説明

燃料供給方法および燃料電池車両

【課題】部品点数を低減するとともに省スペース化を図り、さらには、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業で供給することができる燃料充填方法、および、その燃料充填方法が採用される燃料電池装置を備える燃料電池車両を提供すること。
【解決手段】供給源50における液体燃料および不活性ガスの共通の供給部53と、燃料電池装置2における液体燃料および不活性ガスの共通の受給部7とを接続し、第1弁57を開、第2弁60を閉、第3弁26を開、第4弁30を閉とし、第1ライン56、供給部53、受給部7および第3ライン25を介して不活性ガスを1次ガスタンク55から2次ガスタンク24に供給し、第1弁57を閉、第2弁60を開、第3弁26を閉、第4弁30を開とし、第2ライン59、供給部53、受給部7および第4ライン29を介して液体燃料を1次燃料タンク58から2次燃料タンク28に供給し、供給部53および受給部7を分離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給方法および燃料電池車両、詳しくは、燃料電池装置に、液体燃料および不活性ガスを供給するための燃料供給方法、および、その燃料電池装置を備える燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池として、アルカリ型(AFC)、固体高分子型(PEFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体電解質型(SOFC)などの各種のものが知られている。
【0003】
これらの燃料電池では、一方側に配置されるアノード電極(燃料側電極)、および、他方側に配置されるカソード電極(酸素側電極)とを備えている。
【0004】
また、このような燃料電池を備える燃料電池装置として、例えば、アノード電極が接続されるアノードラインと、カソード電極が接続されるカソードラインとを備え、燃料電池の起動時および停止時に、アノードラインおよびカソードラインを窒素ガスで充填する燃料電池装置が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、このような燃料電池装置には、通常、窒素ガスを貯留するガスタンクおよび燃料を貯留する燃料タンクが備えられており、窒素ガスが、外部から窒素ガス供給ラインを介してガスタンクに供給および貯留され、一方、燃料が、外部からガス供給ラインとは異なる燃料供給ラインを介して燃料タンクに供給および貯留される。
【0006】
そして、起動時および停止時には、ガスタンクから窒素ガスがアノードラインおよびカソードラインに供給され、アノードラインが窒素ガスで充填されるとともに、カソードラインが窒素ガスで充填される。
【0007】
また、発電時には、燃料が、燃料タンクからアノードラインに供給され、アノード電極に接触するとともに、空気が、カソードラインに供給され、カソード電極に接触する。これにより、燃料電池装置において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−276763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかるに、特許文献1に記載の燃料電池装置では、窒素ガスおよび燃料が、それぞれ、別のラインを介して、ガスタンクおよび燃料タンクに供給されるため、それらの供給部を、窒素ガス充填部および燃料供給部として別々に設ける必要がある。その結果、燃料電池装置の部品点数が多くなり、また、設置に広いスペースを必要とするという不具合がある。
【0010】
また、このような燃料電池装置では、ガスタンクへの窒素ガスの供給作業と、燃料タンクへの燃料の供給作業とが別々であるため、例えば、いずれか一方のみを供給して燃料電池を稼動させると、窒素ガス不足または燃料不足を生じる。
【0011】
一方、燃料電池としては、上記した燃料電池の燃料である水素ガスに代えて、液体燃料を用いる燃料電池、例えば、直接メタノール形燃料電池、直接ジメチルエーテル形燃料電池、ヒドラジン形燃料電池などの液体燃料形燃料電池なども知られている。液体燃料形燃料電池は、水素ガスを生成するための改質器を必要としないので、システムとしての構造の簡略化が期待されている。
【0012】
そこで、本発明の目的は、部品点数を低減するとともに省スペース化を図り、さらには、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業で供給することができる燃料充填方法、および、その燃料充填方法が採用される燃料電池装置を備える燃料電池車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の燃料供給方法は、液体燃料および不活性ガスの供給源から、燃料電池装置に、液体燃料および不活性ガスを供給するための燃料供給方法であって、前記供給源は、不活性ガスが貯留される1次ガスタンク、液体燃料が貯留される1次燃料タンク、液体燃料および不活性ガスを前記燃料電池装置に供給するための共通の供給部、前記1次ガスタンクおよび前記供給部を接続する第1ライン、前記1次燃料タンクおよび前記供給部を接続する第2ライン、前記第1ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第1弁、および、前記第2ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第2弁を備え、前記燃料電池装置は、液体燃料を消費する反応により発電する燃料電池本体、不活性ガスを前記燃料電池本体に供給するための2次ガスタンク、液体燃料を前記燃料電池本体に供給するための2次燃料タンク、液体燃料および不活性ガスが受給される共通の受給部、前記2次ガスタンクおよび前記受給部を接続する第3ライン、前記2次燃料タンクおよび前記受給部を接続する第4ライン、前記第3ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第3弁、および、前記第4ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第4弁を備え、前記供給部と、前記受給部とを接続する接続工程と、前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を開、前記第4弁を閉とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインを介して、不活性ガスを、前記1次ガスタンクから前記2次ガスタンクに供給する不活性ガス供給工程と、前記第1弁を閉、前記第2弁を開、前記第3弁を閉、前記第4弁を開とし、順次接続された前記第2ライン、前記供給部、前記受給部および前記第4ラインを介して、液体燃料を、前記1次燃料タンクから前記2次燃料タンクに供給する液体燃料供給工程と、前記供給部および前記受給部を分離させる分離工程とを備えることを特徴としている。
【0014】
このような燃料供給方法では、1次ガスタンクから2次ガスタンクへ不活性ガスが供給される不活性ガス供給工程と、1次燃料タンクから2次燃料タンクへ液体燃料が供給される液体燃料供給工程とにおいて、共通の供給部および共通の受給部が用いられるため、部品点数の削減、および、省スペース化を図ることができる。
【0015】
また、このような燃料供給方法では、供給部と受給部とを接続する接続工程と、それらが分離される分離工程との間において、不活性ガスと液体燃料とが、それぞれ供給されるため、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業で供給することができる。その結果、不活性ガスおよび液体燃料のいずれか一方のみを供給して燃料電池本体を稼動させたときに、不活性ガス不足または燃料不足が生じることを防止することができる。
【0016】
また、本発明の燃料供給方法は、さらに、前記第1ラインまたは前記第3ラインに、圧力検出手段を備え、前記接続工程の後、かつ、前記液体燃料供給工程の前において、前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を閉、前記第4弁を閉とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインの内部を、1次ガスタンクから供給される前記不活性ガスで充填するガス充填工程と、前記ガス充填工程の後、かつ、前記液体燃料供給工程の前において、前記圧力検出手段により、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインの内部の圧力を検出する、圧力検出工程とを備えることが好適である。
【0017】
このような燃料供給方法では、供給部および受給部が接続された後、液体燃料が供給される前に、供給部および受給部の接続部を含むラインに、不活性ガスが充填され、圧力が検出される。このとき、圧力変化を測定することにより、不活性ガスの漏出を検知することができる。
【0018】
つまり、このような燃料供給方法によれば、液体燃料の供給前に、供給部および受給部の接続不良や、劣化による破損などを検出することができる。そのため、上記の接続不良箇所や破損箇所における液体燃料(気化物を含む)の漏出を防止することができる。
【0019】
また、本発明の燃料供給方法では、前記液体燃料供給工程の後、かつ、前記分離工程の前において、前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を閉、前記第4弁を開とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および第4ラインを、1次ガスタンクから供給される不活性ガスでパージし、前記供給部、前記受給部および第4ライン内の液体燃料を、前記2次燃料タンクに輸送する、ガスパージ工程を備えることが好適である。
【0020】
液体燃料の供給後において、接続された供給部と受給部を分離させると、例えば、供給部および受給部の接続箇所に残存した液体燃料が液垂れを生じる場合や、その液体燃料が外部に付着する場合がある。
【0021】
一方、このような燃料供給方法では、液体燃料の供給後に、供給部および受給部の接続箇所に液体燃料が残存する場合にも、供給部および受給部が分離される前に、供給部、受給部および第4ライン内に残存する液体燃料が、不活性ガスにより、2次燃料タンクに輸送される。そのため、液体燃料の液垂れおよび付着を防止することができる。
【0022】
また、本発明の燃料電池車両は、前記燃料電池装置を備え、上記の燃料供給方法が採用される燃料電池車両であって、前記燃料電池装置は、液体燃料を消費する反応により発電する燃料電池本体、不活性ガスを前記燃料電池本体に供給するための2次ガスタンク、液体燃料を前記燃料電池本体に供給するための2次燃料タンク、液体燃料および不活性ガスが受給される共通の受給部、前記2次ガスタンクおよび前記受給部を接続する第3ライン、前記2次燃料タンクおよび前記受給部を接続する第4ライン、前記第3ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第3弁、および、前記第4ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第4弁を備えていることを特徴としている。
【0023】
このような燃料電池車両では、上記の燃料供給方法が採用される、すなわち、1次ガスタンクから2次ガスタンクへ不活性ガスが供給される不活性ガス供給工程と、1次燃料タンクから2次燃料タンクへ液体燃料が供給される液体燃料供給工程とにおいて、共通の供給部および共通の受給部が用いられるため、部品点数の削減、および、省スペース化を図ることができる。
【0024】
このような燃料電池車両では、供給部と受給部とを接続する接続工程と、それらが分離される分離工程との間において、不活性ガスと液体燃料とが、それぞれ供給されるため、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業で供給することができる。その結果、不活性ガスおよび液体燃料のいずれか一方のみを供給して燃料電池本体を稼動させたときに、不活性ガス不足または燃料不足が生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の燃料供給方法および燃料電池車両によれば、不活性ガス供給工程と、液体燃料供給工程とにおいて、共通の供給部および共通の受給部が用いられるため、燃料電池車両の部品点数を低減するとともに省スペース化を図ることができる。
【0026】
さらに、本発明の燃料供給方法および燃料電池車両によれば、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業で供給することができ、その結果、不活性ガスおよび液体燃料のいずれか一方のみを供給して燃料電池本体を稼動させたときに、不活性ガス不足または燃料不足が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の燃料電池車両の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の燃料供給方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.燃料電池車両および燃料電池装置の全体構成
図1は、本発明の燃料電池車両の一実施形態を示す概略構成図である。
【0029】
図1において、燃料電池車両1は、液体燃料を循環使用する燃料電池装置2を搭載している。
【0030】
燃料電池装置2は、詳しくは後述するが、供給源50(後述)の1次ガス供給装置51から不活性ガスが供給(1次供給)されるとともに、供給源50(後述)の1次燃料供給装置52から液体燃料が供給(1次供給)される。
【0031】
このような燃料電池装置2は、液体燃料を消費する反応により発電する燃料電池本体3と、2次ガス供給装置4と、2次燃料供給装置5と、ガス排出−燃料循環部6と、受給部7と、空気給排部8と、車両側コントロールユニット9と、動力部10とを備えている。
(1)燃料電池本体
燃料電池本体3は、液体燃料が直接供給される、例えば、アニオン交換型燃料電池であって、燃料電池車両1の中央下側に配置されている。
【0032】
燃料電池本体3に供給される液体燃料としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン(例えば、無水ヒドラジンや、ヒドラジン1水和物などの水加ヒドラジンなどを含む)などが挙げられる。
【0033】
また、燃料電池本体3の出力電圧は、例えば、0.2〜1.5Vであり、出力電流は、例えば、10〜400Aである。なお、これら出力は、後述する単位セル1つあたりの出力である。
【0034】
燃料電池本体3は、電解質層11と、電解質層11の一方側に配置されたアノード12と、電解質層11の他方側に配置されたカソード13とを有する燃料電池セル(単位セル)が、セパレータ(図示せず)を介して複数積層されたスタック構造に形成されている。つまり、電解質層11を介してアノード12およびカソード13が対向配置されてなる単位セルが複数積層されている。なお、図1では、積層される複数の単位セルのうち、1つの単位セルだけを拡大して表わし、その他の単位セルについては簡略化して記載している。
【0035】
電解質層11は、例えば、アニオン成分が移動可能な層であり、アニオン交換膜を用いて形成されている。
【0036】
アノード12は、アノード電極14と、アノード電極14に液体燃料を供給するための燃料供給部材15とを有している。
【0037】
アノード電極14は、電解質層11の一方面に形成されている。アノード電極14の電極材料としては、例えば、触媒が担持された多孔質担体(触媒担持多孔質担体)などが挙げられる。
【0038】
燃料供給部材15は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。燃料供給部材15には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、燃料供給部材15は、溝の形成された表面がアノード電極14に対向接触されている。これにより、アノード電極14の一方面と燃料供給部材15の他方面(溝の形成された表面)との間には、アノード電極14全体に液体燃料を接触させるための燃料供給路16が形成される。
【0039】
燃料供給路16には、液体燃料をアノード12内に流入させるための燃料供給口18が一端側(下側)に形成され、液体燃料をアノード12から排出するための燃料排出口17が他端側(上側)に形成されている。
【0040】
カソード13は、カソード電極19と、カソード電極19に空気を供給するための空気供給部材20とを有している。
【0041】
カソード電極19は、電解質層11の他方面に形成されている。
【0042】
カソード電極19の電極材料としては、例えば、アノード電極14の電極材料として例示した、触媒担持多孔質担体などが挙げられる。
【0043】
空気供給部材20は、セパレータとしても兼用され、ガス不透過性の導電性部材からなる。空気供給部材20には、その表面から凹む葛折状の溝が形成されている。そして、空気供給部材20は、溝の形成された表面がカソード電極19に対向接触されている。これにより、カソード電極19の他方面と空気供給部材20の一方面(溝の形成された表面)との間には、カソード電極19全体に空気を接触させるための空気供給路21が形成される。
【0044】
空気供給路21には、空気をカソード13内に流入させるための空気供給口22が一端側に形成され、空気をカソード13から排出するための空気排出口23が他端側に形成されている。
(2)2次ガス供給装置
2次ガス供給装置4は、燃料電池本体3に不活性ガスを供給するために設けられており、不活性ガスを燃料電池本体3に供給するための2次ガスタンク24と、その2次ガスタンク24と受給部7とを接続する第3ライン25と、2次ガスタンク24と燃料電池本体3とを接続する第5ライン27とを備えている。
【0045】
2次ガスタンク24は、燃料電池本体3よりも後方、燃料電池車両1の後側において、後述する2次燃料タンク28の上方に配置されており、後述する1次ガスタンク55から供給された不活性ガスを貯留する。
【0046】
第3ライン25は、一端(車両前後方向前端)が2次ガスタンク24と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が受給部7と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0047】
また、第3ライン25の流れ方向途中には、第3弁26が備えられている。
【0048】
第3弁26は、2次ガスタンク24に対する不活性ガスの供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第3弁26は、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、車両側コントロールユニット9からの制御信号が、第3弁26に入力され、車両側コントロールユニット9が、第3弁26の開閉を制御する。
【0049】
なお、詳しくは後述するが、第3ライン25、具体的には、第3ライン25の第3弁26よりも上流側に、圧力検出手段61(後述)を設けることができる(図1の仮想線参照)。
【0050】
このような場合において、圧力検出手段61(後述)は、第3ライン25およびそれに連通するライン内の内圧を検出するために設けられ、図示しないが、車両側コントロールユニット9に電気的に接続される。
【0051】
第5ライン27は、一端(車両前後方向前端)が燃料電池本体3と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が2次ガスタンク24と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0052】
また、第5ライン27の流れ方向途中には、第5弁43が備えられている。
【0053】
第5弁43は、燃料電池本体3に対する不活性ガスの供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第5弁43は、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、車両側コントロールユニット9からの制御信号が、第5弁43に入力され、車両側コントロールユニット9が、第5弁43の開閉を制御する。
(3)2次燃料供給装置
2次燃料供給装置5は、燃料電池本体3に液体燃料を供給するために設けられており、液体燃料を燃料電池本体3に供給するための2次燃料タンク28と、その2次燃料タンク28と受給部7とを接続する第4ライン29と、2次燃料タンク28と燃料電池本体3とを接続する第6ライン31とを備えている。
【0054】
2次燃料タンク28は、燃料電池本体3よりも後方、燃料電池車両1の後側において、上記した2次ガスタンク24の下方に配置されており、後述する1次燃料タンク58から供給された液体燃料を貯留する。
【0055】
第4ライン29は、一端(車両前後方向前端)が2次燃料タンク28と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が受給部7と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0056】
また、第4ライン29の流れ方向途中には、第4弁30が備えられている。
【0057】
第4弁30は、2次燃料タンク28に対する液体燃料の供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第4弁30は、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、車両側コントロールユニット9からの制御信号が、第4弁30に入力され、車両側コントロールユニット9が、第4弁30の開閉を制御する。
【0058】
第6ライン31は、一端(車両前後方向前端)が燃料電池本体3の燃料供給口18と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が2次燃料タンク28と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0059】
また、第6ライン31の流れ方向途中には、第6弁44が備えられている。
【0060】
第6弁44は、燃料電池本体3に対する液体燃料の供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第6弁44は、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、車両側コントロールユニット9からの制御信号が、第6弁44に入力され、車両側コントロールユニット9が、第6弁44の開閉を制御する。
(4)ガス排出−燃料循環部
ガス排出−燃料循環部6は、上記の反応における生成ガスと不活性ガスとを燃料電池車両1から排出するとともに、燃料電池本体3で消費されなかった液体燃料(未消費の液体燃料)を燃料電池本体3に循環させるために設けられている。
【0061】
ガス排出−燃料循環部6は、ガス(具体的には、2次ガス供給装置4から供給される不活性ガス、および、燃料電池本体3における反応で得られる生成ガス)、および、燃料電池本体3(具体的には、アノード12の燃料供給路16)から排出される未消費(未反応)の液体燃料を、燃料電池本体3から排出させるためのガス−燃料排出ライン32と、ガスおよび未反応の液体燃料を分離するとともに、分離されたガスを浄化するための処理装置33と、分離および浄化されたガスを外部に排出するためのガス排出ライン34と、未反応の液体燃料を2次燃料タンク28に還流するための還流ライン35とを備えている。
【0062】
ガス−燃料排出ライン32は、一端(車両前後方向前端)が処理装置33と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が燃料電池本体3と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0063】
処理装置33は、ガスおよび液体燃料を分離するとともに、分離されたガスを浄化できる公知の処理装置であって、一端(車両前後方向前端)がガス排出ライン34と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)がガス−燃料排出ライン32と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0064】
ガス排出ライン34は、一端(車両前後方向前端)が外気に開放されるとともに、他端(車両前後方向後端)が処理装置33と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0065】
還流ライン35は、一端(車両前後方向前端)が処理装置33と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端(車両前後方向後端)が2次燃料タンク28と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0066】
すなわち、ガス排出−燃料循環部6では、ガス−燃料排出ライン32、処理装置33およびガス排出ライン34が、互いに接続されており、これにより、燃料電池本体3から排出されるガスが、ガス−燃料排出ライン32、処理装置33およびガス排出ライン34を順次通過し、外気に至る排出経路を形成している。
【0067】
また、ガス−燃料排出ライン32、処理装置33および還流ライン35が、互いに接続されており、これにより、燃料電池本体3から排出される液体燃料が、ガス−燃料排出ライン32、処理装置33および還流ライン35を順次通過し、再び2次燃料タンク28に戻る循環経路を形成している。
【0068】
また、図示しないが、ガス排出−燃料循環部6において、処理装置33と2次燃料タンク28とは、内圧調整管(図示せず)により接続されている。内圧調整管(図示せず)内にガス成分が通気されることによって、処理装置33と2次燃料タンク28との内圧が調整される。
(5)受給部
受給部7は、液体燃料および不活性ガスが受給される共通の受給部であって、2次ガスタンク24および2次燃料タンク28よりも後方、燃料電池車両1の後側において、後述する供給源50の供給部53と接続可能に設けられている。
【0069】
より具体的には、受給部7は、その一端(車両前後方向前端)が、第3ライン25の他端(車両前後方向後端)および第4ライン29の他端(車両前後方向後端)と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。また、受給部7は、その他端(車両前後方向後端)が外気に開放されるように、燃料電池車両1の後端に配置されている。
【0070】
なお、受給部7は、不使用時には図示しないキャップにより封止されている。
(6)空気給排部
空気給排部8は、発電反応に使用するための空気を給排するために設けられており、空気をカソード13に供給するための空気供給ライン36と、カソード13から排出される空気を外部に排出するための空気排出ライン37とを備えている。
【0071】
空気供給ライン36は、その一端側(上流側)が大気中に開放され、他端側(下流側)が燃料電池本体3の空気供給口22に接続されている。空気供給ライン36の途中には、エアコンプレッサなどの公知の空気供給ポンプ38が介在されており、また、その下流側には、空気供給弁39が設けられている。
【0072】
これら空気供給ポンプ38および空気供給弁39は、それぞれ、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されており(図1の破線参照)、車両側コントロールユニット9からの制御信号が、空気供給ポンプ38および空気供給弁39に入力され、車両側コントロールユニット9が、空気供給ポンプ38の駆動および停止、および、空気供給弁39の開閉を制御する。
【0073】
空気排出ライン37は、その一端側(上流側)が燃料電池本体3の空気排出口23に接続され、他端側(下流側)がドレンとされる。
(7)車両側コントロールユニット
車両側コントロールユニット9は、燃料電池車両1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。車両側コントロールユニット9は、電気的な接続によりユニット外との信号通信が可能とされている。
【0074】
なお、車両側コントロールユニット9は、燃料供給時において、供給源側コントロールユニット54(後述)と電気的に接続され、互いに電子情報を交換することにより、対応動作を可能とされている。
(8)動力部
動力部10は、燃料電池車両1を駆動させるために設けられており、燃料電池本体3から出力される電気エネルギを、燃料電池車両1の駆動力として機械エネルギに変換するためのモータ40と、DC/DCコンバータ41と、インバータ42とを備えている。
【0075】
モータ40は、燃料電池本体3よりも前方、燃料電池車両1の前側に配置されている。モータ40としては、例えば、三相誘導電動機、三相同期電動機など、公知の三相電動機が挙げられる。
【0076】
DC/DCコンバータ41は、これに接続される複数の機器に対して入力電力を振り分けるスイッチング機能を有するとともに、入力電圧を降圧する降圧機能を有している。DC/DCコンバータ41の正極側入力端子には、カソード13に接続された正極配線45が接続されている。一方、DC/DCコンバータ41の負極側入力端子には、アノード12に接続された負極配線46が接続されている。また、DC/DCコンバータ41は、車両側コントロールユニット9に電気的に接続されている(図1の破線参照)。
【0077】
インバータ42は、モータ40とDC/DCコンバータ41との間において直列に接続されている。インバータ42としては、直流電力を交流電力に変換可能な機器であれば、特に限定されず、例えば、公知のインバータ回路が組み込まれた電力変換装置が挙げられる。燃料電池本体3から出力される電力は、DC/DCコンバータ41によりインバータ42に振り分けられ、インバータ42により直流電力から三相交流電力に変換されることにより、三相交流電力としてモータ40に供給される。
2.供給源
上記した燃料電池装置2には、液体燃料および不活性ガスの供給源50から、液体燃料および不活性ガスが供給(1次供給)される。
【0078】
供給源50は、例えば、ステーション(スタンド)などの店舗として設備され、1次ガス供給装置51と、1次燃料供給装置52と、供給部53と、供給源側コントロールユニット54とを備えている。
(1)1次ガス供給装置
1次ガス供給装置51は、燃料電池装置2に不活性ガスを供給するために設けられており、不活性ガスが貯留される1次ガスタンク55と、その1次ガスタンク55と供給部53とを接続する第1ライン56とを備えている。
【0079】
第1ライン56は、一端(車両側端)が供給部53と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端が1次ガスタンク55と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0080】
また、第1ライン56の流れ方向途中には、第1弁57が備えられている。
【0081】
第1弁57は、燃料電池装置2に対する不活性ガスの供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第1弁57は、供給源側コントロールユニット54に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、供給源側コントロールユニット54からの制御信号が、第1弁57に入力され、供給源側コントロールユニット54が、第1弁57の開閉を制御する。
【0082】
また、第1ライン56、具体的には、第1ライン56の第1弁57よりも下流側には、さらに、圧力検出手段61が備えられている。
【0083】
圧力検出手段61は、第1ライン56およびそれに連通するライン内の内圧を検出するために設けられており、供給源側コントロールユニット54に電気的に接続されている(図1の破線参照)。
(2)1次燃料供給装置
1次燃料供給装置52は、燃料電池装置2に液体燃料を供給するために設けられており、液体燃料が貯留される1次燃料タンク58と、その1次燃料タンク58と供給部53とを接続する第2ライン59とを備えている。
【0084】
第2ライン59は、一端(車両側端)が供給部53と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されるとともに、他端が1次燃料タンク58と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0085】
また、第2ライン59の流れ方向途中には、第2弁60が備えられている。
【0086】
第2弁60は、燃料電池装置2に対する液体燃料の供給および停止を切り替えるために設けられ、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。また、第2弁60は、供給源側コントロールユニット54に電気的に接続されている(図1の破線参照)。これにより、供給源側コントロールユニット54からの制御信号が、第2弁60に入力され、供給源側コントロールユニット54が、第2弁60の開閉を制御する。
(3)供給部
供給部53は、液体燃料および不活性ガスを燃料電池装置2に供給するための共通の供給部であって、1次ガスタンク55および1次燃料タンク58よりも車両側において、上記した燃料電池装置2の受給部7と接続可能に設けられている。
【0087】
より具体的には、供給部53は、その一端(車両側端)が外気に開放されるように、供給源50の車両側端に配置されており、また、その他端が、第1ライン56の一端(車両側端)および第2ライン59の一端(車両側端)と、シール材(ガスケットなど)を介して接続されている。
【0088】
なお、供給部53は、不使用時には図示しないキャップにより封止されている。
(4)供給源側コントロールユニット
供給源側コントロールユニット54は、供給源50における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備えるマイクロコンピュータで構成されている。供給源側コントロールユニット54は、電気的な接続によりユニット外との信号通信が可能とされている。
【0089】
なお、供給源側コントロールユニット54は、燃料供給時において、車両側コントロールユニット9と電気的に接続され、互いに電子情報を交換することにより、対応動作を可能とされている。
3.燃料供給方法
図2は、本発明の燃料供給方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
【0090】
以下では、図1とともに、図2を参照して、燃料電池装置2に対する燃料供給方法について、その手順を説明する。
【0091】
この方法では、まず、供給部53と、受給部7とを接続する(ステップS1:接続工程)。
【0092】
また、これとともに、図1において破線で示すように、車両側コントロールユニット9と、供給源側コントロールユニット54とを、電気的に接続し、互いに対応動作可能とする。
【0093】
なお、以降の各工程において、各弁や圧力検出手段などを、車両側コントロールユニット9および供給源側コントロールユニット54により、それぞれ制御する。
【0094】
次いで、この方法では、上記の接続工程の後、かつ、後述する液体燃料供給工程の前において、第1弁57を開、第2弁60を閉、第3弁26を閉、第4弁30を閉とする。なお、このとき、第5弁43および第6弁44を、閉とする。これにより、第1ライン56、供給部53および受給部7(さらに、第3ライン25の流れ方向途中まで)を、順次連通させる。そして、順次接続された第1ライン56、供給部53、受給部7および第3ライン25(詳しくは、第3弁26の上流側)の内部を、1次ガスタンク55から供給される不活性ガスで充填し、その後、第1弁57を閉とする(ステップS2:ガス充填工程)。
【0095】
次いで、この方法では、上記のガス充填工程の後、かつ、後述する液体燃料供給工程の前において、圧力検出手段61により、順次接続された第1ライン56(詳しくは、第1弁の下流側)、供給部53、受給部7および第3ライン25(詳しくは、第3弁26の上流側)の内部の圧力を検出する(ステップS3:圧力検出工程)。
【0096】
このような燃料供給方法において、供給部53および受給部7の接続が不良である場合や、供給部53および/または受給部7が劣化により破損している場合などには、後述するように、液体燃料を供給すると、その接続不良箇所や破損箇所から、液体燃料(気化物を含む)が漏出する場合がある。
【0097】
一方、このような燃料供給方法では、供給部53および受給部7が接続された後、液体燃料が供給される前に、供給部53および受給部7の接続部を含むラインに、不活性ガスが充填され、圧力が検出される。このとき、圧力変化を測定することにより、不活性ガスの漏出を検知することができる。
【0098】
つまり、このような燃料供給方法によれば、液体燃料の供給前に、供給部53および受給部7の接続不良や、劣化による破損などを検出することができる。そのため、上記の接続不良箇所や破損箇所における液体燃料(気化物を含む)の漏出を防止することができる。
【0099】
次いで、この方法では、第1弁57を開、第2弁60を閉、第3弁26を開、第4弁30を閉とし、順次接続された第1ライン56、供給部53、受給部7および第3ライン25を介して、不活性ガスを、1次ガスタンク55から2次ガスタンク24に供給(1次供給)する(ステップS4:不活性ガス供給工程)。
【0100】
次いで、この方法では、第1弁57を閉、第2弁60を開、第3弁26を閉、第4弁30を開とし、順次接続された第2ライン59、供給部53、受給部7および第4ライン29を介して、液体燃料を、1次燃料タンク58から2次燃料タンク28に供給(1次供給)する(ステップS5:液体燃料供給工程)。
【0101】
次いで、この方法では、上記の液体燃料供給工程の後、かつ、後述する分離工程の前において、第1弁57を開、第2弁60を閉、第3弁26を閉、第4弁30を開とし、順次接続された第1ライン56、供給部53、受給部7および第4ライン29を、1次ガスタンク55から供給される不活性ガスでパージし、供給部53、受給部7および第4ライン29内の液体燃料を、2次燃料タンク28に輸送する(ステップS6:ガスパージ工程)。
【0102】
液体燃料の供給後において、接続された供給部53と受給部7を分離させると、例えば、供給部53および受給部7の接続箇所に残存した液体燃料が液垂れを生じる場合や、その液体燃料が外部に付着する場合がある。
【0103】
一方、このような燃料供給方法では、液体燃料の供給後に、供給部53および受給部7の接続箇所に液体燃料が残存する場合にも、供給部53および受給部7が分離される前に、供給部53、受給部7および第4ライン29内に残存する液体燃料が、不活性ガスにより、2次燃料タンク28に輸送される。そのため、供給部53および受給部7の分離時における液体燃料の液垂れおよび付着を防止することができる。
【0104】
次いで、この方法では、供給部53および受給部7を分離させる(ステップS7:分離工程)。
【0105】
このような燃料供給方法により、供給源50から、液体燃料および不活性ガスを、燃料電池装置2に供給することができる。
【0106】
そして、このような燃料供給方法では、1次ガスタンク55から2次ガスタンク24へ不活性ガスが供給される不活性ガス供給工程と、1次燃料タンク58から2次燃料タンク28へ液体燃料が供給される液体燃料供給工程とにおいて、共通の供給部53および共通の受給部7が用いられるため、部品点数の削減、および、省スペース化を図ることができる。
【0107】
また、このような燃料供給方法では、供給部53と受給部7とを接続する接続工程と、それらが分離される分離工程との間において、不活性ガスと液体燃料とが、それぞれ供給されるため、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業(一連の作業)で供給することができる。その結果、不活性ガスおよび液体燃料のいずれか一方のみを供給して燃料電池本体3を稼動させたときに、不活性ガス不足または燃料不足が生じることを防止することができる。
4.燃料電池装置による発電
上記した燃料電池装置2では、起動時および停止時において、車両側コントロールユニット9の制御により、第5弁43が開、第6弁44が閉とされ、2次ガスタンク24から不活性ガスが、第5ライン27を介して燃料電池本体3(燃料供給路16および空気供給路21)に供給され、充填される。
【0108】
また、発電時には、車両側コントロールユニット9の制御により、第5弁43が閉、第6弁44が開とされ、2次燃料タンク28から液体燃料が、第6ライン31を介して燃料電池本体3のアノード12に供給される。一方、空気供給弁39が開かれ、空気供給ポンプ38が駆動されることにより、空気が空気供給ライン36を介して燃料電池本体3カソード13に供給される。なお、第6弁44は、液体燃料が所定量供給された後に閉じられる。
【0109】
アノード12では、液体燃料が、アノード電極14と接触しながら燃料供給路16を通過する。一方、カソード13では、空気が、カソード電極19と接触しながら空気供給路21を通過する。
【0110】
そして、各電極(アノード電極14およびカソード電極19)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、液体燃料がメタノールである場合には、下記式(1)〜(3)の通りとなる。
(1)CHOH+6OH→CO+5HO+6e(アノード電極14での反応)
(2)O+2HO+4e→4OH (カソード電極19での反応)
(3)CHOH+3/2O→CO+2HO (燃料電池本体3全体での反応)
すなわち、メタノールが供給されたアノード電極14では、メタノール(CHOH)とカソード電極19での反応で生成した水酸化物イオン(OH)とが反応して、二酸化炭素(CO)および水(HO)が生成するとともに、電子(e)が発生する(上記式(1)参照)。
【0111】
アノード電極14で発生した電子(e)は、図示しない外部回路を経由してカソード電極19に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e)が、電流となる。
【0112】
一方、カソード電極19では、電子(e)と、外部からの供給もしくは燃料電池本体3での反応で生成した水(HO)と、空気供給路21を流れる空気中の酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)が生成する(上記式(2)参照)。
【0113】
そして、生成した水酸化物イオン(OH)が、電解質層11を通過してアノード電極14に到達し、上記と同様の反応(上記式(1)参照)が生じる。
【0114】
また、例えば、液体燃料がヒドラジンである場合には、下記式(4)〜(6)の通りとなる。
(4)N+4OH→N+4HO+4e (アノード電極14での反応)
(5)O+2HO+4e→4OH (カソード電極19での反応)
(6)N+O→N+2HO (燃料電池本体3全体での反応)
このようなアノード電極14およびカソード電極19での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池本体3全体として、上記式(3)または上記式(6)で表わされる反応が生じて、燃料電池本体3に起電力が発生する。
【0115】
そして、動力部10では、発生した起電力が、正極配線45および負極配線46を介してDC/DCコンバータ41に送電され、インバータ42に送電される。そして、モータ40では、インバータ42により三相交流電力に変換された電気エネルギが、燃料電池車両1の車輪を駆動させる機械エネルギに変換される。
【0116】
また、上記反応により生じるガスや、供給された不活性ガスなどのガスと、未消費(未反応)の液体燃料とは、ガス−燃料排出ライン32を介して処理装置33に導入される。
【0117】
処理装置33において、ガスと未反応液体燃料とが分離され、分離されたガスが、浄化処理される。
【0118】
分離および浄化されたガスは、ガス排出ライン34を通過し、外気に排出され、一方、分離された液体燃料は、還流ライン35を介して、2次燃料タンク28に循環される。なお、処理装置33および2次燃料タンク28の内圧は、図示しない内圧調整管により、適宜調整される。
【0119】
このようにして発電された電力により、燃料電池車両1が、走行可能とされる。
【0120】
そして、このような燃料電池車両1では、上記の燃料供給方法が採用される、すなわち、1次ガスタンク55から2次ガスタンク24へ不活性ガスが供給される不活性ガス供給工程と、1次燃料タンク58から2次燃料タンク28へ液体燃料が供給される液体燃料供給工程とにおいて、共通の供給部53および共通の受給部7が用いられるため、部品点数の削減、および、省スペース化を図ることができる。
【0121】
また、このような燃料電池車両1では、供給部53と受給部7とを接続する接続工程と、それらが分離される分離工程との間において、不活性ガスと液体燃料とが、それぞれ供給されるため、不活性ガスおよび液体燃料を、1つの作業(一連の作業)で供給することができる。その結果、不活性ガスおよび液体燃料のいずれか一方のみを供給して燃料電池本体3を稼動させたときに、不活性ガス不足または燃料不足が生じることを防止することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 燃料電池車両
2 燃料電池装置
3 燃料電池本体
7 受給部
24 2次ガスタンク
25 第3ライン
26 第3弁
28 2次燃料タンク
29 第4ライン
30 第4弁
53 供給部
55 1次ガスタンク
56 第1ライン
57 第1弁
58 1次燃料タンク
59 第2ライン
60 第2弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料および不活性ガスの供給源から、燃料電池装置に、液体燃料および不活性ガスを供給するための燃料供給方法であって、
前記供給源は、
不活性ガスが貯留される1次ガスタンク、
液体燃料が貯留される1次燃料タンク、
液体燃料および不活性ガスを前記燃料電池装置に供給するための共通の供給部、
前記1次ガスタンクおよび前記供給部を接続する第1ライン、
前記1次燃料タンクおよび前記供給部を接続する第2ライン、
前記第1ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第1弁、および、
前記第2ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第2弁を備え、
前記燃料電池装置は、
液体燃料を消費する反応により発電する燃料電池本体、
不活性ガスを前記燃料電池本体に供給するための2次ガスタンク、
液体燃料を前記燃料電池本体に供給するための2次燃料タンク、
液体燃料および不活性ガスが受給される共通の受給部、
前記2次ガスタンクおよび前記受給部を接続する第3ライン、
前記2次燃料タンクおよび前記受給部を接続する第4ライン、
前記第3ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第3弁、および、
前記第4ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第4弁を備え、
前記供給部と、前記受給部とを接続する接続工程と、
前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を開、前記第4弁を閉とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインを介して、不活性ガスを、前記1次ガスタンクから前記2次ガスタンクに供給する不活性ガス供給工程と、
前記第1弁を閉、前記第2弁を開、前記第3弁を閉、前記第4弁を開とし、順次接続された前記第2ライン、前記供給部、前記受給部および前記第4ラインを介して、液体燃料を、前記1次燃料タンクから前記2次燃料タンクに供給する液体燃料供給工程と、
前記供給部および前記受給部を分離させる分離工程と
を備えることを特徴とする、燃料供給方法。
【請求項2】
さらに、前記第1ラインまたは前記第3ラインに、圧力検出手段を備え、
前記接続工程の後、かつ、前記液体燃料供給工程の前において、
前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を閉、前記第4弁を閉とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインの内部を、1次ガスタンクから供給される前記不活性ガスで充填するガス充填工程と、
前記ガス充填工程の後、かつ、前記液体燃料供給工程の前において、
前記圧力検出手段により、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および前記第3ラインの内部の圧力を検出する、圧力検出工程と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の燃料供給方法。
【請求項3】
前記液体燃料供給工程の後、かつ、前記分離工程の前において、
前記第1弁を開、前記第2弁を閉、前記第3弁を閉、前記第4弁を開とし、順次接続された前記第1ライン、前記供給部、前記受給部および第4ラインを、1次ガスタンクから供給される不活性ガスでパージし、
前記供給部、前記受給部および第4ライン内の液体燃料を、前記2次燃料タンクに輸送する、ガスパージ工程
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料供給方法。
【請求項4】
前記燃料電池装置を備え、請求項1〜3に記載の燃料供給方法が採用される燃料電池車両であって、
前記燃料電池装置は、
液体燃料を消費する反応により発電する燃料電池本体、
不活性ガスを前記燃料電池本体に供給するための2次ガスタンク、
液体燃料を前記燃料電池本体に供給するための2次燃料タンク、
液体燃料および不活性ガスが受給される共通の受給部、
前記2次ガスタンクおよび前記受給部を接続する第3ライン、
前記2次燃料タンクおよび前記受給部を接続する第4ライン、
前記第3ラインに備えられ、不活性ガスの供給および停止を切り替えるための第3弁、および、
前記第4ラインに備えられ、液体燃料の供給および停止を切り替えるための第4弁を備えていることを特徴とする、燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−114060(P2012−114060A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264578(P2010−264578)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】