説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池11の温度を一定の温度に保持し、且つ燃料改質効率を向上させることが可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】アノード排ガスを燃料改質器15aに循環する循環量、燃料改質器15aに供給する空気量、及び燃料改質器15aに供給する燃料量を制御することにより、燃料改質器15aに供給する混合ガスのS/Cを一定に保持し、且つ、燃料改質器15aの温度を一定に保持した状態で改質装置15、及び燃料電池11を運転する。従って、燃料電池11は要求される電力を出力することができ、且つ、燃料改質器15aでのカーボン析出を回避することができ、高効率の運転が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに係り、特にS/Cを一定に保持することによりシステム効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における燃料電池システムとして、例えば、特開2008−135402号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。該特許文献1では、燃料電池の温度を一定に保持するために、燃料電池の温度が高くなった場合には、改質器に供給する酸素含有ガスの供給量を減少させ、且つ、改質器に供給する水の量を増加させる。また、燃料電池の温度が低くなった場合には、改質器に供給する酸素含有ガスの供給量を増加させ、且つ、改質器に供給する水の量を減少させることが開示されている。即ち、酸素含有ガスの供給量と水の供給量を変化させることにより、吸熱反応である水蒸気改質と、発熱反応である部分酸化改質とを適宜切り替えることにより、燃料電池の温度を一定に保持することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−135402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例では、燃料電池の温度が低下した場合には、水供給手段による水の供給を減少させるので、吸熱反応である水蒸気改質反応が停止し、これに変わり、酸素による部分酸化改質反応が進行する。ここで、部分酸化改質反応は、水蒸気改質反応と比較して水素(H2)及び一酸化炭素(CO)の生成量が少ないので、燃料改質効率が大幅に悪化するという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、燃料電池温度を一定の温度に保持すると共に、燃料改質効率を向上させることが可能な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、供給される混合ガスから水素を含む改質ガスを生成する改質器と、アノード極に前記改質ガスが供給され、カソード極に空気が供給されて発電し、且つ、アノード極に水蒸気が発生する燃料電池と、前記燃料電池のアノード極より排出されるアノード排気ガスの一部を循環ガスとして前記改質器へ循環させる循環手段と、燃料供給手段、及び空気供給手段を含み、前記燃料供給手段より送出される燃料と、前記空気供給手段より送出される空気、及び前記循環ガスを混合して混合ガスを生成し、該混合ガスを前記改質器に供給する混合ガス供給手段と、前記改質器に供給される混合ガスの、水とカーボンの比率であるS/Cが一定となるように、前記燃料供給手段による燃料の供給量、前記空気供給手段による空気供給量、及び、前記循環手段による循環ガス量を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る燃料電池システムでは、燃料電池が要求される出力電力に基づいて、S/Cを一定に保持した状態で、燃料改質器の温度が一定となるように、燃料改質器への燃料供給量、空気供給量、及び循環ガス供給量を決定するので、要求される出力電力を満たしつつ、カーボン析出を回避した運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムにおける、燃料電池の出力電力と燃料改質器に供給する混合ガスのA/Fとの関係を示す特性図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムにおける、燃料改質器に供給する混合ガスのA/Fと、A/Rとの関係を示す特性図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該燃料電池システム100は、カソード極11a及びアノード極11bを備えた燃料電池11と、燃料改質器15a及び該燃料改質器15aを加熱する改質器加熱器15bを備えた改質装置15と、を備えている。
【0010】
更に、燃料電池システム100は、燃料電池11のカソード極11aに空気を供給する第1空気ブロワ12と、該第1空気ブロワ12より送出される空気を加熱する空気加熱熱交換器13と、アノード極11bの出口側に設置されてアノード排気ガスを循環させる燃料循環ブロワ16と、改質装置15の燃料改質器15aに空気を供給する第2空気ブロワ17(空気供給手段)と、燃料改質器15aに燃料を供給する燃料ポンプ18(燃料供給手段)と、燃料循環ブロワ16により送出されるアノード排気ガスの一部を分岐させて燃料改質器15aに供給する循環量調整バルブ19(循環手段)と、該循環量調整バルブ19により燃料改質器15a側に分岐するガス流量を検出する循環ガス流量計20と、を備えている。
【0011】
そして、第2空気ブロワ17より送出される空気、燃料ポンプ18より送出される燃料ガス、及び循環量調整バルブ19により分岐して循環するアノード排気ガスは、混合ガスとして燃料改質器15aに供給される。
【0012】
また、燃料電池11のカソード極11aより排出される排気ガス、及び燃料循環ブロワ16により送出されて燃料改質器15aに循環されないアノード排気ガスは、排気ガス流路L1を経由して改質装置15の改質器加熱器15bに供給され、熱交換した後、空気加熱熱交換器13に供給されて、第1空気ブロワ12より送出される空気を加熱する。
【0013】
燃料電池11は、例えば、固体酸化物型燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)であり、アノード極11bに供給される改質ガスと、カソード極11aに供給される空気により電力を発生させて、モータ等の電力需要設備に供給する。
【0014】
改質装置15は、例えば熱交換器型改質器であり、改質器加熱器15bより供給される熱により加熱され、燃料ポンプ18及びアノード排気ガスの循環ガスより供給される燃料を触媒反応を用いて改質し、改質後の燃料(水素ガスを含む改質ガス)を燃料電池11のアノード極11bに供給する。
【0015】
また、第1空気ブロワ12、第2空気ブロワ17、燃料ポンプ18、燃料循環ブロワ16、循環量調整バルブ19、循環ガス流量計20は、それぞれ制御部31(制御手段)に接続されている。更に、燃料改質器15aの出口付近には、改質装置15の温度を測定するための温度センサ21(改質器温度検出手段)が設置され、該温度センサ21もやはり制御部31に接続されている。なお、制御部31は、例えば、CPU、RAM、ROM、及び各種の操作子等からなるマイコンにより構成することが可能であり、後述するように、燃料改質器15aに供給する空気量、燃料ガス量、及びアノード排気ガスの循環量を調整してS/Cを一定に保持した状態で、改質装置15の温度を一定の温度に保持する制御を行う。
【0016】
上述の構成において、燃料電池11での発電に要する主な燃料と空気は、それぞれ燃料ポンプ18、及び第1空気ブロワ12から供給される。以下、燃料の流路、及び空気の流路での燃料、空気の流れについて詳細に説明する。
【0017】
初めに、燃料電池11のアノード極11bに燃料を供給する流路について説明する。燃料ポンプ18より送出される燃料は、第2空気ブロワ17より送出される改質空気、及びアノード極11bより排出される循環ガスと混合され、改質装置15の燃料改質器15aに供給される。このとき、循環ガスは、燃料電池11での発電により生成された水蒸気及び二酸化炭素を含む。
【0018】
燃料改質器15a内では、供給された燃料と改質空気中の酸素とによる部分酸化反応(発熱反応)、及び燃料と循環ガス中の水蒸気とによる水蒸気改質反応(吸熱反応)、及びこれらの反応により生成した一酸化炭素と水蒸気とによるシフト反応(発熱反応)が進行する。
【0019】
そして、燃料改質器15aより出力される改質ガスは、燃料電池11のアノード極11bに供給される。供給された改質ガスに含まれる水素(H2)、及び一酸化炭素(CO)は、カソード極11aから電解質膜を介して供給される酸素イオンと電気化学反応を起こし、それぞれ水(H2O)、二酸化炭素(CO2)を生成する。このとき、電子が電極(外部回路側)に出力され、発電電力が発生する。
【0020】
アノード極11bより排出される排気ガスは、燃料循環ブロワ16にて昇圧され、その一部が循環量調整バルブ19を経由して燃料改質器15aを循環する。このとき、循環ガス流量計20で測定される循環ガスの流量は、制御部31に出力されるので、制御部31では、循環ガス量、及び改質ガス循環率(アノード排気ガスを燃料改質器15aへ循環させる流量の割合)を認識することができる。
【0021】
また、余剰のアノード排気ガスは、循環量調整バルブ19から排気ガス流路L1を経由して、改質装置15の改質器加熱器15bに導入される。改質装置15では、改質器加熱器15bと燃料改質器15aが交互に積層され、全体で熱交換器型改質器を形成している。
【0022】
改質器加熱器15bでは、アノード排気ガス中に含まれる一酸化炭素及び水素を、カソード排気ガスに含まれる酸素と混合して燃焼させ、高温の加熱ガスを生成する。そして、この加熱ガスにより燃料改質器15aを加熱し、更に、該燃料改質器15aに導入される改質ガスを加熱する。このとき、改質装置15の温度(燃料改質器15aの出口温度)は、改質反応に必要な所定の温度に維持する必要がある。そして、この改質装置15の温度は、改質器加熱器15bより導入される熱量、燃料改質器15aで進行する吸熱反応熱量、発熱反応熱量、及び入口ガスが持つエンタルピーと熱容量により決定する。
【0023】
次に、燃料電池11のカソード極11aに空気を供給する流路について説明する。第1空気ブロワ12より導入される空気は、空気加熱熱交換器13により昇温され、燃料電池11のカソード極11aに導入される。カソード極11aに導入された空気中に含まれる酸素は、カソード極11aで電子と反応し、酸素イオンを生成する。電子は、アノード極11bから外部負荷回路を介して供給される。カソード極11aで生成した酸素イオンは、電解質膜を介してアノード極11bへ伝導する。
【0024】
このとき、スタック(アノード極11b、及びカソード極11a)の温度は、燃料電池反応(アノード反応/カソード反応)に必要な温度に維持する必要がある。アノード極11b、及びカソード極11aの温度は、それぞれの電極上で進行する反応熱量(電力として取り出されなかった排熱量)、導入される燃料ガス及び空気が持つエンタルピー、及びその熱容量に決定される。また、燃料ガスは、燃料電池11の温度とほぼ同じ温度に制御されているため、実質的に、反応熱を空気に伝達させることで燃料電池11の温度を制御することができる。
【0025】
即ち、第1空気ブロワ12より導入された空気は、空気加熱熱交換器13を通過する際に、改質器加熱器15bの排気ガスから熱を受け取って加熱される。このとき、空気加熱熱交換器13の熱交換面積は、加熱後の空気温度が燃料電池11の温度よりも低くなるように設計されている。
【0026】
燃料電池11の出口温度が低いときには、第1空気ブロワ12による空気送出量を減少させることにより、反応熱の空気への伝達量を減少させる。一方、燃料電池11の出口温度が高いときには、第1空気ブロワ12による空気送出量を増加させることにより、反応熱の空気への伝達量を増加させる。
【0027】
以上のような制御を行うことにより、燃料電池11の温度制御が可能となる。目標燃料電池温度は、任意の場所で任意の温度に設定可能であり、予め行った実験等を基に一定に設定できる。本実施形態では、目標燃料電池温度をカソード極11aのガス出口温度を650℃としている。
【0028】
次に、S/Cを一定に保持した状態で、燃料改質器15aの温度を一定に保持する制御について説明する。図2は、燃料改質器15a或いは燃料電池11の温度を一定に保持したときの、燃料電池11の出力と、A/Fとの関係を示す特性図である。ここで、A/Fとは、燃料改質器15aに供給する新規の空気流量(第2空気ブロワ17より供給される空気流量)と、燃料流量(燃料ポンプ18より供給される燃料ガス量)との比率を示している。従って、燃料流量に対して空気流量が増加するとA/Fは大きくなり、燃料流量に対して空気流量が減少するとA/Fは小さくなる。また、S/Cは、水とカーボンの比率を示し、具体的には、水分子(H2O)のモル数と、原料炭化水素分子のC1モル数、CO2モル数、COモル数の合計のモル数との比率である。
【0029】
そして、図2から理解されるように、比較的低出力側では、改質ガスと改質加熱ガスの持つエンタルピーに対し反応器および循環流路からの放熱量が大きいことから、放熱による改質ガス温度の低下が生じる。このため、A/Fを高めに設定し、反応器温度を保つ必要がある。更に、比較的高出力側でも、A/Fを高めに設定する必要が生じる。
【0030】
これは、熱交換器型改質器の伝熱面積が一定であることから、改質器加熱器15bに供給される排気ガスの流量が増加する高出力側で、改質器加熱器15bの持つエンタルピーの中で燃料改質器15aへ伝わる伝熱量の割合が低下するためである。以上の理由により、燃料電池出力とA/Fの関係は比例関係にならず、下に凸の曲線関係となる。この関係は、改質系の放熱量や改質装置15の熱交換能力によって決まるため、予め実験などで設定する。
【0031】
また、燃料電池11の温度や燃料改質器15aの温度が変化すると、燃料電池出力とA/Fとの関係も変化する。目標燃料電池温度や目標改質器温度を変化させる場合は、必要に応じて各温度における燃料電池出力とA/Fとの特性(例えば、図2の3つの特性曲線)を予め取得することで、燃料電池11の温度、燃料改質器15aの温度に応じたA/Fを決定することができる。
【0032】
また、図3は、燃料改質器15aの入口のS/Cを一定値としたときの、A/FとA/Rとの関係を示す特性図(A/FとA/Rの関係を示す対応マップ)である。ここで、A/Rとは、燃料改質器15aに供給する新規の空気流量と、循環量調整バルブ19により循環するアノード排気ガスの比率を示している。従って、循環流量に対して空気流量が増加するとA/Rは大きくなり、循環流量に対して空気流量が減少するとA/Rは小さくなる。そして、図3から理解されるように、A/FとA/Rは、一次関数の関係(直線的に変化する関係)を有している。また、図3に示す特性図は、燃料電池11の発電出力に関わらず一定の関係を有している。
【0033】
従って、図3に示す特性曲線に対応するように、空気(第2空気ブロワ17の流量)、燃料ガス(燃料ポンプ18の流量)、及び循環量(循環ガス流量計20で測定される循環ガス量)を決定すれば、S/Cを一定に保持した状態で、改質装置15を運転することができる。また、図2に示したように、目標改質温度を一定値としてA/Fを決定しているので、燃料改質器15aの温度は一定に保たれることになる。
【0034】
即ち、図2に示す特性曲線、及び図3に示す特性曲線に基づいて、空気、燃料ガス、及び循環量を決定することにより、燃料改質器15aの温度を一定に保持し、且つS/Cを一定に保持するように制御することができる。また、図3に示す特性曲線は、一次関数であるので、この関係式を記憶しておき、該関係式を演算することにより、A/Rを求めるようにしても良い。なお、S/Cを一定にするとは、S/Cを一定値にするだけではなく、予め定めた範囲内にすることも含まれる。
【0035】
次に、上記の原理に基づく制御部31による処理手順を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS11において、制御部31は、上位機器より与えられる車両の出力要求に基づき、燃料電池11による発電出力目標を決定する。
【0036】
ステップS12において、制御部31は、発電出力目標に基づいて、目標とする改質器温度(或いは、燃料電池温度)、空気と燃料との比率(A/F)、及び、改質ガス循環率を決定する。
【0037】
その後、ステップS13において、制御部31は、ステップS11,S12の処理で設定した要求出力、A/F、改質ガス循環率に応じた、燃料供給量、改質空気供給量、及び循環量を算出し、これらを、燃料基本流量、改質空気基本流量、及び循環基本流量として設定する。
【0038】
ステップS14において、制御部31は、ステップS13にて設定した各基本流量となるように、第2空気ブロワ17、燃料ポンプ18、燃料循環ブロワ16の運転を調整し、更に、循環量調整バルブ19の開度を調整する。
【0039】
ステップS15において、制御部31は、燃料電池11による発電出力、燃料ポンプ18による燃料供給量、第2空気ブロワ17による改質空気供給量、温度センサ21により検出される改質器温度、循環ガス流量計20で検出されるアノード排気ガスの循環流量に関する信号を取得する。
【0040】
ここで、燃料電池11の発電出力信号は、燃料電池11の電流、電圧を測定することにより取得することができる。設置場所は、外部に設置された出力コントローラ(図示省略)等が好適である。燃料供給量は、燃料ポンプ18に設置した燃料インジェクタの出力信号により測定することができ、改質空気供給量は、第2空気ブロワ17の回転数信号を測定することにより取得することができる。
【0041】
アノード排気ガスの循環流量は、循環経路に設置した循環ガス流量計20により検出することができ、該循環ガス流量計20は、一例として、オリフィスを備え、該オリフィスの前後に生じる圧力差から流体流量を計算するオリフィス流量計等を用いることができる。
【0042】
ステップS16において、制御部31は、ステップS15の処理で求めた燃料流量、改質空気流量、及び循環流量と、ステップS13で設定した各基本流量との差分を演算する。
【0043】
ステップS17において、制御部31は、ステップS16の処理で演算した差分がゼロとなるように、第2空気ブロワ17、燃料ポンプ18、及び燃料循環ブロワ16の駆動を調整する。こうして、燃料改質器15aのS/Cを一定に保持した状態で、該燃料改質器15aの運転温度、及び燃料電池11の運転温度が一定となるように制御することができるのである。
【0044】
このようにして、本実施形態に係る燃料電池システム100では、要求される電力出力に応じて、燃料基本流量、改質空気基本流量、及び循環基本流量を決定する際に、S/Cを一定に保持しながら燃料改質器15aの触媒温度を一定に制御するので、要求される電力出力を満たしつつ、カーボン析出を回避した運転制御を実現することが可能となる。
【0045】
また、燃料電池11に供給する空気流量が増大して水蒸気(H2O)が増大した場合には、循環率を減少させることにより、燃料改質器15aに供給される水蒸気の増大を相殺するので、S/Cを一定に保持することが可能となり、システム全体の効率を向上させることができ、要求出力を満足する高精度な運転が可能となる。
【0046】
更に、要求される電力出力と、目標改質反応器温度、及び目標燃料電池温度に基づいてA/Fを決定するので、改質触媒温度を一定に維持することが可能となる。また、アノード排気ガスの循環率を、A/Fに比例して決定することができるので、循環率の制御が容易であり、A/Fを高精度に設定することができる。
【0047】
更に、要求される電力出力と、目標改質反応器温度、及び目標燃料電池温度に応じて、予め設定した燃料基本流量、改質空気基本流量、及び循環基本流量を補正することにより、A/F、S/Cをより高精度に制御することが可能となる。
【0048】
以上、本発明の燃料電池システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、燃料電池システムの改質器温度を一定に保持し、且つ効率を向上させることに利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 燃料電池
11a カソード極
11b アノード極
12 第1空気ブロワ
13 空気加熱熱交換器
15 改質装置
15a 燃料改質器
15b 改質器加熱器
16 燃料循環ブロワ
17 第2空気ブロワ
18 燃料ポンプ
19 循環量調整バルブ
20 循環ガス流量計
21 温度センサ
31 制御部
100 燃料電池システム
L1 排気ガス流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される混合ガスから水素を含む改質ガスを生成する改質器と、
アノード極に前記改質ガスが供給され、カソード極に空気が供給されて発電し、且つ、アノード極に水蒸気が発生する燃料電池と、
前記燃料電池のアノード極より排出されるアノード排気ガスの一部を循環ガスとして前記改質器へ循環させる循環手段と、
燃料供給手段、及び空気供給手段を含み、前記燃料供給手段より送出される燃料と、前記空気供給手段より送出される空気、及び前記循環ガスを混合して混合ガスを生成し、該混合ガスを前記改質器に供給する混合ガス供給手段と、
前記改質器に供給される混合ガスの、水とカーボンの比率であるS/Cが一定となるように、前記燃料供給手段による燃料の供給量、前記空気供給手段による空気供給量、及び、前記循環手段による循環ガス量を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記燃料電池の出力電力、及び前記改質器の温度に基づいて、前記空気供給手段より供給する空気量と、前記燃料供給手段より供給する燃料量と、の比率であるA/Fを設定し、
該A/Fに基づいて、前記S/Cを一定とした条件下で、前記空気供給手段より供給する空気量と、前記循環手段による循環ガス量と、の比率であるA/Rを求め、
更に、前記A/F、及びA/Rに基づいて、前記燃料供給手段による燃料供給量と、前記空気供給手段による空気供給量と、前記循環手段による循環ガス量と、を設定し、これらの設定となるように、前記燃料供給手段、前記空気供給手段、及び前記循環手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記混合ガス供給手段のA/Fを調整して、前記S/Cを一定に制御する際に、前記A/Fを増加させる場合には、前記循環手段による前記アノード排気ガスの循環率を減少させ、前記A/Fを減少させる場合には、前記循環手段による前記アノード排気ガスの循環率を増加させるように制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記A/Fと、前記A/Rとの関係を示す関係式または対応マップを備え、前記関係式または対応マップに基づいて、前記A/Fに対する前記A/Rを求めることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
改質器の温度を測定する改質器温度測定手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記A/F、A/Rに基づいて設定された燃料供給量を燃料基本流量とし、空気供給量を空気基本流量とし、循環ガス量を循環ガス基本流量とし、
前記改質器温度測定手段で測定される改質器温度に基づいて、前記燃料基本流量、空気基本流量、及び循環ガス基本流量を補正し、前記燃料供給量、空気供給量、及び循環ガス量が補正後の流量となるように調整することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−185910(P2012−185910A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46158(P2011−46158)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】