説明

燃料蒸気流出装置

【課題】燃料タンクの内部上端領域に滞留した燃料蒸気を気液分離機を経由してタンク外に流出するに際しての燃料漏れの抑制効果を高める。
【解決手段】端部管路部50は、コの字状の左側本体52Lと右側本体52Rとを端面にて接合・固定した燃料遮蔽体52を嵌合装着して備え、貫通孔51に繋がる貫通孔53の下側を基点として、遮蔽板54L、54Rを斜め上方に向けて突出させ、これら遮蔽板を端部管路部50の管路方向に沿って上下にかつ交互に備える。遮蔽板54L、54Rは、貫通孔53の前方領域に燃料貯留部55を形成し、端部管路部50に入り込んだ燃料は、この燃料貯留部55に貯め置かれ、その貯め置き量を超えた分しか、燃料は通過しない。燃料蒸気は、遮蔽板間の蒸気流路56をへて支障なく気液分離機に達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの内部上端領域に滞留した燃料蒸気を気液分離機を経由してタンク外に流出する燃料蒸気流出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに燃料を貯めるに当たっては、タンク内全てを燃料で満たすことが望ましい。ところで、燃料液位より上のタンク内に貯まった燃料蒸気は、適宜、タンク外へ排出することが必要とされ、燃料蒸気排出のための弁にはフロート弁が多用されていた。こうしたフロート弁では、満タン液位においてもフロートの浮沈ストロークを確保する必要があるので、タンクの内部上端には、いわゆるデットスペースがあった。こうしたデットスペースの削減のため、種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−286918号公報
【0004】
この特許文献では、タンク内に設けた管路の開口をタンク内部の上端側に位置させ、当該開口から管路に入り込んだ燃料蒸気をタンク外に排出している。つまり、管路に弁を設けないようにすることで、開口、即ち管路端部をタンク内部の上端に近づけることで、デットスペースを削減している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献で提案された技術では、車両の走行時における燃料液面の傾斜等により、燃料蒸気と一緒に燃料自体も開口に入り込んで管路を流れることになる。こうして管路を流れる燃料蒸気と燃料は、管路末端のセパレータにて気液分離されて、その気体成分である燃料蒸気がタンク外に排出されている。このため、燃料液面の傾斜や上下動が頻繁となると、セパレータに達する燃料の量も増える分だけ、セパレータ下流への燃料の漏れが起き易くなると指摘されるに至った。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、燃料タンクの内部上端領域に滞留した燃料蒸気を気液分離機を経由してタンク外に流出するに際しての燃料漏れの抑制効果を高めることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明では、以下の構成を採用した。
【0008】
[適用:燃料蒸気流出装置]
燃料タンクの内部上端領域に滞留した燃料蒸気を気液分離機を経由してタンク外に流出する燃料蒸気流出装置であって、
前記滞留した燃料蒸気を前記気液分離機に導入するようタンク内に配置された蒸気導入管路を備え、
該蒸気導入管路は、
前記内部上端領域に蒸気流入開口を含む端部管路部を位置させ、該端部管路部において、前記蒸気流入開口から管路に入り込んだ液相の燃料を管路内に貯め置きつつ、前記蒸気流入開口から管路に入り込んだ気相の燃料蒸気については管路を通過させる燃料遮蔽機構と、
該燃料遮蔽機構により前記端部管路部の管路内に貯め置かれた燃料を燃料タンク内に排出する排出路とを有する
ことを要旨とする。
【0009】
上記構成の燃料蒸気流出装置は、タンク内に配設した蒸気導入管路の端部管路部を燃料タンクの内部上端領域に位置させ、当該管路部の蒸気流入開口からタンク内部上端領域の燃料蒸気を気液分離機に導入する。燃料タンク内の燃料液面が傾斜等すると、燃料蒸気と一緒に燃料自体も蒸気流入開口から蒸気導入管路を流れるが、こうして流れ込んだ燃料は、蒸気導入管路が端部管路部に有する燃料遮蔽機構により、管路内に貯め置かれ、燃料蒸気は端部管路部、およびその下流の管路を気液分離機まで達する。燃料蒸気と一緒に蒸気導入管路に流れ込んだ燃料にあっても、端部管路部の管路内に貯め置かれた分を超えると端部管路部を経て気液分離機まで達するが、その量は、燃料遮蔽機構により端部管路部の管路内に貯め置かれる分だけ少量となる。よって、気液分離機に達する燃料量を低減できるので、気液分離機の下流への燃料の漏れを起き難くでき、タンク外部への燃料漏洩の抑制効果は高まる。しかも、端部管路部の管路内に貯め置かれた燃料は、排出路により燃料タンク内に排出されてタンク内に戻るので、気液分離機まで達する燃料量をより少量とできることから、燃料漏洩の抑制効果はより高まる。この場合、排出路を、燃料遮蔽機構が燃料蒸気を通過させる蒸気流路よりも下方に配設することで、貯め置かれた燃料のタンク内への戻りが確実となり、好ましい。なお、蒸気導入管路の端部管路部は燃料タンクの内部上端領域に位置するので、燃料タンクにおけるデッドスペースは削減される。
【0010】
上記した燃料蒸気流出装置は、次のような態様とすることができる。例えば、燃料遮蔽機構が燃料蒸気を通過させる蒸気流路を、直径で1.5〜3mmの管状の流路面積に相当する流路面積となるようにすることができる。こうすれば、気相の燃料蒸気の通過は確実とできる反面、液相の燃料については蒸気流路の通過に制約を受けるので、気液分離機まで達する燃料量低減の信頼性が高まる。
【0011】
また、前記気液分離機を燃料タンク内に備えるようにした上で、前記気液分離器にて分離された気相の燃料蒸気を、蒸気流出管路により前記気液分離器から燃料タンク外に流出させ、前記気液分離器にて分離された液相の燃料を、燃料排出系により前記気液分離器から前記燃料タンクに排出するようにすることもできる。こうすれば、燃料漏洩の抑制効果を高めた燃料タンクを提供できる。
【0012】
また、前記燃料遮蔽機構として、前記端部管路部の管路を斜めに遮るよう斜め上方に向けて突出した板状の遮蔽体を備えるものとし、該遮蔽体により燃料の流れを遮りつつ前記遮蔽体の上に燃料を貯め置くと共に、少なくとも2枚以上の前記遮蔽体を組み合わせて屈曲流路を形成し、該屈曲流路にて前記燃料蒸気を通過させるようにできる。例えば、前記遮蔽体を前記端部管路部の管路方向に沿って上下に隔離しつつ交互に設置するようにできる。こうすれば、交互に設置された一方の前記遮蔽体の下面と前記交互に配置された他方の前記遮蔽体の先端との間隙を燃料蒸気の通過箇所としつつ、当該通過箇所で流路が屈曲した屈曲流路にて燃料蒸気を通過させることができる。よって、斜め上方に突出した遮蔽体の上下・交互配置という簡便な構成で、燃料漏洩の高い抑制効果を達成できる。
【0013】
この他の前記燃料遮蔽機構として、前記端部管路部の管路を斜めに遮る板状の遮蔽体を、該遮蔽体が有する開口が重なり合うことなく前記端部管路部の管路方向に沿って多段に配設するようにできる。こうすれば、それぞれの遮蔽体が斜めであることから遮蔽体自体で燃料の流れを遮りつつ遮蔽体の下端側に燃料を貯め置き、それぞれの遮蔽体の開口を燃料蒸気の通過箇所としつつ、当該開口で流路が屈曲した屈曲流路にて燃料蒸気を通過させることができる。よって、開口を有する遮蔽体を端部管路部の管路を斜めに遮るよう多段に配置するという簡便な構成で、燃料漏洩の高い抑制効果を達成できる。
【0014】
また別の前記燃料遮蔽機構として、笠状をなして笠頂上部に開口を有する遮蔽体を複数備え、該複数の前記遮蔽体を前記開口が重なり合うことなく前記端部管路部の管路方向に沿って上下に配設するようにできる。こうすれば、それぞれの前記遮蔽体の笠斜面で燃料の流れを遮りつつ前記遮蔽体の笠周縁側に燃料を貯め置き、前記開口を燃料蒸気の通過箇所とできる。よって、頂上部に開口を有する笠状の遮蔽体を開口が重ならないように上下に配設するという簡便な構成で、燃料漏洩の高い抑制効果を達成できる。
【0015】
こうした遮蔽体を用いて燃料遮蔽機構の機能を達成するに当たり、前記遮蔽体を有する前記燃料遮蔽機構を前記端部管路部とは別体に備え、該別体の前記燃料遮蔽機構を前記端部管路部の管路に挿入するようにできる。こうすれば、燃料遮蔽機構の挿入という簡便な手法で、燃料漏洩の抑制効果が高い燃料蒸気流出装置を得ることができる。換言すれば、既存の燃料蒸気流出装置における蒸気導入管路に燃料遮蔽機構を挿入するという簡便な手法で、燃料漏洩の抑制効果が高い燃料蒸気流出装置に改造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例としての燃料蒸気流出装置10の構成を模式的に説明する説明図、図2は図1において符号Aを付した燃料蒸気流出装置10の要部を断面視して示す説明図である。
【0017】
図示するように、燃料蒸気流出装置10は、燃料タンクTの内部に組み込まれ、気液分離ユニット20とポンプ30とを備える。気液分離ユニット20は、図示しないプレートを備え、当該プレートに、気液分離機22と蒸気遮断弁24と管路開閉弁26と逆止弁28とを装着固定したアッシー品である。気液分離機22は、後述の蒸気導入管路40を通過して気液分離機22に達した燃料蒸気と燃料の導入を受け、気体成分としての燃料蒸気と液体成分としての燃料とを分離(気液分離)する。そして、この気液分離機22は、気液分離した燃料蒸気をタンク外のキャニスタCに至る蒸気排出管路23に流出させ、気液分離した燃料をポンプ30に至る排出管路31から流出可能とする。
【0018】
気液分離機22から蒸気排出管路23に流出された燃料蒸気は、当該管路の蒸気遮断弁24と管路開閉弁26の弁動作を経てキャニスタCに達し、キャニスタCにて燃料成分の吸着を受けた後、大気に放出される。蒸気遮断弁24は、燃料液位に応じて浮沈するフロートを用いたフロート弁構成を備え、タンク内の燃料液位が高くなると閉弁して蒸気排出管路23の管路を閉じる。管路開閉弁26は、燃料液位に応じて浮沈するフロートを用いたフロート弁構成と圧力に応じて開閉するリリーフ弁構成を備え、タンク内の燃料液位上昇時の閉弁による管路閉鎖と、タンク内圧上昇時の管路開放とを行う。気液分離機22にて気液分離された燃料は、ポンプ30による吸引を受けて排出管路31を通過し、ポンプ排出ポート32を経てタンク内に戻される。この場合、排出管路31の逆止弁28により、気液分離機22の側へは燃料が流れ込まないようにされている。
【0019】
この他、本実施例の燃料蒸気流出装置10は、気液分離機22への蒸気導入のための蒸気導入管路40をタンク上端側に2系統備え、それぞれの系統の蒸気導入管路40は、燃料タンクTの内部の上端領域に配設され、管路先端の端部管路部50を図1における燃料タンクTの端部側に配置させている。図2に詳しく示すように、端部管路部50は、蒸気流入開口50aが燃料タンクTのタンク上端側内壁TSに対向するよう位置する。本実施例では蒸気導入管路40の配設位置を燃料タンクTにおける満水液位FLより低くしたことから、この蒸気導入管路40は、タンク内部の上端領域に滞留した燃料蒸気を端部管路部50の蒸気流入開口50aから取り込んで気液分離機22に導入する。この場合、気液分離機22への燃料蒸気導入は、タンク内圧の上昇に伴って起き、その際に燃料液位が傾斜等すると、タンク内の燃料も燃料蒸気と一緒に蒸気流入開口50aに流入し、端部管路部50および蒸気導入管路40を経て気液分離機22に達する。なお、端部管路部50における燃料および燃料蒸気の通過挙動については後述する。
【0020】
ここで、端部管路部50について説明する。図3は本実施例の端部管路部50を分解して示す説明図、図4は端部管路部50における燃料および燃料蒸気の通過挙動を説明するための説明図である。
【0021】
図示するように、端部管路部50は、蒸気導入管路40の先端を拡張して四角形に賦形されており、対向する側面に二つの貫通孔51を上下に備え、燃料遮蔽体52を嵌め込んで備える。燃料遮蔽体52は、コの字状の左側本体52Lと右側本体52Rとを端面にて接合・固定して形成され、左側本体52Lおよび右側本体52Rは、端部管路部50に燃料遮蔽体52が嵌め込み装着されたときに貫通孔51と合致する貫通孔53を備える。そして、左側本体52Lと右側本体52Rのそれぞれは、貫通孔53の下側を基点として斜め上方に向けて突出した遮蔽板54L、54Rを上下に備える。この遮蔽板54L、54Rは、左側本体52L、52Rの側壁とも接合していることから、これら側壁と相まって、貫通孔53の前方領域に燃料貯留部55を形成する。また、遮蔽板54L、54Rは、左側本体52L、52Rがその端面にて図3に示すように接合・固定された状態では、端部管路部50の管路方向(図における上下方向)に沿って上下にかつ交互に設置し、図示するように遮蔽板54Lの下面とその下方に位置する遮蔽板54Rの先端との間隙を蒸気流路56とする。この蒸気流路56は、図示するように貫通孔51および貫通孔53より上方に位置し、その流路形状は細長いスリット状であるがその流路面積は、Φ1.5〜3mmの管状の流路面積に相当する面積とされている。
【0022】
以上説明した構成を有する本実施例の燃料蒸気流出装置10での燃料蒸気および燃料の通過の挙動は次のようになる。まず、燃料タンクTの燃料液位が図2に示す満水液位FLと同じ或いはそれ以下であり、燃料液面に大きな変動がない場合について説明する。こうした状態では、タンク上端側内壁TSより下のタンク内領域、即ちタンクの内部上端領域に存在する燃料蒸気は、タンク内圧の上昇に伴って端部管路部50の蒸気流入開口50aに入り込み、端部管路部50においては、遮蔽板54L、54Rで形成された蒸気流路56を順次通過して蒸気導入管路40に至り、気液分離機22(図1参照)に達する。つまり、燃料蒸気は、蒸気流路56にて屈曲した流路を流れて気液分離機22に導入される。そして、この気液分離機22にて気液分離された後、蒸気排出管路23を通過してキャニスタCにて燃料成分の除去を受け、大気に放出される。こうした状態では、燃料液面に大きな変動がなく、しかも、タンク上端側内壁TSと端部管路部50との隙間が小さいことから、タンク内の燃料が蒸気流入開口50aに入り込むことはほとんどないので、タンク外への不用意は燃料漏洩は起きない。
【0023】
今、車両の旋回や急制動等により燃料タンクTの燃料液面が傾いたり上下すると、燃料液面の変動も大きくなるので、タンク上端側内壁TSと端部管路部50との隙間が小さいと云っても、燃料が燃料蒸気と一緒に蒸気流入開口50aに入り込むことがあり得る。こうして蒸気流入開口50aに入り込んだ燃料は、端部管路部50における最上段の遮蔽板54Lにより下流への流入が遮られ、当該遮蔽板が形成する燃料貯留部55に貯め置かれる。しかも、こうして燃料貯留部55に貯め置かれた燃料は、貫通孔53および貫通孔51を通過してタンク内に戻される。この場合、こうした燃料流入は燃料液面の変動が大きいために起きるのであるが、燃料液位が貫通孔51より常時上にあることはないので、上記した貫通孔を経たタンク内への燃料の戻りは起きる。
【0024】
そして、最上段の遮蔽板54Lでの燃料貯留部55の容量を超えた分の燃料は、遮蔽板54L先端から下流側に流れるものの、次の段の遮蔽板54Rにより下流への流入が遮られ、当該遮蔽板が形成する燃料貯留部55に貯め置かれつつ、貫通孔53および貫通孔51を通過してタンク内に戻される。こうしたことが次の段の遮蔽板54L、遮蔽板54Rによっても繰り返されるので、蒸気流入開口50aから端部管路部50に流れ込んだ燃料の多くは、燃料貯留部55での貯め置きと貫通孔を経たタンク内への戻りにより、端部管路部50における蒸気流路56を通過して蒸気導入管路40に達することが阻止される。よって、蒸気導入管路40から気液分離機22に到達する燃料量は、端部管路部50を有せずにただ単に蒸気導入管路40の先端をタンク上端側内壁TSの近傍に配置する場合に較べて格段に少なくなる。この結果、上記した構成を有する本実施例の燃料蒸気流出装置10によれば、端部管路部50をタンク上端側内壁TSに近接配置することで燃料タンクTのデットスペースを削減した上で、気液分離機22に達する燃料量の低減を通して、気液分離機22の下流への燃料漏洩の抑制効果を高めることができる。
【0025】
また、本実施例の燃料蒸気流出装置10では、気液分離機22を有する気液分離ユニット20の他、気液分離機22にて分離した燃料をタンク内に戻すためのポンプ30についてもタンク内に設置した。よって、上記した端部管路部50により燃料漏洩の抑制効果を高めた燃料タンクTを容易に提供できる。
【0026】
また、端部管路部50に嵌合装着する燃料遮蔽体52において、燃料の貯め置き機能を果たすに当たり、本実施例では遮蔽板54L、54Rを左側本体52L、52Rの壁面から斜め上方に向けて突出させた上で、これらを端部管路部50の管路方向に沿って上下にかつ交互に設置したに過ぎない。つまり、遮蔽板の斜め突出と上下の交互配置という簡便な構成で、燃料漏洩の高い抑制効果を備えた燃料蒸気流出装置10とできる。
【0027】
しかも、燃料遮蔽体52を端部管路部50に嵌合装着するだけで燃料漏洩の高い抑制効果を発揮できるので、燃料遮蔽体52の嵌合装着という簡便な手法で、燃料漏洩の抑制効果が高い燃料蒸気流出装置10を得ることができる。このことは、既存の燃料蒸気流出装置における蒸気導入管路40の先端を端部管路部50の様な形状にした上で燃料遮蔽体52を嵌合装着するという簡便な手法で、既存の燃料蒸気流出装置を燃料漏洩の抑制効果が高いものに改造することができることを意味する。
【0028】
次に変形例について説明する。図5は端部管路部50の形状を筒状とした上で遮蔽板を直接装着した変形例の端部管路部150を斜視と平面視にて説明する説明図、図6は図5に示す端部管路部150を断面視しつつその製造手法を説明するための説明図である。
【0029】
図示するように、この変形例の端部管路部150は、蒸気導入管路40の先端を拡張して筒状に賦形されており、端部管路部50における貫通孔51と同様に、上下の貫通孔151を対向して備える。また、貫通孔151の下側を基点として斜め上方に向けて突出した円盤状の遮蔽板154L、154Rを上下に備え、これらを既述したように交互に配置させている。これら遮蔽板154L、154Rは、端部管路部150の側壁にその外側から切欠形成された挿入溝152L、152Rに、端部管路部150の外部から挿入されて、水密に固定される。この場合、挿入溝152L、152Rの形成軌跡が斜め上方であることから、遮蔽板154L、154Rは端部管路部150の管路方向に沿って上下かつ交互に配置される。
【0030】
この端部管路部150にあっても、既述した端部管路部50と同様に、気液分離機22への燃料蒸気の導入を図りつつ、燃料については遮蔽板154L、154Rによる貯め置きや貫通孔151によるタンク内への戻りにより、気液分離機22に達する燃料量の低減を図ることができる。よって、燃料漏洩の抑制効果も高まる。
【0031】
図7はまた別の変形例の端部管路部160を断面視して示す説明図、図8はこの端部管路部160で用いる遮蔽体170の概略斜視図である。この変形例では、遮蔽体170を端部管路部160の管路方向に上下に多段に重ねて配置した上で、遮蔽体170が頂上に有する開口172を重ならないようにした点に特徴がある。
【0032】
この変形例にあっては、端部管路部160は、蒸気導入管路40の先端を拡張して筒状に賦形されており、4つの貫通孔151を上下に並べて備え、各貫通孔の下方に環状の凹所162を多段に備える。遮蔽体170は、頂上部が中央から偏心した位置にある笠状をなし、笠頂上部にΦ1.5〜3mm程度の円形の開口172を備え、笠頂上からの傾斜面174の周縁に円形のフランジ部175を有する。この遮蔽体170は、樹脂成型品であることから、笠の高さが伸びるよう笠形状の変形が可能であるので、このように変形させた上で、端部管路部160のそれぞれの凹所162にフランジ部175を入り込ませて端部管路部160に装着される。それぞれの凹所162への遮蔽体170の装着に際しては、上下の遮蔽体170において開口172が重ならないようにされている。
【0033】
この端部管路部160では、その上端開口から入り込んだ燃料蒸気は、それぞれの段の遮蔽体170における開口172を順次通過して、蒸気導入管路40に達し、既述したように気液分離機22に支障なく導入される。つまり、燃料蒸気は、開口172にて屈曲した流路を流れて気液分離機22に導入される。その一方、燃料蒸気と一緒に上端開口から端部管路部160に入り込んだ燃料は、まず、最上段の遮蔽体170にて遮られて傾斜面174の斜面にて貯め置かれつつ、貫通孔151によりタンク内に戻される。そして、最上段の遮蔽体170の傾斜面174による貯め置き量を超える燃料が開口172を通過して次の段の遮蔽体170に流れる。この際、開口172は、上記したように上下の遮蔽体170において重ならないことから、開口172を通過した燃料は、下段の遮蔽体170の傾斜面174にて再度遮られ、各段ごとにこうしたことが繰り返される。よって、この端部管路部160を有する燃料蒸気流出装置にあっても、既述した効果を奏することができる。
【0034】
図9は他の変形例の端部管路部180を断面視て平面視にて示す説明図である。この変形例では、板状の遮蔽体184を端部管路部180の管路を斜めに遮るよう管路方向に上下に多段に配置した上で、それぞれの遮蔽体184における列状の開口186が重ならないようにした点に特徴がある。
【0035】
この変形例にあっては、端部管路部180は、蒸気導入管路40の先端を拡張して四角形に賦形されており、4つの貫通孔151を上下に並べて備え、各貫通孔の下方から他方側の側面に掛けて斜め上方に延びるスリット182を多列に備える。遮蔽体184は、板状であり、上記のスリット182に嵌め込み装着され、列状の開口186を備える。この場合、平面視にて判るように、それぞれの遮蔽体184における開口186は、重なることがないよう形成されており、最上段の遮蔽体184で貫通孔151に近い位置となるようにされている。この場合、列状の開口186の個々の開口の総面積は、即ち流路面積は、Φ1.5〜3mmの単一の円形開口の面積と同程度とされている。
【0036】
この端部管路部180では、その上端開口から入り込んだ燃料蒸気は、それぞれの段の遮蔽体184における開口186を順次通過して、蒸気導入管路40に達し、既述したように気液分離機22に支障なく導入される。つまり、燃料蒸気は、開口186にて屈曲した流路を流れて気液分離機22に導入される。その一方、燃料蒸気と一緒に上端開口から端部管路部180に入り込んだ燃料は、まず、最上段の遮蔽体184にて遮られて傾斜した当該遮蔽体自体にて貯め置かれつつ、貫通孔151によりタンク内に戻される。そして、最上段の遮蔽体184による貯め置き量を超える燃料が開口186を通過して次の段の遮蔽体184に流れる。この際、開口186は、上記したように上下の遮蔽体184において重ならないことから、開口186を通過した燃料は、下段の傾斜した遮蔽体184にて再度遮られ、各段ごとにこうしたことが繰り返される。よって、この端部管路部180を有する燃料蒸気流出装置にあっても、既述した効果を奏することができる。
【0037】
しかも、この端部管路部180では、最上段の遮蔽体184において開口186を貫通孔151の側にし、下方の遮蔽体184においては貫通孔151の側から開口186が離れるようにした。よって、上の段の遮蔽体184の開口186から下の段の遮蔽体184に流れ落ちてこの下の段の遮蔽体184により貯め置かれた燃料が、貯め置かれる前にこの下の段の遮蔽体184の開口186から流れることはない。このため、各段の遮蔽体184での燃料貯め置きが確実となる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を実施例にて説明したが、本発明は上記した実施例や変形例の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能である。例えば、図2〜図3で示した四角形状の端部管路部50において、図6の端部管路部150の様に遮蔽板54L、54Rを端部管路部50にその外側から斜め上方に上下・交互に配置するようにもでき、図6や図7の端部管路部150、160において、端部管路部50に倣って別体の燃料遮蔽体52を嵌合装着するようにすることもできる。
【0039】
この他、図1の燃料蒸気流出装置10では、蒸気導入管路40を2系統としたが、1系統(1本)の蒸気導入管路40を有する構成とすることもできる。
【0040】
また、図9に示した端部管路部180にあっては、開口186を列状にするほか、種々の態様とできる。図10は開口186の態様を説明する説明図である。図示するように、開口186は、それぞれの段の遮蔽体184において、単一の開口とできるほか(図10(A))、長孔形状の開口186とすることもできる(図10(B))。この他、図10(A)において、ある段の遮蔽体184では開口186を複数個としたり、図10(B)において、長孔形状の開口186を斜めに配置したりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例としての燃料蒸気流出装置10の構成を模式的に説明する説明図である。
【図2】図1において符号Aを付した燃料蒸気流出装置10の要部を断面視して示す説明図である。
【図3】本実施例の端部管路部50を分解して示す説明図である。
【図4】端部管路部50における燃料および燃料蒸気の通過挙動を説明するための説明図である。
【図5】端部管路部50の形状を筒状とした上で遮蔽板を直接装着した変形例の端部管路部150を斜視と平面視にて説明する説明図である。
【図6】図5に示す端部管路部150を断面視しつつその製造手法を説明するための説明図である。
【図7】また別の変形例の端部管路部160を断面視して示す説明図である。
【図8】端部管路部160で用いる遮蔽体170の概略斜視図である。
【図9】他の変形例の端部管路部180を断面視て平面視にて示す説明図である。
【図10】変形例の端部管路部180が取り得る開口186の態様を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10…燃料蒸気流出装置
20…気液分離ユニット
22…気液分離機
23…蒸気排出管路
24…蒸気遮断弁
26…管路開閉弁
28…逆止弁
30…ポンプ
31…排出管路
32…ポンプ排出ポート
40…蒸気導入管路
50…端部管路部
50a…蒸気流入開口
51…貫通孔
52…燃料遮蔽体
52L…左側本体
52R…右側本体
53…貫通孔
54L…遮蔽板
54R…遮蔽板
55…燃料貯留部
56…蒸気流路
150…端部管路部
151…貫通孔
152L、152R…挿入溝
154L…遮蔽板
160…端部管路部
162…凹所
170…遮蔽体
172…開口
174…傾斜面
175…フランジ部
T…燃料タンク
C…キャニスタ
FL…満水液位
TS…タンク上端側内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの内部上端領域に滞留した燃料蒸気を気液分離機を経由してタンク外に流出する燃料蒸気流出装置であって、
前記滞留した燃料蒸気を前記気液分離機に導入するようタンク内に配置された蒸気導入管路を備え、
該蒸気導入管路は、
前記内部上端領域に蒸気流入開口を含む端部管路部を位置させ、該端部管路部において、前記蒸気流入開口から管路に入り込んだ液相の燃料を管路内に貯め置きつつ、前記蒸気流入開口から管路に入り込んだ気相の燃料蒸気については管路を通過させる燃料遮蔽機構と、
該燃料遮蔽機構により前記端部管路部の管路内に貯め置かれた燃料を燃料タンク内に排出する排出路とを有する
燃料蒸気流出装置。
【請求項2】
前記排出路は、前記燃料遮蔽機構が前記燃料蒸気を通過させる蒸気流路よりも下方に配設されている請求項1に記載の燃料蒸気流出装置。
【請求項3】
前記燃料遮蔽機構が前記燃料蒸気を通過させる蒸気流路は、その流路面積が直径で1.5〜3mmの管状の流路面積に相当する面積となるようにされている請求項1に記載の燃料蒸気流出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3いずれかに記載の燃料蒸気流出装置であって、
前記気液分離機を燃料タンク内に備えると共に、
前記気液分離器にて分離された気相の燃料蒸気を、前記気液分離器から燃料タンク外に流出させる蒸気流出管路と、
前記気液分離器にて分離された液相の燃料を、前記気液分離器から前記燃料タンクに排出する燃料排出系とを備える
燃料蒸気流出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4いずれかに記載の燃料蒸気流出装置であって、
前記燃料遮蔽機構は、
前記端部管路部の管路を斜めに遮るよう斜め上方に向けて突出してた板状の遮蔽体を備え、該遮蔽体により燃料の流れを遮りつつ前記遮蔽体の上に燃料を貯め置くと共に、少なくとも2枚以上の前記遮蔽体を組み合わせて屈曲流路を形成し、該屈曲流路にて前記燃料蒸気を通過させる
燃料蒸気流出装置。
【請求項6】
前記板状の遮蔽体は、前記端部管路部の管路壁面から斜め上方に向けて突出し、前記端部管路部の管路方向に沿って上下に隔離しつつ交互に設置されている請求項5に記載の燃料蒸気流出装置。
【請求項7】
前記板状の遮蔽体のそれぞれは、開口を有し、該開口が重なり合うことなく前記端部管路部の管路方向に沿って多段に配設されている請求項5に記載の燃料蒸気流出装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項4いずれかに記載の燃料蒸気流出装置であって、
前記燃料遮蔽機構は、
笠状をなして笠頂上部に開口を有する遮蔽体を複数備え、該複数の前記遮蔽体を前記開口が重なり合うことなく前記端部管路部の管路方向に沿って上下に配設した
燃料蒸気流出装置。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8いずれかに記載の燃料蒸気流出装置であって、
前記遮蔽体を有する前記燃料遮蔽機構を前記端部管路部とは別体に備え、該別体の前記燃料遮蔽機構を前記端部管路部の管路に挿入して備える
燃料蒸気流出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−78648(P2009−78648A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248506(P2007−248506)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】