説明

燃料棒の漏洩検査方法

【課題】燃料集合体のうち漏洩が発生している燃料棒を迅速に検出・特定する。
【解決手段】水槽20の水21内にキャン30を配置し、キャン30内に燃料集合体10を収納する。キャン30内の水を、循環パイプ40を介して循環流通させる。加熱装置50の加熱部53により、行ごと、及び、列ごとに、燃料棒1のプレナム部を加熱していく。このとき、サンプリングプローブ41によりサンプリングした水について、核分裂生成物質の有無を検査する。核分裂生成物質が検出された行と列とが交差する位置にある燃料棒に漏洩が発生していると特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料棒の漏洩検査方法に関し、燃料集合体を構成する多数本の燃料棒の中で、漏洩が発生している燃料棒を迅速に検出・特定することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントでは、原子炉容器内に多数個の燃料集合体を装荷している。各燃料集合体は、例えば17行17列に配置した289本の燃料棒を1組として構成されている。
このような原子力発電プラントにおける燃料棒の燃料被覆管にピンホールなどの微細な貫通孔が発生すると、一次冷却水中に核分裂生成物が漏洩してしまう。このような漏洩事象が発生した場合には、漏洩が発生した燃料棒の検出・特定が行われる。
【0003】
ここで、漏洩事象発生時における従来の検査プロセスの一例を説明する。
(1)原子炉の運転中において一次冷却水中の放射能レベルを常時検査しておき、検査した放射能レベルが規定値以上になったら、漏洩事象が発生したと判断する。
(2)漏洩事象が発生したと判断したら、原子炉の運転を停止する。
(3)原子炉の運転を停止後、原子炉容器の上部蓋を開放し、原子炉容器内に装荷されている燃料集合体を1個づつ使用済燃料ピットに取り出し、取り出した燃料集合体について「シッピング検査」をして、当該燃料集合体に漏洩が発生しているか否かを検査する。即ち、燃料集合体を単位として、漏洩が発生しているか否かを検査する。
「シッピング検査」は、周知技術であるが、その詳細については後述する。
(4)シッピング検査により、漏洩が発生している燃料集合体を特定できたら、当該燃料集合体のうち、どの燃料棒で漏洩が発生しているかを、「超音波検査法」により検査して、漏洩が発生している燃料棒を特定する。
「超音波検査法」による検査は、周知技術であるが、その詳細については後述する。
【0004】
上記の「シッピング検査」について説明をする。
シッピング検査をするには、原子炉容器内から取り出した燃料集合体を、使用済燃料ピット(水槽)に貯留されている水の中に浸漬すると共に、当該燃料集合体をシッピングキャン(容器)で覆う。そうすると、燃料集合体は燃料ペレットの崩壊熱により自然発熱し、しかも、燃料集合体をシッピングキャンにより覆う(囲む)ことにより燃料集合体の周囲での水の対流が阻止されるとともに断熱効果が発揮されることとも相俟って、燃料集合体の温度が上昇する。
燃料集合体の温度が上昇すると燃料棒の内部圧力が上昇し、燃料棒の燃料被覆管にピンホール等があると、燃料棒の内部から核分裂生成物(例えば137Csなど)が水中に漏洩してくる。
シッピングキャン内の水をサンプリングし、サンプリングした水の放射能レベルを、放射能検出器(シンチレーションセンサや半導体放射線センサを用いた放射能検出器)により検査する。検査して得た放射能レベルが所定レベルを越えていた場合には、当該燃料集合体において漏洩が発生していると判断する。
【0005】
上記の「超音波検査法」による検査を、検査概念図である図7を参照して説明する。
超音波検査法による検査では、シッピング検査により漏洩が発生していると特定された燃料集合体について、当該燃料集合体を構成する燃料棒を1本ごとに検査する。
具体的には、図7に示すように、燃料棒1の下部において、検査する1本の燃料棒1を間に挟んで、超音波発信器01と超音波受信器02を対向配置しつつ走査移動していく。超音波受信器02からは、受信した超音波の大きさに対応する信号レベルとなっている、検出信号sが出力される。
【0006】
検査した燃料棒1に漏洩が発生していない場合にはその燃料棒1の燃料被覆管1aの内部には水が存在せず、燃料被覆管1aにピンホールなどがあるとピンホールを介して燃料被覆管1aの内部に浸入した水は流下して燃料被覆管1aの下部にたまる。
検出信号sの信号レベルは、燃料被覆管1aの内部に水が存在する場合と水が存在していない場合とで、異なるものとなるため、検出信号sの信号レベルを検査することにより、水の有無つまりピンホール等の有無(漏洩の有無)を検査することができる。
このような検査を、漏洩が発生していると特定された燃料集合体を構成する燃料棒について、1本づつ順次実行することにより、漏洩が発生している燃料棒を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−75095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで上記従来技術では、漏洩が発生している燃料棒を特定するのに多大の時間がかかる場合がある。これは、最初にシッピング検査を行って、多数の燃料集合体の中で漏洩が発生している燃料集合体を特定し、その後、漏洩が発生している当該燃料集合体について、燃料棒を1本づつ超音波検査法により検査しているからである。
【0009】
更に上記従来技術で用いていた超音波検査法では、燃料被覆管にピンホールなどがあっても、燃料棒に漏洩が発生していることを検出できない場合がある。
これは、燃料棒下部にたまる水の量が少ない場合に、超音波信号レベルに有意な差が生じないことがあるためである。
【0010】
本発明は上記従来技術に鑑み、燃料集合体の中で漏洩が発生している燃料棒を迅速かつ正確に特定して検出することができる燃料棒の漏洩検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の構成は、複数の燃料棒を複数行・複数列に配置してなる燃料集合体のうち、漏洩が発生している燃料棒を検出・特定する燃料棒の漏洩検査方法において、
水を貯留した水槽内にキャンを配置し、
前記キャンの内部に前記燃料集合体を収納して、前記燃料棒が垂直方向に沿い立ち且つ燃料棒のプレナム部が上側位置に配置される状態にし、
前記キャン内の水を前記水槽内の水と入れ替えてから、前記キャン内の上部空間から水を吸引し吸引した水を冷却してから前記キャン内の下部空間に供給することによりキャン内の水を循環流通させつつ、複数の行のうちの一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱しているときに、前記キャンから吸引した水に核分裂生成物が含有されているか否かを検査する動作を、各行に沿い並んだ燃料棒について行ごとに行い、
前記キャン内の水を前記水槽内の水と入れ替えてから、前記キャン内の上部空間から水を吸引し吸引した水を冷却してから前記キャン内の下部空間に供給することによりキャン内の水を循環流通させつつ、複数の列のうちの一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱しているときに、前記キャンから吸引した水に核分裂生成物が含有されているか否かを検査する動作を、各列に沿い並んだ燃料棒について列ごとに行い、
核分裂生成物が含有されていると検査された行と、核分裂生成物が含有されていると検査された列とが交差する位置に配置された燃料棒に漏洩が発生していると特定することを特徴とする。
【0012】
また本発明の構成は、一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれるすべての燃料棒を一緒・同時に加熱し、一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれるすべての燃料棒を一緒・同時に加熱することを特徴とする。
【0013】
また本発明の構成は、一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれる複数の燃料棒を時系列的にずらして順次加熱し、一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれる複数の燃料棒を時系列的にずらして順次加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料集合体を構成する多数本の燃料棒の中で、漏洩が発生している燃料棒を迅速に検出・特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】燃料棒の漏洩検査方法を実施する検査システムを示す構成図。
【図2】燃料集合体及び加熱装置を示す斜視図。
【図3】燃料集合体の燃料の配列状態を示す平面図。
【図4】燃料棒の加熱状態を示す構成図。
【図5】燃料棒の加熱状態を示す構成図。
【図6】燃料棒の加熱状態を示す構成図。
【図7】従来の超音波検査法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は燃料棒の漏洩検査方法を実施する検査システムを示し、図2は検査対象物である燃料集合体と、検査システムに組み込まれた加熱装置を示す。
【0018】
漏洩検査方法を説明するに先立ち、検査対象物である燃料集合体10について説明する。
図2に示すように、燃料集合体10は、例えば17行17列に配置した289本の燃料棒1を1組として構成されている。各燃料棒1は、垂直方向に伸びる状態で配置されており、相互間に隙間ができ且つ平行になるように、図示しない支持格子に組み付けられている。
燃料集合体10を水平面的に見たとき、換言すると上面からみたときには、図3に示すように、A,B,C,D・・・O,P,Qの17行と、a,b,c,d・・・o,p,qの17列とが交差する格子状の289個の配置位置に、燃料棒1が配置されている。
【0019】
図1に戻り、燃料棒の漏洩検査システムを説明する。
使用済燃料ピット(水槽)20内には水21が貯留されている。
有底で上面が開口した筒状のキャン30と、このキャン30の上面を塞ぐキャン蓋31は、使用済燃料ピット20の水21内に配置されている。キャン30とキャン蓋31との間には、シール機構32が介装される。
【0020】
循環パイプ40は、その一端40aがキャン蓋31を介して、キャン30内の上部空間に連通しており、その他端40bがキャン30内の下部空間に連通している。循環パイプ40には、混合器41と冷却熱交換器42とポンプ43が、一端40a側から他端40b側に向かって順に配置されている。
循環パイプ40のうち、混合器41と冷却熱交換器42の間には、サンプリングプローブ44が接続されている。
【0021】
加熱装置50は、端子盤51と、この端子盤51から突出すると共に鉛直面内で広がる18枚のプレート52と、各プレート52の先端部に備えた加熱部53とを有している。
各プレート52は、相互間隔を開けつつ平行に配置されており、プレート52のピッチ間隔は、燃料集合体10の燃料棒1のピッチ間隔と等しくなっている。
端子盤51から、図示しない配線を介して加熱部53に通電することにより、加熱部53が発熱する。なお、加熱部53としては、抵抗発熱型の電気ヒーター、高周波加熱ヒーター、レーザー加熱ヒーターなど、各種の加熱部材を使用することができる。
【0022】
加熱装置50は、そのプレート52がキャン30の上部に挿通された状態で、水平方向(図2ではα方向)に沿い、図示しない移動機構により移動することができる。このとき、プレート52とキャン30との間にはシール機構54が配置されて、シールがされるようになっている。
また加熱装置50は、水平面内で見て図1の配置位置から90°旋回した位置に配置されて、図2のβ方向に沿い、図示しない移動機構により移動することもできる。
【0023】
原子炉内から取り出した燃料集合体10の漏洩検査をするには、キャン30からキャン蓋31を外しキャン30の上面を開放した状態にする。そして、燃料集合体10をキャン30の内部に収納して、水21に浸漬する。このとき、燃料集合体10の燃料棒1が垂直方向に沿い立ち、しかも燃料棒1のプレナム部(燃料棒の上部位置であって、燃料被覆管の内部に燃料ペレットが挿入されていない部分)が上側位置に配置されるように、燃料集合体10を立設しておく。
この状態でキャン蓋31によりキャン30の上面を塞ぐ。
【0024】
加熱装置50の移動位置を調整して、図4に示すように、A行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を、各プレート52の加熱部53で挟む(なお、燃料棒1と加熱部53との間には隙間をとっている)。この状態で加熱部53に通電して加熱部53を発熱させて、A行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を外部から積極的に加熱する。
【0025】
A行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部に対して加熱部53により外部加熱を開始したら、ポンプ43を起動する。
ポンプ43が起動すると、キャン30内の上部空間の水は、一端40a側から循環パイプ40に吸引されて循環パイプ40内を流通し、他端40B側からキャン30内の下部空間に供給される。即ち、キャン30と循環パイプ40により、循環閉流路が形成され、キャン30内の水が循環流通する。
【0026】
キャン30内の水は、一端40a側から循環パイプ40内に吸引されて流通すると、まず混合器41により混合・撹拌され、次に冷却熱交換器42により冷却され、さらにポンプ42により圧送されて、他端40b側からキャン30内の下部空間に供給されて、キャン30に戻ってくる。
【0027】
また、混合器41により混合・撹拌された水の一部は、サンプリングプローブ44を介してサンプリングされる。サンプリングされた水は、放射能検出器により検査され、核分裂生成物(たとえば137Cs)の有無が検査される。
【0028】
A行に沿い並んだ17本の燃料棒1は、そのプレナム部が積極的に外部から加熱されるため、燃料棒の内部圧力が上昇する。このとき、A行に沿い並んだ17本の燃料棒1のうちのいずれかの燃料被覆管にピンホール等があると、ピンホール等がある燃料棒1から水中に核分裂生成物(たとえば137Cs)が漏洩してくる。
このようにして核分裂生成物(たとえば137Cs)が漏洩してくると、サンプリングされた水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されていることが検出される。
【0029】
なお、A行以外の他の行(B行からQ行)に沿い並んだ燃料棒1は、加熱部53により加熱されておらず、しかも、加熱部53により加熱されて温度上昇して循環パイプ40内に流入していった水は、冷却熱交換器42により冷却され、冷却された水がキャン30内の下部空間に供給される。
このため、A行以外の他の行(B行からQ行)に沿い並んだ燃料棒1は、積極加熱されることはない。
この結果、A行以外の他の行(B行からQ行)に沿い並んだ燃料棒1の燃料被覆管にピンホール等があっても、A行以外の他の行(B行からQ行)に沿い並んだ燃料棒1から水中に核分裂生成物が漏洩してくることはない。
【0030】
上述したようにして、A行に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときに、サンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査が終了したら、B行に沿い並んだ17本の燃料棒1について漏洩があるかどうかを検査する次ステップに進む。
【0031】
次ステップに進むには、まず、加熱部53による加熱を停止すると共にポンプ43を停止する。次に、循環パイプ40の接続状態を変えることにより、使用済燃料ピット20内の水をポンプ43によりキャン30内の下部空間に供給し、キャン30内の上部空間から循環パイプ40に流入してきた水を循環パイプ40の途中(ポンプ40の手前)まで流してから、使用済ピット20内に排出する。
このようにして、キャン30及び循環パイプ40の内部に入っていた水を、使用済燃料ピット20内の水と入れ替える。
【0032】
キャン30及び循環パイプ40の内部の水の入れ替えが完了したら、循環パイプ40の接続状態を図1に示す状態に戻す。
【0033】
次に、加熱装置50の移動位置を調整して、B行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を、各プレート52の加熱部53で挟む。この状態で加熱部53に通電して加熱部53を発熱させて、B行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を外部から積極的に加熱する。
B行に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部に対して加熱部53により外部加熱を開始したら、ポンプ43を起動してキャン30内の水を循環パイプ40を介して循環流通させる。
【0034】
上述したようにして、B行に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱すると共にキャン30内の水を循環パイプ40を介して循環流通させているときに、サンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査をする。
【0035】
以降は同様にして、C行からQ行について各行ごとに、当該行に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときにサンプリングした水に、核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査をする。
なお、ある行の検査が終了してから、次の行の検査に進む際には、キャン30及び循環パイプ40内の水の入れ替えを行う。
【0036】
A行からQ行について1行ごとに、当該行に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときにサンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査をしたら、次は、a列からq列について1列ごとに、当該列に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときにサンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査をする。
【0037】
各列について検査をするには、キャン30に対する加熱装置50の配置位置を、水平面内で見て、図1の配置位置から90°旋回した位置とする。図1でいえば、加熱装置50が紙面に対して直行する方向に移動できるように、加熱装置50の配置位置を変更する。
または、キャン30に対する加熱装置50の配置位置は図1の配置位置と同じとし、燃料集合体10を一旦、キャン30の外に取り出し、燃料集合体10を水平面内で90°旋回してからキャン30内に収納する。
【0038】
このようにして、加熱装置50は、そのプレート52がキャン30の上部に挿通された状態で、水平方向(図2ではβ方向)に沿い、図示しない移動機構により移動することができる。このとき、プレート52とキャン30との間にはシール機構54が配置されて、シールがされるようになっている。
【0039】
加熱装置50の移動位置を調整して、a列に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を、各プレート52の加熱部53で挟む。この状態で加熱部53に通電して加熱部53を発熱させて、a列に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部を外部から積極的に加熱する。
【0040】
a列に沿い並んだ17本の燃料棒1のプレナム部に対して加熱部53により外部加熱を開始したら、ポンプ43を起動する。
ポンプ43が起動すると、キャン30内の上部空間の水は、一端40a側から循環パイプ40に吸引されて循環パイプ40内を流通し、他端40B側からキャン30内の下部空間に供給される。即ち、キャン30と循環パイプ40により、循環閉流路が形成され、キャン30内の水が循環流通する。
【0041】
キャン30内の水は、一端40a側から循環パイプ40内に吸引されて流通すると、まず混合器41により混合・撹拌され、次に冷却熱交換器42により冷却され、さらにポンプ42により圧送されて、他端40b側からキャン30内の下部空間に供給されて、キャン30に戻ってくる。
【0042】
上述したようにして、a列に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときに、サンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査を、行ごとに検査していたのと同様にして実施する。
【0043】
a列の検査が終了したら、以降は同様にして、c列からq列について各列ごとに、当該列に沿い並んだ17本の燃料棒1を外部から積極加熱しているときにサンプリングした水に核分裂生成物(たとえば137Cs)が含有されているか否かの検査をする。
なお、ある列の検査が終了してから、次の列の検査に進む際には、キャン30及び循環パイプ40内の水の入れ替えを行う。
【0044】
各行の検査と、各列の検査が完了したら、燃料集合体10のうち、漏洩が発生している燃料棒を次のようにして特定する。
例えば、B行の検査において核分裂生成物の含有が検査され、且つ、e列の検査において核分裂生成物の含有が検査された場合には、B行とe列とが交差する位置に配置された燃料棒1に漏洩が発生していると特定することができる。
【0045】
本実施例では、行または列を単位として、即ち、燃料棒1を17本を単位として加熱するごとに、核分裂生成物の有無を検査し、行ごと及び列ごとの検査結果を組み合わせて漏洩している燃料棒1の特定ができるため、迅速かつ正確に、漏洩している燃料棒を特定することができる。
また、燃料棒1をその外部から積極的に加熱しているため、自然発熱を利用している場合に比べて、短時間で核分裂生成物の有無の検査ができる。
【0046】
実施例1では、燃料棒を17行17列に配置した燃料集合体を検査対象物としているが、燃料棒の行数・列数が他のものであっても、本発明方法を適用することができる。
【実施例2】
【0047】
上述した実施例1では、行または列を単位として、即ち、17本の燃料棒1を単位として一緒・同時に加熱しているが、行または列に含まれる17本を時系列的にずらして順次加熱していくこともできる。
例えば、図5に示すように、特定の行(または列)に含まれる燃料棒1を3本単位で順次加熱していくこともでき、更には図6に示すように、特定の行(または列)に含まれる燃料棒1を1単位で順次加熱していくこともできる。
【実施例3】
【0048】
上述した実施例1では、行または列を単位として当該行または当該列に含まれる複数の燃料棒を一緒・同時に加熱しており、実施例2では、行または列を単位として当該行または当該列に含まれる複数の燃料棒を時系列的にずらして順次加熱している。
これに限らず、行または列を単位とすることなく、隣接する複数の燃料棒を単位として、その燃料棒のプレナム部を外部から加熱して、核分裂生成物の検査をし、漏洩している燃料棒の検出をすることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 燃料棒
10 燃料集合体
20 使用済燃料ピット(水槽)
21 水
30 キャン
31 キャン蓋
32 シール機構
40 循環パイプ
41 混合器
42 冷却熱交換器
43 ポンプ
44 サンプリングプローブ
50 加熱装置
51 端子盤
52 プレート
53 加熱部
54 シール機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料棒を複数行・複数列に配置してなる燃料集合体のうち、漏洩が発生している燃料棒を検出・特定する燃料棒の漏洩検査方法において、
水を貯留した水槽内にキャンを配置し、
前記キャンの内部に前記燃料集合体を収納して、前記燃料棒が垂直方向に沿い立ち且つ燃料棒のプレナム部が上側位置に配置される状態にし、
前記キャン内の水を前記水槽内の水と入れ替えてから、前記キャン内の上部空間から水を吸引し吸引した水を冷却してから前記キャン内の下部空間に供給することによりキャン内の水を循環流通させつつ、複数の行のうちの一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱しているときに、前記キャンから吸引した水に核分裂生成物が含有されているか否かを検査する動作を、各行に沿い並んだ燃料棒について行ごとに行い、
前記キャン内の水を前記水槽内の水と入れ替えてから、前記キャン内の上部空間から水を吸引し吸引した水を冷却してから前記キャン内の下部空間に供給することによりキャン内の水を循環流通させつつ、複数の列のうちの一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱しているときに、前記キャンから吸引した水に核分裂生成物が含有されているか否かを検査する動作を、各列に沿い並んだ燃料棒について列ごとに行い、
核分裂生成物が含有されていると検査された行と、核分裂生成物が含有されていると検査された列とが交差する位置に配置された燃料棒に漏洩が発生していると特定することを特徴とする燃料棒の漏洩検査方法。
【請求項2】
請求項1において、
一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれるすべての燃料棒を一緒・同時に加熱し、一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれるすべての燃料棒を一緒・同時に加熱することを特徴とする燃料棒の漏洩検査方法。
【請求項3】
請求項1において、
一つの行に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれる複数の燃料棒を時系列的にずらして順次加熱し、一つの列に沿い並んだ燃料棒のプレナム部を加熱手段により加熱する際には、その列に含まれる複数の燃料棒を時系列的にずらして順次加熱することを特徴とする燃料棒の漏洩検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52818(P2012−52818A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193192(P2010−193192)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】