説明

燃料電池システムの起動方法

【課題】燃料電池システムを起動する方法において早期から確実に改質を行いアノード酸化劣化をより確実に防止する。
【解決手段】炭化水素系燃料を改質して水素含有ガスを製造する改質触媒層を有する改質器と前記ガスを用いて発電を行う高温型燃料電池とを有する燃料電池システムの起動方法であって、a)起動完了時の燃料流量より少ない流量の燃料を改質可能な触媒層の温度条件と起動完了時の流量の燃料を改質可能な触媒層の温度条件とを予め知り、b)触媒層温度を測定しつつ触媒層を昇温し、c)触媒層の測定温度を前記温度条件のうちの少なくとも一つと比較して前記測定を行った時点で改質可能な燃料流量を判定し、d)判定された流量が燃料流量の現在値を超えた場合に判定された流量の燃料を触媒層に供給して改質し改質ガスを燃料電池アノードに供給し、燃料の触媒層への供給量が起動完了時の流量になるまで工程c及びdを繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯油等の炭化水素系燃料を改質して得た改質ガスを用いて発電を行う燃料電池システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物電解質形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell。以下場合によりSOFCという。)システムには、通常、灯油や都市ガスなどの炭化水素系燃料を改質して水素含有ガス(改質ガス)を発生させるための改質器と、改質ガスと空気を電気化学的に発電反応させるためのSOFCが含まれる。
【0003】
SOFCは通常、550〜1000℃の高温で作動させる。
【0004】
改質には水蒸気改質(SR)、部分酸化改質(POX)、自己熱改質(ATR)など種々の反応が利用されるが、改質触媒を用いるためには、触媒活性が発現する温度に加熱する必要がある。
【0005】
このように、改質器もSOFCも起動時に昇温する必要がある。特許文献1には水蒸気改質を行うSOFCシステムを効率的かつ短時間で行うことのできるSOFCシステムの起動方法が記載される。
【0006】
なお、水蒸気改質は非常に大きな吸熱反応であり、また、反応温度が550〜750℃と比較的高く、高温の熱源を必要とする。そのため、SOFCの近傍に改質器(内部改質器)を設置し、主にSOFCからの輻射熱を熱源として改質器を加熱する内部改質型SOFCが知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−190605号公報
【特許文献2】特開2004−319420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、SOFCシステム起動時にSOFCを作動温度まで昇温する際、セル燃料極の酸化劣化を防止するため、予め水素などの還元性ガスをアノードに流通させることが行われている。
【0008】
昇温時の水素供給源としては、水素ガスボンベ、水素吸蔵・吸着・発生材、電解水素など種々のものが考えられるが、民生用にシステムを普及させることを考えると、燃料改質ガスを供給源とするのが望ましい。
【0009】
起動時に改質器で燃料を改質し、得られた改質ガスをアノード劣化防止のためにSOFCへ供給する場合、例えば間接内部改質型SOFCの場合は、内部改質器からの伝熱によってSOFCも同時に加熱され、その結果アノードが酸化劣化点以上に上昇し、アノードが例えば空気や水蒸気などの酸化性ガス雰囲気下にあった場合には、アノードが酸化劣化する場合がある。よって極力早期から改質ガスを製造することが望まれる。
【0010】
また一方で、炭化水素系燃料が所定の組成まで改質されず、未改質分がSOFCに供給されてしまうと、特に炭化水素系燃料として灯油などの高次炭化水素を用いた場合には、炭素析出による流路閉塞やアノード劣化を引き起こすこともある。このため、起動時においても確実に改質する方法が必要となる。
【0011】
このように、起動時において極力早期から改質ガスを製造することが望まれる一方、確実に改質を行うことが望まれる。これはSOFCに限らず溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)等の高温型燃料電池を有する燃料電池システムについても言えることである。
【0012】
本発明の目的は、改質触媒層を有する改質器と高温型燃料電池とを有する燃料電池システムを起動する方法において、早期から確実に改質を行い、アノードの酸化劣化をより確実に防止することのできる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、炭化水素系燃料を改質して水素含有ガスを製造する、改質触媒層を有する改質器と、該水素含有ガスを用いて発電を行う高温型燃料電池とを有する燃料電池システムの起動方法であって、
a)起動完了時の炭化水素系燃料流量より少ない流量の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件である第一の温度条件と、
起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件である第二の温度条件と、を予め知っておく工程、
b)改質触媒層の温度を測定しつつ、改質触媒層を昇温する工程、
c)測定された改質触媒層の温度を、前記第一および第二の温度条件のうちの少なくとも一つと比較して、該測定を行った時点で改質触媒層において改質可能な炭化水素系燃料の流量を判定する工程、および、
d)該判定された流量が、炭化水素系燃料流量の現在値を超えた場合に、該判定された流量の炭化水素系燃料を、改質触媒層に供給して改質し、得られた改質ガスを高温型燃料電池のアノードに供給する工程を有し、
炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量が、起動完了時の流量になるまで、前記工程cおよびdを繰り返す
ことを特徴とする燃料電池システムの起動方法が提供される。
【0014】
上記方法が、
e)工程dで行う改質に必要な流量の、スチームおよび/または酸素含有ガスを、工程dに先だって改質触媒層に供給する工程
をさらに有することが好ましい。
【0015】
前記改質触媒層として、水蒸気改質反応を促進可能な改質触媒層を用い、
起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質する際に、水蒸気改質を行うことが好ましい。
【0016】
前記改質触媒層として、水蒸気改質反応および部分酸化改質反応を促進可能な改質触媒層を用い、
起動完了時の流量より少ない流量の炭化水素系燃料を改質する際に、部分酸化改質または自己熱改質を行うことが好ましい。
【0017】
前記改質触媒層として、燃焼を促進可能な改質触媒層を用い、
工程bにおいて、炭化水素系燃料を改質触媒層に供給して燃焼を行うことができる。
【0018】
上記方法において、
改質触媒層の入口端および出口端、ならびに該入口端と出口端との間にそれぞれ温度センサーを配し、ただし該温度センサーはガス流通方向に沿って相異なる位置に配し、
該温度センサーの個数をN+1(Nは2以上の整数)とし、
改質触媒層の入口端側からi番目の温度センサーをSiとし(iは1以上N以下の整数)、改質触媒層の出口端に設けられた温度センサーをSN+1とし、
温度センサーS1と温度センサーSi+1との間に位置する改質触媒層の領域をZiとし、
相異なるN個の炭化水素系燃料流量をFkiとし、ただし、Fk1は正の値を有し、iの増加とともにFkiは増加し、かつFkNが起動完了時の炭化水素系燃料流量であるとき、
工程aにおいて、各流量Fkiの炭化水素系燃料を領域Ziにおいて改質可能な温度条件として温度センサーS1およびSi+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)およびTi+1(Fki)を知り、該T1(Fki)およびTi+1(Fki)を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とし、
工程cおよびdを繰り返してN回行い、
i回目の工程cにおいて、温度センサーS1およびSi+1によってそれぞれ計測される温度t1およびti+1が、それぞれ温度T1(Fki)およびTi+1(Fki)以上となった場合に、領域Ziにおいて改質可能な炭化水素燃料流量をFkiと判定する
ことができる。
【0019】
あるいは上記方法において、
改質触媒層の入口端および出口端、ならびに該入口端と出口端との間にそれぞれ温度センサーを配し、ただし該温度センサーはガス流通方向に沿って相異なる位置に配し、
該温度センサーの個数をN+1(Nは2以上の整数)とし、
改質触媒層の入口端側からi番目の温度センサーをSiとし(iは1以上N以下の整数)、改質触媒層の出口端に設けられた温度センサーをSN+1とし、
相異なるN個の炭化水素系燃料流量をFkiとし、ただし、Fk1は正の値を有し、iの増加とともにFkiは増加し、かつFkNが起動完了時の炭化水素系燃料流量であるとき、
工程aにおいて、各流量Fkiの炭化水素系燃料を改質触媒層全体において改質可能な温度条件として温度センサーS1〜SN+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を知り、該T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とし、
工程cおよびdを繰り返してN回行い、
i回目の工程cにおいて、工程aにおいて前記T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を計測した温度センサーS1〜SN+1によって計測される温度が、同一の温度センサーで計測された前記T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度以上となった場合に、改質可能な炭化水素燃料流量をFkiと判定する
ことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、改質触媒層を有する改質器と高温型燃料電池とを有する燃料電池システムを起動する方法において、早期から確実に改質を行い、アノードの酸化劣化をより確実に防止することのできる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において用いる燃料電池システムは、炭化水素系燃料を改質して水素含有ガスを製造する改質器と、高温型燃料電池とを有する。改質器は、改質触媒層を有する。高温型燃料電池は、改質器から得られる水素含有ガスを用いて発電を行う。改質触媒層は改質反応を促進可能な改質触媒によって構成される。改質器から得られる水素含有ガスは改質ガスと呼ばれる。
【0022】
〔工程a〕
本発明では、実際に燃料電池システムを起動する前に、予め工程aを行う。
【0023】
工程aでは、起動完了時の炭化水素系燃料流量より少ない流量の炭化水素系燃料を改質触媒層で改質可能な改質触媒層の温度条件(第一の温度条件)を予め知っておく。また工程aにおいて、起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質触媒層で改質可能な改質触媒層の温度条件(第二の温度条件)も予め知っておく。
【0024】
起動完了時の炭化水素系燃料の流量は、その後の通常運転(定格運転や部分負荷運転)の条件に鑑みて予め適宜設定される。
【0025】
これら温度条件は、予備実験やシミュレーションにより、知ることができる。
【0026】
〔工程b〕
実際に燃料電池システムを起動する際には、工程bを行う。すなわち改質触媒層の温度を測定しつつ改質触媒層を昇温する。工程bにおける温度測定および昇温は起動完了時まで継続される。
【0027】
この昇温の熱源としては、例えば、改質器に設けた電気ヒータを用いることができる。
【0028】
また、改質触媒層に高温流体を流すことによって、改質触媒層を昇温することもできる。例えば、改質に必要な水蒸気および/または空気を、必要に応じて予熱して供給することができる。この予熱の熱源としては、電気ヒータやバーナ等の燃焼器を用いることができる。あるいは、燃料電池システムの外部から、高温流体が供給される場合は、その流体を上記予熱の熱源とすることもできる。
【0029】
あるいは、改質触媒層が燃焼を促進可能であれば、炭化水素系燃料を改質触媒層で燃焼させることによって改質触媒層を昇温することもできる。燃焼ガスは酸化性ガスである。よって、燃焼ガスが燃料電池に流れることによって燃料電池が劣化することを防止する観点から、改質触媒層において燃焼を行うのは、燃焼ガスが燃料電池に流れても燃料電池が劣化しない温度に燃料電池がある場合とする。このために、燃料電池の温度、特には、アノード電極の温度を監視しておき、その温度が劣化のおそれのある温度になった場合には、上記燃焼を停止することができる。
【0030】
さらに、改質ガスが製造された後は、改質ガスを燃焼させた燃焼熱を用いて改質触媒層を昇温することもできる。
【0031】
また改質を開始した後、改質によって発熱する場合には、その発熱によって改質触媒層を昇温することもできる。部分酸化改質を行う場合、また、自己熱改質すなわちオートサーマルリフォーミングにおいて水蒸気改質反応による吸熱よりも部分酸化改質反応による発熱が大きい場合、改質によって発熱する。
【0032】
上記昇温手法を、適宜併用したり、状況に応じて使い分けたりすることもできる。
【0033】
〔工程cおよびd〕
改質触媒層の昇温を開始した後もしくは開始した時点から、工程cおよびdを繰り返して行う。つまり工程cおよびdは少なくとも二回行われる。この繰り返しは、炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量が、起動完了時の流量になるまで行う。
【0034】
工程cでは、測定された改質触媒層の温度を、工程aで知っておいた第一および第二の温度条件のうちの少なくとも一つと比較する。そして、この温度測定を行った時点で改質触媒層において改質可能な炭化水素系燃料の流量を判定する。工程dでは、工程cで判定された流量が、炭化水素系燃料流量の現在値を超えた場合に、判定された流量の炭化水素系燃料を、改質触媒層に供給して改質する。つまり、工程dにおいては、改質触媒層に供給する炭化水素系燃料の流量を増加させる(ゼロから増加させる場合も含む)。
【0035】
このように、本発明では、起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件(第二の温度条件)と、小流量(起動完了時の炭化水素系燃料流量より少ない流量)の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件(第一の温度条件)とを、予め知っておく。これら温度条件は、改質触媒層における改質可能量が厳密に過不足無く起動完了時の流量もしくは前記小流量になる温度条件を意味するものではない。改質触媒層の温度が第一の温度条件以上になれば前記小流量の炭化水素系燃料を所定の組成に改質することができること、および、改質触媒層の温度が第二の温度条件以上になれば起動完了時の流量の炭化水素燃料を所定の組成に改質することができることを知っておけばよい。
【0036】
ここで、所定の組成とは、好適にスタックに供給される改質ガス組成として予め適宜設定した組成のことである。
【0037】
また、必ずしも改質触媒層の全体によって改質が可能であるかどうかを判定する必要はない。すなわち、改質触媒層の一部分によって改質が可能であるか否かを判定することもできる。
【0038】
より少ない流量の炭化水素系燃料を改質するには、より低い温度で足りる。よって、第一の温度条件は第二の温度条件より低いレベルに設定される。改質触媒層の温度が第一の温度条件以上になれば、前記小流量の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給して改質する。そして、改質触媒層の温度が第二の温度条件以上になれば、起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給して改質する。
【0039】
このように、本発明では、改質触媒層に供給する炭化水素系燃料を段階的に増やす。すなわち、前記小流量の炭化水素系燃料を改質する段階と、起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質する段階との、合計二つの段階に分けて改質を行いつつ、燃料電池システムを起動することができる。こうすることによって、改質触媒層の昇温があまり進んでいない時点から小流量の炭化水素系燃料を所定の組成に改質することができ、より早期に改質ガスを得ることができる。
【0040】
前記小流量の炭化水素系燃料を改質する段階を、さらに二つ以上の段階に分けて行うこともできる。この場合、工程aにおいて、起動完了時の炭化水素系燃料流量より少ない、相異なる二以上の流量の炭化水素系燃料をそれぞれ改質可能な改質触媒層の二以上の第一の温度条件を予め知っておく。この二以上の第一の温度条件と、第二の温度条件とのうちの少なくとも一つと、改質触媒層の測定温度とを比較し、その時点で改質可能な炭化水素系燃料の流量を判定することができる。つまり、起動完了時までに、改質を三以上の段階で行うことができる。
【0041】
温度条件としては、改質触媒層の一点の温度を採用することができる。また、改質触媒層のガス流通方向に沿って異なる位置の複数点の温度を採用することができる。あるいは、複数点の温度から平均値などの代表温度を算出して採用することもできる。
【0042】
判定に利用する温度を測定する位置およびその個数は、改質触媒層を昇温するための加熱の仕方に応じて、予備実験やシミュレーションを利用して、決めることができる。
【0043】
工程dに先だって、工程eを行うことができる。つまり、工程dで流す(増加させる)炭化水素系燃料を改質するために必要な流量の、スチームおよび/または酸素含有ガスを、工程dに先だって改質触媒層に供給することができる。工程cおよびdを繰り返すにあたり、工程dで炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量を増加させたら、すぐに工程eを行って、次の工程dで供給する流量の炭化水素系燃料を改質するに必要な流量のスチームおよび/または酸素含有ガスを、予め改質触媒層に供給しておくことができる。工程eによって、工程dで供給する炭化水素燃料を、より確実に改質することが可能である。ただし、この限りではなく、工程dと同時に、工程dにおいて必要な流量のスチームおよび/または酸素含有ガスを供給することもできる。
【0044】
なお、水蒸気改質反応を行う場合、つまり水蒸気改質もしくはオートサーマルリフォーミングを行う場合には、改質触媒層にスチームを供給する。部分酸化改質反応を行う場合、つまり部分酸化改質もしくはオートサーマルリフォーミングを行う場合には、改質触媒層に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスとしては、酸素を含有するガスを適宜用いることができるが、入手容易性から空気が好ましい。
【0045】
本発明においては、改質を段階的に行うが、各段階において必ずしも同じ種類の改質を行う必要はない。例えば、一段階目ではオートサーマルリフォーミングを行い、二段階目で水蒸気改質を行う、合計二段階とすることができる。また、一段階目で部分酸化改質を行い、二段階目でオートサーマルリフォーミングを行い、三段階目で水蒸気改質を行う、合計三段階とすることもできる。あるいは、全ての段階で水蒸気改質を行うこともできるし、全ての段階でオートサーマルリフォーミングを行うこともできるし、全ての段階で部分酸化改質を行うこともできる。改質の段階数や種類に対応して、工程aで改質可能な温度条件を予め知っておく。
【0046】
起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質する際、すなわち燃料電池システムの起動に際して段階的に行う改質の最終段階、さらに言い換えれば最後に行う工程dにおいては、水蒸気改質を行うことが好ましい。すなわち、水蒸気改質反応のみ進行させ、部分酸化改質反応は進行させないことが好ましい。起動完了後の通常運転に先立って、改質ガス中の水素濃度を比較的高くすることができるからである。この場合、水蒸気改質反応を促進可能な改質触媒層を用いる。
【0047】
前記小流量の炭化水素を改質する際には、部分酸化改質またはオートサーマルリフォーミングを行うことが好ましい。特に、小流量の炭化水素を改質する段階が複数ある場合は、その複数段階のうちの最初の段階、もしくは最初の段階から引き続く一部の段階において部分酸化改質またはオートサーマルリフォーミングを行うことが好ましい。部分酸化改質反応を伴う改質を行うことによって、昇温を早めることができるからである。この場合、水蒸気改質反応および部分酸化改質反応を促進可能な改質触媒層を用いることが好ましい。改質の最終段階において水蒸気改質反応を行うことができ、水素濃度を比較的高くすることができるからである。
【0048】
さらに、改質反応に加えて燃焼も促進可能な改質触媒層を用い、工程bにおいて、燃焼を行うこともできる。つまり改質触媒層における燃焼によって改質触媒層を昇温することができる。この場合も、或る流量の炭化水素系燃料を改質触媒層において燃焼可能な温度条件を予め知っておき、改質触媒層の温度がこの温度条件以上となったら、その流量の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給して燃焼を行うことが好ましい。より確実に燃焼を行うことができるからである。このときの流量は、起動完了時の炭化水素系燃料の流量より少なくてよい。
【0049】
以下図面を用いて本発明のより具体的な形態について説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0050】
〔形態1−1〕
ここでは、起動における改質の全ての段階においてオートサーマルリフォーミングを行う。このとき改質反応はオーバーオールで発熱反応とする(部分酸化改質反応による発熱が、水蒸気改質反応による吸熱を上回るようにする)。改質反応熱を利用して改質触媒層、さらにはSOFCの昇温を加速するためである。
【0051】
また、各段階で改質触媒層の相異なる部分(最終段階では全体)によって炭化水素系燃料を改質可能な温度条件を予め知っておく。部分酸化改質反応と水蒸気改質反応とを促進可能な改質触媒層を用いる。
【0052】
図1に示すSOFCシステムは、改質器3およびSOFC6が筐体(モジュール容器)8に収容された間接内部改質型SOFCを有する。改質器3は改質触媒層4を備え、また電気ヒータ9を備える。
【0053】
またこのSOFCシステムは、電気ヒータ2を備える水気化器1を有する。水気化器1は電気ヒータ2による加熱によって水蒸気を発生する。水蒸気は水気化器においてもしくはその下流において適宜スーパーヒートしたうえで改質触媒層に供給することができる。
【0054】
また空気も改質触媒層に供給されるが、ここでは、空気を水気化器で予熱したうえで改質触媒層に供給できるようになっている。水気化器からは、水蒸気を得ることができ、また空気と水蒸気との混合ガスを得ることができる。
【0055】
水蒸気または空気と水蒸気との混合ガスは、炭化水素系燃料と混合されて改質器3、特にはその改質触媒層4に供給される。炭化水素系燃料として灯油等の液体燃料を用いる場合は、炭化水素系燃料を適宜気化したうえで改質触媒層に供給することができる。
【0056】
改質器から得られる改質ガスがSOFC6、特にはそのアノードに供給される。図示しないが、空気が適宜予熱されてSOFCのカソードに供給される。
【0057】
アノードオフガス(アノードから排出されるガス)中の可燃分がSOFC出口において、カソードオフガス(カソードオフガス)中の酸素によって燃焼される。このために、イグナイター7を用いて着火することができる。アノード、カソードともその出口がモジュール容器内に開口している。
【0058】
改質触媒層の入口端および出口端、ならびに入口端と出口端との間にそれぞれ温度センサーが配される。これら温度センサーはガス流通方向に沿って相異なる位置に配される。温度センサーの個数をN+1(Nは2以上の整数)とし、改質触媒層の入口端側からi番目の温度センサーをSiとする(iは1以上N以下の整数)。改質触媒層の出口端に設けられた温度センサーはSN+1とする。具体的には、温度センサーとして熱電対が用いられ、改質触媒層の入口端に熱電対S1が、触媒層入口端から触媒層長さの1/4の位置に熱電対S2が、触媒層入口端から触媒層長さの2/4の位置に熱電対S3が、触媒層入口端から触媒層長さの3/4の位置に熱電対S4が、触媒層出口端に熱電対S5が配置される。
【0059】
なお上記Nは、燃料電池システムの起動における改質の段階数を意味する。
【0060】
温度センサーS1と温度センサーSi+1との間に位置する改質触媒層の領域をZiとする。具体的には、S1とS2の間の領域をZ1、S1とS3の間の領域をZ2、S1とS4の間の領域をZ3、S1とS5の間の領域をZ4とする。
【0061】
改質を4(=N)段階で行うため、相異なる4個の炭化水素系燃料流量をFkiと表す。ただし、Fk1は正の値を有し、iの増加とともにFkiは増加する。すなわち、0<Fk1<Fk2<Fk3<Fk4である。FkNすなわちFk4が起動完了時の炭化水素系燃料流量である。
【0062】
また、流量Fkiの炭化水素系燃料を改質する際に改質触媒層に供給する水蒸気を発生させるために用いる水の流量をFwiとする。流量Fkiの炭化水素系燃料を改質する際に改質触媒層に供給する空気の流量をFaiとする。
【0063】
水流量については、炭素析出抑制のため、S/C(改質触媒層に供給されるガス中の炭素原子モル数に対する水分子モル数の比)が所定の値を維持するよう、燃料流量の増加に伴い水流量を増加させるのが好ましい。空気流量については、改質反応がオーバーオールで発熱反応となるよう、燃料流量の増加に伴い空気流量を増加させるのが望ましい。よって、0<Fw1<Fw2<Fw3<Fw4、0<Fa1<Fa2<Fa3<Fa4とする。
【0064】
SOFCシステムを実際に起動する前に、予め、流量Fkiの炭化水素系燃料を領域Ziにおいて改質可能な温度条件として温度センサーS1およびSi+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)およびTi+1(Fki)を知り、T1(Fki)およびTi+1(Fki)を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする(工程a)。
【0065】
具体的には、流量Fk1の炭化水素系燃料を領域Z1において改質可能な温度条件として、温度センサーS1およびS2でそれぞれ計測される温度T1(Fk1)およびT2(Fk1)を知る。そして、T1(Fk1)およびT2(Fk1)を流量Fk1の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする。
【0066】
同様に、流量Fk2の炭化水素系燃料を領域Z2において改質可能な温度条件として、温度センサーS1およびS3でそれぞれ計測される温度T1(Fk2)およびT3(Fk2)を知る。これら温度T1(Fk2)およびT3(Fk2)を流量Fk2の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする。
【0067】
また、流量Fk3の炭化水素系燃料を領域Z3において改質可能な温度条件として、温度センサーS1およびS4でそれぞれ計測される温度T1(Fk3)およびT4(Fk3)を知る。これら温度T1(Fk3)およびT4(Fk3)を流量Fk3の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする。
【0068】
さらに、流量Fk4の炭化水素系燃料を領域Z4(改質触媒層全体)において改質可能な温度条件として、温度センサーS1およびS5でそれぞれ計測される温度T1(Fk4)およびT5(Fk4)を知る。これら温度T1(Fk4)およびT5(Fk4)を流量Fk4の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする。
【0069】
次に示す手順によって、このシステムを実際に起動することができる。
【0070】
1.水気化器に備わる電気ヒータ2により、水気化器1を水が気化可能な温度に昇温する。このとき改質触媒層4には何も供給しない。
【0071】
2.電気ヒータ9により、改質触媒層を昇温する。熱電対S1〜S5による温度監視も開始する。
【0072】
3.水気化器1に流量Fw1の水を供給し、水を気化し、得られた水蒸気を改質触媒層4に供給する。
【0073】
4.改質触媒層4に流量Fa1の空気を供給する。
【0074】
なお、改質触媒層は、水蒸気および空気の顕熱によっても加熱される。
【0075】
5.熱電対S1およびS2で測定される温度t1およびt2が、それぞれT1(Fk1)およびT2(Fk1)以上となったかどうかを判定することにより、領域Z1において改質可能な炭化水素燃料流量が流量Fk1であると判定する。つまり、t1がT1(Fk1)以上かつt2がT2(Fk1)以上という条件が満たされた場合に、領域Z1において改質可能な炭化水素燃料流量が流量Fk1であると判定する。上記条件が満たされていなければ、領域Z1において改質可能な炭化水素燃料流量はゼロである。
【0076】
6.改質可能な炭化水素燃料流量がFk1と判定されたら、Fk1は炭化水素系燃料流量の現在値(ゼロ)を超えるので、改質触媒層に供給量Fk1の炭化水素系燃料を供給して改質し、得られた改質ガスをSOFCアノードに供給する。
【0077】
改質ガスをSOFCアノードに供給すれば、アノードからアノードオフガス(ここでは改質ガスがそのまま)排出される。アノードオフガスは可燃性であるので、イグナイター7を用いてアノードオフガスに着火し、燃焼させることができる。この燃焼熱によっても改質触媒層が加熱される。これは昇温加速のために好ましい。
【0078】
なお、改質触媒層でオートサーマルリフォーミングを開始した後は、電気ヒータ9の発熱ならびに水蒸気および予熱空気の顕熱に加えて、領域Z1における改質反応による発熱によっても改質触媒層が加熱される。間接内部改質型SOFCシステムの場合、アノードオフガスが燃焼していれば、その燃焼熱を利用して改質触媒層を加熱することもできる。間接内部改質型SOFCシステム以外の場合、例えばアノードオフガスを適宜の燃焼手段で燃焼させた燃焼ガスを改質器周辺へ供給し、改質触媒層を加熱することができる。これらは昇温加速のために好ましい。
【0079】
以下、iを2、3、4と順次増加させながら、工程3〜6を繰り返して合計4回行う。
【0080】
3(i回目).水気化器1に流量Fwiの水を供給する。
【0081】
4(i回目).改質触媒層4に流量Faiの空気を供給する。
【0082】
5(i回目).熱電対S1およびSi+1(i=2の場合はS3)で測定される温度t1およびti+1(i=2の場合はt1およびt3)が、それぞれT1(Fki)およびTi+1(Fki)(i=2の場合はT1(Fk2)およびT3(Fk2))以上となったかどうかを判定することにより、領域Zi(i=2の場合はZ2)において改質可能な炭化水素燃料流量が流量Fki(i=2の場合はFk2)であると判定する。
【0083】
6(i回目).判定された流量Fkiが、現在値(Fki-1)を超えたら、(改質触媒層に供給量Fkiの炭化水素系燃料を供給して改質し、得られた改質ガスをSOFCアノードに供給する。
【0084】
このようにして、起動完了時の流量Fk4まで炭化水素系燃料の流量を増加させることができる。改質器およびSOFCが所定の温度まで昇温されたら、SOFCシステムの起動を完了することができる。
【0085】
SOFCは、改質器から得られる改質ガスの顕熱によって、またアノードオフガスの燃焼熱によって加熱することができる。燃料電池が発電を開始していれば、電池反応による発熱によってもSOFCが加熱される。
【0086】
最後の工程d(ここでは4回目の工程d)終了時点で、定格時の空気流量より多い空気を供給している場合には、最後の工程dの後に供給している流量の炭化水素系燃料が改質可能な温度に改質触媒層を保持しながら、空気流量を定格流量まで減少させることができる。例えば、最後の工程dにおいては改質反応をオーバーオールで発熱反応にするために定格時の空気流量より多い空気をしておき、定格時には、水蒸気改質反応を主として用いて水素濃度がより高い改質ガスを得るために空気流量を減らす(ゼロにすることも含む)ことができる。定格時には改質反応はオーバーオールで吸熱となるが、アノードオフガスの燃焼熱(発電時にはこれに加えてSOFCからの輻射熱も)によって改質器を加熱することができる。ここで、最後の工程dの後に供給している流量の炭化水素系燃料が改質可能な温度に改質触媒層を保持するためには、カソードに供給される空気流量、炭化水素系燃料流量、水流量、およびSOFCに電流を流している場合には電流値を増減すればよい。
【0087】
以上説明したようにしてSOFCシステムを起動することにより、まず、触媒層上流側の一部を加熱後、その領域で改質できる小流量の改質原料を投入し、還元性の改質ガスをSOFCに供給することができる。このため、触媒層の加熱に必要な熱量を低減することが容易で、改質ガス発生までの時間を短縮することが容易である。早期に還元性のガスが利用可能となることは、アノードの酸化劣化を防止するためにも有効である。
【0088】
また、触媒層の炭化水素系燃料流通方向に熱電対を複数設置し、触媒層領域を上流側から順次、改質可能な温度まで昇温し、炭化水素系燃料流量を段階的に増加させることにより、未改質成分がSOFCに流入することをより確実に防止することができる。
【0089】
本形態は、触媒層の温度が入口側から上昇していく場合に好ましく用いることができる。
【0090】
アノードの酸化劣化防止をより確実に行うために、SOFCの温度(例えばSOFCの最高温度)を監視し、この温度が酸化劣化温度未満のうちに、その時点における改質容量に応じた流量の炭化水素系燃料を供給することができる。具体的には、予備実験やシミュレーションによって、SOFCと領域Z1の温度の経時変化を知り、SOFCが酸化劣化点以下の時点における領域Z1の温度で改質可能な炭化水素燃料をFk1とすることができる。
【0091】
上で説明した例においては、オートサーマルリフォーミングを行い、改質触媒層を加熱する熱として部分酸化改質反応熱を利用している。このため、電気ヒータの発熱のみで改質触媒層を加熱し、水蒸気改質反応を行う場合と比較して電気ヒータのサイズ、電源容量を小さくでき、間接内部改質型SOFCモジュールのサイズをコンパクトに、また構造を簡素にすることができる。
【0092】
また、本形態では、改質触媒層を昇温するために電気ヒータ9を用いているが、水蒸気や空気の顕熱で触媒層が十分に加熱される場合には、電気ヒータ9を用いなくても良い。
【0093】
電気ヒータ9による改質触媒層の加熱開始は、昇温時間短縮のため、極力早い時点から行うことが好ましい。電気ヒータ2によって水気化器を水が気化可能な温度に昇温する工程(工程1)の完了を待たずに、電気ヒータ9により改質触媒層を昇温することができる。水気化器加熱用電気ヒータ2と改質触媒層加熱用電気ヒータ9とを同時に作動させてもよい。
【0094】
本形態では、水気化のために電気ヒータ2の発熱を用いているが、その限りではない。モジュール外部から高温の水蒸気を供給する場合、あるいはモジュール外部から高温の空気を供給し、その顕熱により水気化器が十分加熱される場合などには、電気ヒータ2を用いなくても良い。
【0095】
ここで、予め知っておいた温度条件に基づいて炭化水素系燃料の供給量を判定する仕方について、具体例を挙げて説明する。
【0096】
例えば、流量Fkiの炭化水素系燃料を領域Ziにおいて改質可能な改質触媒層の温度条件を、表1に示すように予め知っておく。
【0097】
【表1】

【0098】
この場合、実際にSOFCを起動するにあたっては、t1が400℃以上かつt2が500℃以上になったら、その時点で領域Z1においてFk1の炭化水素系燃料流量が可能であると判定できるので、流量Fk1の炭化水素系燃料を供給する。
【0099】
次に、t1が400℃以上かつt3が500℃以上になったら、その時点で領域Z2においてFk2の炭化水素系燃料流量が可能であると判定できるので、炭化水素系燃料の供給量を増やして流量Fk2にする。
【0100】
同様に、t1が400℃以上かつt4が500℃以上になったら炭化水素系燃料の改質器への供給量を流量Fk3に増やし、t1が400℃以上かつt5が500℃以上になったら炭化水素系燃料の改質器への供給量を流量Fk4に増やす。
【0101】
すなわち、上の起動方法では、炭化水素系燃料を四段階に分けて増やしつつ改質器に供給している。なお、例えば、第一段階において、改質触媒層全体で改質可能な炭化水素系燃料流量ではなく、領域Z1で改質可能な炭化水素系燃料の流量Fk1を用いているが、これは安全のためであり、流量Fk1の炭化水素系燃料が改質器において改質可能であることに変わりはない。
【0102】
〔形態1−2〕
本形態では、1回目の工程dで部分酸化改質を行い、2回目以降の工程dでオートサーマル改質を行う。水を改質原料としない部分酸化改質を行うことにより、改質ガス中に含まれる水分がモジュール内で凝縮することを抑制することができる。この場合、形態1−1と異なり、1回目の工程dに先立って水気化器1に流量Fw1の水を供給する工程3を行わない。また、1回目で水気化器1を電気ヒータ2により昇温する工程1を行わず、水を供給する2回目の工程3に先立って水気化器1を電気ヒータ2により昇温する工程1を行っても良い。
【0103】
〔形態1−3〕
本形態では、1回目の工程cおよびdの前に、改質触媒層において燃焼を行う。触媒燃焼熱を利用して、改質触媒層の昇温を加速するためである。
【0104】
この場合、改質触媒層によって炭化水素系燃料を燃焼可能な温度条件を予め知っておく。また、燃焼反応を促進可能な改質触媒層を用いる。
【0105】
ここでは、炭化水素系燃料を燃焼する際に改質触媒層に供給する炭化水素系燃料流量をFk0とし、流量Fk0の炭化水素系燃料を燃焼する際に改質触媒層に供給する空気の流量をFa0とする。
【0106】
SOFCシステムを実際に起動する前に、予め、流量Fk0の炭化水素系燃料を領域Z1において燃焼可能な温度条件として温度センサーS1およびS2でそれぞれ計測される温度T1(Fk0)およびT2(Fk0)を知り、T1(Fk0)およびT2(Fk0)を流量Fk0の炭化水素系燃料を燃焼可能な改質触媒層の温度条件とする。
【0107】
また、工程2において、以下の手順を行う。
【0108】
2−1.電気ヒータ9により、改質触媒層を昇温する。熱電対S1〜S5による温度監視も開始する。
【0109】
2−2.改質触媒層4に流量Fa0の空気を供給する。
【0110】
2−2.熱電対S1およびS2で測定される温度t1およびt2が、それぞれT1(Fk0)およびT2(Fk0)以上となったかどうかを判定することにより、領域Z1において燃焼可能な炭化水素燃料流量が流量Fk0であると判定する。つまり、t1がT1(Fk0)以上かつt2がT2(Fk0)以上という条件が満たされた場合に、領域Z1において燃焼可能な炭化水素燃料流量が流量Fk0であると判定する。上記条件が満たされていなければ、領域Z1において燃焼可能な炭化水素燃料流量はゼロである。
【0111】
2−3.燃焼可能な炭化水素燃料流量がFk0と判定されたら、Fk0は炭化水素系燃料流量の現在値(ゼロ)を超えるので、改質触媒層に供給量Fk0の炭化水素系燃料を供給して燃焼し、得られた燃焼ガスをSOFCアノードに供給する。
【0112】
〔形態1−4〕
i番目の改質段階を、更に細分化して行うことができる。例えば、形態1−1における1回目の改質段階を、さらに4つの段階に分割して行うこと、すなわち1回目の改質段階にて工程cおよびdを4回繰り返すことができる。1回目の改質段階では、領域Z1を考慮対象として改質可能の判定を行う。つまり温度センサーS1およびS2によって計測される温度を、判定に用いる温度条件とする。1回目の改質段階をさらに4つの段階に分ける場合、次表に示すように、改質段階1−1〜1−4において、流量Fk1-1〜Fk1-4の炭化水素燃料を領域Z1で改質可能な温度条件T1(Fk1-1)およびT2(Fk1-1)を予め知っておく(工程a)。ここで、0<Fk1-1<Fk1-2<Fk1-3<Fk1-4<Fk2である。そして、改質段階1−1において、特には、1−1回目の工程5(工程c)において、測定されたt1およびt2が、それぞれT1(Fk1-1)及びT2(Fk1-1)以上となった場合に、領域Z1において改質可能なをFk1-1と判定し、1−1回目の工程6(工程d)において流量Fk1-1の炭化水素燃料流量を改質触媒層に供給する。同様に改質段階1−2〜1−4を行い、2段階目以降の改質段階に移る。
【0113】
【表2】

【0114】
ここでは、改質段階1をさらに細分化したが、任意の改質段階を同様に細分化することができる。また二以上の改質段階を同様に細分化してもよい。最後の改質段階を細分化する場合、細分化された最後の段階における炭化水素燃料流量を、起動完了時の炭化水素燃料流量とする。つまり、形態1−1の4段階目の改質段階をさらに4分割する場合、Fk4-4を起動完了時の炭化水素燃料流量とする。
【0115】
なお、次に述べる形態2についても、同様に改質段階の更なる細分化を行うことができる。
【0116】
〔形態2−1〕
上に説明した形態では、改質の最終段階を除き、改質触媒層の入口側の一部によって炭化水素系燃料が改質可能である温度条件を考慮した。本形態では、改質の全ての段階において、改質触媒層の全体によって炭化水素燃料が改質可能である温度条件を考慮する。
【0117】
燃料電池システムとしては、形態1−1と同様に、図1に示した構成を有するものを使用できる。ただし、本形態では、領域Ziという概念は用いない。
【0118】
形態1−1と異なり、SOFCシステムを実際に起動する前に、予め、各流量Fkiの炭化水素系燃料を改質触媒層全体において改質可能な温度条件として温度センサーS1〜SN+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)〜TN+1(Fki)を知り、T1(Fki)〜TN+1(Fki)を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする(工程a)。
【0119】
具体的には、流量Fk1の各炭化水素系燃料を改質触媒層全体において改質可能な温度条件として、温度センサーS1〜S5でそれぞれ計測される温度T1(Fk1)〜T5(Fk1)を知る。そして、T1(Fk1)およびT5(Fk1)を流量Fk1の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とする。同様に、流量Fk2〜Fk4の炭化水素燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件として、それぞれ、T1(Fk2)〜T5(Fk2)、T1(Fk3)〜T5(Fk3)、T1(Fk4)〜T5(Fk4)を知っておく。
【0120】
システムを実際に起動する際には、i回目の工程5において、熱電対S1〜S5で測定される温度t1〜t5が、それぞれT1(Fki)〜T5(Fki)以上となったかどうかを判定することにより、改質触媒層全体において改質可能な炭化水素燃料流量が流量Fkiであると判定する。
【0121】
本形態は、触媒層各部の温度上昇の仕方によらず好ましく用いることができる。
【0122】
ここで、予め知っておいた温度条件に基づいて炭化水素系燃料の供給量を判定する仕方について、具体例を挙げて説明する。
【0123】
例えば、流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件を、次表に示すように予め知っておく。
【0124】
【表3】

【0125】
この場合、実際にSOFCを起動するにあたっては、t1が400℃以上、t2が500℃以上、t3が400℃以上、t4が300℃以上、かつt5が200℃以上になったら、その時点で改質触媒層(全体)においてFk1の炭化水素系燃料流量が可能であると判定できるので、流量Fk1の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給する。
【0126】
次に、t1が400℃以上、t2が525℃以上、t3が500℃以上、t4が400℃以上、かつt5が300℃以上になったら、その時点で改質触媒層(全体)においてFk2の炭化水素系燃料流量が可能であると判定できるので、炭化水素系燃料の供給量を増やして流量Fk2にする。
【0127】
同様に、t1が400℃以上、t2が550℃以上、t3が520℃以上、t4が500℃以上、かつt5が400℃以上になったら炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量を流量Fk3に増やす。
【0128】
そして、t1が400℃以上、t2が575℃以上、t3が550℃以上、t4が525℃以上、かつt5が500℃以上になったら炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量を流量Fk4に増やす。
【0129】
〔形態2−2〕
形態2−1では、全ての改質段階において、T1〜T5の全てを用いて判定を行う。しかしこの限りではなく、各改質段階においてT1〜T5のうちの少なくとも一つの温度、好ましくは二以上の温度を用いて判定を行うこともできる。また、各段階においてT1〜T5のうちの同一の温度を用いて判定を行う必要もない。
【0130】
例えば次表に示すように、一回目の改質段階については、温度センサーS1およびS2で計測される温度T1およびT2を温度条件としておき、実際の起動にあたっては、T1およびT2を計測した温度センサーS1およびS2で計測される温度t1およびt2が、それぞれ、同一の温度センサー(S1およびS2)で計測されたT1およびT2以上となった場合に流量Fk1の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給することができる。
【0131】
二回目の改質段階については、温度センサーS2、S3、S4で計測される温度T2、T3およびT4を温度条件としておく。実際の起動にあたっては、温度センサーS2、S3およびS4で計測される温度t2、t3およびt4が、それぞれ、同一の温度センサー(S2、S3およびS4)で計測されたT2、T3およびT4以上となった場合に流量Fk2の炭化水素系燃料を改質触媒層に供給することができる。
【0132】
【表4】

【0133】
〔炭化水素系燃料〕
炭化水素系燃料としては、改質ガスの原料としてSOFCの分野で公知の、分子中に炭素と水素を含む(酸素など他の元素を含んでもよい)化合物もしくはその混合物から適宜選んで用いることができ、炭化水素類、アルコール類など分子中に炭素と水素を有する化合物を用いることができる。例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等の炭化水素燃料、また、メタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル等のエーテル等である。
【0134】
なかでも灯油やLPGは、入手容易であり好ましい。また独立して貯蔵可能であるため、都市ガスのラインが普及していない地域において有用である。さらに、灯油やLPGを利用したSOFC発電装置は、非常用電源として有用である。特には、取り扱いも容易である点で、灯油が好ましい。
【0135】
〔高温型燃料電池〕
本発明は、アノードの酸化劣化防止が必要な高温型燃料電池を備えるシステムに好適に適用することができる。アノードに金属電極が用いられる場合、例えば400℃程度でアノードの酸化劣化が起きることがある。このような燃料電池としては、SOFCやMCFCがある。
【0136】
SOFCとしては、平板型や円筒型などの各種形状の公知のSOFCから適宜選んで採用できる。SOFCでは、一般的に、酸素イオン導電性セラミックスもしくはプロトンイオン導電性セラミックスが電解質として利用される。
【0137】
MCFCについても、公知のMCFCから適宜選んで採用できる。
【0138】
SOFCやMCFCは単セルであってもよいが、実用上は複数の単セルを配列させたスタック(円筒型の場合はバンドルと呼ばれることもあるが、本明細書でいうスタックはバンドルも含む)が好ましく用いられる。この場合、スタックは1つでも複数でもよい。
【0139】
〔改質器〕
改質器は、炭化水素系燃料から水素を含む改質ガスを製造する。改質器においては、水蒸気改質、部分酸化改質、および、水蒸気改質反応に部分酸化反応が伴うオートサーマルリフォーミングのいずれを行ってもよい。
【0140】
改質器は、水蒸気改質能を有する水蒸気改質触媒、部分酸化改質能を有する部分酸化改質触媒、部分酸化改質能と水蒸気改質能とを併せ持つオートサーマル改質触媒を適宜用いることができる。
【0141】
炭化水素系燃料(必要に応じて予め気化される)および水蒸気、さらに必要に応じて空気等の酸素含有ガスをそれぞれ単独で、もしくは適宜混合した上で改質器(改質触媒層)に供給することができる。また、改質ガスは高温型燃料電池のアノードに供給される。
【0142】
高温型燃料電池のなかでも、間接内部改質型SOFCはシステムの熱効率を高めることができる点で優れている。間接内部改質型SOFCは、水蒸気改質反応を利用して炭化水素系燃料から水素を含む改質ガスを製造する改質器と、SOFCとを有する。この改質器では、水蒸気改質反応を行うことができ、また、水蒸気改質反応に部分酸化反応が伴うオートサーマルリフォーミングを行ってもよい。SOFCの発電効率の観点からは起動完了後、部分酸化反応は起きない方が好ましい。オートサーマルリフォーミングにおいても、起動完了後は水蒸気改質が支配的になるようにされ、従って改質反応はオーバーオールで吸熱になる。そして、改質反応に必要な熱がSOFCから供給される。改質器とSOFCが一つのモジュール容器に収容されモジュール化される。改質器はSOFCから熱輻射を受ける位置に配される。こうすることによって、発電時にSOFCからの熱輻射によって改質器が加熱される。また、SOFCから排出されるアノードオフガスをセル出口で燃焼させることにより、SOFCを加熱することもできる。
【0143】
間接内部改質型SOFCにおいて、改質器は、SOFCから改質器の外表面へと直接輻射伝熱可能な位置に配することが好ましい。従って改質器とSOFCとの間には実質的に遮蔽物は配置しないこと、つまり改質器とSOFCとの間は空隙にすることが好ましい。また、改質器とSOFCとの距離は極力短くすることが好ましい。
【0144】
各供給ガスは必要に応じて適宜予熱されたうえで改質器もしくはSOFCに供給される。
【0145】
モジュール容器としては、SOFCと改質器とを収容可能な適宜の容器を用いることができる。その材料としては、例えばステンレス鋼など、使用する環境に耐性を有する適宜の材料を用いることができる。容器には、ガスの取り合い等のために、適宜接続口が設けられる。
【0146】
セル出口がモジュール容器内で開口している場合は特に、モジュール容器の内部と外界(大気)とが連通しないように、モジュール容器が気密性を持つことが好ましい。
【0147】
〔改質触媒〕
改質器で用いる水蒸気改質触媒、部分酸化改質触媒、オートサーマル改質触媒のいずれも、それぞれ公知の触媒を用いることができる。部分酸化改質触媒の例としては白金系触媒、水蒸気改質触媒の例としてはルテニウム系およびニッケル系、オートサーマル改質触媒の例としてはロジウム系触媒を挙げることができる。燃焼を促進可能な改質触媒の例としては白金系およびロジウム系触媒を挙げることができる。
【0148】
部分酸化改質反応が進行可能な温度は例えば200℃以上、水蒸気改質反応が進行可能な温度は例えば400℃以上である。
【0149】
以下、水蒸気改質、オートサーマル改質、部分酸化改質のそれぞれにつき、改質器における起動時および定格運転時の条件について説明する。
【0150】
水蒸気改質では、灯油等の改質原料にスチームが添加される。水蒸気改質の反応温度は例えば400℃〜1000℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は炭化水素系燃料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0151】
オートサーマル改質ではスチームの他に酸素含有ガスが改質原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスし、かつ、改質触媒層やSOFCの温度を保持もしくはこれらを昇温できる発熱量が得られるように酸素含有ガスを添加することができる。酸素含有ガスの添加量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.005〜1、より好ましくは0.01〜0.75、さらに好ましくは0.02〜0.6とされる。オートサーマル改質反応の反応温度は例えば400℃〜1000℃、好ましくは450℃〜850℃、さらに好ましくは500℃〜800℃の範囲で設定される。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.05〜20、より好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.2〜5の範囲で選ばれる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは1〜10、より好ましくは1.5〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。
【0152】
部分酸化改質では酸素含有ガスが改質原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。反応を進めるための温度を確保するため、熱のロス等において適宜添加量は決定される。その量は、炭化水素系燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.1〜3、より好ましくは0.2〜0.7とされる。部分酸化反応の反応温度は、例えば450℃〜1000℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定することができる。炭化水素系燃料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30の範囲で選ばれる。反応系においてすすの発生を抑制するためにスチームを導入することができ、その量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.1〜3、さらに好ましくは1〜2とされる。
【0153】
〔他の機器〕
本発明で用いるSOFCシステムにおいて、高温型燃料電池システムの公知の構成要素は、必要に応じて適宜設けることができる。具体例を挙げれば、炭化水素系燃料に含まれる硫黄分を低減する脱硫器、液体を気化させる気化器、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワなどの昇圧手段、流体の流量を調節するため、あるいは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、気体を凝縮する凝縮器、スチームなどで各種機器を外熱する加熱/保温手段、炭化水素系燃料や可燃物の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、出力用や動力用の電気系統などである。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、例えば定置用もしくは移動体用の発電システムに、またコージェネレーションシステムに利用される高温型燃料電池システムに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の一形態を説明するための、間接内部改質型SOFCシステムの概要を示す模式図である。
【符号の説明】
【0156】
1 水気化器
2 水気化器に付設された電気ヒータ
3 改質器
4 改質触媒層
5 熱電対
6 SOFC
7 イグナイター
8 モジュール容器
9 改質器に付設された電気ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系燃料を改質して水素含有ガスを製造する、改質触媒層を有する改質器と、該水素含有ガスを用いて発電を行う高温型燃料電池とを有する燃料電池システムの起動方法であって、
a)起動完了時の炭化水素系燃料流量より少ない流量の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件である第一の温度条件と、
起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件である第二の温度条件と、を予め知っておく工程、
b)改質触媒層の温度を測定しつつ、改質触媒層を昇温する工程、
c)測定された改質触媒層の温度を、前記第一および第二の温度条件のうちの少なくとも一つと比較して、該測定を行った時点で改質触媒層において改質可能な炭化水素系燃料の流量を判定する工程、および、
d)該判定された流量が、炭化水素系燃料流量の現在値を超えた場合に、該判定された流量の炭化水素系燃料を、改質触媒層に供給して改質し、得られた改質ガスを高温型燃料電池のアノードに供給する工程を有し、
炭化水素系燃料の改質触媒層への供給量が、起動完了時の流量になるまで、前記工程cおよびdを繰り返す
ことを特徴とする燃料電池システムの起動方法。
【請求項2】
e)工程dで行う改質に必要な流量の、スチームおよび/または酸素含有ガスを、工程dに先だって改質触媒層に供給する工程
をさらに有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記改質触媒層として、水蒸気改質反応を促進可能な改質触媒層を用い、
起動完了時の流量の炭化水素系燃料を改質する際に、水蒸気改質を行う請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記改質触媒層として、水蒸気改質反応および部分酸化改質反応を促進可能な改質触媒層を用い、
起動完了時の流量より少ない流量の炭化水素系燃料を改質する際に、部分酸化改質または自己熱改質を行う請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記改質触媒層として、燃焼を促進可能な改質触媒層を用い、
工程bにおいて、炭化水素系燃料を改質触媒層に供給して燃焼を行う請求項1から4の何れか一項記載の方法。
【請求項6】
改質触媒層の入口端および出口端、ならびに該入口端と出口端との間にそれぞれ温度センサーを配し、ただし該温度センサーはガス流通方向に沿って相異なる位置に配し、
該温度センサーの個数をN+1(Nは2以上の整数)とし、
改質触媒層の入口端側からi番目の温度センサーをSiとし(iは1以上N以下の整数)、改質触媒層の出口端に設けられた温度センサーをSN+1とし、
温度センサーS1と温度センサーSi+1との間に位置する改質触媒層の領域をZiとし、
相異なるN個の炭化水素系燃料流量をFkiとし、ただし、Fk1は正の値を有し、iの増加とともにFkiは増加し、かつFkNが起動完了時の炭化水素系燃料流量であるとき、
工程aにおいて、各流量Fkiの炭化水素系燃料を領域Ziにおいて改質可能な温度条件として温度センサーS1およびSi+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)およびTi+1(Fki)を知り、該T1(Fki)およびTi+1(Fki)を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とし、
工程cおよびdを繰り返してN回行い、
i回目の工程cにおいて、温度センサーS1およびSi+1によってそれぞれ計測される温度t1およびti+1が、それぞれ温度T1(Fki)およびTi+1(Fki)以上となった場合に、領域Ziにおいて改質可能な炭化水素燃料流量をFkiと判定する
請求項1から5の何れか一項記載の方法。
【請求項7】
改質触媒層の入口端および出口端、ならびに該入口端と出口端との間にそれぞれ温度センサーを配し、ただし該温度センサーはガス流通方向に沿って相異なる位置に配し、
該温度センサーの個数をN+1(Nは2以上の整数)とし、
改質触媒層の入口端側からi番目の温度センサーをSiとし(iは1以上N以下の整数)、改質触媒層の出口端に設けられた温度センサーをSN+1とし、
相異なるN個の炭化水素系燃料流量をFkiとし、ただし、Fk1は正の値を有し、iの増加とともにFkiは増加し、かつFkNが起動完了時の炭化水素系燃料流量であるとき、
工程aにおいて、各流量Fkiの炭化水素系燃料を改質触媒層全体において改質可能な温度条件として温度センサーS1〜SN+1でそれぞれ計測される温度T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を知り、該T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を流量Fkiの炭化水素系燃料を改質可能な改質触媒層の温度条件とし、
工程cおよびdを繰り返してN回行い、
i回目の工程cにおいて、工程aにおいて前記T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度を計測した温度センサーS1〜SN+1によって計測される温度が、同一の温度センサーで計測された前記T1(Fki)〜TN+1(Fki)のうちの少なくとも一つの温度以上となった場合に、改質可能な炭化水素燃料流量をFkiと判定する
請求項1から5の何れか一項記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−311030(P2008−311030A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156438(P2007−156438)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】