説明

燃料噴霧ノズル

【課題】ターンダウン比で10〜20倍を実現し且つ燃料を少量噴射する時でも均一で微小な噴霧を実現し得る燃料噴霧ノズルを提供する。
【解決手段】霧化エア4’を流すエア流路17を内部に備えて筒状を成す噴霧ブロック18と、該噴霧ブロック18の内部のエア流路17の途中にデューティー制御により流量を調整して燃料19を噴射する燃料噴射弁20とを備え、前記噴霧ブロック18の基端側から霧化エア4’を流速9m/s以上で導入して先端側の噴射口21から吹き出させるようにして燃料噴霧ノズル16を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴霧ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気管の途中にパティキュレートフィルタを装備し、該パティキュレートフィルタを通して排気ガス中に含まれるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するようにしており、この種のパティキュレートフィルタには、PtやPd等を活性種とする酸化触媒を一体的に担持させ、捕集済みパティキュレートを極力低い排気温度から自己燃焼させるようにしている。
【0003】
ただし、排気温度の低い運転領域では、パティキュレートの処理量よりも捕集量が上まわってしまうので、このような低い排気温度での運転状態が続くと、パティキュレートフィルタの再生が良好に進まずに該パティキュレートフィルタが過捕集状態に陥る虞れがある。
【0004】
このため、パティキュレートフィルタの前段に排気ガス昇温用燃焼器を設け、該排気ガス昇温用燃焼器によるバーナ燃焼により生じた排気ガスを昇温し、その高温の排気ガスをパティキュレートフィルタに導入することによりパティキュレートフィルタの触媒床温度を積極的に上げて捕集済みパティキュレートを燃やし尽くし、パティキュレートフィルタの再生化を図ることが従来より提案されている。
【0005】
尚、このようにバーナを用いてパティキュレートフィルタ等を昇温する技術に関連する先行技術文献情報としては、例えば、下記の特許文献1や特許文献2等が既に存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−86845号公報
【特許文献2】特開平6−167212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この種の排気ガス昇温用燃焼器の燃料噴霧ノズルは、ターンダウン比(最小と最大の燃料流量の比)が10〜20倍必要であり、しかも、均一な微小粒子噴霧が実現できなければならないが、既存のバーナやガスタービン等における燃料噴霧ノズルは、圧力調整による燃料流量調整の機構を採用しているため、ターンダウン比が10倍未満であり、また、ターンダウン比10〜20倍を実現するべくデューティー制御(PWM制御)による燃料流量調整の機構を採用しているものでは、均一で微小な噴霧が得られないという問題があった。
【0008】
即ち、燃焼器によりパティキュレートフィルタの再生を図る場合、該パティキュレートフィルタの床温度を約600℃程度に保持する必要があるが、ディーゼルエンジンの運転状態(回転数や負荷)に応じ排気ガスの流量や温度が時々刻々と変化するため、ターンダウン比が10〜20倍程度ないと、ディーゼルエンジンの運転状態に燃焼器の燃焼状態を追従させてパティキュレートフィルタの床温度を約600℃程度に保持することが難しく、より細かく且つ精度良く燃料流量を制御する必要があった。
【0009】
一方、デューティー制御とは、燃料を一定圧力に保持した上でソレノイドバルブを一定周期で駆動させ、その周期の中でソレノイドバルブを開閉する時間の比率で燃料流量を調整する制御であり、このような制御を採用すれば、図4にグラフで示す如く、圧力制御による燃料流量調整に比べてターンダウン比を大幅に増大することができるが、特に燃料を少量噴射するような場合に燃料噴霧の粒径が粗くなって微小な噴霧が得られ難くなり、その燃焼性や着火性が悪くなって燃費の悪化や白煙の発生を招く虞れがあった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ターンダウン比で10〜20倍を実現し且つ燃料を少量噴射する時でも均一で微小な噴霧を実現し得る燃料噴霧ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、霧化エアを流すエア流路を内部に備えて筒状を成す噴霧ブロックと、該噴霧ブロックの内部のエア流路の途中にデューティー制御により流量を調整して燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、前記噴霧ブロックの基端側から霧化エアを流速9m/s以上で導入して先端側から吹き出させるように構成したことを特徴とする燃料噴霧ノズル、に係るものである。
【0012】
而して、このようにすれば、燃料噴射弁から噴射された燃料のうちの微小な粒子が噴射後に直ちに霧化エアの流れに乗って噴霧ブロックの先端側から吹き出される一方、燃料噴射弁から噴射された燃料の粒子のうち大きな粒子はエア流路の内壁に衝突して分散することで微粒化され、該エア流路の内壁を伝って噴霧ブロックの先端側まで導かれた大きな粒子も該噴霧ブロックの先端側の噴射口の縁で霧化エアの流れに引きちぎられるようにして飛散することで微粒化される。
【0013】
このため、燃料噴射弁から噴射される燃料の流量をデューティー制御により調整し、ターンダウン比を10〜20倍として燃料噴射制御を行い、燃料の噴射量を絞って少量噴射を実施した際に、均一で微小な噴霧が難しくなって平均粒径が大きくなってきても、エア流路の内壁に衝突して分散する作用と、噴霧ブロックの先端側の噴射口の縁で引きちぎられるようにして飛散する作用とにより燃料の粒子の微粒化が促進されるので、均一で微小な噴霧を実現することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、燃焼エアの少なくとも一部を霧化エアとして導き得るように構成することが好ましく、このようにすれば、霧化エアの新たな供給源を確保しなくても燃焼エアの一部を流用することで賄うことが可能となり、実施コストの大幅な削減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の燃料噴霧ノズルによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、デューティー制御の採用によりターンダウン比で10〜20倍を実現することができるので、より細かく且つ精度良く燃料流量を制御することができ、しかも、燃料を少量噴射する時でも均一で微小な噴霧を実現することができるので、その燃焼性や着火性を著しく向上して燃費の悪化や白煙の発生を未然に防止することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、燃焼エアの少なくとも一部を霧化エアとして導き得るように構成しているので、霧化エアの新たな供給源を確保しなくても燃焼エアの一部を流用することで賄うことができ、実施コストの大幅な削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】図1の燃焼器に備えられる燃料噴霧ノズルの詳細を示す断面図である。
【図3】霧化エアのエア流速と平均粒径との関係を示すグラフである。
【図4】燃料の噴射量と平均粒径との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1中における符号1はターボチャージャ2を装備したディーゼルエンジンを示しており、エアクリーナ3から導かれた吸気4が吸気管5を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへと送られ、該コンプレッサ2aで加圧された吸気4がインタークーラ6へと送られて冷却され、該インタークーラ6から更に吸気マニホールド7へと吸気4が導かれてディーゼルエンジン1の各気筒8(図1では直列6気筒の場合を例示している)に分配されるようになっており、また、前記ディーゼルエンジン1の各気筒8から排出された排気ガス9は、排気マニホールド10を介しターボチャージャ2のタービン2bへと送られ、該タービン2bを駆動した後に排気管11へと送り出されるようになっている。
【0021】
そして、前記排気管11の途中に、酸化触媒を一体的に担持したパティキュレートフィルタ12(排気浄化材)がマフラ13に抱持されて装備されていると共に、該パティキュレートフィルタ12の前段には、適量の燃料を噴射して着火燃焼せしめる燃焼器14が装備されており、該燃焼器14には、適量の燃料を噴射する燃料噴霧ノズルと、その噴射口から噴射された燃料に点火するための点火プラグとが備えられている。
【0022】
尚、前記燃焼器14に対しては、ターボチャージャ2のコンプレッサ2aの下流から分岐した燃焼用空気供給管15が接続されており、該燃焼用空気供給管15により前記コンプレッサ2aで過給された吸気4の一部を抜き出して、燃焼エアを兼ねた霧化エアとして導き得るようにしてある。
【0023】
図2は前記燃焼器14に備えられている燃料噴霧ノズル16の詳細を示すもので、前記コンプレッサ2aで過給された吸気4の一部を霧化エア4’として流すエア流路17を内部に備えて筒状を成す噴霧ブロック18と、該噴霧ブロック18の内部のエア流路17の途中にデューティー制御により流量を調整して燃料19を噴射する燃料噴射弁20とを備え、前記噴霧ブロック18の基端側から霧化エア4’を流速9m/s以上で導入して先端側の噴射口21から吹き出させ得るよう前記エア流路17の流路断面積を適切に設定している。
【0024】
而して、このように燃料噴霧ノズル16を構成すれば、燃料噴射弁20から噴射された燃料19のうちの微小な粒子が噴射後に直ちに霧化エア4’の流れに乗って噴霧ブロック18の先端側から吹き出される一方、燃料噴射弁20から噴射された燃料19の粒子のうち大きな粒子はエア流路17の内壁に衝突して分散することで微粒化され、該エア流路17の内壁を伝って噴霧ブロック18の先端側まで導かれた大きな粒子も該噴霧ブロック18の先端側の噴射口21の縁で霧化エア4’の流れに引きちぎられるようにして飛散することで微粒化される。
【0025】
このため、燃料噴射弁20から噴射される燃料19の流量をデューティー制御により調整し、ターンダウン比を10〜20倍として燃料噴射制御を行い、燃料19の噴射量を絞って少量噴射を実施した際に、均一で微小な噴霧が難しくなって平均粒径が大きくなってきても、エア流路17の内壁に衝突して分散する作用と、噴霧ブロック18の先端側の噴射口21の縁で引きちぎられるようにして飛散する作用とにより燃料19の粒子の微粒化が促進されるので、均一で微小な噴霧を実現することが可能となる。
【0026】
事実、本発明者による実験結果によれば、図3にグラフで示す如く、霧化エア4’が無い場合(図3のグラフ中におけるエア流速0m/s)に平均粒径が100μm近くになるほど燃料流量を絞り込んだ条件(図4参照)においても、霧化エア4’を流速9m/s以上とすれば、噴霧ブロック18の噴射口21から噴霧される燃料19の平均粒径が40μmを下まわるような十分に小さな粒径まで低下できることが確認されている。
【0027】
従って、上記形態例によれば、デューティー制御の採用によりターンダウン比で10〜20倍を実現することができるので、より細かく且つ精度良く燃料流量を制御することができ、ディーゼルエンジン1の運転状態(回転数や負荷)に応じ排気ガス9の流量や温度が時々刻々と変化しても、該ディーゼルエンジン1の運転状態に燃焼器14の燃焼状態を追従させてパティキュレートフィルタ12の床温度を約600℃程度に確実に保持することができ、しかも、燃料19を少量噴射する時でも均一で微小な噴霧を実現することができるので、その燃焼性や着火性を著しく向上して燃費の悪化や白煙の発生を未然に防止することができる。
【0028】
また、特に本形態例においては、コンプレッサ2aで過給された吸気4の一部を燃焼エアを兼ねた霧化エア4’として導き得るように構成しているので、霧化エア4’の新たな供給源を確保しなくても燃焼エアの一部を流用することで賄うことができ、実施コストの大幅な削減を図ることができる。
【0029】
尚、本発明の燃料噴霧ノズルは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、パティキュレートフィルタを再生するための燃焼器に備えられる燃料噴霧ノズルに限定されないこと、また、霧化エアは必ずしもコンプレッサで過給された吸気の一部を導くことに限定されず、専用のブロワを備えて導くようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
4’ 霧化エア
16 燃料噴霧ノズル
17 エア流路
18 噴霧ブロック
19 燃料
20 燃料噴射弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化エアを流すエア流路を内部に備えて筒状を成す噴霧ブロックと、該噴霧ブロックの内部のエア流路の途中にデューティー制御により流量を調整して燃料を噴射する燃料噴射弁とを備え、前記噴霧ブロックの基端側から霧化エアを流速9m/s以上で導入して先端側から吹き出させるように構成したことを特徴とする燃料噴霧ノズル。
【請求項2】
燃焼エアの少なくとも一部を霧化エアとして導き得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載の燃料噴霧ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236867(P2011−236867A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111011(P2010−111011)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】