説明

燃料電池発電装置及び水素貯蔵装置

【課題】燃料電池発電装置において、水素ガスに対するシール性をより向上させることである。
【解決手段】本発明に係る燃料電池発電装置10は、燃料電池12と、水素ガスを貯蔵する水素貯蔵容器14と、燃料電池12と水素貯蔵容器14とに接続され、水素ガスを搬送する水素配管16とを備える燃料電池発電装置10であって、水素ガスのシール構造体36は、継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材38と、少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材40とを有し、水素吸蔵部材40は、シール部材38に対して外方に設けられることである。水素ガスのシール構造体36は、継手の間に配置され、水素ガスを2次シールする2次シール部材42とを有し、2次シール部材42は、水素吸蔵部材40に対してシール部材38と反対側に設けられることが好ましい。更に、水素吸蔵部材40は、水素吸蔵合金であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電装置及び水素貯蔵装置に係り、特に、水素ガスを用いた燃料電池発電装置及び水素貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、高効率と優れた環境特性を有する電池として近年脚光を浴びている。燃料電池は、一般的に、燃料である水素ガスに空気中の酸素ガスを化学反応させて、電気エネルギをつくりだしている。燃料電池の種類は、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、アルカリ型、固体高分子型等がある。この中でも、常温で起動し、かつ起動時間が速い等の利点を有する固体高分子型の燃料電池が注目されている。
【0003】
燃料電池発電装置は、このような燃料電池に燃料である水素ガスを供給する装置を備えた燃料電池システムである。燃料電池に水素ガスを供給する装置は、水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置である水素貯蔵容器と、燃料電池と水素貯蔵容器とに接続されて、水素貯蔵容器から燃料電池へ水素ガスを搬送する水素配管とを有している。そして、水素貯蔵容器や水素配管等には、水素ガスをシールするためのシール部が設けられている。
【0004】
特許文献1には、水素ガスやヘリウムガス等の気体を内部に充填保管するタンクにおいて、互いに隣設された一対の隣設部材と、弾性を有し、前記一対の隣設部材の隣設部位をシールするためのゴム製のOリングと、前記一対の隣設部材の隣設部位において前記一対の隣設部位の少なくとも一方に設けられ、当該一対の隣設部材の少なくとも一方より硬度が高くされた高硬度部とを備えたタンクが示されている。
【0005】
そして、同文献には、一対の隣設部材の隣設部位において、一対の隣設部位の少なくとも一方に設けられた高硬度部が、当該一対の隣設部材の少なくとも一方より硬度が高くされている。このため、ゴム製のOリングを十分に圧縮させることができるので、一対の隣設部材間のシールを確保することができることが示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−48919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述したような水素ガスをシールするためのゴム製のOリングは、水素貯蔵容器から水素ガスが放出されるときに生じる断熱膨張による断熱冷却により水素貯蔵容器の温度が低下してOリングが冷却される等、過度の低温環境下に曝される場合がある。そして、ゴム製のOリングは、このような低温環境下に曝されると、ゴムの弾性力が低下することにより、水素ガスに対するシール性が低下する場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、水素ガスに対するシール性をより向上させた燃料電池発電装置及び水素貯蔵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池発電装置は、燃料電池と、水素ガスを貯蔵する水素貯蔵容器と、燃料電池と水素貯蔵容器とに接続され、水素ガスを搬送する水素配管とを備える燃料電池発電装置であって、水素ガスのシール構造体は、継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材と、少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材とを有し、水素吸蔵部材は、シール部材に対して外方に設けられることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る燃料電池発電装置は、水素ガスのシール構造体が、継手の間に配置され、水素ガスを2次シールする2次シール部材とを有し、2次シール部材は、水素吸蔵部材に対してシール部材と反対側に設けられることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る燃料電池発電装置は、水素吸蔵部材が、水素吸蔵合金であり、水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵して発熱することにより、シール部材が加熱されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る燃料電池発電装置は、水素貯蔵容器は、水素貯蔵タンクであり、継手の一方は、水素貯蔵タンクの口金であり、他方は、水素貯蔵タンクのバルブであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る水素貯蔵装置は、水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置であって、水素ガスのシール構造体は、継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材と、少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材とを有し、水素吸蔵部材は、シール部材に対して外方に設けられることを特徴とする水素貯蔵装置。
【発明の効果】
【0014】
上記燃料電池発電装置及び水素貯蔵装置によれば、水素ガスを捕捉することにより、水素ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、燃料電池発電装置10の模式図である。燃料電池発電装置10は、燃料電池12と、燃料電池12の燃料である水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置である水素貯蔵容器14と、燃料電池12と水素貯蔵容器14とに接続され、水素貯蔵容器14から燃料電池12へ水素ガスを搬送する水素配管16とを備えている。
【0016】
燃料電池12、例えば、固体高分子型の燃料電池12は、複数個の単セルを積み重ねて組み立てたスタックを含んで構成される。ここで、単セルは、電解質膜の両側にそれぞれ触媒層が積層され、各々の触媒層にガス拡散層が積層された膜電極接合体に、更に、セパレータが積層されて組み立てられる。そして、このようなスタックの両側に集電板を設けることにより、集電板から電流を取り出すことができる。
【0017】
水素貯蔵容器14には、例えば、水素貯蔵タンクを用いることができる。図2は、水素貯蔵タンク20の模式図である。水素貯蔵タンク20は、高圧の水素ガスを貯蔵するために、水素貯蔵タンク20の強度や剛性を確保するための外殻22と、水素貯蔵タンク20から水素ガスの透過を抑えるための内殻であるライナ24とを含んで構成される。また、外殻22の外周面には、外部からの衝撃を緩衝するための緩衝材26を設けることもできる。
【0018】
外殻22には、軽量化のために繊維強化樹脂複合材料を用いることができる。強化繊維材料としては、高強度繊維や高弾性繊維等が用いられ、例えば、炭素繊維やアラミド繊維等を使用することができる。そして、合成樹脂材料には、例えば、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等を使用することができる。繊維強化樹脂複合材料の成形は、例えば、強化繊維材料に予め合成樹脂材料を含浸させて半硬化させたプリプレグを、冶具にフィラメントワインディング法等により巻きつけて所定の形状に予備成形した後、予備成形体を樹脂硬化炉等で硬化させて行なわれる。勿論、他の条件次第では、外殻22には、繊維強化樹脂複合材料に限定されることはなく、金属材料等を用いてもよい。
【0019】
ライナ24には、合成樹脂材料を用いることができる。合成樹脂材料としては、水素貯蔵タンク20から水素ガスの透過を抑えるため、ガス透過性の小さい合成樹脂材料が用いられる。このような合成樹脂材料には、例えば、ポリアミド樹脂等を使用することができる。ライナ24は、一般的な射出成形等により、所定の形状に成形される。勿論、他の条件次第では、ライナ24には、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0020】
水素貯蔵タンク20の外殻22とライナ24とは、例えば、エポキシ樹脂系接着剤等の接合材を用いて接合することができる。また、ライナ24にフィラメントワインディング法等を用いて上述したプリプレグを巻きつけて所定の形状に予備成形した後、予備成形体を樹脂硬化炉等で硬化させて一体成形してもよい。
【0021】
更に、外殻22の外周面に緩衝材26を設ける場合には、緩衝材26として、例えば、ガラス繊維の織物等を用いることができる。そして、ガラス繊維の織物を、外殻22の外周面に、例えば、エポキシ樹脂系接着剤等の接合材を用いて接合することができる。
【0022】
水素貯蔵タンク20の口金28は、外殻22に形成された開口部に挿入されて配置される。そして、口金28は、口金28の外周部を水素貯蔵タンク20の外殻22とライナ24とに、例えば、エポキシ樹脂系接着剤等の接合材を用いて接合することにより水素貯蔵タンク20に固定される。口金28の材料には、例えば、ステンレス等の金属材料等を用いることができる。
【0023】
水素貯蔵タンク20のバルブ30は、水素貯蔵タンク20から水素配管16に水素ガスを送り出すために、口金28の内周面に嵌め込んで用いられる。バルブ30には、回路の開閉により水素ガスの流れを制御する方向制御弁(シャットオフ弁)32が設けられる。そして、バルブ30の外側には、水素貯蔵タンク20の高圧水素ガスの圧力を調整して、水素配管16に所定の圧力で水素ガス供給するための圧力調整弁(減圧弁)34が設けられる。
【0024】
次に、水素貯蔵タンク20における水素ガスのシール構造体36について説明する。水素ガスのシール構造体36は、継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材38と、少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材40とを有している。
【0025】
シール部材38は、水素ガスをシールするために、継手である口金28とバルブ30との間に配置される。シール部材38には、例えば、ゴム製のOリング等を使用することができる。シール部材38は、例えば、バルブ30にシール部材38を嵌め込むための溝を形成して、その溝に嵌め込まれるようにしてもよい。この場合には、シール部材38を嵌め込む溝は、バルブ30における外周面の全周に、所定の幅で形成される。勿論、シール部材38は、口金28に溝を形成して、その溝に嵌め込まれるようにしてもよい。この場合には、シール部材38を嵌め込むための溝は、口金28の内周面の全周に、所定の幅で形成される。
【0026】
水素吸蔵部材40は、少なくとも継手である口金28またはバルブ30の一方に配置され、シール部材38でシールした部分から漏れた水素ガスを捕捉して吸蔵するために、シール部材38に対して外方に設けられる。勿論、水素吸蔵部材40は、口金28とバルブ30との両方に配置することもできる。水素吸蔵部材40には、水素吸蔵合金、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバ、フラーレン、活性炭、パラジウム等を使用することができる。勿論、他の条件次第では、水素吸蔵部材40は、これらの材料に限定されることはない。
【0027】
水素吸蔵部材40は、バルブ30における外周面の全周または口金28の内周面の全周に、所定の幅で形成されることが好ましい。そして、水素吸蔵部材40として水素吸蔵合金を用いる場合には、水素吸蔵合金は、シール部材38に近接して設けられることが好ましい。図3は、水素吸蔵部材40に水素吸蔵合金を用いた場合のシール構造体36の模式図である。水素吸蔵合金は、水素ガスを捕捉して吸蔵するときに発熱反応を伴う。そのため、水素吸蔵合金がシール部材38に近接して設けられる場合には、発熱反応により生じた熱で、水素貯蔵タンク20における水素ガス放出時の断熱膨張等により低温に曝されたシール部材38を加熱して、シール部材38の温度低下を抑制し、シール部材38の弾性力の低下を抑えることができるからである。
【0028】
また、水素吸蔵合金は、吸蔵した水素ガスを放出するときには吸熱反応を伴う。そのため、水素吸蔵合金がシール部材38に近接して設けられる場合には、吸熱反応による熱吸収により、水素貯蔵タンク20における水素ガス充填時の断熱圧縮等により高温に曝されたシール部材38から熱を吸収して、シール部材38の温度上昇を抑制し、シール部材38の熱劣化を抑えることができるからである。
【0029】
水素吸蔵合金は、シール部材38をバルブ30に配置した場合には、上述した発熱反応により生じた熱をバルブ30を媒体として伝導させるために、バルブ30に配置されることが好ましい。同様に、水素吸蔵合金は、シール部材38を口金28に配置した場合には、熱を口金28を媒体として伝導させるために、口金28に配置されることが好ましい。勿論、他の条件次第では、シール部材38をバルブ30に配置して、水素吸蔵合金を口金28に配置することもできるし、シール部材38を口金28に配置して、水素吸蔵合金をバルブ30に配置することもできる。
【0030】
水素吸蔵合金には、常温、常圧にて水素ガスの吸蔵が可能である水素吸蔵合金を用いることが好ましい。勿論、他の条件次第では、このような水素吸蔵合金に限定されることはない。水素吸蔵合金には、例えば、TiFe等のTi―Fe系合金、Ti―Co系合金、Ti−V系合金、Ti−Cr系合金、Ti−Cr−V系合金、LaNi5等のLa―Ni系合金、MmNi5等のミッシュメタル系合金、ZrNi2またはZrCr2等のZr系合金、V−Nb系合金、Mg2CuまたはMg2Ni等のMg系合金、V系合金等を使用することができる。
【0031】
上述した水素吸蔵合金は、真空蒸着、スパッタリング法またはイオンプレーティング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、電解析出法、ペースト塗布法等により、少なくともバルブ30または口金28の一方に形成させることができる。また、バルブ30または口金28に水素吸蔵合金を嵌め込むための溝を設けて、例えば、予めリング状に成形した水素吸蔵合金を嵌め込んで配置してもよい。勿論、他の条件次第では、水素吸蔵合金の形成は、上記のような形成方法に限定されることはない。
【0032】
再び、図2に戻り、水素ガスのシール構造体36には、継手の間に配置され、水素ガスを2次シールする2次シール部材42を設けることができる。2次シール部材42は、継手であるバルブ30と口金28との間に配置され、水素吸蔵部材40で捕捉されない水素ガスを2次シールするために、水素吸蔵部材40に対してシール部材38と反対側に設けられる。2次シール部材42には、例えば、ゴム製のOリング等を用いることができる。そして、2次シール部材42は、低温に暴露されることによる弾性力の低下を避けるために、外気と容易に熱交換できる位置に配置されることが好ましい。
【0033】
2次シール部材42は、バルブ30に2次シール部材38を嵌め込む溝を形成して、その溝に嵌め込まれるようにしてもよい。この場合には、2次シール部材42を嵌め込む溝は、バルブ30の外周面の全周に、所定の幅で形成される。また、2次シール部材42は、口金28に溝を形成して、その溝に嵌め込まれるようにしてもよい。この場合には、2次シール部材42を嵌め込む溝は、口金28の内周面の全周に、所定の幅で形成される。
【0034】
水素吸蔵部材40で捕捉されない水素ガスを水素配管16へ放出するために、水素吸蔵部材40と2次シール部材42との間に、水素ガスリリーフ用の凹部44を設けてもよい。水素ガスリリーフ用の凹部44は、バルブ30に配置され、バルブ30における外周面の全周に、所定の幅で形成することができる。そして、水素ガスリリーフ用の凹部44は、バルブ30に設けられた水素ガス流路46と結ばれている。また、水素吸蔵部材40に水素吸蔵合金を用いた場合には、水素吸蔵合金に吸蔵した水素ガスを、水素ガスリリーフ用の凹部44から水素ガス流路46を経て水素配管16へ放出することができる。
【0035】
そして、シール部材38と2次シール部材42との間の圧力が所定の圧力に到達したときに、水素ガスリリーフ用の凹部44から水素ガス流路46に沿って流れた水素ガスを、水素配管16に放出するためのリリーフ弁48が、バルブ30の外側に設けられる。ここで、所定の圧力は、圧力調整弁(減圧弁)34における水素配管16側の2次側圧力よりも高圧に設定される。また、バルブ30の外側には、水素配管16の水素ガスが流入しないようにするために逆止弁50が設けられる。
【0036】
次に、上記構成の作用について、水素吸蔵部材40として水素吸蔵合金を用いた場合について説明する。図4は、燃料電池発電装置10を備える車両の走行における上記構成の作用を示す図であり、図4(A)は、そのフローチャートであり、図4(B)は、水素ガス燃料放出時間とシール部材38の温度との関係を示すグラフである。
【0037】
まず、図4(A)に示すように、燃料電池発電装置10を備える車両が走行を開始すると、水素貯蔵タンク20から燃料である水素ガスが放出され、放出された水素は、水素配管16により搬送されて燃料電池12へ供給される(S10)。水素貯蔵タンク20から水素ガスが放出されると、水素ガスの断熱膨張による断熱冷却により、水素貯蔵タンク20の温度が低下する(S12)。そして、水素貯蔵タンク20の温度が低下するに伴って、シール部材38は冷却され、シール部材38の温度が低下する。
【0038】
シール部材38の温度は、図4(B)に示すように、水素ガス燃料放出時間の経過とともに低下する。ここで、冬季環境温度、例えば、マイナス30℃で最高速走行や登坂走行などの燃料消費の激しい走行モードで走行すると、水素貯蔵タンクの温度は、さらに低下するため、シール部材38の温度もより低下する。
【0039】
シール部材38の温度が、図4(B)に示すように、シール部材38が水素ガスをシールできる弾性力を有する限界温度であるシール限界温度に到達すると、シール部材38の弾性力低下による水素ガスに対するシール性が低下する。そして、シール部材38でシールした部分から水素ガスの漏れが発生する(S14)。そして、漏れた水素ガスは、2次シール部材42によりシールされる。
【0040】
シール部材38の温度がシール限界温度に到達した時点では、シール部材38と2次シール部材42との間の水素圧が、水素吸蔵合金の水素化反応を十分に生じさせる水素圧に到達しないため、水素吸蔵合金は、わずかに水素ガスを捕捉する。そして、図4(B)に示すように、シール部材38の温度は、さらに低下する。
【0041】
シール部材38と2次シール部材42との間の水素圧が、水素吸蔵合金の水素化反応を十分に生じさせる水素圧に到達すると、水素吸蔵合金は、水素ガスを十分に捕捉して吸蔵を開始する(S16)。水素吸蔵合金は、上述したように、水素ガスを吸蔵するときに発熱反応により熱を発生させる。そして、水素吸蔵合金とシール部材38とは近接して配置されているため、その熱により、例えば、バルブ30を媒体として、シール部材38が加熱される。その結果、図4(B)に示すように、シール部材38の温度が上昇する(S18)。
【0042】
水素吸蔵合金の発熱反応により生じた熱でシール部材38が更に加熱されると、シール部材38の温度が更に上昇する。そして、シール部材38の温度が、シール限界温度に到達すると、シール部材38の弾性力が回復することにより、シール部材38の水素ガスに対するシール性も回復する。その結果、図4(B)に示すように、シール部材38でシールした部分からの水素ガスの漏れが停止する(S20)。
【0043】
水素ガスリリーフ用の凹部44をバルブ30に設けた場合には、シール部材38でシールした部分から漏れた水素ガスの一部が、水素ガスリリーフ用の凹部44から水素ガス流路46を経て、リリーフ弁48で止められる。そして、シール部材38と2次シール部材42との間が、所定の圧力となった場合に、リリーフ弁48が作動して、水素ガスを水素配管16へ放出する。
【0044】
また、水素貯蔵タンク20に水素ガスを充填するときには、水素ガスの断熱圧縮により水素貯蔵タンク20の温度が上昇する。水素貯蔵タンク20の温度上昇により、水素吸蔵合金の温度も上昇し、水素吸蔵合金に貯蔵された水素ガスが放出される。そして、水素吸蔵合金から放出された水素ガスは、水素ガスリリーフ用の凹部44から水素ガス流路46を経た後に、リリーフ弁48を作動させることにより、水素配管16へ放出される。
【0045】
なお、上記構成は、水素貯蔵タンク20における継手であるバルブ30や口金28だけに限定されることなく、燃料電池12と水素配管16との接続部、水素貯蔵容器14と水素配管16との接続部、水素配管16と水素配管16との接続部等における、例えば、フランジ等を使用したシール構造体に用いることができる。また、上記構成は、燃料電池発電装置だけでなく、他の装置に対して水素ガスを供給する水素供給装置において使用することができる。また、上記構成における水素貯蔵タンク20である水素貯蔵装置の適用対象は、水素ガスを貯蔵する構成であれば燃料電池に限らず如何なるものにでも適用可能である。
【0046】
以上、上記構成によれば、水素吸蔵部材40は、シール部材38に対して外方に設けられることにより、シール部材38でシールした部分から漏れた水素ガスを水素吸蔵部材40で捕捉することにより、水素ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0047】
上記構成によれば、2次シール部材42が、水素吸蔵部材40に対してシール部材38と反対側に設けられることにより、水素吸蔵部材40で捕捉されない水素ガスについて2次シール部材42でシールすることができ、水素ガスに対するシール性を、更に、向上させることができる。
【0048】
上記構成によれば、水素吸蔵部材40として水素吸蔵合金を用いることで、シール部材38の温度が低下することによりシール部材38の弾性力が低下した場合においても、水素ガスを吸蔵するときの発熱反応による熱でシール部材38を加熱することにより、シール部材38の弾性力を回復させることで、水素ガスに対するシール性をより向上させることができる。
【0049】
上記構成によれば、水素貯蔵タンク20へ水素ガスを充填するときの断熱圧縮により水素貯蔵タンク20の温度が上昇し、シール部材38が加熱される場合において、水素吸蔵合金が吸蔵した水素ガスが放出されるときの吸熱反応によりシール部材38が冷却されるため、シール部材38の熱劣化を抑制することができる。
【0050】
上記構成によれば、水素ガスリリーフ用の凹部44が設けられることにより、シール部材38でシールした部分から漏れた水素ガスを水素配管16へ放出することができるため、水素ガスを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態である燃料電池発電装置10の模式図である。
【図2】本発明の実施形態である水素貯蔵タンク20の模式図である。
【図3】本発明の実施形態である水素吸蔵部材40に水素吸蔵合金を用いた場合のシール構造体36の模式図である。
【図4】本発明の実施形態である燃料電池発電装置10を備える車両の走行における上記構成の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10 燃料電池発電装置、12 燃料電池 14 水素貯蔵容器、16 水素配管、20 水素貯蔵タンク、22 外殻、24 ライナ、26 緩衝材、28 口金、30 バルブ、32 方向制御弁(シャットオフ弁)、34 圧力調整弁(減圧弁)、36 シール構造体、38 シール部材、40 水素吸蔵部材、42 2次シール部材、44 水素ガスリリーフ用の凹部、46 水素ガス流路、48 リリーフ弁、50 逆止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
水素ガスを貯蔵する水素貯蔵容器と、
燃料電池と水素貯蔵容器とに接続され、水素ガスを搬送する水素配管と、
を備える燃料電池発電装置であって、
水素ガスのシール構造体は、
継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材と、
少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材と、
を有し、
水素吸蔵部材は、シール部材に対して外方に設けられることを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池発電装置であって、
水素ガスのシール構造体は、
継手の間に配置され、水素ガスを2次シールする2次シール部材と、
を有し、
2次シール部材は、水素吸蔵部材に対してシール部材と反対側に設けられることを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池発電装置であって、
水素吸蔵部材は、水素吸蔵合金であり、
水素吸蔵合金が水素ガスを吸蔵して発熱することにより、シール部材が加熱されることを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の燃料電池発電装置であって、
水素貯蔵容器は、水素貯蔵タンクであり、
継手の一方は、水素貯蔵タンクの口金であり、他方は、水素貯蔵タンクのバルブであることを特徴とする燃料電池発電装置。
【請求項5】
水素ガスを貯蔵する水素貯蔵装置であって、
水素ガスのシール構造体は、
継手の間に配置され、水素ガスをシールするシール部材と、
少なくとも継手の一方に配置され、水素ガスを吸蔵する水素吸蔵部材と、
を有し、
水素吸蔵部材は、シール部材に対して外方に設けられることを特徴とする水素貯蔵装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−200745(P2007−200745A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18683(P2006−18683)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】