説明

燃料電池の構成部品のガスケット成形ラインにおけるノズルタッチ機構

【課題】簡単な構成で、複数設けられた金型のガスケット材料注入部に容易に且つ確実に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合して、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを成形するためのサイクルタイムを短縮することが可能なノズルタッチ機構を提供する。
【解決手段】ノズルタッチ機構1は、各金型2に設けられた金型側フック4と、射出プランジャ3に設けられ金型側フック4と係合および離脱可能な射出プランジャ側フック5と、金型側フック4と射出プランジャ側フック5とが係合した状態で、射出プランジャ3のノズル3aを金型2のガスケット材料注入部2aに押し付けるよう駆動するサーボモータ6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の構成部品のガスケット成形ラインにおけるノズルタッチ機構に関し、さらに詳しくは、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを一体成形するための金型が複数設けられたガスケット成形ラインにおいて、各金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合するノズルタッチ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池では一般に、複数のセルを積層し、両端をエンドプレートによって挟持している。各セルの構成部品としては、電解質膜の両面に電極層を設けたMEA(Membrane Electrode Assembly:膜−電極アセンブリ)と、MEAの両側に配置された多孔質のガス拡散層と、ガス拡散層へガスを流通する多孔体と、これらのMEA、ガス拡散層、多孔体を挟持するセパレータとを含んでいる。MEAとその両側に配置されたガス拡散層とにより構成される部材は、一般にMEGAと呼ばれる。燃料ガスや酸化ガスなどの燃料電池の発電に用いられる反応ガスは、セパレータを積層することにより燃料電池内部に形成されるマニホールドを流れ、多孔体、ガス拡散層を介して膜電極接合体へ供給される。
【0003】
そして、燃料電池においては、MEAにおける電解質膜と電極層との間、MEGAにおけるMEAとその両側に配置されたガス拡散層との間、単セルにおけるMEGAとセパレータと間、互いに隣接するセルのセパレータの間などに、ガスや冷媒をシールするためのガスケットが設けられる。
【0004】
このような燃料電池の構成部品にガスケットを設ける場合には、射出成形機を使用して、金型内に燃料電池の構成部品を収容し、成形するガスケットと対応する形状のキャビティ内にガスケットの材料を注入することが一般に行われている。そして、燃料電池においては、たとえば300〜400枚など、大量のセルを積層するため、その構成部品にガスケットを成形するにあたっては、複数の金型を設けて、各金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合して、各金型のキャビティ内にガスケットの材料を注入している。
【0005】
各金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合するノズルタッチ機構の従来の技術としては、特許文献1が知られている。特許文献1には、複数の型締装置を機台上に並設し、その型締装置に対し機台上の射出装置を横移動させて個々にノズルタッチを行うにあたり、型締装置側の機台をノズルタッチの反力として作用するように、ノズルタッチ用シリンダを横スライドベース上の進退自在な射出装置の前部にピストンロッド側を連結して、横スライドベース前部の支持台上に配設する一方、型締装置側の機台に受金具を型締装置ごとに配置し、その受金具に対し横方向から係脱可能な連結金具をシリンダ本体の端部に設けて、該シリンダ本体を側部のホルダーにより軸方向に可動自在に上記支持台に載置するとともに、そのホルダーの前後面を調圧自在なばね部材により弾圧支持して、上記受金具に対する連結金具の位置決めを可能とする構成からなることを特徴とする複数の型締装置に対するノズルタッチ装置が開示されている。
【0006】
そして、特許文献1には、シリンダ本体14の型締装置側に臨む端部には、型締装置2,3ごとに機台1に設けたT状形の受金具15に対し、横方向から係脱可能で内端上下に係合爪を有するコ状形の連結金具16が設けてあるなどと記載されている(0010を参照。なお、特許文献1に関する記述については、特許文献1に表記されている符号をそのまま記載する)。また、特許文献1には、上記受金具15と連結金具16は、射出装置5の横移動による係脱時に互いに擦れが生じないように、所要のクリアランス(約5mm)を隔てて嵌合するように相対位置が予め決められており、この位置決めはホルダー17を弾圧支持しているばね部材20,20の弾撥力の変更により生ずる位置移動により容易に行うことができるなどと記載されている(0013)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−249890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、型締装置2,3側の機台1に型締装置2,3ごとに配置された受金具15に対して、シリンダ本体14の端部に設けられた連結金具16を係脱する方向が横方向からのみに限定されるため、設計の自由度が制限され、装置が大型化するなどの問題があった。また、特許文献1にあっては、受金具15と連結金具16は、射出装置5の横移動による係脱時に互いに擦れが生じないように、所要のクリアランス(約5mm)を隔てて嵌合するように相対位置を予め決める必要があるため、射出装置5のノズルを精度よく金型の注入部にノズルタッチさせることが困難であることから、シリンダ本体を側部のホルダーにより軸方向に可動自在に支持台に載置するとともに、そのホルダーの前後面を調圧自在なばね部材により弾圧支持する必要があり、構造が複雑となるなどの問題もあった。
【0009】
さらに、特許文献1にあっては、ノズルタッチの駆動にシリンダを用いており、このシリンダの作動流体として一般に圧油を採用することから、駆動制御の応答性が良好でなく、また、射出装置を移動させるのに時間がかかり、成形サイクルタイムを短縮することが困難であるなどの問題があった。なお、この問題を回避するために、シリンダを電動モータとボールねじ機構に単に替えることが考えられるが、上述したように受金具15と連結金具16がその係脱を横方向に限定される構造であるために、射出装置も横方向に移動させなければならず、制御が煩雑となり、また、受金具15と連結金具16の係脱に時間がかかり、結局成形サイクルタイムを短縮することが困難となるという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを一体成形するためのガスケット成形ラインにおいて、簡単な構成で、複数設けられた金型のガスケット材料注入部に容易に且つ確実に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合することができ、しかも、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを成形するためのサイクルタイムを短縮することが可能なノズルタッチ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のノズルタッチ機構は、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを一体成形するための金型が複数設けられたガスケット成形ラインにおいて、各金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合するノズルタッチ機構であって、前記各金型に設けられた金型側フックと、前記射出プランジャに設けられ前記金型側フックと係合および離脱可能な射出プランジャ側フックと、前記金型側フックと射出プランジャ側フックとが係合した状態で、前記射出プランジャのノズルを金型のガスケット材料注入部に押し付けるよう駆動するサーボモータとを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、所定の金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合するノズルタッチを行うに際して、金型に設けられた金型側フックと、射出プランジャに設けられた射出プランジャ側フックとを係合させた状態で、サーボモータによって射出プランジャのノズルを金型のガスケット材料注入部に押し付けるよう駆動する。射出プランジャは、サーボモータの駆動によって制御応答性がよく正確に且つ短時間で金型に向かって近づくように移動し、ノズルタッチした以後には金型側フックと射出プランジャ側フックとが係合していることによりノズルタッチによる反力を受けるため、射出プランジャのノズルを金型のガスケット材料注入部に設定されたノズルタッチ力で確実に押し付けるよう接合させることができる。また、ガスケットの注入が完了して他の金型に移動するに際しては、金型のガスケット材料注入部に対する射出プランジャのノズルの押し付けを解除して、金型側フックと射出プランジャ側フックとの係合を離脱させる。射出プランジャのノズルは、その移動方向を制限されることなく、それまでノズルタッチしていた金型のガスケット材料注入部から、次にノズルタッチさせる金型のガスケット材料注入部と対応する位置に短時間で移動することができる。したがって、燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを成形するためのサイクルタイムを短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の燃料電池の構成部品のガスケット成形ラインにおけるノズルタッチ機構の実施の一形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明のノズルタッチ機構1は、概略、燃料電池の構成部品Mの表面上にガスケットを一体成形するための金型2が複数設けられたガスケット成形ラインにおいて、各金型2のガスケット材料注入部2aに射出プランジャ3のノズル3aを押し付けるように接合するためのもので、各金型2に設けられた金型側フック4と、射出プランジャ3に設けられ金型側フック4と係合および離脱可能な射出プランジャ側フック5と、金型側フック4と射出プランジャ側フック5とが係合した状態で、射出プランジャ3のノズル3aを金型2のガスケット材料注入部2aに押し付けるよう駆動するサーボモータ6と、サーボモータ6の駆動力を射出プランジャ3の移動に変換する駆動変換手段7とを備えている。
【0014】
最初に、本発明のノズルタッチ機構1が設けられる燃料電池の構成部品Mのガスケット成形ラインについて説明する。図1に示した実施の形態では、燃料電池の構成部品Mのガスケット成形ラインは、複数の金型2および各金型2を開閉するための型開閉機構20が配置されており、金型2にガスケットの材料を注入するためのノズル3aを有する射出プランジャ3が任意の金型2と対応する位置に移動するよう構成されている。そして、ガスケット成形ラインは、射出プランジャ3を移動させるための移動手段8と、構成部品Mを支持して投入ステーションから所定の金型2の近傍に搬送し、また、ガスケットが成形された構成部品Mを支持して所定の金型2の近傍から取り出しステーションまで搬送する移動台9と、この移動台9から所定の金型2内に構成部品Mを収容し、また、所定の金型2からガスケットが成形された構成部品Mを取り出して移動台に載置するロボット10と、ロボット10を所定の金型2と移動台9との間の所定位置に移動させる移動手段11と、を備えている。
【0015】
図1に示した実施の形態における金型2は、所謂竪型のもので、基盤21上にそれぞれタイバー22が立設されており、タイバー22の先端には固定盤23の角部が連結されている。そしてタイバー22には可動盤24が昇降移動可能に挿通されている。固定盤23と可動盤24の対向面には、金型2として上型25と下型26がそれぞれ取り付けられる。また、可動盤24の下面には、型開閉機構として型締ラム20が接続されている。両金型25,26の衝合面には、燃料電池のガスケットが形成される構成部品Mとして、MEGAやセパレータなどを収容し、その表面に形成するガスケットの形状に応じたキャビティが型閉じしたときに形成されるよう型彫されている。図2および図3に示すように、固定盤23のほぼ中央には射出プランジャ3のノズル3aを進入させるための孔23aが形成されており、上型25の上面には、射出プランジャ3のノズル3aの先端が当接されて金型2のキャビティ内にガスケットの材料を注入するためのガスケット材料注入部2aが上方に開口するように形成されている。
【0016】
図1に示した実施の形態では、複数の金型2および型開閉機構20が2列で配設されており、各金型2の上方に配設された移動手段としてのガントリー式移載装置8に射出プランジャ3が支持されている。ガントリー式移載装置8は、各列の金型3の上方に平行に設けられた一対のガイドレール30、30と、両ガイドレール30,30の間に端部が移動可能に架設された桁レール31と、桁レール31に移動可能に設けられ射出プランジャ2を移動可能に支持する支持部材32とを備えてなるものである。
【0017】
この実施の形態では、ガスケットの材料として液状のシリコン系ゴム材料が採用される。そのため、射出プランジャ3は、たとえば、タンクに貯留された液状のガスケットの材料が供給されるシリンダと、このシリンダ内に嵌挿されたピストンと、ピストンを制御可能に駆動してシリンダ内に供給された液状のガスケットの材料を正確な量だけ押出す駆動手段とを備えたもので、シリンダの先端にノズル3aが形成されている。
【0018】
そして、射出プランジャ3は、昇降移動手段33を介して支持部材32に支持されている。昇降移動手段33は、支持部材32に立設された一対のガイドピン34と、ガイドピン34に両端近傍が昇降移動可能に挿通された射出プランジャ3を支持する昇降台35と、昇降台35に設けられたサーボモータ6と、サーボモータ6の回転軸に接続されたボールねじ軸36と、支持部材32に設けられてボールねじ軸36が螺合されるボールねじナット37とを備えている。すなわち、上述した駆動変換機構7は、この実施の形態では、ボールねじ軸36とボールねじナット37とからなるボールねじ機構によって構成されている。
射出プランジャ3は、そのノズル3aが金型2の上向きに開口しているガスケット材料注入部2aと対応するように、すなわち下方に向くように、昇降台35に支持されている。また、射出プランジャ3のシリンダは、支持部材32に形成された孔32aに摺動可能に挿通されている。なお、昇降移動手段33は、この実施の形態に限定されることはなく、たとえば、昇降台35にガイドピン34を立設すると共に、昇降台35の孔にガイドピン34を挿通することもでき、また、ボールねじ軸25を有するサーボモータ6を支持部材32に設けると共に、ボールねじナット37を昇降台35に設けることもできる。
【0019】
射出プランジャ3は、ガイドレール30に対する桁レール31の移動と、桁レール31に対する支持部材32の移動により、各金型2の上方を移動して、任意の金型2のガスケット材料注入部2aと対応する位置に移動することができる。また、サーボモータ6によってボールねじ軸36をその軸回りの任意の方向に回転駆動することにより、昇降台35に支持された射出プランジャ3は、下降移動してそのノズル3aが金型2のガスケット材料注入部2aに対して当接され、また、上昇移動してそのノズル3aが金型2のガスケット材料注入部2aから離間し上方に退避することができる。
【0020】
図2および図3に示すように、各固定盤23の射出プランジャ3のノズル3aを進入させるための孔23aの周囲には複数(図では2個で一対の場合が示されている)の金型側フック4が設けられている。なお、金型2が取り付けられる固定盤23に金型側フック4が設けられているため、本発明では金型2に設けられた金型側フック4と表現している。金型側フック4は、固定盤23の上面から上方に向かって延び、先端が孔23aの中心に対して外側に向くように屈曲した鉤状に成形されている。
【0021】
また、支持部材32には、金型側フック4と対応して複数の射出プランジャ側フック5の基端部が、それぞれ軸5aによって回動可能に支承されている。射出プランジャ側フック5の先端は、支持部材32に支持された射出プランジャ3のノズル3aに向かって内側へ屈曲した鉤状に成形されている。射出プランジャ側フック5には、軸5aを中心として互いに開閉するよう回動させるシリンダやモータなどからなる駆動手段が設けられている。なお、射出プランジャ側フック5の駆動手段は、両射出プランジャ側フック5が同期して開閉動作を行うように構成することが望ましい。なお、射出プランジャ3が支持されている支持部材32に射出プランジャ側フック5が設けられているため、本発明では射出プランジャ3に設けられ金型側フック4と係合および離脱可能な射出プランジャ側フック5と表現している。射出プランジャ側フック5の長さは、その内側に向かって屈曲された先端部が金型側フック4の外側に向かって屈曲された先端部に対して、開閉動作によって係合・退避し得る長さに設定されている。
【0022】
次に、上述したように構成された本発明のノズルタッチ機構1の作動を説明する。燃料電池の構成部品MであるMEGAやセパレータのマニホールドの周囲にガスケットを成形するに際しては、所定の金型2(23,24)を開いて燃料電池の構成部品Mをセットし、金型2を閉じてそのキャビティの内部に燃料電池の構成部品Mを収容する。そして、ガイドレール30に対して桁レール31を移動させると共に、桁レール31に対して支持部材32を移動させ、射出プランジャ3を各金型2の上方で移動させて、燃料電池の構成部品Mがキャビティ内に収容された金型2のガスケット材料注入部2aの上方に射出プランジャ3のノズル3aを対応させて配置するよう移動させる。このとき、図2に示すように、射出プランジャ3を支持している昇降台35は、サーボモータ6によるボールねじ軸36の軸周りの回転駆動によって支持部材32から離れるように上昇しており、射出プランジャ3のノズル3aが固定盤23は勿論のこと、図2に鎖線で示したように、金型側フック4の上端よりも上方に退避するよう位置しているので、これらに干渉することはない。また、射出プランジャ側フック5は、駆動手段によって互いに開くよう回動されて先端が図2鎖線よりも上方に退避しており、固定盤23や金型側フック4に干渉することはない。したがって、各金型2のガスケット材料注入部2aに対する射出プランジャ3の移動方向を制限されることがない。
【0023】
燃料電池の構成部品Mがキャビティ内に収容された金型2のガスケット材料注入部2aの上方に射出プランジャ3のノズル3aが対応して配置されると、図3に示すように、射出プランジャ側フック5を駆動手段によって互いに閉じるよう回動させて、その内側に向くように屈曲された先端部を金型側フック4の外側に向くように屈曲された先端部と係合させる。射出プランジャ側フック5を互いに同期させて閉じるように回動させることにより、金型2のガスケット材料注入部2aに対してノズル3aの先端を位置合わせすることができる。この状態で、サーボモータ6を駆動して、支持部材32に保持されたボールねじナット37に螺合されているボールねじ軸36をその軸周りに回転させる。これにより、昇降台35がガイドピン34に沿って支持部材32に近接するよう素早く下降し、昇降台35に支持された射出プランジャ3も下降して、そのノズル3aが金型2の上方に向いたガスケット材料注入部2aに当接するノズルタッチが短時間で行われることとなる。
【0024】
このとき、射出プランジャ側フック5が金型側フック4に係合されているため、ノズルタッチ力の反動などによる支持部材32の浮き上がりなどが確実に防止され、したがって、射出プランジャ3のノズル3aが金型2のガスケット材料注入部2aに確実に所定のノズルタッチ力で当接される。そのため、射出プランジャ3を昇降駆動するための昇降移動手段33を構成するサーボモータ6が比較的小型で済み、しかも、射出プランジャ3を昇降させるために必要な時間が短時間で済む。
【0025】
ノズルタッチが完了すると、射出プランジャ3によってガスケットの液状の材料は、金型2のガスケット材料注入部2aからキャビティ内に注入される。ここで、燃料電池においては、各種の構成部品からなるセルが数多く積層される。そのため、成形されるガスケットの厚さに僅かでもバラツキが生じると、燃料電池全体の大きさに影響を及ぼすこととなる。そのため、正確な量のガスケットの材料を注入するする必要がある。
【0026】
ガスケット材料の注入が完了し、または、このガスケット材料の固化が完了すると、サーボモータ6を駆動して、支持部材32に保持されたボールねじナット37に螺合されているボールねじ軸36をその軸周りに逆回転させて、昇降台35を支持部材32から離間させるように上昇させる。これにより、射出プランジャ3は昇降台35と共に素早く上昇して、そのノズル3aが金型2のガスケット材料注入部2aからに離間し、図2に鎖線で示した金型側フック4の上端よりも上方に退避する。
【0027】
続いて、射出プランジャ側フック5を駆動手段によって互いに開くよう回動させて、金型側フック4に対する係合を解除し、その先端を図2に鎖線で示した金型側フック4の上端よりも上方に退避させる。これにより、金型2の上方の平面において、射出プランジャ3の移動方向が従来の技術のように制限されることがなく、したがって、複数の金型2および型開閉機構20を2列以上で配設した場合であっても、次にガスケット材料を注入する金型2がガスケット材料の注入が完了した金型2からどのような方向(位置)にあっても、最短距離で素早く移動させることが、すなわち成形サイクルを短縮することが可能となる。
【0028】
ガスケット材料が固化すると、型開閉機構20により金型2(25,26)を開いて、ロボット10により表面にガスケットが一体成形された燃料電池の構成部品Mを取り出して移動台9に載置し、取出ステーションへと搬送し、次いで、投入ステーションで次にガスケットを成形する燃料電池の構成部品Mを移動台9に載置して、その金型2の近傍まで搬送し、ロボット10により構成部品Mを把持して金型2にセットする。
【0029】
次に、本発明の別の実施の形態を図4および図5に基づいて説明する。この実施の形態の説明においては、上述した実施の形態と同様または相当する部分については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。なお、図4はガスケット成形ラインの平面図であり、図5は図4の正面図であるが、本発明のノズルタッチ機構1を説明する都合上、図4と図5を完全に整合させて示していない部分があることに注意されたい。
【0030】
上述した実施の形態においては複数の金型2および型開閉機構20が2列で配設され、射出プランジャ3が移動するよう構成されていたのに対し、この実施の形態においては、複数の金型3および型開閉機構20が垂直軸回りに回転可能なターンテーブル40上に環状に配設され、射出プランジャ3が複数の金型2および型開閉機構20を跨ぐように設けられた門型フレーム41の支持部材32に支持されている。
【0031】
この実施の形態においては、所定の金型2のガスケット材料注入部2aが射出プランジャ3のノズル3aの下方に対応するようターンテーブル40が回転駆動される(図4の矢印を参照)。このとき、図2に示したように、射出プランジャ3を支持している昇降台35が支持部材32から離れるように上昇しており、射出プランジャ3のノズル3aが金型側フック4の上端よりも上方に退避しているので、固定盤23や金型側フック4に干渉することはない。また、射出プランジャ側フック5は、駆動手段によって互いに開くよう回動されて先端が金型側フック4の上端よりも上方に退避しており、固定盤23や金型側フック4に干渉することはない。したがって、ターンテーブル40の回転による金型側フック4の回転軌跡上に射出プランジャ側フック5が位置していても、射出プランジャ側フック5がターンテーブル40の回転による金型2の移動を制限することがない。
【0032】
所定の金型2のガスケット材料注入部2aが射出プランジャ3のノズル3aの下方に対応する位置でターンテーブル40の回転が停止されると、図5に示したように、射出プランジャ側フック5を互いに閉じるよう回動させて金型側フック4に係合させる。この状態で、サーボモータ6を駆動して、昇降台35と共に射出プランジャ3を下降させて、そのノズル3aを金型2のガスケット材料注入部2aに当接させてノズルタッチを行う。このとき、射出プランジャ側フック5が金型側フック4に係合されているため、ノズルタッチ力の反動などによる支持部材32の浮き上がりなどが確実に防止され、したがって、射出プランジャ3のノズル3aが金型2のガスケット材料注入部2aに確実に所定のノズルタッチ力で当接される。そのため、射出プランジャ3を昇降駆動するための昇降移動手段33を構成するサーボモータ6が比較的小型で済み、しかも、射出プランジャ3を昇降させるために必要な時間が短時間で済む。
【0033】
ノズルタッチが完了すると、射出プランジャ3によってガスケットの液状の材料は、金型2のガスケット材料注入部2aからキャビティ内に注入される。なお、燃料電池の構成部品Mのガスケット成形においては、正確な量のガスケットの材料を注入するする必要があることは上述したとおりである。
【0034】
ガスケット材料の注入が完了し、または、このガスケット材料の固化が完了すると、サーボモータ6を駆動して昇降台35を上昇させ、射出プランジャ3を昇降台35と共に上昇させて、そのノズル3aを金型2のガスケット材料注入部2aから離間させて、金型側フック4の上端よりも上方に退避させる。続いて、射出プランジャ側フック5を互いに開くよう回動させて、金型側フック4に対する係合を解除し、その先端を金型側フック4の上端よりも上方に退避させる。これにより、射出プランジャ側フック5に対する金型2の移動が制限されることはなく、ターンテーブル40の回転によって金型側フック4が射出プランジャ側フック5の下方を回転し、しかも、射出プランジャ側フック5に係合・解除することができる。したがって、射出プランジャ側フック5および金型側フック4の設ける向きを、ターンテーブル40の回転に関係なく自由に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のノズルタッチ機構が適用されるガスケット成形ラインの実施の一形態を説明するために一部切欠いて示した斜視図である。
【図2】本発明のノズルタッチ機構の一実施の形態を示したもので、金型側フックに射出プランジャ側フックを係合させず、ノズルタッチさせていない状態を説明するために示した正面図である。
【図3】図2の状態からノズルタッチ機構の金型側フックに射出プランジャ側フックを係合させてノズルタッチさせた状態を説明するために示した正面図である。
【図4】本発明のノズルタッチ機構が適用されるガスケット成形ラインの別の実施の形態を説明するために示した平面図である。
【図5】図4の正面図である。
【符号の説明】
【0036】
M:燃料電池の構成部品、 1:ノズルタッチ機構、 2:金型、 2a:ガスケット材料注入部、 3:射出プランジャ、 3a:ノズル、 4:金型側フック、 5:射出プランジャ側フック、 6:サーボモータ、 7:ボールねじ機構(駆動変換機構)、 33:昇降移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の構成部品の表面上にガスケットを一体成形するための金型が複数設けられたガスケット成形ラインにおいて、各金型のガスケット材料注入部に射出プランジャのノズルを押し付けるように接合するノズルタッチ機構であって、
前記各金型に設けられた金型側フックと、
前記射出プランジャに設けられ前記金型側フックと係合および離脱可能な射出プランジャ側フックと、
前記金型側フックと射出プランジャ側フックとが係合した状態で、前記射出プランジャのノズルを金型のガスケット材料注入部に押し付けるよう駆動するサーボモータとを備えていることを特徴とするノズルタッチ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69776(P2010−69776A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241088(P2008−241088)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】