説明

燃費を向上させるためのエンジン潤滑剤

潤滑剤組成物であって、潤滑粘度の油;アミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーであって、エステル結合、アミド結合、またはイミド結合を介してこのポリマーに結合した約2重量パーセント〜約8重量パーセントの三級アミノ基含有アミン部分を含む、ポリマー;および窒素含有分散剤を含む、潤滑剤組成物により、内燃エンジンの摩擦が減少し、燃費が向上する。このアミン部分は、アクリル基、メタクリル基、またはスクシン基を介して前記ポリマーに縮合していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、エンジン潤滑剤、ならびに内燃エンジンのクランク室の潤滑剤および運搬用車両でのその他の潤滑用途における燃費の向上を目的とした特定の官能基化ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンおよび内燃エンジンによって推進される車両の燃費を向上させる努力が継続的に行われている。燃費を向上させることのできる1つの方法は、エンジン自体の中の内部摩擦を減少させる方法である。潤滑剤によりもたらされる数多くの利点および性質のほかにも、摩擦を減少させる潤滑剤を適切に選択し、それによって種々のエンジン部品の動きやすさを促進することにより、このことを実現することができる。摩擦を減少させることができる1つの方法は比較的低粘度の基油を使用する方法であり、実際、近年になって低粘度油を使用する傾向が出てきた。しかし、潤滑剤によりもたらされる他の利点(摩耗からの保護など)が少なくなるという危険を冒さずに、潤滑剤の粘度を単純に減少させることはできない。したがって、低粘度油の場合は、潤滑剤の配合物および特に基油中に含める添加剤の選択が非常に重要である。基油の粘度にかかわりなく、燃費の向上につながるエンジン内の内部摩擦を減少させる添加剤(1種または複数種)を選択することは、大変望ましいものとなるであろう。
【0003】
種々の利点を提供する目的から、エンジン油用の添加剤に関連した特許が数多く登場した。一例として、特許文献1(Seebauer et al.、2000年9月26日)は、潤滑油組成物用の粘度改良剤(viscosity improvers)を開示している。これは、(a)エステル基中に約9〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル、および(b)エステル基中に7〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル、および場合により(c)少なくとも1種のモノマー(とりわけ、窒素含有ビニルモノマーであってよい)から誘導される単位を含むコポリマーを開示している。272.8部のC12〜15のメタクリレート、120部の2−エチルヘキシルメタクリレート、および7.2部のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドから製造されるポリマーの例が示されている。これらの物質は、粘度改良剤または粘度指数改良剤として記載されており、それらは潤滑剤の分散性(dispersant properties)を向上させることもできる。
【0004】
米国特許出願第2004/0254080号(Sivik et al.、2004年12月16日)は、α,β−不飽和エステルモノマーおよび少なくとも1種の不飽和ジカルボン酸無水物またはその誘導体、および場合により一級官能基、二級官能基、またはそれらの組み合わせを有する少なくとも1種のモノマーでないアミンを有する、ポリマー組成物を開示している。
【特許文献1】米国特許第6,124,249号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、選択したポリマーを1種以上の追加の添加剤と一緒に潤滑剤中に含有させることにより、エンジンまたはその他の機械装置の摩擦損失を減少させる潤滑剤を提供する際の問題を解決する。本発明の潤滑剤は、ガソリン、ディーゼル油、アルコール、これらの混合物、および水素を含めた種々の燃料で作動するエンジンを潤滑するのに使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
したがって、本発明は、内燃エンジンを潤滑するのに適した組成物であって、(a)潤滑粘度(lubricating viscosity)の油;(b)アミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーであって、エステル結合、アミド結合、もしくはイミド結合またはこのような結合の組み合わせを介して該ポリマーに結合した、2重量パーセント〜8重量パーセントの三級アミノ基含有アミン部分を含む、ポリマー;および(c)分散剤を含む、組成物を提供する。
【0007】
本発明は、内燃エンジンの潤滑方法であって、前記エンジンに上述の組成物を供給することを含む方法もさらに提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
種々の好ましい特徴および実施形態を、以下の非限定的な例によって説明する。
【0009】
本発明の組成物の第1成分は潤滑粘度の油である。このような油としては、天然または合成油、水素化分解、水素添加、および水素化仕上げによって得られる油、未精製、精製および再精製の油およびこれらの混合物がある。
【0010】
未精製油とは一般的に、さらなる精製処理をせずに(またはほとんどせずに)天然源または合成源(synthetic source)から直接得られる油である。精製油は、1つ以上の性質を向上させるために1つ以上の精製手順でさらに処理されていること以外は、未精製油と似ている。精製技法は当該技術分野で既知であり、その技法としては、溶媒抽出、2次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどがある。再精製油は再生油または再処理油(reprocessed oil)としても知られ、精製油を得るのに使用するプロセスと類似したプロセスによって得られ、多くの場合、使用した添加剤および油分解生成物の除去を対象とした技法でさらに処理される。
【0011】
本発明の潤滑剤を製造するのに役立つ天然油としては、動物油、植物油(例えば、ひまし油、ラード油)、鉱物潤滑油(パラフィン系、ナフテン系またはパラフィン−ナフテン混合系の液体石油および溶媒処理または酸処理された鉱物潤滑油および石炭または頁岩から得られる油など)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
合成潤滑油は有用であり、それには、重合および共重合された(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油;ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、類似体および同族体またはこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸ジエチルエステル)、および高分子テトラヒドロフランがある。合成油は、フィッシャー−トロプシュ(すなわち、ガス液状化)反応によって製造でき、一般的には水素異性化(hydroisomerised)フィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。
【0014】
潤滑粘度の油は、アメリカ石油協会(API)のBase Oil Interchangeability Guidelinesの規定の通りに定義することもできる。5種類の基油の群は次の通りである:第I群(硫黄分>0.03重量%、および/または<90重量%の飽和分(saturates)、粘度指数80〜120);第II群(硫黄分<0.03重量%、および>90重量%の飽和分、粘度指数80〜120);第III群(硫黄分<0.03重量%、および>90重量%の飽和分、粘度指数>120);第IV群(すべてのポリアルファオレフィン(PAO));および第V群(第I群、II、III、およびIVのどれにも含まれないその他のすべて)。潤滑粘度の油は、APIの第I群、第II群、第III群、第IV群、第V群の油およびこれらの混合物を含む。多くの場合、潤滑粘度の油は、APIの第I群、第II群、第III群、第IV群の油およびこれらの混合物である。あるいは潤滑粘度の油は、多くの場合、APIの第I群、第II群、第III群の油またはこれらの混合物、あるいは特定の実施形態においては第III群の油である。
【0015】
本発明における潤滑油は、通常、組成物の大半の量を構成する。したがって、通常は、組成物の少なくとも50重量%であり、83〜98%、または88〜90%などである。しかし、別の実施形態として、本発明では添加剤濃縮物を提供することができ、その濃縮物では、油は1〜50重量%または1〜20重量%、あるいは2〜10%にすることができ、以下にさらに詳細に説明されている他の成分は比例して増大する。
【0016】
潤滑粘度の油は一般的に、性質の中でもとりわけ粘度および粘度指数が適切なものとなるように選択される。現代のほとんどのエンジン潤滑剤は、マルチグレード潤滑剤であり、低温と高温の両方で適切な粘度となるようにするために粘度指数改良剤を含む。粘度調整剤は、基油の一部と見なされることがあるが、当業者が選択することのできる別個の成分と見なすほうがより適切である。
【0017】
粘度調整剤は一般的に、特定の実施形態において、25,000から500,000の間、例えば、50,000から200,000の間の数平均分子量を一般的に有する炭化水素系ポリマーとして特徴付けられる高分子物質である。
【0018】
炭化水素ポリマーは粘度指数改良剤として使用できる。例としては、ホモポリマー、およびC2〜C30、例えば、C2〜C8のオレフィン(α−オレフィンおよび内部オレフィンの両方を含む)の2種以上のモノマーのコポリマーがあり、それらは直鎖または分岐であってよく、脂肪族、芳香族、アルキル芳香族、または脂環式であってよい。例としては、周知のプロセスでエチレンとプロピレンとを共重合させて製造される、エチレン−プロピレンコポリマー(一般的にOCPと呼ばれる)がある。
【0019】
ポリマーは1種以上のビニル芳香族モノマーを含んでもよく、水素化スチレン−共役ジエンコポリマーはこのような種類の粘度調整剤の例である。このようなポリマーとしては、水素化または部分的に水素化されたホモポリマーであるポリマーがあり、またランダムインターポリマー、テーパーインターポリマー(tapered interpolymer)、星型インターポリマー(star interpolymer)、およびブロックインターポリマーもある。「スチレン」という用語は、種々の置換スチレンを含む。共役ジエンは、4〜6個の炭素原子を含んでよく、共役ジエンとしては、例えば、ピペリレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、および1,3−ブタジエンを挙げることができる。このような共役ジエンの混合物は有用である。このようなコポリマーのスチレン含量は、20重量%〜70重量%または40%〜60%であってよく、また脂肪族共役ジエン含量は30%〜80%または40%〜60%であってよい。これらのコポリマーは、当該技術分野で周知の方法で製造でき、一般的にはそれらのオレフィン性二重結合のかなりの部分を除去するために水素化される。
【0020】
スチレンとマレイン酸無水物をラジカル開始剤の存在下で共重合させ、その後でそのコポリマーをC4〜18のアルコール混合物でエステル化して得られたエステルも、モーター油の粘度調整添加剤として有用である。同様に、ポリメタクリレート(PMA)も粘度調整剤として使用される。これらの物質は、一般的には、1〜18個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖基のいずれかであってよい種々のアルキル基を有するメタクリレートモノマーの混合物から製造される。
【0021】
少量の窒素含有モノマーをアルキルメタクリレートと共重合させると、分散特性(dispersancy properties)が生成物に付与される。したがって、このような生成物は、粘度調整、流動点の降下性(depressancy)および分散性(dispersancy)という多面的機能を有し、分散剤兼粘度調整剤(dispersant−viscosity modifiers)と呼ばれることがある。ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンおよびN,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレートが窒素含有モノマーの例である。1種以上のアルキルアクリレートの重合または共重合によって得られるポリアクリレートも粘度調整剤として有用である。分散剤兼粘度調整剤は、活性モノマー(マレイン酸無水物など)でグラフトしてからアルコールまたはアミンによって誘導体化されるかまたは窒素化合物でグラフトされた、エチレンとプロピレンとのインターポリマーであってもよい。
【0022】
基油および粘度調整剤は、当業者に明らかであるように、所望の粘度グレードが得られるようなもに選択され得る。好適な粘度グレードとしては、0W−10、0W−15、0W−20、0W−25、0W−30、5W−10、5W−15、5W−20、5W−25、および5W−30などの最近の特定の低粘度マルチグレードがある。これらは合わせてxW−yと表すことができ、ここでxは0〜5であり、yは10〜30(例えば、10、15、20、25、または30)である。あるいはまた、高粘度グレードの場合、xは10、15、または20であってよいが、但しyがxより大きいことを条件とする。慣例上、xおよびyは5の整数倍から選択されるが、これは要求条件ではない。yの共通値は20、25、または30であり、特に20または30である。
【0023】
本発明の組成物は、アミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーであって、エステル結合、アミド結合、またはイミド結合またはこのような結合の組み合わせを介して前記ポリマーに結合した、2重量パーセント〜8重量パーセントの三級アミノ基含有アミン部分を含む、ポリマーもさらに含む。(「このような結合の組み合わせ」とは、組成物全体の中で、個々の分子の混合物が存在してよく、このような分子の一部はエステル結合を含んでよく、一部はアミド結合を含んでよく、一部はイミド結合を含んでよく、あるいはそれらの任意の組み合わせまたは副次的組み合わせ(subcombinations)を含んでよいことを意味する)。このような種類のポリマーは一般的に知られており、このようなものの例およびその製造方法は、米国特許第6,124,249号の実施例11で(示されているものを除いて)提供されている。この文献では、272.8部のC12〜15のメタクリレート、120部の2−エチルヘキシルメタクリレート、および7.2部のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの共重合を開示している。ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドは、メタクリル酸と、三級アミノ基を有するアミン部分(すなわち、ジメチルアミノプロピルアミン)との縮合物よりなることが理解されるであろう。多くの場合、対応するアミン(またはアルコール)を適切なモノマーにあらかじめ縮合させて、対応するアミド(モノマーが酸に相当する場合)またはイミド(モノマーが二塩基酸または無水物(マレイン酸無水物など)に相当する場合)またはエステル(アミンを有する部分がヒドロキシ官能基を含む場合)を形成させることにより、アミン官能基(amine functionality)をポリマーに導入するのが実に便利である。
【0024】
しかし、本発明のポリマーは、本発明のポリマー中のアミン官能基の量が一般的に米国特許第6,124,249号での量よりも多いという点で、前記特許のポリマーとは区別されるという点が注目される。特に、米国特許第6,124,249号の実施例11で製造されたポリマーでは約1.8重量パーセントのジメチルアミノプロピルメタクリルアミドモノマーを使用している。このモノマーは、約65重量%のアミン成分および残りの35重量%の酸(縮合での水の損失後)からなり、したがって、参照特許の実施例中のポリマーは全体として約1.2パーセントのアミン部分しか含んでいない。それに対して、本発明で使用されるポリマー内のアミン部分の量は、2〜8重量パーセント、あるいは2.5〜6重量パーセントまたは2.5〜5重量パーセントである。重量計算において「アミン部分」の量は、取り込まれたジアミンまたはポリアミンまたはヒドロキシルアミンから1個の水素を差し引いた場合の重量である。アミン官能基の量は、ポリマー内に含まれるアミン部分が提供する三級窒素原子(tertiary nitrogen atoms)の重量パーセントで表すこともできる。例えば、ジメチルアミノプロピルアミンでは、三級窒素原子はアミン部分の約13.7%を含む。したがって、それから導かれるポリマー中の三級窒素の好適な量は、0.27重量%〜1.1重量%または0.34%〜0.82%または〜0.68%、あるいは0.3〜0.9%のNであろう。
【0025】
アミン部分は、少なくとも1種の三級アミノ基および少なくとも1つのアミノ基またはヒドロキシ基(アミン部分が、エステル結合、アミド結合、またはイミド結合を介してポリマーへ結合するのに使用できるもの)を有するアミン部分である。好適なアミンとしては、ジメチルアミノプロピルアミン(すなわち、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン)、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、およびN−(アミノプロピル)モルホリンなどのポリアミン、ならびにN,N−ジメチルエタノールアミンなどのヒドロキシアミンがある。これらのアミンは一般的に以下の化学式で表すことができる:
(HRX)−R−(NR
ここで、Rはa+b価のヒドロカルビル基であり、一般的には1〜8個の炭素原子を含み(例えば、エチレン基、プロピレン基、またはブチレン基);aは少なくとも1であり、一般的には1であり;bは少なくとも1(1または2など)であり、一般的には1であり;XはOまたはNである。XがOである場合、nは0であり、XがNである場合、nは1である。Rは水素あるいはヒドロカルビル基(メチルまたはエチルなどの短いアルキル基)である。RおよびRはそれぞれ独立して、1〜8個の炭素原子の低級アルキル基(メチル基、エチル基、またはプロピル基など)などのヒドロカルビル基である。特定の実施形態において、RおよびRはそれぞれメチル基である。特定の実施形態において、RはHであり、Rはエチレンまたはプロピレンであり、RおよびRはそれぞれメチルである。
【0026】
ポリマーの残りの部分、すなわち、アミン部分を固定させるポリマーは、重量平均分子量が1,000〜1,000,000、あるいは10,000〜500,000または50,000〜250,000であってよいアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーである。(「(メタ)アクリル」という用語は、本明細書ではアクリルまたはメタクリルを指すのに使用されている。)好適な(メタ)アクリルポリマーの主鎖は当該技術分野で既知であり、例えば、上述の米国特許第6,124,249号に詳述されている。この文献は、(a)エステル基中に約9〜約25個の炭素原子を含むメタクリル酸エステル、および(b)エステル基中に7〜約12個の炭素原子を含むメタクリル酸エステルから得られる単位を含むコポリマーであって、前記エステル基が2−(Cl〜4アルキル)−置換基を有するが、但し、60重量%以下のエステルが11個以下の炭素原子をエステル基中に含む(すなわち、60%までのエステルが11個またはそれ以下の炭素原子を含む)ことを条件とするコポリマーを開示している。エステル基−C(O)OR中の炭素原子の数は、上述の特許では、カルボニル基の炭素原子とOR基の炭素原子の合計として定義されている。したがって、例えば、メタクリル酸メチルは2個の炭素原子をエステル基中に含む。好適には、エステル(a)はC12〜25のアルキルメタクリレートであってよく、エステル(b)はメタクリル酸2−エチルヘキシルであってよい。エステル(a)とエステル(b)のモル比は、95:5〜35:65、または90:10〜60:50、または80:20〜50:50である。エステル(a)および(b)に関するこのようなポリマーの組成物の詳細については、米国特許第6,124,249号の第4段落および第5段落に記載されている。本発明では、好適な(メタ)アクリル酸エステルも、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、C12〜14のアルコール、C12〜15のアルコール、C16〜18のアルコール、およびC16〜20のアルコールおよびこれらの混合物を含めた種々の炭素鎖長のアルコールから製造することができる。直鎖および分岐のいずれのアルコールも企図されている。特定の実施形態において、アルコールは、2−エチルヘキサノールおよびラウリルアルコール(すなわち、ドデシルアルコール)の混合物にすることができる。エステル基は、ポリマー自体が油溶性となるように、全体として十分な長さまたは平均炭素数を有するべきである。したがって、例えば、平均して11.8個の炭素原子をエステル基中に有する(すなわち、アルコールでは平均して10.8個の炭素原子を有する)ポリマー、ならびに、より一般的には、平均して少なくとも9個または少なくとも10個または少なくとも11個の炭素原子をエステル基中に有するポリマー、および平均して31個または25個または21個または19個までの炭素原子をエステル基中に有するポリマーが好適であり得る。
【0027】
本発明のアミン部分が、酸−アミン縮合物の共重合によってポリマーに取り込まれる場合、上述の特許に記載されているように、このようなコモノマーはコモノマー(c)と表し、エステル(a)および(b)と共重合させることができる。
【0028】
上述の通り、アミンは、すでにアミン部分を含むモノマーの共重合によって、またはあらかじめ形成されたポリマー主鎖にアミンを反応させることによって(例えば、アミノアルコールのアルコール基の縮合によるエステル結合の形成によって、またはジアミンまたはポリアミンの一級アミノ基または二級アミノ基の縮合によるアミド結合またはイミド結合の形成によって)ポリマーに取り込むことができる。アミンとの結合を形成するポリマーの基は、一般的にはカルボン酸またはその反応性の同等物(無水物など)の形態であるカルボニル基を含むことになる。例としては、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステル、ハロゲン化物、または無水物、およびマレイン酸、エステル、および無水物がある。前述の物質のいずれでもポリマー鎖に共重合させるか、あるいは鎖にグラフトすることができるが、それは、特にポリマー鎖が、このようなグラフト化の特に起こりやすいオレフィンモノマーまたはポリオレフィンセグメントを含む場合に、例えば、ラジカル反応によって行うことができる。このようなポリマー形成方法は、当業者が実施することができる。
【0029】
アミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーは、上述のようにそれ自体が分散剤兼粘度調整剤であるか、またはそれ自体が分散剤兼粘度調整剤であってよいことが明らかであろう。したがって、ここで説明しているポリマーは、配合物における単なる粘度調整剤を含むことができるか、あるいはまた潤滑剤の特定の最終用途の要求条件を満たすために、分散剤兼粘度調整剤であってもよい追加の粘度調整剤が存在してもよい。
【0030】
アミノ官能基化ポリマーの量は、一般的には、組成物の0.2〜4重量パーセント、あるいは0.5〜2パーセントまたは0.7〜1パーセント、あるいはそれらの上限および下限の組み合わせにすることができる。
【0031】
本発明の組成物には、特定の実施形態において窒素含有分散剤である、分散剤も含まれることになる。上述のアミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーによって付与される任意の分散性を増し加えるものとして、これは含まれるであろう。ただし、上述の分散剤兼粘度調整剤はいずれも窒素含有分散剤と解釈することができる。しかし、特定の実施形態において、窒素含有分散剤は高分子の分散剤兼粘度調整剤以外のものである。
【0032】
窒素含有分散剤を含め分散剤は、潤滑剤の分野ではよく知られており、それには主に無灰系(ashless−type)分散剤として知られるものや高分子分散剤がある。無灰系分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を特徴としている。一般的な無灰分散剤としては、種々の化学構造を有するN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドがあり、その化学構造として一般的には次のものがある。
【0033】
【化1】

ここで、各Rは独立してアルキル基(多くの場合、分子量が500〜5000のポリイソブテネル(polyisobutenel)基)であり、Rはアルキレン基(一般的にはエチレン(C)基)である。このような分子は一般的に、アルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応によって得られ、上に示した単純なイミド構造のほかに2つの部分の間で多種多様な結合が可能であり、それには種々のアミドおよび第四アンモニウム塩が含まれる。スクシンイミド分散剤については、米国特許第4,234,435号および第3,172,892号に詳述されている。
【0034】
別の種類の無灰分散剤は、高分子量のエステル(これは通常、窒素含有分散剤とは見なされない)である。これらの物質は、ヒドロカルビルアシル化剤と脂肪族多価アルコール(グリセロール、ペンタエリトリトール、またはソルビトールなど)との反応によって製造されたと見られる場合があること以外は、上記のスクシンイミドと似ている。このような物質は、米国特許第3,381,022号に詳述されている。
【0035】
別の種類の窒素含有無灰分散剤はマンニッヒ塩基である。これらは、大きな分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、およびアルデヒド(ホルムアルデヒドなど)の縮合によって形成される物質である。このような物質は、種々の異性体などを含め、以下の一般構造式を有することができ、米国特許第3,634,515号に詳述されている:
【0036】
【化2】


【0037】
分散剤は、種々の試薬のいずれかと反応させて後処理することもできる。これらのの中には、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物がある。このような処理について詳述している参考文献は、米国特許第4,654,403号に列挙されている。
【0038】
組成物における窒素含有分散剤の量は一般的に、0.4〜5重量パーセント、または0.4〜2.6パーセント、または1〜2.5パーセント、または1.5〜2.4パーセント、または2〜2.3パーセントにすることができる。このような量は、本用途向けに設計された他の潤滑剤組成物に従来存在する量よりも少ないであろう。
【0039】
以下の段落に記載されているものを含めたその他の添加剤も存在してよい。金属含有清浄剤は、一般的には過塩基性(overbased)物質(別の呼び方では、過塩基性塩または超過剰塩基性(superbased)塩)である。それらは一般的に、金属およびその金属と反応する特定の酸性有機化合物の化学量論に従って中和された場合に存在するであろう金属含有量を超える金属含有量を特徴とする、単一相の均質ニュートン系である。過塩基性物質は、酸性物質(一般的には無機酸または低級カルボン酸、好ましくは二酸化炭素)と、酸性有機化合物、前記酸性有機物質用の少なくとも1種の不活性有機溶媒(例えば、鉱油、ナフサ、トルエン、キシレン)を含む反応媒質、化学量論的に過剰の金属塩基、および促進剤(フェノールまたはアルコールなど)を含む混合物とを反応させて製造される。
【0040】
酸性有機物質は、油へのある程度の溶解性を持てるように、通常は十分な数の炭素原子を有することになる。過剰金属の量は通常、金属比によって表される。「金属比」という用語は、金属の総当量数と酸性有機化合物の当量数の比である。中性金属塩の金属比は1である。正塩中に存在する金属の4.5倍の金属を有する塩は、金属が3.5当量過剰になることになる(すなわち比が4.5)。
【0041】
このような過塩基性物質は当業者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノール、ホスホン酸、およびそれらの任意の2種以上の混合物の塩基性塩を製造する技法を記載している特許としては、米国特許第2,501,731号;同第2,616,905号;同第2,616,911号;同第2,616,925号;同第2,777,874号;同第3,256,186号;同第3,384,585号;同第3,365,396号;同第3,320,162号;同第3,318,809号;同第3,488,284号;および同第3,629,109号がある。
【0042】
本発明の特定の実施形態においては、過塩基性サリチル酸カルシウム清浄剤が存在してよい。これらの物質は、過塩基化(overbasing process)プロセスをヒドロカルビル置換サリチル酸に施すことにより製造することができる。他の実施形態において、アルキルサリチレートはアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であってよいが、これはコルベ−シュミット反応によってアルキルフェノールから製造できるものである。次にアルキルフェノールはというと、例えば、8〜30個の炭素原子(平均数)を有するα−オレフィンとフェノールとを反応させることにより製造できる。サリチレート清浄剤の一般的範囲に含まれ得る関連物質としては、過塩基性サリキサレート(overbased salixarate)清浄剤がある。このようなものとして、サリチル酸(非置換であってもよい)とヒドロカルビル置換フェノールとから製造される過塩基性物質があり、それらのものは−CH−またはその他のアルキレン架橋によって結合される。サリキサレート(salixarate)誘導体は、大環状構造ではなく、主に線状の構造を有すると信じられているが、いずれの構造も「サリキサレート」という用語に包含されることを意図している。サリキサレート誘導体およびその製造方法は、米国特許第6,200,936号およびPCT公開第WO01/56968号に詳述されている。
【0043】
過塩基性清浄剤が存在する場合、その量は、潤滑剤組成物の3重量パーセントまで、または1〜2.5重量パーセント、または2〜2.3重量パーセントにすることができる。このような量は、本用途向けに設計された他の潤滑剤組成物中に従来存在する量よりも少なくてよく、例えば、従来の潤滑剤の場合、一般的には約1.9または2.7重量パーセントである。
【0044】
潤滑剤は、酸化防止剤も含んでよい。酸化防止剤は、以下の化学式で表すことができるフェノール酸化防止剤を包含する:
【0045】
【化3】

ここで、Rは1〜24個、または4〜18個の炭素原子を含むアルキル基であり、aは整数の1〜5または1〜3、または2である。フェノールは、OH基に対してオルトの位置に2個または3個のt−ブチル基を含むブチル置換フェノールであってよい。またパラ位が、ヒドロカルビル基、または2個の芳香環を架橋する基によって占有されていてもよい。特定の実施形態において、パラ位は、エステル含有基によって占有されており、例えば、以下の化学式で表される酸化防止剤などがある:
【0046】
【化4】

ここで、Rは、例えば、1〜18個または2〜12個または2〜8個または2〜6個の炭素原子を含むアルキル基などのヒドロカルビル基であり、t−アルキルはt−ブチルであってよい。このような酸化防止剤は、米国特許第6,559,105号に詳述されている。
【0047】
酸化防止剤としては、芳香族アミンもあり、以下の化学式で表されるものなどがある:
【0048】
【化5】

ここで、Rはフェニル基またはRで置換されたフェニル基であってよく、RおよびRは独立して水素であるかまたは1〜24個または4〜20個または6〜12個の炭素原子を含むアルキル基であってよい。一実施形態において、芳香族アミン酸化防止剤は、ノニル化(nonylated)ジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンまたはジノニル化(di−nonylated)アミンとモノノニル化(mono−nonylated)アミンの混合物を含むことができる。
【0049】
酸化防止剤には、一硫化物、二硫化物またはこれらの混合物などの硫化オレフィンも含まれる。これらの物質は一般的にスルフィド結合を持ち、1〜10個(例えば、1〜4個、または1個または2個)の硫黄原子を有する。硫化して本発明の硫化有機組成物を形成させることのできる物質としては、油、脂肪酸と脂肪酸エステル、オレフィンとそれから作られるポリオレフィン、テルペン類、またはディールス−アルダー付加物がある。その一例は硫化カルボブトキシシクロヘキセン(sulfurized carbobutoxy cyclohexene)である。幾つかのこのような硫化物質の製造方法の詳細については、米国特許第3,471,404号および同第4,191,659号に記載されている。特定の実施形態において、硫化オレフィンは、0.01〜2重量パーセント、または0.1〜1パーセントまたは0.2〜0.6パーセントの量で存在する。
【0050】
モリブデン化合物も酸化防止剤として働くことができ、これらの物質は種々の他の機能(摩耗防止剤など)を果たすこともできる。モリブデンと硫黄を含有した組成物を潤滑油組成物中で摩耗防止剤および酸化防止剤として使用することは知られている。米国特許第4,285,822号は、例えば、(1)極性溶媒、酸性モリブデン化合物および油溶性塩基性窒素化合物を混合してモリブデン含有錯体を形成させ、(2)その錯体を二硫化炭素と接触させてモリブデンと硫黄を含有した組成物を形成させることにより製造されるモリブデンと硫黄を含有した組成物を含んだ潤滑油組成物を開示している。このような物質としては、SakuralubeTMとして市販されているジチオカルバミン酸モリブデン(molybdenum dithiocarbamate)がある。特定の実施形態において、ジチオカルバミン酸モリブデンは、0.01〜2%または0.1〜1.3%または0.3〜0.9%の量で存在してよい。特定の実施形態において、潤滑剤は、ジチオカルバミン酸モリブデンから放出され得る10〜2000ppmのMoまたは100〜2000ppmのMo、または500〜1000ppmのMo、または600〜900ppmのMo、または50〜300ppmのMoを含んでよい。
【0051】
当然ながら、酸化防止剤の一般的な量は特定の酸化防止剤およびその個別の有効性によって異なることになるが、例示的総量は、0.01〜5重量パーセントまたは0.15〜4.5パーセントまたは0.2〜4パーセントである。
【0052】
一実施形態において、潤滑剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を含み、実施形態によっては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤はなくてよい。
【0053】
潤滑剤はリン酸(phosphorus acid)の金属塩を含んでもよい。以下の化学式の金属塩は、五硫化リン(P)とアルコールまたはフェノールとを加熱してO,O−ジヒドロカルビルジチオリン酸を形成させることによって容易に得られる:
[(RO)(RO)P(=S)−S]−M
ここで、RおよびRは独立して3〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)。反応してRおよびR基をもたらすアルコールは、アルコールの混合物、例えば、イソプロパノールと4−メチル−2−ペンタノールの混合物であってよく、実施形態によっては、二級アルコールと一級アルコール(イソプロパノールと2−エチルヘキサノールなど)の混合物であってよい。得られた酸は、塩基性金属化合物と反応して塩を形成し得る。原子価nの金属Mは一般的に、アルミニウム、鉛、スズ、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、または銅であり、多くの場合、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を形成する亜鉛である。このような物質はよく知られており、潤滑剤配合物を当業者が容易に入手できるものである。
【0054】
完全に配合された潤滑剤中のリン酸の金属塩の量は、それが存在する場合、0.1〜0.8重量パーセントまたは0.2〜0.7、または0.3〜0.5パーセントなど、一般的には1重量パーセントまでにすることができる。
【0055】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、およそ10重量パーセントのリンを含有することができるため、リンを潤滑剤組成物に与える。潤滑剤の総リン含有量は、最高0.1重量パーセントまで、または0.01〜0.10%または0.01%〜0.08%または0.01〜0.06重量%など、比較的少ないことが望ましい場合があるため、ジアルキルジチオリン酸亜鉛および他のリン源の量はそれに応じて限られたものになることがある。一実施形態において、リンの量は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛から放出され得るものであり、0.01〜0.10重量パーセントであってよい。一実施形態において、ジアルキルジチオリン酸亜鉛の量は、放出によって組成物のリンが最高0.08重量パーセントになるようにするのに十分なものである。
【0056】
従来から潤滑剤に使用されていて、当業者に周知であろうさらに別の添加剤を使用できる。それには、腐食防止剤、極圧摩耗防止剤(extreme pressure and anti−wear agents)(塩素化された脂肪族炭化水素およびホウ素含有化合物(ホウ酸エステルなど)を含む)、流動点降下剤、および消泡剤があるが、これらに限定されない。
【0057】
上記およびその他の添加剤については、米国特許第4,582,618号(第14段落第52行〜第17段落第16行)に詳述されている。
【0058】
一実施形態において、本発明は、内燃エンジンの潤滑方法であって、前記エンジンに上述の組成物を供給することを含む、内燃エンジンの潤滑方法を提供する。組成物は、例えば、油溜め潤滑式(sump−lubricated)エンジンの油溜めから、または他の手段によって供給できる。内燃エンジンを潤滑するこの方法は、このようなエンジン内の摩擦を減少させる方法、およびこのようなエンジンの燃費を向上させる方法とも見なすことができる。なぜなら、こうしたことは、このような潤滑方法にしばしば付随することのある成果であると見なされるからである。
【0059】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知の通常の意味で使用される。特にこれは、分子の残りの部分に直接結合している炭素原子を有し、かつ主として炭化水素の性質(hydrocarbon character)を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例として次のものがある:
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)置換基、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族置換、脂肪族置換、および脂環式置換の芳香族置換基、ならびに環状置換基(ここで、環は分子の別の部分を介して完成している(例えば、2個の置換基が一緒になって環を形成する));
置換炭化水素置換基、すなわち、本発明との関連では、置換基の主な炭化水素性(hydrocarbon nature)を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含む置換基;
ヘテロ置換基、すなわち、主として炭化水素の性質を有するが、本発明との関連では、(普通は炭素原子でできている)環または鎖の中に炭素以外のものを含む置換基。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素があり、ヘテロ原子はピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般的に、2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在し、一般的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基はない。
【0060】
上述の物質の幾つかは、最終配合物中で相互作用することがあり、その結果、最終配合物の成分は最初に添加したものとは異なっていることがあることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤の)は、他の分子の酸性部位または陰イオン部位に移動することができる。このようにして形成される生成物は、本発明の組成物を使用目的に使用したときに形成される生成物も含め、簡単に説明することはできないであろう。とはいえ、このような変更および反応生成物はすべて本発明の範囲内に含まれ、本発明は上述の成分を混和することによって製造される組成物を包含する。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
第A部 マレイン酸無水物含有PMA: 3.8L(1ガロン)のガラスジャーに、メタクリル酸2−エチルヘキシル239.6g、メタクリル酸ラウリル544.8g、TotalTM 85N油342g、Trigonox−21TM開始剤0.4gおよびn−ドデシルメルカプタン0.4gを仕込み、30分間攪拌する。オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器、温度計、および水中窒素ガス送込管を取り付けた3Lの四つ口フラスコに、上記の混合物のおよそ1/3を仕込み、35℃まで加熱し、その温度で、アセトン80gに溶かしたマレイン酸無水物28.76gもさらに仕込む。その混合物を攪拌しながら110℃まで加熱し、その時点で形成時発熱化合物が生じ、それによって温度は116℃になる。その形成時発熱化合物が最大量に達したなら、モノマー混合物の残りの2/3を90分間かけて添加する。その間に温度は110℃に下がり、その温度に保持される。この添加の後、反応フラスコにディーン・スターク・トラップを取り付けて、アセトンおよび他の揮発分を回収する。次いで反応器にTrigonox−21TM開始剤0.6gを仕込み、さらに1時間110℃に保持する。そのときに、TotalTM 85N油の残りの858gを加える。次いで反応混合物を130℃および2.7kPa(20mmHg)で1時間かけてストリッピングしてから、Fax−5TM濾過助剤50gを利用し、布パッドを通過させて濾過する。
【0062】
第B部 環状イミド化反応: オーバーヘッド撹拌機、温度計、還流冷却器および水中窒素ガス送込管を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、第A部からのマレイン酸無水物含有ポリメタクリレート800gを仕込んだ。その混合物を攪拌しながら窒素気流下において80℃まで加熱し、その温度においてジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)11.93gを45分間かけて滴加する。80℃にて1時間攪拌後、その混合物を110℃まで加熱し、その温度で1時間保持する。その反応混合物もさらに120℃まで加熱し、その温度でさらに2時間保持する。その時間および温度のときに、その反応混合物を2.7kPa(20mmHg)でストリッピングする。最後に、Fax−5TM濾過助剤20gを加え、その混合物を布パッドを通過させて濾過して所望の分散剤ポリマーを得る。ポリマー生成物混合物は、40重量パーセントのポリマーおよび60重量パーセントの希釈油を含む。ポリマー自体は、約1%の窒素または約3.6%の反応DMAPA残留物または約0.5%の三級窒素を含む。
【0063】
(実施例2および比較例3)
潤滑剤配合物は、以下の表に示すようにして製造する。
【0064】
【表1】

上記の潤滑剤配合物を、電動エンジン組立品摩擦試験機内で80℃および100℃にて超低速条件で試験した。本試験では、試験配合物で潤滑されたエンジンの摩擦トルクを測定する。結果は、一般的には、例えば、150r.p.m.(分当たりの回転数)から500r.p.m.または750r.p.m.またはそれ以上まで変化する速度の関数として摩擦トルク(Nm)を示すグラフで表す。
【0065】
少なくとも250または350から750r.p.m.までの速度範囲にわたって、実施例2の物質は、比較例3の摩擦と比較して摩擦が減少している。結果によれば、本発明の配合物は、周知のフリクション・モディファイヤーであるオレアミドを0.15%(実用的に最大の可溶量)も含む従来の潤滑剤と比較して摩擦を減少させることができることを示している。さらに、粘度調整剤および分散剤は両方とも減らした量を使用することができる。
【0066】
(比較例4)
実施例2の配合物と似た配合物を製造するが、但し、これは実施例1におけるようにして製造したポリマー(しかし、マレイン酸無水物モノマーおよびDMAPAを約2分の1の量しか含まないもの)を含む。したがって、これは約1.8%のDMAPAしか含まないものになる。上記の試験における摩擦性能は、実施例2ほど良好ではない。
【0067】
(実施例5)
3.8L(1ガロン)のガラスジャーに、メタクリル酸2−エチルヘキシル574.0g、C12〜15のアルキルメタクリレート1674.5g、希釈油1602g、Trigonox−21TM開始剤1.62gおよびn−ドデシルメルカプタン1.62gを仕込み、30分間攪拌する。オーバーヘッド撹拌機、還流冷却器、温度計、および水中窒素ガス送込管を取り付けた12Lの四つ口フラスコに、上記の混合物のおよそ1/3を仕込み、35℃まで加熱し、その温度で、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド143.5gもさらに仕込む。その混合物を攪拌しながら、17L/時間(0.6ft/時間)の窒素流のもとで110℃まで加熱すると、そのときに形成時発熱化合物が生じて温度が126℃になる。形成時発熱化合物が最大量に達したら、モノマー混合物の残りの2/3を90分間かけて110℃にて添加する。この添加の後、14L/時間(0.5ft/時間)の窒素流のもとで1時間にわたり110℃にて攪拌を続ける。追加分のTrigonox−21TM開始剤1.2gを加え、110℃にて1時間攪拌を続ける。Trigonox−21TMの追加および攪拌をさらに3回繰り返し、それぞれ1.2gを合計で4回段階的に追加して増量する。内容物を1時間の間、攪拌しながら28L/時間(1ft/時間)の窒素流のもとで130℃まで加熱し、その後、混合物を130℃および2.7kPaの圧力(20mmHg)で真空ストリッピングする。希釈油1990gもさらに加え、得られた混合物を100℃にてFax−5TM濾過助剤50gを利用して布パッドを通過させて濾過し、所望の分散剤ポリマーを得る。場合により、希釈油1331gを追加でさらに加えてもよい。
【0068】
前記の文献それぞれを本明細書に援用する。物質の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを指定しているこの説明中の数量はすべて、実施例における場合または特に明記している場合を除き、「約」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。特に記載のない限り、本明細書で参照しているそれぞれの化学物質または組成物は、商業用等級の物質と解釈すべきであり、このような物質は、異性体、副生成物、誘導体、および商業用等級に通常は存在すると理解されるその他のこのような物質を含む場合がある。しかし、それぞれの化学成分の量は、特に記載のない限り、通例は市販の物質に存在してよいどんな溶媒または希釈油も含めないで提示されている。本明細書に記載されている上限および下限の量、範囲の限界、および比率の限界は、別々に組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素の範囲および量は、任意の他の要素の範囲または量と一緒に使用できる。本明細書で使用される「から本質的になる」という表現の場合、考慮中の組成物の基本的および新規の特性に実質的に影響を与えない物質が含まれることが許される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンを潤滑するのに適した組成物であって、
(a)潤滑粘度の油、
(b)アミノ官能基化されたアクリル含有またはメタクリル含有ポリマーであって、エステル結合、アミド結合、もしくはイミド結合またはこのような結合の組み合わせを介して該ポリマーに結合した、約2重量パーセント〜約8重量パーセントの三級アミノ基含有アミン部分を含む、ポリマー、および
(c)分散剤
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アミン部分が、アクリル基、メタクリル基、またはスクシン基を介して前記ポリマーに縮合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミン部分がヒドロキシルアミンまたはジアミンを含み、いずれの場合も1つの三級アミノ基を含み、前記縮合がそれぞれエステル基を介してまたはアミド基もしくはイミド基を介してである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミン部分が、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、またはN−(アミノプロピル)モルホリンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミン部分が、前記ポリマーの約3.5重量パーセント〜約5重量パーセントを構成する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記三級アミノ基中の窒素原子が前記アミノ官能基化ポリマーの約0.3〜約0.9重量パーセントを構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノ官能基化ポリマーが前記組成物の約0.2〜約4重量パーセントを構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノ官能基化ポリマーの重量平均分子量が約1,000〜約1,000,000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記分散剤がポリイソブテン基を含むスクシンイミド分散剤であり、該分散剤が0.4〜5重量パーセントの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が10〜2000重量百万分率のモリブデンを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が0.01〜0.10重量パーセントのリンを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記潤滑粘度の油がAPIの第III群の油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の粘度グレードがxW−yであり、ここで、xは0または5であり、yは20、25、または30である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
0.08重量パーセントまでのリンを放出するのに適した量のジアルキルジチオリン酸亜鉛もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
約3重量パーセントまでの過塩基性清浄剤もさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記過塩基性清浄剤が過塩基性サリチル酸カルシウム清浄剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
約0.01〜約2重量パーセントの硫化オレフィンもさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の成分を混和することによって製造される組成物。
【請求項20】
内燃エンジンを潤滑する方法であって、請求項1に記載の組成物を該エンジンに供給することを含む、方法。

【公表番号】特表2009−520084(P2009−520084A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545972(P2008−545972)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/062076
【国際公開番号】WO2007/070845
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】