説明

燃料電池発電システム

【課題】廃棄物から発生されるガスを有効利用しつつ、好適に炭化水素系原燃料による水素ガスの補完を可能とし、安定した発電を実現することができる燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】本発明は、水素ガスと酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池発電システムSにおいて、炭化水素系原燃料Hを脱硫する水添脱硫器3を備えた燃料改質ユニット2と、廃棄物Wから水素ガスを発生させる水素発生部1と、燃料改質ユニット2から供給される水素ガスと、酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池部7とを備え、水素発生部1にて発生した水素ガスを水添脱硫器3の前段において炭化水素系原燃料Hに合流させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の硫黄化合物を含む都市ガスなどの炭化水素系の燃料と、生ゴミなどの廃棄物から生成されるガスとを水素リッチな燃料ガスとする改質装置を備えた燃料電池発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電極反応によって燃料ガス(水素など)が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出すものである。特に、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:「PEFC」)は、固体高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrance)の両面に燃料極と酸化剤極とが配されたセルと、セルを挟持する一対のリブ付きセパレータなどから構成され、このセパレータのリブ間に構成されるガス通路(燃料ガス通路及び酸化剤ガス通路)を介して、燃料極と酸化剤極にそれぞれポンプにより水素ガス(燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)を供給し、水素と空気中の酸素が酸化還元反応を生ずることで電力を発生させるものである。
【0003】
この場合、燃料極には、水素リッチガスを供給する必要がある。そのため、一般に用いられる天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの燃料ガス又は液体燃料などの原料ガスから水素ガス(燃料ガス)を改質生成する。原料ガスの改質生成を行う改質装置100は、図2に示すように原料ガスから水素、二酸化炭素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成する改質器101と、この改質器101からの改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成するCO変成器102と、このCO変成器102からの未変性の一酸化炭素を除去するCO除去器103とを有する。
【0004】
しかしながら、一般に用いられる天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの燃料ガス又は液体燃料などの原料ガスは、着臭用の硫黄化合物が添加されているため、当該硫黄化合物は改質装置100に用いられる触媒を被毒する作用があるため、改質装置100による原料ガスの処理を行う以前に、硫黄化合物を除去する必要がある。
【0005】
従来では、この硫黄化合物を除去する手段として、活性炭の如き吸着剤を備えた脱硫器104を用い、これにより、原料ガスに含まれる硫黄化合物の除去を行っていた。しかし、係る方法では、硫黄化合物を十分に除去することができないという問題がある。そこで、原料ガスに水素添加を行い、水添脱硫剤、例えば銅・亜鉛系触媒を備え、150℃〜250℃に昇温された水添脱硫器において、硫黄化合物の除去が行われる。その後、脱硫された原料ガスは、改質装置100に送られ、当該改質装置100において、水素リッチなガスに改質される。
【0006】
しかしながら、係る構成では、図2に示すように改質装置100のCO変成器102後段又は、CO除去器103後段の水素ガスを熱交換器105において含有水分の凝縮除去を行い、返送配管106を介して、改質装置100から脱硫器104へと返送し、原料ガスへの水素添加に用いていた。そのため、格別に改質装置100から脱硫器へと水素を返送するための配管や、水分除去のための熱交換器などを備える必要があった。
【0007】
他方、生ゴミや汚泥等の廃棄物を水素の原料とし、回収された水素を燃料電池の原料として用いる方法が開発されている(特許文献1参照)。係る燃料電池発電システムでは、廃棄物から水素ガスを発生させる水素発生部と、メタンガスを発生させるメタン発生部とを備え、これらから得られた水素ガスを水素燃料用燃料電池に供給すると共に、メタンガスをメタン燃料用燃料電池に供給することにより、それぞれの燃料電池において発電を行っている。また、メタン発生部には、都市ガスなどが補完的に供給可能とされている。
【0008】
また、これ以外にも、特許文献2には、燃料電池部のアノードから排出される二酸化炭素を水素分圧維持に利用することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−93087号公報
【特許文献2】特開2003−135088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した如き特許文献1では、着臭用に添加された硫黄化合物が含まれた都市ガスは、メタン発生部において発生されたメタンガスと共に、メタン燃料用燃料電池に供給され、当該電池に設けられる燃料処理装置において水素ガスにまで改質される。当該燃料処理装置に設けられる脱硫手段は、活性炭などの吸着剤であるため、上述した如く、適切な脱硫が困難であり、多量の触媒が必要でシステムが大型化するという問題がある。
【0010】
そのため、適切な脱硫処理を行うため、水添脱硫を行うことが考えられるが、この場合も上述した如き図2のように、格別に燃料処理装置において処理された水素の一部を燃料処理装置の前段に返送する手段を設ける必要がある。
【0011】
また、上記従来技術では、水素発生部において廃棄物から発生されたガスには、水素ガスの他にも、二酸化炭素やその他の微量ガスが含まれているため、水素燃料用燃料電池に設置される図示しない改質器において、ガスの水洗、活性炭等による吸着処理を行った後、膜処理によって水素ガスのみを分離し、燃料電池部に供給している。
【0012】
ここで、図3は、廃棄物から発生されたガスによる燃料電池の単セルの電圧特性を示す。係る実験では、燃料電池部として4cm2の単セルを用い、水素発生部において廃棄物から発生されたガスを上記従来技術の場合と同様に活性炭及び吸着式脱硫剤により処理し、水素ガスとして燃料電池部に供給した。これによると、発電開始直後は、0.67V、5時間経過後も同様に0.67V、7時間経過後に0.63V、8時間経過後では、0.4Vであった。
【0013】
これは、水素発生部において廃棄物から発生されたガスを、活性炭及び吸着式脱硫剤により処理した場合であっても、不純物を完全に除去することができず、燃料電池部に悪影響を及ぼし、8時間経過後に電圧低下を引き起こしたものと考えられる。
【0014】
また、上記特許文献2に記載の構成では、雑菌による水素発酵阻害が生じた場合、装置内の廃液を捨て、水素発酵菌を新しく培養し直さなければ成らず、水素供給が長時間停止してしまう問題がある。
【0015】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、廃棄物から発生されるガスを有効利用しつつ、好適に炭化水素系原燃料による水素ガスの補完を可能とし、安定した発電を実現することができる燃料電池発電システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の燃料電池発電システムは、水素ガスと酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電するものであって、炭化水素系原燃料を脱硫する水添脱硫器を備えた燃料改質部と、廃棄物から水素ガスを発生させる水素発生部と、燃料改質部から供給される水素ガスと、酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池部とを備え、水素発生部にて発生した水素ガスを水添脱硫器の前段において炭化水素系原燃料に合流させることを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明の燃料電池発電システムは、上記発明において、燃料改質部は、改質反応温度に適した温度に加熱するバーナーを備え、バーナーからの排熱を水素発生部へ供給する第1の排熱供給ライン及び/又は、燃料電池部を構成する酸化剤極からの排熱を水素発生部へ供給する第2の排熱供給ラインとを備え、第1の排熱供給ライン及び/又は第2の排熱供給ラインから供給される排熱により水素発生部を加熱することを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明の燃料電池発電システムは、上記各発明において、燃料電池部を構成する燃料極からの排熱及び二酸化炭素を水素発生部に供給する第3の排熱供給ラインを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水素ガスと酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池発電システムにおいて、炭化水素系原燃料を脱硫する水添脱硫器を備えた燃料改質部と、廃棄物から水素ガスを発生させる水素発生部と、燃料改質部から供給される水素ガスと、酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池部とを備え、水素発生部にて発生した水素ガスを水添脱硫器の前段において炭化水素系原燃料に合流させることにより、廃棄物から発生された水素ガスを用いて炭化水素系原燃料の水添反応を行うことが可能となり、水添脱硫器において、炭化水素系原燃料に含まれる微量の硫黄化合物を取り除くことが可能となる。
【0020】
これにより、燃料改質部において、炭化水素系原燃料や水素発生部から供給される水素ガスを改質に用いられる触媒を被毒させることなく好適に改質処理を実現することが可能となる。
【0021】
従って、炭化水素系原燃料の水添反応を行うために、格別に燃料改質部において処理された後の水素ガスの一部を脱硫器の前段に返送する手段を設けることなく、適切に炭化水素系原燃料に含まれる硫黄化合物の除去を行うことができ、好適な水素ガスの改質処理を実現することができる。
【0022】
また、このように炭化水素系原燃料と廃棄物から発生する水素ガスを好適に処理した後の水素ガスを用いて燃料電池部において発電を行うことから、簡素な構成により、実用的な出力を得ることができる。従って、廃棄物から発生する水素ガスを有効利用した環境に優しい燃料電池発電システムを実現することができる。
【0023】
更に、廃棄物から発生する水素ガスを利用しつつ、燃料電池部において必要な水素ガスを炭化水素系原燃料により補完することが可能となる。そのため、炭化水素系原燃料の消費量を削減しつつ、安定した発電を実現することができる。また、廃棄物から得られる水素ガスが少量となった場合であっても、継続して安定した出力を得ることが可能となる。
【0024】
請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、燃料改質部は、改質反応温度に適した温度に加熱するバーナーを備え、バーナーからの排熱を水素発生部へ供給する第1の排熱供給ライン及び/又は、燃料電池部を構成する酸化剤極からの排熱を水素発生部へ供給する第2の排熱供給ラインとを備え、第1の排熱供給ライン及び/又は第2の排熱供給ラインから供給される排熱により水素発生部を加熱することにより、これらバーナー及び/又は燃料電池部の酸化剤極からの排熱を利用して水素の発生に適した温度に水素発生部を加熱することが可能となる。これにより、水素発生部における水素発生効率の向上を図ることができる。
【0025】
また、これらバーナー及び燃料電池部の酸化剤極からの排熱によって、水素発生部を50℃〜90℃に加熱処理することが可能となるため、水素発生部に存在する水素発生を阻害する雑菌を不活性化させることができる。これによっても、水素発生効率の向上を図ることが可能となる。
【0026】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、燃料電池部を構成する燃料極からの排熱及び二酸化炭素を水素発生部に供給する第3の排熱供給ラインを備えたことにより、燃料電池部の燃料極から排出される二酸化炭素を水素発生部に供給し、該水素発生部における水素分圧を調整することが可能となり、水素発生部における逆反応を抑制することができ、水素発生効率の向上を図ることが可能となる。
【0027】
また、燃料電池部の燃料極から排出される排熱を水素発生部に供給することで、上記請求項2の発明と同様に、当該排熱を水素発生部の加熱に用いることが可能となる。そのため、水素発生部を好適に加熱することが可能となり、格別な加熱手段を不要とすることができ、生産コストの低廉化を図ることができる。
【0028】
また、請求項3の発明によれば、主に燃料電池部の燃料極から排出される二酸化炭素で水素発生部の水素分圧を維持し、更に雑菌による水素発酵阻害が生じた場合には、酸化剤極、及びバーナーからの排熱で雑菌の不活性化を行うことが可能となるため、従来の如き雑菌による水素発酵阻害の発生を未然に回避することが可能となる。従って、水素発酵菌を培養し直す必要がなくなり、水素供給を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図1の概略説明図を参照して本発明の実施形態としての燃料電池発電システムSについて詳述する。本実施例における燃料電池システムSは、固体高分子形燃料電池(ポリマ・エレクトロライト・フューエル・セル:PEFC装置)を用いた発電システムであり、例えば、図示しない家屋の軒下などに設置されるものである。
【0030】
燃料電池システムSでは、生ゴミや、汚泥、糞尿などの廃棄物Wから発生するガスと、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタン等の炭化水素系原燃料Hを燃料供給源とする。そのため、燃料電池システムSは、廃棄物Wを収容する水素発生部1と、燃料改質ユニット(燃料改質部)2と、固体高分子形の燃料電池部7とを備える。炭化水素系原燃料Hは、ガス配管10を介して燃料改質ユニット2に接続されている。
【0031】
水素発生部1は、本実施例では発酵槽により構成されており、槽内には、藻類、稲がら、砂糖きび粕、アルコール発酵粕等のバイオマスや、食品製造廃液、畜産排水や下水処理等で発生する余剰汚泥等の有機性廃棄物が収容されており、これらバイオマスや有機性廃棄物が発酵することにより得られる水素ガスを主成分とするガスを発生するものである。
【0032】
一般に、バイオマスには、微生物の培養に必要な栄養素や水素発酵に必要な物質が多く含まれている。特に、藻類、稲がら、砂糖きび粕、アルコール発酵粕、食品製造廃液、畜産排水や下水処理等で発生する余剰汚泥には、水素生成能力を有する微生物が共生している。水素生成能力を有する微生物には、例えば、クロストリジウム属の微生物、バチルス属の微生物、エンテロバクター属の微生物、シトロバクター属の微生物、光合成細菌等がある。そのため、格別に微生物を添加することなく、水素を発生させることが可能である。
【0033】
本実施例では、水素生成を促進するため、水素発生部1を構成する発酵槽内に、水素生成能力を有する微生物を含む土壌等を添加しても良い。なお、添加する微生物としては、クロストリジウム属の微生物、バチルス属の微生物、エンテロバクター属の微生物、シトロバクター属の微生物、光合成細菌、更には、有機酸や糖質を微生物が資化できる程度にまで分解することができる微生物として、クロストリジウム属の微生物、シュードモナス属の微生物、ルーメン細菌の微生物、放線菌の微生物、ペニシリウム属の糸状菌、カビ属の菌類を用いても良い。
【0034】
また、本実施例では、水素発生部1における酸素生成を阻害する物質として、メチルビオローゲン等のビオローゲン誘導体、塩化白金酸、ニッケルイオン、鉄イオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、クロムイオン、ルテニウムイオン、ジサリチリデンプロパンジアミン、ポリリジン、アンチマイシンA等の化合物等を添加しても良い。これにより、廃棄物Wに含まれる物質の光合成による酸素生成を抑制することができ、全体としての水素生成効率の向上を図ることが可能となる。
【0035】
また、更に、水素生成量を増大させるために、有機酸や糖質を添加してもよい。有機酸としては、グルコン酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸などがある。糖質としては、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、フルクトース、グルコース、セロビオース、ソルボース、マンノース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、メリビオース、デンプン、インスクリン、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グルカンペプチドなどがある。なお、有機酸や糖質は、これらに限定されるものではない。
【0036】
なお、本発明において水素発生部1は、廃棄物Wから水素ガスを主成分とするガスを発生する装置として従来より種々開発されている水素発生部であるため、詳細な説明は省略する。水素発酵の温度などの条件には特に制限がなく、当該微生物の最適な条件(一般的には20℃〜70℃、好ましくは、30〜37℃)で培養される。また、本実施例における水素発生部1を構成する発酵槽は、槽内の温度を微生物の活動に適した37℃に維持するため、後述する高温の燃料改質ユニット2及び燃料電池部7からの排熱を利用可能な位置に配設されるものとする。
【0037】
そして、水素発生部1の図示しないガス排出口には、ガス配管11の一端が接続され、当該配管11の他端は、炭化水素系原燃料Hを燃料改質ユニット2に送給するガス配管10に接続されている。
【0038】
燃料改質ユニット2は、炭化水素系原燃料Hや水素発生部1からのガスから硫黄成分を除去する水添脱硫器3と、水添脱硫器3から流出されたガスから水素、二酸化炭素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成する改質器4と、この改質器4からの改質ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成するCO変成器5と、このCO変成器5からの未変成の一酸化炭素を除去するCO除去器6とを備えている。
【0039】
燃料電池部7は、燃料改質ユニット2のCO除去器6からの一酸化炭素が除去された後の水素と空気中に含まれる酸素とを反応させて電力を発生させるものであり、この燃料電池部7は、燃料極7aと、酸化剤極7bと、冷却部7cと、図示しない固体高分子電解質膜を備えている。
【0040】
即ち、燃料極7aと酸化剤極7bにそれぞれ水素ガス(燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)が供給され、水素と空気中の酸素が下記化学反応式A及びBの酸化還元反応を生ずることで電力を発生させるものである。
【0041】
化学反応式A H2→2H++2e-
化学反応式B 2H++1/2O2+2e-→H2
この場合、固体高分子電解質膜は、燃料極7a側で生成されたプロトン(H+)が酸化剤極7b側に伝導する際の通路となるため、陽イオン伝導性を有するパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーをはじめとする陽イオン交換樹脂を用いる。
【0042】
そして、この燃料極7a側のガス流出部は、ガス配管12及び13を介して燃料改質ユニット2の改質器4のバーナー8に接続されている。このバーナー8は、改質器4を改質反応温度に適した温度に加熱するする加熱手段である。ガス配管12及び13の接続部には、電磁開閉弁14が設けられていると共に、ガス配管12の端部には、電磁開閉弁15を介してガス配管16が接続されている。
【0043】
このガス配管16は、一端が前記水素発生部1に接続されて、燃料電池部7の燃料極7aからの排熱や二酸化炭素を前記水素発生部1を構成する発酵槽内に供給する第3の排熱供給ライン20を構成する。なお、このガス配管16の他端は、外部に開放されている。これにより、燃料極7aから排出される水素ガスや二酸化炭素ガス、排熱などは、電磁開閉弁14、15を開閉制御することにより、第3の排熱供給ライン20を介して、一部は、バーナー8に送給されると共に、水素発生部1内に送給される。なお、不要な水素ガスや二酸化炭素ガスは、ガス配管16を介して外部に廃棄される。
【0044】
また、燃料電池部7の酸化剤極7b側のガス流出部は、ガス配管18を介して水素発生部1に接続されている。このガス配管18には、電磁開閉弁19が介設されており、当該電磁開閉弁19は、外部に排出するための排気管21が接続されている。このガス配管18は、燃料電池部7の酸化剤極7bからの排熱を前記水素発生部1に供給し、発酵槽を加熱する第2の排熱供給ライン22を構成する。
【0045】
更に、このガス配管18には、電磁開閉弁23が設けられたガス配管24が接続されており、当該ガス配管24の一端は、前記バーナー8の排気口に接続されている。このガス配管24は、バーナー8からの排熱を前記水素発生部1に供給し、発酵槽を加熱する第1の排熱供給ライン25を構成する。なお、当該ガス配管24の他端は、外部に開放されている。
【0046】
これにより、酸化剤極7bからの排熱は、電磁開閉弁21、23を開閉制御することにより、第2の排熱供給ライン22を介して水素発生部1に送給される。なお、不要な排熱は、電磁開閉弁21、23を開閉制御することにより、排気管21又はガス配管24を介して外部に廃棄される。また、バーナー8からの排熱は、電磁開閉弁23を開閉制御することにより、第1の排熱供給ライン25を介して水素発生部1に供給される。なお、不要な排熱は、ガス配管24の端部より外部に廃棄される。
【0047】
次に、燃料電池システムSの動作について説明する。まずはじめに、水素発生部1において廃棄物から生成された水素ガスを主成分とするガスは、ガス配管11を介してガス配管10内、即ち、水添脱硫器3の前段に流入し、ガス配管10に流入される炭化水素系原燃料Hと合流され、燃料ガスとされる。なお、ガス配管10に、電磁開閉弁を介設し、制御装置によって、水素発生部1からのガス流入量に応じて炭化水素系原燃料Hのガス流入量を制御しても良い。
【0048】
そして、上記燃料ガスは、ガス配管10を介して燃料改質ユニット2の水添脱硫器3に供給される。ここで、水添脱硫器3には、Co−Mo(コバルト−モリブデン)系又はNi−Mo(ニッケル−モリブデン)系の水添脱硫剤が存在していると共に、水添脱硫反応温度である約350℃乃至400℃に昇温されている。そのため、燃料ガスは、水添脱硫器3内において水添反応を生じる(化学反応式C)。
【0049】
化学反応式C RCH2SH+H2→RCH3+H2
通常以下に記す水添脱硫方式では、都市ガス(天然ガス)の10%程度のリサイクル水素量が必要であるが、Cu−Zn系触媒を用いた場合には、それらよりも少なくて良い。従来は燃料電池の効率面から改質水素量からのリサイクル量を最低限としていたが、廃棄物Wからの水素は効率に影響がないため、多く供給されても問題がない。
【0050】
このとき、水添脱硫器3に供給される燃料ガスは、微量の硫黄化合物を含む炭化水素系原燃料Hと、水素ガスを主成分とする水素発生部1からのガスであるため、水素発生部1から供給される水素ガスと硫黄化合物が、水添反応を生じることとなる。
【0051】
また、当該水添脱硫器3には、硫化水素を吸着処理するためのZnO(酸化亜鉛)系の吸着剤が存在しているため、上記水添反応において生成された硫化水素は吸着反応により燃料ガス中から取り除かれる(化学反応式D)。
【0052】
化学反応式D ZnO+H2S→ZnS+H2
更に、高温条件が必要となるCo−Mo系の触媒、Ni−Mo系の触媒とZnOの水添脱硫方式の他に、150℃〜250℃で運転可能とするCu−Zn系触媒を用いた水添脱硫方式がある(特許第2765950号)。
【0053】
そして、水添脱硫器3において脱硫された後の燃料ガスは、改質器4に供給される。この改質器4ではバーナー8によって水添脱硫器3からの燃料ガスと、図示しない昇圧ポンプから供給される水を内部の熱交換器で水蒸気化した水蒸気とを混合して予熱し、触媒で活性化することによって水素(燃料ガス)、二酸化炭素及び一酸化炭素を含む改質ガスを生成する(水蒸気改質反応。化学反応式E)。この段階で、燃料ガスに含まれるCO濃度は10数%である。
【0054】
化学反応式E CH4+H2O→CO+3H2
なお、この改質器4は、バーナー8によって300℃〜500℃、最高約700℃にまで昇温されることから、当該改質器4内に供給される水素発生部1からのガスは、不純物が含まれている場合であっても、従来の如き活性炭処理では処理できないような不純物までも熱分解処理することができる。従って、燃料電池部7に悪影響を及ぼす不純物を適切に除去することができ、燃料電池部7を安定的に稼働することが可能となる。
【0055】
そして、この改質器4を経たガスは、CO変成器5に供給され、ここでは改質ガスに含まれる一酸化炭素が二酸化炭素に変成される(CO変成反応。化学反応式F)。この段階で、燃料ガスに含まれるCO濃度は1%以下、本実施例では0.5%〜0.3%程度とされる。
【0056】
化学反応式F CO+H2O→CO2+H2
このCO変成器5を経たガスは、CO除去器6に供給される。この場合、CO除去器6にはCO変成器5を経た改質ガスと図示しない空気ポンプによって供給される空気が混合されて供給される。そして、この混合された改質ガスは内部の熱交換器で冷却された後、触媒によって改質ガス中の未変成の一酸化炭素が選択酸化反応により二酸化炭素に転換され(化学反応式G)、改質ガス中の一酸化炭素濃度は10ppm程度に低減され、実質的にガス中の未変成の一酸化炭素が除去される。
【0057】
化学反応式G CO+1/2O2→CO2
その後、このCO除去器6を経て一酸化炭素が除去された後の水素リッチなガスは、ガス配管17を介して図示しない水タンクに入り、そこで加湿された後、燃料電池部7の燃料極7aに燃料ガスとして供給される。他方、酸化剤ガス供給源から水タンクに空気が供給され、そこで加湿された空気が燃料電池部7の酸化剤極7bに供給される。これにより、燃料極7aに供給された水素と、酸化剤極7bに供給された空気中に含まれる酸素(酸化剤ガス)とが反応し、電力が発生する。
【0058】
以上詳述した如く本発明によれば、燃料改質ユニット2の水添脱硫器3において、廃棄物から発生された水素ガスを用いて炭化水素系原燃料Hに含まれる硫黄化合物の水添反応を行うことが可能となり、適切に炭化水素系原燃料Hに含まれる微量の硫黄化合物を燃料ガスから取り除くことが可能となる。
【0059】
これにより、燃料改質ユニット2において、炭化水素系原燃料Hや水素発生部1から供給される水素ガスを改質に用いられる触媒を被毒させることなく好適に改質処理を実現することが可能となる。
【0060】
従って、炭化水素系原燃料の水添反応を行うために、格別に燃料改質部において処理された後の水素ガスの一部を脱硫器の前段に返送する手段を設けることなく、適切に炭化水素系原燃料に含まれる硫黄化合物の除去を行うことができ、好適な水素ガスの改質処理を実現することができる。
【0061】
また、例えば、本実施例における燃料電池発電システムSにおいて、生ゴミなどの廃棄物Wが500kg/日であるとした場合、水素発生部1から供給される主成分を水素ガスとするガスと炭化水素系原燃料Hとの比率を1:3とすることにより、約1kWの発電を実現することができる。
【0062】
このように炭化水素系原燃料Hと廃棄物Wから発生する水素ガスを好適に処理した後の水素ガスを用いて燃料電池部7において発電を行うことから、簡素な構成により、実用的な出力を得ることができる。従って、廃棄物Wから発生する水素ガスを有効利用した環境に優しい燃料電池発電システムを実現することができる。
【0063】
更に、廃棄物Wから発生する水素ガスを利用しつつ、燃料電池部7において必要な水素ガスを炭化水素系原燃料Hにより補完することが可能となるため、炭化水素系原燃料Hの消費量を削減しつつ、安定した発電を実現することができる。また、廃棄物から得られる水素ガスが少量となった場合であっても、継続して安定した出力を得ることが可能となる。
【0064】
一方、上述した改質器4、CO変成器5、CO除去器6、燃料電池7では、所定の反応温度を有する化学反応が行われる。即ち、改質器4では、300℃〜500℃、最高約700℃、CO変成器5では、約200〜250℃、CO除去器6では、100℃〜120℃とされる。改質器4における化学反応は吸熱反応であるので、バーナー8によって常時加熱しながら化学反応を行う。
【0065】
ここで、燃料電池部7の燃料極7aに供給された水素ガスは、約70%〜80%が発電に供され、残りの約20〜30%の未反応水素は、電磁開閉弁14を制御することにより、ガス配管12及び13を介して改質器4のバーナー8にオフガスとして供給される。従って、バーナー8には、格別に燃料ガスを外部から供給することなく、燃料電池部7からの未反応水素ガスによって加熱を行うことが可能となる。
【0066】
そして、当該バーナー8からの排熱は高温であり、第1の排熱供給ライン25を構成するガス配管24及びガス配管18を介して前記水素発生部1に供給される。同様に、燃料電池部7の酸化剤極7bからガス配管18に導出される約60℃〜80℃の排熱を含んだ排気ガスは、第2の排熱供給ライン22を構成するガス配管18を介して前記水素発生部1に供給される。
【0067】
これによって、水素発生部1は、バーナー8からの排熱と、燃料電池部7の酸化剤極7bからの排熱を利用して水素の発生に適した温度に水素発生部1を加熱することが可能となる。従って、水素発生部1における水素発生効率の向上を図ることができる。
【0068】
特に、バーナー8からの排熱は高温であるため、水素発酵を阻害する雑菌を不活性化させるために必要な90℃程度の熱を得ることができる。そのため、効果的に水素発生部1において水素発酵を阻害する菌を不活性化することが可能となる。また、燃料電池部7の酸化剤極7bからの排熱によって、効果的に水素発生部1を水素の発生に適した温度に維持することが可能となる。主に、燃料極7bからの排熱を水素発生部1における水素の発生に適した温度の維持に利用し、主にバーナー8からの排熱を水素発生部1に存在する雑菌の不活性化に利用することができる。
【0069】
また、燃料極7aからガス配管12に導出された二酸化炭素は、燃料電池部7の発熱反応によって約60℃〜80℃に温度上昇しており、この温度上昇した二酸化炭素は、電磁開閉弁14、15を制御することにより、第3の排熱供給ライン20を構成するガス配管12及び16を介して、水素発生部1の発酵槽内に供給される。これにより、水素発生部1には、約60℃〜80℃の高温の二酸化炭素が供給されるので、燃料極7aからの排熱は水素発生部1を加温するための熱源としても利用することができる。
【0070】
従って、好適に水素発生部1を水素の発生に適した温度に昇温することが可能となる。そのため、水素発生部1を水素の発生に適した温度に維持するため、格別に加熱手段を設けていたが、燃料電池部7からの排熱やバーナー8からの排熱を利用することで、当該加熱手段を不要とすることができ、生産コストの低廉化を図ることが可能となる。なお、燃料電池部7の酸化剤極7bからの排熱やバーナー8からの排熱が、水素発生部1の昇温に必要とする熱量が供給できれば、これらからの排熱全てを利用しなくても良い。
【0071】
また、電磁開閉弁14、15を開閉制御することで、燃料電池部7から第3の排熱供給ライン20を介して水素発生部1内に排出される二酸化炭素の量を調整することで、当該水素発生部1内の水素分圧を低圧に維持し、水素生成に関与する酵素の作用を活性化させ、水素の発生量を増加させることが可能となる。
【0072】
一般に、水素生成反応に関与する酵素であるヒドロゲナーゼは、水素ガスの発生と吸収に関する酸化還元酵素であるため、可逆反応を示す。そのため、水素分圧が高くなると逆に水素を消費する傾向があるが、本実施例の如く、水素分圧を低く維持することによって、安定した水素供給が可能となる。なお、必要以上に燃料電池7から排出された二酸化炭素は、電磁開閉弁15を制御することにより、外部に廃棄する。
【0073】
なお、本実施例の如く水素発生部1内における水素分圧を所定の値以下とするため、燃料電池部7の燃料極7aからの排熱利用率が低下することとなるが、上述したように、バーナー8からの排熱や酸化剤極7bからの排熱を利用することにより、水素発生部1を水素発生に適した温度に維持することだけでなく、雑菌による水素発酵の阻害を抑制させることが可能となる。
【0074】
また、本実施例では、燃料電池部7として固体高分子形燃料電池を用いた燃料電池システムSについて説明しているが、これ以外の種類の燃料電池を用いた燃料電池システムであっても、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る燃料電池発電システムの概略説明図である。
【図2】従来の燃料電池発電システムの概略構成図である。
【図3】従来の燃料電池発電システムを用いた燃料電池の電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
S 燃料電池発電システム
W 廃棄物
H 炭化水素系原燃料
1 水素発生部(発酵槽)
2 燃料改質ユニット(燃料改質部)
3 水添脱硫器
4 改質器
5 CO変成器
6 CO除去器
7 燃料電池部
8 バーナー
10、11、12、13、16、18、24 ガス配管
14、15、19、23 開閉電磁弁
20 第3の排熱供給ライン
22 第2の排熱供給ライン
25 第1の排熱供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスと酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池発電システムであって、
炭化水素系原燃料を脱硫する水添脱硫器を備えた燃料改質部と、
廃棄物から水素ガスを発生させる水素発生部と、
前記燃料改質部から供給される水素ガスと、酸化剤ガスとの電気化学的反応により発電する燃料電池部とを備え、
前記水素発生部にて発生した水素ガスを前記水添脱硫器の前段において前記炭化水素系原燃料に合流させることを特徴とする燃料電池発電システム。
【請求項2】
前記燃料改質部は、改質反応温度に適した温度に加熱するバーナーを備え、
前記バーナーからの排熱を前記水素発生部へ供給する第1の排熱供給ライン及び/又は、前記燃料電池部を構成する酸化剤極からの排熱を前記水素発生部へ供給する第2の排熱供給ラインとを備え、
前記第1の排熱供給ライン及び/又は第2の排熱供給ラインから供給される排熱により前記水素発生部を加熱することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記燃料電池部を構成する燃料極からの排熱及び二酸化炭素を前記水素発生部に供給する第3の排熱供給ラインを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−204707(P2008−204707A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37977(P2007−37977)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度、環境省、地球温暖化対策技術開発事業、産業活力再生特別措置法30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】