説明

燃料噴射弁の故障診断装置

【課題】本発明は、燃料噴射弁本体内においてニードルをその中心軸を中心に回転させることが可能な燃料噴射弁において、ニードルの動作不良を検出することを目的とする。
【解決手段】燃料噴射弁本体内に収納されたニードルを、その中心軸を中心に回転させるニードル回転手段を有し、該ニードル回転手段によってニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状を変更することが可能な燃料噴射弁の故障診断を行う故障診断装置において、ニードル回転手段によるニードルの回転位置の変更を実施したときの排気の空燃比の変化量に基づいて、ニードルの動作不良が発生したか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁の故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に設けられる燃料噴射弁として、燃料噴射弁本体内にその軸方向に摺動自在にニードルが収納されたものが知られている。このような燃料噴射弁では、燃料噴射弁本体内の底部にニードルが着座した状態では、燃料噴射弁本体の先端部に形成された燃料噴射孔への燃料の供給が遮断される。そして、燃料噴射弁本体内において底部からニードルが上方にリフトされると、燃料噴射孔から燃料が噴射される。
【0003】
また、燃料噴射弁本体内においてニードルをその中心軸を中心に回転させることが可能な燃料噴射弁も開発されている。特許文献1には、先端形状が周方向に不均一であり且つその中心軸を中心に回転可能なニードル弁を有する燃料噴射弁において、インジェクションノズルに対するニードル弁の回転方向位置を制御することで、燃料の噴射方向又は噴霧の広がり角度を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−205088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料噴射弁本体内においてニードルをその中心軸を中心に回転させることが可能な燃料噴射弁を用いた内燃機関では、その運転状態に応じてニードルの回転位置を変更することで、燃料噴射量や燃料噴霧の形状を運転状態に適した量又は形状に制御する。これにより、内燃機関における燃焼状態や排気特性を向上させることができる。
【0006】
しかしながら、このような燃料噴射弁においては、ニードルにデポジットが付着することで、ニードルの動作不良が発生する場合がある。ニードルの動作不良が発生することで、該ニードルの回転位置が所望の位置とならないと、燃料噴射量や燃料噴霧の形状が所望の量又は形状とならず、その結果、燃焼状態や排気特性の悪化を招く虞がある。このような不具合を解消するためには、ニードルの動作不良が発生した際に、それを燃料噴射弁の故障として検出する必要がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、燃料噴射弁本体内においてニードルをその中心軸を中心に回転させることが可能な燃料噴射弁において、ニードルの動作不良を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、燃料噴射弁本体内に収納されたニードルを、その中心軸を中心に回転させるニードル回転手段を有し、該ニードル回転手段によってニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状を変更することが可能な燃料噴射弁の故障診断を行う故障診断装置において、ニードル回転手段によるニードルの回転位置の変更を実施したときの排気の空燃比の変化量に基づいて、ニードルの動作不良が発生したか否かを判定するものである。
【0009】
より詳しくは、本発明に係る燃料噴射弁の故障診断装置は、
内燃機関に設けられた燃料噴射弁であり、
燃料噴射弁本体内にその軸方向に摺動自在に収納されたニードルを、その中心軸を中心に回転させるニードル回転手段を有し、
前記ニードル回転手段によってニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状を変更することが可能な燃料噴射弁の故障診断を行う故障診断装置であって、
内燃機関から排出された排気の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記ニードル回転手段による前記ニードルの回転位置の変更を実施し、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射したときの、前記空燃比検出手段によって検出される排気の空燃比の変化量に基づいて、前記ニードルの動作不良が発生したか否かを判定するニードル故障判定手段と、
を備える。
【0010】
本発明に係る燃料噴射弁では、燃料噴射弁本体内において底部からニードルが上方にリフトされると燃料が噴射される。ここで、噴射期間とは、燃料噴射弁から燃料が噴射される期間、即ち、ニードルが燃料噴射弁本体内の底部からリフトされている期間のことである。
【0011】
ニードル回転手段によるニードルの回転位置の変更を実施した場合に、実際にニードルの回転位置が変化していれば、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射したときの排気の空燃比は変化する。しかしながら、ニードルへのデポジットの付着等に起因してニードルの回転位置が固着していれば、実際にはニードルの回転位置が変化しない。そのため、その変更の前後において排気の空燃比は変化しない。また、実際のニードルの回転位置が所望の位置まで変化していない、即ちニードルの回転位置の変化が不十分である場合は、その変更の前後における排気の空燃比の変化量は、ニードルの回転位置が実際に所望の位置に変化した場合に比べて小さくなる。
【0012】
そこで、本発明では、ニードル回転手段によるニードルの回転位置の変更を実施し、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射したときの、空燃比検出手段によって検出される排気の空燃比の変化量に基づいて、ニードルの動作不良が発生したか否かを判定する。これにより、ニードルの動作不良を検出することができる。
【0013】
本発明において、ニードル故障判定手段は、ニードルが第一回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比と、ニードルが、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状が第一回転位置とは異なる第二回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比との差が、所定判定値以下のときは、ニードルの動作不良が発生したと判定してもよい。
【0014】
ニードルの回転位置が、実際に第一回転位置となっているときと第二回転位置となっているときとでは、排気の空燃比が異なる。そのため、ニードルの回転位置の第一回転位置又は第二回転位置のいずれか一方から他方への変更を実施したときにおける排気の空燃比の変化量、即ち、ニードルが第一回転位置に制御されているべき時の排気の空燃比と、ニードルが第二回転位置に制御されているべき時の排気の空燃比との差が、所定判定値以下のときは、ニードルの動作不良が発生したと判断することができる。尚、所定判定値とは、ニードルの回転位置の変化が不十分である、即ちニードルの動作不良が発生したと判断できる閾値である。該所定判定値は、実験等に基づいて予め定めることができる。
【0015】
本発明に係る燃料噴射弁の故障診断装置は、空燃比検出手段によって検出される排気の空燃比が、内燃機関の運転状態に基づいて推定される基準空燃比よりも所定値以上低い場合、リッチ噴射故障が発生したと判定するリッチ噴射故障判定手段をさらに備えてもよい
。ここで、リッチ噴射故障とは、燃料噴射弁からの燃料噴射量が、内燃機関の運転状態に応じて定められた目標噴射量よりも多くなる燃料噴射系の故障である。
【0016】
このようなリッチ噴射故障判定手段を備えた場合、前記所定判定値を第一所定判定値とする。そして、故障診断装置は、リッチ噴射故障判定手段によってリッチ噴射故障が発生したと判定されたときに、ニードルが第一回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比と、ニードルが第二回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比との差が、前記第一所定判定値より大きく、且つ、前記第一所定判定値より大きい第二所定判定値より小さい場合は、リッチ噴射故障判定手段によるリッチ噴射故障が発生したとの判定は誤判定であると判断してもよい。
【0017】
ニードルが第一回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比と、ニードルが第二回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比との差が、第一所定判定値より大きい場合、ニードルは正常に回転していると判断できる。
【0018】
一方、リッチ噴射故障が発生している場合、燃料噴射量が増加しているため、ニードルの回転位置が第一回転位置に制御されている時と第二回転位置に制御されている時との排気の空燃比の差は、正常時に比べて大きくなる。ここで、第二所定判定値は、リッチ噴射故障が発生していると判断できる閾値である。
【0019】
燃料噴射弁から噴射される燃料が目標噴射量となっている場合であっても、オイル中の燃料が揮発することで、吸気系に還流されるブローバイガスの燃料濃度が上昇すると、排気の空燃比が低下する。このような場合、リッチ噴射故障判定手段は、実際にはリッチ噴射故障は発生していない場合でもリッチ噴射故障が発生したと誤判定する可能性がある。
【0020】
そこで、ニードルが正常に回転しており、且つ、ニードルが第一回転位置に制御されている時と第二回転位置に制御されている時との排気の空燃比の差が第二所定判定値より小さいときは、故障診断装置は、リッチ噴射故障判定手段によるリッチ噴射故障が発生したとの判定は誤判定であると判断する。これによれば、燃料噴射系の故障検出の精度を向上させることができる。
【0021】
本発明に係る燃料噴射弁においては、先端部に形成された燃料噴射孔がスリット状に形成されていてもよい。また、ニードルの先端に、該ニードルの軸方向に突出し、且つ該ニードルの軸方向と斜めに交わる平面或いは該ニードルの軸方向と平行に延びる平面を有する突出部が形成されていてもよい。この場合、ニードル回転手段によって、ニードルの回転位置が、該ニードルの突出部における平面の延長方向にスリット状の燃料噴射孔が位置するような回転位置に制御されているときは、燃料が噴射される時に、ニードルの突出部の平面によって燃料が燃料噴射孔にガイドされる。
【0022】
このような燃料噴射弁においては、例えば、ニードル回転手段によって、ニードルの回転位置が、該ニードルの突出部の平面を延長した場合の平面とスリット状の燃料噴射孔とが交わるような回転位置に制御されているときは、ニードルの回転位置が、該ニードルの突出部における平面の延長方向にスリット状の燃料噴射孔が位置するような回転位置に制御されているときに比べて、燃料噴射孔へ供給される燃料の流量は少なくなる。その結果、噴射期間が同一であるときの燃料噴射量は少なくなる。また、燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧の中心角は小さくなる。
【0023】
つまり、上記のような構成の燃料噴射弁によれば、ニードル回転手段によってニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃
料噴霧の形状を変更することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、燃料噴射弁本体内においてニードルをその中心軸を中心に回転させることが可能な燃料噴射弁において、ニードルの動作不良を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係る燃料噴射弁全体の概略構成を示す図である。
【図3】実施例に係る燃料噴射弁の先端部の概略構成を示す第一の図である。
【図4】実施例に係る燃料噴射弁の先端部の概略構成を示す第二の図である。
【図5】実施例に係る燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧の形状を示す第一の図である。
【図6】実施例に係る燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧の形状を示す第二の図である。
【図7】実施例1に係るニードルの動作不良を検出するための故障診断のフローを示すフローチャートである。
【図8】実施例2に係るリッチ噴射故障を検出するための故障診断のフローを示すフローチャートである。
【図9】実施例2に係る、リッチ噴射故障発生判定が誤判定であるか否かの判定のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0027】
[実施例1]
(内燃機関およびその吸排気系の概略構成)
図1は、本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は、4つの気筒2を有する車両駆動用のガソリンエンジン(火花点火式内燃機関)である。ただし、本発明に係る内燃機関はガソリンエンジンに限られるものではなく、ディーゼルエンジン(圧縮着火式内燃機関)等であってもよい。
【0028】
気筒2内にはピストン3が摺動自在に設けられている。気筒2内上部の燃焼室には吸気ポート4と排気ポート5とが接続されている。吸気ポート4および排気ポート5の燃焼室への開口部は、それぞれ吸気弁6および排気弁7によって開閉される。
【0029】
また、内燃機関1には、燃料噴射弁10及び点火プラグ11が設けられている。燃料噴射弁10は、燃料を気筒2内の燃焼室に直接噴射する。ただし、本発明に係る燃料噴射弁は、吸気ポート内に燃料を噴射するものであってもよい。燃料噴射弁10の構成については後述する。
【0030】
吸気ポート4は吸気通路8に接続されている。排気ポート5は排気通路9に接続されている。排気ポート5は排気通路9に接続されている。吸気通路8には、エアフローメータ12及びスロットル弁13が設けられている。エアフローメータ12は、内燃機関1の吸入空気量を検出する。スロットル弁13は、吸入空気の流路断面積を調整することで、内燃機関1の吸入空気量を制御する。
【0031】
また、吸気通路8におけるスロットル弁13より下流側には、ブローバイガス通路16
の一端が接続されている。ブローバイガス通路16の他端はクランクケースに接続されている。ブローバイガス通路16を通してクランクケースから吸気通路8にブローバイガスが還流される。ブローバイガス通路16には、PCVバルブ17が設けられている。PCVバルブ17は、吸気通路8に還流されるブローバイガスの流量を制御する。
【0032】
排気通路9には、空燃比センサ14が設けられている。空燃比センサ14は、内燃機関1から排出された排気の空燃比を検出する。空燃比センサ14より下流側の排気通路9には、排気浄化装置15が設けられている。排気浄化装置15は、三元触媒や酸化触媒等によって形成されており、排気通路9を流れる排気を浄化する。
【0033】
本実施例に係る内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU)20が併設されている。ECU20には、エアフローメータ12及び空燃比センサ14が電気的に接続されている。さらに、ECU20には、クランクポジションセンサ21及びアクセル開度センサ22が電気的に接続されている。クランクポジションセンサ21は、内燃機関1のクランク角を検出するセンサである。アクセル開度センサ22は、内燃機関1を搭載した車両のアクセル開度を検出するセンサである。そして、これらのセンサの出力信号がECU20に入力される。
【0034】
ECU20は、クランクポジションセンサ21の検出値に基づいて内燃機関1の機関回転数を算出する。また、ECU20は、アクセル開度センサ22の検出値に基づいて内燃機関1の機関負荷を算出する。
【0035】
また、ECU20には、燃料噴射弁10、点火プラグ11、及びスロットル弁13が電気的に接続されている。そして、これらの装置がECU20によって制御される。
【0036】
(燃料噴射弁の概略構成)
本実施例に係る燃料噴射弁の概略構成について、図2〜6に基づいて説明する。図2は、燃料噴射弁10全体の概略構成を示す図である。図3,4は、燃料噴射弁10の先端部の概略構成を示す図である。図5,6は、燃料噴射弁10から噴射される燃料噴霧の形状を示す図である。
【0037】
燃料噴射弁10は、燃料噴射弁本体(ボディ)30、ニードル32、ニードル駆動軸34、及びニードル駆動装置35を備えている。また、ボディ30の内部には燃料通路33が形成されている。ボディ30の先端部には燃料噴射孔31が形成されている。
【0038】
ニードル32は、ボディ30と同軸の円柱形状を有し、ボディ30の内部に軸方向(図2の上下方向)に摺動自在に収納されている。ニードル32には、ニードル駆動軸34が接続されている。ニードル駆動軸34はニードル駆動装置35に接続されている。ニードル駆動軸34を介し、ニードル駆動装置35によって、ニードル32の上下方向の摺動が制御される。ニードル駆動装置35は、ECU20によって制御される。
【0039】
燃料通路33には外部から燃料が供給される。そして、ニードル32がボディ30内部の底部から軸方向上方にリフトされると、燃料通路33と燃料噴射孔31との間が開通され、燃料噴射孔31から燃料が噴射される。一方、ニードル32がボディ30内部の底部に着座した状態となると、燃料通路33と燃料噴射孔31との間が遮断され、燃料噴射孔31からの燃料噴射が停止される。
【0040】
さらに、本実施例においては、ボディ30内部においてニードル32がその中心軸を中心に回転することが可能となっている。ニードル32の回転も、ニードル駆動軸34を介し、ニードル駆動装置35によって制御される。ニードル32の回転位置は、内燃機関1
の運転状態に応じて、後述する第一回転位置又は第二回転位置に制御される。
【0041】
図3は、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御された状態で、該ニードル32が軸方向上方にリフトされている時の燃料噴射弁10の先端部内部の様子を示している。図4は、ニードル32の回転位置が第二回転位置に制御された状態で、該ニードル32が軸方向上方にリフトされている時の燃料噴射弁10の先端部内部の様子を示している。図3,4において、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。また、図3,4において、(c)は、燃料噴射孔31とニードル32の先端に形成された突出部32aとの位置関係を示す底面図である。図3,4において、矢印は燃料の流れる方向を表している。
【0042】
また、図5は、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御された状態で燃料が噴射された時の燃料噴霧の形状を示している。図6は、ニードル32の回転位置が第二回転位置に制御された状態で燃料が噴射された時の燃料噴霧の形状を示している。図5,6において、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【0043】
本実施例においては、図3,4に示すように、燃料噴射孔31が燃料噴射弁10の軸方向に対して横方向に延びるスリット状に形成されている。また、該燃料噴射孔31は、燃料噴射弁10の先端部において、燃料噴射弁10の軸方向に対して所定の角度を有するように斜めに形成されており、斜め下方に向かって開口している。
【0044】
また、ニードル32の先端には、該ニードル32の軸方向に突出する突出部32aが形成されている。該突出部32aは、その断面形状がニードル32の軸方向の下方を頂点する三角形となるような、ニードル32の軸方向と斜めに交わる二つの平面を有している。該平面のニードル32の軸方向に対する傾斜角と、燃料噴射孔31の燃料噴射弁10の軸方向に対する傾斜角とは略同一である。
【0045】
そして、図3は、ニードル32の回転位置が、ニードル32の突出部32aにおける一方の平面の延長方向にスリット状の燃料噴射孔31が位置するような回転位置である第一回転位置に制御されている時の様子を示している。図4は、ニードル32の回転位置が、第一回転位置から90deg回転された回転位置であって、ニードル32の突出部32aの平面を延長した場合の平面とスリット状の燃料噴射孔31とが交わるような回転位置である第二回転位置に制御されている時の様子を示している。
【0046】
図3に示すように、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御されているときは、燃料が噴射される時に、ニードル32の突出部32aの平面によって燃料が燃料噴射孔31にガイドされる。そのため、燃料が燃料噴射孔31を通過する時の圧力損失は小さくなり、燃料の流量は多くなる。そして、図5に示すように、燃料噴霧の中心角は大きくなり、その長さが短くなる。
【0047】
一方、図4に示すように、ニードル32の回転位置が第二回転位置に制御されているときは、燃料が噴射される時に、ニードル32の突出部32aの平面によってガイドされた燃料が、燃料噴射孔31に供給され難くなる。そのため、燃料が燃料噴射孔31を通過する時の圧力損失は大きく、燃料の流量は少なくなる。その結果、噴射期間(即ち、ニードル32がボディ30内部の底部から上方にリフトされている期間)が同一であるときに該噴射期間中に噴射される燃料噴射量は、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御されているときに比べて少なくなる。そして、図6に示すように、燃料噴霧の中心角は小さくなり、その長さが長くなる。
【0048】
本実施例では、通常時には、内燃機関1の機関負荷が低負荷領域に属する時は、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御される。また、内燃機関1の機関負荷が中負荷又
は高負荷領域に属する時は、ニードル32の回転位置が第二回転位置に制御される。
【0049】
ただし、本発明に係る燃料噴射孔の形状及びニードルの先端部の形状は、上述したような形状に限られるものではない。これらの形状は、ニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状を変更することが可能なものであればよい。
【0050】
(故障診断)
ECU20は、上述したように、内燃機関1の運転状態に応じてニードル32の回転位置をニードル駆動装置35によって変更する。これにより、燃料噴射弁10から噴射される燃料噴射量及び燃料噴霧の形状を、内燃機関1の運転状態に適した所望の量又は形状に制御する。
【0051】
しかしながら、燃料噴射弁10においては、ニードル32にデポジットが付着することで、ニードル32の動作不良が発生する場合がある。ニードル32の動作不良が発生することで、該ニードル32の回転位置が所望の位置とならないと、燃料噴射量や燃料噴霧の形状が所望の量又は形状とならず、その結果、燃焼状態や排気特性の悪化を招く虞がある。このような不具合を解消するためには、ニードル32の動作不良が発生した際に、それを検出する必要がある。そこで、本実施例では、ニードル32の動作不良を検出するための故障診断を行う。
【0052】
該故障診断では、ニードル駆動装置35によるニードル32の第一回転位置又は第二回転位置の一方から他方への回転位置の変更を実施する。つまり、ECU20からニードル駆動装置35に対し、ニードル32の回転位置の変更指令を出す。そして、ニードル32の回転位置の変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射する。この時に、ニードル32の回転位置の変更の前後において、空燃比センサ14によって、内燃機関1から排出された排気の空燃比を検出し、該空燃比の変化量に基づいて、ニードル32の動作不良が発生したか否かを判定する。
【0053】
上述したように、ニードル32の回転位置が第二回転位置に制御されているときは、噴射期間を同一として燃料を噴射したときの燃料噴射量が、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御されているときに比べて少なくなる。そのため、ニードル32の回転位置の変更を実施した際に、ニードル32の回転位置が第一回転位置又は第二回転位置の一方から他方へ実際に変更されていれば、内燃機関1から排出される排気の空燃比は変化する。詳細には、ニードル32の回転位置が第一回転位置から第二回転位置に変更された場合、燃料噴射量が減少することで、排気の空燃比は上昇する。一方、ニードル32の回転位置が第一回転位置から第二回転位置に変更された場合、燃料噴射量が増加することで、排気の空燃比は低下する。
【0054】
しかしながら、ニードル32にデポジットが付着すること等に起因してニードル32の回転位置が固着していれば、上記のようなニードル32の回転位置の変更を実施しても、実際にはニードル32の回転位置が変化しない。従って、その変更の前後において排気の空燃比が変化しない。また、実際のニードル32の回転位置の変化量が不十分である場合は、その変更の前後における排気の空燃比の変化量は、ニードル32の回転位置が実際に第一回転位置又は第二回転位置の一方から他方に変化した場合に比べて小さくなる。そのため、上記のようなニードル32の回転位置の変更を実施し、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料噴射を実施したときの、その変更の前後における排気の空燃比の変化量に基づいて、ニードル32の動作不良が発生したか否かを判定することができる。
【0055】
以下、本実施例に係るニードルの動作不良を検出するための故障診断のフローについて
図7に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU20に予め記憶されており、ECU20によって所定の間隔で繰り返し実行される。
【0056】
本フローでは、先ずステップS101において、故障診断の実行条件が成立したか否かが判定される。故障診断の実行条件は実験等に基づき予め定められている。該故障診断の実行条件としては、本故障診断の前回の実行から所定の故障診断実行期間が経過していることや、内燃機関1の運転状態が略一定の状態が所定期間継続していること等を例示することができる。ステップS101において否定判定された場合、本フローの実行は一旦終了される。
【0057】
ステップS101において肯定判定された場合、次に、ステップS102において、燃料噴射弁10から燃料を噴射するときの噴射期間が固定される。ここで、噴射期間は、故障診断の実行条件が成立した時の噴射期間に固定されてもよく、或いは故障診断のために予め定められた噴射期間に固定されてもよい。
【0058】
次に、ステップS103において、現時点、即ちニードル32の回転位置の変更が実施される前の排気の空燃比Raf1が読み込まれる。該空燃比Raf1は空燃比センサ14によって検出された値である。
【0059】
次に、ステップS104において、ニードル32の回転位置の変更が実施される。つまり、ECU20からニードル駆動装置35に対し、現時点のニードル32の回転位置が第一回転位置であれば該回転位置を第二回転位置に変更するよう指令が出され、現時点のニードル32の回転位置が第二回転位置であれば該回転位置を第二回転位置に変更するよう指令が出される。
【0060】
次に、ステップS105において、現時点、即ちニードル32の回転位置の変更が実施された後(ニードル32の回転位置が実際に変化していれば、その変化が完了した後)の排気の空燃比Raf2が読み込まれる。該空燃比Raf2は、ニードル32の回転位置の変更が実施される前の排気の空燃比Raf1が検出された時と噴射期間を同一として燃料噴射が実行されたときの空燃比である。該空燃比Raf2は空燃比センサ14によって検出された値である。
【0061】
次に、ステップS106において、ステップS103で読み込まれた空燃比Raf1とステップS105で読み込まれた空燃比Raf2との差(即ち、ニードル32の回転位置の変更の前後における排気の空燃比の変化量)ΔRafが第一所定判定値ΔRaf1以下であるか否かが判別される。第一所定判定値ΔRaf1は、ニードル32の動作不良が発生していると判断できる閾値である。該第一所定判定値ΔRaf1は、実験等に基づいて予め定められた値である。該第一所定判定値ΔRaf1を、ステップS102で固定された噴射期間や内燃機関1の運転状態に基づいて定めてもよい。
【0062】
ステップS106において肯定判定された場合、実際にはニードル32の回転位置が変化していない、或いは、実際のニードル32の回転位置の変化量が不十分であると判断できる。この場合、次に、ステップS107において、ニードル32の動作不良が発生したと判定される。そして、ニードル32の動作不良が発生したと判定されと、内燃機関1を搭載した車両の運転者等への故障発生の通知が行われる。一方、ステップS106において否定判定された場合、実際のニードル32の回転位置が、指令した回転位置に変化していると判断できる。この場合、次に、ステップS108において、ニードル32の動作は正常と判定される。
【0063】
尚、燃料噴射弁の故障診断を行うべくニードル32の回転位置を変更する際に目標とす
る回転位置は、上述したような第一回転位置又は第二回転位置に限られるものではない。該目標とする回転位置は、ニードル32の回転位置の変更を実施することで該ニードル32の回転位置が実際に目標とする回転位置に変化した場合に、その変更の前後で、内燃機関1から排出される排気の空燃比に、ニードル32の回転位置が変化することで生じたと判断できる程度の差が生じる回転位置であればよい。
【0064】
[実施例2]
本実施例に係る内燃機関およびその吸排気系の概略構成は実施例1と同様である。また、本実施例に係る燃料噴射弁の概略構成も実施例1と同様である。また、本実施例においても、実施例1と同様の、ニードルの動作不良を検出するための故障診断が行われる。
【0065】
(故障診断)
本実施例では、ニードルの動作不良を検出するための故障診断に加え、リッチ噴射故障を検出するための故障診断が行われる。リッチ噴射故障とは、燃料噴射弁10からの燃料噴射量が、内燃機関1の運転状態に応じて定められた目標噴射量よりも多くなる燃料噴射系の故障である。尚、燃料噴射系には、燃料噴射弁10のみならず、該燃料噴射弁10に燃料を供給するフューエルパイプや、燃料の圧力を調整するレギュレータ等も含まれる。
【0066】
リッチ噴射故障が発生した場合、内燃機関1から排出される排気の空燃比が正常時に比べて低くなる。そこで、本実施例リッチ噴射故障を検出するための故障診断では、内燃機関1の運転状態に基づいて推定される排気の基準空燃比と、空燃比センサ14によって検出された空燃比とを比較することで、リッチ噴射故障が発生したか否かを判定する。
【0067】
以下、本実施例に係るリッチ噴射故障を検出するための故障診断のフローについて図8に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU20に予め記憶されており、ECU20によって所定の間隔で繰り返し実行される。
【0068】
本フローでは、先ずステップS201において、故障診断の実行条件が成立したか否かが判定される。故障診断の実行条件は実験等に基づき予め定められている。該故障診断の実行条件としては、本故障診断の前回の実行から所定の故障診断実行期間が経過していることや、内燃機関1の運転状態が略一定の状態が所定期間継続していること等を例示することができる。ステップS201において否定判定された場合、本フローの実行は一旦終了される。
【0069】
ステップS201において肯定判定された場合、次に、ステップS202において、内燃機関1の運転状態に基づいて排気の基準空燃比Raf_baseが算出される。該基準空燃比Raf_baseは、燃料噴射弁10から目標噴射量の燃料が噴射されていると仮定した場合の排気の空燃比である。
【0070】
次に、ステップS203において、空燃比センサ14によって検出された排気の空燃比(以下、実空燃比と称する)Raf_deが読み込まれる。実空燃比Raf_deは、実際の排気の空燃比である。
【0071】
次に、ステップS204において、ステップS202で算出された基準空燃比Raf_baseからステップS203読み込まれた実空燃比Raf_deを減算した値が所定値α以上であるか否か、即ち、実空燃比Raf_deが基準空燃比Raf_baseよりも所定値α以上低いか否かが判別される。ここで、所定値αは、リッチ噴射故障が発生していると判断できる閾値である。
【0072】
ステップS204において肯定判定された場合、次に、ステップS205において、リ
ッチ噴射故障が発生している判定される。一方、ステップS204において否定判定された場合、次に、ステップS206において、燃料噴射系は正常であると判定される。
【0073】
(誤判定の検出)
ところで、本実施例では、内燃機関1において、クランクケース内のブローバイガスがブローバイガス通路16を通して吸気通路8に還流されている。ここで、例えば、内燃機関1の温度が上昇し、クランクケース内のオイルに含まれる燃料の揮発量が増加した場合等、ブローバイガスの燃料濃度が上昇する場合がある。
【0074】
ブローバイガスの燃料濃度が上昇すると、燃料噴射弁10からの燃料噴射量が増加しなくても、内燃機関1から排出される排気の空燃比が低下する。そのため、ブローバイガスの燃料濃度の上昇に起因して、実空燃比Raf_deが基準空燃比Raf_baseよりも所定値α以上低くなる場合がある。このような場合に、上述したような、リッチ噴射故障を検出するための故障診断を実行すると、実際には燃料噴射系が正常であるにも関わらず、リッチ噴射故障が発生したと誤判定されることとなる。
【0075】
そこで、本実施例においては、上述した故障診断によってリッチ噴射故障が発生したと判定された場合、該リッチ噴射故障発生判定が誤判定であるか否かの判定が行われる。本実施例に係るリッチ噴射故障発生判定が誤判定であるか否かの判定は、ニードル32の第一回転位置又は第二回転位置の一方から他方への回転位置の変更を実施し、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射したときの、ニードル32の回転位置の変更の前後における、内燃機関1から排出された排気の空燃比の変化量に基づいて行われる。また、該判定は、ニードル32の動作が正常であることを前提として行われる。
【0076】
実際にリッチ噴射故障が発生している場合、燃料噴射量が正常時よりも増加しているため、ニードル32の回転位置が第一回転位置に制御されている時と第二回転位置に制御されている時とにおける、噴射期間を同一として燃料を噴射したときの燃料噴射量の差が大きくなる。従って、ニードル32の回転位置の変更の前後における排気の空燃比の変化量が正常時に比べて大きくなる。一方、ブローバイガスの燃料濃度が上昇することにより、リッチ噴射故障が発生していると誤判定した場合は、実際には燃料噴射量は正常な状態であるため、ニードル32の回転位置の変更の前後における排気の空燃比の変化量が正常時に大きくなることはない。そのため、ニードル32の回転位置の変更の前後における排気の空燃比の変化量に基づいて、リッチ噴射故障発生判定が誤判定であるか否かを判定することができる。
【0077】
以下、本実施例に係る、リッチ噴射故障発生判定が誤判定であるか否かの判定のフローについて図9に示すフローチャートに基づいて説明する。本フローは、ECU20に予め記憶されており、ECU20によって所定の間隔で繰り返し実行される。尚、本フローにおけるステップS102〜S108の処理は、図7に示すフローにおけるステップS102〜S108の処理と同様である。そのため、これらのステップの処理についての説明は省略する。
【0078】
本フローでは、先ずステップS301において、上述した故障診断によりリッチ噴射故障発生判定がなされたか否かが判定される。ステップS301において否定判定された場合、本フローに実行は一旦終了される。一方、ステップS301において肯定判定された場合、ステップS102からステップS106の処理が実行される。そして、ステップS106において否定判定され、ステップS108においてニードル32の動作は正常と判定された場合、次に、ステップS309の処理が実行される。
【0079】
ステップS309では、ステップS103で読み込まれた空燃比Raf1とステップS
105で読み込まれた空燃比Raf2との差ΔRafが第二所定判定値ΔRaf2より小さいか否かが判別される。第二所定判定値ΔRaf2は、リッチ噴射故障が発生していると判断できる閾値である。該第二所定判定値ΔRaf2は、実験等に基づいて予め定められた値である。該第二所定判定値ΔRaf2を、ステップS102で固定された噴射期間や内燃機関1の運転状態に基づいて定めてもよい。
【0080】
ステップS309において肯定判定された場合、リッチ噴射故障は発生していないと判断できる。この場合、次に、ステップS310において、上述した故障診断によるリッチ噴射故障発生判定は誤判定であると判定される。一方、ステップS309において否定判定された場合、リッチ噴射故障が発生していると判断できる。この場合、次に、ステップS311において上述した故障診断によるリッチ噴射故障発生判定は正しいと判定される。
【0081】
本実施例によれば、リッチ噴射故障発生の誤判定を抑制することができる。従って、燃料噴射系の故障検出の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1・・・内燃機関
2・・・気筒
6・・・吸気弁
7・・・排気弁
8・・・吸気通路
9・・・排気通路
10・・燃料噴射弁
14・・空燃比センサ
15・・排気浄化装置
16・・ブローバイガス通路
17・・PCVバルブ
20・・ECU
21・・クランクポジションセンサ
22・・アクセル開度センサ
30・・燃料噴射弁本体(ボディ)
31・・燃料噴射孔
32・・ニードル
32a・・突出部
33・・燃料通路
34・・ニードル駆動軸
35・・ニードル駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に設けられた燃料噴射弁であり、
燃料噴射弁本体内にその軸方向に摺動自在に収納されたニードルを、その中心軸を中心に回転させるニードル回転手段を有し、
前記ニードル回転手段によってニードルの回転位置を変更することで、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状を変更することが可能な燃料噴射弁の故障診断を行う故障診断装置であって、
内燃機関から排出された排気の空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記ニードル回転手段による前記ニードルの回転位置の変更を実施し、その変更の前後において噴射期間を同一として燃料を噴射したときの、前記空燃比検出手段によって検出される排気の空燃比の変化量に基づいて、前記ニードルの動作不良が発生したか否かを判定するニードル故障判定手段と、
を備える燃料噴射弁の故障診断装置。
【請求項2】
前記ニードル故障判定手段が、前記ニードルが第一回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比と、前記ニードルが、同一の噴射期間に噴射される燃料噴射量及び噴射された燃料噴霧の形状が前記第一回転位置とは異なる第二回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比との差が、所定判定値以下のときは、前記ニードルの動作不良が発生したと判定する請求項1に記載の燃料噴射弁の故障診断装置。
【請求項3】
前記所定判定値を第一所定判定値とし、
前記空燃比検出手段によって検出される排気の空燃比が、内燃機関の運転状態に基づいて推定される基準空燃比よりも所定値以上低い場合、前記燃料噴射弁からの燃料噴射量が目標噴射量よりも多くなる燃料噴射系の故障であるリッチ噴射故障が発生したと判定するリッチ噴射故障判定手段をさらに備え、
前記リッチ噴射故障判定手段によってリッチ噴射故障が発生したと判定されたときに、前記ニードルが前記第一回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比と、前記ニードルが前記第二回転位置に制御されているべき時に燃料を噴射したときの排気の空燃比との差が、前記第一所定判定値より大きく、且つ、前記第一所定判定値より大きい第二所定判定値より小さい場合は、前記リッチ噴射故障判定手段によるリッチ噴射故障が発生したとの判定は誤判定であると判断する請求項2に記載の燃料噴射弁の故障診断装置。
【請求項4】
前記燃料噴射弁において、
先端部に形成された燃料噴射孔がスリット状に形成されており、
前記ニードルの先端に、該ニードルの軸方向に突出し、且つ該ニードルの軸方向と斜めに交わる平面或いは該ニードルの軸方向と平行に延びる平面を有する突出部が形成されており、
前記ニードル回転手段によって、前記ニードルの回転位置が、該ニードルの前記突出部における平面の延長方向に前記スリット状の燃料噴射孔が位置するような回転位置に制御されているときは、燃料が噴射される時に、前記ニードルの突出部の平面によって燃料が前記燃料噴射孔にガイドされる請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料噴射弁の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255377(P2012−255377A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128646(P2011−128646)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】