説明

燃料貯留システム

【課題】内燃機関の駆動に依らず、キャニスタ内の蒸発燃料を処理する。
【解決手段】燃料を内燃機関200に供給するための燃料供給装置205に接続され、燃料FL1を貯留可能な第1の液室801と、燃料FL2を貯留可能な第2の液室816と、第1の液室801と第2の液室816との間で、貯留される燃料を一方から他方へと移送可能な移送手段821と、燃料FL1に起因する蒸発燃料を貯留可能なキャニスタ811と、第1の液室801とキャニスタ811との間を開放及び封鎖可能な封鎖弁809と、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量を算出する算出手段100と、各部を制御する制御手段100とを備え、制御手段100は、キャニスタ811における蒸発燃料の貯留量が所定量以上である場合、第1の液室801から第2の液室816へと燃料FL1を移送させると共に、封鎖弁を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において内燃機関の燃料を貯留するための燃料貯留システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、エンジンなどの内燃機関に加えて、電動機などの動力源を備えるハイブリッド自動車が広く知られている。このようなハイブリッド自動車において、例えば、走行のために要されるトルクなどの動力が比較的小さい場合には、電動機による車両の駆動を行い、他方でより大きなトルクが要される場合にエンジンを稼働させるハイブリッド電気自動車などがある。
【0003】
ところで、このようなハイブリッド車両においては、内燃機関の稼働機会が従来型の車両と比較して減少するため、蒸発燃料(以下、ベーパと適宜記載することがある)の大気中への放出などが生じる技術的な問題があった。このため、ハイブリッド車両においては蒸発燃料の処理を行うシステムが必要とされている。
【0004】
例えば特許文献1には、電動モータにより車両を駆動させている間、エンジンの停止期間が所定期間を超えた場合にエンジンを始動させるハイブリッド電気自動車の制御装置が開示されている。このような構成によれば、エンジン停止中に蒸発した蒸発燃料を燃焼により消費することが可能となり、蒸発燃料の大気放出が防止されるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、燃料の給油時に発生した蒸発燃料を貯留するキャニスタと、内燃機関の稼働などに伴って発生した蒸発燃料を貯留するキャニスタとを備え、キャニスタの状態に応じて内燃機関に燃料をパージするキャニスタを切り替える蒸発燃料処理装置が開示されている。このような構成によれば、給油時や、その他の状況で発生する蒸発燃料を適切にパージさせることが可能となるとされている。
【0006】
また、特許文献3には、メインタンクとサブタンクを備え、これらを相互に連通させる連通路を、メインタンクの気相部分及びサブタンクの液相部分を連通させる第1連通路と、サブタンクの気相部分及びメインタンクの液相部分を連通させる第2連通路とで構成すると共に、サブタンクとキャニスタとをチャージ通路で連通させることによって、蒸発燃料の液化を促進する燃料タンクの蒸発燃料放出抑制装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−210536号公報
【特許文献2】特開2008−255855号公報
【特許文献3】特開2007−176289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般の車両において、燃料に起因するベーパはキャニスタに吸着されて貯留される。このようなベーパは、エンジンの稼働に伴う圧力の低下を利用して内燃機関へのパージが行われる。しかしながら、エンジンの停止期間が所定期間を超えた場合にベーパの処理を目的としてエンジンを始動させた場合、燃費の悪化が避け難い問題となる。特に、プラグインハイブリッド車両(PHEV)のように、比較的長期間エンジンを始動させることなく走行可能な車両においては、この種の燃費の悪化がより顕在化し易い。従って、特許文献1に記載される構成によれば、燃費の悪化を生じさせることなくベーパを処理することが困難であるという技術的な問題点が浮上する。
【0009】
また、エンジンが稼働される場合であっても、水温条件やパージ制御などが十分でなく、エンジン内の負圧が十分でない場合には、パージが行われない可能性がある。即ち、内燃機関の稼働に依るのみでは、必ずしもベーパの処理が十分に実施されない虞がある。
【0010】
特許文献2及び特許文献3に開示されるベーパの処理技術には、複数のキャニスタまたは燃料タンク、並びに比較的複雑な配管が必要となるという技術的な困難さが伴う。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構成で、内燃機関が長期間使用されない場合における蒸発燃料の処理を好適に行う燃料貯留システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明に係る燃料貯留システムは、車両において内燃機関の燃料を貯留するシステムであって、前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給装置に接続されると共に前記燃料を第1の燃料として貯留可能な第1の液室と、前記燃料を第2の燃料として貯留可能な第2の液室と、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送可能であると共に、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送可能な移送手段と、前記内燃機関及び前記第1の液室に連通されると共に、前記内燃機関及び前記第1の液室に連通されると共に、前記第1の液室で発生した蒸発燃料を貯留するキャニスタと、開閉動作に伴って前記第1の液室と前記キャニスタとの間を開放及び封鎖可能な封鎖弁と、前記キャニスタにおける前記蒸発燃料の貯留量を算出する算出手段と、前記移送手段及び前記封鎖弁を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記キャニスタにおける前記蒸発燃料の貯留量が第1の所定量以上である場合、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送させるよう前記移送手段を制御すると共に、前記封鎖弁を開放するよう制御する。
【0013】
本発明の燃料貯留システムによれば、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段により、第1の液室から第2の液室への燃料(第1の液室に貯留された第1の燃料)の移送指示が行われる場合、また、第2の液室から第1の液室への燃料(第2の液室に貯留された第2の燃料)の移送指示が行われる場合に、制御手段の制御のもと、例えば電動式または機械式ポンプ等の各種流体圧送手段を好適に含み得る移送手段の作用によって、液室間の燃料の移送が実施される。
【0014】
ここに、本発明の第1及び第2の液室とは、夫々気密性を有する独立して構成されるタンクなどの貯留手段、及び外観上は一体とみなし得るタンクなどの貯留手段の内部において、相互に隔絶または区画されて形成される貯留空間などを含む趣旨である。また、第1の液室は、固定の容量を有する一方で、第2の液室は後に詳述するように固定容量であっても、容量可変構造を備えるものであっても良い。
【0015】
第1の燃料及び第2の燃料とは、例えばガソリン、軽油、アルコール、液化石油ガス、またはこれらが適宜混合された混合燃料などを含む内燃機関の燃料において、第1の液室及び第2の液室の夫々に貯留される燃料を含む趣旨である。従って、後に詳述するように移送手段により、第1の燃料が第2の液室へと移送された場合、該移送された第1の燃料に関しては、以降は便宜上第2の燃料と称する。
【0016】
また、少なくとも第1の液室には、例えばインジェクタなどの燃料供給装置が典型的には、物理的、機械的、電気的または磁気的などの態様を採って接続されており、内燃機関の気筒内に第1の燃料を供給することが出来る。
【0017】
また、少なくとも第1の液室には、例えばORVRバルブなどの蒸発燃料回収手段を介して、キャニスタへと蒸発燃料を移送可能な連通管(所謂、ブリーザ配管)が接続されている。キャニスタ内部には、典型的には、流入する蒸発燃料を吸着させて貯留するための活性炭などの吸着材が備えられている。このため、第1の液室内で発生した、好適には第1の燃料に起因する蒸発燃料は、該ブリーザ配管を通じて、キャニスタに吸着されることが出来る。
【0018】
キャニスタには、少なくとも3つの連通管が接続されており、うち一つは封鎖弁を介して第1の液室へと接続されるブリーザ配管である。他の一つは、大気中に開封され、パージ時に空気の流入を可能とするものであり、今一つは、内燃機関の吸気管に接続され、パージによって蒸発燃料を含む混合気を内燃機関内部に流入可能とするものである。
【0019】
キャニスタには、例えば第1の液室やキャニスタ内部の温度に基づいてキャニスタに吸着される蒸発燃料の貯留量を推定または算出可能な算出手段が備えられている。このような算出手段は、典型的には、各種センサ類及びECU等の各種処理ユニットにより構成されるものであって、少なくとも、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量を好適に検出可能な態様であればどのようなものであっても構わないものである。
【0020】
第1の液室とキャニスタとを接続するブリーザ配管には、封鎖弁が設けられている。該封鎖弁は、制御手段の制御のもと開閉動作を実施し得るよう構成されており、該開閉動作によれば、好適には全開状態から該ブリーザ配管を封鎖する全閉状態との間で開度の調整が出来る。このため、典型的には、封鎖弁によってブリーザ配管が封鎖されている場合、第1の液室とキャニスタとの間では蒸発燃料の移送は生じない。
【0021】
本発明の燃料貯留システムによれば、制御手段の制御のもと、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量が第1の所定量以上であると判断されたことを一条件として、移送手段によって第1の液室から第2の液室へと燃料が移送される(即ち、第1の燃料が第2の液室へ移送される)。
【0022】
第1の燃料の移送に伴って、第1の液室内の燃料の貯留量が減少するため、第1の液室の内圧も減少する。従って、移送手段は、このような圧力差を考慮して燃料の移送を実施可能な出力を備えていることが要される。
【0023】
このとき、制御手段の制御のもと封鎖弁が開弁されることで、第1の液室内の負圧により、キャニスタに貯留される蒸発燃料が第1の液室内にパージされる。このため、好適には、キャニスタに吸着される蒸発燃料やキャニスタの保持限界を超えてブリーザ配管中に残留する蒸発燃料を第1の液室内に回収することが可能となる。
【0024】
このような蒸発燃料の回収に係る効果は、特に動力源として内燃機関のみを有する車両と較べて内燃機関の動作頻度が極端に少なくなり得る各種のハイブリッド車両に対しては、パージのために内燃機関を始動する(即ち、蒸発燃料を直接大気放出することは避ける必要がある)といった、燃費の悪化に直結し得る事態の発生を抑制し得る点において顕著に有利に作用する。また、本発明の燃料貯留システムによれば、第1の液室と第2の液室とは、移送手段を備える一の連通管によって接続されていれば良く、従って比較的簡単な構成で上述の効果を享受することが出来る。
【0025】
ここで、本発明の燃料貯留システムにより得られる上記各種効果は、上記各種不具合が発生する可能性を的確に見極めた上でなければ、実践上有意なものとはなり難い。例えば、燃料を移送する必要がないにもかかわらず燃料の移送を実行したところで、移送手段の駆動エネルギが無駄となり、場合によっては燃料の蒸発をかえって促進する結果ともなりかねない。
【0026】
その点、本発明の燃料貯留システムによれば、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量を算出し、該貯留量が予め設定される第1の所定量を超えるか否かが判断されることで、適切な移送の要否を判断し得る構成となっている。
【0027】
本発明に係る燃料貯留システムの一の態様は、前記制御手段は、前記キャニスタに貯留される蒸発燃料が前記内燃機関にパージされる場合、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送させるよう前記移送手段制御する。
【0028】
この態様によれば、典型的には内燃機関の起動時など、キャニスタに吸着される蒸発燃料が内燃機関へとパージされる際に、制御手段の制御のもと、移送手段によって第2の液室から第1の液室へと燃料が移送される(即ち、第2の燃料が第1の液室へ移送される)。
【0029】
このため、第1の液室における燃料の貯留量が増加する(言い換えれば、第1の液室における気相空間の容積が減少する)ことから、第1の液室内の第1の燃料の蒸発に起因して蒸発燃料が発生することが抑制される。
【0030】
また、内燃機関への蒸発燃料のパージ時に第2の液室から第1の液室へと燃料を移送させることで、第1の液室からキャニスタ側へと流入する蒸発燃料も内燃機関にパージされて処理されるため、蒸発燃料がキャニスタやブリーザ配管内部に残留することも抑制出来る。
【0031】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記第2の液室に連通されると共に、前記第2の液室で発生した蒸発燃料を貯留するトラッパを更に備える。
【0032】
この態様によれば、第2の液室において発生する蒸発燃料がトラッパ内部に貯留される。ここに、トラッパとは、流入する蒸発燃料を吸着させて貯留するための活性炭などの吸着材が備えられてなる貯留装置であり、例えばORVRバルブなどの蒸発燃料回収手段を介して、蒸発燃料を移送可能な連通管により第2の液室と接続されている。このため、第2の液室内で発生した、好適には第2の燃料に起因する蒸発燃料は、該連通管を通じて、トラッパ内部に吸着され貯留される。
【0033】
このようなトラッパによれば、典型的には第1の液室から第2の液室へと燃料が移送される際に発生する蒸発燃料を貯留することが出来る。他方で、第2の液室から第1の液室へと燃料が移送される際には、第2の液室における内圧の低下に伴い、貯留される蒸発燃料は第2の液室へとパージされる。
【0034】
このため、トラッパにいつまでも蒸発燃料が吸着されて貯留されることがなく、移送手段の動作に従ってトラッパに吸着される蒸発燃料が第2の液室へと回収される。従って、トラッパに吸着される蒸発燃料が、時間の経過や吸着量の上限を超過する蒸発燃料の発生などに伴って大気中に放出されてしまうことを好適に抑制することが出来る。
【0035】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記第2の液室は、容量可変構造を有する。
【0036】
ここに、「容量可変構造」とは、貯留可能な燃料の容積を可変とし得る物理的、機械的、電気的、磁気的または化学的な構造を包括する概念であって、例えば、第2の液室の燃料貯留部位が、例えば樹脂材料で構成される等して伸縮可能に構成されること等を指す。第2の液室がこの種の容量可変構造を備える場合、移送される燃料の量に関係なく、移送後の燃料の蒸発を好適に抑制し得るため、実践上有益である。
【0037】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記制御手段は、前記第1の燃料の貯留量がゼロになるまで、前記第1の燃料を前記第2の液室に移送させるよう前記移送手段を制御する。
【0038】
この態様によれば、制御手段の制御のもと、移送手段によって第1の液室から第2の液室へと燃料が移送される際、第1の液室内に貯留される第1の燃料の貯留量がゼロとなるまで移送が連続的に行われる。従って、例えば、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量が第1の所定量以上であると判断されたことなどを条件に第1の燃料の移送が行われる場合、第1の液室内に貯留される第1の燃料全てが移送の対象となる。
【0039】
このように構成することで、燃料移送後における、第1の燃料の貯留量が、全て第2の液室に移送されるため、第1の液室において燃料蒸発を生じさせることなく、また、一度の連続的な移送手段の動作によって第1の燃料の全てを移送させることが出来るため、移送手段の駆動エネルギの消費を好適に抑制することが出来る。尚、貯留量が「ゼロ」となる状態とは、第1の液室に燃料分子が一個たりとも残存しないなど、実践上実現し難い厳密な状態を表すものではなく、第1の液室に残存する第1の燃料の量が実践上ゼロとみなし得る程度に少ない状態を好適に含む趣旨である。
【0040】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記制御手段は、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送した後に、前記第1の燃料の貯留量が第2の所定量以上となるように、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送させるよう前記移送手段を制御する。
【0041】
この態様によれば、第1の液室から第2の液室への燃料の移送(即ち、第1の燃料の移送)が実施された後、第1の燃料の貯留量が第2の所定量を下回る場合、制御手段の制御のもと移送手段の動作によって第2の液室から第1の液室へと燃料の移送が実施される。
【0042】
このとき、第2の液室から第1の液室への燃料移送の条件となる第1の液室内部の燃料の貯留量の閾値である第2の所定量は、例えば第1の液室の容量の九割程度の比較的多くの割合に設定されることが好ましい。このため、第1の液室は、燃料移送の間の期間を除くほとんどの期間において燃料が充填されることとなる。従って、第1の液室内における気体の占める割合は、多くの期間で比較的小さくなる。
【0043】
このため、第1の液室からの蒸発燃料の発生頻度を比較的低減させることが可能となると共に、キャニスタに貯留される蒸発燃料の量をも低減させることが出来る。従って、キャニスタにおける蒸発燃料の貯留量の増大を条件とする、移送手段の駆動頻度を低減させることが可能となるため、蒸発燃料の処理の観点から、また移送手段の駆動に要されるエネルギ消費の抑制の観点から有益である。
【0044】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記第1の液室の内圧を測定する圧力測定手段を更に備え、前記制御手段は、前記第1の液室の内圧が所定圧以下となった場合、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送させることを停止するよう前記移送手段を制御する。
【0045】
この態様によれば、第1の液室から第2の液室への燃料移送中に、第1の液室の内圧が所定圧以下となった場合に、燃料移送が停止される。このとき、燃料移送の停止の条件となる第1の液室の内圧の閾値とは、典型的にはキャニスタに吸着される蒸発燃料をパージによって第1の液室内に好適に回収し得る程度の負圧を含む趣旨である。
【0046】
このため、このように構成すれば、キャニスタからの蒸発燃料の回収のための必要十分な量の燃料移送が実施される。従って、移送手段を過剰に駆動させることによる不要なエネルギの消費を好適に抑制することが可能となる。
【0047】
本発明に係る燃料貯留システムの他の態様は、前記車両は、前記内燃機関と共に動力源として機能する少なくとも一つの電動機を備えたハイブリッド車両である。
【0048】
この態様によれば、車両が、内燃機関とは異なる動力源としての、例えば、モータ或いはモータジェネレータ等の形態を採り得る電動機を備えたハイブリッド車両として構成され、この電動機が、例えばインバータや各種のPCU(Power Control Unit)等を介した、電流制御、電圧制御または電力制御等各種の動力制御により、車軸に対し直接的にまたは間接的に、バッテリ等各種蓄電手段からの放電電力に応じた動力を出力可能に構成される。尚、この際、内燃機関における、例えばクランクシャフト等の機関出力軸には、例えば直接的にまたは間接的に、ジェネレータ或いはモータジェネレータ等の形態を採り得る発電機が接続され、内燃機関の動力により適宜発電可能に構成されていてもよい。
【0049】
ハイブリッド車両では、電動機の動力のみを使用したEV(Electric Vehicle)走行なる走行形態が実現可能であり、とりわけ外部電源(例えば家庭に設置された設置型のまたは可搬性を有する各種電源(好適な一形態として、例えば家庭用コンセント及び専用または汎用の充電プラグ等を適宜含む)、或いは市街地または郊外地に、専用または汎用のインフラ設備等として設置された(好適な一形態として、例えばガソリンスタンドやそれに類するインフラ施設等に付設されていてもよい)各種電源等を指す)から供給される外部電力(即ち、ハイブリッド車両内部で生成される電力とは異なる)を使用した通電により、バッテリ等の蓄電手段に対し適宜に充電がなされる構成を有する、所謂プラグインハイブリッド車両においては、内燃機関の動作頻度は極端に小さくなり易い。
【0050】
従って、ハイブリッド車両においては、蒸発燃料の処理がより重要な意味を持つ。即ち、本発明の燃料貯留システムは、ハイブリッド車両に対して顕著に効果的である。
【0051】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概略的に表すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエンジン及び燃料供給システムの構成を概略的に表す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る燃料供給システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】図3の動作に起因するメインタンク及びサブタンクの燃料貯留量の状態を概念的に示すグラフある。
【図5】本発明の実施形態に係る燃料供給システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】図5の動作に起因するメインタンク及びサブタンクの燃料貯留量の状態を概念的に示すグラフある。
【図7】本発明の第2実施形態に係るエンジン及び燃料供給システムの変形例の構成を概略的に表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
【0054】
(1)第1実施形態
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる模式的なブロック図である。
【0055】
図1において、ハイブリッド車両10は、減速機構11及び車輪12、並びにECU100、エンジン200、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、動力分割機構300、PCU400、バッテリ500、充電プラグ600、リレー回路700、燃料供給システム800を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
【0056】
減速機構11は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から出力された動力に応じて回転可能に構成された、デファレンシャルギア(不図示)等を含んでなるギア機構であり、これら動力源の回転速度を所定の減速比に従って減速可能に構成されている。減速機構11の出力軸は、ハイブリッド車両10の車軸(符号省略)に連結されており、これら動力源の動力は、回転速度が減速された状態で当該車軸及び当該車軸に連結された、駆動輪としての車輪12に伝達されるように構成されている。
【0057】
尚、減速機構11の構成は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から供給される動力を、その動力に基づいた軸体の回転速度を減速しつつ車軸に伝達可能である限りにおいて何ら限定されず、単にデファレンシャルギア等を含んでなる構成を有していてもよいし、複数のクラッチ及びブレーキ並びに遊星歯車機構により構成される所謂リダクション機構として複数の変速比を得ることが可能に構成されていてもよい。
【0058】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「制御手段」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する貯留状態制御処理を実行することが可能に構成されている。
【0059】
尚、ECU100は、本発明に係る「制御手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0060】
エンジン200は、ハイブリッド車両10の動力源の一つとして機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。エンジン200の詳細な構成は、後に図2を参照する形で詳述する。
【0061】
モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の動力をアシストする電動機として機能するように構成された電動発電機である。
【0062】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、エンジン200と共にハイブリッド車両10の動力源の一つとなる電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0063】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0064】
動力分割機構300は、エンジン200の動力をMG1及び車軸へ分配することが可能に構成された遊星歯車機構である。尚、動力分割機構300の構成は公知の各種態様を採り得るため、ここではその詳細な説明を省略するが、簡略的に説明すると、動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギアと、サンギアの外周に同心円状に設けられたリングギアと、サンギアとリングギアとの間に配置されてサンギアの外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアと、後述するクランクシャフト205の端部に結合され、各ピニオンギアの回転軸を軸支するプラネタリキャリアとを備える。
【0065】
このサンギアは、サンギア軸を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合され、リングギアは、リングギア軸を介してMG2の不図示のロータに結合されている。リングギア軸は、車軸と連結されており、MG2が発する動力は、リングギア軸を介して車軸へと伝達され、同様に車軸を介して伝達される車輪12からの駆動力は、リングギア軸を介してMG2に入力される。係る構成の下、動力分割機構300により、エンジン200が発する動力は、プラネタリキャリアとピニオンギアとによってサンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割される。この際、サンギアに伝達される動力によって、モータジェネレータMG1が正回転側に駆動されると、モータジェネレータMG1により発電が行われる構成となっている。
【0066】
PCU400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成された不図示のインバータ等を含み、バッテリ500と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ500を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された電力制御ユニットである。PCU400は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
【0067】
バッテリ500は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電力に係る電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。ここで、バッテリ500は、ハイブリッド車両10の車外に設置される外部電源20により、適宜充電可能に構成されている。即ち、バッテリ500は、各モータジェネレータの発電作用により生じる電力の他に、外部電源20からの電力供給によっても充電される構成となっており、ハイブリッド車両10は、所謂プラグインハイブリッド車両となっている。
【0068】
充電プラグ600は、リレー回路700の入力端子と電気的に接続されており、且つ外部電源20との電気的な接続を可能とする金属製のプラグである。尚、外部電源20は、例えば家庭用の100V電源であってもよいし、市街地や郊外の然るべきインフラ施設(例えば、ガソリンスタンドやサービスステーション)等にインフラ設備として設置されるものであってもよく、その物理的、機械的、機構的、電気的または化学的態様は何ら限定されない趣旨である。
【0069】
リレー回路700は、充電プラグ600側の入力端子と、バッテリ500側の出力端子との間の電気的な接続状態を二値的に且つ選択的に切り替え可能なスイッチング回路である(図1では接続されていない状態が示されている)。リレー回路700は、ECU100と電気的に接続されており、当該接続状態は、ECU100により制御される構成となっている。尚、入力端子と出力端子とが電気的に接続された状態において、バッテリ500は充電プラグ600と電気的に接続された状態となり、充電プラグ600が外部電源20と接続されている場合には、半ば自動的にバッテリ500への通電がなされ、充電が開始される構成となっており、入力端子と出力端子とが接続されていない状態において、バッテリ500は充電プラグ600から解放され、充電プラグ600が外部電源20と接続されているまたはいないに関係なく、バッテリ500への通電が停止される構成となっている。
【0070】
燃料供給システム800は、エンジン200に対し燃料たるガソリンを供給可能に構成された、本発明に係る「燃料貯留システム」の一例を含む装置群である。
【0071】
ここで、図2を参照し、エンジン200の一部及び燃料供給システム800の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、エンジン200及び燃料供給システム800の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0072】
図2において、エンジン200は、夫々不図示の気筒内部に接続される吸気管201を介して外部から吸入された空気は吸気管201を通過し、吸気ポート204において、インジェクタ205から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。この際、燃料は、燃料供給システム800により供給される構成となっている。尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図示するような所謂吸気ポート噴射型インジェクタの構成を採らずともよく、例えば、フィードポンプ或いは他の低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
【0073】
気筒内部と吸気管201とは、不図示の吸気バルブの開閉によってその連通状態が制御されている。気筒内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブの開閉に連動して開閉する排気バルブの開弁時に排気ポートを介して排気管に導かれる。
【0074】
一方、吸気管201における、吸気ポート204の上流側には、不図示のクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節するスロットルバルブ202が配設されている。このスロットルバルブ202は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ203によってその駆動状態が制御される構成となっている。
【0075】
その他、内燃機関について特に記載しない点については、公知の内燃機関と同様の構成であっても良いものである。
【0076】
尚、本発明に係る「内燃機関」とは、ガソリンエンジンに限らず、軽油を燃料とするディーゼルエンジンまたはアルコールとガソリンとの混合燃料を使用可能なバイフューエルエンジン等の形態を有していても良い。
【0077】
一方、図2において、燃料供給システム800は、メインタンク801を有する。メインタンク801は、所定の容積を有する、金属または樹脂材料で形成された所謂燃料タンクであり、本発明に係る「第1の液室」の一例である。メインタンク801内部には、本発明に係る「第1の燃料」の一例たる燃料FL1が貯留される構成となっている(尚、図示される燃料FL1の貯留状態は、メインタンク801における燃料FL1の一貯留状態に過ぎない)。
【0078】
メインタンク801内部には、残量センサ802が設置されている。残量センサ802は、フロート式の液面高検出センサであり、メインタンク801における燃料FL1の残量を数値化して検出することが可能に構成されている。残量センサ802は、ECU100と電気的に接続されており、検出された燃料FL1の残量は、ECU100により一定または不定の周期で参照される構成となっている。
【0079】
メインタンク801内部には、圧力センサ833が設置されている。圧力センサ833は、典型的には、メインタンク801内上部に設けられる圧力センサであり、メインタンク801における気相空間の内圧(言い換えれば、メインタンク801の内圧)を検出することが可能に構成されている。圧力センサ833もまた、ECU100と電気的に接続されており、検出されたメインタンク801の内圧は、ECU100により一定または不定の周期で参照される構成となっている。
【0080】
メインタンク801内部には、フューエルポンプ803が配設されている。フューエルポンプ803は、メインタンク801内部の燃料貯留空間から燃料FL1を吸い上げることが可能に構成されたポンプ装置であり、吸い上げられた燃料FL1は、フューエルポンプ803に接続されたフィードパイプ804を介して、上述したインジェクタ205の燃料噴射弁に圧送供給される構成となっている。
【0081】
メインタンク801には、給油管805が接続されており、その内部においてメインタンク801の燃料貯留空間に連通している。給油時には、この給油管805の先端部分に取り付けられたフューエルキャップ806が取り外され、燃料の一具体例であるガソリンが給油管805を介してメインタンク801内部に給油される構成となっている。
【0082】
また、燃料供給システム800は、メインタンク801に加えてサブタンク816を有する。サブタンク816は、所定の容積を有する、金属材料で形成された所謂燃料タンクであり、本発明に係る「第2の液室」の一例である。サブタンク816内部には、本発明に係る「第2の燃料」の一例たる燃料FL2が貯留される構成となっている(尚、図示される燃料FL2の貯留状態は、サブタンク816における燃料FL2の一貯留状態に過ぎない)。尚、メインタンク801及びサブタンク816の夫々の容積は、相等しくとも良く、また相異なっていても良い。
【0083】
サブタンク816内部には、残量センサ820が設置されている。残量センサ820は、フロート式の液面高検出センサであり、サブタンク816における燃料FL2の残量を数値化して検出することが可能に構成されている。残量センサ820は、ECU100と電気的に接続されており、検出された燃料FL2の残量は、ECU100により一定または不定の周期で参照される構成となっている。
【0084】
メインタンク801及びサブタンク816には、夫々連通管821の両端部が接続されており、その内部において各タンクに連通する構成となっている。この連通管821上には、移送ポンプ822が設置されている。
【0085】
移送ポンプ822は、内部に設置された、モータ駆動されるポンプの動作により、メインタンク801内に貯留された燃料FL1をサブタンク816内部に圧送供給することによって、燃料FL1をサブタンク816内に移送可能である一方、サブタンク816内に貯留された燃料FL2をメインタンク801内部に圧送供給することによって、燃料FL2をメインタンク801内に移送可能に構成された、本発明に係る「移送手段」の一例たる電動式のポンプ装置である。
【0086】
移送ポンプ822において、このモータを駆動する駆動装置は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、駆動装置への電力供給は、先に述べたPCU400を介して適宜になされる構成となっている。
【0087】
メインタンク801の上方には、メインタンク801内部に貯留された燃料FL1の液面上部空間とブリーザ配管810とを適宜に連通させることが可能に構成されたベントバルブ809、及びメインタンク801とキャニスタ811との間を適宜に連通または封鎖し得る封鎖弁832が設けられている。
【0088】
ベントバルブ809は、メインタンク801の内圧とブリーザ配管810との差圧が所定値に達すると開弁するように構成されたバルブ装置である。ベントバルブ809は、その開弁時において、蒸発燃料(ベーパ)を含む空気を、ブリーザ配管810を介して後述するキャニスタ811に供給することが可能に構成される。
【0089】
ベントバルブ809は、ORVRバルブ(Onboard refueling vapor recovery valve)807及びCOV(Cut Off Valve)808を介して上記液面上部空間と連通する構成となっている。これらORVRバルブ807及びCOV808については、特に記載しない限りは公知のORVRバルブ及びCOVと同様の構成であっても良い。
【0090】
封鎖弁832は、ECU100に接続されており、その開閉動作がECU100により好適に制御される構成である。封鎖弁は、少なくともブリーザ配管810を開放する全開開度と、封鎖する全閉開度との間で開度を調整可能に構成されている。このため、ECU100の制御によりブリーザ配管810の開封または封鎖が適時実施され得る。
【0091】
ORVRバルブ807は、給油時の液面上昇により閉弁し、ベントバルブ809とメインタンク801との連通を遮断するように構成されている。また、ORVRバルブ807は、車両転倒時等においてもベントバルブ809とメインタンク801との連通を遮断する構成となっており、ブリーザ配管810を介して燃料FL1が外部に漏洩しない構成となっている。
【0092】
COV808は、ORVRバルブ807と並列配置されており、ORVRバルブ807よりも更に液面が上昇した場合にベントバルブ809とメインタンク801との連通を遮断するように構成されている。COV808は、給油時の液面上昇に際しては、ORVRバルブ807の閉弁後も開弁状態を維持するが、車両旋回による液面の動揺等により液面がCOV808まで到達するような場合には閉弁し、ベントバルブ809とメインタンク801との連通を遮断するように構成されており、ベントバルブ809を介して燃料FL1が外部に漏洩しない構成となっている。
【0093】
キャニスタ811は、内部に蒸発燃料を吸着保持可能な活性炭等の吸着材812を備えたベーパ吸着装置である。キャニスタ811は、上述したブリーザ配管810、大気連通管813及びパージ用配管814の三種類の配管に接続されている。また、キャニスタ811には、吸着材812に吸着保持される蒸発燃料の貯留量を算出するための温度センサ830及び重量センサ831が設けられている。
【0094】
ここに、温度センサ830は、キャニスタ811内部の吸着材812に吸着保持される蒸発燃料の温度を検出するための構成である。重量センサ831は、吸着材812の荷重を検出するための構成である。これらの温度センサ830及び重量センサ831の夫々は、検出値を入力可能な態様でECU100に接続される。ECU100では、温度センサ830及び重量センサ831の夫々の検出値に基づき、キャニスタ811内部において吸着材812に吸着される蒸発燃料の量(即ち、貯留量)が算出される。尚、温度センサ830及び重量センサ831は、本実施形態における算出手段の一部を構成する一具体例であって、何らかの手段により、少なくともキャニスタ811内部における蒸発燃料の貯留量を好適に算出するためのセンサ類など、その他の構成が更に、または代わりに設けられていても良いものである。
【0095】
大気連通管813は、ハイブリッド車両10の車外空間と連通する管状部材である。大気連通管813は、後述するパージコントロールバルブ815が閉弁し且つ先に述べたベントバルブ809が開弁している場合には、ブリーザ配管810を介してキャニスタ811に流入するガスのうち吸着材811によるベーパ吸着後に残留する清浄な空気を車外へ導くと共に、パージコントロールバルブ815が開弁し且つベントバルブ809が閉弁している場合には、車外から外気をキャニスタ811に導くように構成されている。
【0096】
パージ用配管814は、一端部がキャニスタ811の下方に接続され、他端部が吸気管201におけるスロットルバルブ202の上流側に接続された、パージガスの通路である。
【0097】
ここで、「パージガス」とは、大気連通管813を介して適宜導かれる外気と吸着材812に吸着保持されたベーパとの混合体(ベーパの吸着量がゼロであれば、即ち外気そのもの)であり、係るパージガスは、エンジン200の稼動時に、パージ用配管814を介して吸気管201に供給され、パージ(即ち、蒸発燃料を吸気系へ戻す処理)がなされる構成となっている。
【0098】
パージコントロールバルブ815は、パージ用配管814上に設置された、VSV(Vacuum Switching Valve)である。パージコントロールバルブ815の弁体は、エンジン200の非稼動時には、パージコントロールバルブ815の上流側と下流側(この場合の上流側及び下流側とは、パージガスの流れ方向を基準とした方向概念であって、上流側とは即ちキャニスタ811側であり、下流側とは即ちスロットルバルブ202側を指す)との連通を遮断する遮断位置で停止するようにコイルバネ等の弾性体により付勢されている。
【0099】
一方、エンジン200が稼動状態にある場合、吸気管201には主として吸気行程において負圧が形成される。この負圧によって、VSVたるパージコントロールバルブ815の弁体位置は、上記遮断位置から変化し、パージコントロールバルブ815の上流側と下流側とが連通する。その結果、エンジン負圧により大気連通管813を介して外気が導かれ、また係る外気が、パージ用配管814へ到達する途上において吸着材812に保持されたベーパと適宜混合されることによって、上述したパージガスとしてパージ用配管814を介して吸気管201へ供給されるのである。
【0100】
尚、パージコントロールバルブ815は、本実施形態ではVSVとして構成されるが、その構成はVSVに限定されない。例えば、パージ用配管814上には、電磁アクチュエータ等により駆動される弁体を備えた電磁制御式の弁装置が設置されていてもよい。
【0101】
一方、サブタンク816の上方には、サブタンク816内部に貯留された燃料FL2の液面上部空間とブリーザ配管826とを適宜に連通させることが可能に構成されたベントバルブ825が備わる。
【0102】
ベントバルブ825は、サブタンク816の内圧とブリーザ配管826との差圧が所定値に達すると開弁するように構成されたバルブ装置である。ベントバルブ825は、その開弁時において、蒸発燃料(ベーパ)を含む空気を、ブリーザ配管826を介して後述するトラッパ827に供給することが可能に構成される。
【0103】
ベントバルブ825は、ORVRバルブ823を介して上記液面上部空間と連通する構成となっている。尚、ORVRバルブ823の基本的な構成は、特に記載しない点については、上述のORVRバルブ807と同様の構成であって良い。
【0104】
トラッパ826は、内部に蒸発燃料を吸着保持可能な活性炭等の吸着材827を備えたベーパ吸着装置である。トラッパ826は、上述したブリーザ配管826及び大気連通管829の二種類の配管に接続されている。
【0105】
大気連通管829は、ハイブリッド車両10の車外空間と連通する管状部材であり、典型的には大気連通管813と同様の構成である。
【0106】
(2)基本動作例
続いて、図3を参照して、本実施形態に係る燃料供給システム800の動作について説明する。ここに、図3は、本実施形態に係る燃料供給システム800の基本的な動作の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0107】
このような燃料供給システム800の基本的な動作によれば、典型的にはキャニスタ811内部の吸着材812に吸着保持され蒸発燃料の貯留量に基づいて、移送ポンプ822の動作により、メインタンク801に貯留される燃料FL1がサブタンク816へと移送される。このとき、併せて封鎖弁832の開弁制御が実施されることで、燃料FL1の移送によって負圧状態となるメインタンク801への蒸発燃料のパージが実施される。尚、この基本動作例においては、一度の燃料移送動作によって、メインタンク801に貯留される燃料FL1の全て、またはそのほとんどがサブタンク816へと移送される。以下に、図3のフローチャートを参照して燃料供給システム800の動作の詳細について説明する。
【0108】
まず、一連の動作を開始するにあたって、封鎖弁832が開弁している場合、ECU100の制御のもと、封鎖弁832の閉弁動作が実施される(ステップS101)。このような閉弁動作によって、封鎖弁832は全閉位置へと切り替えられ、メインタンク801とキャニスタ811とを接続するブリーザ配管810は、好適には封鎖される。
【0109】
続いて、キャニスタ811に接続される温度センサ830及び重量センサ831により検出される検出値に基づき、ECU100によってキャニスタ811内部における蒸発燃料の貯留量が算出され、算出された貯留量と、予め設定される閾値としての所定の貯留量とが比較される(ステップS102)。ここに、所定の貯留量とは、典型的には、吸着材812の保持限界量に対して比較的多い蒸発燃料の貯留量を示す趣旨であって、例えば、大気連通管813を介して蒸発燃料の大気中への放出が生じないよう、従来の燃料供給システムにおいて所謂ベーパ処理が実施される必要がある場合の蒸発燃料の貯留量などであっても良い。
【0110】
蒸発燃料の貯留量が、所定の貯留量以上である場合(ステップS102:Yes)、続いて、メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が検出され、検出された貯留量と、予め設定される閾値としての所定の貯留量とが比較される(ステップS103)。このときの、閾値たる燃料FL1の貯留量とは、後述する燃料移送を実施し得るだけの燃料FL1の貯留量を示す趣旨であって、例えば、メインタンク801において燃料FL1が充填されているときの10%程度の貯留量などであって良い。
【0111】
メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が所定の閾値と比較して多く(ステップS103:Yes)、更に、後に詳述するサブタンク816からメインタンク801への燃料移送(言い換えれば、燃料戻し)処理の実施中でない場合(ステップS104:Yes)、続いてメインタンク801内の内圧が圧力センサ833により検出され、予め設定される閾値としての所定の内圧とが比較される(ステップS105)。このときの、閾値たる所定の内圧とは、典型的には、封鎖弁832の開弁時に、キャニスタ811内部に貯留される蒸発燃料をメインタンク801内にパージすることで回収し得る程度の負圧を示す趣旨である。一般的なメインタンク及びキャニスタを想定する場合、このような閾値たる所定の内圧の一具体例として、例えば、−15kPa程度の負圧が設定されていることが好ましい。
【0112】
メインタンク801の内圧が、該閾値たる所定の内圧を上回る場合(ステップS105:No)、ECU100の制御のもと移送ポンプ822が駆動され、メインタンク801内の燃料FL1がサブタンク816へと移送される(ステップS106)。このとき、メインタンク801は、フューエルキャップ806及び封鎖弁832が閉弁状態にあることから密閉状況下にあるため、移送ポンプ822の動作により燃料FL1がサブタンク816へと移送されることに伴って、内圧が減少する。
【0113】
燃料FL1の移送により、メインタンク801の内圧が閾値たる所定の内圧以下となる場合(ステップS105:Yes)、ECU100は、燃料FL1の移送を停止するよう移送ポンプ822の動作を制御する(ステップS107)。更に、ECU100は、閉鎖弁109の開弁制御を実施する(ステップS108)。ここに、閉鎖弁109の開弁制御とは、少なくともメインタンク801とキャニスタ811との間でガスの流入出が可能な程度の開度が確保されるよう封鎖弁832の開弁を実施する処理を示す趣旨であり、好適には、封鎖弁832が全開開度まで開弁するようその動作が制御される。
【0114】
封鎖弁832の開弁によって、メインタンク801とキャニスタ811とが連通され、メインタンク801内の負圧により、キャニスタ811内に貯留される蒸発燃料がメインタンク801内へと流入する(即ち、パージされる)。このことから、キャニスタ811内部に貯留される蒸発燃料がメインタンク801へと回収される。従って、キャニスタ811内の蒸発燃料が、大気連通管813を介して大気中に放出されることを好適に抑制することが出来る。
【0115】
また、燃料FL1の移送に伴って、メインタンク801に貯留される燃料FL1の貯留量が上述した所定の閾値を下回る場合(ステップS103:No)、サブタンク816内部の燃料FL2の貯留量が残量センサ820により検出され、予め設定される閾値としての所定の貯留量とが比較される(ステップS109)。このとき、燃料FL2と閾値たる燃料FL2の貯留量との比較は、典型的には、サブタンク816内に多少なりと燃料FL2が貯留されているか否かを判定する処理動作であって、幾らかなりとサブタンク816内部に燃料FL2が貯留されていれば(つまり、燃料FL2の貯留量が所定の貯留量=サブタンク816の容量の0%を上回っていれば)、後述するサブタンク816からメインタンク801への燃料戻しが実施される(ステップS110)。
【0116】
該燃料戻し動作により、サブタンク816に貯留される燃料FL2がメインタンク801へと移送される。この動作により、サブタンク816に貯留される燃料FL2の貯留量が上述の所定の貯留量(例えば、サブタンク816の容量の0%)以下となる場合(ステップS109:No)、燃料戻し動作が停止される(ステップS111)。
【0117】
該燃料戻し動作により、メインタンク801の燃料FL1の貯留量が増加するため、上述した一連の燃料移送動作(即ち、ステップS101からステップS108に示される動作)を再度実施することが出来る。また、メインタンク801内における燃料FL1が占めない気相空間の容積を減少させることで、燃料FL1の蒸発を抑制することも出来、発生する蒸発燃料の低減が実現出来る。
【0118】
尚、上述したサブタンク816からメインタンク801への燃料戻し動作の実施に係る一連の判定処理は、あくまで燃料戻し動作の実施のための一条件であっても良く、より好適には、エンジン200の駆動時など、キャニスタ811からエンジン200への蒸発燃料のパージが実施されている場合に、上述した諸条件を満たす満たさないに関わらず、実施されても良いものである。
【0119】
図4は、本実施形態の燃料供給システム800の基本動作に伴う、メインタンク801の燃料FL1の貯留量の変動を概念的に示すグラフである。本基本動作例においては、メインタンク801内の燃料FL1のサブタンク816への移送によって、メインタンク801内に貯留される燃料FL1の全部、またはほとんど(例えば、メインタンク801の容量の10%以下)がサブタンク816へと移送される。その後、燃料戻し動作により、サブタンク816内の燃料FL2がメインタンク801へと移送され、メインタンク801内の燃料貯留量が再び増加する。以上の処理が繰り返し実施されるため、本基本動作例によれば、メインタンク801の燃料貯留量は、例えば図4に示されるようにジグザグに変動する。このとき、エンジン200の駆動や、燃料の蒸発に伴って、メインタンク801及びサブタンク816に貯留される全燃料貯留量が減少していくため、当然のことながらメインタンク801内の燃料貯留量は次第に減少していくこととなる。
【0120】
本変形動作例によれば、メインタンク801からの燃料移送に伴う内圧の低下によって、キャニスタ811内の蒸発燃料を好適にメインタンク801へと回収することが出来る。更に、メインタンク801内に貯留される燃料FL1の全部、またはほとんどが一度の移送ポンプ822の駆動によりサブタンク816へと移送されることから、移送ポンプ822は比較的低い頻度で連続的に駆動すれば上述の効果を享受することが出来る。これは、移送ポンプ822の断続的且つ高頻度の駆動と比較して、消費エネルギの抑制という点で有利である。
【0121】
以上、説明した一連の処理動作は、ハイブリッド車両10の走行中に適宜実施されることが好ましく、より好適には、比較的長期間エンジン200の稼働が行われない、MG1及びMG2の駆動による所謂力走中に実施されることで、より顕著な効果を享受することが可能となる。
【0122】
(3)変形動作例
本実施形態に係る燃料供給システム800の動作について、上述した基本動作例とは異なる変形動作例について図5を参照しながら説明する。本変形動作例によれば、上述した基本動作例と同様に、エンジン200の駆動によらず、キャニスタ811内の吸着材912に吸着保持される蒸発燃料の処理を実施することが出来る。
【0123】
本変形動作例においては、メインタンク801内が、メインタンク801からサブタンク816へ燃料移送を実施することでメインタンク801内を減圧し、キャニスタ811内の蒸発燃料を回収する一方で、メインタンク801が燃料FL1で充填されている状態を可能な限り維持出来るよう、サブタンク816からメインタンク801への燃料移送(つまり、燃料戻し)が実施される。
【0124】
具体的には、まず、図3に示される基本動作例のフローチャートと同様に、封鎖弁832の閉弁処理(ステップS201)及び、キャニスタ811内の蒸発燃料の貯留量と所定の蒸発燃料の貯留量の閾値との比較(ステップS202)がECU100により行われる。
【0125】
蒸発燃料の貯留量が、所定の貯留量以上である場合(ステップS202:Yes)、続いて、メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が検出され、検出された貯留量と、予め設定される閾値としての所定の貯留量とが比較される(ステップS203)。本変形動作例におけるこの閾値たる燃料FL1の貯留量とは、典型的には、メインタンク801が燃料FL1に満たされているか、または少なくともそれに近い状態にあるか否かを判断するための貯留量を示す趣旨であり、例えばメインタンク801の容量の90%程度の貯留量などの態様を採っていて良い。具体的には、本変形動作例においては、メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が該所定の貯留量以上である場合、メインタンク801は燃料FL1により十分充填されている状態であると判断され、メインタンク801に対する更なる燃料移送(言い換えれば、燃料戻し)が不要であると判断される。
【0126】
メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が所定の閾値と比較して多く(ステップS203:Yes)、後述する燃料戻し処理が実施中である場合、該燃料戻し処理が中止される(ステップS204)。
【0127】
燃料戻し動作の終了後、続いて、メインタンク801内の内圧が圧力センサ833により検出され、予め設定される閾値としての所定の内圧とが比較される(ステップS205)。このときの、閾値たる所定の内圧とは、上述した基本動作例と同様、典型的には、封鎖弁832の開弁時に、キャニスタ811内部に貯留される蒸発燃料をメインタンク801内にパージすることで回収し得る程度の負圧を示す趣旨である。
【0128】
メインタンク801の内圧が、該閾値たる所定の内圧を上回る場合(ステップS205:No)、基本動作例と同様、ECU100の制御のもと移送ポンプ822が駆動され、メインタンク801内の燃料FL1がサブタンク816へと移送される(ステップS206)。燃料FL1の移送により、メインタンク801の内圧が閾値たる所定の内圧以下となる場合(ステップS205:Yes)、ECU100は、燃料FL1の移送を停止すよう移送ポンプ822の動作を制御する(ステップS207)。更に、ECU100は、閉鎖弁109の開弁制御を実施する(ステップS208)。このときの各部の動作は、上述の基本動作例において対応する各部の動作(即ち、図3のステップS106乃至ステップS108)と同様のものであって良い。該一連の各部の動作によって、キャニスタ811内に貯留される蒸発燃料がメインタンク801内へとパージされ、メインタンク801へと回収される。従って、キャニスタ811内の蒸発燃料が、大気連通管813を介して大気中に放出されることを好適に抑制することが出来る。
【0129】
また、燃料FL1の移送に伴って、メインタンク801に貯留される燃料FL1の貯留量が上述した所定の閾値を下回る場合(ステップS203:No)、続いて、移送ポンプ822がサブタンク816からメインタンク801へと燃料FL2の移送動作(つまり、燃料戻し動作)を実施しているか否かが判定される(ステップS209)。燃料戻しが実施されている場合(ステップS209:Yes)、燃料戻し動作が継続される(ステップS211)。
【0130】
他方で、燃料戻し動作中でない場合(ステップS209:No)、続いて、メインタンク801に貯留される燃料FL1と、上述した閾値たる所定の貯留量とは異なる第2の閾値たる所定の貯留量とが比較される(ステップS210)。ここに、第2の閾値たる所定の貯留量とは、典型的には、メインタンク801が燃料FL1によって十分に充填されていないか否かを判断するための貯留量を示す趣旨であり、例えばメインタンク801の容量の80%程度の貯留量などの態様を採っていて良い。本変形動作例においては、メインタンク801内の燃料FL1の貯留量が該第2の閾値たる所定の貯留量を下回る場合、メインタンク801の充填状態を維持するために、メインタンク801に対して燃料移送(言い換えれば、燃料戻し)が必要であると判断される。
【0131】
メインタンク801における燃料FL2の貯留量が第2の閾値たる所定の貯留量以下である場合(ステップS210)、ECU100により移送ポンプ822の駆動が実施され、サブタンク816からメインタンク801への燃料戻しが実施される。
【0132】
以上、説明した一連の処理動作により、好適には、燃料移送動作(ステップS207)などによりメインタンク801における燃料FL1の貯留量が所定の貯留量(即ち、第2の閾値たる所定の貯留量)以下となる場合、サブタンク816からの燃料戻し動作が実施され、少なくともメインタンク801における燃料FL1の貯留量が所定の貯留量(即ち、第2の閾値とは異なる閾値たる所定の貯留量)以上となるまで、燃料FL1が充填される。
【0133】
図6は、本実施形態の燃料供給システム800の変形動作に伴う、メインタンク801の燃料FL1の貯留量の変動を概念的に示すグラフである。本基本動作例においては、メインタンク801内の燃料FL1のサブタンク816への移送によって、メインタンク801の内圧が所定の内圧以下となるまで燃料FL1がサブタンク816へと移送される。その後、メインタンク801内の燃料FL1の貯留量に基づいて燃料戻し動作が実施され、サブタンク816内の燃料FL2がメインタンク801へと移送され、メインタンク801内の燃料貯留量が再び増加する。以上の処理が繰り返し実施されるため、本基本動作例によれば、メインタンク801の燃料貯留量は、例えば図6に示されるようにジグザグに変動する。このとき、エンジン200の駆動や、燃料の蒸発に伴って、メインタンク801及びサブタンク816に貯留される全燃料貯留量が減少していくため、当然のことながらメインタンク801内の燃料貯留量は次第に減少していくこととなる。
【0134】
本変形動作例によれば、メインタンク801からの燃料移送に伴う内圧の低下によって、キャニスタ811内の蒸発燃料を好適にメインタンク801へと回収することが出来る。更に、メインタンク801は、可能な限り燃料FL1が充填されている状態が維持されるため、メインタンク801において燃料FL1が占めない気相空間の容積が比較的小さい時期が長くなる。これに伴って、メインタンク801の内圧が負圧となる機会が多くなり、上述した一連の燃料移送動作の実施が要される機会を低減させることが出来ることから、燃料移送に要するエネルギの抑制をも実現可能となる。
【0135】
以上、説明した一連の処理動作は、ハイブリッド車両10の走行中に適宜実施されることが好ましく、より好適には、比較的長期間エンジン200の稼働が行われない、MG1及びMG2の駆動による所謂力走中に実施されることで、より顕著な効果を享受することが可能となる。
【0136】
(4)第2実施形態
次に、図7を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図7は、本発明の第2実施形態に係る燃料供給システム800’の構成を概念的に表してなる概略構成図である。本発明においては、図2に示した本実施形態の燃料供給システム800の代わりに、本第2実施形態に示される燃料供給システム800’が備えられていても良い。尚、図7において、図2と重複する箇所には、同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0137】
図7において、燃料供給システム800’は、サブタンク816に替えて、ケース840に収容された容量可変型のサブタンク841を備える点において、第1実施形態と相違している。
【0138】
サブタンク841は、金属または樹脂製のケース840に収容されており、伸縮可能な樹脂製材料(例えば、硬質ゴムや強化ゴム等)で構成された、本発明に係る「容量可変構造」の一例たる構造を有する容器である。
【0139】
このサブタンク841によれば、貯留する燃料FL2の量に応じて、その容量が可変となり得るため、燃料FL2に起因する蒸発燃料の発生や、燃料FL1をサブタンク841に移送する際に生じる燃料の蒸発を好適に抑制することが可能となる。このため、第1実施形態におけるトラッパ827及び該トラッパ827に発生する蒸発燃料を貯留するために要される各手段が不要となり、比較的簡単な構成により第1実施形態と同等の効果を享受し得るため、実践上有益である。
【0140】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う燃料貯留システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0141】
10…ハイブリッド車両、100…ECU、200…エンジン、201…吸気管、205…インジェクタ、300…動力分割機構、400…PCU、500…バッテリ、600…充電プラグ、700…リレー回路、800,800’…燃料供給システム、801…メインタンク、809…ベントバルブ、810…ブリーザ配管、811…キャニスタ、812…吸着材、813…大気連通管、814…パージ用配管、815…パージコントロールバルブ、816…サブタンク、821…連通管、822…移送ポンプ、830…温度センサ、831…重量センサ、832…封鎖弁、圧力センサ833

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において内燃機関の燃料を貯留するシステムであって、
前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給装置に接続されると共に前記燃料を第1の燃料として貯留可能な第1の液室と、
前記燃料を第2の燃料として貯留可能な第2の液室と、
前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送可能であると共に、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送可能な移送手段と、
前記内燃機関及び前記第1の液室に連通されると共に、前記第1の液室で発生した蒸発燃料を貯留するキャニスタと、
開閉動作に伴って前記第1の液室と前記キャニスタとの間を開放及び封鎖可能な封鎖弁と、
前記キャニスタにおける前記蒸発燃料の貯留量を算出する算出手段と、
前記移送手段及び前記封鎖弁を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記キャニスタにおける前記蒸発燃料の貯留量が第1の所定量以上である場合、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送させるよう前記移送手段を制御すると共に、前記封鎖弁を開放するよう制御することを特徴とする燃料貯留システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記キャニスタに貯留される蒸発燃料が前記内燃機関にパージされる場合、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送させるよう前記移送手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料貯留システム。
【請求項3】
前記第2の液室に連通されると共に、前記第2の液室で発生した蒸発燃料を貯留するトラッパを更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料貯留システム。
【請求項4】
前記第2の液室は、容量可変構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料貯留システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の燃料の貯留量がゼロになるまで、前記第1の燃料を前記第2の液室に移送させるよう前記移送手段を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料貯留システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送した後に、前記第1の燃料の貯留量が第2の所定量以上となるように、前記第2の燃料を前記第1の液室へ移送させるよう前記移送手段を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料貯留システム。
【請求項7】
前記第1の液室の内圧を測定する圧力測定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記第1の液室の内圧が所定圧以下となった場合、前記第1の燃料を前記第2の液室へ移送させることを停止するよう前記移送手段を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料貯留システム。
【請求項8】
前記車両は、前記内燃機関と共に動力源として機能する少なくとも一つの電動機を備えたハイブリッド車両であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料貯留システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242512(P2010−242512A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89109(P2009−89109)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】