説明

物体の内部構造を測定する方法および装置

物体の表面からの反射によって生じる信号アーチファクトを低減するためのさまざまな方法および装置を説明する。1つの方法においては、信号アーチファクトを低減するための校正信号を類似経路アルゴリズムを用いて作成する。別の方法においては、信号アーチファクトを低減するための校正信号を等価位置アルゴリズムを用いて作成し、別の方法においては、遮断スクリーンを表面に接触または近接させて配置する。別の方法においては、反射防止層を使用する。これらの方法は、乳房腫瘍造影デバイスにおいて単独で、または一緒に使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の乳房などの物体の内部構造を測定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、女性において最も一般的な癌であり、英国では女性に発生するあらゆる癌のほぼ3つに1つが乳房に発生し、生涯リスクは9人中1人である。http://www.breastcancercare.org.uk/Breastcancer/Breastcancerfactsandstatisticsを参照のこと。現在利用可能な胸部検査方法のうちでは、乳房X線撮影法が最も効果的な技法と考えられている。M・ブラウン(M. Brown)、F・ハウン(F. Houn)、E・シックルズ(E. Sickles)、およびL・ケスラー(L. Kessler)の共著「検診マンモグラフィの地域での実施(Screening mammography in community practice)」,アメリカン・ジャーナル・レントゲン(Amer. J. Roentgen),第165巻,p.1373−1377,1995年12月を参照のこと。ただしこの技法は、偽陰性および偽陽性検出率が相対的に高く、乳房の不快な圧縮を伴い(P・T・ヒュン(P. T. Huynh),A・M・ジャロリメック(A. M. Jarolimek),およびS・デイ(S.Daye)の共著「偽陰性乳房X線写真(The false negative mammogram)」,ラジオグラフ(Radiograph),第18巻,p.1137−1154,1998年を参照)、さらには乳腺組織がより密な乳房には適切ではない(E・バンクス(E. Banks)ら著「百万人の女性の研究における乳房撮影法の感受性および特異性に対する個々の女性の個人的特徴の影響:コホート研究(Influence of personal characteristics of individual women on sensitivity and specificity of mammography in the Million Women Study: cohort study)」,ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal),第329号(7464):477,2004年8月を参照)。X線被曝のイオン化性も懸念事項である。
【0003】
マイクロ波レーダによる乳癌の検出は、非イオン化性の代替方法であり、世界中のいくつかのグループにより研究が進められている。たとえば、シュ・リ(Xu Li)およびS・C・ハグネス(S. C. Hagness)の共著「乳癌検出のための共焦マイクロ波造影アルゴリズム(A confocal microwave imaging algorithm for breast cancer detection)」,IEEEマイクロウェーブ・アンド・ワイヤレス・コンポーネンツ・レターズ(IEEE Microwave & Wireless Components Lett.),第11巻,p.130−2,2001年3月、E・C・フィアー(E. C. Fear),およびM・A・スタッチリー(M. A. Stuchly)の共著「乳房腫瘍検出のためのマイクロ波システム(Microwave system for breast tumour detection)」,IEEEマイクロウェーブ・アンド・ガイデッド・ウェーブ・レターズ(IEEE Microwave & Guided Wave Lett),第9巻,p.470−2,1999年11月、およびP・M・ミーニー(P. M. Meaney),M・W・ファニング(M. W. Fanning),D・リ(D. Li),S・P・ポプラック(S. P.Poplack)、およびK・D・ポールセン(K. D. Paulsen)の共著「乳房のアクティブマイクロ波造影のための臨床プロトタイプ(Clinical prototype for active microwave imaging of the breast)」,IEEEトランザクションズ・オン・マイクロウェーブ・セオリー・アンド・テクニクス(IEEE Trans, on Microwave Theory and Tech.)第48巻,p.1841−1853,2000年11月を参照のこと。このような方法は何れも悪性乳房組織と正常乳房組織との間の誘電率の差に頼っている(正常組織の密度により2:1と10:1の間)。正常乳房組織におけるマイクロ波の減衰は、10GHzまでは4dB/cm未満であり(S・C・ハグネス(S. C. Hagness),A・タフラヴ(A. Taflove),およびJ・E・ブリッジス(J. E. Bridges)の共著「乳癌検出のためのパルスマイクロ波共焦システムの二次元FDTD解析:固定焦点およびアンテナアレイセンサ(Two−dimensional FDTD analysis of a pulsed microwave confocal system for breast cancer detection: fixed−focus and antenna−array sensors)」,IEEEトランザクションズ・オン・バイオメディカル・エンジニアリング(IEEE Trans, on Biomed. Eng.),第45巻,p.1470−9,1998年12月を参照)、さらにこの周波数範囲は、集束後に十分に良好な空間分解能を可能にするはずである。
【0004】
本来は地雷検出のために開発された実開口合成レーダ検出方法を用いたマイクロ波レーダ技法が、R・B・ベンジャミン(R. Benjamin),I・J・クラドック(I. J. Craddock),G・S・ヒルトン(G. S. Hilton),S・リトバルスキー(S. Litobarski),E・マカッチョン(E. McCutcheon),R・ニラバラン(R. Nilavalan),G・N・クリスプ(G. N. Crisp)の共著「非接触式、合成近視野集束を用いた埋設地雷のマイクロ波検出(Microwave detection of buried mines using non−contact, synthetic near−field focusing)」,IEEEプロシーディングス:レーダ,ソナー・アンド・ナビゲーション(IEEE Proceedings: Radar, Sonar & Navigation),第148巻,p.233−40,2001年8月、およびF・ベンジャミン(R. Benjamin)による米国特許第5,920,285号明細書「遠隔検出システムにおける受信後集束(Post−Reception Focusing in Remote Detection Systems)」に説明されている。
【0005】
波動エネルギーを物体内に送出する造影技法の問題は、何れの場合も物体の表面からの反射によって好ましくない信号アーチファクトを引き起こしうることである。この問題は、物体内部の媒質より高密度の表皮が存在する場合に特に深刻である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に説明する各発明は、このような信号アーチファクトを低減するためのさまざまな解決策を提示する。
本発明の第1の態様は、物体の内部構造を測定する方法を提供する。この方法は、
a)周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む波動エネルギーを物体上に送出するために1つまたは複数の送信器を付勢するステップと、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を複数の受信器によって検出し、複数の出力信号を生成するステップと、
c)信号アーチファクトを低減するステップと
を含み、信号アーチファクトの低減は、
i)出力信号の部分集合を選択するステップであって、部分集合内の各出力信号が、同様の距離によって隔てられている対の送信器/受信器に対応するステップと、
ii)部分集合内の複数の出力信号のから周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む1つまたは複数の校正信号を生成するステップと、
iii)部分集合内の複数の出力信号のうちの1つまたは複数から校正信号を減じるステップとによって行われる。
【0007】
本発明の第1の態様は、表面反射アーチファクトを除去するための処理方法を提供する。周波数範囲にわたる操作によって高分解能が達成される。
【0008】
特殊なケースでは、ステップc)を単一の部分集合に対して実行しうる。ただし、一般には、ステップc)を複数回実行し、その都度それぞれ異なる部分集合の出力信号に対して実行する。
【0009】
特殊なケースでは、部分集合内の出力信号の数は、受信器によって生成された総出力信号数に等しくてもよい。ただし、大半の場合、部分集合内の出力信号の数は、受信器によって生成された出力信号の合計数より少ない。
【0010】
単一の送信器を使用しても、または複数の送信器を使用してもよい。送信器は、一般にはマイクロ波アンテナまたは超音波振動子である。好適な一実施態様においては、米国特許第5,920,285号明細書に記載のように、一連の波動パルスが物体上に送出されるように複数のアンテナ/振動子が順次付勢される。送信器として機能しないアンテナ/振動子は、受信器として機能する(送信アンテナによる受信を含むこともできるが、これは好ましくない)。この場合、何れの時点においても単一の送信器のみが送信を行うことができ、各パルスは周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む。ただし、代わりに、各送信器は、周波数がある範囲にわたって変化する正弦波信号を送信してもよい。他の複数の実施態様においては、複数の掃引周波数信号をずらすことによって、複数の送信器を同時に付勢することができる。あるいは、「符号分割多重」方式を使用してもよい。この方式では、各送信器が固有の符号化信号を送信するため、複数の送信器を同時に付勢することができる。
【0011】
一実施態様において、ステップii)は、部分集合内の出力信号のうちの1つを校正信号として選択するステップを含む。この場合、たとえば、この信号とその部分集合内の他の1つのメンバとの間の自乗差の積分が最小になる信号が選択される。次に、ステップiii)において、この校正信号を他の1つのメンバから減じる。一般には、このプロセスは部分集合のメンバごとに繰り返されるので、校正信号は部分集合のメンバごとに異なる。別の実施態様においては、ステップii)は、部分集合内の出力信号の平均を計算するステップを含む。この平均は、加重平均でもよい。次に、この平均校正信号を部分集合の各メンバから減じる。
【0012】
本発明の第1の態様は、相対的に広帯域の信号処理を必要とする。したがって、一般には、校正信号は、中心周波数の50%より大きい幅を有する範囲にわたる複数の周波数成分を含む。マイクロ波による造影システムにおいては、これは、一般には、1GHzより大きい幅、最も好ましくは4GHzより大きい幅を意味するであろう。
【0013】
本発明の第1の態様は、物体の内部構造を測定するための装置をさらに提供する。この装置は、
a)周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む波動エネルギーを物体上に送出するように構成される1つまたは複数の送信器と、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、複数の出力信号を生成するように構成される複数の受信器と、
c)信号アーチファクトを低減するように構成されるプロセッサとを含み、信号アーチファクトの低減は、
i)出力信号の部分集合を選択するステップであって、部分集合内の各出力信号が同様の距離で隔てられている対の送信/受信アンテナに対応するステップと、
ii)部分集合内の複数の出力信号から周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む1つまたは複数の校正信号を生成するステップと、
iii)部分集合内の複数の出力信号のうちの1つまたは複数から校正信号を減じるステップとによって行われる。
【0014】
本発明の第2の態様は、物体の内部構造を測定するための装置をさらに提供する。この装置は、
a)波動エネルギーを物体上に送出するための送信器と、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、出力を生成するための受信器と、
c)送信器と受信器との間に配置される遮断部材であって、物体の表面からの波動エネルギーの反射を、この反射が受信器に到達する前に、全面的または部分的に遮断するように構成される遮断部材とを含む。
【0015】
本発明の第2の態様は、反射エネルギーを部分的または全面的に遮断し、これによって反射信号アーチファクトを低減するように配置される遮断部材を提供する。
【0016】
遮断部材が送信器と受信器との間の見通し直線に配置される場合は、物体の表面からの反射による信号アーチファクトを低減するだけでなく、送信器と受信器との間の直接結合によるアーチファクトも低減できる。
【0017】
一般には遮断部材は、波を通過させない遮蔽材を含む。レーダの場合、遮蔽材はアルミニウムなどの金属にする。さらに、または代わりに、遮断部材は、波を吸収する減衰材を含んでもよい。好適なケースにおいて、減衰材は遮蔽材基板上の被膜として設けられる。
【0018】
一般には送信器および受信器は、アンテナアレイを備え、アレイ内の各隣接アンテナ対間に遮断部材が配置される。
【0019】
遮断部材は、孔明きメッシュでよいが、連続スクリーンの形態であることが好ましい。
【0020】
本発明の第2の態様は、物体の内部構造を測定する方法をさらに提供する。本方法は、
a)波動エネルギーを物体上に送出するステップと、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、出力を生成するステップと、
c)遮断部材を物体の表面に隣接または接触させて配置するステップと、
d)物体の表面から反射された波動エネルギーを遮断部材によって全面的または部分的に遮断するステップとを含む。
【0021】
本発明の第3の態様は、物体の内部構造を測定するための装置を提供する。この装置は、
a)波動エネルギーを周波数fで送出するように構成される送信器と、
b)周波数fにおいて、反射防止層の屈折率で四分の一波長の厚さを有する反射防止層と、
c)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、出力を生成するための受信器とを含む。
【0022】
本発明の第3の態様は、送信器と受信器との間で物体を経由する経路に置かれ、物体の表面に接触または近接する反射防止層を提供する。反射防止層は、信号波がこの反射防止層に入射すると、物体の表面からの反射波と振幅が同様で位相が反対の反射波によって相殺的干渉が起きるように設計される。これは、所与の屈折率および動作周波数fにおいて四分の一波長の厚さになるように反射防止層の厚さを調整することによって達成される。
【0023】
一般には反射防止層は、樹脂系材料を含み、水含有および/またはアルミニウム含有の樹脂系材料でもよい。
【0024】
反射防止層は曲面、たとえばヒト乳房の輪郭に沿った形状の曲面を有してもよい。
【0025】
送信器は送信を単一周波数で行ってもよいが、送信器は周波数fを含む周波数範囲にわたって波動エネルギーを送出するように構成されることが好ましい。
【0026】
下記の好適な実施態様においては、反射防止層は、単一材料層で構成される。ただし、多層構造も想定しうる。この場合、多層構造の合計厚さは、λ/4に等しいかまたはそれ以上でもよく、多層構造内の1つまたは複数の層の厚さをλ/4にしてもよい。多層構造は、ある入射角範囲およびある周波数範囲にわたってより良好な性能の達成を可能にしうる。
【0027】
本発明の第3の態様は、物体の内部構造を測定する方法をさらに提供する。本方法は、
a)反射防止層を物体と送信器との間に、一般には物体に接触または近接させて、配置するステップと、
b)反射防止層の表面から第1の反射が発生し、物体の表面から第2の反射が発生するように、波動エネルギーを反射防止層を通して物体上に送出するステップと、
c)第1の反射との相殺的干渉によって第2の反射のレベルを低減するステップと、
d)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、出力を生成するステップとを含む。
【0028】
波動エネルギーが通過する送信器と反射防止層との間の媒質の相対誘電率がεであり、反射防止層の相対誘電率がεであり、物体の表面の相対誘電率がεである場合は、反射防止層の材料として一般には中間誘電率値を有する材料が選択される。すなわち、εはεとεとの間になる。
【0029】
反射防止層は物体の重量を少なくとも部分的に支持しうる。
【0030】
本発明の第4の態様は、物体の内部構造を測定する方法を提供する。この方法は、
a)波動エネルギーを物体上に送出するために1つまたは複数の送信器を付勢するステップと、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を複数の受信器によって検出し、複数の出力信号を生成するステップと、
c)物体内の目標点に対応するデータを生成するために複数の出力信号を集束するステップと、
d)物体内の1つまたは複数の追加点を選択するステップであって、各追加点は、送信器および受信器に対して、目標点と等価な位置とされるステップと、
e)各追加点に対応する追加データを生成するために複数の出力信号を集束するステップと、
f)信号アーチファクトを低減するステップとを含み、信号アーチファクトの低減は、
i)追加データから校正データを生成するステップと、
ii)目標点に対応するデータから校正データを減じるステップとによって行われる。
【0031】
本発明の第4の態様は、出力信号に直接作用する代わりに、物体内の目標点に対応するデータに存在する信号アーチファクトを低減する。一般には集束ステップでは、複数の出力信号を時間整合または位相整合する。この集束ステップにおいて、さらに振幅加重係数を各出力信号に加えてもよい。一般には各追加点として、送信器および受信器に対して、対称的に等価な位置にある点が選択される。
【0032】
目標点に対応するデータは、目標点に対応するスカラー量(エネルギーなど)または時変集束信号でもよい。同様に、追加データは、追加点に対応するスカラー量または時変集束信号でもよい。
【0033】
本発明の第4の態様は、物体の内部構造を測定するための装置をさらに提供する。この装置は、
a)波動エネルギーを物体上に送出するように構成される1つまたは複数の送信器と、
b)波動エネルギーの通過に対する物体の影響を検出し、複数の出力信号を生成するように構成される複数の受信器と、
c)プロセッサとを含み、このプロセッサは、
i)物体内の目標点に対応するデータを生成するために複数の出力信号を集束するステップと、
ii)物体内の1つまたは複数の追加点を選択するステップであって、各追加点が、送信器および受信器に対して、目標点と等価な位置とされるステップと、
iii)各追加点に対応する追加データを生成するために複数の出力信号を集束するステップと、
iv)信号アーチファクトを低減するステップとを実行するように構成され、信号アーチファクトの低減は、
(1)追加データから校正データを生成するステップと、
(2)目標点に対応するデータから校正データを減じるステップとによって行われる。
【0034】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様の各方法は、表面からの反射に起因する信号アーチファクトが存在する何れの用途においても実行しうる。たとえば、物体は、パイプまたは他の埋設物体を検出するために調査される土地区域でもよい。物体の別の例として、欠陥の有無を調査する建設構造物の一部などが挙げられる。ただし、物体は一般には、乳房など、人体または動物体の一部である。
【0035】
波動エネルギーは超音波でもよいが、より一般には電磁波エネルギーであり、周波数が1GHzより高く、好ましくは4GHzより高いマイクロ波領域のエネルギーであることが好ましい。
【0036】
電波またはマイクロ波によるシステムの場合は、広い周波数範囲にわたって送信するために相対的に広帯域のアンテナが必要である。好適な一例において、各送信器は、第1のパッチと、第2のパッチと、波動エネルギーを第1および第2のパッチに結合するためのスロットを有する接地面とを具備するスロット供給積層パッチアンテナである。
【0037】
各方法は、個々に実行してもよく、または本発明の他の態様のうちの1つまたは両方と組み合わせて実行してもよい。
【0038】
本発明のさまざまな実施形態を添付図面を参照しながら以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
1 実開口合成レーダ
図1に示す乳癌検出のための実開口合成レーダは、乳房1に近接または接触させたN個(たとえば3個)のアンテナから成るアレイ2を用いて動作する。各アンテナは順番にパルスを送出し、その他の各アンテナで受信された信号y(t)が記録される。パルス発生器8および検出器9は、図1に示すような切り換えマトリックス5を用いて時分割で動作させてもよい。さらに送信または受信経路増幅器(6、7)があれば、これらを時分割で動作させてもよい。
【0040】
同一アンテナで送信および受信をほぼ同時に行うことは難しいのでモノスタティック動作は魅力的でない。さらに送信および受信アンテナの交替は何れの追加情報も発生させないので、記録される総送信数はN(N−1)/2である。
【0041】
次に、複数の信号y(t)を時間整合することによって、記録されたデータは、このアンテナアレイの下方にあるボリューム内の何れかの着目点に合成的に集束される。この時間整合には、送信アンテナから媒質内における任意の着目点を経由して受信アンテナに到達するまでの推定伝播時間Tが用いられる。
【0042】
【数1】

【0043】
式中、wは加重係数であり、着目点経由の送信および受信アンテナ間の往復経路間の予測減衰量の差を補償するため、および/またはさまざまな最適化基準を適用するために適用される。
【0044】
次に、送信パルス幅rに対応する時間帯におけるデータを積算することによって、この点に対応する戻り信号エネルギーを計算してもよい。
【0045】
【数2】

【0046】
v(t)からスカラー量Vを求める代替方法として、1つまたは複数の周波数におけるDFTの振幅を計算する方法、または送出されたパルスを掛ける方法がある。
【0047】
【数3】

【0048】
式中、x(t)は、送出されたパルス波形である。
【0049】
この信号処理アプローチは、本質的には他のタイム・シフト・アンド・サム方式のビーム形成アルゴリズムに類似する(たとえば、S・C・ハグネス(S. C. Hagness),A・タフラヴ(A. Taflove),およびJ・E・ブリッジス(J. E. Bridges)の共著「乳癌検出のためのパルスマイクロ波共焦システムの二次元FDTD解析:固定焦点およびアンテナアレイセンサ(Two−dimensional FDTD analysis of a pulsed microwave confocal system for breast cancer detection: fixed−focus and antenna−array sensors)」,IEEE・トランザクションズ・オン・バイオメディカル・エンジニアリング(IEEE Trans, on Biomed. Eng.),第45巻,p.1470−9,1998年12月、またはE・C・フィアー(E. C. Fear),およびM・A・スタッチリー(M. A. Stuchly)の共著「乳癌のマイクロ波検出(Microwave detection of breast cancer)」,IEEE・トランザクションズ・マイクロウェーブ・セオリー・アンド・テクニックス(IEEE Trans. Microwave Theory and Tech.),第48巻,p.1854−1863,2000年11月を参照)。ただし、アレイ内で可能な送信/受信のあらゆる組み合わせを使用する場合は、ハグネス(Hagness)らおよびフィアー(Fear)らによって説明されているアプローチとは異なり、結果として観察数の増加により処理ゲインおよびクラッタ除去のためのさらなる機会が提供される。
【0050】
2 ヒト乳房内への放射のための高誘電体基板上のアンテナ素子
正常組織と悪性腫瘍との間の誘電特性の好都合な対比の活用は、高分解能を達成するために十分に広帯域の波形の放射および受信にかかっている。これには、広周波数帯域にわたって乳房内に放射するアンテナが必要である。従来のアンテナが人体組織内への放射用に設計されていないことは明らかである。実際に、人体組織の至近距離では、通常、それらの動作に悪影響が及ぼされる。さらに、アンテナは安価に構築でき、アレイへの組み込みに適しており、薄型である必要がある。
【0051】
図2は、乳房造影用に用いられる積層パッチ構成を示す。アンテナは、2つの積層パッチ10、11で構成される。これら積層パッチ10,11は、一般にはε=2.2の誘電体基板上に印刷され、更に、一般にはε=9.8の第2の基板によって接地面から隔てられている。アンテナ設置面のスロット12経由で下側パッチに供給するためにマイクロストリップライン13が使用される。
積層パッチおよびスロット供給は以前からアンテナ設計に用いられていたが、この特定のアンテナは、乳房組織の誘電特性とほぼ表される、一般にε=10の媒質内への放射専用に設計されたものである。ε=9.8の薄型レードーム14がこのアンテナを覆っている。
【0052】
この積層パッチアンテナの設計によって、組織内の計算値で、7.0GHzにおいてψ=0°面でほぼ±35°のビーム幅およびψ=90°面で±30°のビーム幅、およびほぼ72%の帯域幅となった。動作周波数範囲にわたって、このアンテナ設計は所望どおりに大半のエネルギーを乳房内に(15dBより良好な前後電界比で)放射することも分かった。
【0053】
2 皮膚反射を低減するための技法
各アンテナ素子で収集される各信号の主成分は、アンテナ間の相互結合、皮膚からの反射、および腫瘍エコーである。アンテナ間の直接結合は、時間的に早期に発生するので、腫瘍エコーにはそれほど干渉しない。しかしながら、皮膚からの反射に起因する大きな信号アーチファクトは、本願明細書に記載のレーダ方式の利点にもかかわらず、皮膚に近い腫瘍からの反射をマスクする傾向があるので重要な問題となる。皮膚反射を緩和するための技法について、以下の項で検討する。
【0054】
2.1.1 類似経路アルゴリズムを用いた皮膚反射の低減
N個の素子から成る平面アレイは、1つのアンテナで送信され、別のアンテナで受信されたときに発生するN(N−1)/2個の異なる信号を収集する。これらの経路の中には、相互結合と皮膚反射とがほぼ同じである類似経路の集合がいくつか存在する。
【0055】
たとえば、アレイ内で直近対を成すアンテナ同士は、皮膚反射に関して同様の振幅と位相遅れとが観察される。同様に、図3に示すように、隣り合う送信アンテナと受信アンテナの対は、皮膚反射20に関して同様な振幅および位相遅れが観察される。ただし、何れの腫瘍19であっても、腫瘍19からの寄与21は同じにはならない。
【0056】
図3は平らな皮膚表面に隣接する線形アレイの原理を簡略化して示しているが、この概念は乳房などの曲面に沿った二次元アレイにも拡大しうる(図4参照)。
【0057】
この方法は、皮膚反射をかなりの程度まで低減するために活用できる。
【0058】
複数の類似経路からの信号は、以下のように2つの代替方式のどちらかによって処理しうる。
a)代表的な平均信号を作成する際に、各集束信号の若干の時間シフトおよび整合を行う(実験に基づく公差を補償するため)。次に、この平均信号を校正信号として使用し、類似経路集合内の各信号からこの平均信号を減じる。または、
b)類似経路集合内の各信号について、この集合内の信号のうち、第1の信号に最も似ている第2の信号を特定する(2つの信号間の自乗差の積算による)。この「最も似ている」信号を次に校正信号として使用し、この「最も似ている」信号を第1の信号から減じる。または、
c)類似経路集合のメンバのうち、この集合内の残りのすべてのメンバからの平均自乗差が最小のメンバを見つける。次に、この「最も代表的な」信号を校正信号として使用し、他のすべての信号からこの「最も代表的な」信号を減じる。
【0059】
これらの信号は時間領域内の複数のセグメントに分割されてもよく(各セグメントは、送信および受信アンテナ間の結合を引き起こす特定の物理的特徴に起因する、応答の特定の特徴に対応する)、この場合には方法(a)または(b)が各セグメントに一度に適用されてもよい。
【0060】
校正信号が減じられた後、上の第1項で説明した集束アルゴリズムのうちの1つが適用され、各信号中に存在する残留皮膚反射が集束アルゴリズムの処理ゲインによって緩和される。
【0061】
2.1.2 等価位置アルゴリズムを用いた皮膚反射の低減
N個の素子から成るアレイは、1つのアンテナで送信され、別のアンテナで受信されたときに発生するN(N−1)/2個の異なる信号を収集する。図7に示すように体内の着目点Aについて考えると、式(1a)における時間整合およびスケーリング処理によって、点Aに対応する集束信号v(t)が得られる。
【0062】
アレイの各素子は、ほぼ対称形の乳房の周囲に対称的に、またはほぼ対称的に配置されているものと想定する。この場合、このアレイに対して、位置がAと対称的に等価である1つまたは複数の点B、C、Dがさらに存在する。これらの点に対応する集束信号v(t)、v(t)、v(t)は極めて類似し、たとえば、皮膚反射および相互結合に関して同じ成分を含むことが期待されるであろう。アレイの各素子がそれほど対称的には配置されていない場合は、対称的に等価な位置を有する他の点は3つ未満になりうる。
【0063】
次に、この部分集合に含まれる集束信号(v(t),v(t),v(t),v(t))から1つの校正信号を生成し、この校正信号をv(t)から減じてもよい。この方法によって、皮膚反射および相互結合が大幅に低減される。
【0064】
校正信号の形成は、たとえば、以下の方法によって行いうる。
a)代表的な平均信号を作成する際に、各集束信号の若干の時間シフトおよび整合を行う(実験に基づく公差を補償するため)。次に、この平均信号を校正信号として使用し、集合内の各信号からこの平均信号を減じる。または、
b)(v(t),v(t),v(t),v(t))の各メンバについて、この集合内の第1の信号に最も似ている第2の信号を特定する(2つの信号間の自乗差の積算による)。次に、この「最も似ている」信号を校正信号として使用し、この「最も似ている」信号を第1の信号から減じる。または、
c)この集合のメンバのうち、残りのすべてのメンバからの平均自乗差が最小のメンバを見つける。次に、この「最も代表的な」信号を校正信号として使用し、他のすべての信号からこの「最も代表的な」信号を減じる。
d)この部分集合内の集束信号の加重平均を計算する。このような加重平均への寄与は、部分集合内のメンバのうち、適切な信号統計を考慮した上で、他とあまり違わず、したがって共通のバックグラウンドと、それに対応するアーチファクトとを代表することが確認されるメンバにのみ加重することを含みうる。この後者のアプローチが重要であるのは、たとえばA、B、C、またはDのうちの1つが腫瘍位置に対応する場合であり、この場合、信号が平均化から除外されるので、所望の腫瘍応答が損なわれない。
【0065】
(t)から校正信号を直接減じてもよく、この点に対応する信号エネルギーをたとえば式(1b)または(1c)を用いて計算してもよい。あるいは最初に(v(t),v(t),v(t),v(t))のすべてについてスカラーエネルギー値を計算し、次に、集束信号自体ではなく、これらのスカラーエネルギー値を用いて減算を行ってもよい。
【0066】
3.2 遮断スクリーンを用いた皮膚反射の低減
図4のスクリーン23をアンテナ素子間に用いることによって皮膚反射および相互結合を大幅に低減できる。これらのスクリーンを乳房1まで延在させると、皮膚エコー20が排除されるかまたは大幅に減るが、腫瘍エコー21は依然として各アンテナ素子に到達する。この実装において、スクリーンと、皮膚と、アンテナとの間にできた空間22は、健康な乳房組織と電気的性質が同様のマッチング液、たとえば流動パラフィンと水との乳濁液などで充たされた状態とされる。
【0067】
スクリーンは、複数のはね返りおよび共振効果を低減するためにレーダ吸収体薄膜層で両面を覆われたアルミニウム薄板である。各種のレーダ吸収体が入手可能であるが、適切な製品としてエマーソン・アンド・カミング社(Emerson & Cuming)のECCOSORB FGM−40(1mm厚)、ECCOSORB BSR(0.25mm厚、0.5mm厚)、およびECCOSORB FDS(0.75mm厚)が挙げられる。水含有樹脂など、代替の吸収体も使用可能である。
【0068】
スクリーンは、接着、ボルト締め、または溶接など、複数の方法でアンテナ支持構造に取り付けられうる。
【0069】
スクリーンの使用によってアンテナ素子の電力半値幅がわずかに減り、したがって所与の位置に対応するアンテナ対の数が減るものの、利点は依然として大きい。
【0070】
各アンテナ素子および対応する複数のスクリーンのコンピュータシミュレーションは、4.5GHzから9.5GHzの動作周波数範囲にわたって安定しており、かつ周波数にほとんど依存しない放射パターンが得られることを示す。
【0071】
スクリーンの長所を分析するために、乳房造影の解析用に開発されたFDTDモデルを用いて複数の数値シミュレーションが実施された。これらのコンピュータシミュレーションおよびFDTDモデルは、R・ニラバラン(R. Nilavalan),J・リーンデルツ(J. Leendertz),I・J・クラドック(I. J. Craddock),A・プリース(A. Preece),R・ベンジャミン(R. Benjamin)の共著「合成集束技法を用いた乳房腫瘍のマイクロ波検出の数値解析(Numerical Analysis of Microwave Detection of Breast Tumours Using Synthetic Focussing Techniques)」,プロシーディングス・オブ・ジ・IEEE・AP−S・インターナショナル・シンポジウム・アンド・USNC/URSI・ナショナル・ラジオ・サイエンス・ミーティング(Proceedings of the IEEE AP−S International Symposium and USNC/URSI National Radio Science Meeting),米国カリフォルニア州モントレー,2004年6月、に詳細に説明されている。
【0072】
【表1】

【0073】
計算された腫瘍対皮膚の反射率の比を表1に示す(腫瘍からの信号は、バックグラウンド減算技法を用いて正確に計算できる)。腫瘍からの信号に比して皮膚の反射率が20dB減じられることが分かる。
【0074】
3.3 反射防止層を用いた皮膚反射の低減
図5に簡略化されて示されているように、皮膚エコー20は、マッチング液22(想定相対誘電率ε)と、皮膚24(想定相対誘電率ε)と、乳房組織1とを含む3層構造から生じる。総エコーは、2つの界面からの反射と、これらの界面間の複数のはね返りとを含む。
【0075】
皮膚は減衰媒質であるので、最大のエコーは、皮膚上面からの単一反射の結果である。このエコーは、図6に示すように皮膚の次に反射防止(AR)層25を導入することによって減らしうる。
【0076】
この最大エコーのみを考えることによって、近似理論解析は、AR層の相対誘電率εが以下の式(1d)であり、かつ、この層の厚さdが次式(1e)を満足するときに最小の反射が実現されることを示す。
【0077】
【数4】

【0078】
式中、λは自由空間波長である。
【0079】
この近似結果は、無損失媒質の場合は、AR層ではdを四分の一波長にする必要があることを意味する。これは、妥当な近似値までは、損失媒質にも当てはまる。反射および送信機構をより厳密に解析すると、dおよびεに関して若干異なる選択肢が導き出される。
【0080】
このアプローチを検証するために、AR層に対して水含有およびアルミニウム含有の樹脂系材料を用いた実験が考案された。水およびアルミニウムの量を調整することによって、この層を目標値への妥当な近似であったパラメータによって作成できる。この層の厚さは3mm台であった(6GHzの中間点周波数においてほぼλ/4)。
【0081】
反射防止層付きの皮膚模型の反射率と、皮膚模型のみの層の反射率とを乳房組織模型媒質の槽内でネットワーク解析器を用いて測定した。
【0082】
この層の特性は単一周波数6GHzに対して最適化されていたが、この反射防止層は4.5GHzから7GHzまでの周波数範囲にわたって皮膚からの反射信号を10dB超低減した。この周波数範囲の外側であっても、AR層が存在する場合は、この性能が全般的により良好であった。
【0083】
実際には、患者は腹臥位で横たわると予想され、かつ快適さおよび実験精度のために、乳房は、恐らく硬質の成形樹脂材料で作成された、なだらかな曲面状のシェルによって支持されると予想される。上記の結果から、反射防止特性を有するシェルが特に適切な選択肢であろうことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】乳房腫瘍造影システムのシステム概要である。
【図2】積層パッチアンテナ設計の斜視図および断面である。
【図3】アレイ内の複数の類似対を示す断面図である。
【図4】スクリーン付きアンテナ素子の集合の断面図である。
【図5】皮膚エコーを示す概略断面である。
【図6】皮膚に接触している反射防止層を示す概略断面である。
【図7】アレイに対して等価な複数の位置を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の内部構造を測定する方法であって、
a)波動エネルギーを前記物体上に送出するために1つまたは複数の送信器を付勢するステップと、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を複数の受信器によって検出し、複数の出力信号を生成するステップと、
c)前記物体内の目標点に対応するデータを生成するために前記複数の出力信号を集束するステップと、
d)前記物体内の1つまたは複数の追加点を選択するステップであって、各追加点は、前記送信器および受信器に対して前記目標点と等価な位置とされるステップと、
e)各前記追加点に対応する追加データを生成するために前記複数の出力信号を集束するステップと、
f)信号アーチファクトを低減するステップと
を含み、前記信号アーチファクトの低減は、
i)前記追加データから校正データを生成するステップと、
ii)前記目標点に対応する前記データから前記校正データを減じるステップと
によって行われる物体の内部構造を測定する方法。
【請求項2】
前記ステップi)は、前記複数の追加点のうちの1つに対応するデータを選択するステップを含む請求項1に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項3】
前記ステップi)は、前記追加データの平均を計算するステップを含む請求項1に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項4】
前記平均が加重平均である請求項3に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項5】
各送信器はスロット供給積層パッチアンテナであり、
前記スロット供給積層パッチアンテナは、第1のパッチと、第2のパッチと、波動エネルギーを前記第1および前記第2のパッチに結合させるためのスロットを有する接地面とを具備する請求項1から請求項4のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項6】
前記波動エネルギーが、周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項1から請求項5のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項7】
前記波動エネルギーが、中心周波数の50%より大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項6に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項8】
前記波動エネルギーが、1GHzより大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項6または請求項7に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項9】
前記波動エネルギーが、4GHzより大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項8に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項10】
物体の内部構造を測定するための装置であって、
a)波動エネルギーを前記物体上に送出するように構成される1つまたは複数の送信器と、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、複数の出力信号を生成するように構成される複数の受信器と、
c)プロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
i)前記物体内の目標点に対応するデータを生成するために前記複数の出力信号を集束するステップと、
ii)前記物体内の1つまたは複数の追加点を選択するステップであって、各追加点が前記送信器および受信器に対して前記目標点と等価な位置とされるステップと、
iii)各前記追加点に対応する追加データを生成するために前記複数の出力信号を集束するステップと、
iv)信号アーチファクトを低減するステップと
を実行するように構成され、前記信号アーチファクトの低減は、
(1)前記追加データから校正データを生成するステップと、
(2)前記目標点に対応する前記データから前記校正データを減じるステップと
によって行われる物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項11】
前記送信および受信アンテナ間に配置される複数の遮断部材をさらに含み、前記複数の遮断部材が、前記物体の表面からの波動エネルギーの反射を、前記反射が前記受信アンテナに到達する前に、遮断するように配置されている請求項10に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項12】
各送信アンテナはスロット供給積層パッチアンテナであり、
前記スロット供給積層パッチアンテナは、第1のパッチと、第2のパッチと、波動エネルギーを前記第1および前記第2のパッチに結合させるためのスロットを有する接地面とを具備する請求項10または請求項11に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項13】
物体の内部構造を測定する方法であって、
a)周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む波動エネルギーを前記物体上に送出するために1つまたは複数の送信器を付勢するステップと、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を複数の受信器によって検出し、複数の出力信号を生成するステップと、
c)信号アーチファクトを低減するステップと
を含み、前記信号アーチファクトの低減は、
i)出力信号の部分集合を選択するステップであって、前記部分集合内の各出力信号が、同様の距離によって隔てられている対の送信器/受信器に対応するステップと、
ii)前記出力信号の部分集合から1つまたは複数の校正信号を生成するステップであって、前記校正信号が周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含むステップと、
iii)前記部分集合内の前記複数の出力信号のうちの1つまたは複数から前記校正信号を減じるステップと
によって行われる物体の内部構造を測定する方法。
【請求項14】
ステップii)が、前記部分集合内の前記複数の出力信号から1つを選択するステップを含む請求項13に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項15】
ステップii)が、前記部分集合内の出力信号の平均を計算するステップを含む請求項13に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項16】
前記平均が加重平均である請求項15に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項17】
各送信器はスロット供給積層パッチアンテナであり、
前記スロット供給積層パッチアンテナは、第1のパッチと、第2のパッチと、波動エネルギーを前記第1および第2のパッチに結合するためのスロットを有する接地面とを具備する請求項13から請求項16のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項18】
前記校正信号が、中心周波数の50%より大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項13から請求項17のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項19】
前記校正信号が、1GHzより大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項13から請求項18のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項20】
前記校正信号が、4GHzより大きい幅の範囲にわたる複数の周波数成分を含む請求項19に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項21】
物体の内部構造を測定するための装置であって、
a)周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含む波動エネルギーを前記物体上に送出するように構成される1つまたは複数の送信器と、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、複数の出力信号を生成するように構成される複数の受信器と、
c)信号アーチファクトを低減するように構成されるプロセッサと
を含み、前記信号アーチファクトの低減は、
i)出力信号の部分集合を選択するステップであって、前記部分集合内の各出力信号が同様の距離で隔てられている対の送信/受信アンテナに対応するステップと、
ii)前記部分集合内の複数の出力信号から1つまたは複数の校正信号を生成するステップであって、前記校正信号が周波数範囲にわたる複数の周波数成分を含むステップと、
iii)前記部分集合内の前記複数の出力信号のうちの1つまたは複数から前記校正信号を減じるステップと
によって行われる物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項22】
前記送信および受信アンテナ間に配置される複数の遮断部材をさらに含み、前記複数の遮断部材が前記物体の表面からの波動エネルギーの反射を、前記反射が前記受信アンテナに到達する前に、遮断するように配置される請求項21に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項23】
各送信アンテナはスロット供給積層パッチアンテナであり、
前記スロット供給積層パッチアンテナは、第1のパッチと、第2のパッチと、前記波動エネルギーを前記第1および第2のパッチに結合するためのスロットを有する接地面とを具備する請求項21または請求項22に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項24】
物体の内部構造を測定するための装置であって、
a)波動エネルギーを前記物体上に送出するための送信器と、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、出力を生成するための受信器と、
c)前記送信器と受信器との間に配置される遮断部材であって、前記物体の表面からの波動エネルギーの反射を、前記反射が前記受信器に到達する前に、全面的または部分的に遮断するように配置される遮断部材と
を具備する物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項25】
前記遮断部材が遮蔽材を含む請求項24に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項26】
前記遮断部材が減衰材を含む請求項24または請求項25に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項27】
前記遮断部材が多層構造を有する請求項24から請求項26のいずれかに記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項28】
前記送信器および受信器はアンテナアレイを備え、前記アレイ内の各隣接アンテナ対間に遮断部材が配置される請求項24から請求項27のいずれかに記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項29】
前記遮断部材がメッシュまたは連続スクリーンである請求項24から請求項28のいずれかに記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項30】
物体の内部構造を測定する方法であって、
a)波動エネルギーを前記物体上に送出するステップと、
b)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、出力を生成するステップと、
c)遮断部材を前記物体の表面に隣接または接触させて配置するステップと、
d)前記物体の前記表面からの波動エネルギーの反射を前記遮断部材によって全面的または部分的に遮断するステップと
を含む物体の内部構造を測定する方法。
【請求項31】
前記遮断部材が前記物体の前記表面に接触させて配置される請求項30に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項32】
物体の内部構造を測定するための装置であって、
a)波動エネルギーを周波数fで送出するように構成される送信器と、
b)前記周波数fにおいて、前記反射防止層の屈折率で四分の一波長の厚さを有する反射防止層と、
c)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、出力を生成するための受信器と
を具備する物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項33】
前記反射防止層が樹脂系材料を含む請求項32に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項34】
前記反射防止層が水含有樹脂系材料を含む請求項33に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項35】
前記反射防止層がアルミニウムなどの導電粒子を含有する樹脂系材料を含む請求項33または請求項34に記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項36】
前記反射防止層が曲面を有する請求項32から請求項35のいずれかに記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項37】
前記送信器が前記周波数fを含む波長範囲にわたって波動エネルギーを送出するように構成される請求項33から請求項36のいずれかに記載の物体の内部構造を測定するための装置。
【請求項38】
物体の内部構造を測定する方法であって、
a)反射防止層を前記物体と送信器との間に配置するステップと、
b)前記反射防止層の表面から第1の反射が発生し、前記物体の表面から第2の反射が発生するように、波動エネルギーを前記反射防止層を通して前記物体上に送出するステップと、
c)前記第1の反射との相殺的干渉によって前記第2の反射のレベルを低減するステップと、
d)前記波動エネルギーの通過に対する前記物体の影響を検出し、出力を生成するステップと
を含む物体の内部構造を測定する方法。
【請求項39】
前記反射防止層を前記物体に接触させるステップをさらに含む請求項38に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項40】
前記物体の重量を前記反射防止層によって少なくとも部分的に支持するステップをさらに含む請求項39に記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項41】
前記物体が人体または動物体の一部である請求項1から請求項9、請求項13から請求項20、請求項30、請求項31、及び請求項38から請求項40のいずれかに記載の物体の内部構造を測定する方法。
【請求項42】
前記物体が乳房である請求項41に記載の物体の内部構造を測定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−530546(P2008−530546A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554628(P2007−554628)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000303
【国際公開番号】WO2006/085052
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505305754)ザ・ユニヴァーシティ・オブ・ブリストル (3)
【Fターム(参考)】