説明

燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤及びその除去装置

【課題】都市ガス、LPガス等の燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤、および、当該シクロヘキセンの選択的吸着剤を使用する燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置を得る。
【解決手段】銀担持のゼオライトからなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤、および、容器中に銀担持のゼオライトからなるシクロヘキセンの選択的吸着剤を充填してなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤に関し、また、当該選択的吸着剤を使用する燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC)や固体酸化物形燃料電池(SOFC)などの燃料電池の燃料である水素は、都市ガスやLPガス、ガソリン、灯油などの燃料を水蒸気改質法や部分酸化法により改質することで製造される。このうち水蒸気改質法は、燃料ガスを水蒸気により改質して水素リッチな改質ガスを生成させる方法である。水蒸気改質法では水蒸気改質器における接触反応(=触媒反応)によりそれら燃料ガスが水素リッチな改質ガスへ変えられる。
【0003】
水蒸気改質器は、概略、バーナあるいは白金等の燃焼触媒を配置した燃焼部(加熱部)と改質触媒を配置した改質部により構成される。改質部では燃料ガスを水蒸気と反応させて水素リッチな改質ガスが生成される。改質部で起こる反応は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部からの熱が必要であり、400〜600℃程度以上の温度が必要である。このため燃焼部における燃料ガスの空気による燃焼により発生した燃焼熱(ΔH)が改質部に供給される。改質触媒としてはNi系、Ru系等の触媒が用いられる。なお、上記400〜600℃程度以上の温度とは、改質反応は400℃程度でも起るが、有意の改質反応は600℃程度以上の温度で起ることを意味する。
【0004】
図7は、上記のような水蒸気改質器を用い、燃料ガスの前処理からPEFCに至るまでの態様例を説明する図である。都市ガスやLPガスには、漏洩保安を目的とする付臭剤としてメルカプタン類、スルフィド類、あるいはチオフェン類などの硫黄化合物が付臭剤として添加されている。また、ガソリンや灯油などには、原油からの精製プロセスで脱硫されなかった微量の硫黄化合物が含まれている。
【0005】
改質部の改質触媒はそれらの硫黄化合物により被毒して性能劣化を来すので、燃料ガスは、それらの硫黄化合物を除去するために脱硫器へ導入される。次いで、別途設けられた水蒸気発生器からの水蒸気を添加、混合して水蒸気改質器の改質部へ導入され、改質部での燃料ガスの水蒸気による改質反応により水素リッチな改質ガスが生成される。
【0006】
燃料ガスの成分のうち、例えばメタンの改質反応は「CH4+2H2O→CO2+4H2」で示される。生成する改質ガス中には未反応のメタン、未反応の水蒸気、炭酸ガスのほか、一酸化炭素(CO)が副生して8〜15%(容量%、以下%について同じ)程度含まれている。このため改質ガスは、副生COを炭酸ガスに変えて除去するためにCO変成器にかけられる。CO変成器では銅−亜鉛系や白金触媒等のCO変成触媒が用いられるが、その触媒を機能させるには200〜250℃程度の温度が必要である。CO変成器中での反応は「CO+H2O→CO2+H2」で示され、この反応で必要な水蒸気としては水蒸気改質器において未反応の残留水蒸気が利用される。
【0007】
CO変成器から出る改質ガスは、未反応のメタンと余剰水蒸気を除けば、水素と炭酸ガスとからなっている。このうち水素が目的とする成分であるが、CO変成器を経て得られる改質ガスについても、COは完全には除去されず、微量のCOが含まれている。PEFCに供給する燃料水素中のCO含有量は100ppm(容量ppm、以下ppmについて同じ)程度が限度であり、これを越えると電池性能が著しく劣化するので、CO成分はPEFCへ導入する前にできる限り除去する必要がある。
【0008】
このため、改質ガスはCO変成器によりCO濃度を1%程度以下まで低下させた後、CO酸化器(CO除去器)にかけられる。ここで空気等の酸化剤ガスが添加され、COの酸化反応(CO+1/2O2=CO2)により、COを100ppm程度以下、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下というように低減させる。CO酸化器ではRu系などのCO酸化触媒(CO除去触媒)が用いられ、その作動温度は100〜150℃程度である。こうして精製された水素がPEFCの燃料極に供給される。
【0009】
以上は、燃料電池がPEFCである場合の態様例であるが、燃料電池がSOFCである場合には、COも燃料となるので、CO変成器及びCO除去器は不要であり、水蒸気改質器で生成した水素及びCOを含む改質ガス、あるいは水素、CO及びメタン(メタンはSOFCの燃料極、支持基板に含まれるNi等の金属により水素、COへ改質される)を含む改質ガスがSOFCの燃料極に供給される。
【0010】
図7中、水蒸気改質器の燃焼部に供給する燃料を“燃料ガス(燃焼用)”と記載し、水蒸気改質器の改質部に供給する燃料を“燃料ガス(原燃料)”と記載し、また、水蒸気改質器、CO変成器及びCO酸化器を含む水素製造装置、すなわちそれら機器を含む水素製造システムを“改質器系”と記載している。このうち“燃料ガス(原燃料)”は、水蒸気改質器の改質部での改質ガス生成用の燃料ガスであるが、本明細書中、適宜“燃料ガス”、“燃料ガス(原燃料)”、“原燃料”等と記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、燃料ガスの付臭剤として、前述メルカプタン類、スルフィド類、あるいはチオフェン類などの硫黄化合物のほかに、硫黄分を含まない炭化水素の一種であるシクロヘキセン(cyclohexene=tetrahydrobenzene,分子式=C610、分子量=82.1、融点=−103.65℃、沸点=83.19℃)も知られており、シクロヘキセンはそれらの硫黄化合物と併用しても使用される(特許文献1)。
【0012】
【特許文献1】特開昭54−058701号公報
【0013】
前述のとおり、都市ガス、LPガス等の燃料ガス中の付臭剤である硫黄化合物は水蒸気改質器へ導入する前に除去することが必須である。しかし、燃料ガスに付臭剤としてシクロヘキセンを含む場合、シクロヘキセンは炭化水素であることから、従来、当該シロヘキセンを除去する必要はないと考えられていた。
【0014】
すなわち、最近になるまで、都市ガス、LPガス等の燃料ガスを使用する際にシクロヘキセンを除去しなければならないガス器具があることは知られていなかった。というのは、シクロヘキセンは炭化水素であることから燃料の一種でもあり、燃焼性もよく、各種ガス器具を使用するときにわざわざ除去する必要がなかったためである。
【0015】
ところが、シクロヘキセンを付臭剤として添加した都市ガス、LPガス等を燃料ガス(原燃料)として水蒸気改質器で改質し、生成改質ガスを燃料電池の燃料として使用すると、その水蒸気改質器中に配置した改質触媒の表面に炭素が析出し、水素製造効率が低下するという問題があることがわかった。また、PEFCを用いたシステムでは改質触媒に続きCO変成触媒・CO除去触媒が使用されるが、これらの触媒についても同様、炭素が析出してしまう可能性がある。さらに、シクロヘキセンを含む原燃料を改質器系の停止時のパージ用に使用するとシクロヘキセンが上記各触媒に吸着し、活性サイトが覆われる等の悪影響を及ぼす可能性がある。これらの問題を解決するには、都市ガス、LPガス等の燃料ガスから当該シクロヘキセンを予め除去することが必須となる。
【0016】
都市ガス、LPガス等の燃料ガスからシクロヘキセンを除去するためには、燃料ガスに含まれるシクロヘキセンを“選択的に吸着する吸着剤”が必要である。しかしこれまで、シクロヘキセンを“選択的に吸着する吸着剤”はなく、文献上もそのような特性を持つ吸着剤は見当たらない。
【0017】
なお、特許文献2〜4などには、排気ガス中の炭化水素を吸着する吸着剤としてゼオライト、あるいはゼオライトにCu、Ag、Au等の金属を含有させたものが開示されている。
【0018】
しかし、それらの吸着剤は、炭化水素を吸着するとは言っても、排気ガス中の炭化水素であり、シクロヘキセンという特定の炭化水素を吸着するかどうかは一切不明である。また、万一シクロヘキセンを吸着するとしても、各種炭化水素の混合物である燃料ガスからシクロヘキセンを“選択的に吸着する”かどうかは一切不明である。
【0019】
【特許文献2】特開平11−005020号公報
【特許文献3】特開2005−319368号公報
【特許文献4】特開2006−210163号公報
【0020】
このような事実、事情からして、ある種の物質(吸着剤)がシクロヘキセンの吸着性、選択的吸着性についてどのような性能を示すかについては誰も予測できず、現実の実験によるのでなければ確かめようがないものである。
【0021】
本発明者らは、現実の実験により、銀担持のゼオライトが燃料ガス中のシクロヘキセンを吸着すること、しかもシクロヘキセンを選択的に吸着することを見い出した。
【0022】
すなわち、本発明は、銀担持のゼオライト(以下、銀担持ゼオライト、銀担持ゼオライト吸着剤、等とも言う)からなる、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤を提供することを目的とし、また、銀担持ゼオライトからなるシクロヘキセンの選択吸着剤を使用した燃料ガス中のシクロヘキセン除去装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明(1)は、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、銀担持のゼオライトからなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤である。
本発明(2)は、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、該選択的吸着剤が銀担持のゼオライトからなり、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にする選択的吸着剤であることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤である。
本発明(3)は、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、該選択的吸着剤が銀担持のゼオライトからなり、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にする選択的吸着剤であることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤である。
【0024】
本発明(4)は、燃料ガス中のシクロヘキセンの吸着除去装置であって、容器中に銀担持のゼオライトからなるシクロヘキセンの選択的吸着剤を充填してなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置である。
この燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置によると、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にし、また、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
(a)本発明(1)に係る銀担持のゼオライトからなる燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤によれば、燃料ガス中のシクロヘキセン付臭剤を選択的に吸着して除去することができる。
(b)本発明(2)に係る銀担持のゼオライトからなる燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤により、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にすることができる。
(c)本発明(3)に係る銀担持のゼオライトからなる燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤により、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にすることができる。
(d)本発明(1)〜(3)によれば、PEFCまたはSOFCの燃料水素製造用の燃料ガスからシクロヘキセンを予め除去することにより、その水蒸気改質器の改質部の改質触媒の表面への炭素析出を防止し、水素製造効率の低下を防止することができる。
(e)本発明(4)に係る銀担持のゼオライトを使用する燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置によれば、シクロヘキセンを含む燃料ガスを、容器中に充填した銀担持のゼオライトからなる吸着剤層に通すことによりシクロヘキセンを選択的に吸着して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は実験例で使用した実験装置、操作を説明する図である。
【図2】図2は図1の実験装置を使用し、銀担持Y型ゼオライト吸着剤を使用した場合の実験結果を示す図である。
【図3】図3は図2中“Z”として示す枠で囲った部分の拡大図である。
【図4】図4は図1の実験装置を使用し、銀担持Y型ゼオライト吸着剤による実用温度でのCH吸着についての試験結果を示す図である。
【図5】図5は図1の実験装置を使用し、銀担持Y型ゼオライト吸着剤による、温度5℃、25℃、55℃での試験結果を示す図(吸着等温線)である。
【図6】図6は燃料ガス中のシクロヘキセン除去装置の構成態様を説明する図である。
【図7】図7は水蒸気改質器を用い、燃料ガスの処理からPEFCに至るまでの態様例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明(1)〜(3)は、銀担持のゼオライトからなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセン付臭剤の選択的吸着剤である。ゼオライトとしては好ましくはX型ゼオライト、Y型ゼオライトまたはβ型ゼオライトが使用される。
【0028】
本発明(4)は、燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置であって、容器中に銀担持のゼオライトからなる燃料ガス中のシクロヘキセン吸着剤を充填してなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセン除去装置である。ゼオライトとしては好ましくはX型ゼオライト、Y型ゼオライトまたはβ型ゼオライトが使用される。
この燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置により、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にし、また、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にすることができる。
【0029】
〈銀担持ゼオライトの製造〉
本発明の銀担持ゼオライトは、好ましくは銀イオン(Ag+)を含む水溶液を使用したイオン交換法によりゼオライトに銀を担持することで製造される。より詳しくは、硝酸銀等の銀化合物を水に溶解して水溶液とし、その水溶液中で銀を銀イオンとして存在させ、この水溶液を用いてイオン交換する。ゼオライトに対する銀担持量は、シクロヘキセンを吸着する上で有意な量であればよいが、好ましくはゼオライトに対して3〜24wt%(ゼオライト100gに対して銀3〜24g)の範囲で選択することができる。
【0030】
例えば、ゼオライトがY型ゼオライトであり、それがNa−Y型ゼオライトの場合、その中の陽イオン(Na+)を水溶液中の銀イオンとイオン交換する。イオン交換は、Na−Y型ゼオライトとその水溶液とを(1)撹拌法、(2)含浸法、(3)流通法、等により接触させることにより、Y型ゼオライト中の陽イオンを銀イオンと交換させる。次いで、水等で洗浄した後、乾燥することにより銀担持のY型ゼオライトが得られる。乾燥後、窒素雰囲気等で焼成してもよいが、焼成は必ずしも必要ではない。
【0031】
なお、(1)撹拌法は、容器にゼオライトと銀イオン水溶液を入れ攪拌機で攪拌することで行われ、(2)含浸法は、例えばナス形フラスコにゼオライトと銀イオン水溶液を入れて回転し、その後真空下で溶液を蒸発濃縮することで行われ、(3)流通法は、ゼオライトを入れたカラム内に銀イオン水溶液をポンプを介して通すことにより行われる。
【0032】
銀担持ゼオライトは、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素は吸着せず、シクロヘキセンを選択的に吸着する。このため、例えば都市ガス等の燃料ガスの成分(燃料種)であるそれらの炭化水素中からシクロヘキセンを選択的に吸着し、除去することができる。
【0033】
ここで、天然ガスには、主成分であるメタンのほか、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、炭素数6(C=6)以上の炭化水素が含まれている。例えば見附油田(新潟)からの天然ガスには炭素数6以上の炭化水素が0.40%、申川油田(秋田)からの天然ガスには炭素数6以上の炭化水素が0.43%、片貝ガス田(新潟)からの天然ガスには炭素数6以上の炭化水素が0.10%、勇払沖(北海道)からの天然ガスには炭素数6以上の炭化水素が0.04%と言うように含まれている(非特許文献1)。
【0034】
【非特許文献1】平成9年7月、社団法人日本ガス協会発行「都市ガス工業概要(製造編)」p.12〜14
【0035】
そして、都市ガスは通常、その種の天然ガスを主原料とし、付臭剤を添加することで製造される。付臭剤としてシクロヘキセンが添加された都市ガスにおいては、主成分であるメタンのほか、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、炭素数6以上の炭化水素〔それらのうち炭素数4(=ブタン)以上の炭化水素は異性体を含む〕が含まれており、それらの成分は、シクロヘキセンを含めて何れも炭化水素である。
【0036】
このため、シクロヘキセンを吸着する吸着剤ではあっても、同じく炭化水素であるそれらの成分(=メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、炭素数6以上の炭化水素)をも吸着する吸着剤では使い物にならず、シクロヘキセンを選択的に吸着する吸着剤であることが必須、不可欠である。本発明においては、それら各種炭化水素の混合物からシクロヘキセンを選択的に吸着する吸着剤として“銀担持ゼオライト”が有効であることを見い出したものである。
【0037】
以下、本発明を、シクロヘキセンの選択的吸着特性に係る実験例を基に、さらに詳しく説明する。以下においてシクロヘキセンを適宜“CH”と略称する。
【0038】
〈実験装置、操作〉
図1は、使用した実験装置、その操作を説明する図である。図1のとおり、恒温槽中に銀担持ゼオライト充填容器(銀担持ゼオライトを充填した容器)4を配置する。すなわち「吸着剤試験サンプル」として示す箇所に銀担持ゼオライトを充填する。
【0039】
銀担持ゼオライト充填容器4への試験ガス供給側には、シクロヘキセンを含む試験ガスを供給する導管3を連結している。より詳しくは、銀担持ゼオライト充填容器4への試験ガス供給側に、脱硫器、流量調節器、開閉弁V1を備える都市ガス(13A)導管1と、流量調節器、開閉弁V2を備えるシクロヘキセン標準ガス導管2を配置する。CH標準ガスはCHを窒素に添加含有させることでつくったものである。
【0040】
各流量調節器、開閉弁V1、V2を操作することにより、CHを所定量含有する試験ガスを生成することができる。CHを含む試験ガスは、脱硫器で脱硫済みの都市ガスに対して、CH標準ガス導管の開閉弁V2を開とし、その流量を流量調節器により調節して混合することにより調製する。
【0041】
ここで、都市ガス(13A)を脱硫器に供給して硫黄化合物付臭剤を除去するのは、都市ガス(13A)中に含まれている硫黄化合物付臭剤を予め除去して、都市ガスと同じ炭化水素組成の試験ガスにするためである。
【0042】
銀担持ゼオライト充填容器4には、その入口側の導管3に試験ガスのサンプリング用導管6を配置し、その出口側の導管5に銀担持ゼオライト充填容器4を経た試験ガスのサンプリング用導管7を配置し、それぞれのガスを容量1Lのサンプリングバッグ(テドラーバッグ)に採取し、分析装置〔GC(=ガスクロマトグラフ)−MS(=質量分析計)〕で分析する。なお、図1中サンプリングバッグの記載は省略している。
【0043】
本実験装置の操作に際しては、恒温槽中の温度を例えば25℃というように一定に保つ。試験ガス、すなわち脱硫器で脱硫した都市ガスに、CHの添加量を設定して添加したガスを銀担持ゼオライト充填容器4(以下、適宜“カラム”とも称する)に流通させる。銀担持ゼオライト充填容器4中を流れて流出するガス全量を石けん膜式流量計で測定する。
【0044】
開閉弁V3、V4を操作してサンプリング用導管6、7から試験ガスをサンプリングし、それぞれCHの含有量を分析装置(GC−MS)により計測する。すなわち、銀担持ゼオライト充填容器4への入口側の導管3から分岐したサンプリング用導管6から試験ガスをサンプリングし、添加したCHの含有量を分析装置(GC−MS)により計測する。また、銀担持ゼオライト充填容器4からの出口側の導管5から分岐したサンプリング用導管7から試験ガスをサンプリングし、銀担持ゼオライト充填容器4を経た試験ガス中のCHの含有量を分析装置(GC−MS)により計測する。
【0045】
〈実験操作、結果〉
以上〈実験装置、操作〉のようにして、脱硫済み都市ガスにCHを10mg/m3添加した試験ガスを銀担持ゼオライト充填容器(吸着剤試験サンプル)4に流通させた。銀担持ゼオライト充填容器4に充填した吸着剤は、Y型ゼオライトに対して銀を15wt%(Y型ゼオライト100gに対して銀15g)イオン交換法により担持したものである。後述の実験においてもこれと同じ銀担持Y型ゼオライトを使用した。
【0046】
温度=25℃、圧力=常圧(1気圧)、LV(線速度)=33cm/s、SV(空間速度)=60000h-1とし、銀担持ゼオライト充填容器4(カラム)の入口側と出口側との試験ガスについて分析装置(GC−MS)による成分測定を行った。これにより試験ガス中の各成分の同定、定量分析を行うものである。
【0047】
図2は銀担持ゼオライトとして銀担持Y型ゼオライトを使用した場合の実験結果である。図2中、横軸は時間(min=分)、縦軸は検出イオン電圧(μV)である。試験ガス(=脱硫済み都市ガス)の各成分がガスクロマトグラフのカラム(Al23−KCl plot)内で分離する。このカラムでは小さな分子から順に検出器で検出される。
【0048】
図3は、図2中“Z”として示す枠で囲った部分の拡大図である。図2〜3中、Aとして示した線がカラム(=銀担持ゼオライト充填容器4)入口側ガスの測定結果であり、Bとして示した線がカラム(=銀担持ゼオライト充填容器4)出口側ガスの測定結果である。図2のとおり、シクロヘキセン(CH)以外の成分(=脱硫済み都市ガスの成分)は、カラム前後、すなわちカラム入口側ガス、カラム出口側ガスでピーク高さは同じ乃至ほぼ同じであり、カラムへの入口側ガスと、カラムからの出口側ガスとで含有濃度は変わっていないことがわかる。
【0049】
一例として、図2〜3中、シクロヘキセン(CH:C610)の左側にあるシクロヘキサン(C612)のピークを見ると、カラム入口側ガスとカラム出口側ガスとでピーク高さは同じであり、カラム入口側ガスとカラム出口側ガスとでシクロヘキサン(C612)の濃度は変わっていないことがわかる。
【0050】
これに対して、シクロヘキセン(CH:C610)については、Bのピークの高さがAのピークの高さに比べて格段に低くなっている。すなわち、銀担持ゼオライト充填容器4(カラム)中を通過することで、シクロヘキセンの濃度が低下しており、シクロヘキセン(C610)が銀担持Y型ゼオライト吸着剤に吸着され除去されたことを示している。
【0051】
このように、銀担持ゼオライト吸着剤によって、脱硫済み都市ガス中の他の成分の濃度はそのままで、シクロヘキセン(CH:C610)を選択的に吸着することができる。
【0052】
図2には、縦軸方向のピークの関係で2,2−ジメチルプロパンと炭素数6以上(C6を含む)の成分について示しているが、表1は酸素等のほか、炭素数1〜5(C1〜5)の成分について補足したものである。実験装置、操作は前記と同じで、試験開始後1日経過の時点でのカラム入口側ガス、カラム出口側ガスを採取し、ガスクロマトグラフ法により各ガスの成分分析を行った結果である。表1のとおり、そこに示す10種の成分のいずれの成分も吸着層の前後で濃度変化はないか殆どなく、測定誤差の範囲内の変化であることを示している。
【0053】
【表1】

【0054】
〈実用温度でのCH吸着試験(その1)〉
図1の実験装置を使用し、試験開始時以降のCH吸着量如何について試験した。都市ガス(13A)を脱硫し、脱硫済み都市ガスにCHを濃度10mg/m3となるように添加した試験ガスを銀担持Y型ゼオライト吸着剤容器4に通し、銀担持Y型ゼオライト充填容器4の入口側と出口側での試験ガス中のCH濃度(mg/m3)の経時的な変化を測定した。銀担持Y型ゼオライト充填量は0.5g、温度は25℃、圧力は常圧、試験ガス流量は1L/minとした。図4はその結果である。
【0055】
図4中、横軸は試験開始時以降の時間(day=日)、縦軸は銀担持Y型ゼオライト吸着剤容器4の入口側と出口側の試験ガスのCH濃度(mg/m3)である。図4のとおり、試験開始時以降71時間(≒3日間)は、出口側の試験ガス中のCH濃度が0mg/m3(本試験での検出下限界に相当する)であり、CHが良好に吸着され、除去されている。
【0056】
そのように、濃縮法およびダイレクト法によりそれぞれ、出口側の試験ガス中のCH濃度を測定したところ、試験開始時以降71時間(≒3日間)は、いずれも0mg/m3であった。
【0057】
また、前述図2〜3に示すデータでは、カラム出口側ガス中にもシクロヘキセン(CH:C610)が検出されているが〔ただし、カラム入口側ガス中のシクロヘキセン(CH:C610)よりも格段に少ない〕、図4の結果を得る過程で、試験開始後1日経過の時点でのカラム入口側ガス、カラム出口側ガスを採取し、シクロヘキセンの成分分析により濃度を測定したところ、ガスクロマトグラフ法による検出下限界0.5mg/m3以下にまで出口濃度を下げることができた。
【0058】
〈実用温度でのCH吸着試験(その2)〉
図1の実験装置を使用し、銀担持ゼオライト吸着剤による実用温度でのCH吸着量如何について試験した。吸着量は、試験開始時から銀担持ゼオライト吸着剤容器4の出口側ガスでCHが検出され始めるまでのガス流通量から算出した。図5は、銀担持Y型ゼオライト吸着剤を使用し、銀担持Y型ゼオライト充填量0.5g、温度5℃、25℃、55℃での結果である。試験ガス流量は1L/minとした。図5中、横軸は試験ガス中のCH濃度(mg/m3)、縦軸は銀担持Y型ゼオライト吸着剤1g当たりのCH吸着量(mg)である。
【0059】
図5のとおり、温度5℃でのCH吸着量は、試験ガス中のCH濃度3.2mg/m3で30mg/g、試験ガス中のCH濃度5.5mg/m3で46mg/g、試験ガス中のCH濃度9mg/m3で54mg/gである。また、温度25℃でのCH吸着量は、試験ガス中のCH濃度5.5mg/m3で79mg/g、試験ガス中のCH濃度9.8mg/m3で81mg/g、試験ガス中のCH濃度12.5mg/m3で82mg/gである。
【0060】
温度55℃の場合にも、温度25℃の場合と同様の結果を示し、例えば試験ガス中のCH濃度5.3mg/m3で77mg/g、試験ガス中のCH濃度9.8mg/m3で89mg/gである。温度5℃でのCH吸着量は、温度25℃、55℃の場合よりも少ないが、有意な量が吸着され、除去されている。このように、銀担持ゼオライト吸着剤は、実用温度においてCHを有効に吸着し、除去し得ることを示している。
【0061】
〈燃料ガス中のシクロヘキセンの定量試験〉
本発明においては、燃料ガス中に付臭剤として添加した極微量のシクロヘキセン濃度を検出する必要があることから、本定量試験により、都市ガス、天然ガス、プロパンガス等の燃料ガス中のシクロヘキセンが定量できること、またその定量下限値を確認したものである。
【0062】
〈燃料ガス中のシクロヘキセンの定量試験(その1)〉
〈濃縮法〉
濃縮管として活性炭系吸着剤充填管〔ゲッセル(GERSTEL)社製〕、濃縮注入装置としてTDS装置〔Thermo Desorption System(ゲッセル社製)〕、ガスクロマトグラフ装置としてヒューレット・パッカード社製HP6890、質量分析計としてヒューレット・パッカード社製HP5973をそれぞれ使用した。
【0063】
まず、都市ガス(13A)にシクロヘキセンを極微量濃度で添加した試料ガスを調製し、これを濃縮管に100mL/minの流速で通過させ、測定対象成分を吸着させた。流通した試料ガス体積は1000mLとした。この濃縮管をTDS装置内に設置し、加熱脱着により測定対象成分を脱着させ、液体窒素温度に冷却したカラム中にトラップ(trap:捕集)した。
【0064】
次に、このカラムを急速加熱して、測定対象成分を再脱着させ、1mLのキャリアガスで追い出してその全量をガスクロマトグラフ装置のカラムに導入した。これにより、試料ガス1000mL中に含まれていた測定対象物質の全量が1mLのキャリアガスに移動したことになり、1000倍に濃縮された試料がガスクロマトグラフ−質量分析計で分析でき、非常に高感度の分析が可能となる。
【0065】
ガスクロマトグラフの分離カラムには、バリアン(VARIAN)社製CP7515(内径0.32mm×長さ50mのキャピラリーカラム、固定相:Al23/KCl、膜厚5μm)を用いた。ガスクロマトグラフの恒温槽温度条件は、初期温度を50℃として3分間ホールド(保持)し、そこから昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間ホールドした。
【0066】
質量分析計の測定モードは、スキャン法とSIM(選択型イオンモニタリング)法で行い、シクロヘキセンの定量は、全検出イオン積算値(TIC:TICの面積値で定量)、および、この物質について最も高濃度で検出されるフラグメントイオンである質量数67で行った。この場合のシクロヘキセンの定量下限値は0.1ppbであった。
【0067】
そのように、濃縮法によるとシクロヘキセンはその下限0.1ppbまで定量できる。このことから、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤によりシクロヘキセンを除去した後の燃料ガスから(すなわちシクロヘキセンの選択的吸着剤に通した後の燃料ガスから)、濃縮法による定量によりシクロヘキセンが検出されなければ、当該選択的吸着剤により少なくとも0.1ppbまで除去できたことを意味している。
【0068】
〈燃料ガス中のシクロヘキセンの定量試験(その2)〉
〈ダイレクト法〉
ガスクロマトグラフ装置としてヒューレット・パッカード社製HP6890、質量分析計としてヒューレット・パッカード社製HP5973をそれぞれ使用した。
【0069】
まず、都市ガス(13A)にシクロヘキセンを極微量濃度で添加した試料ガスを調製し、これを容積1000mLのガス採取袋に採取した。この試料1mLをガスクロマトグラフのカラムに注入した。
【0070】
ガスクロマトグラフの分離カラムには、バリアン(VARIAN)社製CP7515(内径0.32mm×長さ50mのキャピラリーカラム、固定相:Al23/KCl、膜厚5μm)を用いた。ガスクロマトグラフの恒温槽温度条件は、初期温度を50℃とし、3分間ホールド、そこから昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、200℃で5分間ホールドした。
【0071】
質量分析計の測定モードは、スキャン法とし、シクロヘキセンの定量は、全検出イオン積算値(TIC:TICの面積値で定量)で行った。この場合のすなわちダイレクト法のシクロヘキセンの定量下限値は10ppbであった。
【0072】
そのように、ダイレクト法によるとシクロヘキセンはその下限10ppbまで定量できる。このことから、燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤によりシクロヘキセンを除去した後の燃料ガスから(すなわちシクロヘキセンの選択的吸着剤に通した後の燃料ガスから)、ダイレクト法による定量によりシクロヘキセンが検出されなければ、当該選択的吸着剤により少なくとも10ppbまで除去できたことを意味している。
【0073】
〈燃料ガス中のシクロヘキセン除去装置の態様〉
図6は、本発明の燃料ガス中のシクロヘキセン除去装置の構成態様を説明する図である。図6のとおり、容器中に銀担持ゼオライト吸着剤を充填し、銀担持ゼオライト充填容器を構成する。吸着剤層の上下には多孔板、メッシュ等を配置する。多孔板、メッシュ等は、容器中で銀担持ゼオライト吸着剤を支持し、当該吸着剤層に燃料ガスを流通させるためのものである。
【0074】
容器の形状は、図6には円筒状の例を示しているが、原燃料(燃料ガス)の流れ方向に対して、その横断面矩形状、その他適宜の形状とすることができる。本装置は、縦置きでも横置きでも斜め置きでもよいが、図6には縦置きの場合を示している。本装置において、燃料ガスを図6中、矢印で示すとおり銀担持ゼオライト吸着剤層に通すことにより、燃料ガス中のシクロヘキセンを選択的に吸着して除去することができる。
【0075】
〈銀担持ゼオライト吸着剤の形状〉
本発明に係る銀担持ゼオライト吸着剤は、粒状、ペレット状、ハニカム状、その他適宜の形状で使用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 都市ガス(13A)導管
2 シクロヘキセン標準ガス導管
3 シクロヘキセン含有試験ガスを銀担持ゼオライト充填容器4へ供給する導管
4 銀担持ゼオライト充填容器
5 銀担持ゼオライト充填容器4からの出口側の導管
6 銀担持ゼオライト充填容器4の入口側の試験ガスのサンプリング用導管
7 銀担持ゼオライト充填容器4の出口側の試験ガスのサンプリング用導管
V1〜V4 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、該選択的吸着剤が銀担持のゼオライトからなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤。
【請求項2】
燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、該選択的吸着剤が銀担持のゼオライトからなり、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にする選択的吸着剤であることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤。
【請求項3】
燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤であって、該選択的吸着剤が銀担持のゼオライトからなり、燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にする選択的吸着剤であることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料ガス中のシクロヘキセンの選択的吸着剤において、前記ゼオライトがX型ゼオライト、Y型ゼオライトまたはβ型ゼオライトであることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセン付臭剤の選択的吸着剤。
【請求項5】
燃料ガス中のシクロヘキセンの吸着除去装置であって、容器中に銀担持のゼオライトからなるシクロヘキセンの選択的吸着剤を充填してなることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。
【請求項6】
請求項5に記載の燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置において、前記ゼオライトがX型ゼオライト、Y型ゼオライトまたはβ型ゼオライトであることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置において、前記燃料ガスが固体高分子形燃料電池または固体酸化物形燃料電池の燃料水素製造用の燃料ガスであることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置において、前記燃料ガス中のシクロヘキセン濃度をダイレクト法による定量により10ppb以下にすることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置において、前記燃料ガス中のシクロヘキセン濃度を濃縮法による定量により0.1ppb以下にすることを特徴とする燃料ガス中のシクロヘキセンの除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−84130(P2010−84130A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192904(P2009−192904)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】