説明

物体又は人物の位置探知システム

【課題】
【解決手段】
静止あるいは移動中の物体(3)または人物の位置を探知するシステムであって、少なくとも1つの高周波通信手段と位置探知装置(2)と、探知対象装置(1)の通信手段との通信を確立するための高周波通信手段とを含んでいる。位置探知装置(2)は、少なくとも1つの角度決定手段(10)と、探知対象装置(1)と位置探知装置(2)との間の距離(d)を決定するために位置探知装置(2)の通信手段によって受信される探知対象装置(1)の通信手段からの信号を処理する手段と、位置探知装置(2)の3つの異なる一時的地理的位置での少なくとも3組のペアの測定値から“方向”ベクトルと称されるベクトルを計算するための計算手段と、をさらに含んでおり、それぞれのペアの測定値は、位置探知装置(2)と探知対象装置(1)との間で計算された距離(d)と角度(θ)とを含んでおり、角度(θ)は、地理的および一時的な第1位置と第2位置との間、あるいは地理的および一時的な第2位置と第3位置との間で位置探知装置が移動した距離を表す直線と地磁北とによって定義され、第1の一時的地理的位置は位置探知装置の起動位置または座標の原点(0,0)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体または人物の位置探知システムに関し、特に無線(電波)周波を利用した位置探知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の位置確認のための多くのシステムは様々な技術を利用していることが知られている。従って、少なくとも3体のビーコン送信器を利用して平面内で位置確認させる三角測量法に基づく物体の位置探知が可能である。このような三角測量法の手順は装置内にビーコンの座標を受領することで同時進行する。とりわけ、このようなシステムは複数のビーコンの送信を必要とする弱点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高周波の利用は物体の位置探知分野においては良く知られている。米国特許願2006/0038676においては、位置探知対象である物体上に置かれ、第1無線周波通信モジュールを含むマーカと、このマーカと通信し、無線周波通信のための第2モジュールを含む位置探知装置とを含む物体位置探知システムが開示されている。この位置探知装置はマーカから受領した信号に基づいてマーカと位置探知装置との間の距離を予測するための距離測定手段と、マーカと位置探知装置との間の距離が設定距離未満であれば作動する警報手段とを含む。
【0004】
このようなセッティングの位置探知装置は指向性アンテナをも含む。この場合には、位置探知装置が受信したマーカからの信号がマーカの方向と一致したとき最大となるように座標軸が設定される。マーカが提供された物体の存在方向を知るため、ユーザは最大信号が受信される方向を知るために、例えば円形に走査を実施しなければならない。
【0005】
このようなシステムは距離と方向性とに関する物体の位置探知を可能にする。しかし、ユーザは正しい方向を“聴覚”に頼って識別するために広い探知対象範囲を走査しなければならない。従ってそのシステムは補助を必要とするシステムである。
【0006】
同様に、上述のシステムは200メートル未満である比較的に短距離においてのみ利用可能である。従って、これは巨大倉庫または巨大野外での特定産業用途での利用を制限する。また、そのようなシステムは多量なノイズが発生する環境(高周波反射、共鳴信号飽和、信号変調、多重経路、等々)では適正に機能しない。最大有効距離は制限され、マーカを備えた物体が設定距離を超えていることを示す警報機能を含む。
【0007】
米国特許願2006/0074548は別の乗物または車両(特に自動車)(第2車両)に対する1乗物または車両(自動車)(第1車両)の相対位置の決定方法を提案する。このシステムは第1車両と第2車両とに電子ユニットを含む。各電子ユニットには、設定された連続の認知信号を送信し、別車両が送信する基準信号を認識する短距離の高周波通信システムが備わっている。このシステムは同期化を必要とする。同期後に第1車両はデカルト基準系に基づいて自身の三次元移動の測量を開始する。その原点は同期時Tに第1車両が存在する位置に対応し、X軸は北を指向し、Y軸は西を指向する。移動量を測量するため車両にはコンパス、走行距離計および傾斜計が備えられている。第1車両の運行と同時的に第2車両は自身の三次元移動をデカルト基準系で測量開始する。その開始は同一軸指向性の同期時Tにおける第2車両の位置に対応する。
【0008】
当初は短距離通信システムを介してカウントを開始するためにそれぞれの電子ユニットが信号を送信し、同時にカウントの開始時の信号送信から経過した時間の現場内部カウントTcを開始する。このカウントの開始信号は拡散し、第2車両の通信システムがその信号を受信すると、この信号は設定された時間間隔△Tr中にカウントするように設計された現場内部カウンターの機能を制御する。この時間間隔が経過すると第2車両の電子ユニットは短距離通信システムでカウントを開始させる信号とカウントを終了させる信号とを送る。この信号はこれら2車両間で伝播する。
【0009】
よって、カウント開始時の信号発生とカウント終了時の信号受信との間に経過した時間が検出される。2車両間の距離は電子信号の伝播速度と伝播時間とから計算される。従って3つの別々の時間に対するそれぞれの基準における2車両の座標によって第2車両の位置は第1車両の基準内で得られるであろう。
【0010】
同様に、別車両(第2車両)に対する1車両(第1車両)の位置は、第1車両が移動中であり、第2車両が静止中であると想定することで得られる。Tにおける2車両間距離の計算のために1計算式が与えられる。デカルト基準系の始点に第1車両の位置を配置すると第2車両がTに位置するであろう第1円(半径d)が求められる。第1車両の移動後のTでの第2車両の存在が可能な位置を示す第2円が新計算式によって求められる。これら2つの円は2点で交わる。第1車両がさらに移動すると第2車両の第3円が求められ、これら3つの円の交点は第1車両に対する第2車両の正確な位置を表す。
【0011】
しかし、車両にコンパス、傾斜計および走行距離計が装備されているときのみ装置が使用できるように基準点は設定される。さらにこのような装置は利用が複雑である。
【0012】
米国特許願2005/0020279は、受信した呼び掛け信号に対応して自動的に信号を送信する送受信装置(トランスポンダ)を備えた固定標的あるいは移動標的の位置を探知するための無線システムを解説する。このシステムには標的の位置を永久に求め続ける無線送受信装置が装備されている。このトランスポンダと送信器との間には通信状態が存在し、リアルタイムで受信される位置情報を利用し、仮想的に三角測量法によって標的を発見するプロセッサも装備されている。このプロセッサはトランシーバによりトランスポンダの少なくとも3点であるP1、P2およびP3を利用する。
【0013】
この位置探知システムは送信器として機能するように設計された少なくとも1つの“主”監視装置またはユニット(Ms)と、トランスポンダとして機能するように設計された少なくとも1つの“従”ユニットまたは装置とを含む。これら装置のそれぞれは他と自身とを区別するために固有の識別子(ID)を有しており、1以上の人物または標的上に設置できる。検出の可能性を低減させ、特定バンド(帯域)の周波数帯域幅を効果的に利用するため、“主”装置と“従”装置との間の通信は別々の帯域あるいは様々な技術(スペクトル拡散変調または拡散信号)を利用した単一帯域による高周波信号送受信技術に基づいている。
【0014】
三角測量法の1実施例では、モニタユニット(Ms)は少なくとも位置情報または通信のいずれかのために追加チャンネルまたは周波数帯域を利用するように設計できる。専門家には知られているがこれら主ユニットと従ユニットは時分割多重通信技術あるいは拡散スペクトル技術を活用して同一周波数帯域で送受信できる。主ユニットと従ユニットは相互に位置基準ユニットとして機能するように設計されている。モニタユニットはコマンドユニットとして設計できるであろう。
【0015】
さらに、同一領域では複数の主ユニット間には干渉現象が発生しがちであるため、好適には位置探知システムは符号分割多重接続(CDMA)を利用した時間分割多重技術を用いて主従ユニットに対して異なる周波数チャンネルを設計する。
【0016】
コマンドまたはコントロールユニットに関して説明すれば、主ユニットおよび従ユニットの位置および関連情報は、調査技術によって移動ネットワークトポロジーをリアルタイムに動的に分析するコントロールまたは監視ユニットとして指定された1以上のモニタユニット(Ms)に先送りできる。
【0017】
主ユニットは、データ信号を処理するためのプロセッサと、エンコーダ回路と送信器とを含む送信セクションと、受信器とデコーダ回路とを含む受信セクションと、アンテナと、距離測定装置とを含む送受信装置でよい。主装置はさらにキーボードと、プロセッサの音声機能用マイクロフォンと、ディスプレーと、スピーカと、基準点表示を入力するための“ステージ”ボタンとを含む。これら装置はまた音声通信を可能にしている。ディスプレーは他の主ユニットおよび従ユニットに対する主ユニットの相対位置を示すことができる。主ユニットと従ユニットは標的を効果的に追尾するために異なる周波数または周波数帯域で作動でき、位置探知システムは主ユニットと従ユニットを利用させるために異なる周波数で作動できる。標的の位置探知のために主ユニットから従ユニットへの送信には1周波数(150MHz)が使用され、従ユニットから主ユニットへの戻り送信には別周波数(460MHz)が使用される。高周波数の変動は位置探知の不鮮明性を解消し、位置探知精度を向上させる。
【0018】
主ユニットは同時的な送信および受信を可能とするように設計されている。別実施例ではGHz、赤外線、マイクロ波、および超音波が利用できる。
【0019】
時間と距離の測定は時間サイクルと、従ユニットへの信号範囲の送信並びにその逆である受信を介して実行される。主ユニットは低消費モードにて維持されている従ユニットを“起動”させるように設計された一連のコマンドを送信する。従ユニットは“伝播時間検定”を実行し、同様に伝播時間検定を実行する主ユニットに“遅延要因”を送信する。主ユニットはこれら2つのユニット間の距離を計算するために、応答信号範囲を受信し、信号範囲の送信時間と、応答して信号を受信する時間と、従ユニットと主ユニットとの間で計算された誤差を補整する定数を利用する。
【0020】
標的の位置を探査させるこのような装置は比較的に複雑であり、実用性に乏しい。加えてそれは周知技術を利用しない。さらに、三角測量法に利用する複数の送信器を使用する。
【0021】
従って、後者の2つの装置は仮想的に三角測量法を利用するように標的をマーキングするが、実行には比較的に複雑な従来にない手段を必要とする。これらの弱点を克服するため、本発明の目的は、静止あるいは移動中の物体または人物の位置を探知するシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
このシステムは位置探知対象の物体または人物(以降“対象物体または人物”)に装着され、少なくとも1つの高周波通信手段を含む少なくとも1つの位置探知装置と、その位置探知装置の通信手段との通信を確立するのに適した高周波通信手段を含んだ位置探知装置とを含む。これは角度を決定する少なくとも1つの別手段と、位置探知対象装置(以降“対象装置”)と位置探知装置との間の距離を決定するために、位置探知装置の通信手段によって受信される対象装置の通信手段からの信号を処理する手段と、位置探知装置の3つの異なる一時的地理的位置での少なくとも3組のペアの測定値から“方向”ベクトルと称されるベクトルを計算するための計算手段とを含む。それぞれのペアの測定値は、位置探知装置と対象装置との間で計算された距離と角度とで成る。この角度は、地理的および一時的な第1位置と第2位置との間、あるいは地理的および一時的な第2位置と第3位置との間(第1の一時的位置は位置探知装置の起動位置あるいは座標の原点)で位置探知装置が移動した距離を表す線と地磁北とで形成される。
【0023】
従って、非常に有利にはナビゲーション手段とも称される計算手段は、位置探知装置の3つの異なる地理的一時的位置に従って計算された測定角と距離とから、位置探知装置に“方向”ベクトルと称されるベクトルを発生させるために非同時的な測定を介して三角測量法を利用する。
【0024】
よく知られているように伝統的な三角測量法を利用して対象物体または人物と、地理的位置が知られている3基準点との間の距離の同時測定から標的である物体または人物の位置を知ろうとすることは一般的である。
【0025】
本発明のシステムは地磁気基準系に基づく仮想的な三角測量系を提供する。これはいくつかの基準点からの同時測定を必要としない。なぜなら、それぞれの地理的位置は知られているからである。従って、標的位置の追尾を実行するため、位置探知装置の位置に対応する原点(0,0)から、当初座標(0,0)に対して相対的に形成された角度の磁気センサによる単純な測定によって第2円の中心の座標を計算により求めさせ、続いて相対的に第3円の中心の座標を計算で求めさせる。
【0026】
高周波システムと数学アルゴリズムを利用して移動する位置探知装置(位置探知器)と対象物体または人物(標的)との間の距離を計算することができる。しかし、対象物体または人物の方向は定義できないであろう。
【0027】
前述の距離は、中心が位置探知装置(位置探知器)の位置を表す点である円によって図形として表すことができる。標的(追尾装置)と位置探知装置とが離れている距離は円の半径dであり、対象人物または物体は円周Cのどこにでも存在できる。
【0028】
続いて次の想定が可能である。円周Cの中心はデカルト座標系の原点であり、基準系のX軸(横座標)は地磁北と一致する。
【0029】
その後、位置探知器はいかなる別地点にでも移動でき、そこで現在の測定地点からの対象人物または物体を表す距離dの第2側定を実行する。第2側定地点からの情報と距離dとで、半径がdであり、中心が第2側定を実施した地点である第2円周Cの式が求められる。円周Cとそれに交わる円周Cが表すものとして、対象人物または物体が存在する可能性がある2箇所の交点の存在が確認される。従って第3地点からの第3位置測定が必要である。これは対象人物または物体と位置探知器との間の距離dを新たに与え、第3地点の情報と共に、距離dが半径であり、その中心が第3測定が実施された第3地点である第3円周Cの式を求めるのに利用される。他の2つの円に交わるように第3円を作図すると円周C、C、Cが互いに交差する点に対象人物または物体が存在する。
【0030】
3つの円周C、C、Cのそれぞれの半径は、対象人物または物体と、その位置探知器がその測定時点で存在するいくつかの地点(それら円周の中心)との間で測定された距離から知られる。従って、これらの円を作図させるにはこれらの点を相対的な位置に配置することが必要である。
【0031】
位置探知装置の始動時に座標の原点(0,0)としての地点が決定される。この地点から磁気センサを必要とせずに円が発生する。
【0032】
しかし、第2円周と第3円周の中心の座標を知るため、地磁北と位置探知装置とで成す角度を測定するために磁気センサが磁気コンパスとして使用される。位置探知装置は第1円の中心から、第2円の中心に対応する第2側定地点に移動し、第2円の中心から第3円の中心である第3測定地点に移動する。従ってこの角度は第1円の発生時には存在しない。
【0033】
また、このシステムが操作されるとき第1側定地点(円周Cの中心)は基準系の始点であり、原点(0,0)を表すと定義できる。しかし他の測定地点(円周C、Cの中心)の座標は定義できない。
【0034】
よって、携帯システム(位置探知器)を起動させると、地磁北に対する角度が電子コンパスで測定される。この角度は位置探知システムの計算のための初期座標の発生に利用される。デフォルトによってこれら初期座標はアファインデカルト座標の座標(0,0)(XとY)となり、地磁北は横座標となる。
【0035】
この地点および位置探知システムの検出距離から対象物体が配置される円周が計算で求められる。
【0036】
位置探知器を保持する人物は移動する。移動したとき、その人物の移動は直線状であり、第2円周は磁気センサと距離測定によって求められると考えられる。磁気センサはそれ以前ではなくこの時点で角度を計算し、地磁北と、人物が始点から移動した距離を表す直線とで成すその角度とを基準として有し、その後に第2円周を発生させる。
【0037】
ディスプレーを介して方向ベクトルを示すため、第3円である最終円の発生のために同じ原理が反復される。
【0038】
従って、第2円と第3円の中心座標の計算には、電子コンパス、地磁気系および追加の基準系が使用される。
【0039】
前述のごとく、また本発明のシステムの理解を促進させるよう、磁北は基準系のX軸(横座標)と一致するように作成された。また、電子コンパスによって、基準系の始点(円Cの中心)から円Cの中心までの方向を示す角度qが位置整合された。これも基準系のX軸である。角度qは地磁北に関して人物が始点から移動した距離を表す線である。
【0040】
最後に、円周Cの中心の座標を計算させる円周Cの中心と円周Cの中心とを分離する距離は、単純に三角関数を利用することで計算される。同様なプロセスが円周Cの座標の計算と、角度qの記録に利用される。これは円周Cの中心から円周Cの中心への方向と、円周Cの中心から円周Cの中心までの距離を示す。
【0041】
有利には、位置探知装置は表示手段も含んでおり、システムユーザによりスクリーンに“方向”ベクトルを表示させ、対象物体がユーザに対してどの方向に位置するかを表示させる。
【0042】
異なる方向変化を正確に特定するため、本発明による装置で実行される三角測量法の原理の利用は本発明によるナビゲーションシステムの手段により実行され、好適には周期的に実行される。
【0043】
位置探知装置は、キーボード等のデータ入力手段も含むことができるため装置の安全な利用が可能である。特にユーザは、承認されたユーザによるシステムの使用を可能にさせるIDコード(識別符号)を入力することができる。
【0044】
さらに、位置探知装置に提供された高周波通信手段は特定認知または承認コード(符号)を含んでいる。このコードは高周波で位置探知装置に送られ、ユーザーが探している対象物体または人物が正しいものであることを確実にする。
【0045】
本発明のシステムで利用される高周波通信手段はどのような周波数でも機能する高周波送信機または受信器である。例えば、1ワット(+30dBm)の送信電力でISM(産業、化学、医学)と称される任意に定められた高周波範囲を自由に利用できる。
【0046】
好適には、通信手段間の通信が何らかの理由で妨害されるか不充分な状態となったら、周波数変更を定期的あるいは自動的に承認するように使用される周波数帯域をいくつかの値に分割する。この変更または周波数ジャンプ(“ホッピング”)は周波数ホッピングの最小値および最大値によって定められる周波数の変更によって実行される方法である。もし信号が弱くて妨害状態であれば、このようなプロセスによって2つの装置間の信号は回復する。
【0047】
本発明のシステムは次の原理で作用する。
【0048】
対象装置の高周波通信手段は“スリープモード”とも称される待機モードに保たれる。このモードでは高周波通信手段は全周波数を継続的に受領する。対象装置は製造業者あるいはユーザによって設定された1周波数および1信号に対しては“起動”するものでならなければならない。この待機受信モードでは対象装置はほとんど電力を消費しない。
【0049】
ユーザは携帯する位置探知装置のスイッチを入れ、キーボード安全装置を介して自身の識別(ID)コードを入力する。
【0050】
IDコードが承認されると設定した周波数で作動する警報信号(“起床”)が位置探知装置の高周波通信手段(送信器)から、対象装置(受信器)の高周波通信手段に送信される。この時計(クロック)信号は受信器をスリープモードから通常の受信モードに転換させるように設計されている。
【0051】
対象装置が“起動”状態となると単周波数に基づいて通常受信モードに切り替えられる。このモードでその送信器または受信器の全送受信機能が起動される。
【0052】
キャリアからの信号を捕獲するために位置探知装置が送信する別々の信号を受信し、内部時計電気コンポーネントに従って時計信号(タイマー)を始動させ、計算プロセスを実行させる。この時計はカウントダウンを発生させ、その後にプログラムされた機能が始動または停止される。
【0053】
従って、カウントダウンの終了時に対象装置はキャリア信号を受信しておらず、別周波数でキャリア信号を検出するように提供された様々な可聴周波数を走査するために“ホッピング”として知られる“周波数ホッピング”に切り替えられる。
【0054】
キャリア信号が検出されると、対象装置は送信モードに切り替わり、位置探知装置に認知信号を送信する。この認知信号は対象装置のIDコードを含み、位置探知装置を受信モードに切り替え、受信信号が予期されたものであり、別システムに属する別対象装置からのものではないことを確認する(資格検証)。好適にはこのコードは位置探知装置に送信されるように変調されており、送信データの受信が開始される。
【0055】
相互に検出される通信手段の識別および資格検証の手順は対象装置と位置探知装置の高周波によって終了される。その後、通信は2つの送信器または受信器間で継続する。
【0056】
受信信号の処理手段は対象装置と位置探知装置との間の距離の予測値を決定するのに利用される。これら2つの高周波通信手段間で測定される距離は処理手段によって継続的およびリアルタイムで実行される。
【0057】
第1測定モードに従って、プロセスRTOA(到達往復時間)が使用され、電波の送信器から受信器およびその逆方向の移動時間を知ることができる。よって、光速を基準にして、コードの送信からその受信までの時間から位置探知装置と対象装置との間の予測距離を計算することが可能となる。この時間は電子処理時間を含む。有利には、このような測定モードは2つの送信器または受信器間での同期を必要としないものである。
【0058】
第2側定モードによれば位置探知装置は対象装置から受信した高周波信号の強度をも測量することができる。このプロセスはRSSI(高周波信号強度インディケーション)として知られる。この受信信号強度の測定は位置探知装置と対象装置の間の距離計算に利用される。これは対数計算を利用して2つの送信器または受信器間の距離をほぼ瞬時に計算させる数学的関係を表す。
【0059】
しかし、例えば建物内部など、本発明のシステムが使用される環境を考慮すると、距離を予測するためにこの第2方法(測定モード)を利用するとき、測定するのに大きな障害となるガウスノイズ、ホワイトおよび熱ノイズ、同調信号飽和、電波弱体化現象、等々を考慮することが必要である。
【0060】
さらに、位置探知装置の送信器または受信器で受信されるデータは予期できず、非常に弱くて検出が困難である。なぜならそれらは異なる環境的障害、パイプ、ダクト、熱運搬体、補強コンクリート壁、等々で電波の反射、回折または屈折等の複数の要因により変調されているからである。
【0061】
また、さらに有利には、信号をフィルタ処理し、ノイズ除去し、2つの送信器または受信器間の距離を効果的に予測するためにファジーロジックプロセスを利用してノイズを除去すると同時に、受信信号の強度レベルを予測するため、信号処理手段はニューラルネットワーク(人工知能)に基づく計算手段を含む。
【0062】
これら“人工知能”計算手段は2つの送信器間の距離の予測平均を提供できる。
【0063】
前記のプロセスのいずれかにより平均距離が予測されると、その予測値は、電子コンパス等の測定手段が、関係する磁北との角度を測定するまで保存される。この角度は位置探知装置と磁北とによって形成される。位置探知装置が作動状態にされると、この角度は“存在せず”、あるいは磁北と区別できなくなり、0と考えられる。その後に距離の予測値は、始動された計算手段あるいはナビゲーション手段に通信される。
【0064】
これら計算手段はデカルト基準および計算距離に関して解説したように、関連測定値ペアから電子コンパスにより発生される角度を決定するアルゴリズム等の位置決定手段を含む。
【0065】
これら位置決定手段は第1円周として位置図を発生させる。その中心は値が(0,0)で固定された角度であり、その半径は高周波通信手段を隔てる予測距離である。
【0066】
システムが作動状態にされると、地理的基準がない状態でその角度はユーザが所在する地点を表し、距離の測定値はこの地点と物体との間の予測距離を対象装置の位置として示す。これは中心が電子コンパスで測定された角度であり、半径が2つの送信器または受信器間の距離である円を発生させる。
【0067】
この第1円(または第1円周)が発生されると、位置探知装置を携帯するユーザは移動を再開する。位置探知装置のこの一時的および地理的移動は電子コンパスの角度の変化と2つの受信器間の距離の変化をもたらす。ナビゲーション手段は第2円を発生させる。この中心は原点(0,0)に関係する新たな角度であり、半径は新たな予測距離である。計算は、ユーザの第1位置と第2位置との間での短い地理的および一時的移動を考慮し、第2円と第1円が2点で交わる状態で実施される。これら2つの交点のひとつは対象物体が存在する地点を表す。その後、第2円の中心と、第3測定位置に対応する第3円の中心との間の経路で形成される角度と磁北とからユーザが常時移動する第3円が同様に発生される。この第3円はこれら2つの交点の1つにおいて他の2円と交わり、位置探知装置のスクリーン上に方向ベクトルを表示することができる。この方向ベクトルは円の中心と3つの円の交点との間で提供される。よって、方向ベクトルを発生させるには少なくとも3ペアの別々な測定値を有することが必要である。
【0068】
よって、3つの円を発生させるためにナビゲーション手段はこの計算を少なくとも3回反復する。最後の円の交点は第3円の中心で定義され、ユーザはこの方向ベクトルに従う。
【0069】
データと計算の処理中にユーザは移動を継続し、角度および距離を規則的に変動させることができる。方向ベクトルのみが位置探知装置のディスプレースクリーン上に表示される。
【0070】
高周波通信が機能しなくなると、この状態を知らせるメッセージがスクリーン上に表示され、ユーザに警告する。よって、信号の消失と、通信が回復するまで移動を継続する必要性が示される。
【0071】
以前の結果を考慮しない新規の計算で信号処置手段とナビゲーション手段は再び離間する。
【0072】
非常に有利な方法においては、位置探知装置と、特にそのナビゲーション手段は、時間tにおける測定値ペアの少なくとも3つの値(角度、システムの送信器または受信器間の予測距離)から位置探知装置のディスプレースクリーン上に対象装置に近づくために従うべき方向ベクトルを表示させる。よって、ユーザの動きを介して対象装置に近づくために常時従うべき方向のリアルタイムでの更新が可能である。
【0073】
有利には、本発明のシステムの位置探知装置はいくつかの探知対象装置と協調することができる。従って1つの検出フィールド内で複数の物体の位置を探知することが可能であるが、この位置探知は同時的には実行できない。
【0074】
よって、各探知対象装置にはそのIDコードが提供され、対象装置全部を特定する全コードは位置探知装置に保存される。ユーザが探知希望の対象装置のIDコードを選択さえすれば位置探知装置は対象装置の位置を探知する。
【0075】
本発明の物体または人物位置探知システムは多くの利点を有している。システムを利用するにあたり位置探知装置の設置場所の決定は不要である。しかし本発明の利用可能距離は非常に重要である。なぜなら100メートル以上離れた屋内および1000メートル以上離れた屋外で位置探知が可能だからである。本発明のシステムは屋内および屋外のいずれでも有効に利用できる。
【0076】
また、本発明の位置探知精度は非常に重要である。なぜなら上記の全距離範囲に対して7メートル以下の精度だからである。
【0077】
同様に、本発明のシステムは対象装置が移動中であっても利用可能である利点を提供する。
【0078】
本発明は好適には非常に小型であり、ユーザによる携帯に便利である。同様に、この位置探知装置はセルラー通信システム(携帯電話システム)、手持ちコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)または他の同様な装置のである電子機器に組み入れることが可能である。
【0079】
非常に有利には、本発明のシステムは非常に汚染された電磁環境および電波環境においても効果的に運用できる。
【0080】
このような位置探知システムは屋内駐車場または屋外駐車場で個別に車を探知し、その位置を特定することができる利点を有する。同様に、建物内、や巨大なオープンスペースまたは閉鎖スペースの人々や、特に公園、スーパマーケットおよび他の公共の場所での人込みの中で子供たちをモニタし、居場所を確認するのに利用できる。
【0081】
もちろん、例えば倉庫内で特定商品の位置探知等、産業上で利用することも可能である。
【0082】
このシステムは自立的であり、ユーザの支援は必要としない。
【0083】
本発明は、静止状態あるいは移動状態である物体または人物の位置探知のための方法にも関する。
【0084】
この方法は、少なくとも1つの待機(スリープ)状態である通信手段を含む探知対象装置を探知対象物体または人物に設置するステップを含む。
【0085】
さらに、高周波通信手段を含む位置探知装置を送信モードに切り替えるステップを含む。
【0086】
さらに、探知対象装置の高周波通信手段に位置探知装置から警告信号を送信するステップを含む。探知対象装置はこの警告信号を、探知対象装置を始動させる通常受信モードで受信する。
【0087】
さらに、受信モードで位置探知装置のカウントダウンを開始させる時計カウンターを始動させるステップを含む。
【0088】
さらに、位置探知装置からキャリア信号を送信するステップを含む。
【0089】
さらに、カウントダウン終了時に対象装置がキャリア信号を受領していなければ、キャリア信号を別の周波数で捕獲するために提案された様々な可聴周波数で走査するために対象装置を周波数ホッピングモード(ホッピング)に切り替えるステップを含む。
【0090】
さらに、キャリアからの信号が受信されたら、対象装置を送信モードに切り替え、受信信号を位置探知装置へと送信するステップを含む。
【0091】
さらに、位置探知装置によって受信された対象装置からの信号を処理し、対象装置と位置探知装置との間の予測距離を決定するステップを含む。
【0092】
さらに、その予測距離を保存するステップを含む。
【0093】
さらに、磁北との角度を測定するステップを含む。この角度はその予測距離に関係させた状態の磁北と、それぞれの測定位置間における位置探知装置の経路とによって形成される。
【0094】
さらに、計算手段を利用し、電子コンパスで発生される角度と、保存された予測距離とから、その中心がその角度と半径(予測距離)から決定される円の形態で位置図を発生させることで位置を決定するステップを含む。この予測距離はそれら高周波通信手段とが離れている距離である。
【0095】
この計算はユーザの異なる3地点で少なくとも3回反復され、3つの円を発生させる。最後の円の交点は第3円の中心によって決定され、ユーザは方向ベクトルに従う。
【0096】
さらに、位置探知装置のディスプレー上に方向ベクトルを表示するステップを含む。
【0097】
高周波通信手段間で交信される信号の処理は前述したRTOAプロセスには有利であり、あるいはRSSIプロセスでも可能である。
【0098】
RSSIプロセスの場合には、このプロセスは、信号をフィルタ処理し、ノイズを除去し、2つの受信器間の実効距離を予測するためのファジーロジックプロセスによってノイズを除去すると同時に、受信信号の強度レベルを予測するニューラルネットワーク(人工知能)に基づく計算手段を含んだ信号処理手段も提供する。
【0099】
以下の記載は図面を利用した本発明のさらに詳細な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明のシステムの概略図である。
【図2】本発明のシステムをブロック図の形態で表している。
【図3】従うべき方向の決定に導くプロセスステップを概略的に図示する。
【図4】本発明システムのディスプレー装置の概略図である。
【図5】r2>r1であるときの地上位置探知のための作図利用法を解説する。
【図6】r1>r2であるときの地上位置探知のための作図利用法を解説する。
【発明を実施するための形態】
【0101】
この位置探知システムは固定された探知対象装置1と、移動式位置探知装置2とを含む。それぞれの装置は相互通信を確立させるために高周波通信手段を含む。
【0102】
固定対象装置1は、例えば自動車3内に設置され、移動式位置探知装置2は自動車3を使用する人物4により運搬される。
【0103】
人物(ユーザ)4の高周波通信手段は移動式(モバイル)RFモジュールと称され、対象装置1の高周波通信手段は固定RFモジュールとして知られる。
【0104】
さらに、位置探知装置2は対象装置1の固定RFモジュールから位置探知装置2の移動式RFモジュールにより受信された信号を処理して計算する。前述した距離測定法のいずれかによる距離測定のための計算アルゴリズムのごときこれら処理または計算手段11はリアルタイムで継続的に固定された対象装置1と移動式位置探知装置2との間の距離を決定する。この距離データは処理され、これら2つのRFモジュールを隔てる距離の予測平均値に変換される。
【0105】
本発明によればこれら2つの固定RFモジュールと移動式RFモジュールは、処理または計算手段11と共にシステムの通信モジュールを含む。
【0106】
移動式位置探知装置2は、少なくとも位置探知装置2と磁北とにより形成される角度をいつでも知ることができる電子コンパス10によって構成される角度測定手段をも含む。好適には、電子コンパス10は、地磁性変化を検出するホール効果センサを含み、システムが始動すると磁北との角度を発生させるのに利用される。電源を入れることに伴い、この角度は座標(0,0)に固定され、システム作動準備が整う。
【0107】
通信モジュールから求められる距離に関連するデータと、電子コンパス10から求められる関連角度に関連するデータは位置探知装置2によってナビゲーションモジュール12に送られる。
【0108】
ナビゲーションモジュールは、位置探知装置2の3つの地理的および一時的位置における少なくとも3ペアの測定値から“方向”と称されるベクトルを計算する手段を含む。それぞれのペアの測定値は位置探知装置と対象装置との間および角度qで計算された距離dで成る。但し、第1円周Cは発生しない。なぜなら、この角度はパワースイッチが入れられていなければ0だからである。なぜなら、この角度は横座標軸および磁北と一致するからである。
【0109】
よって、システムの電源を入れることに対応する時間tにおいては、角度は磁北に対して測定されず、固定対象RFモジュールと移動式RFモジュールとの間の距離dが測定される。人物4は移動を続け、移動経路と磁北との間の角度に対応する角度q並びに2つのRFモジュール間の距離dが新たに測定される。
【0110】
ナビゲーションモジュール12の計算手段は時間tでの位置探知装置の位置を決定させる。この位置は円Cにより表されており、その中心は電源を入れたときの始点であり、その半径は距離dである。また時間tでは半径dの新円Cが発生される。
【0111】
図3で示すように、円CとCは2点AとBで交差する。これら交点AとBは対象装置1の位置を表す。
【0112】
時間t、距離dおよび角度qで第3円Cが形成される。この角度は磁北と円CとCとを結ぶ線との間の角度を表す。この第3円Cは円CとCを対象装置1の位置に対応する1点Bで横断する。従って、円Cの中心から点Bへの方向は対象装置1を指向する方向である。
【0113】
角度jに伴う方向ベクトルvが、位置探知装置2の、LCDスクリーン等であるディスプレー13上に表示される(図4参照)。
【0114】
有利には、少なくとも3ペアの測定値(角度/RFモジュール間距離)から、対象装置1の方向を指向する位置探知装置を運搬する人物4が従う方向を視覚化することができる。
【0115】
従う方向の特定のために位置探知装置2で空間を走査することは不要である。この方向は位置探知装置2のスクリーン(ディスプレー)13上に直接的に視覚化される。
【0116】
本発明システムの別実施例によれば、3つの円(C、C、C)のそれぞれの半径は、位置探知対象人物または物体と、測定時に探知器が存在しているいくつかの点(それぞれの円の中心)との間の測定される距離から求められる。よってこれらの円周を求めるためにこれらの点の相対的位置を探知することが必要となる。
【0117】
さらに、第1測定点はオペレーティングシステム(円周Cの中心)が基準系の始点に存在するとき定義され、座標(0,0)を表す。しかし、他の測定点(円CとCの中心)の座標は定義されない。
【0118】
従って、電子コンパスを介した携帯システム(位置探知器)の電源を入れることによって、地磁北に対する角度が求められる。基準とはされないこの角度は0であり、位置探知システムの計算のための当初座標を発生させるのに利用される。デフォルトによりこれら当初座標はアファインデカルト基準系の座標(X,Y)が(0,0)であり、その地磁北は横座標Xの軸である。
【0119】
この点と対象検出システムの距離とから対象物体が存在する円周が数学的に求められる。
【0120】
位置探知器を保持する人物は移動する。移動が完了すると、人物の移動は直線的であったとみなされ、磁気センサと距離測定値とにより第2円周を発生する。磁気センサは始動時から人が距離を表す移動線と地磁北とにより形成される角度を参考にして実際にこの時点での角度が計算され、その第2円周が発生する。
【0121】
ディスプレーを介して方向ベクトルを示すためにこの原理は最後の第3円周の発生にも利用される。
【0122】
従って、第2円と第3円の中心座標の計算のために、電子コンパス、地磁気系および追加の基準系が利用される。
【0123】
前述のように、磁北は基準系のX横座標軸と一致する。また、電子コンパスによって、磁北に対するこの系の始動点(円周Cの中心)からの方向(基準系のX軸でもある)を示す角度qが記録される。この角度qは人物が始動点から移動する距離を表す直線と地磁北とが成す角度である。
【0124】
最後に、円Cの中心と円Cの中心とが離れている距離が計算される。この距離は角度qと組み合わされ、三角関数を利用することによってCの中心の座標を計算するのに利用される。同様な方法が円Cの座標の計算に利用され、角度qは記録される。この角度は円周Cの中心から円周Cの中心への方向と、磁北との間の角度であり、この距離は円Cの中心と円Cの中心とを隔てる距離である。
【0125】
円C、CおよびCの中心間距離の計算では、前述のような追加システムとして同心円を利用する解法が存在する。例えば、半径rの円Cと半径rの円Cが利用される。半径rとrは高周波システムで計算され、位置探知器と対象人物または物体との間の検出距離を定義する。このシステムはデカルト基準座標系の点を利用する。横座標軸は地磁北でもある。目的は円Cと円Cとが離れている距離“X”を求めることである。すなわち、rとrとの長さの差を求めることである。
【0126】
2つの特定ケースが存在する。
【0127】
x、r1およびr2は正の実数であり、次のようになる。
【0128】
r2>r1(図5)の場合、対象人物または物体はデカルト座標の原点に存在する。位置探知器は、デカルト座標の原点から距離r1にて円周Cのどこにでも存在できる。
【0129】
計算は次のようになされる。位置探知器は地磁北の軸と一致する横座標の基準軸に存在し、円周C2上を移動するものとする。電子コンパスを使用し、位置探知器の地磁北に対する角度(角度q)が測定できる。r1、r2の値および0によってC1とC2とが離れている距離を求めることができる。半径r1、r2および0は、r1が横座標軸に存在する三角形を形成し、r2は、位置探知器の円周C2上の移動によって形成される横座標(地磁北)の軸に対して角度を形成する。この三角形から、“x”の値を求める式、すなわち円周C1とC2との間の距離を求める式が決定できる。
【0130】
この最終式によってr1、r2および0から“x”の値を求めることができる。

最終解は次のようになる。

【0131】
r1>r2の場合(図6):第1のケースの幾何学的基準を利用し、r1はr2よりも大きいとし、位置探知装置と対象人物または物体の位置を保つことで、操作は次のようになる。
【0132】
横座標の基準軸(地磁北と一致)から、C2の座標軸を切断する直線を円周C1から引くことができる。
【0133】
直線が追尾される場所は無関係である。しかしながら説明のため、この線は負軸(地磁北軸)から引かれている。この直線は座標C2軸とその最高点(Y軸は正、X軸はゼロ)で交差する。角度qは横座標(x、および地磁北)と電子コンパスとの間の部分である。この部分は円周C2を2点で交差する、すなわち “x”の計算の2つの解の1つは正(先方交差点)、もう1つは負(手前交差点)である。
【0134】
しかしながら、最も近い円周C1とC2との間の交差点のみが重要である。
【0135】
形成された三角形(長方形)は次の特徴を有している。
【0136】
直角三角形の斜辺は第1交差点(最も近い)への値“x”として定義される。低速で移動するユーザは第1交差点(最も近い)のみを測定させると仮定する。横座標はr1に対応し、縦座標はr2に対応する。次の式から、“x”の値を計算できる。

解は次のようになる。

正の解のみを考慮する。
【0137】
本発明によるシステムは、キーボード14等であるユーザの識別データを入力するための手段を含んだセキュリティーモジュールを含んでいる。適切な識別コードを有するユーザのみが本発明によるシステムを使用できるため、キーボード14は装置を安全に使用させる。
【0138】
さらにセキュリティーモジュールは、“起動”されると対象装置から特定認知コードを位置探知装置へ送信する手段を含んでいる。位置探知装置は対象装置を自身のものとして承認できる。
【0139】
本発明が前述の実施例に限定されないことは言うまでもなく、「請求の範囲」で定義されたすべての変更例を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止あるいは移動中の物体(3)または人物の位置を探知するシステムであって、
本システムは、位置探知対象の物体(3)または人物に装着され、少なくとも1つの高周波通信手段と位置探知装置(2)と、探知対象装置(1)の通信手段との通信を確立するための高周波通信手段とを含んでおり、前記位置探知装置(2)は、角度を決定するための少なくとも1つの手段(10)と、前記探知対象装置(1)と前記位置探知装置(2)との間の距離を決定するために前記位置探知装置(2)の通信手段によって受信される前記探知対象装置(1)の通信手段からの信号を処理する手段と、
前記位置探知装置(2)の3つの異なる一時的な地理的位置での少なくとも3組のペアの測定値から“方向”ベクトルと称されるベクトルを計算するための計算手段と、をさらに含んでおり、それぞれのペアの測定値は、前記位置探知装置(2)と前記探知対象装置(1)との間で計算された距離(d)と角度(q)とで成り、前記角度(q)は、地理的および一時的な第1位置と第2位置との間、あるいは地理的および一時的な第2位置と第3位置との間で前記位置探知装置が移動した距離を表す線と地磁北とで形成され、第1の一時的地理的位置は前記位置探知装置の一時的起動位置または座標の原点(0,0)であることを特徴とするシステム。
【請求項2】
位置探知装置(2)は“方向”ベクトルをスクリーン(5)に表示させる表示手段をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
位置探知装置(2)はキーボード等のデータ入力手段をさらに含んでおり、ユーザを識別するコードを入力させることを特徴とする請求項1と2記載のシステム。
【請求項4】
高周波通信手段は高周波送信器または受信器であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
探知対象装置(1)内の高周波通信手段は、高周波によって位置探知装置(2)へ送信される特定承認コードを有することを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
探知対象装置と位置探知装置との間の距離の予測値を決定するために受信される信号を処理する手段は、2つの高周波通信手段間の距離を継続的およびリアルタイムで測定することを特徴とする請求項4または5記載のシステム。
【請求項7】
距離(d)を決定するための処理手段はRTOA(到達往復時間)プロセスを実行するのに適切なものであることを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
距離(d)を計算するために受信電力を測定することで、処理手段はRSSI(高周波信号強度インディケーション)プロセスを実行するのに適切なものであることを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項9】
信号をフィルタ処理し、ノイズ除去し、2つの送信器または受信器間の距離を効果的に予測するためにファジーロジックプロセスを利用してノイズを除去すると同時に、受信信号のレベルを予測するため、信号処理手段はニューラルネットワーク(人工知能)に基づく計算手段をさらに含んでいることを特徴とする請求項8記載のシステム。
【請求項10】
探知対象装置(1)は可聴周波数とカウンターを変化させる手段をさらに含んでいることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
“方向”ベクトルと称されるベクトルを計算するための計算手段は、角度と計算された関連距離とから位置を決定する手段を含んでおり、その手段は、その中心が前記角度を利用して決定され、その半径が探知対象装置と位置探知装置との間の予測距離である円の形態で位置図を発生させる位置を決定する手段であって、前記位置を決定する前記手段の計算は、その交点が最後の円の中心からの前記方向ベクトルである3つの円を発生させるように少なくとも3回反復されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
位置探知装置は、探知対象装置と位置探知装置との通信が中断されると警告メッセージをスクリーン上に表示させる手段を含んでいることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
角度を測定する手段は、位置探知装置が始点から第2測定位置まで移動した距離、または第2測定位置と第3測定位置との間の距離を表す直線と磁北とによって形成される角度(q)を常時知らせる電子コンパス(10)によって提供されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
電子コンパス(10)は、システムが始動すると磁北との角度を測定するために利用される地磁気の変化を検出するホール効果センサを含んでいることを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
静止状態または移動状態である物体または人物の位置探知のための方法であって、
少なくとも1つの待機(スリープ)状態である高周波通信手段を含む位置探知器を探知対象物体または人物に設置するステップと、
高周波通信手段を含む位置探知装置を送信モードに切り替えるステップと、
探知対象装置の高周波通信手段に位置探知装置から警告信号を送信するステップと、を含んでおり、前記探知対象装置は前記警告信号を、前記探知対象装置を始動させる通常受信モードで受信し、
本方法はさらに、
受信モードで前記探知対象装置のカウントダウンを開始させる時計カウンターを始動させるステップと、
前記位置探知装置からキャリア信号を送信するステップと、
カウントダウン終了時に前記探知対象装置が前記キャリア信号を受領していなければ、前記キャリア信号を別の周波数で捕獲するために提案された様々な可聴周波数で走査するために前記位置探知装置を周波数ホッピングモード(ホッピング)に切り替えるステップと、
前記キャリア信号が受信されたら、前記探知対象装置を送信モードに切り替え、受領確認のために受信信号を前記位置探知装置へと送信するステップと、
前記位置探知装置によって受信された前記探知対象装置からの信号を処理し、前記探知対象装置と前記位置探知装置との間の予測距離を決定するステップと、
前記予測距離を保存するステップと、
磁北との角度を測定するステップと、を含んでおり、前記角度は前記予測距離に関係する磁北と、それぞれの測定位置間における前記位置探知装置の経路とよって形成され、
本方法はさらに、
電子コンパスで発生される角度と、保存された予測距離とから、その中心が前記角度で決定され、その半径が高周波通信手段間の予測距離である円の形態で位置図を発生させることで位置を決定するステップと、
3つの円を発生させるために前記計算をユーザの異なる3地点で少なくとも3回反復するステップと、を含んでおり、最後の円の交点は円の中心を決定し、ベクトルはユーザが従うべき方向を指し、
前記位置探知装置のディスプレー上に前記方向ベクトルを表示することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−515044(P2010−515044A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543503(P2009−543503)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002180
【国際公開番号】WO2008/099069
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509181758)
【出願人】(509181769)
【Fターム(参考)】