説明

燃料残量表示装置

【課題】燃料検出手段の故障を利用者に知らせることが可能な燃料残量表示装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、表示手段3と、燃料残量に応じた第1の検出信号を出力する燃料検出手段1と、第1の検出信号に基づいて燃料残量を求めて表示手段3に表示させると共に、車両の内燃機関の稼働時間を計測し、当該稼働時間が所定時間以上経過しても燃料残量の変化量が所定値以下のときに燃料検出手段1が故障したと判断し、当該故障を表示手段3を通じて報知する制御手段2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の燃料残量表示装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この燃料残量表示装置は、表示手段(表示器)と、燃料残量に応じた検出信号を出力する燃料検出手段(フューエルセンダ)と、検出信号に基づいて燃料残量を求めて表示手段に表示させる制御手段(マイクロコンピュータ)とを備えている。
【特許文献1】特開平10−239133号公報
【0003】
また、このような燃料残量表示装置の中には、検出信号を出力する信号線の短絡や断線が生じた場合に、異常を報知するものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、信号線の短絡や断線の際に異常を報知するものは、信号線の短絡や断線以外の機械的故障が生じた場合には利用者に報知することができない。このため利用者が故障に気付きに難く、検出信号と実際の燃料残量との間に差が生じ、不自然な表示をさせてしまう虞れがあった。
【0005】
本発明は前述した問題点に着目し、燃料検出手段の故障を利用者に知らせることが可能な燃料残量表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述した課題を解決するため、車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、表示手段と、前記燃料残量に応じた検出信号を出力する燃料検出手段と、前記検出信号に基づいて前記燃料残量を求めて前記表示手段に表示させると共に、前記車両の内燃機関の稼働時間を計測し、前記稼働時間が所定時間以上経過しても前記燃料残量の変化量が所定値以下のときに前記燃料検出手段が故障したと判断し、当該故障を前記表示手段もしくは所定の報知手段を通じて報知する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前述した課題を解決するため、車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、表示手段と、前記燃料残量に応じた検出信号を出力する燃料検出手段と、前記検出信号に基づいて前記燃料残量を求めて前記表示手段に表示させると共に、前記車両の走行距離を計測し、前記車両が所定距離以上走行しても前記燃料残量の変化量が所定値以下のときに前記燃料検出手段が故障したと判断し、当該故障を前記表示手段もしくは所定の報知手段を通じて報知する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記表示手段が指針にて前記燃料残量を指示する指針式計器からなり、前記制御手段は前記燃料検出手段の故障を判定した際、前記指針に最低残量値以下を指示させることにより前記故障を報知することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記報知手段が、前記燃料残量が所定値以下になった時に発光もしくは所定表示を行うことで報知する燃料警告手段と兼用で設けられており、前記制御手段は前記燃料検出手段の故障を判定した際、前記燃料警告手段を点滅もしくは表示と非表示を繰り返すことにより前記故障を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期の目的を達成することができ、燃料検出手段の故障を速やかに利用者に知らせることが可能な燃料残量表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0012】
図1、図2は、本発明による燃料残量表示装置の第1の実施形態を示すもので、図1は、燃料残量表示装置のシステム構成を示すブロック図、図2は故障判定・報知処理を示すフロー図である。
【0013】
図1において、本実施形態による燃料残量表示装置は、燃料検出手段1と、制御手段2と、表示手段3と、報知手段4とを備えている。
【0014】
燃料検出手段1は、例えば車両に搭載される燃料タンク内に設置され、燃料液位に応じて可動するフロートに従って抵抗値が変化するフューエルセンダからなり、前記抵抗値を燃料残量に応じた第1の検出信号(検出信号)として出力するものである。
【0015】
制御手段2は、例えばマイクロコンピュータを適用でき、第1の検出信号を入力して演算処理し、その演算処理結果に応じて表示手段3及び報知手段4を動作させる。また制御手段2は、エンジン回転数に応じたタコパルスを検出してエンジン回転数に応じた第2の検出信号として出力するタコパルス検出手段5と接続され、第2の検出信号を入力して演算処理し、その演算処理結果に基づいて後述する故障判定及び故障報知処理を行う。なお燃料検出手段1及びタコパルス検出手段5と制御手段2との接続は、図示しないがCAN(Controller Area Network)通信ケーブルを経由して接続してもよい。
【0016】
このような機能を担う制御手段2は、少なくとも第1,第2の検出信号に基づいて演算処理を実行するCPUと、このCPUにおける演算処理結果等を一時的に格納する読出し及び書換え可能なRAMと、表示手段3及び警報手段4の動作や前記故障判定及び前記故障報知処理に必要な制御プログラムや制御データを格納したROMから構成される記憶部と、第1,第2の検出信号や制御信号やクロック信号などをやり取りするためにバス接続された入出力インターフェイスとを備えている。なお、前記記憶部として、RAMやROMの他にEEPROMやフラッシュメモリなどからなる書換え可能な不揮発性メモリを用いることができる。また、この場合、制御手段2は、表示手段3や警報手段4を駆動するための駆動ドライバを有している。
【0017】
表示手段3は、例えば指針式計器(指針式燃料計)からなり、燃料残量に応じた指標部31を設けてなる表示板32と、ステッピングモータの回転軸に支持され、表示板32上で指標部31を指示する指針33とを備えている。
【0018】
報知手段4は、例えば発光により燃料残量警告を行う燃料警告手段からなり、燃料残量が所定値以下であることを示す警報マーク(図示しない)と、この警報マークを照明する光源(図示しない)とを備えている。なお前記警報マークは表示板32に施したものでもよい。
【0019】
次に制御手段2により実行される(1)表示手段3の制御処理、(2)報知手段4の制御処理、(3)故障判定・報知処理について説明する。
【0020】
(1)表示手段3の制御処理
制御手段2は、所定周期毎に入力する第1の検出信号に基づいて、指針33の表示板32における振れ角データを演算処理して求める。このように求められた振れ角データはRAMに一時的に記憶され、前回求めた振れ角データと今回求めた最新の振れ角データとの比較(差分)に基づいて、指針33を実際に動作させるための制御データを生成し、この制御データに基づいて前記駆動ドライバ及び前記ステッピングモータを作動させて指針33による燃料残量指示を行わせる。
【0021】
(2)報知手段4の制御処理
制御手段2は、第1の検出信号に基づく演算処理結果から燃料残量が所定値以下(例えば10L以下)になったと判断すると、報知手段4を作動させて前記警報マークを前記光源にて照明するローフューエル警報を行う。
【0022】
(3)故障判定・報知処理
制御手段2は、図2に示すように、まずステップS1(稼働時間計測)において、所定周期毎に入力する第2の検出信号と前記クロック信号とに基づいて、車両の内燃機関の稼働時間(例えば任意のある時点から内燃機関の停止期間を除いた積算稼働時間もしくは内燃機関のスタートからの稼働継続時間の何れでもよい)を計測する。次のステップS2(所定時間経過判定)では、ステップS1における稼働時間が所定時間(例えば1時間)以上経過したか否かが判定される。ステップS2の判定結果が「YES」すなわち、所定時間以上経過した場合、ステップS3(燃料消費量算定)に進む。ステップS3では第1の検出信号に基づいて所定時間内における燃料残量の変化量(燃料消費量)が算定される。次のステップS4(燃料消費量判定)では、ステップS3における燃料消費量が所定値以下(例えば0L)であるか否かが判定され、当該ステップS4での判定が「YES」すなわち、所定値以下の場合、内燃機関の稼働時間が所定時間以上経過しても燃料消費量が所定値以下となるため、燃料検出手段1が故障したと判断し、ステップS5(故障報知)に進む。ステップS5では、表示手段3の指針33に最低残量値(例えばエンプティを示す目盛位置)以下を強制的に指示させることにより燃料検出手段1の故障を報知する。すなわち多くの利用者は燃料計の値が最低残量値に到達する前に給油する傾向にあることから、最低残量値以下の強制指示により、故障を認識できる。
【0023】
以上のように、本実施形態では、車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、表示手段3と、燃料残量に応じた第1の検出信号を出力する燃料検出手段1と、第1の検出信号に基づいて燃料残量を求めて表示手段3に表示させると共に、車両の内燃機関の稼働時間を計測し、当該稼働時間が所定時間以上経過しても燃料残量の変化量が所定値以下のときに燃料検出手段1が故障したと判断し、当該故障を表示手段3を通じて報知する制御手段2と、を備えることにより、燃料検出手段1の故障を利用者に知らせることできる。
【0024】
また本実施形態では、予め備えられている表示手段3を通じて故障を報知することができるため、専用の報知手段を不要にできるというメリットがある。
【0025】
また本実施形態では、表示手段3の指針33に最低残量値以下を指示させることにより故障を報知するため、利用者に車両が走行不能となることを知らせることができる。なお故障の報知は、燃料残量が所定値以下になった時に発光することで報知する燃料警告手段からなる報知手段4を用いて故障を報知することもできる。この場合、通常の燃料残量警告との差別化を図るため、燃料警告手段を点滅させることで、故障を報知することができる。
【0026】
また故障を報知する報知手段4は、燃料警告手段のごとき発光式警告手段に限らず、任意の報知手段4を用いることができる。例えば報知手段4として液晶等の電子式表示パネルを用いる場合、故障を報知するメッセージやアイコン表示をしたり、これらメッセージやアイコンの表示と非表示を周期的に繰り返すようにしてもよい。
【0027】
図3、図4は、本発明による燃料残量表示装置の第2の実施形態を示すもので、図3は、燃料残量表示装置のシステム構成を示すブロック図、図4は故障判定・報知処理を示すフロー図である。
【0028】
図3において、本実施形態による燃料残量表示装置は、タコパルス検出手段5に替えて、スピードパルス検出手段6を制御手段2に接続した点のみが前記第1の実施形態と相違している。スピードパルス検出手段6は、車両の走行距離に応じたスピードパルスを検出して走行距離に応じた第3の検出信号として出力する。そして制御手段2は、第3の検出信号を入力して演算処理し、その演算処理結果に基づいて後述する故障判定及び故障報知処理を行う。
【0029】
次に図4に基づいて本実施形態における故障判定・報知処理を説明する。
制御手段2は、まずステップS11(走行距離計測)において、所定周期毎に入力する第3の検出信号に基づいて、車両の走行距離(例えば任意の開始時点からの積算距離もしくは内燃機関のスタートからの継続積算距離の何れでもよい)を計測する。次のステップS12(所定距離判定)では、ステップS11における走行距離が所定距離(例えば20km)以上に到達したか否かが判定される。ステップS12の判定結果が「YES」すなわち、所定距離以上に到達した場合、ステップS13(燃料消費量算定)に進む。ステップS13では第1の検出信号に基づいて所定距離における燃料残量の変化量(燃料消費量)が算定される。次のステップS14(燃料消費量判定)では、ステップS13における燃料消費量が所定値以下(例えば0L)であるか否かが判定され、当該ステップS14での判定が「YES」すなわち、所定値以下の場合、所定距離以上走行しても燃料消費量が所定値以下となるため、燃料検出手段1が故障したと判断し、ステップS15(故障報知)に進む。ステップS15では、任意の報知手法により故障を報知する。
【0030】
このように構成した本実施形態によっても前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態による燃料残量表示装置のシステム構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態における故障判定・報知処理を示すフロー図。
【図3】本発明の第2の実施形態による燃料残量表示装置のシステム構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態における故障判定・報知処理を示すフロー図。
【符号の説明】
【0032】
1 燃料検出手段
2 制御手段
3 表示手段
4 報知手段
5 タコパルス検出手段
6 スピードパルス検出手段
31 指標部
32 表示板
33 指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、
表示手段と、
前記燃料残量に応じた検出信号を出力する燃料検出手段と、
前記検出信号に基づいて前記燃料残量を求めて前記表示手段に表示させると共に、前記車両の内燃機関の稼働時間を計測し、前記稼働時間が所定時間以上経過しても前記燃料残量の変化量が所定値以下のときに前記燃料検出手段が故障したと判断し、当該故障を前記表示手段もしくは所定の報知手段を通じて報知する制御手段と、
を備えることを特徴とする燃料残量表示装置。
【請求項2】
車両に搭載される燃料タンク内の燃料残量を表示する燃料残量表示装置であって、
表示手段と、
前記燃料残量に応じた検出信号を出力する燃料検出手段と、
前記検出信号に基づいて前記燃料残量を求めて前記表示手段に表示させると共に、前記車両の走行距離を計測し、前記車両が所定距離以上走行しても前記燃料残量の変化量が所定値以下のときに前記燃料検出手段が故障したと判断し、当該故障を前記表示手段もしくは所定の報知手段を通じて報知する制御手段と、
を備えることを特徴とする燃料残量表示装置。
【請求項3】
前記表示手段が指針にて前記燃料残量を指示する指針式計器からなり、前記制御手段は前記燃料検出手段の故障を判定した際、前記指針に最低残量値以下を指示させることにより前記故障を報知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料残量表示装置。
【請求項4】
前記報知手段が、前記燃料残量が所定値以下になった時に発光もしくは所定表示を行うことで報知する燃料警告手段と兼用で設けられており、前記制御手段は前記燃料検出手段の故障を判定した際、前記燃料警告手段を点滅もしくは表示と非表示を繰り返すことにより前記故障を報知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料残量表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150852(P2009−150852A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331240(P2007−331240)
【出願日】平成19年12月24日(2007.12.24)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】