熱風炉用セラミックバーナ
【課題】燃焼効率を向上させることのできる熱風炉用セラミックバーナを提供すること。
【解決手段】筒状の本体91を有し、この本体91内部に複数の隔壁92で仕切られた燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を備える熱風炉用セラミックバーナ9であって、本体91は、横断面略楕円状に形成され、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ9。
【解決手段】筒状の本体91を有し、この本体91内部に複数の隔壁92で仕切られた燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を備える熱風炉用セラミックバーナ9であって、本体91は、横断面略楕円状に形成され、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ9。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉用セラミックバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉に熱風を供給するために熱風炉が用いられている。内燃式の熱風炉では、炉体内部に、燃料ガスを燃焼させる燃焼室と蓄熱煉瓦が充填される蓄熱室とが形成される。熱風炉の燃焼室は、円筒状の熱風炉の炉体内部を横断面円弧状の仕切によって区切られ、横断面視で当該円弧の内側と当該炉体内壁とで囲まれる略楕円状の領域に形成されている。
燃焼室の下方にはセラミックバーナが設けられている。このセラミックバーナは、隔壁によって複数に仕切られ、燃料ガスが流通する燃料ガス通路と、燃焼空気が流通する燃焼空気通路とが交互に形成されている。セラミックバーナの下部から供給された燃料ガスは、燃料ガス通路を通って上昇し、セラミックバーナの下部から供給された燃焼空気は、燃焼空気通路を通って上昇する。上昇した、燃料ガス及び燃焼空気は、セラミックバーナの上部の格子煉瓦(格子部)で混合されて、燃焼室内で燃焼する。燃焼ガスは、蓄熱室へと導かれ、蓄熱室内の蓄熱煉瓦に熱を蓄える。蓄熱室に蓄熱した後、燃焼を停止し、蓄熱室に空気を送り込んで高温空気とし、この高温空気を高炉へと供給する。
【0003】
従来のセラミックバーナにおいては、隔壁が上記略楕円状の長軸方向に沿って配置され、燃料ガス通路、及び燃焼空気通路は、平面視で当該長軸方向に沿って交互に形成されている。セラミックバーナ下部から供給された燃料ガス、及び燃焼空気が、両通路内を上昇する際に、当該長軸方向においてガスや空気の濃度分布が生じないように、ガス通路、及び空気通路は、それぞれの導入口から燃焼室に向かって拡がる略台形状の空間となっている。この略台形状の空間は、燃料ガス、及び燃焼空気導入口側から上方に向かって垂直方向に伸びる垂直壁と、この垂直壁の反対側に位置する傾斜壁と、隔壁とで囲まれて形成される。また、この傾斜壁は、ガス通路、及び空気通路とで互い違いに傾斜方向が異なる。つまり、ガス通路の傾斜壁は、上記略楕円状の長軸の一端側から他端側へ向かって傾斜するのに対し、空気通路の傾斜壁は、上記略楕円状の長軸の他端側から一端側へ向かって傾斜する。
このような構造を有するセラミックバーナにおいて、燃料ガス、及び燃焼空気を流通させると、横断面内での燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが大きく、燃焼効率が低いという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1では、セラミックバーナ内に設置されるキー煉瓦の配置や形状を工夫することで、混合比のばらつきを抑制し、燃焼効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−10323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたように、キー煉瓦の配置や形状を工夫しても混合比のばらつき抑制が不十分であり、熱風炉の燃焼効率の更なる向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、燃焼効率を向上させることのできる熱風炉用セラミックバーナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路において、傾斜壁に沿って上昇する燃焼空気や燃料ガスよりも、垂直壁側で垂直方向へ上昇する燃焼空気や燃料ガスの方が多いことを見出した。そして、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の傾斜壁、及び垂直壁の配置は、上述のとおり交互に異なるので、格子部では、上述略楕円状の長軸の一端側において、燃料ガスが多く、燃焼空気が少ない状態で混合され、同長軸の他端側において、燃焼空気が多く、燃料ガスが少ない状態で混合され、横断面内での混合比のばらつきが大きくなっていることを見出した。
そして、本発明者らは、燃料ガス通路、及び燃焼空気通路を上記略楕円状の短軸方向に沿って交互に配置することで、当該短軸方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、上述の混合比のばらつきが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱風炉用セラミックバーナは、
筒状の本体を有し、この本体内部に複数の隔壁で仕切られた燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を備える熱風炉用セラミックバーナであって、
前記本体は、横断面略楕円状に形成され、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路は、前記横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路は、本体の横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている。そのため、本発明の燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の上端における開口の長手方向(短軸方向に相当)の長さ寸法は、本体の横断面略楕円状の長軸方向に沿って形成する場合と比べて、小さくなる。
従来のように当該長軸方向に沿って各通路を形成すると、開口の長さ寸法が大きくなり、その長さ方向に渡って燃焼空気又は燃料ガスが拡散することになるので、当該長手方向の一端側と他端側とにおける濃度差が大きくなる。
一方で、本発明のように、開口の長さ寸法が小さくなることで、その長さ方向に渡って燃焼空気又は燃料ガスが拡散する距離も短くなり、当該長手方向の一端側と他端側とにおける燃料ガスや燃焼空気の濃度差が小さくなる。その結果、短軸方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが抑制される。よって、熱風炉における燃焼効率が向上する。
【0011】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている
ことが好ましい。
【0012】
このような本発明では、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路より上方に、本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている。そのため、各通路を通過した後の燃焼空気、及び燃料ガスが旋回手段によって生じた旋回気流によって撹拌される。したがって、上述の混合比のばらつきをさらに抑制できる。その結果、熱風炉における燃焼効率をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記旋回手段は、前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記旋回気流の旋回方向に向けて配置された空気噴出口を備え、
前記空気噴出口は、前記燃焼空気通路に空気を供給する燃焼空気流路から分岐して供給された空気を噴出する
ことが好ましい。
【0014】
このような本発明では、空気噴出口が、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路より上方において、旋回気流の旋回方向に向けて配置されている。そのため、旋回気流を容易に生じさせることができる。また、空気噴出口から噴出する空気は、燃焼空気通路に供給される空気の一部を分岐させたものを利用するので、別途、旋回気流を生じさせるための設備が不要になり、設備コストの上昇を防ぐことができる。
【0015】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の上端には、煉瓦で格子状に構築された格子部が設けられ、
前記格子部には、前記旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている
ことが好ましい。
【0016】
このような本発明では、格子部に旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている。そのため、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を通過して格子部に至った燃焼空気、及び燃料ガスが混合されるとともに、誘導ブレードによって、旋回方向に向かう流れが生じ易くなる。通常、格子部を通過した後の気流は、鉛直方向成分が主流となるところ、本発明では、旋回方向に向かう流れが生じ易くなる結果、格子部よりも上方で旋回気流が生じ、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきをさらに抑制できる。
このような本発明で、上述の空気噴出口を併用してもよい。
【0017】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記本体内部に交互に形成される複数の前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の内、最も外側に前記燃焼空気通路が形成されている
ことが好ましい。
【0018】
このような本発明では、外側の通気路が燃焼空気通路であれば、燃料ガスの上昇気流の両側に燃焼空気の上昇気流が形成されるので、燃料ガスが燃焼空気と混合しないまま上昇することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の熱風炉を示す縦断面図。
【図2】前記第1実施形態のセラミックバーナにおける燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の配置を示す横断面図。
【図3】前記第1実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図4】前記第1実施形態のセラミックバーナの縦断面図。
【図5】前記第1実施形態におけるセラミックバーナの拡大縦断面図。
【図6】前記第1実施形態におけるセラミックバーナの拡大斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態の熱風炉を示す縦断面図。
【図8】前記第2実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図9】本発明の第3実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図10】前記第3実施形態におけるセラミックバーナの拡大縦断面図。
【図11】前記第3実施形態のセラミックバーナにおける格子部の変形例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の熱風炉用セラミックバーナを備えた熱風炉1が示されている。
図1において、熱風炉1は基礎2上に設置された炉体3を有する。炉体3は円筒状の直胴部6と、直胴部6の上部にやや大径に形成されたコニカル部5と、コニカル部5の上面に設置された半球状のドーム部4とを有する。直胴部6の内部には、燃焼室7、及び蓄熱室8が形成され、互いに煉瓦壁で区切られている。燃焼室7の下部には、燃焼室7内に高温の燃焼ガスを送り込むセラミックバーナ9が設けられている。炉体3の燃焼室7側には、燃焼空気導入口10,燃料ガス導入口11が設けられている。
【0021】
燃焼室7は、炉体3内部を横断面円弧状の仕切71(図2参照)によって区切られ、当該円弧の内側と当該炉体3内壁とで囲まれる略楕円状の領域に形成されている。そして、燃焼室7は、当該略楕円状の領域がセラミックバーナ9の上方からコニカル部5まで連続し、上下に延びるガス通路72を有する(図1参照)。
【0022】
蓄熱室8は、仕切71の当該円弧の外側と炉体3の内壁とで囲まれる領域に形成されている。そして、この領域が炉体3の下方からコニカル部5まで連続している。蓄熱室8には、図1に示すように、蓄熱煉瓦81が配列され、これにより蓄熱室8の全体を埋める蓄熱体82が形成されている。この蓄熱体82は蓄熱室8の底部に設置される支持体83により支持されている。
蓄熱体82において、蓄熱煉瓦81は、それぞれ上下に貫通する通気孔を有し、かつ各々の通気孔が互いに連続するように配列されており(図示省略)、蓄熱体82の上面側から支持体83まで、全体として通気が可能である。
【0023】
炉体3には、図1に示すように、燃焼空気導入口10、燃料ガス導入口11、外気連通口12、熱風取出口13が形成されている。
燃焼空気導入口10、及び燃料ガス導入口11は、直胴部6の燃焼室7側の下部に形成されている。図1、及び図4に示すように、燃焼空気導入口10には、燃焼空気流路としての燃焼空気導入管14が接続されている。燃料ガス導入口11には、燃料ガス流路としての燃料ガス導入管15が接続されている。
外気連通口12は、図1に示すように、直胴部6の蓄熱室8側の下部に形成され、支持体83下方の中空部分に連通されている。
熱風取出口13は、図1に示すように、直胴部6の燃焼室7側の中間高さに形成され、燃焼室7のガス通路72に連通されている。
【0024】
セラミックバーナ9は、燃焼空気導入口10から炉体3内部に導入された燃焼空気、及び燃料ガス導入口11から炉体3内部に導入された燃料ガスを上昇させ、セラミックバーナ9上部にてこれらを混合させて燃焼させる。
セラミックバーナ9は、図1〜5に示すように、筒状の本体91と、隔壁92と、垂直壁93と、傾斜壁94と、燃焼空気通路95と、燃料ガス通路96と、格子部97とを備える。
筒状の本体91は、煉瓦で組み立てられており、燃焼室7と同様に横断面視で略楕円状断面が上下方向に連続している。本体91の下部には、前述の燃焼空気導入口10と連通する空気導入室98Aと、前述の燃料ガス導入口11と連通する燃料ガス導入室98Bが形成されている。空気導入室98Aと燃料ガス導入室98Bとは、それぞれに導入された空気、及び燃料ガスが混合しないように、仕切壁98Cで仕切られている。
隔壁92、垂直壁93、及び傾斜壁94は、本体91の内部を仕切るものであり、煉瓦で組み立てられている。
隔壁92は、空気導入室98Aと燃料ガス導入室98Bの上方に複数設けられている。隔壁92は、図2に示す本体91の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って複数配置されている。隔壁92同士の間には所定の間隔が設けられており、この間隔を維持するために、隔壁92間にキーレンガと称される耐火物製の図示しないスペーサ部材が組み込まれている。隔壁92の一方の側端に垂直壁93が連続して形成され、他方の側端に傾斜壁94が連続して形成されている。
【0025】
燃焼空気通路95は、空気導入室98Aに導入された空気をセラミックバーナ9の上方に向けて通過させるための空間である。燃料ガス通路96は、燃料ガス導入室98Bに導入された燃料ガスをセラミックバーナ9の上方に向けて通過させるための空間である。これらの空間は、本体91内部が隔壁92、垂直壁93、及び傾斜壁94によって仕切られることで形成されている。
図2や図4に示すように、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、短軸91A方向に沿って、交互に配置されている。そのため、空気導入室98Aに導入された燃焼空気、及び燃料ガス導入室98Bに導入された燃料ガスが隔壁92を隔てて交互に格子部97へ向かって通過する。
【0026】
燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、図5に示すように縦断面視で略台形状の空間となっており、上下が開口している。図5においては、燃焼空気通路95が破線で示され、燃料ガス通路96が実線で示されている。
燃焼空気通路95の傾斜壁94Aは、空気導入室98Aから垂直方向に連続する垂直壁93Aとは反対側へ向かって傾斜する。一方、燃料ガス通路96の傾斜壁94Bは、燃料ガス導入室98Bから垂直方向に連続する垂直壁93Bとは反対側に向かって傾斜する。すなわち、燃焼空気通路95の傾斜壁94Aの傾斜方向と燃焼空気通路95の傾斜壁94Bの傾斜方向とは、図5に示すように、交差する。そのため、燃焼空気通路95に導入された燃焼空気、及び燃料ガス通路96に導入された燃料ガスは、それぞれ垂直方向に上昇するだけではなく、傾斜壁94A,94B方向にも広がりながら上昇する。その結果、燃焼空気通路95や燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向(短軸方向に相当)に渡って燃料ガスや燃焼空気が通過するようになる。
【0027】
上述のとおり、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、交互に配置されているが、図2に示すように、最も外側に燃焼空気通路95が配置されていることが好ましい。最も外側に配置される流路が燃焼空気通路95であれば、燃料ガスが燃焼空気と混合しないまま上昇することを防止できる。
【0028】
格子部97は、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を流通してきた燃料ガス、及び燃焼空気を混合し、燃料ガスを燃焼させる。
図3は、格子部97を示す横断面図であり、図6は、格子部97の一部を示す拡大斜視図である。
格子部97は、煉瓦で組み立てられ、図3〜図6に示すように、複数の支持部97Aと、複数の分流部97Bとが格子状に組み合わされている。
支持部97Aは、隔壁92の上端側に、隔壁92の配列方向と交差する方向に複数列設けられ、分流部97Bを支持する。支持部97Aは、上述の横断面略楕円状の長軸91B方向に沿って、略等間隔で設けられている。
分流部97Bは、図4に示すように、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を通過してきた燃料ガス、及び燃焼空気を二手に分流させる。分流した一方の燃料ガスと、分流した一方の燃焼空気とは、上昇しながら合流して混合される。分流部97Bは、支持部97Aの設置方向と交差する方向、上述の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って、略等間隔で設けられている。それぞれの分流部97Bは、図3や図5に示すように、隣り合う隔壁92間に位置する。
【0029】
以上のような第1実施形態によれば、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ9の燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、本体91の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って交互に形成されている。そのため、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向(短軸91A方向に相当)の長さ寸法は、本体91の横断面略楕円状の長軸方向に沿って形成する場合と比べて、小さくなる。このように開口の長さ寸法が小さくなることで、当該長手方向の一端側と他端側とで燃料ガス、及び燃焼空気の濃度差が小さくなる。その結果、短軸91A方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが抑制される。よって、熱風炉1における燃焼効率が向上する。
【0030】
燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向の長さ寸法が、上述の従来技術と比べて小さくなることで、当該長手方向に渡って燃料ガスや燃焼空気が通過するように設けられた傾斜壁94の斜面長さ寸法も小さくなる。そのため、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の高さ寸法も小さくなり、セラミックバーナ9の高さ寸法も小さくなる。そうすると、熱風炉1内に、従来のような長軸方向配置の隔壁を有するセラミックバーナを設置した場合に比べて、本実施形態のような短軸方向配置の隔壁92を有するセラミックバーナ9を設置した方が、燃焼室7の燃焼空間が高さ方向において広くなり、燃焼空間の容積が拡大する。その結果、燃焼空気と燃焼用ガスとが上昇しながら接触、及び混合する時間が増えて、混合比のばらつきが抑制される。
【0031】
また、セラミックバーナ9がコンパクトになることで、セラミックバーナ9の作製に必要な煉瓦等の材料の削減、組立期間の短縮等を図ることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図7は、第2実施形態の熱風炉20を示す縦断面図であり、図8は、格子部97を示す横断面図である。
第2実施形態の熱風炉20が備えるセラミックバーナ29は、格子部97の上方に旋回手段100を有する点で、第1実施形態のセラミックバーナ9と異なる。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0033】
旋回手段100は、本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる。
旋回手段100は、図7に示すように、燃焼空気導入管14から分岐し格子部97上方まで通ずる分岐管110と、分岐管110端部に設けられている空気噴出口120と、燃焼空気導入管14からの分岐点と空気噴出口120との間に接続されたオリフィス130と、空気流量調節弁(空気流調弁)140と、空気弁150とを備える。
分岐管110は、燃焼空気導入管14の途中に接続され、燃焼空気の一部を分岐させて旋回気流を生じさせるための誘導空気を空気噴出口120まで導く。分岐管110は、図7に示すように、燃焼空気導入管14の燃焼空気流量調節弁14Aより手前側に接続されている。
また、本実施形態では、図8に示すように2系統の分岐管110が配設されている。一方は長軸91Bの一端側、他方は長軸91Bの他端側に配設されている。
空気噴出口120は、分岐管110から供給される誘導空気を噴出する。空気噴出口120は、本実施形態では、炉体3内壁に形成した開口部である。この空気噴出口120は、前述の2系統の分岐管110にそれぞれ取り付けられ、格子部97よりも上方に位置する。空気噴出口120の噴出口の向きは、旋回気流の旋回方向に向いている。具体的には、噴出口の向きは、本体91の断面略楕円状の接線方向に沿う方向に向けて形成されている。本実施形態では、図8に示すように、短軸91Aの一端側、及び他端側にそれぞれ設けられた空気噴出口120から誘導空気が噴出され、反時計回り方向の旋回気流を生じさせる。
燃焼空気導入管14から分岐した誘導空気は、オリフィス130で流量が絞られ、空気流量調節弁140で流量が調節され、空気弁150で旋回気流の発生を制御する。
【0034】
空気噴出口120から噴出する誘導空気量は、特に限定されないが、燃料ガス通路96を通じて供給する燃料ガスを燃焼させるのに必要な燃焼空気の10体積%以上25体積%以下とするのが好ましい。例えば、当該誘導空気量を20体積%とした場合、誘導空気を導入しない場合に比べて、未燃燃料ガス濃度を4分の1程度に削減できる。
【0035】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ29は、上述の旋回手段100を備え、空気噴出口120から噴出した誘導空気は、本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を格子部97の上方に生じさせる。この旋回気流は、燃焼空気通路95を通過した燃焼空気、及び燃料ガス通路96を通過した燃料ガスを撹拌する。したがって、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきをさらに抑制できる。
また、上述の第1実施形態でも説明したとおり、熱風炉1内の燃焼室の燃焼空間の容積を拡大させることができる。加えて、第2実施形態で旋回気流を生じさせるので、当該拡大した燃焼空間内で気流をより多く旋回させることができる。旋回数が増えるので、燃焼空気と燃料ガスとの混合がより促進される。
その結果、熱風炉における燃焼効率をさらに向上させることができる。
【0036】
旋回手段100が、空気を噴出する空気噴出口120を備えているので、旋回気流を容易に生じさせることができる。また、空気噴出口120は、上述のとおり、長軸91Bの一端側と他端側とに配置されており、それぞれの空気噴出口120から誘導空気を所定方向に噴出させるので、より旋回気流を容易に生じさせることができる。
【0037】
旋回手段100から噴出する誘導空気は、燃焼空気通路95に供給される空気の一部を分岐させたものを利用するので、別途、旋回気流を生じさせるための設備が不要になり、設備コストの上昇を防ぐことができる。
【0038】
分岐管110が本体91内部に配設されているので、分岐管110内を通過している間に誘導空気が予熱される。空気噴出口120から噴出される誘導空気が予熱されているため、炉体3の内壁煉瓦のスポーリングを防止できる。
【0039】
〔第3実施形態〕
第3実施形態におけるセラミックバーナ39は、第1実施形態のセラミックバーナ9と格子部の形状が相違する。第3実施形態における旋回手段は、特徴的な形状を有する格子部が相当する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
図9は、セラミックバーナ39の格子部397を示す横断面図である。格子部397は、第1実施形態の格子部97と同様に、煉瓦で組み立てられ、複数の支持部397Aと、複数の分流部397Bとが格子状に組み合わされている。
【0040】
図9に示すように、支持部397Aは、当該支持部397Aの幅方向に張り出す誘導ブレード397Cを有し、分流部397Bは、当該分流部397Bの幅方向に張り出す誘導ブレード397Dを有する。誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、上昇してきた燃焼空気や燃料ガスの気流の方向を、旋回気流が生じ易くなるように誘導する。誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出す幅寸法は、上述の横断面略楕円状の中心から外側に向かうに従って大きくなり、図9に示すように傾斜している。
【0041】
図10は、図9におけるX−X線の矢印方向に見たセラミックバーナ39の縦断面拡大図である。
誘導ブレード397Dは、図10に示すように、当該誘導ブレード397Dの下部から上部へ向かうに従って、上述の張り出し方向に傾斜している。誘導ブレード397Cについても、誘導ブレード397Dと同様に傾斜している。
【0042】
本実施形態では、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向は、図9に示すように、横断面略楕円状を短軸91A、及び長軸91Bで区分してできる4つの領域D1、領域D2、領域D3、及び領域D4においてそれぞれ異なる方向とする。そして、反時計回り方向への旋回気流を生じさせるため、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、当該旋回気流の旋回方向に向けて張り出している。具体的には、図9に示すように、領域D1では、誘導ブレード397Dが上方向に、領域D2では、誘導ブレード397Cが左方向に、領域D3では、誘導ブレード397Dが下方向に、領域D4では、誘導ブレード397Cが右方向に、それぞれ張り出している。なお、領域D1においては、領域D2に近い支持部397Aが左方向に張り出す誘導ブレード397Cを有し、領域D3においては、領域D4に近い誘導ブレード397Cが右方向に張り出す誘導ブレード397Cを有している。
図10には、領域D4、及び領域D1における分流部397Bの状態が示されている。領域D1においては、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を上昇してきた燃焼空気、及び燃料ガスは、誘導ブレード397Dの傾斜方向(図10においては、左斜め上方向)に沿う流れが生じ易くなる。領域D4においては、分流部397Bが誘導ブレード397Dを有していないため、垂直方向に上昇する流れが主流となる。
【0043】
以上のような第3実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ39の格子部397において、支持部397Aが誘導ブレード397Cを有し、分流部397Bが誘導ブレード397Dを有する。そのため、格子部397では、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を通過して格子部397に至った燃焼空気、及び燃料ガスが混合されるとともに、誘導ブレード397Cや誘導ブレード397Dの張り出す方向に沿う気流、つまり、垂直方向に対して傾斜する方向の気流が生じやすくなる。その結果、格子部397の上方で本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流が生じ、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきを抑制できる。よって、熱風炉における燃焼効率を向上させることができる。
【0044】
誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向を、反時計回り方向の旋回気流が生じやすいように、領域D1〜D4ごとに順次変えているので、旋回気流を容易に生じさせることができる。
【0045】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、具体的な各部構成などは実施にあたって適宜変形などすることができる。
【0046】
前述した第1実施形態では、ノズルから供給する気体を空気としたが、熱風炉における燃焼性を損なわない限りにおいて、空気以外の気体を用いることができる。
また、空気噴出口120は、前述した第1実施形態のように2箇所に限られず、1か所でもよいし、断面略楕円状の内周に沿って複数個所形成してもよい。
その他、セラミックバーナ9の本体91内部に分岐管110を配設する態様で説明したが、これに限られない。例えば、本体91内部には分岐管110を配設しない態様でもよい。具体的には、炉体3の内外を連通させる孔を本体91の煉瓦壁内に形成しておき、炉体3の外側に分岐管110を接続し、炉体3の内側に空気噴出口120を形成する。
【0047】
前述した第3実施形態では、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、図10に示すように傾斜しながら張り出しているが、このような張り出し形状に限定されない。旋回気流の旋回方向に向けて張り出す形状であればよく、例えば、矩形状に張り出していてもよいし、湾曲状に張り出していてもよい。
また、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向は、図9に示すような方向に限定されず、図9に示す領域D1〜D4の各領域における張り出し方向とそれぞれ反対方向にしてもよい。また、横断面略楕円状を区分する領域は、上述のように4つに限定されない。また、各領域内で、支持部397A又は分流部397Bの一方を張り出させているが、同じ領域内で、支持部397Aに誘導ブレード397Cを、分流部397Bに誘導ブレード397Dを形成させてもよい。
【0048】
また、格子部397の支持部397A、及び分流部397Bを図9に示すように、直線状に形成せずに、傾斜させてもよい。例えば、図11に示すように、支持部397Aを誘導ブレード397Cの張り出し方向に傾斜させ、分流部397Bを誘導ブレード397Dの張り出し方向に傾斜させてもよい。この場合、領域D1において分流部397Bを、その長手方向中心から外側へ向かうに従って誘導ブレード397Dの張り出し方向に傾斜させる。領域D2〜D4についても同様に張り出し方向に傾斜させる。このように、支持部397A、及び分流部397Bも誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向に対応させて傾斜させることで、垂直方向に対して傾斜する方向の気流がより生じやすくなるので、旋回気流を発生させ易くなる。
【0049】
さらに、第2実施形態で説明したように空気噴出口120を設けて誘導空気を噴出させるとともに、第3実施形態で説明したように誘導ブレード397C,397Dを形成することもできる。このように組み合わせることで、旋回気流を生じさせ易くなり、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきがさらに抑制され、熱風炉の燃焼効率もさらに向上させることができる。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、上述の第1実施形態で説明したような燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が短軸方向に沿って交互に配置されているセラミックバーナを備えた熱風炉について、燃焼解析を実施した。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。熱風炉設備仕様条件は、3基シングル送風、送風量:5100Nm3/min、送風温度:1200℃とした。表1中、燃料ガス組成は、高炉ガス(BFG)とコークス炉ガス(COG)との混合ガスを表す。また、未燃CO濃度比は、比較例1の未燃CO濃度に対する実施例1、又は実施例2の未燃CO濃度の比であり、比較例1の未燃CO濃度を1として表す。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の熱風炉について、さらに上述の第2実施形態で説明したように誘導空気を導入して旋回気流を発生させた場合の燃焼解析を実施した。誘導空気は、総燃焼空気量を一定として、その内の20%分の空気を利用した。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、実施例1や実施例2とは異なり、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が長軸方向に沿って交互に配置されているセラミックバーナを備えた熱風炉について、実施例2のように誘導空気を導入せずに旋回気流を発生させない状態で燃焼解析を行った。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。
【0055】
表1に示すように、実施例1の未燃CO濃度比は、0.7となり、比較例1に対して未燃CO濃度が30%低減した。つまり、実施例1のように、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が短軸方向に沿って交互に配置されていることで、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきが抑制され、熱風炉の燃焼効率が向上することが分かった。
さらに、表1に示すように、実施例2の未燃CO濃度比は、0.2となり、比較例1に対して未燃CO濃度が5分の1に低減した。つまり、実施例2のように、旋回気流を格子部の上方で生じさせ、燃焼空気、及び燃料ガスを撹拌することで、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきが抑制され、熱風炉の燃焼効率が大幅に向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、熱風炉のセラミックバーナに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1,20…熱風炉
9,29,39…セラミックバーナ
91…本体
91A…短軸
92…隔壁
95…燃焼空気通路
96…燃料ガス通路
97,397…格子部
100…旋回手段
120…空気噴出口
397C…誘導ブレード
397D…誘導ブレード
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉用セラミックバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉に熱風を供給するために熱風炉が用いられている。内燃式の熱風炉では、炉体内部に、燃料ガスを燃焼させる燃焼室と蓄熱煉瓦が充填される蓄熱室とが形成される。熱風炉の燃焼室は、円筒状の熱風炉の炉体内部を横断面円弧状の仕切によって区切られ、横断面視で当該円弧の内側と当該炉体内壁とで囲まれる略楕円状の領域に形成されている。
燃焼室の下方にはセラミックバーナが設けられている。このセラミックバーナは、隔壁によって複数に仕切られ、燃料ガスが流通する燃料ガス通路と、燃焼空気が流通する燃焼空気通路とが交互に形成されている。セラミックバーナの下部から供給された燃料ガスは、燃料ガス通路を通って上昇し、セラミックバーナの下部から供給された燃焼空気は、燃焼空気通路を通って上昇する。上昇した、燃料ガス及び燃焼空気は、セラミックバーナの上部の格子煉瓦(格子部)で混合されて、燃焼室内で燃焼する。燃焼ガスは、蓄熱室へと導かれ、蓄熱室内の蓄熱煉瓦に熱を蓄える。蓄熱室に蓄熱した後、燃焼を停止し、蓄熱室に空気を送り込んで高温空気とし、この高温空気を高炉へと供給する。
【0003】
従来のセラミックバーナにおいては、隔壁が上記略楕円状の長軸方向に沿って配置され、燃料ガス通路、及び燃焼空気通路は、平面視で当該長軸方向に沿って交互に形成されている。セラミックバーナ下部から供給された燃料ガス、及び燃焼空気が、両通路内を上昇する際に、当該長軸方向においてガスや空気の濃度分布が生じないように、ガス通路、及び空気通路は、それぞれの導入口から燃焼室に向かって拡がる略台形状の空間となっている。この略台形状の空間は、燃料ガス、及び燃焼空気導入口側から上方に向かって垂直方向に伸びる垂直壁と、この垂直壁の反対側に位置する傾斜壁と、隔壁とで囲まれて形成される。また、この傾斜壁は、ガス通路、及び空気通路とで互い違いに傾斜方向が異なる。つまり、ガス通路の傾斜壁は、上記略楕円状の長軸の一端側から他端側へ向かって傾斜するのに対し、空気通路の傾斜壁は、上記略楕円状の長軸の他端側から一端側へ向かって傾斜する。
このような構造を有するセラミックバーナにおいて、燃料ガス、及び燃焼空気を流通させると、横断面内での燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが大きく、燃焼効率が低いという問題があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1では、セラミックバーナ内に設置されるキー煉瓦の配置や形状を工夫することで、混合比のばらつきを抑制し、燃焼効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭62−10323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたように、キー煉瓦の配置や形状を工夫しても混合比のばらつき抑制が不十分であり、熱風炉の燃焼効率の更なる向上が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、燃焼効率を向上させることのできる熱風炉用セラミックバーナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路において、傾斜壁に沿って上昇する燃焼空気や燃料ガスよりも、垂直壁側で垂直方向へ上昇する燃焼空気や燃料ガスの方が多いことを見出した。そして、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の傾斜壁、及び垂直壁の配置は、上述のとおり交互に異なるので、格子部では、上述略楕円状の長軸の一端側において、燃料ガスが多く、燃焼空気が少ない状態で混合され、同長軸の他端側において、燃焼空気が多く、燃料ガスが少ない状態で混合され、横断面内での混合比のばらつきが大きくなっていることを見出した。
そして、本発明者らは、燃料ガス通路、及び燃焼空気通路を上記略楕円状の短軸方向に沿って交互に配置することで、当該短軸方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、上述の混合比のばらつきが抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱風炉用セラミックバーナは、
筒状の本体を有し、この本体内部に複数の隔壁で仕切られた燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を備える熱風炉用セラミックバーナであって、
前記本体は、横断面略楕円状に形成され、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路は、前記横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路は、本体の横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている。そのため、本発明の燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の上端における開口の長手方向(短軸方向に相当)の長さ寸法は、本体の横断面略楕円状の長軸方向に沿って形成する場合と比べて、小さくなる。
従来のように当該長軸方向に沿って各通路を形成すると、開口の長さ寸法が大きくなり、その長さ方向に渡って燃焼空気又は燃料ガスが拡散することになるので、当該長手方向の一端側と他端側とにおける濃度差が大きくなる。
一方で、本発明のように、開口の長さ寸法が小さくなることで、その長さ方向に渡って燃焼空気又は燃料ガスが拡散する距離も短くなり、当該長手方向の一端側と他端側とにおける燃料ガスや燃焼空気の濃度差が小さくなる。その結果、短軸方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが抑制される。よって、熱風炉における燃焼効率が向上する。
【0011】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている
ことが好ましい。
【0012】
このような本発明では、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路より上方に、本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている。そのため、各通路を通過した後の燃焼空気、及び燃料ガスが旋回手段によって生じた旋回気流によって撹拌される。したがって、上述の混合比のばらつきをさらに抑制できる。その結果、熱風炉における燃焼効率をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記旋回手段は、前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記旋回気流の旋回方向に向けて配置された空気噴出口を備え、
前記空気噴出口は、前記燃焼空気通路に空気を供給する燃焼空気流路から分岐して供給された空気を噴出する
ことが好ましい。
【0014】
このような本発明では、空気噴出口が、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路より上方において、旋回気流の旋回方向に向けて配置されている。そのため、旋回気流を容易に生じさせることができる。また、空気噴出口から噴出する空気は、燃焼空気通路に供給される空気の一部を分岐させたものを利用するので、別途、旋回気流を生じさせるための設備が不要になり、設備コストの上昇を防ぐことができる。
【0015】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の上端には、煉瓦で格子状に構築された格子部が設けられ、
前記格子部には、前記旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている
ことが好ましい。
【0016】
このような本発明では、格子部に旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている。そのため、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を通過して格子部に至った燃焼空気、及び燃料ガスが混合されるとともに、誘導ブレードによって、旋回方向に向かう流れが生じ易くなる。通常、格子部を通過した後の気流は、鉛直方向成分が主流となるところ、本発明では、旋回方向に向かう流れが生じ易くなる結果、格子部よりも上方で旋回気流が生じ、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきをさらに抑制できる。
このような本発明で、上述の空気噴出口を併用してもよい。
【0017】
本発明の熱風炉用セラミックバーナでは、
前記本体内部に交互に形成される複数の前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の内、最も外側に前記燃焼空気通路が形成されている
ことが好ましい。
【0018】
このような本発明では、外側の通気路が燃焼空気通路であれば、燃料ガスの上昇気流の両側に燃焼空気の上昇気流が形成されるので、燃料ガスが燃焼空気と混合しないまま上昇することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の熱風炉を示す縦断面図。
【図2】前記第1実施形態のセラミックバーナにおける燃焼空気通路、及び燃料ガス通路の配置を示す横断面図。
【図3】前記第1実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図4】前記第1実施形態のセラミックバーナの縦断面図。
【図5】前記第1実施形態におけるセラミックバーナの拡大縦断面図。
【図6】前記第1実施形態におけるセラミックバーナの拡大斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態の熱風炉を示す縦断面図。
【図8】前記第2実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図9】本発明の第3実施形態のセラミックバーナにおける格子部を示す横断面図。
【図10】前記第3実施形態におけるセラミックバーナの拡大縦断面図。
【図11】前記第3実施形態のセラミックバーナにおける格子部の変形例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の熱風炉用セラミックバーナを備えた熱風炉1が示されている。
図1において、熱風炉1は基礎2上に設置された炉体3を有する。炉体3は円筒状の直胴部6と、直胴部6の上部にやや大径に形成されたコニカル部5と、コニカル部5の上面に設置された半球状のドーム部4とを有する。直胴部6の内部には、燃焼室7、及び蓄熱室8が形成され、互いに煉瓦壁で区切られている。燃焼室7の下部には、燃焼室7内に高温の燃焼ガスを送り込むセラミックバーナ9が設けられている。炉体3の燃焼室7側には、燃焼空気導入口10,燃料ガス導入口11が設けられている。
【0021】
燃焼室7は、炉体3内部を横断面円弧状の仕切71(図2参照)によって区切られ、当該円弧の内側と当該炉体3内壁とで囲まれる略楕円状の領域に形成されている。そして、燃焼室7は、当該略楕円状の領域がセラミックバーナ9の上方からコニカル部5まで連続し、上下に延びるガス通路72を有する(図1参照)。
【0022】
蓄熱室8は、仕切71の当該円弧の外側と炉体3の内壁とで囲まれる領域に形成されている。そして、この領域が炉体3の下方からコニカル部5まで連続している。蓄熱室8には、図1に示すように、蓄熱煉瓦81が配列され、これにより蓄熱室8の全体を埋める蓄熱体82が形成されている。この蓄熱体82は蓄熱室8の底部に設置される支持体83により支持されている。
蓄熱体82において、蓄熱煉瓦81は、それぞれ上下に貫通する通気孔を有し、かつ各々の通気孔が互いに連続するように配列されており(図示省略)、蓄熱体82の上面側から支持体83まで、全体として通気が可能である。
【0023】
炉体3には、図1に示すように、燃焼空気導入口10、燃料ガス導入口11、外気連通口12、熱風取出口13が形成されている。
燃焼空気導入口10、及び燃料ガス導入口11は、直胴部6の燃焼室7側の下部に形成されている。図1、及び図4に示すように、燃焼空気導入口10には、燃焼空気流路としての燃焼空気導入管14が接続されている。燃料ガス導入口11には、燃料ガス流路としての燃料ガス導入管15が接続されている。
外気連通口12は、図1に示すように、直胴部6の蓄熱室8側の下部に形成され、支持体83下方の中空部分に連通されている。
熱風取出口13は、図1に示すように、直胴部6の燃焼室7側の中間高さに形成され、燃焼室7のガス通路72に連通されている。
【0024】
セラミックバーナ9は、燃焼空気導入口10から炉体3内部に導入された燃焼空気、及び燃料ガス導入口11から炉体3内部に導入された燃料ガスを上昇させ、セラミックバーナ9上部にてこれらを混合させて燃焼させる。
セラミックバーナ9は、図1〜5に示すように、筒状の本体91と、隔壁92と、垂直壁93と、傾斜壁94と、燃焼空気通路95と、燃料ガス通路96と、格子部97とを備える。
筒状の本体91は、煉瓦で組み立てられており、燃焼室7と同様に横断面視で略楕円状断面が上下方向に連続している。本体91の下部には、前述の燃焼空気導入口10と連通する空気導入室98Aと、前述の燃料ガス導入口11と連通する燃料ガス導入室98Bが形成されている。空気導入室98Aと燃料ガス導入室98Bとは、それぞれに導入された空気、及び燃料ガスが混合しないように、仕切壁98Cで仕切られている。
隔壁92、垂直壁93、及び傾斜壁94は、本体91の内部を仕切るものであり、煉瓦で組み立てられている。
隔壁92は、空気導入室98Aと燃料ガス導入室98Bの上方に複数設けられている。隔壁92は、図2に示す本体91の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って複数配置されている。隔壁92同士の間には所定の間隔が設けられており、この間隔を維持するために、隔壁92間にキーレンガと称される耐火物製の図示しないスペーサ部材が組み込まれている。隔壁92の一方の側端に垂直壁93が連続して形成され、他方の側端に傾斜壁94が連続して形成されている。
【0025】
燃焼空気通路95は、空気導入室98Aに導入された空気をセラミックバーナ9の上方に向けて通過させるための空間である。燃料ガス通路96は、燃料ガス導入室98Bに導入された燃料ガスをセラミックバーナ9の上方に向けて通過させるための空間である。これらの空間は、本体91内部が隔壁92、垂直壁93、及び傾斜壁94によって仕切られることで形成されている。
図2や図4に示すように、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、短軸91A方向に沿って、交互に配置されている。そのため、空気導入室98Aに導入された燃焼空気、及び燃料ガス導入室98Bに導入された燃料ガスが隔壁92を隔てて交互に格子部97へ向かって通過する。
【0026】
燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、図5に示すように縦断面視で略台形状の空間となっており、上下が開口している。図5においては、燃焼空気通路95が破線で示され、燃料ガス通路96が実線で示されている。
燃焼空気通路95の傾斜壁94Aは、空気導入室98Aから垂直方向に連続する垂直壁93Aとは反対側へ向かって傾斜する。一方、燃料ガス通路96の傾斜壁94Bは、燃料ガス導入室98Bから垂直方向に連続する垂直壁93Bとは反対側に向かって傾斜する。すなわち、燃焼空気通路95の傾斜壁94Aの傾斜方向と燃焼空気通路95の傾斜壁94Bの傾斜方向とは、図5に示すように、交差する。そのため、燃焼空気通路95に導入された燃焼空気、及び燃料ガス通路96に導入された燃料ガスは、それぞれ垂直方向に上昇するだけではなく、傾斜壁94A,94B方向にも広がりながら上昇する。その結果、燃焼空気通路95や燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向(短軸方向に相当)に渡って燃料ガスや燃焼空気が通過するようになる。
【0027】
上述のとおり、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、交互に配置されているが、図2に示すように、最も外側に燃焼空気通路95が配置されていることが好ましい。最も外側に配置される流路が燃焼空気通路95であれば、燃料ガスが燃焼空気と混合しないまま上昇することを防止できる。
【0028】
格子部97は、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を流通してきた燃料ガス、及び燃焼空気を混合し、燃料ガスを燃焼させる。
図3は、格子部97を示す横断面図であり、図6は、格子部97の一部を示す拡大斜視図である。
格子部97は、煉瓦で組み立てられ、図3〜図6に示すように、複数の支持部97Aと、複数の分流部97Bとが格子状に組み合わされている。
支持部97Aは、隔壁92の上端側に、隔壁92の配列方向と交差する方向に複数列設けられ、分流部97Bを支持する。支持部97Aは、上述の横断面略楕円状の長軸91B方向に沿って、略等間隔で設けられている。
分流部97Bは、図4に示すように、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を通過してきた燃料ガス、及び燃焼空気を二手に分流させる。分流した一方の燃料ガスと、分流した一方の燃焼空気とは、上昇しながら合流して混合される。分流部97Bは、支持部97Aの設置方向と交差する方向、上述の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って、略等間隔で設けられている。それぞれの分流部97Bは、図3や図5に示すように、隣り合う隔壁92間に位置する。
【0029】
以上のような第1実施形態によれば、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ9の燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96は、本体91の横断面略楕円状の短軸91A方向に沿って交互に形成されている。そのため、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向(短軸91A方向に相当)の長さ寸法は、本体91の横断面略楕円状の長軸方向に沿って形成する場合と比べて、小さくなる。このように開口の長さ寸法が小さくなることで、当該長手方向の一端側と他端側とで燃料ガス、及び燃焼空気の濃度差が小さくなる。その結果、短軸91A方向の一端側と他端側での燃料ガス濃度、及び燃焼空気濃度のバランスが改善されて、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきが抑制される。よって、熱風炉1における燃焼効率が向上する。
【0030】
燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の上端における開口の長手方向の長さ寸法が、上述の従来技術と比べて小さくなることで、当該長手方向に渡って燃料ガスや燃焼空気が通過するように設けられた傾斜壁94の斜面長さ寸法も小さくなる。そのため、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96の高さ寸法も小さくなり、セラミックバーナ9の高さ寸法も小さくなる。そうすると、熱風炉1内に、従来のような長軸方向配置の隔壁を有するセラミックバーナを設置した場合に比べて、本実施形態のような短軸方向配置の隔壁92を有するセラミックバーナ9を設置した方が、燃焼室7の燃焼空間が高さ方向において広くなり、燃焼空間の容積が拡大する。その結果、燃焼空気と燃焼用ガスとが上昇しながら接触、及び混合する時間が増えて、混合比のばらつきが抑制される。
【0031】
また、セラミックバーナ9がコンパクトになることで、セラミックバーナ9の作製に必要な煉瓦等の材料の削減、組立期間の短縮等を図ることができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図7は、第2実施形態の熱風炉20を示す縦断面図であり、図8は、格子部97を示す横断面図である。
第2実施形態の熱風炉20が備えるセラミックバーナ29は、格子部97の上方に旋回手段100を有する点で、第1実施形態のセラミックバーナ9と異なる。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0033】
旋回手段100は、本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる。
旋回手段100は、図7に示すように、燃焼空気導入管14から分岐し格子部97上方まで通ずる分岐管110と、分岐管110端部に設けられている空気噴出口120と、燃焼空気導入管14からの分岐点と空気噴出口120との間に接続されたオリフィス130と、空気流量調節弁(空気流調弁)140と、空気弁150とを備える。
分岐管110は、燃焼空気導入管14の途中に接続され、燃焼空気の一部を分岐させて旋回気流を生じさせるための誘導空気を空気噴出口120まで導く。分岐管110は、図7に示すように、燃焼空気導入管14の燃焼空気流量調節弁14Aより手前側に接続されている。
また、本実施形態では、図8に示すように2系統の分岐管110が配設されている。一方は長軸91Bの一端側、他方は長軸91Bの他端側に配設されている。
空気噴出口120は、分岐管110から供給される誘導空気を噴出する。空気噴出口120は、本実施形態では、炉体3内壁に形成した開口部である。この空気噴出口120は、前述の2系統の分岐管110にそれぞれ取り付けられ、格子部97よりも上方に位置する。空気噴出口120の噴出口の向きは、旋回気流の旋回方向に向いている。具体的には、噴出口の向きは、本体91の断面略楕円状の接線方向に沿う方向に向けて形成されている。本実施形態では、図8に示すように、短軸91Aの一端側、及び他端側にそれぞれ設けられた空気噴出口120から誘導空気が噴出され、反時計回り方向の旋回気流を生じさせる。
燃焼空気導入管14から分岐した誘導空気は、オリフィス130で流量が絞られ、空気流量調節弁140で流量が調節され、空気弁150で旋回気流の発生を制御する。
【0034】
空気噴出口120から噴出する誘導空気量は、特に限定されないが、燃料ガス通路96を通じて供給する燃料ガスを燃焼させるのに必要な燃焼空気の10体積%以上25体積%以下とするのが好ましい。例えば、当該誘導空気量を20体積%とした場合、誘導空気を導入しない場合に比べて、未燃燃料ガス濃度を4分の1程度に削減できる。
【0035】
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ29は、上述の旋回手段100を備え、空気噴出口120から噴出した誘導空気は、本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を格子部97の上方に生じさせる。この旋回気流は、燃焼空気通路95を通過した燃焼空気、及び燃料ガス通路96を通過した燃料ガスを撹拌する。したがって、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきをさらに抑制できる。
また、上述の第1実施形態でも説明したとおり、熱風炉1内の燃焼室の燃焼空間の容積を拡大させることができる。加えて、第2実施形態で旋回気流を生じさせるので、当該拡大した燃焼空間内で気流をより多く旋回させることができる。旋回数が増えるので、燃焼空気と燃料ガスとの混合がより促進される。
その結果、熱風炉における燃焼効率をさらに向上させることができる。
【0036】
旋回手段100が、空気を噴出する空気噴出口120を備えているので、旋回気流を容易に生じさせることができる。また、空気噴出口120は、上述のとおり、長軸91Bの一端側と他端側とに配置されており、それぞれの空気噴出口120から誘導空気を所定方向に噴出させるので、より旋回気流を容易に生じさせることができる。
【0037】
旋回手段100から噴出する誘導空気は、燃焼空気通路95に供給される空気の一部を分岐させたものを利用するので、別途、旋回気流を生じさせるための設備が不要になり、設備コストの上昇を防ぐことができる。
【0038】
分岐管110が本体91内部に配設されているので、分岐管110内を通過している間に誘導空気が予熱される。空気噴出口120から噴出される誘導空気が予熱されているため、炉体3の内壁煉瓦のスポーリングを防止できる。
【0039】
〔第3実施形態〕
第3実施形態におけるセラミックバーナ39は、第1実施形態のセラミックバーナ9と格子部の形状が相違する。第3実施形態における旋回手段は、特徴的な形状を有する格子部が相当する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略又は簡略する。
図9は、セラミックバーナ39の格子部397を示す横断面図である。格子部397は、第1実施形態の格子部97と同様に、煉瓦で組み立てられ、複数の支持部397Aと、複数の分流部397Bとが格子状に組み合わされている。
【0040】
図9に示すように、支持部397Aは、当該支持部397Aの幅方向に張り出す誘導ブレード397Cを有し、分流部397Bは、当該分流部397Bの幅方向に張り出す誘導ブレード397Dを有する。誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、上昇してきた燃焼空気や燃料ガスの気流の方向を、旋回気流が生じ易くなるように誘導する。誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出す幅寸法は、上述の横断面略楕円状の中心から外側に向かうに従って大きくなり、図9に示すように傾斜している。
【0041】
図10は、図9におけるX−X線の矢印方向に見たセラミックバーナ39の縦断面拡大図である。
誘導ブレード397Dは、図10に示すように、当該誘導ブレード397Dの下部から上部へ向かうに従って、上述の張り出し方向に傾斜している。誘導ブレード397Cについても、誘導ブレード397Dと同様に傾斜している。
【0042】
本実施形態では、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向は、図9に示すように、横断面略楕円状を短軸91A、及び長軸91Bで区分してできる4つの領域D1、領域D2、領域D3、及び領域D4においてそれぞれ異なる方向とする。そして、反時計回り方向への旋回気流を生じさせるため、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、当該旋回気流の旋回方向に向けて張り出している。具体的には、図9に示すように、領域D1では、誘導ブレード397Dが上方向に、領域D2では、誘導ブレード397Cが左方向に、領域D3では、誘導ブレード397Dが下方向に、領域D4では、誘導ブレード397Cが右方向に、それぞれ張り出している。なお、領域D1においては、領域D2に近い支持部397Aが左方向に張り出す誘導ブレード397Cを有し、領域D3においては、領域D4に近い誘導ブレード397Cが右方向に張り出す誘導ブレード397Cを有している。
図10には、領域D4、及び領域D1における分流部397Bの状態が示されている。領域D1においては、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を上昇してきた燃焼空気、及び燃料ガスは、誘導ブレード397Dの傾斜方向(図10においては、左斜め上方向)に沿う流れが生じ易くなる。領域D4においては、分流部397Bが誘導ブレード397Dを有していないため、垂直方向に上昇する流れが主流となる。
【0043】
以上のような第3実施形態によれば、第1実施形態で説明した効果に加え、次のような効果を奏する。
セラミックバーナ39の格子部397において、支持部397Aが誘導ブレード397Cを有し、分流部397Bが誘導ブレード397Dを有する。そのため、格子部397では、燃焼空気通路95、及び燃料ガス通路96を通過して格子部397に至った燃焼空気、及び燃料ガスが混合されるとともに、誘導ブレード397Cや誘導ブレード397Dの張り出す方向に沿う気流、つまり、垂直方向に対して傾斜する方向の気流が生じやすくなる。その結果、格子部397の上方で本体91の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流が生じ、燃焼空気と燃料ガスとの混合比のばらつきを抑制できる。よって、熱風炉における燃焼効率を向上させることができる。
【0044】
誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向を、反時計回り方向の旋回気流が生じやすいように、領域D1〜D4ごとに順次変えているので、旋回気流を容易に生じさせることができる。
【0045】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、具体的な各部構成などは実施にあたって適宜変形などすることができる。
【0046】
前述した第1実施形態では、ノズルから供給する気体を空気としたが、熱風炉における燃焼性を損なわない限りにおいて、空気以外の気体を用いることができる。
また、空気噴出口120は、前述した第1実施形態のように2箇所に限られず、1か所でもよいし、断面略楕円状の内周に沿って複数個所形成してもよい。
その他、セラミックバーナ9の本体91内部に分岐管110を配設する態様で説明したが、これに限られない。例えば、本体91内部には分岐管110を配設しない態様でもよい。具体的には、炉体3の内外を連通させる孔を本体91の煉瓦壁内に形成しておき、炉体3の外側に分岐管110を接続し、炉体3の内側に空気噴出口120を形成する。
【0047】
前述した第3実施形態では、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dは、図10に示すように傾斜しながら張り出しているが、このような張り出し形状に限定されない。旋回気流の旋回方向に向けて張り出す形状であればよく、例えば、矩形状に張り出していてもよいし、湾曲状に張り出していてもよい。
また、誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向は、図9に示すような方向に限定されず、図9に示す領域D1〜D4の各領域における張り出し方向とそれぞれ反対方向にしてもよい。また、横断面略楕円状を区分する領域は、上述のように4つに限定されない。また、各領域内で、支持部397A又は分流部397Bの一方を張り出させているが、同じ領域内で、支持部397Aに誘導ブレード397Cを、分流部397Bに誘導ブレード397Dを形成させてもよい。
【0048】
また、格子部397の支持部397A、及び分流部397Bを図9に示すように、直線状に形成せずに、傾斜させてもよい。例えば、図11に示すように、支持部397Aを誘導ブレード397Cの張り出し方向に傾斜させ、分流部397Bを誘導ブレード397Dの張り出し方向に傾斜させてもよい。この場合、領域D1において分流部397Bを、その長手方向中心から外側へ向かうに従って誘導ブレード397Dの張り出し方向に傾斜させる。領域D2〜D4についても同様に張り出し方向に傾斜させる。このように、支持部397A、及び分流部397Bも誘導ブレード397C、及び誘導ブレード397Dの張り出し方向に対応させて傾斜させることで、垂直方向に対して傾斜する方向の気流がより生じやすくなるので、旋回気流を発生させ易くなる。
【0049】
さらに、第2実施形態で説明したように空気噴出口120を設けて誘導空気を噴出させるとともに、第3実施形態で説明したように誘導ブレード397C,397Dを形成することもできる。このように組み合わせることで、旋回気流を生じさせ易くなり、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきがさらに抑制され、熱風炉の燃焼効率もさらに向上させることができる。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、上述の第1実施形態で説明したような燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が短軸方向に沿って交互に配置されているセラミックバーナを備えた熱風炉について、燃焼解析を実施した。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。熱風炉設備仕様条件は、3基シングル送風、送風量:5100Nm3/min、送風温度:1200℃とした。表1中、燃料ガス組成は、高炉ガス(BFG)とコークス炉ガス(COG)との混合ガスを表す。また、未燃CO濃度比は、比較例1の未燃CO濃度に対する実施例1、又は実施例2の未燃CO濃度の比であり、比較例1の未燃CO濃度を1として表す。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の熱風炉について、さらに上述の第2実施形態で説明したように誘導空気を導入して旋回気流を発生させた場合の燃焼解析を実施した。誘導空気は、総燃焼空気量を一定として、その内の20%分の空気を利用した。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、実施例1や実施例2とは異なり、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が長軸方向に沿って交互に配置されているセラミックバーナを備えた熱風炉について、実施例2のように誘導空気を導入せずに旋回気流を発生させない状態で燃焼解析を行った。燃焼解析の条件、及び結果を表1に示す。
【0055】
表1に示すように、実施例1の未燃CO濃度比は、0.7となり、比較例1に対して未燃CO濃度が30%低減した。つまり、実施例1のように、燃焼空気通路、及び燃料ガス通路が短軸方向に沿って交互に配置されていることで、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきが抑制され、熱風炉の燃焼効率が向上することが分かった。
さらに、表1に示すように、実施例2の未燃CO濃度比は、0.2となり、比較例1に対して未燃CO濃度が5分の1に低減した。つまり、実施例2のように、旋回気流を格子部の上方で生じさせ、燃焼空気、及び燃料ガスを撹拌することで、燃焼空気と燃焼用ガスとの混合比のばらつきが抑制され、熱風炉の燃焼効率が大幅に向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、熱風炉のセラミックバーナに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1,20…熱風炉
9,29,39…セラミックバーナ
91…本体
91A…短軸
92…隔壁
95…燃焼空気通路
96…燃料ガス通路
97,397…格子部
100…旋回手段
120…空気噴出口
397C…誘導ブレード
397D…誘導ブレード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体を有し、この本体内部に複数の隔壁で仕切られた燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を備える熱風炉用セラミックバーナであって、
前記本体は、横断面略楕円状に形成され、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路は、前記横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記旋回手段は、前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記旋回気流の旋回方向に向けて配置された空気噴出口を備え、
前記空気噴出口は、前記燃焼空気通路に空気を供給する燃焼空気流路から分岐して供給された空気を噴出する
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の上端には、煉瓦で格子状に構築された格子部が設けられ、
前記格子部には、前記旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記本体内部に交互に形成される複数の前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の内、最も外側に前記燃焼空気通路が形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項1】
筒状の本体を有し、この本体内部に複数の隔壁で仕切られた燃焼空気通路、及び燃料ガス通路を備える熱風炉用セラミックバーナであって、
前記本体は、横断面略楕円状に形成され、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路は、前記横断面略楕円状の短軸方向に沿って交互に形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記本体の垂直方向の軸周りで旋回する旋回気流を生じさせる旋回手段が設けられている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記旋回手段は、前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路より上方に、前記旋回気流の旋回方向に向けて配置された空気噴出口を備え、
前記空気噴出口は、前記燃焼空気通路に空気を供給する燃焼空気流路から分岐して供給された空気を噴出する
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の上端には、煉瓦で格子状に構築された格子部が設けられ、
前記格子部には、前記旋回気流の旋回方向に向けて張り出す誘導ブレードが形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の熱風炉用セラミックバーナにおいて、
前記本体内部に交互に形成される複数の前記燃焼空気通路、及び前記燃料ガス通路の内、最も外側に前記燃焼空気通路が形成されている
ことを特徴とする熱風炉用セラミックバーナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−241203(P2012−241203A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109479(P2011−109479)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】
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