱が行われる。そして、搬送機構30は、圧力容器200を、誘導加熱コイル10の第4コイル部18内から搬出する。
【0037】
回転機構40は、誘導加熱コイル10による電磁誘導加熱中に、誘導加熱コイル10内に配置された圧力容器200を、圧力容器200の円筒部の中心軸を中心として回転させる。すなわち、回転機構40は、誘導加熱コイル10の中心軸AXに平行または略平行な軸を中心として、誘導加熱コイル10内に配置された圧力容器200を回転させる。こうすることによって、圧力容器200が誘導加熱コイル10の中心軸AXとずれた位置に配置された場合であっても、誘導加熱を均一に行うことができる。
【0038】
A2.熱硬化方法:
図2は、第1実施例の熱硬化装置100による熱硬化性樹脂の熱硬化方法を示す説明図である。なお、実施例の熱硬化方法との比較のため、図2中に、比較例の熱硬化方法について、併せて示した。
【0039】
図2(a)に、時間(加熱時間)と昇温速度(圧力容器200における熱硬化性樹脂の昇温速度)との関係を示した。また、図2(b)に、時間(加熱時間)と樹脂温度(圧力容器200の繊維強化プラスチック層における熱硬化性樹脂の温度)との関係を示した。
【0040】
実施例の熱硬化方法では、図2(a)に示したように、時刻t0から時刻t1までの昇温速度を、r1(℃/min)とし、図2(b)に示したように、樹脂温度を、T0(℃)からT1(℃)に上昇させる。また、図2(a)に示したように、時刻t1から時刻t2までの昇温速度を、r2(℃/min)とし、図2(b)に示したように、樹脂温度を、T1(℃)からT2(℃)に上昇させる。また、図2(a)に示したように、時刻t2から時刻t3までの昇温速度を、r3(℃/min)とし、図2(b)に示したように、樹脂温度を、T2(℃)からT3(℃)に上昇させる。また、図2(a)に示したように、時刻t3から時刻t4までの昇温速度を、r4(℃/min)とし、図2(b)に示したように、樹脂温度を、T3(℃)からT4(℃)に上昇させる。
【0041】
一方、比較例の熱硬化方法では、図2(a)に示したように、時刻t0から時刻t4までの昇温速度を、一定値rc(℃/min)とし(r2<rc<r3)、図2(b)に示したように、樹脂温度を、T0(℃)からT4(℃)に上昇させる。
【0042】
上述した実施例の熱硬化方法と比較例の熱硬化方法とでは、圧力容器200における熱硬化性樹脂の最低粘度が異なる。ここで、「最低粘度」とは、熱硬化性樹脂の加熱初期に、一旦、粘度が低下してから増加するときの最低値である。
【0043】
図2(c)に、実施例の熱硬化方法による加熱初期の熱硬化性樹脂の粘度、および、比較例の熱硬化方法による加熱初期の熱硬化性樹脂の粘度の変化の様子を示した。図示するように、実施例の熱硬化方法では、比較例の熱硬化方法よりも、加熱初期における昇温速度が遅いため(r1<rc)、熱硬化性樹脂の最低粘度が、比較例の熱硬化方法よりも高くなる。具体的には、比較例の熱硬化方法では、熱硬化性樹脂の最低粘度は、Vmin1(Pa・s)となり、1(Pa・s)よりも低かった。一方、実施例の熱硬化方法では、熱硬化性樹脂の最低粘度は、Vmin2(Pa・s)となり、1(Pa・s)よりも高かった。なお、熱硬化性樹脂は、加熱初期に、粘度が、一旦、最低粘度に低下し、熱硬化によって増加した場合には、その後、昇温速度を増加させても、熱硬化性樹脂の粘度が再度低下することはない。このため、実施例の熱硬化方法を適用した場合には、圧力容器200において、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しが、比較例の熱硬化方法を適用した場合よりも少なくなった。
【0044】
以上説明した第1実施例の熱硬化装置100では、比較的遅い昇温速度で、熱硬化性樹脂の最低粘度を比較的高く維持して、熱硬化性樹脂の熱硬化を行い、その後、比較的速い昇温速度で、急速に熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。こうすることによって、圧力容器200における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0045】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての熱硬化装置100Aの概略構成を示す説明図である。図示するように、第2実施例の熱硬化装置100Aは、第1実施例の熱硬化装置100における誘導加熱コイル10(第1コイル部12、第2コイル部14、第3コイル部16、第4コイル部18)の代わりに、4つの誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dを備えている。なお、熱硬化装置100Aにおいて、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dは、各中心軸AXが一致するように、縦列に配置されている。そして、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dには、それぞれ、交流電源20a,20b,20c,20dが接続されている。また、図示は省略しているが、熱硬化装置100Aは、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dを、それぞれ、冷却するための冷却システムも備えている。搬送機構30、および、回転機構40は、第1実施例の熱硬化装置100と同じである。
【0046】
誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dは、それぞれ、圧力容器200が配置される空間を取り巻くように設けられ、交流電流が流れたときに、各空間内に交流磁界を発生させる。圧力容器200は、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dの中心軸AX上に配置される。なお、誘導加熱コイル10aの直径は、第1実施例の熱硬化装置100における第1コイル部12の直径d1と同じである。また、誘導加熱コイル10bの直径は、第1実施例の熱硬化装置100における第2コイル部14の直径d2と同じである。また、誘導加熱コイル10cの直径は、第1実施例の熱硬化装置100における第3コイル部16の直径d3と同じである。また、誘導加熱コイル10dの直径は、第1実施例の熱硬化装置100における第4コイル部18の直径d4と同じである。
【0047】
熱硬化装置100Aにおいて、交流電源20a,20b,20c,20dは、それぞれ、第1実施例の熱硬化装置100における交流電源20と同一の交流電流Iを、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dに流す。したがって、熱硬化装置100Aでは、誘導加熱コイル10aによって、第1実施例の熱硬化装置100における第1コイル部12と同様に、昇温速度r1で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10bによって、第1実施例の熱硬化装置100における第2コイル部14と同様に、昇温速度r2で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10cによって、第1実施例の熱硬化装置100における第3コイル部16と同様に、昇温速度r3で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10dによって、第1実施例の熱硬化装置100における第4コイル部18と同様に、昇温速度r4で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。なお、第2実施例の熱硬化装置100Aによる熱硬化方法は、図2に示した第1実施例の熱硬化装置100による熱硬化方法と同じである。
【0048】
以上説明した第2実施例の熱硬化装置100Aによっても、第1実施例の熱硬化装置100と同様に、圧力容器200における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0049】
また、第2実施例の100Aでは、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dには、それぞれ、交流電源20a,20b,20c,20dが接続されているので、交流電源20a,20b,20c,20dが流す交流電流を、個別に設定するようにすることができる。したがって、熱硬化装置100Aの利便性を向上させることができる。ただし、第1実施例の熱硬化装置100によれば、第1コイル部12と第2コイル部14と第3コイル部16と第4コイル部18とが直列に接続された誘導加熱コイル10を備えており、交流電源、および、冷却システムを1つとすることができるので、熱硬化装置100の小型化を図ることができる。
【0050】
C.第3実施例:
図4は、本発明の第3実施例としての熱硬化装置100Bの概略構成を示す説明図である。図示するように、第3実施例の熱硬化装置100Bは、第2実施例の熱硬化装置100Aにおける誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dの代わりに、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4を備えている。なお、熱硬化装置100Bにおいて、4つの誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4は、各中心軸AXが一致するように、縦列に配置されている。そして、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4には、それぞれ、交流電源20a,20e,20f,20gが接続されている。また、図示は省略しているが、熱硬化装置100Bは、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4を、それぞれ、冷却するための冷却システムも備えている。搬送機構30、および、回転機構40は、第1実施例の熱硬化装置100と同じである。
【0051】
誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4は、それぞれ、圧力容器200が配置される空間を取り巻くように設けられ、交流電流が流れたときに、各空間内に交流磁界を発生させる。圧力容器200は、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4の中心軸AX上に配置される。なお、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4の直径は、すべて、第2実施例の熱硬化装置100における誘導加熱コイル10aの直径d1と同じである。
【0052】
熱硬化装置100Bにおいて、交流電源20aは、第2実施例の熱硬化装置100における交流電源20aと同一の交流電流Iを、誘導加熱コイル10a1に流す。また、交流電源20eは、交流電流Iよりも大きい交流電流Iaを、誘導加熱コイル10a2に流す。この交流電流Iaは、昇温速度r2で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができるように設定されている。また、交流電源20fは、交流電流Iaよりも大きい交流電流Ibを、誘導加熱コイル10a3に流す。この交流電流Ibは、昇温速度r3で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができるように設定されている。また、交流電源20gは、交流電流Ibよりも大きい交流電流Icを、誘導加熱コイル10a4に流す。この交流電流Icは、昇温速度r4で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができるように設定されている。
【0053】
誘導加熱コイル10a1を、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部として把握し、誘導加熱コイル10a2,10a3,10a4を、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部として把握した場合、交流電源20aは、[課題を解決するための手段]における第1の電源部に相当し、交流電源20e,20f,20gは、[課題を解決するための手段]における第2の電源部に相当する。また、誘導加熱コイル10a1,10a2を、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部として把握し、誘導加熱コイル10a3,10a4を、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部として把握した場合、交流電源20a,20eは、[課題を解決するための手段]における第1の電源部に相当し、交流電源20f,20gは、[課題を解決するための手段]における第2の電源部に相当する。また、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3を、[課題を解決するための手段]における第1のコイル部として把握し、誘導加熱コイル10a4を、[課題を解決するための手段]における第2のコイル部として把握した場合、交流電源20a,20e,20fは、[課題を解決するための手段]における第1の電源部に相当し、交流電源20gは、[課題を解決するための手段]における第2の電源部に相当する。
【0054】
熱硬化装置100Bでは、誘導加熱コイル10a1によって、第2実施例の熱硬化装置100Aにおける誘導加熱コイル10aと同様に、昇温速度r1で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10a2によって、第2実施例の熱硬化装置100Aにおける誘導加熱コイル10bと同様に、昇温速度r2で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10a3によって、第2実施例の熱硬化装置100Aにおける誘導加熱コイル10cと同様に、昇温速度r3で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。また、誘導加熱コイル10a4によって、第2実施例の熱硬化装置100Aにおける誘導加熱コイル10dと同様に、昇温速度r4で、圧力容器200における熱硬化性樹脂を加熱することができる。なお、第3実施例の熱硬化装置100Bによる熱硬化方法は、図2に示した第1実施例の熱硬化装置100による熱硬化方法と同じである。
【0055】
以上説明した第3実施例の熱硬化装置100Bによっても、第1,2実施例の熱硬化装置100,100Aと同様に、圧力容器200における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0056】
また、第3実施例の100Bでは、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4には、それぞれ、交流電源20a,20e,20f,20gが接続されているので、交流電源20a,20e,20f,20gが流す交流電流を、それぞれ変更することによって、誘導加熱コイル10a1,10a2,10a3,10a4による昇温速度を、個別に変更するようにすることができる。したがって、熱硬化装置100Bの利便性を向上させることができる。
【0057】
D.第4実施例:
図5は、本発明の第4実施例としての熱硬化装置100Cの概略構成を示す説明図である。図示するように、第4実施例の熱硬化装置100Cは、誘導加熱コイル10aと、交流電源20Cと、搬送機構30と、回転機構40と、を備えている。また、図示は省略しているが、熱硬化装置100Cは、誘導加熱コイル10aを冷却するための冷却システムも備えている。搬送機構30、および、回転機構40は、第1実施例の熱硬化装置100と同じである。
【0058】
なお、熱硬化装置100Cにおける誘導加熱コイル10aは、第3実施例の熱硬化装置100Bにおける誘導加熱コイル10a1、あるいは、誘導加熱コイル10a2,10a3,10a4と同じである。すなわち、誘導加熱コイル10aは、直径が一定(d1)の単一のコイルからなる。そして、交流電源20Cは、誘導加熱コイル10aに流す交流電流を、適宜、変化させる。
【0059】
図6は、交流電源20Cが誘導加熱コイル10aに流す交流電流(コイル電流)を示す説明図である。図示するように、交流電源20Cは、時刻t0から時刻t1までは、誘導加熱コイル10aに、交流電流Iを流す。この交流電流Iは、第3実施例の熱硬化装置100Bにおいて、交流電源20aが誘導加熱コイル10a1に流す交流電流Iと同じである。したがって、時刻t0から時刻t1までの昇温速度は、r1(℃/min)となる。また、交流電源20Cは、時刻t1から時刻t2までは、誘導加熱コイル10aに、交流電流Iaを流す。この交流電流Iaは、第3実施例の熱硬化装置100Bにおいて、交流電源20eが誘導加熱コイル10a2に流す交流電流Iaと同じである。したがって、時刻t1から時刻t2までの昇温速度は、r2(℃/min)となる。また、交流電源20Cは、時刻t2から時刻t3までは、誘導加熱コイル10aに、交流電流Ibを流す。この交流電流Ibは、第3実施例の熱硬化装置100Bにおいて、交流電源20fが誘導加熱コイル10a3に流す交流電流Ibと同じである。したがって、時刻t2から時刻t3までの昇温速度は、r3(℃/min)となる。また、交流電源20Cは、時刻t3から時刻t4まで、誘導加熱コイル10aに、交流電流Icを流す。この交流電流Icは、第3実施例の熱硬化装置100Bにおいて、交流電源20gが誘導加熱コイル10a4に流す交流電流Icと同じである。したがって、時刻t3から時刻t4までの昇温速度は、r4(℃/min)となる。すなわち、第4実施例の熱硬化装置100Cによる熱硬化方法は、第3実施例の熱硬化装置100Bによる熱硬化方法と同じである(図2参照)。
【0060】
以上説明した第4実施例の熱硬化装置100Cによっても、第1〜3実施例の熱硬化装置100,100A,100Bと同様に、圧力容器200における熱硬化性樹脂を、電磁誘導加熱によって熱硬化する際に、繊維強化プラスチック層の内層側から外層側への熱硬化性樹脂の染み出しを抑制することができる。
【0061】
また、第4実施例の熱硬化装置100Cでは、単一の誘導加熱コイル10aを用いるので、例えば、第3実施例の熱硬化装置100Bのように、複数の誘導加熱コイル、複数の交流電源を用いる場合よりも、熱硬化装置100Cの小型化を図ることができる。
【0062】
E.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、以下のような変形が可能である。
【0063】
E1.変形例1:
上記実施例の熱硬化装置100,100A,100B,100Cでは、熱硬化性樹脂を熱硬化する際に、昇温速度を4段階に変更するものとしたが、本発明は、これに限られない。本発明は、一般に、第1の昇温速度で、誘導加熱を行った後に、第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で、前記誘導加熱を行うようにすればよい。したがって、昇温速度を2段階、あるいは、3段階に変更したり、5段階以上に変更したりするようにしてもよい。
【0064】
E2.変形例2:
上記実施例の熱硬化装置100,100A,100B,100Cでは、熱硬化性樹脂を熱硬化する際に、時間(加熱時間)によって、昇温速度を変更するものとしたが、本発明は、これに限られない。樹脂温度(圧力容器200の繊維強化プラスチック層における熱硬化性樹脂の温度)によって、昇温速度を変更するものとしてもよい。
【0065】
E3.変形例3:
上記第2実施例の熱硬化装置100Aでは、交流電源20a,20b,20c,20dは、それぞれ、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dに、同一の交流電流Iを流すものとしたが、本発明は、これに限られない。交流電源20a,20b,20c,20dは、それぞれ、誘導加熱コイル10a,10b,10c,10dに、異なる交流電流を流すものとしてもよい。
【0066】
E4.変形例4:
上記第4実施例の熱硬化装置100Cでは、交流電源20Cは、誘導加熱コイル10aに流す交流電流を段階的に増加させるものとしたが、本発明は、これに限られない。交流電源20Cは、誘導加熱コイル10aに流す交流電流を、連続的に増加させるようにしてもよい。
【0067】
E5.変形例5:
例えば、上記第4実施例の熱硬化装置100Cでは、交流電源20Cは、誘導加熱コイル10aに流す交流電流を段階的に変化させるものとしたが、これに併せて、誘導加熱コイル10aに流す交流電流の周波数も変化させるようにしてもよい。誘導加熱コイル10aに流す交流電流の周波数を変化させることによって、誘導加熱時の電流浸透の深さを変化させることができる。
【0068】
E6.変形例6:
上記実施例の熱硬化装置100,100A,100B,100Cは、冷却システムを備えるものとしたが、冷却システムを省略するようにしてもよい。
【0069】
E7.変形例7:
上記実施例の熱硬化装置100,100A,100B,100Cは、回転機構40を備えるものとしたが、回転機構40を省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100,100A,100B,100C…熱硬化装置
10,10a,10a1〜10a4,10b,10c,10d…誘導加熱コイル
12…第1コイル部
14…第2コイル部
16…第3コイル部
18…第4コイル部
20,20a〜20g,20C…交流電源
30…搬送機構
40…回転機構
200…圧力容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における前記熱硬化性樹脂を熱硬化する熱硬化装置であって、
前記圧力容器が配置される空間を取り巻くように設けられ、前記空間内に交流磁界を発生させて、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行うための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに交流電流を流すための交流電源と、
を含む誘導加熱部を備え、
前記誘導加熱部は、第1の昇温速度で、前記誘導加熱を行った後に、前記第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で、前記誘導加熱を行うように構成されている、
熱硬化装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱硬化装置であって、
前記誘導加熱コイルは、
前記第1の昇温速度で、前記誘導加熱を行うための第1のコイル部と、
前記第2の昇温速度で、前記誘導加熱を行うための第2のコイル部と、
を含み、
前記熱硬化装置は、さらに、前記圧力容器を、前記第1のコイル部内から前記第2のコイル部内に搬送する搬送機構を備える、
熱硬化装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱硬化装置であって、
前記第1のコイル部の直径は、前記第2のコイル部の直径よりも大きく、
前記交流電源は、前記第1のコイル部、および、前記第2のコイル部に、同一の交流電流を流す、
熱硬化装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱硬化装置であって、
前記第1のコイル部と、前記第2のコイル部とは、直列に接続されており、
前記誘導加熱コイルは、該誘導加熱コイルの内部に、冷却水を流すための冷却水流路を有しており、
前記熱硬化装置は、さらに、
前記冷却水流路に冷却水を流すための冷却システムを備える、
熱硬化装置。
【請求項5】
請求項2記載の熱硬化装置であって、
前記交流電源は、
前記第1のコイル部に第1の交流電流を流すための第1の電源部と、
前記第2のコイル部に前記第1の交流電流よりも大きい第2の交流電流を流すための第2の電源部と、
を備える熱硬化装置。
【請求項6】
請求項1記載の熱硬化装置であって、
前記誘導加熱コイルは、直径が一定の単一のコイルからなり、
前記交流電源は、前記誘導加熱コイルに、第1の交流電流を流した後に、前記第1の交流電流よりも大きい第2の交流電流を流す、
熱硬化装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の熱硬化装置であって、さらに、
前記誘導加熱コイルの中心軸に平行または略平行な軸を中心として、前記空間内に配置された前記圧力容器を回転させるための回転機構を備える、
熱硬化装置。
【請求項8】
導電性繊維と熱硬化性樹脂とを含む繊維強化プラスチック層を有する圧力容器における前記熱硬化性樹脂を熱硬化する熱硬化方法であって、
第1の昇温速度で、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行う第1の誘導加熱工程と、
前記第1の誘導加熱工程の後に、前記第1の昇温速度よりも速い第2の昇温速度で、前記繊維強化プラスチック層の誘導加熱を行う第2の誘導加熱工程と、
を備える熱硬化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43323(P2013−43323A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181442(P2011−181442)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】