説明

物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置

【課題】 被検対象の物体にはない特定成分を確実に選択できるようにして異物を確実に特定できるようにし、物体中に異物が混入しているか否かを確実に判別できるようにして判別精度の向上を図る。
【解決手段】 被検対象の物体に、物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なうものであって、予め、異物有りのサンプル物体と異物無しのサンプル物体とに近赤外線を照射し、サンプル物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により特定成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出しておき、被検対象の物体に近赤外線を照射し、被検対象の物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と判別式とから算出された算出結果から物体中の異物の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品等の物体に、物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なう物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置に係り、特に、近赤外領域の光を用いて物体を非破壊的に検査することのできる物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の物体中の異物混入判別方法としては、例えば、特許文献1(特許第4220285号公報)に記載されたものが知られている。
これは、図40に示すように、被検対象の物体Maとしての食品に、光源部100から近赤外領域の白色光を照射し、これによって得られる反射光及び吸光度スペクトルを測定し、吸光度スペクトルに対して二次微分処理を行なって物体と異物との間で異なる二次微分スペクトルを示す波長帯を選択し、この選択した波長帯の光によって得られる分光画像を、例えばCCDカメラ等の撮像手段101によって取得し、選択した波長帯の吸光度スペクトルに対して二次微分処理を行なって二次微分分光画像を作成することによって、物体Maに混入した異物Faを検知している。
【0003】
また、この従来技術のように、被検対象の物体Maに近赤外領域光を照射し、これによって得られる反射光及び吸光度スペクトルを利用して、物体Maを撮像した画像を画像処理して、物体Maに混入した異物Faを検知する方法は、例えば、特許文献2(特開2001−99783号公報)、特許文献3(特開2006−177890号公報)、特許文献4(特開2009−168747号公報)、特許文献5(特開2002−131239号公報)等にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4220285号公報
【特許文献2】特開2001−99783号公報
【特許文献3】特開2006−177890号公報
【特許文献4】特開2009−168747号公報
【特許文献5】特開2002−131239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置Saにおいては、物体Maを撮像した画像を画像処理して、この画像によって物体Ma中に異物Faが混入しているか否かを判別しているので、物体Maの表面に付着している異物Faは検知することができるが、異物Faが物体Maの内部に混入している場合や物体Maを構成する成分が異物Faと類似の形態を有している場合、または異物Faの大きさが小さい場合等には、画像からでは異物Faが特定できないことがあり、そのため、物体Ma中の異物混入の判別精度が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、被検対象の物体を構成する成分以外の特定成分を確実に選択できるようにして異物を確実に特定できるようにし、物体中に異物が混入しているか否かを確実に判別できるようにして判別精度の向上を図った物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の物体中の異物混入判別方法は、被検対象の物体に該物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なう物体中の異物混入判別方法において、予め、異物有りのサンプル物体と異物無しのサンプル物体とに近赤外線を照射し、該サンプル物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により上記特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出しておき、被検対象の物体に近赤外線を照射し、被検対象の物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記判別式とから算出された算出結果から物体中の異物の有無を判別する構成としている。
【0008】
これにより、サンプル物体から受光した反射光あるいは透過光の吸光度における二次微分スペクトルによって被検対象の物体を構成する成分以外の特定成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出するので、異物が物体の内部に混入している場合や物体を構成する成分が異物と類似の形態を有している場合、または異物の大きさが小さい場合であっても、被検対象の物体を構成する成分以外の特定成分を確実に選択できるようになる。そして、この特定成分に起因する帰属波長に係る判別式と、被検対象の物体から受光した光の吸光度とから算出結果を算出するので、特定成分を含む異物を確実に特定できるようになり、そのため、物体中に異物が混入しているか否かを確実に判別できるので判別精度を向上させることができる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記物体は食品であり、上記異物は動物の毛である構成としている。ここでいう動物の毛とは、例えば人体の毛髪や眉毛等の体毛が含まれる概念である。
これにより、食品を非破壊的に検査して食品中に動物の毛が混入しているか否かを判別することができるので、衛生的な食品を生産することができる。
【0010】
また、必要に応じ、上記特定の成分はシスチンである構成としている。
人体の体毛の主成分はケラチンタンパク質であり、80%〜90%の割合で組成されている。このケラチンタンパク質のアミノ酸組成分は、人体の体毛においてはシスチンが14%〜18%を含有しており、このシスチンは、一般的な食品の素材やタンパク質には存在しないか、あるいは存在したとしても痕跡程度である。よって、このシスチンを検出することで、人体の体毛が食品に混入しているか否かを判別することができる。
【0011】
更に、必要に応じ、上記判別式を種類の異なる複数の判別方法から選択した構成としている。
具体的には、判別分析法、重回帰分析法、PLS分析法、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法、SVM法等が挙げられる。複数の判別方法から被検対象の物体や異物に対応した最適な判別方法を選択することができるので、判別精度を向上させることができる。
【0012】
更にまた、必要に応じ、上記複数の判別式から2以上の判別式を用い、これらに対応する判別式により演算し、該各判別結果のうち少なくともいずれかが異物の有を判別したとき異物の混入を有と判別する構成としている。
これにより、1つの判別式による判別結果で物体中に異物の混入が認められないときであっても、他の判別式による判別結果で物体中に異物の混入が認められたときには、異物の混入が有るものとして扱われるため、より確実に異物の混入していない物体を提供することができる。
【0013】
そして、必要に応じ、上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルを二次微分して判別分析法により算出した構成としている。
【0014】
この判別分析法は、必要に応じ、上記判別式を、互いに判別結果が良くなる第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(A−1)の関係を満たす式により算出した構成としている。
【0015】
【数1】

【0016】
一般式(A−1)において、ziは各グループの判別得点、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、a0,a1,a2,・・・anは判別得点ziを決定する係数であり、充分に多い母集団において測定された吸光度及び判別得点により、下記の数式(1−1)が最大値を取るように数式(1−3)を解くことで決定される。
【0017】
【数2】

【0018】
数式(1−1)において、F(a1,a2)はziが係数a1,a2で決定される関数であることを表わし、Sbは各グループ間の変動、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和、つまりグループ全体の変動である。
数式(1−2)において、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和でグループ全体の変動、Swはグループ内の判別得点とその平均の差の平方和の総和でグループ内での変動、Sbは各グループ内の判別得点とグループ全体の判別得点の平均の差の平方和の総和で各グループ間の変動である。
【0019】
また、この判別分析法は、必要に応じ、上記判別式を、予め異物の有無が既知のサンプル物体について判別得点を基に数種のグループに分けて各グループ内または各グループ間の夫々の平均値や重心位置からのマハラノビスの汎距離を計算し、被検体の吸光度を測定し、その吸光度から既知グループと被検体のマハラノビスの汎距離とからどのグループに近いかを第1〜n波長の吸光度を変数とし、下記の一般式(A−2)の関係を満たす式により算出した構成としている。
【0020】
【数3】

【0021】
一般式(A−2)においてDはグループiにおけるマハラノビスの汎距離、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、s11・・・snnは各グループ、グループ間の分散共分散行列であり、このD1、D2について計算しておく。被検体について測定した吸光度から既知のグループのD1、D2のどちらに近いかでどのグループに属するかを判別する。
【0022】
本発明による物体中の異物混入判別方法の特徴は、食品等の物体に混入した異物の特定成分に起因する帰属波長の波長域を見出し、その波長域を用いて物体中に異物が混入しているか否かを判別する点である。即ち、異物有りのサンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルとの重回帰分析によって、先ず、相関係数の高い第1波長を求め、次に、相関係数の高い第2〜n波長を求める。
即ち、上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分して重回帰分析法により算出した構成としている。
【0023】
具体的には、上記判別式を、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(B)の関係を満たす式により算出した構成としている。
【0024】
【数4】

【0025】
一般式(B)において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するにあたり、先ず、人為的に上記異物を混入したサンプル物体の吸光度と上記異物が混入されていないサンプル物体の吸光度との判別分析によって求められた上記異物に帰属する相関係数が0.800以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との判別分析によって上記異物に帰属し該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の高い相関係数となる第2波長(λ2)の波長域を選択し、それから、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記異物に帰属し上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の波長域を選択し、このように第1波長(λ1)〜第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記異物に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上となる第n波長(λn)の波長域を選択する。
【0026】
また、必要に応じ、上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してPLS(Partial least square projection to Latent Structure)分析法により算出した構成としている。
【0027】
更に、必要に応じ、上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション(Back propagation)法により算出した構成としている。
【0028】
更にまた、必要に応じ、上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してSVM(Saport Vecter Machine)法により算出した構成としている。
【0029】
また、必要に応じ、上記各判別式において、1100nm〜2500nmの範囲の近赤外領域の波長から統計学的に優位な波長を選択する構成としている。
【0030】
更に、必要に応じ、判別分析法,重回帰分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法記載の各判別式における波長を、第1波長を1320〜1460nm、1530〜1542nm、1770〜1776nm、2154〜2206nmの範囲から選択し、第2波長を1144〜1158nm、1252〜1276nm、1320〜1338nm、1346〜1384nm、1406〜1434nm、1470〜1510nm、1598〜1650nmの範囲から選択し、第3波長を1100〜1138nm、1230〜1324nm、1352〜1378nm、1394〜1428nm、1480〜1502nm、1540〜1580nm、1610〜1656nm、1664〜1696nm、1742〜1750nm、1760〜1776nm、1816〜1850nm、1880〜1890nm、2112〜2120nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第4波長を1100〜1122nm、1146〜1168nm、1250〜1282nm、1350〜1382nm、1558〜1576nm、1676〜1696nm、1740〜1752nm、1808〜1866nm、2124〜2140nm、2258〜2282nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第5波長を1100〜1142nm、1152〜1210nm、1248〜1326nm、1394〜1420nm、1590〜1640nm、1880〜1884nm、2400〜2420nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしている。
【0031】
望ましくは、第1波長を2158〜2186nmの範囲から選択し、第2波長を1606〜1640nmの範囲から選択し、第3波長を1250〜1298nmの範囲から選択し、第4波長を1682〜1694nmの範囲から選択し、第5波長を1278〜1322nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長の組み合わせである。
より望ましくは、第1波長として2172nm、第2波長として1618nm、第3波長として1260nm、第4波長として1692nm、第5波長として1134nmを選択し、これらの波長の組み合わせである。
【0032】
別の組み合わせとして、第1波長を1354〜1386nm、1518〜1540nm、1578〜1612nm、1692〜1694nm、1734〜1744nm、1810〜1870nm、2048〜2070nm、2150〜2202nmの範囲から選択し、第2波長を1352〜1386nm、1566〜1618nm、1682〜1694nm、1732〜1748nm、1810〜1872nm、2048〜2086nm、2152〜2166nm、2190〜2198nm、2252〜2266nm、2322〜2334nmの範囲から選択し、第3波長を1782〜1808nm、2448〜2454nmの範囲から選択し、第4波長を1222〜1228nm、1276〜1286nm、1362〜1380nm、1572〜1606nm、1726〜1740nm、1810〜1844nm、2042〜2088nm、2150〜2166nm、2258〜2272nmの範囲から選択し、第5波長を1372〜1392nm、1524〜1548nm、1834〜1878nm、2190〜2214nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしている。
【0033】
望ましくは、第1波長を2154〜2196nmの範囲から選択し、第2波長を1736〜1744nmの範囲から選択し、第3波長を1798〜1806nmの範囲から選択し、第4波長を2046〜2074nmから選択し、第5波長を1382〜1392nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長の組み合わせである。
より望ましくは、第1波長として2162nm、第2波長として1740nm、第3波長として1804nm、第4波長として2054nm、第5波長として1388nmを選択し、これらの波長の組み合わせである。
【0034】
そして、上記の各判別式においては、第1波長の選択後に、多重共線性を示さない波長域として第16波長まで導き出すようにしている。
【0035】
また、上記目的を達成するため、本発明の物体中の異物混入判別装置は、物体に該物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なう物体中の異物混入判別装置において、上記被検対象の物体に近赤外領域の光を照射する光源部と、この物体からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、該受光部が受光した光の吸光度に基づいて上記被検対象の物体中の異物の有無を判別する制御部とを備え、上記制御部を、予め、異物有りのサンプル物体と異物無しのサンプル物体とに照射され該サンプル物体から反射あるいは透過された近赤外領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により算出された上記特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を記憶する判別式記憶機能と、上記受光部が受光した光の吸光度と上記判別式とから算出された算出結果から物体中の異物の有無を判別する異物判別機能とを備えて構成している。
【0036】
この場合、上記制御部における判別式記憶機能が記憶する判別式と選択される近赤外線の波長との組み合わせは、上記何れか記載の判別式から選択される構成とすることが有効である。
これにより、物体中に異物が混入しているか否かを精度良く判別することができる。
【0037】
また、必要に応じ、被検対象の物体が載置されて駆動され、該載置された物体を、上記光源部からの光が照射されるとともに該物体からの反射光あるいは透過光を上記受光部で受光可能な検査位置に順次搬送する搬送部を備えた構成としている。
これにより、多数の被検対象の物体を容易に順次検査していくことができるので、作業性を向上させることができる。
【0038】
更にまた、必要に応じ、上記光源部を、光ファイバーによって光を出力するとともに該光ファイバーの導波路を備えて構成している。
これにより、光源部から照射される近赤外領域の光に含まれる多数の波長域を一斉に被検対象の物体に確実に照射することができる。
【0039】
また、必要に応じ、上記受光部を、上記被検対象の物体からの反射光あるいは透過光を受光する複数の受光素子を備えて構成している。この場合、上記受光素子を光ファイバーで構成することが有効である。
これにより、被検対象の物体からの反射光あるいは透過光に含まれる多数の波長域を確実に受光することができる。
【0040】
更に、必要に応じ、上記制御部は、遠隔操作機能を備えた構成としている。
これにより、被検対象の物体の検査を、場所を問わず行なえるので、装置の汎用性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置によれば、サンプル物体から受光した反射光あるいは透過光の吸光度における二次微分スペクトルによって被検対象の物体を構成する成分以外の特定成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出するので、異物が物体の内部に混入している場合や物体を構成する成分が異物と類似の形態を有している場合、または異物の大きさが小さい場合であっても、被検対象の物体を構成する成分以外の特定成分を確実に選択できるようになる。そして、この特定成分に起因する帰属波長に係る判別式と、被検対象の物体から受光した光の吸光度とから算出結果を算出するので、特定成分を含む異物を確実に特定できるようになり、そのため、物体中に異物が混入しているか否かを確実に判別できるので判別精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置における制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置における制御フローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御フローであって、サンプル測定と判別ルーチンの制御フローを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る制御フローであって、異物判別ルーチンの制御フローを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実験例(1−1)に係り、判別分析の判別式の精度を示す図である。
【図8】本発明の実験例(1−1)に係り、判別分析での判別結果を示す図である。
【図9】本発明の実験例(1−1)に係り、判別分析での判別率を示す図である。
【図10】本発明の実験例(1−2)に係り、判別分析の判別式の精度を示す図である。
【図11】本発明の実験例(1−2)に係り、判別分析での判別結果を示す図である。
【図12】本発明の実験例(1−2)に係り、判別分析での判別率を示す図である。
【図13】本発明の実験例(2−1)に係り、シスチンと髪の毛の吸光度二次微分スペクトルを示す図である。
【図14】本発明の実験例(2−1)に係り、重回帰分析の判別式の精度を示す図である。
【図15】本発明の実験例(2−1)に係り、重回帰分析での判別結果を示す図である。
【図16】本発明の実験例(2−1)に係り、重回帰分析の判別率を示す図である。
【図17】本発明の実験例(2−2)に係り、重回帰分析の判別式の精度を示す図である。
【図18】本発明の実験例(2−2)に係り、重回帰分析での判別結果を示す図である。
【図19】本発明の実験例(2−2)に係り、重回帰分析の判別率を示す図である。
【図20】本発明の実験例(3)に係り、PLS法の判別式の精度を示す図である。
【図21】本発明の実験例(3)に係り、PLS法での判別結果を示す図である。
【図22】本発明の実験例(3)に係り、PLS法の判別率を示す図である。
【図23】本発明の実験例(4−1)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式の精度を示す図である。
【図24】本発明の実験例(4−1)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法での判別結果を示す図である。
【図25】本発明の実験例(4−1)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別率を示す図である。
【図26】本発明の実験例(4−2)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式の精度を示す図である。
【図27】本発明の実験例(4−2)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法での判別結果を示す図である。
【図28】本発明の実験例(4−2)に係り、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別率を示す図である。
【図29】本発明の実験例(5−1)に係り、SVM法を利用した学習成績を示す図である。
【図30】本発明の実験例(5−1)に係り、SVM法における選択波長による判別学習成績を示す図である。
【図31】本発明の実験例(5−2)に係り、SVM法による判別式を用いた判別結果を示す図である。
【図32】本発明の実験例(5−3)に係り、SVM法による判別式を用いた判別結果を示す図である。
【図33】本発明の実験例(6−1)に係り、判別分析法,重回帰分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式を組み合わせた場合の判別結果を示す図である。
【図34】本発明の実験例(6−1)に係り、判別分析法,重回帰分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式を組み合わせた場合の判別率を示す図である。
【図35】本発明の実験例(6−2)に係り、判別分析法,重回帰分析法,PLS法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式を組み合わせた場合の判別結果を示す図である。
【図36】本発明の実験例(6−2)に係り、判別分析法,重回帰分析法,PLS法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の判別式を組み合わせた場合の判別率を示す図である。
【図37】本発明の実験例(6−3)に係り、判別分析法,重回帰分析法,PLS法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法の判別式を組み合わせた場合の判別結果を示す図である。
【図38】本発明の実験例(6−3)に係り、判別分析法,重回帰分析法,PLS法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法の判別式を組み合わせた場合の判別率を示す図である。
【図39】本発明の別の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置を示す図である。
【図40】従来の物体中の異物混入判別装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別方法及び物体中の異物混入判別装置を説明する。本物体中の異物混入判別方法は、本物体中の異物混入判別装置によって実現されるので、本物体中の異物混入判別装置の作用において説明する。
【0044】
本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置は、被検対象の物体としての食品中に、食品にはない特定成分を含む異物としての人体の体毛が混入されているか否かを判別するものである。ここで、食品とは、食品素材そのもの,加工食品,調理品等食用に供されるものであればどのようなものも含む。また、ここで、人体の体毛とは、毛髪,眉毛,まつ毛等を含む。
【0045】
また、ここで、特定成分とはシスチンである。人体の体毛の主成分はケラチンタンパク質であり、80%〜90%の割合で組成されている。このケラチンタンパク質のアミノ酸組成分は、人体の体毛においてはシスチンが14%〜18%を含有しており、このシスチンは、一般的な食品の素材やタンパク質には存在しないか、あるいは存在したとしても痕跡程度である。よって、このシスチンを検出することで、人体の体毛が食品中に混入しているか否かを判別することができる。
【0046】
図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置Sは、機台1と、機台1に設けられ被検対象の物体Mが載置されて駆動され載置された物体Mを搬送する搬送部10と、被検対象の物体Mに近赤外領域の光を照射する光源部20と、この物体Mからの反射光あるいは透過光を受光する受光部30と、受光部30が受光した光の吸光度に基づいて被検対象の物体M中の異物Fの有無を判別する制御部40とを備えて構成されている。
【0047】
搬送部10は、被検対象の物体Mが載置されて駆動され、載置された物体Mを、光源部20からの光が照射されるとともに物体Mからの反射光あるいは透過光を受光部30で受光可能な検査位置に順次搬送するもので、ベルトコンベア10aで構成されている。
【0048】
光源部20は、搬送部10の上方であって機台1に設けられる仕切板2上に載置され、光ファイバーによって白色光を出力するとともに光ファイバーの導波路を備えて構成されている。仕切板2には、図示しない孔が形成されており、この孔を通して光源部20からの光が被検対象の物体Mに照射される。また、この仕切板2には、図示しないが、光源部20の作動によって発せられる熱を外部に逃がすためのパンチ穴が複数形成されている。
また、この光源部20には、図示しないシャッターが内蔵されており、シャッターにはリファレンス測定用基準白板が設置されている。
【0049】
受光部30は、搬送部10の上方であって機台1に設けられる仕切板2上に載置され、等角度関係で設けられ被検対象の物体Mからの反射光あるいは透過光を受光する複数の受光素子31を備えて構成されている。仕切板2には、図示しない孔が形成されており、この孔を通して被検対象の物体Mからの反射光あるいは透過光を受光する。また、この仕切板2には、図示しないが、受光部30の作動によって発せられる熱を外部に逃がすためのパンチ穴が複数形成されている。また、この受光部30には、図示しないシャッターが内蔵されており、シャッターにはリファレンス測定用基準白板が設置されている。
また、搬送部10の下方であって機台1に設けられる載置板3上に受光部30からの光を波長域毎に分光して抽出する分光部50が設けられている。この分光部50は、受光部30から送られた光を単波長の光に分光する音響光学素子(図示せず)を備えている。
受光素子31は光ファイバーで構成され、直列または並列に分光部50に接続され、分光部50から制御ケーブル51を介して制御部40内の電気回路に接続されて信号処理を行なう。
【0050】
全体の信号処理は以下のようにして行なわれる。各受光素子31によって拡散反射光が検出され、受光部30の光ファイバーによって分光部50に送られる。この分光部50では、光を波長域毎に分光するとともに、その光の強さによる電気信号に変換して抽出する。その後、制御ケーブル51を介して制御部40内の電気回路に接続する。図3に示すように、受光素子31から分光部50を通して変換された電気信号は、制御部40に伝達され、制御部40に設けられた通信部41を通して判別式記憶機能等を備えた総合制御演算処理部42に送られて異物Fの有無を判別する。
【0051】
制御部40は、予め、異物有りのサンプル物体Mと異物無しのサンプル物体Mとに照射されサンプル物体Mから反射あるいは透過された近赤外領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により算出された特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を記憶する判別式記憶機能と、受光部30が受光した光の吸光度と判別式とから算出された算出結果から物体M中の異物Fの有無を判別する異物判別機能とを備えて構成されている。
【0052】
この制御部40は、図3に示すように、通信部41と、判別式記憶機能,異物判別機能,処理履歴記憶機能,インターネット通信機能,光量制御機能,結果表示機能を備えた総合制御演算処理部42と、光源部20の駆動モータ等を制御するモータ制御回路43と、音響光学素子を制御する分光制御回路44と、動作命令部45とを備えて構成されている。
【0053】
制御部40の総合制御演算処理部42における判別式記憶機能は、判別分析記憶機能,回帰式記憶機能,ニューロ判別機能を備えている。
判別分析記憶機能は判別分析法によって算出された判別式を記憶する機能であり、回帰式記憶機能は重回帰分析法によって算出された判別式を記憶する機能であり、ニューロ判別機能は、ニューラルネットワーク法(本実施の形態ではバックプロパゲーション(BP)及びサポートベクターマシン(SVM)の2種類)によって算出された判別式を記憶する機能である。
【0054】
また、制御部40の総合制御演算処理部42における異物判別機能は、数種の判別分析方法を搭載し、その各種の結果やパラメータが算出され、これらの数値から最適な結果を判別する計算(演算)機能である。
【0055】
更に、制御部40の総合制御演算処理部42における処理履歴記憶機能は、サンプルの測定個数の累積と、判別結果のOK及びNGの累積結果と、その時系列で蓄積して記憶しておく機能である。
【0056】
更にまた、制御部40の総合制御演算処理部42におけるインターネット通信機能は、遠隔地で使用しているときに、その判別状況やシステムの状態を把握するため、また、アプリケーション(判別手法)のバージョンアップ等のメンテナンスを遠隔操作で行なうための機能である。本実施の形態では使用していない機能であるが、このインターネット通信機能を利用することにより、被検対象の物体Mの検査を、場所を問わず行なえるので、装置Sの汎用性を向上させることができる。
【0057】
また、制御部40の総合制御演算処理部42における光量制御機能は、ランプ交換や光沢の差が大きい物体Mの測定を行なうときに、分光部50内の光検出センサの適切なレベルで測定が行なえるように光源の光量及び分光部50内のセンサの感度を調整し、常時適切な測定を行なうことができるようにする機能である。
【0058】
更に、制御部40の総合制御演算処理部42における結果表示機能は、判別結果を後述の表示部46に表示するための機能である。
【0059】
図1中、符号46は、制御部40に設けられたCRT等からなる表示部である。データは表示部46に表示される。表示部46の表示は画面操作部(図示せず)で操作され、入力設定画面、判別結果表示画面、エラー表示画面等、適宜に切り換わって表示可能になっている。計測中にアニメ等を表示しても良い。尚、判別結果をLCDパネルに表示しても良い。また、判別結果を音声出力するようにしても良い。更に、外部へのデータ出力インターフェースを設けても良い。
また、図1中、符号47は、制御部40に設けられた設定パネルである。この設定パネル47は、ランプ点灯累積時間の確認、エラー解除、日付時間のセット確認、分光部動作確認、各機構のマニュアル動作へ移行と解除等を行なうものである。
【0060】
更に、図1中、符号48は、制御ボタンであり、スタートボタンとストップボタンで構成されている。スタートボタンを押すと判別プログラムを実行し、ストップボタンを押すと判別プログラムを停止させる。判別プログラムが停止した状態で再度スタートボタンを押すとプログラムを再開する。
更にまた、図1中、符号4は、装置Sに電源を供給するメイン電源供給スイッチであり、符号49は、制御部40及び光源部20に電源を供給する制御部用電源であり、符号52は、分光部50に電源を供給する分光部用電源である。この分光部用電源52は、ノイズを除去するためにリップルノイズの少ないリニア式電源を用いている。
【0061】
また、図1中、符号5は、緊急時に装置Sのプログラム及び作動を停止させる緊急停止ボタンであり、符号6は、制御部40,光源部20,受光部30,制御部用電源49等の作動による熱を機台1の外部に逃がすための排熱ファンである。この排熱ファン6からは迷光や外乱光が入射してくることがあるが、仕切板2に設けた複数のパンチ穴によりこれらの光は遮蔽される。
更に、図1中、符号7は、光源部20,受光部30,分光部50,制御部40までの信号の伝送のための制御ケーブル51を機台1内に出し入れ可能に収納する制御ケーブル配線口であり、符号8は、搬送部10によって搬送されてきた物体Mを検知するサンプル検知センサである。このサンプル検知センサ8は2つ設けられており、これによって検知間隔によって搬送スピードをチェックして適切なタイミングでシャッター開放指示やサンプル測定を行なうことができる。また、作業者のミスで搬送速度が変更された場合でも、自動で速度認識するので対応が可能となる。
【0062】
そして、制御部40の総合制御演算処理部42における判別式記憶機能が記憶する判別式と選択される近赤外線の波長との組み合わせは、以下のように決定される。
【0063】
詳しくは、上記の装置Sを用いて、予め、異物有りのサンプル物体Mと異物無しのサンプル物体Mとに近赤外線を照射し、サンプル物体Mからの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出しておく。
【0064】
判別式は、種類の異なる複数の判別方法から選択される。本実施の形態では、判別分析法、重回帰分析法、PLS分析法、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法、SVM法の5つの判別方法を選択する。以下、各分析法について詳細に説明する。
【0065】
<判別分析法(その1)>
サンプル物体Mから受光した光の吸光度スペクトルを二次微分して判別分析法により算出した判別式は、互いに判別結果が良くなる第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(A−1)で構成されている。
【0066】
【数5】

【0067】
一般式(A−1)において、ziは各グループの判別得点、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、a0,a1,a2,・・・anは判別得点ziを決定する係数であり、充分に多い母集団において測定された吸光度及び判別得点により、下記の数式(1−1)が最大値を取るように数式(1−3)を解くことで決定される。
【0068】
【数6】

【0069】
数式(1−1)において、F(a1,a2)はziが係数a1,a2で決定される関数であることを表わし、Sbは各グループ間の変動、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和、つまりグループ全体の変動である。
数式(1−2)において、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和でグループ全体の変動、Swはグループ内の判別得点とその平均の差の平方和の総和でグループ内での変動、Sbは各グループ内の判別得点とグループ全体の判別得点の平均の差の平方和の総和で各グループ間の変動である。
【0070】
<判別分析法(その2)>
この判別分析法により算出した判別式としては、別の判別方法によっても算出できる。詳しくは、判別式を、予め異物Fの有無が既知のサンプル物体Mについて判別得点を基に数種のグループに分けて各グループ内または各グループ間の夫々の平均値や重心位置からのマハラノビスの汎距離を計算し、被検体の吸光度を測定し、その吸光度から既知グループと被検体のマハラノビスの汎距離とからどのグループに近いかを第1〜n波長の吸光度を変数とし、下記の一般式(A−2)の関係を満たす式により算出している。
【0071】
【数7】

【0072】
一般式(A−2)においてDはグループiにおけるマハラノビスの汎距離、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、s11・・・snnは各グループ、グループ間の分散共分散行列であり、このD1、D2について計算しておく。被検体について測定した吸光度から既知のグループのD1、D2のどちらに近いかでどのグループに属するかを判別する。
【0073】
<重回帰分析法>
また、サンプル物体Mから受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分して重回帰分析法により算出した判別式は、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(B)で構成されている。
【0074】
【数8】

【0075】
一般式(B)において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するにあたり、先ず、人為的に異物Fを混入したサンプル物体Mの吸光度と異物Fが混入されていないサンプル物体Mの吸光度との判別分析によって求められた異物Fに帰属する相関係数が0.800以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との判別分析によって異物Fに帰属し第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の高い相関係数となる第2波長(λ2)の波長域を選択し、それから、第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって異物Fに帰属し第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の波長域を選択し、このように第1波長(λ1)〜第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって異物Fに帰属し第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上となる第n波長(λn)の波長域を選択する。
【0076】
<PLS法>
また、サンプル物体Mから受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してPLS(Partial least square projection to Latent Structure)分析法により算出した判別式を用いている。
【0077】
<ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法>
更に、サンプル物体Mから受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション(Back propagation)法により算出した判別式を用いている。
【0078】
<SVM法>
更にまた、サンプル物体Mから受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してSVM(Saport Vecter Machine)法により算出した判別式を用いている。
【0079】
また、これらの各判別式において、1100nm〜2500nmの範囲の近赤外領域の波長から統計学的に優位な波長を選択している。
【0080】
詳しくは、判別分析法,重回帰分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法については、以下の波長を用いる。即ち、各判別式における波長を、第1波長を1320〜1460nm、1530〜1542nm、1770〜1776nm、2154〜2206nmの範囲から選択し、第2波長を1144〜1158nm、1252〜1276nm、1320〜1338nm、1346〜1384nm、1406〜1434nm、1470〜1510nm、1598〜1650nmの範囲から選択し、第3波長を1100〜1138nm、1230〜1324nm、1352〜1378nm、1394〜1428nm、1480〜1502nm、1540〜1580nm、1610〜1656nm、1664〜1696nm、1742〜1750nm、1760〜1776nm、1816〜1850nm、1880〜1890nm、2112〜2120nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第4波長を1100〜1122nm、1146〜1168nm、1250〜1282nm、1350〜1382nm、1558〜1576nm、1676〜1696nm、1740〜1752nm、1808〜1866nm、2124〜2140nm、2258〜2282nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第5波長を1100〜1142nm、1152〜1210nm、1248〜1326nm、1394〜1420nm、1590〜1640nm、1880〜1884nm、2400〜2420nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしている。
【0081】
望ましくは、第1波長を2158〜2186nmの範囲から選択し、第2波長を1606〜1640nmの範囲から選択し、第3波長を1250〜1298nmの範囲から選択し、第4波長を1682〜1694nmから選択し、第5波長を1278〜1322nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長の組み合わせである。
より望ましくは、第1波長として2172nm、第2波長として1618nm、第3波長として1260nm、第4波長として1692nm、第5波長として1134nmを選択し、これらの波長の組み合わせである。
【0082】
別の組み合わせとして、第1波長を1354〜1386nm、1518〜1540nm、1578〜1612nm、1692〜1694nm、1734〜1744nm、1810〜1870nm、2048〜2070nm、2150〜2202nmの範囲から選択し、第2波長を1352〜1386nm、1566〜1618nm、1682〜1694nm、1732〜1748nm、1810〜1872nm、2048〜2086nm、2152〜2166nm、2190〜2198nm、2252〜2266nm、2322〜2334nmの範囲から選択し、第3波長を1782〜1808nm、2448〜2454nmの範囲から選択し、第4波長を1222〜1228nm、1276〜1286nm、1362〜1380nm、1572〜1606nm、1726〜1740nm、1810〜1844nm、2042〜2088nm、2150〜2166nm、2258〜2272nmの範囲から選択し、第5波長を1372〜1392nm、1524〜1548nm、1834〜1878nm、2190〜2214nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしている。
【0083】
望ましくは、第1波長を2154〜2196nmの範囲から選択し、第2波長を1736〜1744nmの範囲から選択し、第3波長を1798〜1806nmの範囲から選択し、第4波長を2046〜2074nmから選択し、第5波長を1382〜1392nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長の組み合わせである。
より望ましくは、第1波長として2162nm、第2波長として1740nm、第3波長として1804nm、第4波長として2054nm、第5波長として1388nmを選択し、これらの波長の組み合わせである。
【0084】
従って、この実施の形態に係る物体中の異物混入判別装置を用いて、被検対象の物体Mに異物Fが混入しているか否かを判別するときは、以下のようになる。
制御部40の総合制御演算処理部42においては、判別式記憶機能が記憶する判別式と、選択される近赤外線の波長との組み合わせが設定されている。図4乃至図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0085】
図4に示すように、メイン電源供給スイッチ4を押して制御部用電源49,分光部用電源52等に電気を供給する。メイン電源供給スイッチ4が入れられると、制御部40が起動し、分光部50やセンサ、ランプ等の各機構のチェックを行なう(1−1)。このとき表示部46にはシステムの初期化中を示す画面が表示され表示灯は黄色が点灯(1−2)。各機構のチェック動作完了後に吸光度算出の基準となるリファレンス波形を計測(1−3)し、これを制御部40内部の記憶装置に記憶しておく(1−4)。その後メイン画面が表示され表示灯は緑色が点灯(1−8)。その間に設定パネル47から設定値呼び出し操作(1−5)があればランプ点灯累積時間や日付時間等の確認用画面が表示される(1−6)。判別計測を行なうには設定パネル47を操作しメイン画面へ戻る(1−7)。
【0086】
被検対象の物体Mを搬送部10に載置し、メイン画面の表示灯が緑色の時に制御ボタン48のスタートスイッチを押す(1−9)。スタートスイッチを押すと、サンプル測定(被検対象の物体Mの測定)と判別ルーチンを実行する(1−10)。
【0087】
このサンプル測定(被検対象の物体Mの測定)と判別ルーチンにおいては、図5に示すように、始めに制御部40より搬送部10のベルトコンベア10aの動作指示がされ(2−1)、被検対象の物体Mを搬送する。搬送されてきた被検対象の物体Mはサンプル検出センサ8の入力により被検対象の物体Mの有無を検知(2−2)し、光源部20及び受光部30の光源前のシャッターを開放指示する(2−3)。シャッターが開放されることで被検対象の物体Mに白色光が照射され、その反射光あるいは透過光を受光部30内の検出部より受光し、光ファイバーで分光部50に伝送され、分光部50にて近赤外線の波長の強度を波長域毎に電圧変換して抽出し、制御ケーブル51にて制御部40へ伝送する(2−4)。反射光の強度スペクトルを得て異物判別ルーチンにより異物Fの有無の判別分析を行なう(2−5)。反射光あるいは透過光の検出を完了するとシャッター閉鎖指示によりシャッターが閉鎖する(2−6)。
【0088】
異物判別ルーチンにおいては、図6に示すように、分光部50より伝送された反射強度(反射スペクトル)についてノイズ除去処理を施し(3−1、3−2)、初期化時に記憶したリファレンス波形を読込み(3−3)、測定サンプル(被検対象の物体M)の近赤外線の吸光度を算出する(3−4)。その吸光度について標準化処理を行ない(3−5)、更に二次微分処理を施し(3−6)、その二次微分スペクトルについてセンタリングとスケーリング処理を施す(3−7)。このスペクトルを用いて、制御部40に予め記憶してある判別分析(3−8),重回帰分析(3−9),PLS分析(3−10),ニューラルネットワーク分析のバックプロパゲーション(3−11),サポートベクタマシン(3−12)の手法によりそれぞれの判別得点及びパラメータを計算する。各判別方法による判別得点を用い、その最適な組合せ比較(標準化比較)を行ない(3−13)、最終判別結果を算出する(3−14)。
【0089】
サンプル測定(被検対象の物体Mの測定)を終えると、図4に戻り、その判別結果とこれまでの判別結果の累計を表示する(1−13)。その間に各機構にてエラー発生や非常停止ボタンが押されると(1−11)、エラー発生画面が表示され表示灯は赤色が点灯する(1−12)。復帰するにはランプ、分光部50、センサ等の機構をチェックすることが必要。判別結果やサンプル測定(被検対象の物体Mの測定)時の反射スペクトルは制御部40内の記憶機能に記憶されていく。この流れは制御ボタン48のストップボタンが押されるまで繰り返し実行される(1−15)。
【0090】
次に、実験例について説明する。
(実験例1)
先ず、判別分析法により算出した判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0091】
(実験例1−1)
この実験は、判別式を作成するための母集団として、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、その反射光を検出し、吸光度を計算し標準化処理を行ない、二次微分処理、スケーリング及びセンタリングを行ない、そのスペクトルについて判別式を求めた。
【0092】
判別式は、シスチンの近赤外線吸収バンドに従い、関連するN−H結合、S−H結合に吸収があるとされている、2054nm、2162nm、1740nmと2つの波長を使用した。このときの判別式は、その係数が、a0=0、a1=0.215、a2=2.164、a3=0.272、a4=−1.492、a5=−0.508で、第1波長λ1=2054nm、第2波長λ2=2162nm、第3波長λ3=1740nm、第4波長λ4=1604nm、第5波長λ5=1388nmとなった。この結果、図7乃至図9に示すように、判別率は、異物あり判別で98%、異物なし判別で100%となった。
【0093】
(実験例1−2)
この実験は、判別式を作成するための母集団として、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、その反射光を検出し、吸光度を計算し標準化処理を行ない、二次微分処理、スケーリング及びセンタリングを行ない、そのスペクトルについて判別式を求めた。このとき、更に精度を上げるために各グループとのマハラノビスの汎距離も吟味した。
【0094】
判別式は、ステップワイズ変数選択法により、波長選択をステップワイズ変数増加の基準値の投入F値2.0、除去F値2.0として行なった。このときの判別式は、その係数が、a0=0、a1=−0.525、a2=1.064、a3=1.021、a4=−1.191、a5=1.649で、第1波長λ1=1134nm、第2波長λ2=1260nm、第3波長λ3=1492nm、第4波長λ4=1618nm、第5波長λ5=2172nmとなった。この結果、図10乃至図12に示すように、判別率は100%であった。
【0095】
(実験例2)
次に、重回帰分析法により算出した判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0096】
(実験例2−1)
この実験は、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、これに白色光を照射し、その反射光を検出し、吸光度を算出し、標準化処理を施して二次微分スペクトルを得た。その二次微分スペクトルに対し、髪の毛の成分であるシスチンに注目し、図13に示すシスチンと同じ吸収バンドやN−H、S−H結合の吸収バンドを2054nm、2162nm、1740nmを選択し、更に、第4波長、第5波長を組み合わせ、図14乃至図16に示すように、異物あり判別98%、異物なし判別は92%の判別式を構築した。このときの判別式の係数は、K0=0.381、K1=−0.093、K2=−0.092、K3=−0.117、K4=0.643、K5=0.219で、第1波長λ1=2054nm、第2波長λ2=2162nm、第3波長λ3=1740nm、第4波長λ4=1604nm、第5波長λ5=1388nmとなった。
【0097】
(実験例2−2)
この実験は、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、これに白色光を照射し、その反射光を検出し、吸光度を算出し、標準化処理を施して二次微分スペクトルを得た。その二次微分スペクトルに対し、判別分析での選択波長で重回帰分析を行なって回帰式を構築した。図17乃至図19に示すように、異物あり判別は100%、異物なし判別は96%の判別式を構築した。このときの判別式の係数は、K0=0.381、K1=0.216、K2=−0.660、K3=−0.422、K4=0.490、K5=−0.991で、第1波長λ1=1134nm、第2波長λ2=1260nm、第3波長λ3=1492nm、第4波長λ4=1618nm、第5波長λ5=2172nmとなった。
【0098】
(実験例3)
次に、PLS分析法により算出した判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0099】
この実験は、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、これに白色光を照射し、その反射光を検出し、吸光度を算出し、標準化処理を行ない、更に二次微分処理を行ない、そのスペクトルについてスケーリング及びセンタリング処理を施したスペクトルについて判別分析で用いた選択波長を中心にGA分析法を応用してPLS分析法にて判別式を構築した。このときの判別式の係数は、a0=0、a1=−0.526、a2=−0.366、a3=−0.810、a4=0.571、a5=−0.402、a5=0.967、a5=−1.168で、第1波長λ1=1178nm、第2波長λ2=1252nm、第3波長λ3=1276nm、第4波長λ4=1364nm、第5波長λ5=1566nm、第5波長λ5=1614nm、第5波長λ5=2164nmとなった。結果を図20及び図21に示す。この結果、図22に示すように、異物有無判別率が100%の検量線を構築した。
【0100】
(実験例4)
次に、ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法により算出した判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0101】
(実験例4−1)
この実験は、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、これに白色光を照射し、その反射光を検出し、吸光度を算出し、標準化処理を行ない、更に二次微分処理を行ない、そのスペクトルについてスケーリング及びセンタリング処理を施したスペクトルについてシスチンの吸収バンドである、N−H、S−Hの吸収バンドの波長2054nm、2162nm、1740nmを基に更に第4波長,第5波長を付加し、入力層5、中間層2、出力層1、また教育回数8000回の条件で教育をさせモデリングし、これを判別式とした。その判別式は、図23乃至図25に示すように、判別率が100%となった。
【0102】
(実験例4−2)
この実験は、ケーキ、まんじゅう、チョコレート等の菓子を用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に毛髪を人為的に混入し、これに白色光を照射し、その反射光を検出し、吸光度を算出し、標準化処理を行ない、更に二次微分処理を行ない、そのスペクトルについてスケーリング及びセンタリング処理を施したスペクトルについて判別分析で用いた選択波長を用い、入力層5、中間層2、出力層1、また教育回数8000回の条件で教育をさせモデリングし、これを判別式とした。その判別式は、図26乃至図28に示すように、判別率が100%となった。
【0103】
(実験例5)
次に、サポートベクタマシン(SVM)法により算出した判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0104】
(実験例5−1)
この実験は、異物有りの毛髪汚染食品(39例)と、異物無しの毛髪非汚染食品(45例)との合計84例の食品を用いて、1100〜2500nmの波長範囲の吸光度データを、カーネル関数を用いたC−SVM分類法またはNu−SVC分類法のRBF関数のSVMプログラムをLabVIEW(V8.5)で構築し、異物Fの有無の既知食品のデータを学習させて行なった。この結果、図29に示すように91.67%の判別率のSVM分類関数を得ることができた。
【0105】
そして、このデータを利用して、c−svc分類法でsigmoid関数を用いて、SVM法で学習させた。この結果、図30に示すように、100%の判別率が得られた。即ち、極めて有効な毛髪探知のためのSVM関数を得ることができたといえる。
【0106】
(実験例5−2)
この実験は、異物有りの毛髪汚染食品(13例)と、異物無しの毛髪非汚染食品(26例)との合計39例の食品を用いて、1100〜2500nmの波長範囲の吸光度データを学習させたSVM関数を利用して行なった。この結果、図31に示すように、判別率は87.18%であった。この結果から、毛髪非汚染食品のグループにおいて判別率が低い傾向にあるが、毛髪汚染食品のグループでは判別率が良い結果を得ており、SVM法において毛髪混入の有無を判別できるものであるといえる。
【0107】
(実験例5−3)
この実験は、波長選択した場合のSVM選択学習関数を用いて、異物有りの毛髪汚染食品(13例)と、異物無しの毛髪非汚染食品(26例)との合計39例の食品を用いて実施した。結果を図32に示す。この結果、39例中38例で97.4%の判別率となった。
【0108】
上記のSVM法による実験結果から、SVM法による毛髪探知学習を作成することで、毛髪探知を容易に実施できることが分かった。即ち、毛髪探知技術の一つとして、SVM法は極めて有効な手段となることが明白になった。特に、選択波長による方法は極めて良好であるが、その波長選択はどんな方法であっても、例えばGA(遺伝的アルゴリズム)やステップワイズ法等で選択しても良好な結果を得ることが推測できるものである。尚、この実験例は上記SVM法で使用した波長に限定するものでない。
【0109】
(実験例6)
次に、判別分析法,重回帰分析法,PLS分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法のうち、数種類の判別方法からなる判別式を用いて、各判別式と、被検対象の物体Mから受光した光の吸光度とを用いて物体M中に異物Fが混入しているか否かを判別する。
【0110】
(実験例6−1)
この実験は、数種類のケーキ,数種類のまんじゅう,数種類のシュークリームを用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に数種の毛髪を人為的に混入し、これらの39サンプルに、夫々白色光を照射し、その反射光を検出し、その吸光度を計算し、標準化処理を行なって二次微分スペクトルを算出し、これについて、判別分析法,重回帰分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の各判別式を利用して行なった。結果を図33及び図34に示す。この結果、判別率が100%となった。
【0111】
(実験例6−2)
この実験は、数種類のケーキ,数種類のまんじゅう,数種類のシュークリームを用い、これらの菓子の表面及び内部(中間部、深部)に数種の毛髪を人為的に混入し、これらの39サンプルに、夫々白色光を照射し、その反射光を検出し、その吸光度を計算し、標準化処理を行なって二次微分スペクトルを算出し、これについて、判別分析法,重回帰分析法,PLS法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法の各判別式を利用して行なった。結果を図35及び図36に示す。この結果、判別率が100%となった。
【0112】
(実験例6−3)
この実験は、数種類のケーキ,数種類のまんじゅう,数種類のシュークリームを用い、毛髪3種類を、夫々の食品の中間または深部のように食品内部に人為的に混入し、その異物判別分析を行なった。この結果、図37にしめすような演算結果となった。この集計結果を図38に示す。この結果、判別率が100%と満足する結果が得られた。
【0113】
上記の結果から、各判別式を組み合わせると、判別率は100%となり、そのため、異物Fが食品表面や内部に混入されていても、各判別方法での組み合わせで最終判断を行なうことにより、より一層精度良く異物混入を判別することができるといえる。
【0114】
図39には、本発明の別の実施の形態に係る異物混入判別装置Sを示している。本装置Sは、上記実施の形態とは異なって、分光部50が光源部20に組み込まれているものである。即ち、光源部20から発せられる光を、分光部50を通して分光部50の音響光学素子によって波長域毎に分光し、この分光した光を被検対象の物体Mに照射するものである。この物体Mからの反射光あるいは透過光は波長域毎に受光部30で受光される。
その他の構成は上記実施の形態と同様である。
これによっても上記実施の形態と同様の作用,効果を奏する。
【0115】
尚、上記実施の形態において、判別分析法,重回帰分析法,PLS分析法,ニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション法,SVM法の5種類の判別方法を組み合わせて物体中の異物混入判別を行なったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どれか1種類の判別方法だけでも良く、また、数種類の方法を組み合わせても良く、適宜変更して差支えない。
【符号の説明】
【0116】
S 物体中の異物混入判別装置
M 物体
F 異物
1 機台
2 仕切板
3 載置板
4 メイン電源供給スイッチ
5 緊急停止ボタン
6 排熱ファン
7 制御ケーブル配線口
8 サンプル検知センサ
10 搬送部
10a ベルトコンベア
20 光源部
30 受光部
31 受光素子
40 制御部
41 通信部
42 総合制御演算処理部
43 モータ制御回路
44 分光制御回路
45 動作命令部
46 表示部
47 設定パネル
48 制御ボタン
49 制御部用電源
50 分光部
51 制御ケーブル
52 分光部用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象の物体に該物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なう物体中の異物混入判別方法において、
予め、異物有りのサンプル物体と異物無しのサンプル物体とに近赤外線を照射し、該サンプル物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により上記特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を算出しておき、
被検対象の物体に近赤外線を照射し、被検対象の物体からの反射光あるいは透過光を受光し、受光した光の吸光度を測定し、これらの吸光度と上記判別式とから算出された算出結果から物体中の異物の有無を判別することを特徴とする物体中の異物混入判別方法。
【請求項2】
上記物体は食品であり、上記異物は動物の毛であることを特徴とする請求項1記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項3】
上記特定の成分はシスチンであることを特徴とする請求項2記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項4】
上記判別式を種類の異なる複数の判別方法から選択したことを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項5】
上記複数の判別式から2以上の判別式を用い、これらに対応する判別式により演算し、該各判別結果のうち少なくともいずれかが異物の有を判別したとき異物の混入を有と判別することを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項6】
上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルを二次微分して判別分析法により算出したことを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項7】
上記判別式を、互いに判別結果が良くなる第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(A−1)の関係を満たす式により算出したことを特徴とする請求項6記載の物体中の異物混入判別方法。
【数1】

一般式(A−1)において、ziは各グループの判別得点、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、a0,a1,a2,・・・anは判別得点ziを決定する係数であり、充分に多い母集団において測定された吸光度及び判別得点により、下記の数式(1−1)が最大値を取るように数式(1−3)を解くことで決定される。
【数2】

数式(1−1)において、F(a1,a2)はziが係数a1,a2で決定される関数であることを表わし、Sbは各グループ間の変動、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和、つまりグループ全体の変動である。
数式(1−2)において、Stはグループ全体の判別得点とその平均の差の平方和でグループ全体の変動、Swはグループ内の判別得点とその平均の差の平方和の総和でグループ内での変動、Sbは各グループ内の判別得点とグループ全体の判別得点の平均の差の平方和の総和で各グループ間の変動である。
【請求項8】
上記判別式を、予め異物の有無が既知のサンプル物体について判別得点を基に数種のグループに分けて各グループ内または各グループ間の夫々の平均値や重心位置からのマハラノビスの汎距離を計算し、被検体の吸光度を測定し、その吸光度から既知グループと被検体のマハラノビスの汎距離とからどのグループに近いかを第1〜n波長の吸光度を変数とし、下記の一般式(A−2)の関係を満たす式により算出したことを特徴とする請求項6記載の物体中の異物混入判別方法。
【数3】

一般式(A−2)においてDはグループiにおけるマハラノビスの汎距離、λは波長、Aは吸光度でA1(λ1)は第1波長(λ1)の吸光度、A2(λ2)は第2波長(λ2)の吸光度、・・・An(λn)は第n波長(λn)の吸光度、s11・・・snnは各グループ、グループ間の分散共分散行列であり、このD1、D2について計算しておく。被検体について測定した吸光度から既知のグループのD1、D2のどちらに近いかでどのグループに属するかを判別する。
【請求項9】
上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分して重回帰分析法により算出したことを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項10】
上記判別式を、互いに相関係数の高い第1〜n波長の吸光度を変数とする下記の一般式(B)の関係を満たす式により算出したことを特徴とする請求項9記載の物体中の異物混入判別方法。
【数4】

一般式(B)において、第1波長(λ1)乃至第n波長(λn)を選択するにあたり、先ず、人為的に上記異物を混入したサンプル物体の吸光度と上記異物が混入されていないサンプル物体の吸光度との判別分析によって求められた上記異物に帰属する相関係数が0.800以上になる第1波長(λ1)の近赤外線の波長域を選択し、次に、該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との判別分析によって上記異物に帰属し該第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上の高い相関係数となる第2波長(λ2)の波長域を選択し、それから、上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記異物に帰属し上記第1波長(λ1)及び第2波長(λ2)の近赤外線の波長域の相関係数以上の相関係数となる第3波長(λ3)の波長域を選択し、このように第1波長(λ1)〜第(n−1)波長(λn−1)の近赤外線の波長域と1100nm〜2200nmの範囲の波長域との重回帰分析によって上記異物に帰属し上記第1波長(λ1)の近赤外線の波長域の相関係数以上となる第n波長(λn)の波長域を選択する。
【請求項11】
上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してPLS(Partial least square projection to Latent Structure)分析法により算出したことを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項12】
上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してニューラルネットワーク法のバックプロパゲーション(Back propagation)法により算出したことを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項13】
上記判別式を、上記サンプル物体から受光した光の吸光度スペクトルをMSC処理後に二次微分してSVM(Saport Vecter Machine)法により算出したことを特徴とする請求項4記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項14】
上記各判別式における波長を、1100nm〜2500nmの範囲の近赤外領域の波長から統計学的に優位な波長を選択して組み合わせたことを特徴とする請求項1乃至13何れかに記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項15】
上記請求項6,請求項7,請求項8,請求項9,請求項10,請求項12,請求項13記載の各判別式における波長を、第1波長を1320〜1460nm、1530〜1542nm、1770〜1776nm、2154〜2206nmの範囲から選択し、第2波長を1144〜1158nm、1252〜1276nm、1320〜1338nm、1346〜1384nm、1406〜1434nm、1470〜1510nm、1598〜1650nmの範囲から選択し、第3波長を1100〜1138nm、1230〜1324nm、1352〜1378nm、1394〜1428nm、1480〜1502nm、1540〜1580nm、1610〜1656nm、1664〜1696nm、1742〜1750nm、1760〜1776nm、1816〜1850nm、1880〜1890nm、2112〜2120nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第4波長を1100〜1122nm、1146〜1168nm、1250〜1282nm、1350〜1382nm、1558〜1576nm、1676〜1696nm、1740〜1752nm、1808〜1866nm、2124〜2140nm、2258〜2282nm、2322〜2340nmの範囲から選択し、第5波長を1100〜1142nm、1152〜1210nm、1248〜1326nm、1394〜1420nm、1590〜1640nm、1880〜1884nm、2400〜2420nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしたことを特徴とする請求項14記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項16】
第1波長を1354〜1386nm、1518〜1540nm、1578〜1612nm、1692〜1694nm、1734〜1744nm、1810〜1870nm、2048〜2070nm、2150〜2202nmの範囲から選択し、第2波長を1352〜1386nm、1566〜1618nm、1682〜1694nm、1732〜1748nm、1810〜1872nm、2048〜2086nm、2152〜2166nm、2190〜2198nm、2252〜2266nm、2322〜2334nmの範囲から選択し、第3波長を1782〜1808nm、2448〜2454nmの範囲から選択し、第4波長を1222〜1228nm、1276〜1286nm、1362〜1380nm、1572〜1606nm、1726〜1740nm、1810〜1844nm、2042〜2088nm、2150〜2166nm、2258〜2272nmの範囲から選択し、第5波長を1372〜1392nm、1524〜1548nm、1834〜1878nm、2190〜2214nmの範囲から選択し、これらの各範囲の波長域から一つを選択する多重共線性を示さない組み合わせとしたことを特徴とする請求項15記載の物体中の異物混入判別方法。
【請求項17】
物体に該物体を構成する成分以外の特定成分を含む異物が混入しているか否かの判別を行なう物体中の異物混入判別装置において、
上記被検対象の物体に近赤外領域の光を照射する光源部と、この物体からの反射光あるいは透過光を受光する受光部と、該受光部が受光した光の吸光度に基づいて上記被検対象の物体中の異物の有無を判別する制御部とを備え、
上記制御部を、予め、異物有りのサンプル物体と異物無しのサンプル物体とに照射され該サンプル物体から反射あるいは透過された近赤外領域の波長に対する吸光度における二次微分スペクトルの統計学的解析により算出された上記特定の成分に起因する帰属波長に係る判別式を記憶する判別式記憶機能と、上記受光部が受光した光の吸光度と上記判別式とから算出された算出結果から物体中の異物の有無を判別する異物判別機能とを備えて構成したことを特徴とする物体中の異物混入判別装置。
【請求項18】
上記制御部における判別式記憶機能が記憶する判別式と選択される近赤外線の波長との組み合わせは、上記請求項1乃至16何れかに記載の判別式から選択されることを特徴とする請求項17記載の物体中の異物混入判別装置。
【請求項19】
被検対象の物体が載置されて駆動され、該載置された物体を、上記光源部からの光が照射されるとともに該物体からの反射光あるいは透過光を上記受光部で受光可能な検査位置に順次搬送する搬送部を備えたことを特徴とする請求項17または18記載の物体中の異物混入判別装置。
【請求項20】
上記光源部を、光ファイバーによって光を出力するとともに該光ファイバーの導波路を備えて構成したことを特徴とする請求項17乃至19何れかに記載の物体中の異物混入判別装置。
【請求項21】
上記受光部を、上記被検対象の物体からの反射光あるいは透過光を受光する複数の受光素子を備えて構成したことを特徴とする請求項17乃至20何れかに記載の物体中の異物混入判別装置。
【請求項22】
上記受光素子を光ファイバーで構成したことを特徴とする請求項21記載の物体中の異物混入判別装置。
【請求項23】
上記制御部は、遠隔操作機能を備えたことを特徴とする請求項17乃至22何れかに記載の物体中の異物混入判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−214940(P2011−214940A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82220(P2010−82220)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(305061092)株式会社 カロリアジャパン (6)
【Fターム(参考)】