説明

燃料タンク用キャップ

【課題】 施錠が可能でありながら、錠を別途必要とせず、簡単な操作でキャップ装着口に対して着脱することが可能な燃料タンク用キャップを提供する。
【解決手段】 キャップ5をキャップ装着口1へ装着する場合には、掛金片26の各係合凸部27を、キャップ装着口1の各切欠部3に上方から挿入させると共に、操作キャップ10(インナボディ7)をキャップ装着口1に上方から被せる。操作キャップ10を、LOCK方向へ回動させると、中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22、上側カム24、そして掛金片26の全部が同方向へ回動され、その角度が35度となると、ストッパ9により係合凸部27及び上側カム24のみ回動が停止される。更に操作キャップ10を同方向へ回動させると、下側カム面23と上側カム面25とのカム作用により、上側カム24が掛金片26と共に上方へ移動し、掛金片26の各係合凸部27が、キャップ装着口1の係合部4に下方から係合するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木用車両等に使用される比較的大きな燃料タンクを密に閉塞するための燃料タンク用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような燃料タンク用キャップには、以下の構成のものが知られている。このものは、例えばフランジ部を有する円筒状をなし、車両の燃料タンクから延びるキャップ装着口に対し、キャップ(燃料タンク用キャップ)の裏面に設けられたパッキンを当接させ、ばね部材の弾性力で面圧を得ることにより、パッキンをフランジに密着させながらキャップを回転させて当該キャップの裏面に設けられた掛金片の係合凸部を前記フランジの係合部に係合させ、以ってキャップを装着するというように構成されている。
しかし、この構成の場合、掛金片の回動操作と、パッキンをフランジに密着させる操作とを同時に行っているため、例えばフランジに対するパッキンの密着性を高めるために前記ばね部材の弾性力を強くすると、前記キャップの回転操作が重くなってしまい、キャップを装着する際の操作性が低下してしまうという問題があった。
【0003】
これに対処するために、掛金片の回動操作と、パッキンをフランジに密着させる操作とを別々に行うような構成のキャップが知られている(例えば、特許文献1参照)。このキャップ(Filler cap assembly)において、キャップ本体の中心に設けた回転軸の一方には掛金片(Lower End)が取付けられ、他方には操作レバー(Operateing Handle)が取付けられている。そして、このキャップは、操作レバーを周方向に回動操作することにより前記掛金片を回動させ、同じく前記操作レバーを起立及び倒れ方向に回動操作することにより、カムを用いて前記掛金片を上下動させるように構成されている。
【0004】
なお、キャップ装着口(Opening)には、周方向に並んで3箇所の切欠部(Cutout)と、この切欠部以外に位置する係合部とが形成されている。そして、前記キャップにおける掛金片の係合凸部を前記切欠部に挿入しながら、前記キャップを前記キャップ装着口に被せ、前記操作レバーを周方向へ回動操作することにより前記掛金片を回動させて係合凸部を前記係合部と係合可能な位置に回動させる。この後、操作レバーを起立状態から倒れ方向に回動操作することにより、カム作用によって前記掛金片を上方向に移動させて係合凸部を係合部に下方から係合させ、以ってキャップの裏面のOリング(O−ring)をキャップ装着口に密着させて装着する構成となっている。
このような構成によれば、操作レバーの操作で掛金片を回動及び上下動させるようにしているので、キャップの着脱の操作性を向上させることができる。
【特許文献1】米国特許第4467937号明細書(特に、Fig.2、Fig.3を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のキャップにおいては防犯上等の観点から、錠により施錠できるものが要望されている。これに対処するものとしては、例えば図10に示すような構成のものが考案されている。即ち、このものは、上記特許文献1の構成において、キャップ装着口100に装着されるキャップ101の操作レバー102の自由端部に係合孔103を形成し、キャップ101の上面に前記係合孔103に挿入される係合突起104を形成し、前記操作レバー102の倒れ状態で係合突起104の鍵挿入孔105に前記キャップ101とは別部材の、例えば南京錠106の引掛け部106aを引掛けることにより施錠を行うようになっている。
【0006】
しかしながら、上記構成のものでは次のような欠点がある。つまり、施錠するための南京錠106はキャップ101とは別部材であるため、その南京錠を紛失し易い。
また、前記キャップ102を前記キャップ装着口100に対して装着する場合の操作においては、掛金片を回動させるための操作レバー102の周方向の回動操作と、掛金片を上下動させるための操作レバー102の起立及び倒れ方向の回動操作と、南京錠106の施錠操作とが必要となり、操作の面においても若干の煩わしさがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、施錠が可能でありながら、錠を別途必要とせず、簡単な操作でキャップ装着口に対して着脱することが可能な燃料タンク用キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、本発明の燃料タンク用キャップは、
切欠部と係合部とを有して燃料タンクに設けられた円筒状のキャップ装着口に対して着脱可能に装着される燃料タンク用キャップにおいて、
略円形状をなすと共に中心部にガイド孔を有し、前記キャップ装着口に対して被せられるインナボディと、
このインナボディにおいて前記キャップ装着口に対応する位置に設けられたパッキンと、
前記ガイド孔に回動可能に挿入される中空軸を有し、前記インナボディの外側に設けられ、前記インナボディに対して回動操作可能な操作キャップと、
前記中空軸の下端側に当該中空軸と一体に回動するように設けられ、前記中空軸の周りに位置された上面に環状のカム面を有した下側カムと、
前記中空軸の外側に当該中空軸に対して相対的に回動可能で、且つ上下方向に移動可能に嵌合され、下面に前記下側カムのカム面に対向する環状のカム面を有する上側カムと、
この上側カムと一体に回動するように設けられ、外周部に前記切欠部に挿入可能で且つ前記係合部と係脱可能な係合凸部を有する掛金片と、
この掛金片を前記インナボディから離間させる方向へ付勢する付勢手段と、
前記インナボディに設けられ、前記掛金片の回動範囲を規制するストッパと、
前記中空軸内に挿入配置され、キー挿入口に挿入されるキーにより施錠位置と解錠位置との間で回動操作されるキーロータを有するシリンダ錠と、
前記キーロータにより回動するように設けられた駆動ピンと、
この駆動ピンの回動により移動されるロックプレートと、
前記掛金片に設けられ、前記ロックプレートと係合可能なプレート係合部とを備え、
前記掛金片の前記係合凸部を前記キャップ装着口の前記切欠部に挿入して前記インナボディを前記キャップ装着口に被せた状態で、前記操作キャップを一方向へ回動させることにより、前記下側カム及び前記上側カムと共に前記掛金片を前記係合凸部が前記係合部と係合可能な位置まで回動させた後、前記掛金片の回動が前記ストッパにより規制され、
前記操作キャップを更に同一方向へ回動させることにより、前記掛金片及び前記上側カムを残して前記下側カムが回動することに伴い、前記下側カムと前記上側カムのカム作用により前記上側カム及び前記掛金片を上方へ移動させ、前記係合凸部を前記係合部に下方から係合させて前記パッキンを前記キャップ装着口に密着させ、
この後、前記キーによって前記キーロータを解錠位置から施錠位置へ回動させることに伴い、前記駆動ピンにより前記ロックプレートを移動させて当該ロックプレートを前記プレート係合部に係合させ、前記掛金片の回動を阻止する構成としたことを特徴とする(請求項1の発明)。
【0009】
この構成によれば、施錠用のシリンダ錠を操作キャップに設けているので、キャップ装着口に対する燃料タンク用キャップの施錠を別部材を用いずに行うことができる。また、操作キャップを回動操作するだけで、掛金片の回動及び上下動がなされて当該掛金片を係合部と係合させることができるので、キャップ装着口に対する着脱操作を簡単な操作で行うことが可能となる。
また、上記構成において、前記インナボディと前記操作キャップとの間に、燃料タンクの内部と外部との圧力差が所定範囲内にあるときに通気を可能とする調圧手段を備えるようにすることもできる(請求項2の発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の燃料タンク用キャップによれば、施錠が可能でありながら、錠を別途必要とせず、簡単な操作でキャップ装着口に対して着脱することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施例を図1〜図7を参照して説明する。なお、図1〜図7において、図1は燃料タンク用キャップをキャップ装着口に単に被せた状態のオープン状態を示すもので、そのうち(a)は縦断正面図、(b)は(a)のX1−X1線に沿って示す横断面図、(c)はカム周辺部の破断正面図、(d)は(a)のX2−X2線に沿って示す、下方から見た横断底面図をそれぞれ示している。また、図2は燃料タンク用キャップの分解斜視図、図3は平面図を示している。そして、図4は操作キャップが35度回動された状態を示す図で、(a)〜(d)はそれぞれ図1(a)〜(d)相当図である。また、図5は操作キャップが90度回動された状態を示す図で、(a)〜(d)はそれぞれ図1(a)〜(d)相当図である。また、図6はロック状態を示す図で、(a)〜(d)はそれぞれ図1(a)〜(d)相当図である。図7は図3中X3−X3線に沿う断面図である。
【0012】
まず、図1(a)に示すように、キャップ装着口1は、図示しない燃料タンクに設けられたもので、円筒状をなしている。このキャップ装着口1は、鉄板により形成されたもので、上端部にはフランジ部2が内側に向けて折曲形成されている。このフランジ部2の3箇所には、図1(d)に示すように径方向外側へ窪む切欠部3(二点鎖線にて図示)が形成されている。また、フランジ部2の先端部は下方に向けられていて、その下端部を係合部4としている。
【0013】
次に、上記キャップ装着口1に装着される燃料タンク用キャップ5(以下、単にキャップ5と称する。)について、図1〜図3を参照しながら説明する。図2に示すように、キャップ5は、ほぼ円盤状をなし、中心部にガイド孔6を有するインナボディ7を有している。このインナボディ7において、その下面の周辺部には、図1(a)に示すように、前記キャップ装着口1に密着されるパッキン8が設けられている。更に、図2に示すように、インナボディ7の下面において、パッキン8の内周側には、下方(図2中、下方)に突出するように設けられ、後述する掛金片の締付け方向への回動を35度に規制するストッパ9が形成されている。
【0014】
インナボディ7には、図1(a)に示すように、当該インナボディ7に対して相対的な回動が可能に構成された操作キャップ10が互いに離間不能となるように被せられている。なお、インナボディ7の外周面と操作キャップ10の内周面との間には空気が流れることができる程度の隙間7a(図7参照)が存するように構成されるものである。操作キャップ10は、図2に示すように、全体としてはインナボディ7の上面及び外周面を覆うような円筒状に形成されており、その中心には、インナボディ7のガイド孔6に挿通されるように、下方(図2中、下方)向きに突設された中空軸11が一体的に形成されている。この中空軸11には、図1(b)及び図2に示すように、後述のロックプレート12(図2参照)を配置可能で当該ロックプレート12の移動をガイドする第1のロックプレート用ガイド孔13が形成されている。前記ロックプレート12は、板状をなすもので、その長さ方向の中央部には係合長孔12aが形成され、第1のロックプレート用ガイド孔13にガイドされながらロックプレート12自身の長さ方向へスライド可能に配置されている。このロックプレート12の先端部12b(図5(a)参照)は、下方に向けて折り曲げられている。なお、前記係合長孔12aには、後述する駆動ピン14が係合されるものである。
【0015】
中空軸11は、インナボディ7に操作キャップ10を被せた状態で、図1(a)に示すように、その下端部(図2中、下端部)が前記インナボディ7の下面よりも更に下方に突出するような長さに形成されている。なお、中空軸11の基端部には、図2に示すように、回動規制ピン15が周方向へ突出するように設けられており、一方、インナボディ7のガイド孔6において、前記中空軸11の回動規制ピン15と対応する位置には90度の角度を有する規制切欠部16が形成されている。
【0016】
中空軸11の内周面には、図1(a)及び図1(b)に示すように、シリンダ錠17のロータケース18が挿通されている。このロータケース18は、中空軸11と共に回動可能となるように構成されている。ロータケース18には、図1(b)及び図2に示すように、前記第1のロックプレート用ガイド孔13と周方向に対応する位置において、第2のロックプレート用ガイド孔19が形成されている。これにより、ロックプレート12は第1及び第2のロックプレート用ガイド13及び19に配置され、ガイドされるようになっている。なお、ロータケース18の下端面は、図1(a)に示すように、前記中空軸11の下端面と面一となるように形成されている。
【0017】
また、中空軸11において、図1(a)に示すように、前記インナボディ7よりも下方に突出した部分の外周面には、スペーサ筒20が嵌合されている。スペーサ筒20には、図1(b)及び図2に示すように、前記第1及び第2のロックプレート用ガイド孔13及び19と周方向に対応する位置に、第3のロックプレート用ガイド孔21が形成されている。これにより、ロックプレート12は、前記第1〜第3のロックプレート用ガイド孔13、19、21に配置され、これら第1〜第3のロックプレート用ガイド孔13、19、21に沿ってガイドされながらスライド可能に構成されるようになっている。なお、このスペーサ筒20も中空軸11と共に回動可能となるよう構成され、図1(a)に示すように、その下端面は、中空軸11及びロータケース18の下端面と面一となるように形成されている。
【0018】
中空軸11の下端面には、図1(a)に示すように、前記中空軸11、ロータケース18、そしてスペーサ筒20の各下端面を下方から覆うように位置させて、円盤状の下側カム22(カム)が取付けられている。この下側カム22も中空軸11と共に回動可能に、例えばねじ等で固定される構成となっている。下側カム22において、その上面の周縁部は、図1(c)に示すように、凹部23aと凸部23bとが交互に円環状に位置することにより波型形状をなす、下側カム面23として形成されており、中空軸11と共に回動することにより下側カム面23の前記凹部23aと凸部23bとの位置は周方向へ変位されるようになっている。
【0019】
この下側カム22には、図1(a)や図2に示すように、ドーナツ状をなし前記スペーサ筒20の外周部に嵌め込まれた上側カム24が前記下側カム22に上方から当接するように構成されている。この上側カム24の周縁部の下面は、図1(c)に示すように、前記下側カム面23の凹部23aと凸部23bに対応する位置に下方へ突出する凸部25aと、上方へ窪む凹部25bとが交互に形成された上側カム面25が形成されており、これにより両カム面23、25は隙間なく当接するようになっている。
【0020】
上側カム24において、その上方の外周部には、図1(a)に示すように、掛金片26が嵌め込まれている。この掛金片26は、その内周面において、図1(b)に示すように、周方向へ窪んだ窪み部26aを2箇所有し、更に上側カム24はこの窪み部26aに嵌り込む突出部24aを2箇所有しており、これにより掛金片26は上側カム24と一体的に回動及び停止するように構成されている。また、掛金片26は、図1(b)や図1(d)に示すように、周方向に突出し、120度間隔で並んで形成された係合凸部27を有している。また、掛金片26の内周部には、図1(b)及び図2に示すように、ロックプレート12の先端が係合されるプレート係合部28が形成されている。なお、上側カム24及び掛金片26は、図1(a)に示すように、スペーサ筒20の外周部で、前記掛金片26の上面とインナボディ7の下面との間に配設されたコイルバネ29(図2には図示せず)により常時下方に付勢されるように構成されている。
【0021】
前記シリンダ錠17は、ロータケース18内にキーロータ30を回動可能に備えた周知構成のものである。キーロータ30は、図3に示すように、その上面にキー挿入口31(破線にて図示)を有していて、そのキー挿入口31に挿入されたキー(図示せず)により、施錠位置(図3において、シリンダ錠17の近くの「LOCK」位置)と、解錠位置(図3において、シリンダ錠17の近くの「OPEN」位置)との間(90度の間)で回動される構成となっている。なお、キー挿入口31の上面には、図1に示すように、キーキャップ32が設けられている。このキーキャップ32は、前記キー挿入口31を開閉可能に覆うものであり、図3にて実線で示す(操作キャップ10は回動されていない状態)ように、キー挿入口31を閉塞する位置と、図3にて二点鎖線で示す(操作キャップ10は回動された状態)ように、キー挿入口31を開放する位置とに回動軸10aを中心にして回動されるようになっている。
【0022】
キーロータ30の先端には、図1(a)及び図2に示すように、前述した駆動ピン14が下方へ向けて突設されている。この駆動ピン14は、キーロータ30の中心から偏心した部位に設けられていて、前記ロックプレート12の係合長孔12aに挿入係合されている。ここで、キー挿入口31に挿入したキーによりキーロータ30を回動させることにより、偏心した駆動ピン14を介してロックプレート12は、自身の長さ方向へスライドし、これにより前述した掛金片26のプレート係合部28に係合されるようになっている。
【0023】
インナボディ7には、図3にて破線で示すような位置に、調圧手段を構成する調圧弁33が設けられている。この調圧弁33は、図3中X3−X3線に沿う断面図を示す図7のように、インナボディ7の下面に形成された連通孔34(図1(d)も参照)を有している。この連通孔34の上部(図7中、上部)の周縁部は、複数の凸部34aと切欠部34bとが交互に形成された開口端34cとされており、開口端34cの上面にはフィルム35が被せられている。
【0024】
前記連通孔34は、各切欠部34bを通してインナボディ7の上面に形成された円筒状の第1の収容部36と連通している。この第1の収容部36には、略円盤状の調圧部材37が配設され、第1の収容部36の内周面と調圧部材37の外周面(後述する囲繞壁40の外周面)とは隙間38を存するように構成されている。この調圧部材37は、その中心に逃げ孔39が形成されると共に、周縁部には上下に延びる囲繞壁40が形成されており、前記フィルム35及び開口端34cは、この調圧部材37(の囲繞壁40や端面)により上方及び側方から覆われるように構成されているため、前記フィルム35は、開口端34cからずれたり、落ちたりしないようになっている。
【0025】
前記第1の収容部36の外周には、円筒状をなす第2の収容部41が形成されており、この第2の収容部41には、調圧部材37を上方から覆うような形状のカバー部材42が、インナボディ7に対して、例えばねじ(図示せず)にて不動状態に固定されている。カバー部材42の内周面と第1の収容部36の外周面との間にはOリング43が配設されている。カバー部材42には、前記逃げ孔39と軸方向(図7中、高さ方向)に対応する位置に空気孔44が形成されており、更にカバー部材42と調圧部材37との間にはバネ45が配設され、これにより調圧部材37は常時下方に付勢されるようになっている。
【0026】
ここで、燃料タンク(図示せず)の内圧と外気圧とが同じ場合には、調圧弁33は、図7に示すような状態を保っている。しかし、例えば夏季等の暑い時期には、燃料タンク内の燃料(例えば、揮発性の高いガソリン等)にも多くの熱が伝熱することにより、必然的に燃料が揮発して燃料タンク内の内圧が高くなってしまう傾向がある。この場合には、燃料タンク内の空気が、まずインナボディ7の連通孔34に到達し、更に切欠部34bから調圧部材37の逃げ孔39、そしてカバー部材41の空気孔44へと流れ、最終的にインナボディ7の外周面と操作キャップ10との内周面との間に形成された隙間7aを通って外気へと流出し、燃料タンクの内圧と外圧とを調整するようになる。
【0027】
燃料タンク内の内圧が何らかの理由で相当に高くなってしまった場合には、燃料タンク内の空気が一挙に連通孔34に到達し、これによりフィルム35が上方へ移動されて、そのフィルム35により逃げ孔39を塞ぐと共に、更にこれらフィルム35及び調圧部材37をバネ45の付勢力に抗して押し上げるようになる。すると、調圧部材37の下面に大きな隙間が生成され、更にこの隙間は、第1の収容部36の内周面と調圧部材37の外周面、(囲繞壁40の外周面)との隙間38に連通するので、これにより燃料タンク内の空気は、一挙に空気孔44に到達して外気へと流出し、以って燃料タンクの内圧と外圧とを調整するようになる。
一方、燃料の減少等により燃料タンク内の内圧が低くなると、外気がインナボディ7の外周面と操作キャップ10との内周面との間に形成された隙間7aから、空気孔44、逃げ孔39、そして隙間孔34aから連通孔34へと到達し、以って燃料タンクの内圧と外圧とを調整するようになる。
【0028】
次に、上記のような構成をなすキャップ5を、キャップ装着口1に対して着脱する場合について説明する。
まず、キャップ5をキャップ装着口1へ装着する場合には、シリンダ錠17のキーロータ30が、解除位置(「OPEN」位置)にある状態で、図1(d)に示すように、掛金片26の各係合凸部27を、キャップ装着口1の各切欠部3に上方から挿入させると共に、操作キャップ10(インナボディ7)をキャップ装着口1に上方から被せる。このとき、図1(a)に示すように、掛金片26の係合凸部27は、キャップ装着口1の係合部4よりも下方に離間した下位置に位置される。インナボディ7のパッキン8はキャップ装着口1に当接する。
【0029】
この状態で操作キャップ10を、図3のLOCK方向(矢印A1方向)へ回動させる。すると、操作キャップ10の回動に伴い、中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22、上側カム24、そして掛金片26の全部が同方向へ回動する。図1(d)においては、矢印A2方向(反時計回り方向)へ回動する。回動操作が進み、その角度が35度となると、図4(d)に示すように、掛金片26の係合凸部27がインナボディ7のストッパ9に当接し、これにより当該係合凸部27及び上側カム24のみ回動が停止される。このとき、掛金片26の係合凸部27は、切欠部3から外れ、係合部4に下方から対向する位置となる。
【0030】
更に、この状態で操作キャップ10を同矢印A1方向へ回動させると、上側カム24及び掛金片26は停止しているが、下側カム22(このとき、中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20も同方向へ回動する。)は同矢印A1方向へ回動しようとするので、図5(c)に示すように、下側カム面23の凹部23a及び凸部23bと、上側カム面25の凸部25a及び凹部25bとの隙間のない当接がずれ、上側カム面25の凸部25aを、下側カム面23の凸部23bが上方へ押し上げるようになり、これにより、上側カム24及び掛金片26が、コイルバネ29の付勢力に抗して上方へと移動させられる。
【0031】
操作キャップ10を、更に同矢印A1方向へ回動させると、図5(a)に示すように、掛金片26の各係合凸部27が係合部4に下方から係合し、これにより、操作キャップ10及びインナボディ7の両方に下方向の力が作用するので、インナボディ7とキャップ装着口1に挟まれたパッキン8が弾性変形されてキャップ装着口1に密着するようになる。操作キャップ10の同矢印A1方向への回動を進め、90度となると、図2に示した中空軸11の基端部に設けられた回動規制ピン15が、同図2に示したインナボディ7のガイド孔6における規制切欠部16の一端部に当接して、これにより操作キャップ10のそれ以上の回動が規制され停止するようになる。この時点で、操作キャップ10、中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22のそれぞれは90度回動されているものである。このとき、図5(b)に示すように、ロックプレート12の先端部12bが、掛金片26のプレート係合部28と対応するようになる。
【0032】
この状態で、キーキャップを31aを回動させてキーロータ30のキー挿入口31を露出(図3中、二点鎖線で示す状態)させ、このキー挿入口31に図示しないキーを差込んで、図3中、解錠位置にあるキーロータ30を、施錠方向(時計回り方向)へ90度回動させ、施錠位置(「LOCK」位置)へと位置させる。すると、偏心した駆動ピン14により、図6(b)に示すように、ロックプレート12が第1〜第3のロックプレート用ガイド孔13、19、21に沿ってガイドされながら、自身の長さ方向である係合方向(図6(b)中、右方向)へスライドされ、これによりロックプレート12の先端がプレート係合部28に係合して停止状態となり、これにより掛金片26及び操作キャップ10の回動は不能となる。キーロータ30を施錠位置へ回動させたら、キーをキー挿入口31から抜き、キーキャップ32にてキー挿入口31を塞ぐ(図3中、実線で示す状態)。これにより、キャップ装着口1に対するキャップ5の装着が完了する。この状態では、シリンダ錠17が施錠状態であるから、キーがない状態ではキャップ5をキャップ装着口1から取外すことはできない。
【0033】
一方、キャップ装着口1に装着されたキャップ5を取外す場合には、まずキーキャップ32を回動させてキーロータ30のキー挿入口31を露出させ、このキー挿入口31に図示しないキーを差込んで、図3中、施錠位置にあるキーロータ30を、解錠方向(反時計回り方向)へ90度回動させ、解錠位置(「OPEN」位置)へ位置させる。すると、偏心した駆動ピン14によりロックプレート12が、図6(b)中、前記係合方向とは逆方向(図6(b)中、矢印B1と反対方向)へスライドされることによりプレート係合部28との係合が外れ(図5(b)参照)、これにより掛金片26及び操作キャップ10の緩め方向(反時計回り方向)への回動が許容されるようになる。
【0034】
この状態で操作キャップ10を前記緩め方向(図3の矢印A1方向と反対方向)へ回動させると、この操作キャップ10の回動に伴い、まず中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22が同方向へ回動される。すると、図5(c)に示すような、下側カム面23の凸部23bと上側カム面の凸部25aとの当接が外れ、コイルバネ29の付勢力によって掛金片26及び上側カム24が下方(図5(c)中下方)に付勢されることにより、図4(c)に示すように、再び上側カム面25と下側カム面23とが隙間なく当接するようになる。これにより、掛金片26及び上側カム24が下方へ移動し、以って掛金片26と係合部4との係合が外れるようになる。このとき、操作キャップ10、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22が、上側カム24及び掛金片26に対して、矢印A1方向とは反対方向へ55度回動下状態となる(図4(b)参照)。この時点から、操作キャップ10、中空軸11、ロックプレート12、シリンダ錠17、スペーサ筒20、下側カム22、上側カム24、及び掛金片26の全部が緩め方向(図4の矢印A2方向とは反対方向)へ回動するようになる。
【0035】
そして、矢印A1方向とは反対方向の回動が90度となると、図2に示した中空軸11の基端部に設けられた回動規制ピン15が、同図2に示したインナボディ7のガイド孔6における規制切欠部16の他端部に当接して、これにより操作キャップ10のそれ以上の回動が規制され停止するようになる。この状態では、図1(d)に示すように、掛金片26の各係合凸部27が各切欠部3に対応する位置となり、キャップ5を持ち上げることにより、キャップ装着口1から取外すことができる。
【0036】
上記した実施例によれば、次のような効果を得ることができる。
まず、操作キャップ10を回動操作するだけで、掛金片26の回動と上下動とを行うように構成した。このため、キャップ装着口1に対するキャップ5の着脱操作を簡単な操作で行うことができる。
また、施錠用のシリンダ錠17を操作キャップ10に一体的に組込んだ構成とした。このため、施錠が可能でありながら、南京錠を用いて施錠する場合とは違い、錠を別途必要とせず、また錠を紛失する恐れもない。
また、掛金片26の上下動を、操作キャップ10の回動に連動する上下側カム24、22にて行うように構成した。このため、掛金片26を上下動させるために操作レバー等の別部材を操作キャップ10に設ける必要がない上、上下側カム面25、23の形状を適当に変更すれば、掛金片26の上下動の距離を容易に変更することができ、操作キャップ10の操作感や回動具合を適宜調節することができる。
【0037】
また、キーキャップ32によりキー挿入口31を覆う構成とした。これにより、雨水や異物等がシリンダ錠30の上面に付着したり、キー挿入口31から侵入したりすることを防止できる。
更に、キャップ5(インナボディ7)には、調圧弁33を設けているので、燃料タンクの内部と外部との圧力を良好に調節することができる。
【0038】
図8は、本発明の第2の実施例を示したものであり、この第2の実施例は上記した第1の実施例とは次の点で異なっている。即ち、操作キャップ10の上面に複数の板状突起として、リブ60を放射状(本変形例の場合は、対向した位置である。)に形成している。このような構成とした場合には、操作キャップ10を回動操作する際に、このリブ60を掴むことにより回動操作し易くなる。なお、このリブ50の形状や位置、或いは大きさや個数等は操作性を鑑みて適宜変更することが可能である。
【0039】
図9は、本発明の第3の実施例を示したものであり、この第3の実施例は上記した第1の実施例とは、調圧手段を構成する調圧弁の構成が異なっている。即ち、この調圧弁70は、操作キャップ10の上面の所定部位に、囲繞壁71aにより矩形状の収容部71を形成し、この収容部71に、例えばスポンジからなる通気性連続気泡部材72を収容する。この通気性連続気泡部材72は、上端部は囲繞壁70よりも上方へ突出していて、操作キャップ10の上面にねじ73により取付けられた上ケース74により上方から覆われるようにする。そして、上ケース74の内面と囲繞壁70の外面及び上端部との間に隙間75を形成するようにし、この隙間75を介して通気性連続気泡部材72を、上ケース74の外部と連通させる。
【0040】
更に、操作キャッ10に、上下方向に貫通する貫通孔76を形成し、この貫通孔76の上端部を前記収容部71と連通させる。そして、操作キャップ10の下面に、貫通孔76を下方から覆うように下ケース77をねじ78により取付け、この下ケース77の周壁部に、下ケース77の内部と外部とを連通させる通気孔79を形成する。このような構成により、燃料タンク内(キャップ装着口1内)と、操作キャップ10(インナボディ7)の外部とは、下ケース77の通気孔79、操作キャップ10の貫通孔76、通気性連続気泡部材72、上ケース74と囲繞壁70及び操作キャップ10との間の隙間75を通して通気が可能になり、燃料タンクの内圧と外圧とを調整することができる。
このような構成とした場合、調圧手段の構成を比較的簡便なものとすることができるため、メンテナンスを容易に行うことができる。なお、調圧手段を設ける位置としては、その機能が確実になされるならば、特に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施例において、キャップをキャップ装着口に単に被せた状態(オープン状態)を示すもので、(a)は縦断正面図、(b)は(a)のX1−X1線に沿う横断面図、(c)はカム周辺の破断正面図、(d)は(a)のX2−X2線に沿って示す、下方から見た横断底面図
【図2】燃料タンク用キャップの分解斜視図
【図3】操作キャップの平面図
【図4】操作キャップが35度回動された状態を示すもので、(a)は図1(a)相当図、(b)は(a)のX4−X4線に沿う図1(b)相当図、(c)は図1(c)相当図、(d)は(a)のX5−X5線に沿う図1(d)相当図
【図5】操作キャップが90度回動された状態を示すもので、(a)は図1(a)相当図、(b)は(a)のX6−X6線に沿う図1(b)相当図、(c)は図1(c)相当図、(d)は(a)のX7−X7線に沿う図1(d)相当図
【図6】施錠が完了した状態を示すもので、(a)は図1(a)相当図、(b)は(a)のX8−X8線に沿う図1(b)相当図、(c)は図1(c)相当図、(d)は(a)のX9−X9線に沿う図1(d)相当図
【図7】図3中、X3−X3線に沿う調圧弁の縦断面図
【図8】本発明の第2の実施例を示すもので、(a)はキャップの平面図、(b)は同キャップの側面図
【図9】本発明の第3の実施例を示すもので、調圧弁部分の縦断面図
【図10】従来例を示すもので、キャップがキャップ装着口に装着され、且つ施錠された状態で示す斜視図
【符号の説明】
【0042】
図面中、1はキャップ装着口、3は切欠部、4は係合部、5はキャップ(燃料タンク用キャップ)、6はガイド孔、7はインナボディ、8はパッキン、9はストッパ、10は操作キャップ、11は中空軸、12はロックプレート、14は駆動ピン、17はシリンダ錠、22は下側カム、23は下側カム面(カム面)、24上側カム、25は上側カム面(カム面)、26は掛金片、27は係合凸部、28はプレート係合部、29はコイルバネ(付勢手段)、30はキーロータ、31はキー挿入口、32はキーキャップ、33は調圧弁(調圧手段)、60はリブ(板状突起)、70は調圧弁(調圧手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切欠部と係合部とを有して燃料タンクに設けられた円筒状のキャップ装着口に対して着脱可能に装着される燃料タンク用キャップにおいて、
略円形状をなすと共に中心部にガイド孔を有し、前記キャップ装着口に対して被せられるインナボディと、
このインナボディにおいて前記キャップ装着口に対応する位置に設けられたパッキンと、
前記ガイド孔に回動可能に挿入される中空軸を有し、前記インナボディの外側に設けられ、前記インナボディに対して回動操作可能な操作キャップと、
前記中空軸の下端側に当該中空軸と一体に回動するように設けられ、前記中空軸の周りに位置された上面に環状のカム面を有した下側カムと、
前記中空軸の外側に当該中空軸に対して相対的に回動可能で、且つ上下方向に移動可能に嵌合され、下面に前記下側カムのカム面に対向する環状のカム面を有する上側カムと、
この上側カムと一体に回動するように設けられ、外周部に前記切欠部に挿入可能で且つ前記係合部と係脱可能な係合凸部を有する掛金片と、
この掛金片を前記インナボディから離間させる方向へ付勢する付勢手段と、
前記インナボディに設けられ、前記掛金片の回動範囲を規制するストッパと、
前記中空軸内に挿入配置され、キー挿入口に挿入されるキーにより施錠位置と解錠位置との間で回動操作されるキーロータを有するシリンダ錠と、
前記キーロータにより回動するように設けられた駆動ピンと、
この駆動ピンの回動により移動されるロックプレートと、
前記掛金片に設けられ、前記ロックプレートと係合可能なプレート係合部とを備え、
前記掛金片の前記係合凸部を前記キャップ装着口の前記切欠部に挿入して前記インナボディを前記キャップ装着口に被せた状態で、前記操作キャップを一方向へ回動させることにより、前記下側カム及び前記上側カムと共に前記掛金片を前記係合凸部が前記係合部と係合可能な位置まで回動させた後、前記掛金片の回動が前記ストッパにより規制され、
前記操作キャップを更に同一方向へ回動させることにより、前記掛金片及び前記上側カムを残して前記下側カムが回動することに伴い、前記下側カムと前記上側カムのカム作用により前記上側カム及び前記掛金片を上方へ移動させ、前記係合凸部を前記係合部に下方から係合させて前記パッキンを前記キャップ装着口に密着させ、
この後、前記キーによって前記キーロータを解錠位置から施錠位置へ回動させることに伴い、前記駆動ピンにより前記ロックプレートを移動させて当該ロックプレートを前記プレート係合部に係合させ、前記掛金片の回動を阻止する構成としたことを特徴とする燃料タンク用キャップ。
【請求項2】
前記インナボディと前記操作キャップとの間に、燃料タンクの内部と外部との圧力差が所定範囲内にあるときに通気を可能とする調圧手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の燃料タンク用キャップ。
【請求項3】
前記インナボディと前記操作キャップとの間に、通気性連続気泡部材を有する調圧手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の燃料タンク用キャップ。
【請求項4】
前記操作キャップの上面に、前記キーロータのキー挿入口を開閉可能に覆うキーキャップを備えたことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の燃料タンク用キャップ。
【請求項5】
前記操作キャップの上面に複数の板状突起を放射状に設けたことを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の燃料タンク用キャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−103466(P2006−103466A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291779(P2004−291779)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(390015392)三恭金属株式会社 (13)
【Fターム(参考)】