説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池のアノード圧力とカソード圧力との間の差圧を低減させることにより、スタックの破損を防止する。
【解決手段】燃料電池11のアノード11bの出力側に圧力調整弁25を設ける。そして、燃料電池11の始動時に、起動燃焼バーナ24より出力される燃焼ガスを燃料電池11のカソード11aに供給して昇温する際に、圧力調整弁25の開度を調整することにより、アノード圧力とカソード圧力との差圧が低減するように調整する。従って、起動燃焼バーナ24の作動時にカソード圧力が高まってセルが破損するというトラブルの発生を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに係り、特に、アノードとカソードとの圧力差を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用として用いられる固体電解質型燃料電池(SOFC)は、イオンを伝導させる電解質と、燃料との間の反応活性が良く且つ電気伝導性が高い材料で構成される燃料極(アノード)と、空気との間の反応活性が良く且つ電気伝導性が高い材料で構成される空気極(カソード)と、を備えている。
【0003】
一般に電解質は、水素イオンや酸素イオンを伝導させるので、できるだけ薄い方が電解質を通過するイオンの抵抗が低くなり、発電出力や発電効率が高くなることが知られている。しかし、電解質を極端に薄肉化すると、ピンホール等のガスリークパスが発生し、燃料と空気のクロスリークにより発電が低下するので、電解質を一定の厚さよりも薄肉化することができない。
【0004】
一方、発電性能の観点ではなく強度の観点では、電解質の薄肉化により強度が低下するため、発電運転時に所定のガス流量を流すためのアノード流路、カソード流路にそれぞれ圧力が加えられ、アノードとカソードとの間に圧力差(差圧)が発生し、この差圧が所定値以上に達すると燃料電池を破損してしまう可能性がある。
【0005】
このような差圧によるセル破損は、発電時のみならず燃料電池の始動時にも対策する必要がある。そこで、例えば特許文献1では、始動時にアノードガスの圧力を定常発電時よりも高くなるように設定し、更に、アノードの圧力上昇に応じてカソード圧力を上昇させることにより、始動時におけるセルの破損を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4450109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、燃料電池のカソード流路に流通する起動燃焼バーナを用いる場合について考慮されていない。即ち、始動時に起動燃焼バーナの燃焼ガスをカソードに供給して燃料電池を動作温度まで昇温させる場合には、燃料電池の昇温中における温度のばらつきにより燃料電池を破損させないように、起動燃焼バーナのガス流量は発電時に比べて、多量に導入する必要がある。この際、カソードの圧力が上昇し、アノードとの間の差圧により燃料電池セルを破損する可能性がある。
【0008】
特に、自動車等の移動体に用いられる燃料電池では、急速起動が求められるため、起動燃焼バーナから導入される燃焼ガスの流量は、発電時の数倍以上となるの流量をカソードに流す必要があり、カソード圧力が上昇した際に、アノードとカソードとの差圧を低減させる必要がある。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、燃料電池の始動時において、アノードとカソードの差圧を低減させる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料電池システムは、アノードに水素ガスが供給され、カソードに空気が供給されて発電する燃料電池と、前記燃料電池の始動時に、該燃料電池のカソードに燃焼ガスを供給して前記燃料電池を昇温する起動燃焼手段と、前記起動燃焼手段より出力される燃焼ガスを前記燃料電池のカソードに供給する際に、前記燃料電池のカソード圧力の上昇に対して、前記アノード、カソード間の圧力差が低減するように調整する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る燃料電池システムでは、燃料電池の始動時において起動燃焼手段によりカソードを昇温させる際に、燃料電池のアノード圧力を調整することにより、カソード圧力とアノード圧力との間の差圧を低減することができるので、燃料電池セルの破損等のトラブルの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料電池システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る燃料電池システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る燃料電池システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る燃料電池システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第5実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る燃料電池システムの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
[第1実施形態の説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、該燃料電池システム100は、カソード11a及びアノード11bを備えた燃料電池11と、燃料改質器15aと該燃料改質器15aを加熱する改質器加熱器(改質器加熱手段)15b、及び熱交換器15cを備えた改質装置15と、を備えている。そして、燃料改質器15aより出力される改質ガスは、アノード11bに供給される。また、カソード11aの排出ガスは改質器加熱器15bに供給される。
【0015】
また、燃料電池11のカソード11aに空気を供給する第1空気ブロワ12と、該第1空気ブロワ12より送出される空気を加熱する空気加熱熱交換器13と、第1空気ブロワ12と空気加熱熱交換器13との間に設けられる空気分岐弁23と、アノード11bの出口側に設置され、アノード排気ガスの一部を改質器加熱器15bに供給することによりアノード11bの圧力を調整する圧力調整弁25と、を備えている。
【0016】
更に、改質装置15の燃料改質器15aに空気を供給する第2空気ブロワ(新規ガス導入手段、空気供給手段)17と、燃料改質器15aに燃料を供給する第1燃料ポンプ(新規ガス導入手段、燃料供給手段)18と、該第1燃料ポンプ18より送出される液体燃料を蒸発させる燃料蒸発器14と、改質器加熱器15bに空気を供給する第3空気ブロワ20と、を備えている。従って、第2空気ブロワ17より送出される空気、及び燃料蒸発器14で気化された燃料ガスは、混合ガスとして燃料改質器15aに供給される。また、空気加熱熱交換器13より排出される排出ガスは、燃料蒸発器14に供給されて、燃料蒸発用の熱源として用いられる。更に、第3空気ブロワ20より送出される空気が改質器加熱器15bに供給され、燃焼用の空気として用いられる。
【0017】
また、カソード11aの入口側には、燃料電池11を始動させる際に該燃料電池11を所定の温度まで上昇させるための、起動燃焼バーナ(起動燃焼手段)24が設けられている。該起動燃焼バーナ24の入口側には、第2燃料ポンプ21、及び燃料蒸発器22が設けられ、且つ空気分岐弁23の分岐された出力口に接続されている。そして、起動燃焼バーナ24は、第2燃料ポンプ21より供給され、且つ燃料蒸発器22で気化された燃料を、空気分岐弁23より供給される空気と混合して燃焼させ、この燃焼ガスをカソード11aに供給する。
【0018】
燃料電池11は、例えば、固体酸化物型燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)であり、アノード11bに供給される改質ガスと、カソード11aに供給される空気を反応させて電力を発生させ、モータ等の電力需要設備に供給する。
【0019】
改質装置15は、例えば熱交換器型改質器であり、改質器加熱器15bより供給される熱により加熱され、第1燃料ポンプ18より供給される燃料(後述する図3,図5,図7,図9の場合は燃料とアノード排気ガスとの混合ガス)を触媒反応を用いて改質し、改質後の燃料(水素ガスを含む改質ガス)を燃料電池11のアノード11bに供給する。
【0020】
更に、この燃料電池システム100は、制御部(制御手段)31と、カソード11aの入口に設置され、カソード11aの圧力を検出するカソード圧力センサ(圧力検出手段)P1と、アノード11bの入口に設置され、アノード11bの圧力を検出するアノード圧力センサ(圧力検出手段)P2と、燃料電池11のセル温度(例えば、カソード11aの温度)を検出する温度センサT1と、を備えている。そして、各センサP1,P2,T1の検出信号は、制御部31に出力される。
【0021】
制御部31は、例えば、CPU、RAM、ROM、及び各種の操作子等からなるマイコンにより構成することが可能であり、各センサP1,P2,T1の検出信号に基づき、後述する処理手順により圧力調整弁25の開度を調整して、カソード11aの圧力とアノード11bの圧力との間の差圧を低減させる制御を行う。更に、該制御部31は、第1空気ブロワ12、第2空気ブロワ17、第3空気ブロワ20、第1燃料ポンプ18、第2燃料ポンプ21の各機器に接続され(接続用の配線は図示を省略している)、これらの各機器に制御信号を出力して、燃料電池システム100を総括的に制御する。
【0022】
次に、上述のように構成された本発明の第1実施形態に係る燃料電池システム100の作用を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。燃料電池11が始動する前の停止状態では、アノード11b内の燃料が封止されている。そして、ステップS11において、制御部31は、燃料電池11を始動させる。この処理では、第1空気ブロワ12、第1燃料ポンプ18、第2空気ブロワ17、及び第3空気ブロワ20を作動させる。これにより、燃料電池11のアノード11bに改質ガスが供給される。このため、アノード11bの温度が上昇し、この温度上昇に伴ってアノード11bの圧力は、始動開始後、時間の経過と共に徐々に上昇することになる。また、第1空気ブロワ12が作動することにより、該第1空気ブロワ12より送出される空気が空気加熱熱交換器13で加熱されて燃料電池11のカソード11aに供給される。
【0023】
ステップS12において、制御部31は、圧力調整弁25を所定の開度(初期的に設定する開度)に設定する。この処理により、アノード11bに供給される改質ガスのうちの一部が圧力調整弁25を介して改質器加熱器15bに供給されるので、アノード11bの圧力が所望する圧力となるように調整される。
【0024】
ステップS13において、制御部31は、起動燃焼バーナ24を起動させる。この処理では、空気分岐弁23にて分岐する空気を起動燃焼バーナ24に供給し、更に、第2燃料ポンプ21を作動させて起動燃焼バーナ24に燃料を供給することにより、燃料と空気を混合して燃焼させ、高温の燃焼ガスをカソード11aに供給する。そして、カソード11aに燃焼ガスが供給されることにより、該カソード11aの温度を所望する温度(例えば、600℃)まで上昇させることができる。この際、燃焼ガスの供給に伴ってカソード11aの圧力は上昇することになる。
【0025】
ステップS14において、制御部31は、カソード圧力センサP1にて検出される圧力(カソード圧力)と、アノード圧力センサP2にて検出される圧力(アノード圧力)とを取得する。そして、ステップS15において、カソード圧力とアノード圧力を比較する。
【0026】
そして、アノード圧力がカソード圧力よりも小さい場合には(ステップS15でYES)、ステップS16において、制御部31は、圧力調整弁25の開度を減少するように制御する。即ち、圧力調整弁25を閉じる方向に制御することによりアノード圧力が高まるように調整し、アノード11bとカソード11aとの間の差圧を低減させる。
【0027】
一方、アノード圧力がカソード圧力よりも大きい場合には(ステップS15でNO)、ステップS17において、制御部31は、圧力調整弁25の開度を増加するように制御する。即ち、圧力調整弁25を開く方向に制御することによりアノード圧力が低くなるように調整し、アノード11bとカソード11aとの間の差圧を低減させる。
【0028】
ステップS18において、制御部31は、温度センサT1で検出される燃料電池11の温度を取得し、この検出温度が所定温度(例えば、600℃)に達したか否かを判断し、所定温度に達していなければ(ステップS18でNO)、ステップS14に処理を戻し、所定温度に達している場合には(ステップS18でYES)、本処理を終了する。
【0029】
こうして、燃料電池11による発電を開始する前に、起動燃焼バーナ24を作動させて燃料電池11の温度を上昇させる際に、圧力調整弁25の開度を調整することにより、カソード圧力とアノード圧力の差圧を低減させることができるのである。
【0030】
このようにして、第1実施形態に係る燃料電池システム100では、燃料電池11の始動時に起動燃焼バーナ24を作動させて、カソード11aに燃焼ガスを供給する際に、アノード11bに改質ガスを供給し、更に、アノード11bとカソード11aとの差圧が低減するように、圧力調整弁25の開度を制御する。従って、起動燃焼バーナ24の作動時においてアノード11bとカソード11aとの間の差圧が高くなることを抑制することができ、燃料電池11のセルが破損する等のトラブルの発生を回避することができる。
【0031】
また、カソード11aの入口圧力と、アノード11bの入口圧力に基づいて、各圧力の差圧を求めるので、燃料電池11内部の電解質を挟むアノード流路とカソード流路の差圧にほぼ等しい差圧を求めることができ、高精度な制御が可能となる。
【0032】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係る燃料電池システム101の構成を示すブロック図である。第2実施形態に係る燃料電池システム101は、前述した第1実施形態の燃料電池システム100と対比して、アノード11bの出口側の流路が循環ブロワ16に接続され、更に、該循環ブロワ16の下流側に循環ガス分岐弁19が設けられ、循環ブロワ16より送出されるアノード排気ガスの一部を燃料改質器15aに循環させ、残りのアノード排気ガスを改質器加熱器15bに供給する構成としている点で相違している。即ち、第2実施形態に係る燃料電池システム101では、アノード排気ガスの一部が、第1燃料ポンプ18より送出される燃料、及び第2空気ブロワ17より送出される空気と混合されて燃料改質器15aに供給され、この混合ガスを触媒反応を用いて改質し、改質後の燃料(水素ガスを含む改質ガス)が燃料電池11のアノード11bに供給される構成とされている。
【0033】
また、第2実施形態に係る燃料電池システム101では、制御部31は、循環ブロワ16、及び循環ガス分岐弁19を制御するための制御信号を出力する構成とされている。それ以外の構成は、図1に示した構成と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0034】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係る燃料電池システム101の作用について説明する。燃料電池11が始動する前の停止状態では、アノード11b内の燃料が封止されている。そして、ステップS31において、制御部31は、燃料電池11を始動させる。この処理では、第1空気ブロワ12、第1燃料ポンプ18、第2空気ブロワ17、及び第3空気ブロワ20を作動させて、燃料電池11のアノード11bに改質ガスを供給する。このため、アノード11bの圧力は、始動開始後、時間の経過と共に徐々に上昇することになる。また、第1空気ブロワ12が作動して、該第1空気ブロワ12より送出される空気が空気加熱熱交換器13で加熱され、燃料電池11のカソード11aに供給される。
【0035】
ステップS32において、制御部31は、循環ガス分岐弁19の開度を予め設定した所定開度に設定する。この処理では、循環ガス分岐弁19に供給されるアノード排気ガスのうち、燃料改質器15a側に循環させる排気ガス量と、改質器加熱器15bに供給する排気ガス量が所定の比率となるように循環ガス分岐弁19の開度を設定する。
【0036】
ステップS33において、制御部31は、循環ブロワ16を起動し、該循環ブロワ16によるアノード排気ガスの循環流量が所定量となるように調整する。なお、ステップS32で設定した循環ガス分岐弁19の開度、及びステップS33で設定した循環流量は、燃料電池11の規格、起動燃焼バーナ24の規格に基づいて予め設定した値を用いている。
【0037】
ステップS34において、制御部31は、起動燃焼バーナ24を起動させる。この処理では、空気分岐弁23から分岐した空気を起動燃焼バーナ24に供給し、更に、第2燃料ポンプ21を作動させて起動燃焼バーナ24に燃料を供給し、これらの混合ガスを燃焼させることにより、高温の燃焼ガスをカソード11aに供給する。そして、カソード11aに燃焼ガスが供給されることにより、該カソード11aの温度を所望する温度(例えば、600℃)まで上昇させることができる。
【0038】
この際、カソード11aに起動燃焼バーナ24より送出される燃焼ガスが供給されてカソード11aの圧力が上昇することになる。しかし、前述したステップS32、S33の処理で循環ブロワ16の流量、及び循環ガス分岐弁19の開度が所望の数値に設定されているので、アノード11bに供給される改質ガス量が調整され、アノード11bの圧力がカソード11aの圧力とほぼ一致するように設定される。その結果、アノード11bとカソード11aの間の差圧が高くなることを抑制できることになる。
【0039】
ステップS35において、制御部31は、燃料電池が所定の温度(例えば、600℃)に達したことを確認して、本処理を終了する。
【0040】
このようにして、第2実施形態に係る燃料電池システム101では、燃料電池11の始動時に起動燃焼バーナ24を作動させて、カソード11aに燃焼ガスを供給する際に、アノード11bに改質ガスを供給し、更に、循環ブロワ16の流量、及び循環ガス分岐弁19の開度を所定値に設定することにより、アノード11bとカソード11aとの差圧を低減させる。従って、起動燃焼バーナ24の作動時においてアノード11bとカソード11aとの間の差圧が高くなることを抑制することができ、燃料電池11のセルが破損する等のトラブルの発生を回避することができる。
【0041】
また、循環ブロワ16を用いてアノード排気ガスを循環させるので、発電が行われる前にアノード11bに通じる循環経路を暖気することが可能となる。更に、カソード11aの流路のみで燃料電池11を昇温させる場合(従来の場合)には、燃料電池11内の温度のばらつきが大きくなるが、循環ブロワ16を用いてアノード排気ガスを循環させることにより、燃料電池内部の温度のばらつきを低減させることができ、熱応力に起因してセルが破損することを防止できる。
【0042】
また、燃料電池システム101の停止時には、燃料電池11の燃料極(アノード11b)が酸化することによる性能の低下を防止するために、発電停止直後において、アノード流路に、改質したガスや液体燃料を導入してアノード流路を封止する操作を行う。この状況下で、燃料電池システム101を長期間運転させない場合には、アノード流路に燃料や水が凝縮するという問題が生じる。しかし、本実施形態のように、システムの始動時にアノード11bにアノード排気ガスを循環させることにより、アノード流路に凝縮した燃料や水を再気化させることが可能となり、円滑な始動が可能となる。
【0043】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る燃料電池システム102の構成を示すブロック図である。第3実施形態に係る燃料電池システム102は、前述した第2実施形態の燃料電池システム101と対比して、カソード11aの入口にカソード圧力センサP1が設置され、アノード11bの入口にアノード圧力センサP2が設置され、更に、燃料電池11のセル温度を検出する温度センサT1が設置されている点で相違している。
【0044】
また、制御部31は、各センサP1,P2,T1の検出信号を取得して、循環ブロワ16の流量、及び循環ガス分岐弁19の開度を制御する点で相違している。それ以外の構成は、図3に示した構成と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0045】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、第3実施形態に係る燃料電池システム102の作用について説明する。燃料電池11が始動する前の停止状態では、アノード11b内の燃料が封止されている。そして、ステップS51において、制御部31は、燃料電池11を始動させる。この処理では、第1空気ブロワ12、第1燃料ポンプ18、第2空気ブロワ17、及び第3空気ブロワ20を作動させて、燃料電池11のアノード11bに改質ガスを供給する。このため、アノード11bの圧力は、始動開始後、時間の経過と共に徐々に上昇することになる。また、第1空気ブロワ12が作動するので、該第1空気ブロワ12より送出される空気が空気加熱熱交換器13で加熱されて燃料電池11のカソード11aに供給される。
【0046】
ステップS52において、制御部31は、循環ガス分岐弁19の開度を初期値に設定する。この処理では、循環ガス分岐弁19に供給されるアノード排気ガスのうち、燃料改質器15a側に循環させる排気ガス量と、改質器加熱器15bに供給させる量が予め設定した所定の比率となるように循環ガス分岐弁19の開度を設定する。
【0047】
ステップS53において、制御部31は、循環ブロワ16を起動し、該循環ブロワ16によるアノード排気ガスの循環流量が予め設定した初期値となるように調整する。
【0048】
ステップS54において、制御部31は、起動燃焼バーナ24を起動させる。この処理では、空気分岐弁23から分岐した空気を起動燃焼バーナ24に供給し、更に、第2燃料ポンプ21を作動させて起動燃焼バーナ24に燃料を供給し、これらの混合ガスを燃焼させることにより高温の燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスをカソード11aに供給する。そして、カソード11aに燃焼ガスが供給されることにより、該カソード11aの温度を所望する温度(例えば、600℃)まで上昇させることができる。この際、カソード11aに起動燃焼バーナ24より送出される燃焼ガスが供給されてカソード11aの圧力が上昇することになる。
【0049】
ステップS55において、制御部31は、カソード圧力センサP1にて検出される圧力(カソード圧力)と、アノード圧力センサP2にて検出される圧力(アノード圧力)とを取得する。そして、ステップS56において、カソード圧力とアノード圧力を比較する。
【0050】
そして、アノード圧力がカソード圧力よりも小さい場合には(ステップS56でYES)、ステップS57において、制御部31は、循環ブロワ16の流量を増大させるか、或いは、循環ガス分岐弁19を調整して改質器加熱器15bに供給する排気ガス量を低減させことにより、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの流量を増大させる制御を行う。即ち、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの流量を増大させることにより、アノード11bの圧力を上昇させて、カソード11aとアノード11bとの間の差圧が低減するように制御する。
【0051】
一方、アノード圧力がカソード圧力よりも大きい場合には(ステップS56でNO)、ステップS58において、制御部31は、循環ブロワ16の流量を減少させるか、或いは循環ガス分岐弁19を調整して改質器加熱器15bに供給する排気ガス量を増加させることにより、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの流量を減少させる制御を行う。即ち、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの流量を減少させることにより、アノード11bの圧力を低下させて、カソード11aとアノード11bとの間の差圧が低減するように制御する。
【0052】
ステップS59において、制御部31は、温度センサT1で検出される燃料電池11のセル温度を取得し、検出した温度が所定温度(例えば、600℃)に達したか否かを判断し、所定温度に達していなければ(ステップS59でNO)、ステップS55に処理を戻し、所定温度に達している場合には(ステップS59でYES)、本処理を終了する。
【0053】
こうして、燃料電池11による発電を開始する前に、起動燃焼バーナ24を作動させて燃料電池11の温度を上昇させる際に、循環ブロワ16によるアノード排気ガスの循環流量、或いは循環ガス分岐弁19の開度を調整することにより、カソード圧力とアノード圧力の差圧を低減させることができるのである。
【0054】
このようにして、第3実施形態に係る燃料電池システム102では、燃料電池11の始動時に起動燃焼バーナ24を作動させて、カソード11aに燃焼ガスを供給する際に、アノード11bに改質ガスを供給し、更に、循環ブロワ16の流量、及び循環ガス分岐弁19の開度を適宜調整することにより、アノード11bとカソード11aとの差圧を低減させるので、起動燃焼バーナ24の作動時においてアノード11bとカソード11aとの間の差圧が高くなることを抑制することができ、燃料電池11のセルが破損する等のトラブルの発生を回避することができる。
【0055】
また、前述した第2実施形態と同様に、循環ブロワ16を用いてアノード排気ガスを循環させるので、発電が行われる前にアノード11bに通じる循環経路を暖気することが可能となる。更に、循環ブロワ16を用いてアノード排気ガスを循環させることにより、燃料電池内部の温度のばらつきを低減させることができ、熱応力に起因してセルが破損することを防止できる。また、システムの始動時にアノード11bにアノード排気ガスを循環させることにより、アノード流路に凝縮した燃料や水を再気化させることが可能となり、円滑な始動が可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、循環ブロワ16の流量と、循環ガス分岐弁19の双方を調整しているので、広い範囲で圧力調整を行うことが可能となる。即ち、アノード11bとカソード11aの差圧を調整するために、循環ブロワ16による流量調整のみを行う場合には、圧力調整に限界があり、アノード11bとカソード11aとの間の差圧を所定値以下にすることができない場合があり得る。このような状況下において、アノード11bの圧力を増加させる場合は、循環ガス分岐弁19を調整することにより、アノード排気ガスをアノード循環流路(燃料改質器15a側)へ全て流す。これにより、アノード11bの圧力を増加させることができる。
【0057】
反対に、アノード11bの圧力を低下させる場合には、アノード排気ガスの一部を分流させて改質器加熱器15bへ供給することにより、アノード11bの圧力を低下させることができる。この場合、循環ブロワ16の性能は、始動時のために余剰なガス供給能力を設ける必要がなく、通常発電の運転に必要な性能を備えていれば良い。従って、循環ブロワ16を高機能化する必要が無く、スペックの増大や装置の大型化を招くことが無い。
【0058】
[第4実施形態の説明]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図7は、第4実施形態に係る燃料電池システム103の構成を示すブロック図である。第4実施形態に係る燃料電池システム103は、前述した第3実施形態の燃料電池システム101と対比して、起動燃焼バーナ24が作動している際に、第1燃料ポンプ18、及び第2空気ブロワ17を制御する点で相違する。即ち、図7に示す燃料電池システム103では、制御部31と、第1燃料ポンプ18、及び第2空気ブロワ17とを接続する計装配線を記載している点で図5に示した第3実施形態と相違している。また、第4実施形態に係る燃料電池システム103では、アノード圧力とカソード圧力との間の差圧を低減するために、第1燃料ポンプ18、及び第2空気ブロワ17を制御する点で第3実施形態と相違している。それ以外の構成は、図5に示した構成と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0059】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、第4実施形態に係る燃料電池システム103の作用について説明する。燃料電池11が始動する前の停止状態では、アノード11b内の燃料が封止されている。そして、ステップS71において、制御部31は、燃料電池11を始動させる。この処理では、第1空気ブロワ12、第1燃料ポンプ18、第2空気ブロワ17、及び第3空気ブロワ20を作動させて、燃料電池11のアノード11bに改質ガスを供給する。このため、アノード11bの圧力は、始動開始後、時間の経過と共に徐々に上昇することになる。また、第1空気ブロワ12が作動することにより、該第1空気ブロワ12より送出される空気が空気加熱熱交換器13で加熱されて燃料電池11のカソード11aに供給される。
【0060】
ステップS72において、制御部31は、循環ガス分岐弁19の開度を初期値に設定する。この処理では、循環ガス分岐弁19に供給される全てのアノード排気ガスが、改質器加熱器15bに循環するように循環ガス分岐弁19の開度を設定する(つまり、改質器加熱器15bに供給する流量をゼロとする)。
【0061】
ステップS73において、制御部31は、循環ブロワ16を起動し、該循環ブロワ16によるアノード排気ガスの循環流量が所定の流量となるように調整する。
【0062】
ステップS74において、制御部31は、起動燃焼バーナ24を起動させる。この処理では、空気分岐弁23かあ分岐する空気を起動燃焼バーナ24に供給し、更に、第2燃料ポンプ21を作動させて起動燃焼バーナ24に燃料を供給することにより燃料を燃焼させ、高温の燃焼ガスをカソード11aに供給する。そして、カソード11aに燃焼ガスが供給されることにより、該カソード11aの温度を所望する温度(例えば、600℃)まで上昇させることができる。この際、カソード11aに起動燃焼バーナ24より送出される燃焼ガスが供給されてカソード11aの圧力が上昇することになる。
【0063】
ステップS75において、制御部31は、カソード圧力センサP1にて検出される圧力(カソード圧力)と、アノード圧力センサP2にて検出される圧力(アノード圧力)とを取得する。そして、ステップS76において、カソード圧力とアノード圧力を比較する。
【0064】
そして、アノード圧力がカソード圧力よりも小さい場合には(ステップS76でYES)、ステップS77において、制御部31は、新規ガス(燃料と空気の混合ガス)を追加する制御を行う。この処理では、第1燃料ポンプ18より送出される燃料量、及び第2空気ブロワ17より送出される空気量を調整することにより、燃料改質器15aより送出される改質ガス流量を増加してアノード11bの圧力を上昇させる。即ち、新規ガスを追加することにより、アノード11bとカソード11aの差圧が低減するように制御する。
【0065】
一方、アノード圧力がカソード圧力よりも高い場合には(ステップS76でNO)、ステップS78において、制御部31は、循環ガス分岐弁19の開度を調整することにより、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの量を減少させる。即ち、燃料改質器15aに供給する循環ガス流量を減少させることにより、カソード11aとアノード11bとの間の差圧が低減するように制御する。
【0066】
ステップS79において、制御部31は、温度センサT1で検出される燃料電池11のセル温度を取得し、検出した温度が所定温度(例えば、600℃)に達したか否かを判断し、所定温度に達していなければ(ステップS79でNO)、ステップS75に処理を戻し、所定温度に達している場合には(ステップS79でYES)、本処理を終了する。
【0067】
こうして、燃料電池11による発電を開始する前に、起動燃焼バーナ24を作動させて燃料電池11の温度を上昇させる際に、新規ガスの追加、或いは燃料改質器15aに供給する循環ガスの流量を低減することにより、カソード圧力とアノード圧力の差圧を低減させることができるのである。
【0068】
このようにして、第4実施形態に係る燃料電池システム103では、燃料電池11の始動時に起動燃焼バーナ24を作動させて、カソード11aに燃焼ガスを供給する際に、アノード圧力がカソード圧力よりも低い場合には新規ガスを追加し、反対に、アノード圧力がカソード圧力よりも高い場合いは、アノード排気ガスの循環流量を低減することにより、アノード11bとカソード11aとの差圧を低減させるので、起動燃焼バーナ24の作動時においてアノード11bとカソード11aとの間の差圧が高くなることを抑制することができ、燃料電池11のセルが破損する等のトラブルの発生を回避することができる。
【0069】
また、第4実施形態では、差圧を調整するために新規に供給するガス流量を調整するので、循環ブロワ16による流量調整のみでアノード11bの圧力を所望する圧力まで上昇させることができない場合であっても、新規ガスを供給することにより、アノード11bの圧力を上昇させ、アノード11bとカソード11aとの間の差圧を低減することが可能となる。
【0070】
更に、新規ガスを燃料ガスとした場合には、アノード11bの圧力を高めることができる。一方、新規ガスを空気とする場合には、液体燃料を導入する場合に比べて、燃料を気化するために必要となる熱エネルギー、及び所要時間が必要ないので、効率と応答性に優れる。また、導入した空気中の酸素は、燃料改質器15aが暖気後に部分酸化反応により消費される。
【0071】
また、燃料電池11を停止させた後、長時間が経過した場合には、燃料循環系に封入した液体燃料のうち、軽い分子は気化し、その一部は外部に漏れ出すことがある。この場合には、燃料循環系には重い分子のみが凝縮することになり、これらを気化させるための気化温度が高くなり、アノード11bに循環ガスを用いて昇圧させるだけではアノード11bとカソード11aとの間の差圧を低減できない場合が発生する。本実施形態では、新規ガス(燃料、空気)を導入するので、この問題を解決することが可能となる。
【0072】
[第5実施形態の説明]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図9は、第5実施形態に係る燃料電池システム104の構成を示すブロック図である。第4実施形態に係る燃料電池システム104は、前述した第4実施形態の燃料電池システム103と対比して、アノード11bの入口に、該アノード11bに供給される改質ガスの酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(酸素濃度検出手段)N1を設けている点で相違している。
【0073】
そして、本実施形態では、アノード11bに供給される改質ガスの酸素濃度を測定し、測定した酸素濃度に応じて新規に導入するガスを燃料とするか、或いは空気とするかを切り換える制御を行う。それ以外の構成は、図7に示した構成と同一であるので、同一符号を付して構成説明を省略する。
【0074】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、第5実施形態に係る燃料電池システム104の作用について説明する。燃料電池11が始動する前の停止状態では、アノード11b内の燃料が封止されている。そして、ステップS81において、制御部31は、燃料電池11を始動させる。この処理では、第1空気ブロワ12、第1燃料ポンプ18、第2空気ブロワ17、及び第3空気ブロワ20を作動させて、燃料電池11のアノード11bに改質ガスを供給する。このため、アノード11bの圧力は、始動開始後、時間の経過と共に徐々に上昇することになる。また、第1空気ブロワ12が作動し、該第1空気ブロワ12より送出される空気が空気加熱熱交換器13で加熱されて燃料電池11のカソード11aに供給される。
【0075】
ステップS82において、制御部31は、循環ガス分岐弁19の開度を初期値に設定する。この処理では、循環ガス分岐弁19に供給されるアノード排気ガスのうち、燃料改質器15a側に循環させる排気ガス量と、改質器加熱器15bに供給する排気ガス量が所定の比率となるように循環ガス分岐弁19の開度を設定する。
【0076】
ステップS83において、制御部31は、循環ブロワ16を起動し、該循環ブロワ16によるアノード排気ガスの循環流量が所定の流量となるように調整する。
【0077】
ステップS84において、制御部31は、起動燃焼バーナ24を起動させる。この処理では、空気分岐弁23から分岐する空気を起動燃焼バーナ24に供給し、更に、第2燃料ポンプ21を作動させて起動燃焼バーナ24に燃料を供給することにより、空気と燃料の混合ガスを燃焼させて高温の燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスをカソード11aに供給する。そして、カソード11aに燃焼ガスが供給されることにより、該カソード11aの温度を所望する温度(例えば、600℃)まで上昇させることができる。この際、カソード11aに起動燃焼バーナ24より送出される燃焼ガスが供給されてカソード11aの圧力が上昇することになる。
【0078】
ステップS85において、制御部31は、カソード圧力センサP1にて検出される圧力(カソード圧力)と、アノード圧力センサP2にて検出される圧力(アノード圧力)とを取得する。そして、ステップS86において、カソード圧力とアノード圧力を比較する。
【0079】
そして、アノード圧力がカソード圧力よりも高い場合には(ステップS86でNO)、ステップS92において、制御部31は、循環ブロワ16の流量を低減するか、或いは、循環ガス分岐弁19の開度を調整することにより、燃料改質器15aに循環させるアノード排気ガスの量を減少させる。即ち、燃料改質器15aに供給する改質ガス流量を減少させることにより、アノード圧力を低減してカソード11aとアノード11bとの間の差圧が低減するように制御する。その後、ステップS91に処理を進める。
【0080】
一方、アノード圧力がカソード圧力よりも低い場合には(ステップS86でYES)、ステップS87において、制御部31は、循環ブロワ16及び循環ガス分岐弁19が上限値に達しているか否かを判断する。この処理では、循環ブロワ16によるアノード排気ガスの流量が最大(これ以上、循環量を増やすことができない状態)であり、且つ、循環ガス分岐弁19により全ての循環ガスが燃料改質器15aに供給されている場合に、上限であると判断する。
【0081】
そして、上限でない場合には(ステップS87でNO)、ステップS93において、制御部31は、循環ブロワ16、或いは循環ガス分岐弁19を制御して、アノード排気ガスの循環量を増加させる。即ち、燃料改質器15aに供給する改質ガス流量を増加することにより、アノード圧力を増加してカソード11aとアノード11bとの間の差圧が高まるように制御する。
【0082】
他方、上限である場合には(ステップS87でYES)、ステップS88において、制御部31は、酸素濃度センサN1により検出される酸素濃度データを取得する。
【0083】
ステップS89において、制御部31は、取得した酸素濃度が予め設定した所定値以下であるか否かを判断する。
【0084】
そして、酸素濃度が所定値以下である場合には(ステップS89でYES)、アノード11bに供給する空気量を増加させて良いものと判断し、ステップS90において、制御部31は、第2空気ブロワ17より新規の空気を燃料改質器15aに供給する。その後、ステップS90に処理を進める。
【0085】
また、酸素濃度が所定値を超える場合には(ステップS89でNO)、アノード11bに供給する空気量を増加させることができないものと判断し、ステップS94において、制御部31は、第1燃料ポンプ18より新規の燃料を燃料改質器15aに供給する。その後、ステップS91に処理を進める。
【0086】
ステップS90において、制御部31は、燃料電池温度が所定温度に達したか否かを判断し、所定温度に達していない場合にはステップS85に処理を戻し、所定温度に達している場合には、本処理を終了する。こうして、アノード排気ガスの循環流量、及び新規空気、新規燃料の供給量を制御することにより、アノード11bとカソード11aの間の差圧を低減させることができるのである。
【0087】
このようにして、第5実施形態に係る燃料電池システム104では、燃料電池11の始動時に起動燃焼バーナ24を作動させて、カソード11aに燃焼ガスを供給する際に、アノード圧力がカソード圧力よりも低い場合には、アノード排気ガスの循環流量、或いは、新規燃料、新規空気の供給量を制御することにより、アノード11bとカソード11aとの差圧を低減させるので、起動燃焼バーナ24の作動時においてアノード11bとカソード11aとの間の差圧が高まることを抑制することができ、燃料電池11のセルが破損する等のトラブルの発生を回避することができる。
【0088】
また、燃料改質器15aに新規ガスを供給する場合には、アノード11b入口の酸素濃度を検出し、酸素濃度が所定値以下である場合には、空気を供給し、所定値を超える場合には、燃料を供給するので、アノード11bに供給される改質ガスの酸素濃度が高まることを防止でき、安定した制御が可能となる。更に、アノード11bの入口で酸素濃度を検出しているので、アノード11bに供給されるガスに含まれる酸素が過多となって、燃料極が酸化することを確実に防止することができる。
【0089】
以上、本発明の燃料電池システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、燃料電池の始動時にアノード、カソード間の差圧を低減することに利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
11 燃料電池
11a カソード
11b アノード
12 第1空気ブロワ
13 空気加熱熱交換器
14 燃料蒸発器
15 燃料改質装置
15a 燃料改質器
15b 改質器加熱器
15c 熱交換機
16 循環ブロワ
17 第2空気ブロワ
18 第1燃料ポンプ
19 循環ガス分岐弁
20 第3空気ブロワ
21 第2燃料ポンプ
22 燃料蒸発器
23 空気分岐弁
24 起動燃焼バーナ
25 圧力調整弁
31 制御部
P1 カソード圧力センサ
P2 アノード圧力センサ
T1 カソード温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードに水素ガスが供給され、カソードに空気が供給されて発電する燃料電池と、
前記燃料電池の始動時に、該燃料電池のカソードに燃焼ガスを供給して前記燃料電池を昇温する起動燃焼手段と、
前記起動燃焼手段より出力される燃焼ガスを前記燃料電池のカソードに供給する際に、前記燃料電池のカソード圧力の上昇に対して、前記アノード、カソード間の圧力差が低減するように調整する制御手段と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池のカソード圧力、及びアノード圧力を検出する圧力検出手段と、供給される混合ガスから水素ガスを生成する改質器と、前記改質器を加熱する改質器加熱手段と、前記アノードの排出ガスを前記改質器加熱手段に循環させる経路に設けられた圧力調整弁と、を更に備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段にて検出されるカソード圧力及びアノード圧力からこれらの圧力差を求め、前記圧力調整弁を調整することにより、前記圧力差を低減させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池のカソード圧力、及びアノード圧力を検出する圧力検出手段と、供給される混合ガスから水素ガスを生成する改質器と、前記アノードの排出ガスを前記改質器に循環させる流量を調整する流量調整手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段にて検出されるカソード圧力及びアノード圧力からこれらの圧力差を求め、該圧力差に基づき、前記流量調整手段により前記排出ガスの循環流量を調整することにより、前記圧力差を低減させることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記流量調整手段は、前記アノードの排出ガスの一部をアノードに循環させる循環ガス分岐弁であり、前記制御手段は、前記循環ガス分岐弁を調整して前記圧力差を低減させることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記アノードに新規ガスを導入する新規ガス導入手段と、前記アノードに供給されるガスの酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記新規ガス導入手段により導入する新規ガス量を調整することにより、前記アノード、カソード間の圧力差を低減させ、且つ、前記酸素濃度が予め設定した所定濃度以下とすることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記新規ガス導入手段は、前記アノードに燃料を供給する燃料供給手段であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記新規ガス導入手段は、前記アノードに空気を供給する空気供給手段であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記酸素濃度検出手段は、前記アノードの入口に設置されることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記アノードとカソードの圧力差を、前記アノード入口と前記カソード入口で検出することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−252945(P2012−252945A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126312(P2011−126312)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】