説明

燐光体変換型発光デバイス

【課題】放射ソースと、燐光体を含む蛍光材料とを備えたイルミネーションシステムを提供する。
【解決手段】第1の光を放出することのできる放射ソースと、前記第1の光を吸収すると共に、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を放出することのできる第1の蛍光材料であって、式(Lu0.4950.495Ce0.013Al512を有する燐光体である第1の蛍光材料とを含むシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、放射ソースと、燐光体を含む蛍光材料とを備えたイルミネーションシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)を放射ソースとして使用することにより白色発光イルミネーションシステムを形成するための種々の試みがなされている。赤色、緑色及び青色発光ダイオードの構成体で白色光を発生するときには、発光ダイオードのトーン、ルミナンス及び他のファクタに変動があるために希望のトーンの白色光を発生できないという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、発光ダイオードにより放出された光の色を、燐光体を含む蛍光材料により変換して、可視白色光イルミネーションを与えるような種々のイルミネーションシステムがこれまでに開発されている。
【0004】
以前のイルミネーションシステムは、特に、三色(RGB)解決策、即ち赤、緑及び青の3つの色を混合するもので、これらの色成分を燐光体によるか又はLEDの一次放出により与えるという解決策に基づいたものであるか、或いは第2の簡単な解決策、即ち黄色及び青色を混合する二色(BY)解決策であって、黄色の成分を黄色の燐光体により与えそして青色の成分を青色LEDの一次放出により与えるという解決策に基づいたものである。
【0005】
特に、例えば、米国特許第5,998,925号に開示された二色解決策は、Y3Al512:Ce3+(YAG−Ce3+)燐光体と結合したInGaN半導体の青色発光ダイオードを使用している。YAG−Ce3+燐光体は、InGaNのLEDに被覆され、LEDから放出された青色光の一部分が燐光体により黄色の光に変換される。LEDからの青色光の別の一部分は、燐光体を透過する。従って、このシステムは、LEDから放出される青色の光と、燐光体から放出される黄色の光の両方を放出する。青色及び黄色の放出帯域の混合物は、80代半ばのCRIと、約6000Kから約8000Kの範囲の色温度Tcで、観察者により白色光として認知される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、二色解決策に基づく白色光LEDは、赤色成分が存在しないことによりカラーレンダリングが不充分であるために、汎用イルミネーションとしては限定された程度でしか使用できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、システムは、第1の光を放出することのできる放射ソースと、この第1の光を吸収すると共に、第1の光とは異なる波長の第2の光を放出することのできる蛍光材料とを備えている。この蛍光材料は、式(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrb、但し、0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2及び0<b≦0.1、を有する燐光体である。ある実施形態では、(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrbは、第3の光を放出することのできる第2の蛍光材料と結合される。第2の蛍光材料は、赤色放出燐光体でよく、システムから放出される第1、第2及び第3の光の結合が白色に見えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】LED構造体により放出される光の経路に配置された2燐光体混合物を含む三色型白色LEDランプの概略図である。
【図2A】国際照明委員会(CIE)の色度図における(Lu0.4950.495Ce0.013Al512及びCasの燐光体混合物の座標を示す。
【図2B】CIE図におけるLu3Al512:Ce3+及びSr2Si58:Euの燐光体混合物の座標を示すもので、これら燐光体の混合物が黒体軌跡に近い座標をもつように形成されるところを示す。
【図3】460nmにおいて青色LEDにより励起されたときの緑色LEDの放射スペクトルを示すグラフである。
【図4A】白色LEDの放射スペクトルを示すグラフである。
【図4B】白色LEDの放射スペクトルを示すグラフである。
【図5】(Lu0.99Ce0.013Al512の励起及び放射スペクトルを示すグラフである。
【図6】(Lu0.989Ce0.013Al512の励起及び放射スペクトルを示すグラフである。
【図7】(Lu0.495Ce0.4953Al512の励起及び放射スペクトルを示すグラフである。
【図8】Lu3Al512:Ce3+の相対的強度を温度の関数として示すグラフである。
【図9】Sr2Si58:Eu2+の相対的強度を温度の関数として示すグラフである。
【図10】Lu3Al512:Ce3+及びY3Al512:Ce3+の励起及び放射スペクトルを示すグラフである。
【図11】多数の燐光体を含む本発明の実施形態を示す図である。
【図12】多数の燐光体を含む本発明の実施形態を示す図である。
【図13】多数の燐光体を含む本発明の実施形態を示す図である。
【図14】多数の燐光体を含む本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、近UVから青色の範囲で励起することができ且つ可視緑色範囲の光を放出する新規な燐光体(phosphor)を提供する。これらの新規な燐光体は、放射ソースにより放出された光の一部分を吸収すると共に、その吸収された光とは異なる波長の光を放出することができる。
【0010】
本発明の実施形態は、放電ランプ、蛍光ランプ、LED、レーザーダイオード及びX線管を含む(これらに限定されない)放射ソースを収容したイルミネーションシステムの構成に燐光体として含まれたルテチウムアルミニウムガーネットに焦点を合わせる。ある実施形態では、ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体は、セリウム活性化される。ここに使用する「放射(radiation)」という語は、電磁スペクトルのUV、IR及び可視領域の放射を包含する。
【0011】
この燐光体の使用は、広範囲のイルミネーションアレーに意図されたものであるが、本発明は、発光ダイオード、特にUV及び青色発光ダイオードを特に参照して説明し、それらに特に適用することができる。
【0012】
本発明の実施形態による蛍光材料は、セリウム活性化のルテチウムアルミニウムガーネットの化合物を燐光体として含む。この燐光体は、一般式(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrb、但し、0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2及び0<b≦0.1、に合致するものである。
【0013】
このクラスの燐光体材料は、立体ガーネット結晶の活性化ルミネセンスをベースとする。ガーネットは、結晶化学式A3512をもつ材料のクラスである。
【0014】
ガーネット結晶格子は、12面体8配位、8面体6配位、及び4面体4配位の3つの異なる原子占有サイトを有し、Aカチオンは、酸素とで8配位とされ、そしてBカチオンは、酸素とで8面体的(6)又は4面体的(4)に配位される。結晶構造は、8個の公式単位を含む単位セル当たり160個のイオンをもつ立体である。本発明の実施形態では、Aカチオンは、ルテチウムイオン単独であるか、又はイットリウム及びガドリニウムとの組合せであり、セリウム及びおそらくはプラセオジムの組合せ及び活性剤置換したものである。Bカチオンは、アルミニウムでよく、そしてガリウム又は他のイオンを、この場合も、単独、組合せ及び/又は置換したものでよい。特に、8配位又は6配位サイトに活性剤イオンが置換された状態では、これらガーネットは、X線刺激に応答してルミネセントとなる。このホスト材料においてX線ルミネセントである特に重要な活性剤イオンは、8配位サイトに位置するCe3+イオンである。
【0015】
セリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネットLu3Al512:Ce燐光体におけるあるルテチウムを、ガドリニウムGd3+又はイットリウムY3+のような小さなイオンと置き換えると、燐光体の放出帯域を緑色範囲から黄色範囲へシフトさせる。
【0016】
セリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネットLu3Al512:Ce燐光体におけるあるアルミニウムを、ガリウムGa3+のような大きなイオンと置き換えると、燐光体の放出帯域を緑色範囲から青色範囲へシフトさせる。
【0017】
セリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネットにおけるあるセリウムを、共活性剤としてのプラセオジムと置き換えると、可視スペクトルの黄色領域を一般的に中心とするセリウム活性化ルテチウムアルミニウム燐光体からの典型的な広帯域二次放出ではなく、可視スペクトルの赤色領域に集中された二次放出をプラセオジムが発生するという効果を与える。共活性剤としてのプラセオジムの量は、特定用途に対する白色出力光に必要とされる赤色の量に基づいて変化し得る。低い濃度で存在する活性剤カチオンとしてプラセオジムを有する組成は、このような組成が可視スペクトルの赤色領域に鋭い直線放出を示すので、特に望ましいものである。
【0018】
ルテチウムの濃度は、光源、特にLEDに使用したときに放出光の色軌跡に影響する。
この燐光体の色軌跡は、2つの濃度Lu:Ceの比を使用して付加的に微同調することができ、これは、LEDにおける更なる(黄色又は赤色)燐光体への適用を簡単又は最適にする。燐光体におけるCeの濃度が増加するにつれて、燐光体の放射スペクトルの青色端が、より長い波長へとシフトする。ある実施形態では、燐光体は、約1から約1.5モル%のCeを含む。
【0019】
好ましくは、これらのガーネット燐光体には、アルミニウムと、スカンジウムと、イットリウムと、ランタンガドリニウムと、ルテチウムと、これらアルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物と、アルミニウムの窒化物との元素のフッ化物及びオルト燐酸塩により形成されたグループから選択された1つ以上の化合物の薄い均一層が被覆されてもよい。
【0020】
層の厚みは、習慣的に、0.001から0.2μmの範囲であり、従って、放射ソースの放射がそのエネルギーを実質的に失わずに貫通し得るほど薄いものである。燐光体粒子におけるこれら材料の被覆は、例えば、気相からの堆積又は湿式被覆プロセスにより付着させることができる。
【0021】
本発明による燐光体は、蛍光ランプ及び発光ダイオードのような紫外光線、青色発光ダイオードのような可視光線、電子(陰極線管のような)及びX線(放射線写真のような)に応答する。
【0022】
又、本発明は、放射ソースと、一般式(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrb、但し、0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2及び0<b≦0.1の少なくとも1つの燐光体を含む蛍光材料とを備えたイルミネーションシステムにも関する。
【0023】
放射ソースは、半導体光学放射放出器や、電気的励起に応答して光学放射を放出する他のデバイスを含む。半導体光学放射放出器は、発光ダイオードLEDチップ、発光ポリマー(LEP)、有機発光デバイス(OLED)、ポリマー発光デバイス(PLED)、等を含む。
【0024】
更に、水銀低及び高圧放電ランプや、硫黄放電ランプや、分子ラジエータをベースとする放電ランプのような放電ランプ及び蛍光ランプに見られるような発光コンポーネントも、本発明の燐光体組成と共に、放射ソースとして使用することが意図される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、放射ソースは、発光ダイオードである。LEDと、セリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体組成とを含むイルミネーションシステムの構成は、本発明において、好ましくは良く知られた他の燐光体を追加するように意図され、これは、LED放出一次UV又は上述した青色光を照射したときに、必要な色温度において高い効率及び/又は高いカラーレンダリングインデックス(CRI)の特定の色又は白色の光を得るために結合することができる。本発明の実施形態に基づく白色放出デバイスは、青色、赤色及び緑色の組合せに基づく。ある実施形態では、黄色から緑色及び赤色燐光体は、全スペクトル領域にわたって充分な放出特性を有するように広帯域化される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、使用する一次放射ソースは、UV放出又は青色放出のLEDチップからの放射である。最大放出が400から480nmに存在する青色LEDで特に良好な結果が得られている。上述したガーネット燐光体の励起スペクトルを特に考慮に入れて、最適な範囲は、445から460nmと438から456nmに存在することが分かった。
【0027】
汎用の望ましい白色光ランプ特性は、経済的なコストにおいて高い輝度と高いカラーレンダリングである。3つの放出帯域を有し、即ち赤色が590から630で、緑色が520から560で、青色が450nmであるRGB解決策に基づく三色ランプスペクトルで、改善された効率及び非常に改善されたカラーレンダリング能力が得られる。これらの波長は、色を定義するのに使用されるCIE三刺激関数のピーク付近である。
【0028】
ある実施形態では、2つの燐光体、即ち一般式(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrb、但し、0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2及び0<b≦0.1の緑色放出のセリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体と、第2の燐光体とを一緒に使用することにより、特に良好なカラーレンダリングが達成される。第2の燐光体は、例えば、(Ca1-xSrx)S:Eu、但し、0<x≦1、及び(Sr1-x-yBaxCay2-zSi5-aAla8-aa:Euz、但し、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1、及び0<z≦1、のグループから選択された赤色放出ユーロピウム活性化燐光体のような赤色放出燐光体でよい。
【0029】
好ましくは、近UV(400nm)から青−緑(500nm)まで高い量子効率で励起可能な高色度の赤色燐光体であるユーロピウム活性化カルシウムストロンチウム硫化物が使用される。この燐光体を一次LED光のルミネセント変換に最適に使用するには、例えば、関連発光デバイスの効力、色仕様及び寿命を達成するように光物理特性を変更することが必要である。ユーロピウム活性化カルシウムストロンチウム硫化物の色度及び量子効率は、Ba、Ca、Mg及びZnを含むリストからストロンチウムに対する二価の金属イオンの置換により変更することができる。適当な赤色燐光体を次のテーブルに示す。

【0030】
燐光体の混合物は、二価のユーロピウムで活性化されたセリウム及びカルシウムストロンチウム硫化物により活性化されたガーネット構造のルテチウムアルミニウム酸化物の所定量及び相対的割合の混合より成る。燐光体の相対的割合は、第1燐光体層の複合放出が、ICIシステムのx−y色度図に印されたウオーム・ホワイト(warm-white)楕円内にほぼ入るようなものである。
【0031】
特に好ましいのは、455nmにピーク放出をもつ可視スペクトルの青色範囲で放出するInGaNチップより成る白色光放出の放射ソースと、対応するスペクトル重み比青:緑:赤=1.1:2.4:2.18をもち、色座標がx=0.336、y=0.339そしてカラーレンダリングインデックスが83で白色光を放出するLu3Al512:Ce及びCaS:Euより成る燐光体混合物とである。Lu3Al512:Ce及びCaS:Euの3つの異なる混合より成る白色光放出デバイスのスペクトルが図4Aに示されている。
【0032】
図4Bは、450nmの青色LEDにより励起されるLu3Al512:Ce及びSr2Si58:Euの混合を含む3つの白色光デバイスのスペクトルを示す。
【0033】
本発明の実施形態によるこのような発光デバイスの詳細な構造が図1に示されている。図1のデバイスは、反射カップ2に配置されたLED1を備えている。このLED1により放出される光の経路に燐光体組成4、5が配置される。燐光体組成は、樹脂に埋め込まれる。反射カップ2の形状は、この技術で良く知られているように、デバイスから放出される光の特定パターンを与えるように選択されてもよい。例えば、反射カップ2の壁をパラボラ状にすることができる。
【0034】
一実施形態において、デバイスは、更に、燐光体又は燐光体混合物をカプセル化するためのポリマーを含む。この実施形態では、燐光体又は燐光体混合物は、カプセル材において高い安定特性を示さねばならない。好ましくは、ポリマーは、著しい光の散乱を防止するように光学的に透明である。一実施形態において、ポリマーは、エポキシ及びシリコーン樹脂より成るグループから選択される。LEDランプを形成するためのLED産業では様々なポリマーが知られている。ポリマー先駆物質である液体に燐光体混合物を添加すると、カプセル化を実行することができる。例えば、燐光体混合物は、粉末である。燐光体粒子をポリマー先駆物質液体に導入すると、スラリー(即ち粒子の懸濁体)が形成される。ポリマー化の際に、燐光体混合物は、カプセル化によりしっかり位置固定される。一実施形態では、組成及びLEDの両方がポリマーでカプセル化される。
【0035】
燐光体は、別々に適用されるか又は混合物で適用される。燐光体は、LEDからの光を完全に又は部分的に吸収し、そしてそれを、希望の色ポイントをもつ全体的な放出が形成される充分に広い帯域(特に著しい割合の赤を伴う)において他のスペクトル領域(主として黄色及び緑色)で再び放出する。LEDの波長は、混合物における燐光体の各々がLEDからの放出で励起されるように混合物における特定の燐光体に同調される。本発明の実施形態に基づく広帯域燐光体を使用する燐光体混合物は、91−93程度の高さの、比較的高いカラーレンダリングインデックスをもつことができる。例えば、約330nmから約365nmのUV光線を放出するLEDの場合には、高いカラーレンダリングを達成するために、上述した黄色/緑色及び赤色燐光体に加えて、燐光体混合物は、青色光線を放出する燐光体を含んでもよい。
【0036】
種々の温度の黒体に対応する色ポイントが黒体軌跡(BBL)で与えられる。黒体から放出される色は白と考えられ、そして白色光はランプにとって一般に望ましいので、ルミネセントランプのルミネセント材料から放出される光の色ポイントがBBL上又はその付近にあることが一般的に望まれる。図2Aに示すBBLの部分は、放射スペクトルが図4Aに示された白色光放出LEDに対応するBBL上にハイライトされた3つの色温度ポイントを含む。図2Bに示すBBLの部分は、放射スペクトルが図4Bに示された白色光放出LEDに対応するBBL上にハイライトされた3つの色温度ポイントを含む。
【0037】
別のメリット指数は、白色光を放出する放射ソースのイルミネーションカラーをレンダリングするクオリティで、カラーレンダリングインデックス(CRI)として指示される。100のCRIは、光源から放出される光が、黒体ソース、即ち白熱ランプ又はハロゲンランプからの光と同様であるという指示である。85から95のCRIは、Lu3Al512:Ce及びCaS:Euより成る燐光体混合物を青色放出のLEDに適用することにより得ることができる。
【0038】
図2A及び2Bは、青色LEDと、本発明のセリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体及びCaS:Eu又はSr2Si58:Euとの種々の組合せから発生できる白色光を与えるある範囲のイルミネーションシステムの色座標を示す。
【0039】
本発明の実施形態に基づく2つ以上の燐光体を同じデバイスに組み込んで、色調整を行なってもよい。
【0040】
実施形態の更なるグループは、カラーレンダリングが特に良好な緑色放出イルミネーションシステムに向けられ、これは、420から480nmの青色スペクトル範囲において一次光を放出する発光半導体コンポーネントと、緑色を放出するセリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体Lu3Al512:Ceを含む燐光体混合物であって、対応するスペクトル重み比青:緑が1.0:2.4ないし1.0:3.5から選択され、色座標がx=0.336、y=0.339、カラーレンダリングインデックスが83、そしてルーメン等価値が約450ルーメン/ワットで緑色光を放出するような燐光体混合物との結合で構成される。
【0041】
緑色を放出する燐光体は、特定の色の光を発生するために、そして更に好ましくは、80以上の高いカラーレンダリングインデックスで白色光を発生するために、更に別の黄色又は赤色放出燐光体と適宜に結合されてもよい。
【0042】
緑色から黄色までの広帯域放出の結果として、図3に幾つかの例で示された緑色放射を発生することができる。デバイスに配置される燐光体の量が増加するにつれて、最終的に、LEDからの全ての放出が吸収され、燐光体からの放出だけが残る。このように燐光体負荷の大きなデバイスは、緑色の光を必要とする用途に使用されてもよい。
【0043】
上述したガーネット燐光体は、UV及び青色の両励起のもとで非常に高い強度で可視スペクトルの黄色−緑色スペクトル範囲において広帯域の放出を行い、従って、特定の色又は白色光を放出するLEDにおいて緑色成分を与えることができる。全変換効率は、90%までである。燐光体の更に別の重要な特徴は、1)典型的なデバイス動作温度(例えば、80℃)におけるルミネセンスの熱的消滅に耐え、2)デバイス製造に使用されるカプセル化樹脂との干渉反応がなく、3)可視スペクトル内のデッド吸収を最小にするのに適した吸収プロフィールであり、4)デバイスの動作寿命にわたり時間的に安定した光出力を与え、及び5)燐光体励起及び放出特性を組成的制御同調することを含む。図8は、Lu3Al512:Ce3+の相対的強度を時間の関数として示す。この相対的強度は、室温25℃における強度の割合として表わされる。200℃では、Lu3Al512:Ce3+の放出強度が、室温強度の90%である。300℃では、Lu3Al512:Ce3+の放出強度が、室温強度の70%である。白色光及び高温での動作を必要とする実施形態では、Sr2Si58:Eu2+が赤色燐光体として好ましい。というのは、これは、Sr2Si58:Eu2+の相対的強度を温度の関数として示す図9に示されたように、高い温度において同様の性能を示すからである。200℃では、Sr2Si58:Eu2+の放出強度は、室温強度の90%である。
【0044】
白色光を放出するように設計されたデバイスに他の燐光体と共に含まれたルテチウム含有ガーネット燐光体は、Y3Al512:Ce3+のようにルテチウムを含まないガーネット燐光体に勝る改善されたカラーレンダリングを与えることができる。この改善されたカラーレンダリングは、Y3Al512:Ce3+に対してLu3Al512:Ce3+のストークスシフトが小さいためである。Lu3Al512:Ce3+及びY3Al512:Ce3+のような燐光体は、通常、放射の形態の励起エネルギーを吸収し、そのエネルギーを蓄積し、次いで、その蓄積されたエネルギーを異なるエネルギーの放射として放出する。放出される放射の量子エネルギーが、吸収される放射より低いときには、放出光の波長が吸収光より増加する。この増加を、ストークスシフトと称する。図10は、Lu3Al512:Ce3+及びY3Al512:Ce3+の励起及び放出スペクトルにより実証されたLu3Al512:Ce3+の小さなストークスシフトを示している。両燐光体の励起スペクトルは非常に小さいが、Lu3Al512:Ce3+からのピーク放出(曲線20)は、Y3Al512:Ce3+からのピーク放出(曲線22)より約40nm短い波長で生じる。白色光デバイスに使用されたときには、Lu3Al512:Ce3+の小さなストークスシフトは、長い青色波長及び短い緑色波長において合成ポンプ放出及び燐光体放出のスペクトルのギャップを排除し、その結果、カラーレンダリングを良好なものにする。
【0045】
図1に示すデバイスのように、赤色放出の燐光体がルテチウム含有ガーネット燐光体と混合されたデバイスにおいては、ルテチウム含有ガーネット燐光体の小さなストークスシフトを利用することが困難である。というのは、赤色放出の燐光体は、ルテチウム含有ガーネット燐光体により放出される光の著しい部分を吸収し得るからである。ルテチウム含有ガーネット燐光体は、非常に濃密になる傾向がある。その結果、このような燐光体を含むスラリーがデバイス上に堆積されたときには、ルテチウム含有ガーネット燐光体の粒子が迅速に沈んで、ルテチウム含有ガーネット燐光体のほとんどをデバイスの近くに残すと共に、赤色放出燐光体のほとんどをデバイスから更に離れたところに残す傾向となる。従って、ルテチウム含有ガーネット燐光体により放出される光は、赤色放出燐光体粒子に当たって吸収される見込みが高くなる。図11−14は、ルテチウム含有ガーネット燐光体により放出された光の、赤色放出燐光体による吸収が最小にされるように、赤色放出燐光体及びルテチウム含有ガーネット燐光体が堆積されたデバイスの実施形態を示す。
【0046】
図11に示すデバイスでは、ルテチウム含有ガーネット燐光体5が、樹脂又は他の透明材料と混合されて、反射カップ2の片側に配置され、一方、他の燐光体4が、樹脂又は他の透明材料と個別に混合されて反射カップ2の他側に配置され、スラリー5がスラリー4と著しく混合しないようにする。ある実施形態では、スラリーを形成する透明材料の粘性は、燐光体4と燐光体5との混合を回避するように選択される。ルテチウム含有ガーネット燐光体5と他の燐光体4とは、同じスラリー内で混合されるのではなく、互いに隣接しているので、ルテチウム含有ガーネット燐光体5により放出された光がスラリー4の赤色放出燐光体により吸収されるおそれはほとんどない。
【0047】
図12に示すデバイスでは、ルテチウム含有ガーネット燐光体5と他の燐光体4とが、個別の層としてLED1の上に堆積される。赤色放出燐光体を含む燐光体層4は、LED1に最も接近して堆積される。次いで、ルテチウム含有ガーネット燐光体5が、燐光体層4の上に堆積される。燐光体層4及び5は、光学的透明層6により分離されてもよい。燐光体層4及び5は、樹脂又は他の透明材料にスラリーとして堆積されてもよいし、例えば、電子ビーム蒸発、熱蒸発、RFスパッタリング、化学蒸着又は原子層エピタキシーにより薄膜として堆積されてもよいし、或いは、例えば、スクリーン印刷、米国特許第6,650,044号に説明されたステンシル処理、又は米国特許第6,576,488号に説明された電気泳動堆積によりLED1の上に適合層として堆積されてもよい。薄膜は、米国特許第6,696,703号に詳細に説明されている。米国特許第6,696,703号、米国特許第6,650,044号、及び米国特許第6,576,488号の各々は、参考としてここに援用する。通常、単一の大きな燐光体粒子として振舞う薄膜とは対照的に、適合層の燐光体は、一般に、多数の燐光体粒子として振舞う。更に、薄膜は、通常、燐光体以外の材料を含まない。適合層は、燐光体以外の材料、例えば、シリカをしばしば含む。
【0048】
図13に示すデバイスでは、ルテチウム含有ガーネット燐光体5及び他の燐光体4がLED1上で複数の小さな領域において堆積される。これらの異なる領域は、市松模様のようなパターンを形成してもよい。LEDにより放出される青色の光が、燐光体により放出される緑色及び赤色の光と混合されて、白色光を形成する場合のように、LED1からの光を非変換で脱出させるべき場合には、非変換の光の量を、燐光体領域4及び5の厚みを制御することで制御してもよいし、或いはLED1により放出された光を変換しない光学的に透明な材料7でLED1の領域をカバーするか又は非カバー状態にすることで制御してもよい。図13に示すような異なる燐光体層のパターンは、燐光体の第1層を電気泳動堆積により堆積し、従来のリソグラフィー及びエッチング技術を使用してこの層をパターン化し、次いで、電気泳動堆積により第2の燐光体層を堆積することにより、形成されてもよい。或いは又、燐光体層のパターンは、スクリーン印刷又はインクジェット印刷により堆積されてもよい。ある実施形態では、燐光体層のパターンは、微生物学に使用される透明プラスチックマイクロプレートのウェルへ個々の燐光体混合物4及び5をピペット処理することにより形成されてもよい。燐光体が充填されたマイクロプレートは、次いで、LED1に載せられる。燐光体が充填されたマイクロプレートは、LED1とは別々に形成されてもよい。
【0049】
図14に示すデバイスでは、赤色放出燐光体を含む燐光体4の複数の小さな領域がLED1の表面上に形成される。次いで、ルテチウム含有ガーネット燐光体5の層が、燐光体4の複数の領域の上に堆積される。
【0050】
図11から14に示す各実施形態は、光が赤色放出燐光体に入射する前にルテチウム含有ガーネット燐光体により吸収されて再放出される問題を回避する。各々の場合に、LED1により放出された光は、赤色放出燐光体に最初に入射するか、又は別々の領域にある赤色放出燐光体及びルテチウム含有ガーネット燐光体に入射する。従って、図11から14の構成体は、ルテチウム含有ガーネット燐光体から放出された光が赤色放出燐光体により吸収される確率を減少させる。
【0051】
本発明によるルテチウム含有ガーネット燐光体は、以下の例に示すように容易に合成される。
【0052】
例:
一般式(Lu1-x-y-a-bxGdy3(Al1-zGaz512:CeaPrb、但し、0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1、0<a≦0.2及び0<b≦0.1で表わされる燐光体の燐光体合成については、1つ以上の出発材料が、硝酸溶液に溶け得る酸化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩又は塩素酸塩のような酸素含有化合物でよい。例えば、ある量のLu23、Al(NO33・9H2O、Ce(NO33・6H2O及びAlF3が硝酸溶液において混合及び溶解される。酸性溶液の強度は、酸素含有化合物を迅速に溶解するように選択され、この選択は、当業者の技術の範囲内である。硝酸溶液は蒸発される。乾燥された沈殿物は、ボールミル処理されるか又は他の仕方で完全に混合され、次いで、出発材料の実質的に完全な脱水を確保するに充分な時間中約1300℃においてCO雰囲気中で焼成(calcination)される。焼成は、一定の温度で行うことができる。或いは又、焼成温度は、周囲温度から上昇させて、最終温度に焼成時間中保持するようにしてもよい。間欠的なミリング段階の後に、焼成された材料は、H2、CO、又はこれらガスの1つと不活性ガスとの混合物のような還元環境のもとで1500-1700℃において同様に焼かれる。焼成された材料は、酸素含有化合物を分解して、全ての焼成された材料を希望の燐光体組成へと変換するに充分な時間、焼かれる。
【0053】
それにより得られた粉末は、ローラーベンチで数時間ミリングされる。ミリングされた粉末は、平均粒子サイズが40から60μmである。その量子効率は90%であり、そしてそのルーメン等価値は、430から470lm/Wである。色ポイントは、x=0.33から0.38、y=5.57から0.58である。以下のテーブルは、多数の適当な燐光体化合物の波長及び色ポイントを示す。

【0054】
図5、6及び7は、上記テーブルの幾つかの化合物の放射スペクトルを示す。波長355nmの放射で励起されたときには、これらのガーネット燐光体は、515nmをピークとする広帯域放射を与えることが分かった。図5は、組成(Lu0.99Ce0.013Al512に対する励起及び放射スペクトルを示す。図6は、組成(Lu0.4950.495Ce0.013Al512に対する励起及び放射スペクトルを示す。図7は、(Lu0.989Ce0.010Pr0.0013Al512の励起帯域が広い帯域(515−540nm)であって、ピークが515から540nmまで延びそして側波帯が610nmにあることを実証している。
【0055】
励起スペクトルから、これらのセリウム活性化ルテチウムアルミニウムガーネット燐光体は、波長254、355及び420nmの放射で効率良く励起できることが明らかである。
【0056】
460nmの光を放出するInGaNのLDEをベースとする白色イルミネーションシステムを製造する場合には、上述した適当な赤色燐光体の少なくとも1つを含む燐光体混合物がシリコーン先駆物質に懸濁される。この懸濁液の小滴がLEDチップの上に堆積され、その後にポリマー化される。プラスチックレンズでLEDをシールする。
【0057】
以上、本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の概念の精神から逸脱せずに本発明の前記開示に変更がなされ得ることが明らかであろう。それ故、本発明の範囲は、添付図面を参照して述べた特定の実施形態に限定されないものとする。
【符号の説明】
【0058】
1:LED
2:反射カップ
4:他の燐光体(スラリー)
5:ルテチウム含有ガーネット燐光体(スラリー)
6:光学的透明層
7:光学的透明材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を放出することのできる放射ソースと、
前記第1の光を吸収すると共に、前記第1の光とは異なる波長の第2の光を放出することのできる第1の蛍光材料であって、式(Lu0.4950.495Ce0.013Al512を有する燐光体である第1の蛍光材料とを含むシステム。
【請求項2】
さらに前記第1の光及び/又は第2の光によって励起され赤色の光を放出することのできる第2の蛍光材料を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
さらに(Sr1-x-yBaxCay2-zSi5-aAla8-aa:Euz、但し、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1、及び0<z≦1、Sr2Si58:Eu2+及び(Sr1-xCax)S:Eu、但し、0<x≦1からなる群より選ばれる第2の蛍光材料を含む請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−119768(P2011−119768A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50587(P2011−50587)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【分割の表示】特願2005−84754(P2005−84754)の分割
【原出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【Fターム(参考)】