説明

燃料電池システム

【課題】 燃料電池システムの小型化を図り、さらに、電力供給と熱供給との平準化を図ることにより、効率の良いコージェネレーションシステムを実現する。
【解決手段】 所定の負荷に対し電力と熱を供給する燃料電池システムであって、前記燃料電池システムを構成する装置を一のユニットケース100に収納し、この前記ユニットケース100に、所定のガス燃料を充填した燃料カートリッジ106の装着部を設けるとともに、前記電力を供給するためのACコンセント107と、熱を温水として供給するための供給口109を設けた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関し、より詳しくは、システムをユニット化し、所定の負荷に電力及び熱を供給する小型の燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用に使われる燃料電池システムは大型のものが多く、燃料電池本体の他、脱硫器、改質器、インバータ、熱回収器等、システムを構成する各装置をそれぞれ別々に設置する必要があるため、十分な設置スペースを確保できない家庭においては燃料電池システムを設置することが困難であった。
そのため、燃料電池システムを構成する各装置を一つの外装ケースにまとめて収納する燃料電池発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−170591号公報(第1−2頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来提案されている燃料電池発電装置においては、排熱によって得られた温水を貯蔵しておく貯湯槽等が必要であり、設置スペースの大幅な縮小化には至っていない。
また、コスト削減や可搬性については、何ら考慮されておらず、これらの改善が課題となっていた。
【0005】
本発明は、以上のような従来の技術が有する問題を解決するために提案されたものであり、燃料電池システムをユニット化し、電力供給と熱供給との平準化を図ることにより、効率の良いコージェネレーションシステムを提供し、省スペース化を実現する小型の燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の燃料電池システムは、所定の負荷に対し電力と熱を供給する燃料電池システムであって、前記燃料電池システムを構成する装置を、一のユニットケースに収納した構成としてある。
【0007】
このような構成からなる本発明の燃料電池システムによれば、燃料電池システムを構成する各装置を別々に設置するのではなく、一のユニットケースに収納して設置するので、システム全体の小型化や設置スペースの縮小化を図ることができる。
また、小型化により、可搬性も向上するので、様々な用途に用いることができる。
【0008】
さらに、本発明の燃料電池システムは、前記ユニットケースに、所定のガス燃料を充填した燃料カートリッジの装着部を設けた構成としてある。
このような構成からなる本発明の燃料電池システムによれば、固定された燃料貯蔵設備や大型ボンベからの燃料供給に限らず、持ち運びが容易な燃料カートリッジを装着することにより、どこにいても所定の燃料の供給を受けることが可能となる。
したがって、可搬性をさらに向上させることができ、利便性を高めることができる。
【0009】
また、本発明の燃料電池システムは、前記ユニットケースが、前記電力を供給するためのACコンセントと、熱を温水として供給するための供給口を有し、前記ACコンセントと供給口を介して前記電力と温水を同時に連続して供給する構成としてある。
【0010】
このような構成からなる本発明の燃料電池システムによれば、種々の装置に対して電力及び温水の供給を自由に行うことができる。
また、電力及び温水を連続的にかつ同時に必要とする装置等を、電力及び温水の供給先とすることにより、さらに効率の良い運転が可能となる。すなわち、電力と温水の供給時間が同じなので、どちらか一方のエネルギーを貯めておく必要がなくなる。例えば、熱エネルギーを保持しておくための貯湯槽等の設備が不要となる。
したがって、設置スペースの低減や可搬性を向上させるだけでなく、各種コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明の燃料電池システムは、発電容量が500W未満の燃料電池、好ましくは発電容量が300W未満の燃料電池、より好ましくは100W未満の燃料電池により構成するものとしてある。
【0012】
このような構成からなる本発明の燃料電池システムによれば、特に、電力負荷が小さい場合には、発電にかかるロスが少なくなるため、電力供給と熱供給との平準化が図られ、効率よい運転が可能となる。
そして、小容量で小型の燃料電池を採用することによって、初期費用、維持費用等、各種コストの低減及び設置スペースの縮小を図ることができる。
また、小型化に伴い重量も大幅に軽量化されるので、可搬性に優れた燃料電池ユニットを実現できる。
なお、燃料電池の発電容量を300W未満にすることによって、その効果は顕著となり、さらに、発電容量を100W未満にすることによって、格別顕著な上記効果を得られることとなる。
【0013】
また、本発明の燃料電池システムが水槽用であって、前記電力を、少なくとも、前記水槽の照明及び空気供給ブロアに供給し、かつ、前記温水を前記水槽内の温度調整用ヒータに流れる温調媒体として供給する構成としてある。
【0014】
また、本発明の燃料電池システムは、前記ユニットケース内に、前記水槽に取り付けた温度計からの信号に基づいて前記温度調整用ヒータに流れる温調媒体の量を調整する温度調節器を備えた構成としてある。
【0015】
このような構成からなる本発明の燃料電池システムによれば、電力と温水を連続的かつ同時に使用することができ、さらに、可搬性にも優れているので、特に、水槽用として用いると、好適である。このとき、ユニットケース内に温度調整用ヒータに流れる温調媒体の量を調整する制御弁を有しているので、水槽内の水温を常に最適に保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の燃料電池システムによれば、省スペース化が図れるだけでなく、可搬性に優れた燃料電池システムを実現することができる。特に、水槽用として用いると好適である。
また、電力供給と熱供給とが平準化された、効率よい運転が可能となるため、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる燃料電池システムの構成について図1及び図2を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの外観図である。
また、図2は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの主な構成を示したユニット構成図である。
【0018】
図1に示すとおり、本実施形態の燃料電池システム1は、この燃料電池システム1を構成する各装置を、一つのユニットケース100にまとめて収納することによって小型のシステムを構成している。
以下、本実施形態の燃料電池システム1を構成する各装置について詳細な説明を行う。
本実施形態の燃料電池システム1は、ユニットケース100内に脱硫器101、改質器102、燃料電池本体103、インバータ104、排熱回収器105、燃料カートリッジ106、ACコンセント107、ブロア108(図1には図示せず)、温水供給口109及び冷水入口110を備えている。
【0019】
脱硫器101は、各種燃料を燃料カートリッジ106から取り込み、燃料に含まれる硫黄含有有機化合物を除去する装置である。なお、燃料としては、灯油、メタノール、ジメチルエーテル等の液体燃料や液化石油ガス等が使用可能である。
改質器102は、脱硫器101によって脱硫された燃料を水素に変換する装置である。変換された水素は燃料電池本体103に送られる。
燃料電池本体103は、改質器102から供給される水素と、空気中の酸素とを化学反応させて、直流電流を発生させる装置である。なお、空気の取り入れは、ブロア108によって取り込まれ燃料電池本体103に送られる。
【0020】
インバータ104は、燃料電池本体103で発生した直流電流を交流電流に変換する装置である。
なお、変換された交流電流は、ユニットケース100の外面に設けられたACコンセント107を介して外部の装置等に供給される。これにより、電力ケーブル接続の煩わしさを解消するとともに、可搬性を向上させている。
排熱回収器105は、燃料電池本体103により発生する熱を冷却水に吸収させて燃料電池本体103を冷却するとともに、その熱を吸収した温水を外部へ供給する。温水の外部への供給は、ユニットケース100の外側に設けた温水供給口109から行われ、外部の熱負荷に送られる。温水供給口109は、ホースなどが取り付け可能となっている。なお、冷却水は、冷水入口110から取り込まれる。
【0021】
燃料カートリッジ106には、灯油、メタノール、ジメチルエーテル等の液体燃料や液化石油ガス等を充填してあり、ユニットケース100内の装着部に着脱自在に装着可能となっている。燃料カートリッジ106をユニットケース100に装着すると、カートリッジ106内の燃料が脱硫器101に送られるようになっている。
なお、燃料の供給は、従来の燃料貯蔵設備やボンベ等からも行えるようにしてあるが、上記のように、持ち運びが容易な燃料カートリッジ106からの燃料供給を可能とすることにより、より可搬性に優れた燃料電池システム1を実現することができる。
【0022】
そして、以上の各装置は一つの収納用ユニットケース100に収められ、本実施形態の燃料電池システム1となる。なお、上記ユニットケース100は、安全性等を考慮し、耐燃性や耐久性に優れた材料によって形成されることが望ましい。また、持ち運びし易いように、軽量であることが望ましい。さらに、可搬性を向上させるため、取っ手やキャスターを取り付けた形態であっても良い。
【0023】
次に、以上のような構成からなる燃料電池システムの具体的な利用態様について図2を参照しつつ説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを利用した魚類水槽用燃料電池システムを表した模式図である。
【0024】
同図に示すとおり、燃料電池本体103で発電された電力は、照明201に供給されるだけでなく、ブロア108にも供給される。
ブロア108は、燃料電池本体103に空気(酸素)を供給するとともに、水槽内の水にも空気(酸素)を供給するものである。これによって、従来、魚類水槽で使用されてきたエアーポンプが不要となる。
【0025】
また、同図に示すとおり、燃料電池本体103からは、温水が温度調節器202を介して、水槽200内に配置された温度調整用ヒータ203に送られる。温度調節器202は、例えば、ソレノイド式の二方切換弁になっており、水槽200内の水温を測定する温度計204からの信号に基づいて作動し、ヒータ203に流れる温水の量を調整する。具体的には、水槽200内の水温が設定温度より低いときは、温水が、ヒータ203に流れるように切換弁を作動させ、水温が設定温度より高いときは、温水が、ヒータ203を通ることなくバイパスされるように切換弁を作動させる。
温水をバイパスさせた場合などには、供給口109´を介して、図示しない他の装置へ温水を供給することもできる。
【0026】
また、本実施形態のように、連続した電力と熱の供給が同時に必要な場合には、熱エネルギーを温水として貯めておく必要がなくなる。そのため、従来、家庭用の燃料電池コージェネレーションシステム等で必要とされていた貯湯槽等も不要となり、より一層のコストの低減及び省スペース化を図ることができる。
さらに、本態様のように、負荷となる機器の総消費電力が数十W〜数百Wと少ない場合には、本実施形態の燃料電池システム1は、特に効率的なコージェネレーションシステムを実現できる。
なぜなら、従来の小型の家庭用の燃料電池コージェネレーションシステムは、発電容量が500W以上、特に、1kW以上のものが多く、本態様において使用した場合、コスト及び設置スペース等の面で様々なロスが発生し、非効率となるからである。
一方、本実施形態の燃料電池システム1では、発電容量を、500W未満、好ましくは300W未満、より好ましくは100W未満とすることにより、小電力負荷に対し、効率よく対応できる構成となっている。
【0027】
また、本実施形態の燃料電池システム1を用いることで、従来の発電装置、温熱器等に比べ、静かで環境によい魚類水槽システムを提供することが可能となる。
さらに、災害等に伴う商用電力の停電時においても、継続して運転することができるので、魚類等の生命を維持することも可能となる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池システム1によれば、従来の家庭用燃料電池システムに比べ小型化することができるので、コストの低減、設置スペースの縮小が実現されるのみならず、可搬性を向上することができる。
また、連続的かつ同時に、電力及び熱の供給が必要な負荷に使用することによって、効率のよいコージェネレーションシステムを実現することができる。
さらに、消費電力の少ない施設や機器に使用することによって、電力供給と熱供給とが平準化され、さらに効率よいコージェネレーションシステムを実現することができる。
また、低騒音で、環境性がよく、災害に対しても強いシステムを実現することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の燃料電池システムについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明にかかる燃料電池システムは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明の燃料電池システムは、一つのユニットケースに各装置を収容することによってユニットを構成することを示したが、架やラックに各装置をまとめて搭載する形態であってもよい。
【0030】
また、本発明の燃料電池システムは、災害時等における可搬型の非常用電源装置として使用してもよい。
さらに、熱帯魚水槽、水族館用水槽、養殖水槽、温室ハウス、生ゴミ処理機、デシカント空調機、温水食器洗浄乾燥機等、連続的かつ同時に電力及び熱を必要とする施設及び機器に使用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ユニット化された小型の燃料電池システムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの主な構成を示したユニット構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを利用した魚類水槽用燃料電池システムを表す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 燃料電池システム
100 ユニットケース
101 脱硫器
102 改質器
103 燃料電池本体
104 インバータ
105 排熱回収器
106 燃料カートリッジ
107 ACコンセント
108 ブロア
109 温水供給口
200 水槽
201 照明
202 温度調節器
203 温度調整用ヒータ
204 温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の負荷に対し電力と熱を供給する燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムを構成する装置を、一のユニットケースに収納したことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記ユニットケースに、所定のガス燃料を充填した燃料カートリッジの装着部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記ユニットケースが、前記電力を供給するためのACコンセントと、熱を温水として供給するための供給口を有し、前記ACコンセントと供給口を介して前記電力と温水を同時に連続して供給することを特徴とした請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池システムは、発電容量が500W未満の燃料電池、好ましくは発電容量が300W未満の燃料電池、より好ましくは100W未満の燃料電池により構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池システムが水槽用であって、前記電力を、少なくとも、前記水槽の照明及び空気供給ブロアに供給し、かつ、前記温水を前記水槽内の温度調整用ヒータに流れる温調媒体として供給することを特徴とした請求項3又は4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記ユニットケース内に、前記水槽に取り付けた温度計からの信号に基づいて前記温度調整用ヒータに流れる温調媒体の量を調整する温度調節器を備えたことを特徴とする請求項5記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−165069(P2007−165069A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358507(P2005−358507)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】