説明

燃料電池システムおよびその停止方法

【課題】燃料電池スタックの電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の低下を抑制する燃料電池システムを提供する
【解決手段】燃料電池スタック3による発電を停止させる場合に、電動弁B11を閉状態に制御し、燃料電池スタック3の電圧値が基準電圧値以下に低下したときに、電動弁B12を閉状態に制御する。そして、電磁弁B21を閉状態に制御する。アノード31側の圧力値が所定の圧力値まで上昇したときに、電磁弁B22を閉状態に制御する。これにより、アノード31内が改質ガスによって加圧状態となり、アノード31側から移動した水素によってカソード32内も加圧状態となる。このため、燃料電池スタック3の外部からアノード31内およびカソード32内への酸素の拡散が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムおよびその停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、水素含有ガスと酸素含有ガスとを燃料電池スタックに供給し、燃料電池スタックで発電を行っている。この電池スタックは、アノードと、電解質と、カソードとが備えられており、アノードに水素含有ガスが供給され、カソードに酸素含有ガスが供給される。このような燃料電池システムとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−71778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の燃料電池システムでは、例えば燃料電池システムの起動時等、水素含有ガスを燃料電池スタックのアノードに供給するときに、アノード側に酸素が存在しているとカソード電極が劣化する恐れがある。また、カソード側においても酸素が存在していると、カソード側の電極触媒が劣化する恐れがある。これらを防止するため、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池システムの停止時に燃料電池スタック内に残存する水素含有ガスあるいは酸素含有ガスを、不活性ガスに置き換えることが行われている。しかしながら、電極の劣化を防止するために燃料電池システムの停止時でも不活性ガスとして原料ガスを供給し続ける必要があり、燃料の利用効率が悪いといった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、燃料電池スタックの電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の低下を抑制する燃料電池システムおよびその停止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カソードおよびアノードを有するセルを複数積層してなるスタックと、セルのカソード側に酸素含有ガスを供給するための第1ガス供給ラインに位置し、該カソード側の供給ガス流量を調整する第1供給ガス流量調整部と、セルのカソード側からガスを排出するための第1ガス排出ラインに位置し、該カソード側の排出ガス流量を調整する第1排出ガス流量調整部と、セルのアノード側に水素含有ガスを供給するための第2ガス供給ラインと、セルのアノード側からガスを排出するための第2ガス排出ラインに位置し、該アノード側の排出ガス流量を調整する第2排出ガス流量調整部と、第1供給ガス流量調整部および第1排出ガス流量調整部の少なくとも一方を制御してカソード側におけるガス流量を低減し、スタックの電圧値が基準電圧値以下になった場合に、第1供給ガス流量調整部および第1排出ガス流量調整部を制御してセルのカソード側を閉鎖系とし、且つ、第2排出ガス流量調整部を制御してアノード側における圧力値を基準圧力値以上にする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明は、カソードおよびアノードを有するセルを複数積層してなるスタックと、セルの前記カソード側に酸素含有ガスを供給するための第1ガス供給ラインに位置し、該カソード側の供給ガス流量を調整する第1供給ガス流量調整部と、セルのカソード側からガスを排出するための第1ガス排出ラインに位置し、該カソード側の排出ガス流量を調整する第1排出ガス流量調整部と、セルのアノード側に水素含有ガスを供給するための第2ガス供給ラインと、セルのアノード側からガスを排出するための第2ガス排出ラインに位置し、該アノード側の排出ガス流量を調整する第2排出ガス流量調整部と、を備える燃料電池システムの停止方法であって、第1供給ガス流量調整部および第1排出ガス流量調整部の少なくとも一方を制御してカソード側におけるガス流量を低減する工程と、スタックの電圧値が基準電圧値以下になった場合に、第1供給ガス流量調整部および第1排出ガス流量調整部を制御してセルのカソード側を閉鎖系とする工程と、第2排出ガス流量調整部を制御してアノード側またはカソード側における圧力値を基準圧力値以上にする工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
これらの発明にあっては、燃料電池スタックによる発電を停止させる場合に、カソードから導出されるガスおよびカソードに導入される酸素含有ガスの少なくとも一方の流れを低減した状態(例えば、ガスの流れを阻害または遮断した状態)で、燃料電池スタックの電圧値が基準電圧値以下に低下したときに、カソードから導出されるガス、およびカソードに導入される酸素含有ガスの流れが遮断される。これによりカソード側が閉鎖系となる。ここで、燃料電池スタックは、カソード側の酸素が消費されると、電圧値も低下する。従って、電圧値が基準電圧値以下に低下したときに、カソード側を閉鎖系とすることにより、カソード側において酸素が十分に低減された状態が維持される。
【0009】
更に、アノード側の圧力値が基準圧力値以上になるように第2排出ガス流量調整部が制御される。このとき、水素含有ガスによって加圧状態となったアノード側からカソード側へ水素が移動するため、カソード側も加圧状態となる。このように、アノード側およびカソード側が加圧状態となるため、燃料電池スタックの外部からアノードおよびカソード内への酸素の拡散が抑制され、燃料電池スタックの電極の劣化を抑制できる。
【0010】
また、燃料電池システムの停止時にアノードおよびカソードを加圧維持することにより、燃料電池スタック内のガスを不活性ガス(原料ガス)に置き換える処理を継続して行うことが不要となり、電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の向上を図ることができる。また、燃料電池スタック内のガスを不活性ガスに置き換える処理が不要であるため、不活性ガスをカソード等に供給するためのバイパスラインを別途設ける必要が無く、燃料電池システムの小型化を図ることができる。
【0011】
また、スタックの電流を掃引する電流掃引部を更に備えることが好適である。
【0012】
この電流掃引部によって、燃料電池スタックの電圧値が基準電圧値以下になるまで電流の掃引を行うことにより、カソードの酸素濃度を効率よく低減させることができる。
【0013】
また、第2ガス供給ラインに位置し、アノード側の供給ガス流量を調整する第2供給ガス流量調整部を更に備え、制御部は、第2排出ガス流量調整部を制御してアノード側またはカソード側における圧力値が基準圧力値以上になった場合に、第2供給ガス流量調整部および第2排出ガス流量調整部を制御してセルのアノード側を閉鎖系とすることが好適である。
【0014】
この場合には、アノード側に水素含有ガスを供給することなく、アノード側およびカソード側の双方の加圧状態を維持することができるので、電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の低下を抑制することが可能となる。
【0015】
また、改質触媒によって原燃料を改質し、水素含有ガスを生成する改質装置を更に備えることが好適である。
【0016】
この場合には、改質装置によって生成された水素含有ガスをアノードに供給することができる。即ち、水素含有ガスを生成するための原料として液体燃料(灯油等)を用いることができるため、水素含有ガスの生成に用いられる原料の種類の汎用性を高めることが可能となる。
【0017】
また、第2ガス供給ラインと第2ガス排出ラインにおける第2排出ガス流量調整部の下流側とを連結するバイパスラインと、バイパスラインを流通する水素含有ガスのガス流量を調整するバイパスライン流量調整部と、を更に備え、制御部は、第2排出ガス流量調整部を制御してアノード側の排出ガス流量を低減する場合に、バイパスライン流量調整部を制御して水素含有ガスを流通させることが好適である。
【0018】
この場合には、バイパスラインを流れる水素含有ガスを、例えば、改質装置の改質触媒を加熱するバーナの燃料として用いることにより、アノード側を加圧しつつ、改質装置において水素含有ガスを生成するのに十分な温度を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料電池スタックの電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの一実施形態の概略構成図である。
【図2】制御部が行う制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る燃料電池システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る燃料電池システムの全体構成について説明する。図1は、燃料電池システム1の概略構成図である。図1に示すように燃料電池システム1は、気体燃料または液体燃料から水素含有ガスとしての改質ガスを生成する改質装置2と、改質装置2によって生成された改質ガスを用いて発電を行う燃料電池スタック3と、を備えている。燃料電池システム1は、例えば、家庭用の電力供給源として利用されるものであり、容易に入手することができ且つ独立して貯蔵することができるという観点から、液体燃料として灯油が用いられている。
【0023】
改質装置2は、液体燃料を改質して改質ガスを生成するためのものであり、改質器21およびバーナ22を有している。改質器21は、液体燃料と水蒸気とを改質触媒で水蒸気改質反応させて、水素を含有する改質ガスを生成する。バーナ22は、改質器21の改質触媒を加熱することで、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給する。なお、改質装置2に供給される液体燃料は、図示しない脱硫器によって脱硫されている。
【0024】
燃料電池スタック3は、電池セル30が複数積み重ねられて構成されており、改質装置2で得られた改質ガスを用いて発電して直流電流を出力する。電池セル30は、アノード31と、カソード32と、アノード31およびカソード32間に配置された固体高分子である電解質(不図示)とを有しており、アノード31に改質ガスを導入させると共に、カソード32に酸素含有ガスを導入させることで、各電池セル30において電気化学的な発電反応が行われることになる。この酸素含有ガスとしては、例えば純酸素ガス、酸素富化空気、および空気が挙げられるが、中でも取扱容易性およびコストの観点から空気が好ましい。なお、図1では、複数積み重ねられる電池セル30のうち1つの電池セル30のみを図示してある。
【0025】
また、燃料電池システム1は、カソード32に導入される酸素含有ガスを流通させる第1ガス供給ラインL12と、カソード32から導出されたガスを流通させる第1ガス排出ラインL11とを備えている。第1ガス供給ラインL12には、カソード32に酸素含有ガスを導入するためのエアブロワA1と、カソード32に導入される酸素含有ガスの導入量を調整する電動弁B12(第1供給ガス流量調整部)とが設けられている。本実施形態では、調整弁の一例として電動弁B12を用いたが、これ以外にも例えば、電磁弁等を用いることができる。なお、電動弁は圧力損失が小さいため、流量の多い第一ガス供給ラインL12に設ける調整弁として好適である。また、第1ガス排出ラインL11には、カソード32から導出されたガスの導出量を調整するための電動弁B11(第1排出ガス流量調整部)が設けられている。本実施形態では、調整弁の一例として電動弁B11を用いたが、これ以外にも例えば、電磁弁等を用いることができる。なお、電動弁は圧力損失が小さいため、流量の多い第一ガス排出ラインL11に設ける調整弁として好適である。
【0026】
また、燃料電池システム1は、アノード31に導入される改質ガスを流通させる第2ガス供給ラインL22と、アノード31から導出されたガスを流通させる第2ガス排出ラインL21を備えている。第2ガス供給ラインL22の上流側は改質器21に接続され、改質器21で生成された改質ガスが第2ガス供給ラインL22を通ってアノード31に導入される。第2ガス供給ラインL22には、アノード31に導入される改質ガスの導入量を調整する電磁弁B22(第2供給ガス流量調整部)が設けられている。本実施形態では、調整弁の一例として電磁弁B22を用いたが、これ以外にも例えば、電動弁等を用いることができる。また、第2ガス排出ラインL21は、第2ガス供給ラインL22を通じてアノード31に供給された改質ガスのうち、燃料電池スタック3において発電に寄与しなかった水素を含むオフガスを排出させるためのものである。この第2ガス排出ラインL21の下流側は、バーナ22に接続されており、バーナ22の燃料としてオフガスが利用可能となっている。また第2ガス排出ラインL21には、アノード31から導出されるガスの導出量を調整する電磁弁B21(第2排出ガス流量調整部)が設けられている。本実施形態では、調整弁の一例として電磁弁B21を用いたが、これ以外にも例えば、電動弁等を用いることができる。
【0027】
また、燃料電池システム1は、改質器21とアノード31とをつなぐ第2ガス供給ラインL22に対して電磁弁B22の上流側で分岐し、アノード31とバーナ22とをつなぐ第2ガス排出ラインL21に対して電磁弁B21の下流側で合流するバイパスラインL23を備えている。バイパスラインL23には、バイパスラインL23を流れる改質ガスの流量を調整する電磁弁B23(バイパスライン流量調整部)が設けられている。また、バイパスラインL23は、電磁弁B21を遮断してバイパスラインL23に改質ガスを流す場合にアノード31が大気圧以上の加圧状態となるように電磁弁自体、あるいは配管中にオリフィス、キャピラリを設置し圧力損失がつけられている。
【0028】
また、燃料電池システム1は、燃料電池スタック3の電流を掃引する電流掃引部5と、燃料電池スタック3の電圧値を検出する電圧値検出部6とを備える。更に、燃料電池システム1は、電動弁B11,B12および電磁弁B21〜B23と、エアブロワA1と、電流掃引部5と、を制御する制御部4を備えている。電圧値検出部6によって検出された燃料電池スタック3の電圧値は、制御部4に入力される。
【0029】
次に、燃料電池スタック3による発電を停止させるときに制御部4が行う各部の制御について説明する。なお、本制御の実行は、例えば図示しない停止スイッチが操作されることで開始する。また、燃料電池スタック3によって発電が行われている状態では、電動弁B11,B12が開状態に制御され、更にエアブロワA1が作動状態に制御されることによってカソード32に酸素含有ガスが導入されている。更に、電磁弁B21,B22が開状態に制御され、改質装置2から改質ガスがアノード31に導入されている。更に、電磁弁B23は、閉状態(バイパスラインL23内において改質ガスの流通が遮断された状態)に制御されている。図2は、制御部4によって実行される制御処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS101において制御部4は、電動弁B11を制御して第1ガス排出ラインL11におけるガスの流通を遮断し、エアブロワA1の作動を停止させる。
【0031】
ステップS102において制御部4は、電流掃引部5を制御して、燃料電池スタック3の電流を掃引する。これにより、カソード32側において酸素が消費されて酸素濃度が低下する。また、アノード31側からカソード32側へ水素が移動するため、カソード32側の水素濃度が上昇する。
【0032】
ステップS102で燃料電池スタック3の電流を掃引することにより、カソード32側の酸素が効率的に消費されて酸素の濃度が低下するとともに、燃料電池スタック3の電圧値が低下する。そこでステップS103において制御部4は、低下する電圧値を電圧値検出部6によって検出し、検出される電圧値が予め定められた基準電圧値以下であるかどうかを判断する。電圧値が基準電圧値以下でない場合(ステップS103:NO)、電圧値が基準電圧値以下となるまで、ステップS102,S103の処理を繰り返す。電圧値が基準電圧値以下であると判断されたとき(ステップS103:YES)、ステップS104の処理へ進む。
【0033】
ステップS104において制御部4は、電流掃引部5を制御して燃料電池スタック3の電流の掃引を停止させる。ステップS105において制御部4は、電動弁B12を制御して第1ガス供給ラインL12における酸素含有ガスの流通を遮断する。これにより、第1ガス排出ラインL11を経由したカソード32からのガスの導出、および第1ガス供給ラインL12を経由したカソード32への酸素含有ガスの導入が遮断され、カソード32側が閉鎖系となる。
【0034】
ステップS106において制御部4は、電磁弁B21を制御して第2ガス排出ラインL21におけるガスの流通を遮断する。更に電磁弁B23を開状態に制御する。これにより、改質装置2から第2ガス供給ラインL22を経由して改質ガスがアノード31に導入されることにより、改質ガスによってアノード31内の圧力値が上昇する。また、電磁弁B23が開状態に制御されていることにより、アノード31に導入される改質ガスのうちの一部が、第2ガス供給ラインL22からバイパスラインL23を経由して第2ガス排出ラインL21に流れ込み、更に第2ガス排出ラインL21からバーナ22に供給される。
【0035】
ステップS107において制御部4は、ステップS106において電磁弁B21を制御して第2ガス排出ラインL21におけるガスの流通を遮断(電磁弁B21が閉状態)してから、所定時間が経過したかどうかを判断する。ここで、アノード31内の圧力は、電磁弁B21が閉状態に制御されてからの時間の経過とともに上昇する。従って、電磁弁B21を閉状態に制御してからの経過時間と、アノード31内の圧力値の変化との関係を予め把握しておくことにより、電磁弁B21を閉状態としてからの経過時間からアノード31内の圧力値を把握することができる。ステップS107では、予め定められた所定の圧力値に対応する所定時間が経過したかどうかを判断するものであり、言い替えれば、経過時間よりアノード31内の圧力値が所定の圧力値となったかどうかを判断するものである。また、アノード31側からカソード32側へ水素が移動することにより、アノード31内の圧力値の上昇に追随してカソード32内の圧力値も上昇する。このため、カソードの圧力値変化と経過時間との関係を把握し所定時間を定めてもよい。
【0036】
ステップS107において、所定時間が経過していないと判断された場合(ステップS107:NO)、所定時間が経過したと判断されるまで、ステップS107の処理を繰り返す。一方、所定時間が経過したと判断された場合(ステップS107:YES)、ステップS108の処理へ進む。
【0037】
ステップS108において制御部4は、電磁弁B22を制御して第2ガス供給ラインL22における改質ガスの流通を遮断する(電磁弁B22が閉状態)。これにより、アノード側が閉鎖系となり、アノード31内が改質ガスで満たされて圧力が高い状態が維持される。アノード31を加圧することにより、アノード31側からカソード32側へ水素が積極的に移動することで、カソード32内の圧力値が上昇する。このように、水素の移動により、アノード31内の圧力値の上昇に追随してカソード32内の圧力値も上昇する。アノード31側からカソード32側への水素の移動により、アノード31の圧力値とカソード32の圧力値とが等しくなり、電解質膜への圧力バランスが等しくなる。
【0038】
続いて、本実施形態にかかる燃料電池システム1の作用および効果について説明する。本実施形態の燃料電池システム1によれば、燃料電池スタック3による発電を停止させる場合に、電動弁B11を閉状態に制御することによってカソード32から導出されるガスの流れを遮断し、燃料電池スタック3の電圧値が基準電圧値以下に低下したときに、電動弁B12を閉状態に制御することによってカソード32に導入される酸素含有ガスの流れを遮断する。ここで、燃料電池スタック3は、カソード32側の酸素が消費されると、電圧値も低下する。従って、電圧値が基準電圧値以下に低下したときに電動弁B11,B12を閉状態に制御してカソード側を閉鎖系とすることにより、カソード32側において酸素が十分に低減された状態が維持される。
【0039】
そして、電磁弁B21を閉状態に制御することによりアノード31から導出されたガスの流れを遮断する。このとき、アノード31には改質ガスが供給され続けているため、アノード31側の圧力値が高くなる。アノード31側の圧力値が予め定められた基準圧力値まで上昇したときに、電磁弁B22を閉状態に制御することによってアノード31に導入される改質ガスの流れを遮断する。これにより、アノード側が閉鎖系となり、アノード31側の加圧状態が維持される。また、改質ガスによって加圧状態となったアノード31側からカソード32側へ水素が移動するため、カソード32側に水素が充満することによってカソード32側も加圧状態となる。このように、アノード31側およびカソード32側が加圧状態となるため、燃料電池スタック3の外部からアノード31内およびカソード32内への酸素の拡散が抑制され、燃料電池スタック3の電極の劣化を抑制できる。なお、アノード31側の圧力値が予め定められた基準圧力値まで上昇したときに、電磁弁B22を閉状態に制御するものとしたが、カソード32側の圧力値が予め定められた基準圧力値まで上昇したときに、電磁弁B22を閉状態に制御してもよい。
【0040】
また、燃料電池システム1の停止時にアノード31およびカソード32を加圧維持することにより、燃料電池スタック3内のガスを不活性ガス(原料ガス)に置き換える処理を継続して行うことが不要となり、電極の劣化を抑制しつつ、燃料の利用効率の向上を図ることができる。また、燃料電池スタック3内のガスを不活性ガスに置き換える処理が不要であるため、不活性ガスをカソード等に供給するためのバイパスラインを別途設ける必要が無く、燃料電池システム1の小型化を図ることができる。
【0041】
また、燃料電池スタック3の電圧値が基準電圧値以下になるまで電流掃引部5によって電流の掃引を行うことにより、カソード32側の酸素濃度を効率よく低減させることができる。
【0042】
また、アノード31から導出されるガスの流れを遮断してからの経過時間と、アノード31側の圧力値の変化、またはカソード32側の圧力値の変化と、の関係を予め把握しておくことにより、所定の時間の経過後に、アノード31に導入される改質ガスの流れを遮断するだけで、アノード31側の圧力値、またはカソード32側の圧力値が所定の圧力値まで上昇したことを容易に把握することができる。
【0043】
また、改質装置2を備えることにより、改質装置2によって水素を含有する水素含有ガスとしての改質ガスを生成することができる。即ち、水素含有ガスを生成するための原料として液体燃料(灯油等)を用いることができるため、水素含有ガスの生成に用いられる原料の種類の汎用性を高めることが可能となる。
【0044】
また、アノード31から導出されたガスの流れが遮断されたときに、バイパスラインL23における改質ガスの流れの遮断が解除(電磁弁B23が開状態)される。このとき、電磁弁B21が閉状態となっていることにより、アノード31に供給される改質ガスのうちの一部が、第2ガス供給ラインL22からバイパスラインL23を経由して第2ガス排出ラインL21に流れ込み、更に第2ガス排出ラインL21からバーナ22に供給される。このように、アノード31に供給される改質ガスの一部をバーナ22の燃料として用いることができ、アノード31側を加圧しつつ、改質装置2において改質ガスを生成するのに十分な温度を維持することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ステップS101において電動弁B11を閉状態に制御した後、ステップS105において電動弁B12を閉状態にするものとしたが、ステップS101において電動弁B11を開状態に維持したまま電動弁B12を閉状態に制御した後、ステップS105において電動弁B11を閉状態に制御することもできる。また、ステップS101では、カソード32側においてガスの流れを完全に遮断することなくガスの流れが阻害されるように、電動弁B11および電動弁B12の少なくともいずれか一方を制御する。そして、ステップS105において電動弁B11および電動弁B12を閉状態に制御しても良い。また、ステップS106では、第2ガス排出ラインL21内のガスの流れを完全に遮断することなくガスの流れが阻害されるように電磁弁B21を制御する。そして、ステップS108において電磁弁B21および電磁弁B22を閉状態に制御しても良い。
【0046】
また、ステップS102において電流掃引部5を制御して燃料電池スタック3の電流を掃引するものとしたが、電流掃引部5によって電流の掃引を行わずに、ステップS101において電動弁B11を閉状態に制御してから所定時間の経過後に、電動弁B12を閉状態に制御してもよい。この場合であっても、アノード31側からカソード32内へ水素が移動するため、カソード32内が水素雰囲気の状態となる。
【0047】
また、電磁弁B21を閉状態に制御してからの経過時間によってアノード31内の圧力値を把握するものとしたが(ステップS107)、例えば、アノード31内の圧力値を計測するアノード側圧力センサを設け、アノード側圧力センサによって計測された圧力値によって、アノード31内の圧力値を把握することもできる。この場合には、より正確にアノード31内の圧力値を計測することができる。また、アノード31内の圧力値を計測するアノード側圧力センサと、カソード32内の圧力値を計測するカソード側圧力センサとを設け、アノード側圧力センサの測定値が所定の圧力値となり、更にカソード側圧力センサによって測定された圧力値がアノード側圧力センサによって測定された圧力値と等しい、またはほぼ等しくなったときに、電磁弁B22を閉状態に制御する(ステップS108)こともできる。この場合には、アノード31内およびカソード32内の圧力値を正確に把握して電磁弁B22の制御(電磁弁B22を閉状態にする)を行うことができる。また、カソード32内の圧力値を計測するカソード側圧力センサのみを設置し、該カソード側圧力センサの測定値が、所定の圧力値となったときに、電磁弁B22を閉状態に制御する(ステップS108)こともできる。
【符号の説明】
【0048】
1…燃料電池システム、2…改質装置、3…燃料電池スタック、4…制御部、5…電流掃引部、6…電圧値検出部、21…改質器、22…バーナ、31…アノード、32…カソード、B11,B12…電動弁、B21〜B23…電磁弁、L11…第1ガス排出ライン、L12…第1ガス供給ライン、L21…第2ガス排出ライン、L22…第2ガス供給ライン、L23…バイパスライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードおよびアノードを有するセルを複数積層してなるスタックと、
前記セルの前記カソード側に酸素含有ガスを供給するための第1ガス供給ラインに位置し、該カソード側の供給ガス流量を調整する第1供給ガス流量調整部と、
前記セルの前記カソード側からガスを排出するための第1ガス排出ラインに位置し、該カソード側の排出ガス流量を調整する第1排出ガス流量調整部と、
前記セルの前記アノード側に水素含有ガスを供給するための第2ガス供給ラインと、
前記セルの前記アノード側からガスを排出するための第2ガス排出ラインに位置し、該アノード側の排出ガス流量を調整する第2排出ガス流量調整部と、
前記第1供給ガス流量調整部および前記第1排出ガス流量調整部の少なくとも一方を制御して前記カソード側におけるガス流量を低減し、前記スタックの電圧値が基準電圧値以下になった場合に、前記第1供給ガス流量調整部および前記第1排出ガス流量調整部を制御して前記セルの前記カソード側を閉鎖系とし、且つ、前記第2排出ガス流量調整部を制御して前記アノード側における圧力値を基準圧力値以上にする制御部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記スタックの電流を掃引する電流掃引部を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第2ガス供給ラインに位置し、前記アノード側の供給ガス流量を調整する第2供給ガス流量調整部を更に備え、
前記制御部は、前記第2排出ガス流量調整部を制御して前記アノード側または前記カソード側における圧力値が基準圧力値以上になった場合に、前記第2供給ガス流量調整部および前記第2排出ガス流量調整部を制御して前記セルの前記アノード側を閉鎖系とする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
改質触媒によって原燃料を改質し、前記水素含有ガスを生成する改質装置を更に備える、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2ガス供給ラインと前記第2ガス排出ラインにおける前記第2排出ガス流量調整部の下流側とを連結するバイパスラインと、
前記バイパスラインを流通する前記水素含有ガスのガス流量を調整するバイパスライン流量調整部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2排出ガス流量調整部を制御して前記アノード側の排出ガス流量を低減する場合に、前記バイパスライン流量調整部を制御して前記水素含有ガスを流通させる、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
カソードおよびアノードを有するセルを複数積層してなるスタックと、前記セルの前記カソード側に酸素含有ガスを供給するための第1ガス供給ラインに位置し、該カソード側の供給ガス流量を調整する第1供給ガス流量調整部と、前記セルの前記カソード側からガスを排出するための第1ガス排出ラインに位置し、該カソード側の排出ガス流量を調整する第1排出ガス流量調整部と、前記セルの前記アノード側に水素含有ガスを供給するための第2ガス供給ラインと、前記セルの前記アノード側からガスを排出するための第2ガス排出ラインに位置し、該アノード側の排出ガス流量を調整する第2排出ガス流量調整部と、を備える燃料電池システムの停止方法であって、
前記第1供給ガス流量調整部および前記第1排出ガス流量調整部の少なくとも一方を制御して前記カソード側におけるガス流量を低減する工程と、
前記スタックの電圧値が基準電圧値以下になった場合に、前記第1供給ガス流量調整部および前記第1排出ガス流量調整部を制御して前記セルの前記カソード側を閉鎖系とする工程と、
前記第2排出ガス流量調整部を制御して前記アノード側または前記カソード側における圧力値を基準圧力値以上にする工程と、を含む、
ことを特徴とする燃料電池システムの停止方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−216335(P2011−216335A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83444(P2010−83444)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(308013252)株式会社ENEOSセルテック (67)
【Fターム(参考)】