説明

物体検出装置及び物体検出方法

【課題】誤結合検出を防止することにより、物体検出精度を向上させることができる、物体検出装置及び物体検出方法を提供すること。
【解決手段】物体検出装置200において、検出物体領域補正部103が、基準画像平面内の座標群と、レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、検出物体領域設定部102によって設定された検出物体領域を補正する。こうすることで、検出物体領域が誤結合の結果として得られたものであっても、その検出物体領域を移動速度マップ情報を用いて修正することができる。この結果、物体検出精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検出装置及び物体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ及びステレオカメラの両方を利用した物体測位検出装置が提案されている。一般的に、物体検出装置では、検出対象エリアに物体が存在しているのにも関わらず検出できないこと(つまり、未検出)、検出対象エリアに物体が存在していないのにも関わらず検出してしまうこと(つまり、誤検出)、又は、物体を検出できたとしても、複数の物体を単一の物体として検出してしまうこと(つまり、誤結合検出)、若しくは、単一の物体を複数の物体と検出してしまうこと(つまり、誤分離検出)が起こりうる。
【0003】
このような検出ミスを回避する工夫として、例えば、検出閾値を調整することが行われている。この検出閾値は、ミリ波レーダでは、電波反射強度値に対して設定され、ステレオカメラでは、視差抽出量に対して設定される。
【0004】
しかしながら、こうした検出閾値の調整だけでは、未検出及び誤検出を防ぐことはできても、誤結合検出又は誤分離検出を完全に防ぐことは困難である。
【0005】
このような課題に対して、特許文献1には、誤分離検出を防ぐ物体検出装置が開示されている。具体的には、当該物体検出装置では、まず、ステレオカメラによって撮像されたステレオ画像を用いて検出対象物体候補群を検出する。次に、各検出対象物体候補に対応する画像領域内の各画素の輝度値に基づいて、複数の検出対象物体候補を結合して1つの検出対象物体候補として扱うか否かを決定する際に用いる閾値が変更される。
【0006】
また、特許文献2では、誤分離検出及び誤結合検出の頻度を低減するために、ミリ波レーダによって検出された検出対象物体候補群を結合して1つの検出対象物体として扱うか否かを決定する基準(つまり、結合条件)として、検出対象物体の想定サイズが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−224936号公報
【特許文献2】特開2005−182137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1のように、複数の検出対象物体候補が1つの物体に属するか否かを判定する基準として輝度値を用いる場合には、検出対象物体候補間で輝度値の違いが少ない場合(例えば、複数の検出対象物体候補が同じ色の複数の車両に相当する場合、又は、複数の検出対象物体候補が同じ色の服装をした複数の人物に相当する場合)には、誤結合検出が起こってしまう。
【0009】
また、上記した特許文献2のように、複数の検出対象物体候補が1つの物体に属するか、又は、複数の検出対象物体候補がそれぞれ異なる物体に属するのかを決定する基準として検出対象物体の想定サイズを用いる場合には、検出対象物体が想定される姿勢と異なるとき(例えば、車両が横向きのとき)、又は、小さいサイズの複数の物体が近接しているとき(例えば、小型車と二輪車とが併走しているとき)等には、誤分離検出又は誤結合検出が起こりうる。
【0010】
本発明の目的は、誤結合検出を防止することにより、物体検出精度を向上させることができる、物体検出装置及び物体検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の物体検出装置は、画像平面内の座標群とステレオカメラによって撮影された画像に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたカメラ距離マップ情報、又は、前記カメラ距離マップ情報と、前記画像平面内の座標群とレーダによって検出された情報に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたレーダ距離マップ情報との合成マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び前記所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出する候補点抽出手段と、前記抽出された候補点群を、各候補点に対応付けられた物体の存在に関する情報に基づいてグルーピングし、1つのグループに含まれるすべての候補点を含む、前記画像平面内の領域を、第1検出物体領域として設定する設定手段と、前記画像平面内の座標群と、前記レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、前記第1検出物体領域を補正する補正手段と、を具備する。
【0012】
本発明の一態様の物体検出方法は、画像平面内の座標群とステレオカメラによって撮影された画像に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたカメラ距離マップ情報、又は、前記カメラ距離マップ情報と、前記画像平面内の座標群とレーダによって検出された情報に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたレーダ距離マップ情報との合成マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び前記所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出し、前記抽出された候補点群を、各候補点に対応付けられた物体の存在に関する情報に基づいてグルーピングし、1つのグループに含まれるすべての候補点を含む、前記画像平面内の領域を、検出物体領域として設定し、前記画像平面内の座標群と、前記レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、前記検出物体領域を補正する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、誤結合検出を防止することにより、物体検出精度を向上させることができる、物体検出装置及び物体検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る物体検出処理装置の主要構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る物体検出装置の構成を示すブロック図
【図3】ステレオ画像を示す図
【図4】カメラ距離マップ情報の一例を示す図
【図5】検出装置の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)を示す図
【図6】実施の形態1における検出物体領域補正部の構成を示すブロック図
【図7】座標変換処理の説明に供する図
【図8】座標変換処理の説明に供する図
【図9】速度分布生成処理の説明に供する図
【図10】検出物体領域設定処理の説明に供する図
【図11】検出物体領域補正処理の説明に供する図
【図12】本発明の実施の形態2に係る物体検出装置の構成を示すブロック図
【図13】平滑化処理後の移動速度マップ情報の一例を示す図
【図14】本発明の実施の形態3に係る検出物体領域補正部の構成を示すブロック図
【図15】検出物体領域補正処理の説明に供する図
【図16】本発明の実施の形態4に係る検出物体領域補正部の構成を示すブロック図
【図17】検出物体領域補正処理の説明に供する図
【図18】本発明の実施の形態5に係る物体検出装置の構成を示すブロック図
【図19】フィルタ部による処理の説明に供する図
【図20】速度発生位置及び速度値についての誤差の説明に供する図
【図21】本発明の実施の形態6に係る物体検出装置の構成を示すブロック図
【図22】速度マップ情報補正部が取得するカメラ距離マップ情報の説明に供する図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
【0016】
[実施の形態1]
[物体検出処理装置の主要構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る物体検出処理装置100の主要構成を示す。図1において、物体検出処理装置100は、物体候補点抽出部101と、検出物体領域設定部102と、検出物体領域補正部103とを有する。
【0017】
物体検出処理装置100において、物体候補点抽出部101は、基準画像平面内の座標群と、ステレオカメラによって撮影された画像に基づいて得られた各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたカメラ距離マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出する。又は、物体候補点抽出部101は、カメラ距離マップ情報と、基準画像平面内の座標群とレーダによって検出された情報に基づいて得られた各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたレーダ距離マップ情報との合成マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出する。
【0018】
そして、検出物体領域設定部102は、物体候補点抽出部101において抽出された候補点群を、各候補点群に対応付けられた物体の存在に関する情報に基づいてグルーピングし、1つのグループに含まれるすべての候補点を含む、基準画像平面内の領域を、検出物体領域として設定する。
【0019】
そして、検出物体領域補正部103は、基準画像平面内の座標群と、レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、検出物体領域設定部102によって設定された検出物体領域を補正する。
【0020】
ここで、カメラ距離マップ情報における「物体の存在に関する情報」とは、例えば、視差値、又は、距離値、又は視差値のヒストグラムである。一方、レーダ距離マップ情報における「物体の存在に関する情報」とは、例えば、距離値、又は、反射電力強度である。また、合成マップ情報における「物体の存在に関する情報」とは前述のカメラ距離マップ情報及びレーダ距離マップ情報における物体の存在に関する情報を基に算出した合成値である。
【0021】
[物体検出装置の構成]
図2は、本発明の実施の形態1に係る物体検出装置200の構成を示す。物体検出装置200は、物体検出処理装置100を含んでいる。図2において、物体検出処理装置200は、物体候補点抽出部101と、検出物体領域設定部102と、検出物体領域補正部103と、ステレオカメラ201と、ミリ波レーダ202と、距離マップ情報算出部203,204と、座標変換部205,206,208と、合成部207と、速度分布生成部209とを有する。ステレオカメラ201と距離マップ情報算出部203とは、第1の測位系を構成し、ミリ波レーダ202と距離マップ情報算出部204とは、第2の測位系を構成する。
【0022】
ステレオカメラ201は、複数のカメラから構成され、当該複数のカメラで撮影したカメラ画像(つまり、ステレオ画像)を距離マップ情報算出部203へ出力する。
【0023】
例えば、ステレオカメラ201は、2つのカメラで構成される。そして、当該2つのカメラは、例えば、20センチメートル離れた位置に並列配置される。この状態のステレオカメラ201によって20メートル程度離れた位置に存在する車両を撮影した画像が、図3に示されている。図3Aは、撮影方向に向かって左側に配設されたカメラによって撮影された画像(つまり、左カメラ画像)が示され、図3Bには、撮影方向に向かって右側に配設されたカメラによって撮影された画像(つまり、右カメラ画像)が示されている。
【0024】
距離マップ情報算出部203は、ステレオカメラ201から出力されたステレオ画像に基づいて、カメラ距離マップ情報を算出する。具体的には、距離マップ情報算出部203は、左カメラ画像と右カメラ画像とにおいて同一対象物が映っている位置のズレ(つまり、視差)に基づいて、その対象物とステレオカメラ201との離間距離を算出する。距離マップ情報算出部203は、左カメラ画像及び右カメラ画像の全画素についてこの離間距離を算出することにより、カメラ距離マップ情報を算出する。
【0025】
対象物とステレオカメラ201との離間距離は、例えば、次の式(1)によって算出することができる。
【数1】

ただし、Zは、ステレオカメラから対象物までの距離[m]、Bは、カメラ間隔[m]、fは、カメラの焦点距離[m]、Pxは、画像水平軸方向における1画素あたりの長さ[m/pixel]、dは、視差[pixel]である。
【0026】
より詳細には、視差は、例えば、次の方法によって算出される。左カメラ画像及び右カメラ画像の内の一方を基準画像、もう一方を参照画像とする。先ず、基準画像から所定サイズ(例えば、4×4画素)の部分画像(つまり、部分基準画像)を設定する。また、参照画像内で、所定サイズの探索範囲(例えば、数十画素程度)を設定する。そして、この探索範囲内で、部分基準画像と同じサイズの部分参照画像をその位置を順次ずらしながら設定し、部分基準画像と各部分参照画像との輝度値に基づいて評価関数を計算することにより、部分基準画像と対応する部分参照画像を特定する。この部分基準画像と特定された部分参照画像とのズレが視差に対応する。
【0027】
このような処理によって視差が算出されるので、部分基準画像及び部分参照画像における輝度値変化が少ない場合には、有効な視差が求まらない。すなわち、例えば、車両の天井又は路面のような模様の少ない撮影対象面に関しては、視差を得ることが難しい。
【0028】
図4は、カメラ距離マップ情報の一例を示す。図4に示されるカメラ距離マップ情報は、図3に示される右カメラ画像及び左カメラ画像から求められたものである。図4においては、「物体の存在に関する情報」として、視差値が用いられている。そして、視差の大小が濃淡として表されており、視差の求められない領域は、視差値がゼロとされるので、白色で示されている。また、図4に示されるU,Vは、実空間座標(X,Y,Z)と区別される、画像平面座標を示している。画像平面座標系において、各座標は、ピクセルに対応し、画像横方向をU座標,画像縦方向をVと定義している。
【0029】
図2に戻り、ミリ波レーダ202は、ミリ波を放射し、当該放出されたミリ波の反射波を検出する。そして、ミリ波レーダ202は、検出結果を距離マップ情報算出部204へ出力する。
【0030】
ミリ波レーダ202は、例えば、FMCW方式が適用され、ビーム幅が狭い電波を出力できるアンテナを具備する。そして、ミリ波レーダ202は、そのアンテナを機械的に回転させた上で反射波を受信する。因みに、FMCW方式によれば、ミリ波レーダ202から対象物体までの距離及び方向、対象物体の移動速度、並びに、対象物体からの反射電力強度を取得することができる。
【0031】
距離マップ情報算出部204は、ミリ波レーダ202から出力された検出結果に基づいて、レーダ距離マップ情報を算出する。ミリ波レーダ202によって直接的に取得される「対象物体の移動速度」はドップラー速度である。すなわち、対象物体からミリ波レーダ202の設置位置へ向かう方向の速度である。
【0032】
座標変換部205は、カメラ距離マップ情報を座標変換することにより、カメラ距離マップ情報の座標系と「基準座標系」とを一致させる。座標変換部205において用いられる「基準座標系」は、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)の内の一方の座標軸U’と、視差とによって規定される座標系である。図5に、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)について示す。
【0033】
具体的には、座標変換部205は、2つのステップによってカメラ距離マップ情報の座標変換処理を行う。この処理の詳細については、後述する。
【0034】
座標変換部206は、レーダ距離マップ情報を座標変換することにより、レーダ距離マップ情報の座標系と「基準座標系」とを一致させる。座標変換部206において用いられる「基準座標系」も、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)の内の一方の座標軸U’と、視差とによって規定される座標系である。
【0035】
具体的には、座標変換部206は、2つのステップによってレーダ距離マップ情報の座標変換処理を行う。この処理の詳細については、後述する。
【0036】
合成部207は、座標変換部205において座標変換されたカメラ距離マップ情報と、座標変換部206において座標変換されたレーダ距離マップ情報とを合成し、「合成マップ情報」を生成する。
【0037】
座標変換部208は、ミリ波レーダ202によって直接的に取得された移動速度マップ情報を、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の移動速度マップ情報に変換する。すなわち、変換後の移動速度の基準は、物体検出装置200の仮想設置位置となる。この座標変換部208によって得られた、変換後の移動速度マップ情報は、速度分布生成部209へ出力される。
【0038】
速度分布生成部209は、座標変換部208から受け取る変換後の移動速度マップ情報を補正することにより、座標変換部205によって座標変換されたカメラ距離マップ情報の解像度と一致する移動速度マップ情報を生成する。
【0039】
物体候補点抽出部101は、合成部207において形成された合成マップ情報において、所定値以上の合成値を持つすべての座標と各座標の合成値とを抽出し、抽出された情報を検出物体領域設定部102へ出力する。この所定値以上の合成値を持つ座標は、「物体候補点」と呼ばれる。
【0040】
検出物体領域設定部102は、物体候補点抽出部101において抽出された物体候補点群を、各物体候補点に対応付けられている合成値に基づいてグルーピングし、1つにグルーピングされた複数の物体候補点を含む領域(以下では、「検出物体領域」と呼ばれることがある)を設定する。
【0041】
検出物体領域補正部103は、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報に基づいて補正することにより、最終的な検出物体領域を設定する。
【0042】
具体的には、実施の形態1における検出物体領域補正部103は、図6に示すように、誤結合補正処理部131を有する。誤結合補正処理部131は、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域に対応する、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報における対応領域を、U’軸方向に同じ大きさを持つ複数の部分領域に分割する。そして、誤結合補正処理部131は、その複数の部分領域の内の代表部分領域と、当該代表部分領域を除く各部分領域との、速度値についての相関値を算出する。そして、誤結合補正処理部131は、算出された相関値の分布に基づいて、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を補正することにより、最終的な検出物体領域を設定する。
【0043】
[物体検出装置200の動作]
以上の構成を有する物体検出装置200の動作について説明する。
【0044】
<座標変換処理1>
座標変換部205は、カメラ距離マップ情報を座標変換することにより、カメラ距離マップ情報の座標系と「基準座標系」とを一致させる。座標変換部205において用いられる「基準座標系」は、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)の内の一方の座標軸U’と、視差とによって規定される座標系である。
【0045】
具体的には、座標変換部205は、次の2つのステップによってカメラ距離マップ情報の座標変換処理を行う。
【0046】
(1)座標変換部205は、物体検出装置200が実際に設置されている位置から撮影された画像を用いて得られた、画像平面座標(U,V)内のカメラ距離マップ情報(図7A参照)を、画像平面座標(U’,V’)に投影することにより、座標変換を行う。
【0047】
具体的には、座標変換前の座標点のベクトルu^=(u,v,1,d)、座標変換後の座標点のベクトルu^’=(u’,v’,1,d’)とすると、u^’=S−1DSu^の関係が成り立つ。ここで、Dは、ステレオカメラの設置パラメータ(設置高、回転角度)を含む変換行列を表し、Sは、カメラ補正パラメータ(カメラ間隔又は焦点距離など)の行列を表す。
【0048】
(2)座標変換部205は、画像平面座標系(U’,V’)のカメラ距離マップ情報から、各U’座標におけるV’方向の視差ヒストグラムを算出する。特に、座標変換部205は、V’座標の範囲を路面より上方の画像に対応する部分に絞って、視差ヒストグラムを算出する。これにより、カメラ距離マップ情報の「基準座標系」への座標変換処理が行われる。「基準座標系」へ座標変換されたカメラ距離マップ情報の一例が、図7Bに示されている。
【0049】
(u’,v’)座標における視差をd(u’,v’)、(u’,d)座標における級数をN(u’,d)とすると、d(u’,v’)からN(u’,d)への変換は、次のように表される。
for(i=0;i<n;i++){for(j=0;j<m;j++){N(i,d(i,j))++;}}
ここで、n、mは、U’座標の範囲及びV’座標の範囲をそれぞれ表す。
【0050】
<座標変換処理2>
座標変換部206は、レーダ距離マップ情報を座標変換することにより、レーダ距離マップ情報の座標系と「基準座標系」とを一致させる。座標変換部206において用いられる「基準座標系」も、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系(U’,V’)の内の一方の座標軸U’と、視差とによって規定される座標系である。
【0051】
具体的には、座標変換部206は、次の2つのステップによってレーダ距離マップ情報の座標変換処理を行う。
【0052】
(1)座標変換部206は、各方向(つまり、方位角及び俯角のペアにより特定される方向)と各方向の「物体の存在に関する情報」とが対応付けられたレーダ距離マップ情報を、物体検出装置200の設置平面と平行な面(物体検出装置200の設置平面も含まれる)に投影することにより、座標変換を行う。この座標変換が行われた後のレーダ距離マップ情報の一例が、図8Aに示されている。
【0053】
(2)座標変換部206は、物体検出装置200の設置平面と平行な面に投影されたレーダ距離マップ情報から、各U’、視差座標における反射電力強度分布を算出する。これにより、レーダ距離マップ情報の「基準座標系」への座標変換処理が行われる。「基準座標系」へ座標変換されたレーダ距離マップ情報の一例が、図8Bに示されている。
【0054】
ここで、ステレオカメラ201の設置位置及び角度及びミリ波レーダ202の設置位置及び角度が一致すると仮定すれば、座標変換部206による反射電力強度分布の算出処理は、前述のカメラ補正パラメータ行列Sを用いて、次のように表すことができる。
p^’=S−1p^
ここで、ベクトルp^=(x,0,z,1)は、物体検出装置200の設置平面と平行な面の座標(x,z)を表し、ベクトルp^’=(u’,0,1,d)は、U’と視差値とから規定される平面内の座標(u’,d)を表す。
【0055】
<距離マップ情報合成処理>
合成部207は、レーダ距離マップ情報とカメラ距離マップ情報との間で対応座標の「物体の存在に関する情報」を相乗平均することにより、カメラ距離マップ情報と、レーダ距離マップ情報とを合成する。これにより、「合成マップ情報」が生成される。なお、合成処理の前に、レーダ距離マップ情報及びカメラ距離マップ情報に対して正規化処理が施されても良い。この正規化処理は、レーダ距離マップ情報(又は、カメラ距離マップ情報)に含まれる(U’,視差値)座標群のそれぞれに対応付けられたレベル値の内の最大値によって、他のレベル値を除算することにより行われる。
【0056】
<座標変換処理3>
座標変換部208は、ミリ波レーダ202によって直接的に取得された移動速度マップ情報を、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の移動速度マップ情報に変換する。すなわち、変換後の移動速度の基準は、物体検出装置200の仮想設置位置となる。この座標変換は、例えば、以下の式(2)を用いて行われる。
【数2】

【0057】
式(2)において、hは、ミリ波レーダ202の設置位置の高さであり、dは、対象物体の検出距離であり、vは、対象物体とミリ波レーダ202の設置位置とを結ぶ方向に関する移動速度であり、v’は、物体検出装置200の仮想設置位置を路面上とした場合の移動速度である。すなわち、座標変換部208において得られる移動速度マップ情報は、画像平面座標(U’,V’)によって表されている。この座標変換部208によって得られた、変換後の移動速度マップ情報は、速度分布生成部209へ出力される。
【0058】
<速度分布生成処理>
速度分布生成部209は、座標変換部208から受け取る移動速度マップ情報を補正することにより、座標変換部205によって座標変換されたカメラ距離マップ情報の解像度と一致する移動速度マップ情報を生成する。
【0059】
図9は、速度分布生成処理の説明に供する図である。図9Aは、座標変換部208から受け取る移動速度マップ情報を示す図である。図9Aにおいては、レーダから遠ざかる方向(視差が大きくなる方向)に向けての速度値の大小が、濃淡として表されている。図9Bは、カメラ距離マップ情報の解像度と一致する移動速度マップ情報を示す図である。すなわち、図9Bの解像度は、図9Aの解像度よりも高くなっている。
【0060】
<物体候補点抽出処理>
物体候補点抽出部101は、合成部207において形成された合成マップ情報において、所定値以上の合成値を持つすべての座標と各座標の合成値とを抽出し、抽出された情報を検出物体領域設定部102へ出力する。
【0061】
<検出物体領域設定処理>
検出物体領域設定部102は、物体候補点抽出部101において抽出された物体候補点群を、各物体候補点に対応付けられている合成値に基づいてグルーピングし、1つのグルーピングされた複数の物体候補点を含む領域(つまり、「検出物体領域」)を設定する。
【0062】
図10は、検出物体領域設定処理の説明に供する図である。図10Aには、物体候補点抽出部101において抽出された物体候補点群が示されている。各物体候補点には、その座標及び合成値が対応付けられている。
【0063】
そして、検出物体領域設定部102は、次の条件を用いて、物体候補点群に対してラベリングする。
【0064】
(条件1)任意の物体候補点と予め決められた距離Dの範囲内に存在する物体候補点に対して、第1種のラベルを付与する。
(条件2)条件1にて第1種のラベルが付与された物体候補点群における合成値の平均値を算出し、条件1にて第1種のラベルが付与された物体候補点群の内、その算出された平均値との差が予め決められた値Pの範囲内に収まる合成値を持つ物体候補点に対して、第1種ラベルと異なる第2種ラベルを付与する。
【0065】
そして、検出物体領域設定部102は、第2種ラベルが付与された物体候補点群をすべて含む矩形(つまり、検出物体領域候補)を生成し、当該検出物体領域候補によって規定される検出物体領域を設定する。ただし、生成しようとする検出物体領域候補の内側に他の検出物体領域候補が存在する場合、その検出物体領域候補を含まない矩形を生成する。また、生成した検出物体領域候補内に当てはまらなかった物体候補点に関しては、再度、条件1からラベリング処理を施す。
【0066】
図10Bには、上記処理により設定された検出物体領域が示されている。図10Bにおける白抜きの点が、条件2において第2種ラベルが付与された物体候補点の例であり、その点を含む矩形が検出物体領域である。
【0067】
<検出物体領域補正処理>
検出物体領域補正部103は、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報に基づいて補正することにより、最終的な検出物体領域を設定する。実施の形態1では、検出物体領域補正として、誤結合補正処理が行われる。
【0068】
検出物体領域補正部103の誤結合補正処理部131は、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域に対応する、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報における対応領域を、同じ大きさを持つ複数の部分領域にU’軸方向で分割する。そして、誤結合補正処理部131は、その複数の部分領域の内の代表部分領域と、当該代表部分領域を除く各部分領域との、速度値についての相関値を算出する。すなわち、各部分領域から(U’,視差)座標に対応する速度値から構成されるデータ列(以下では、特に、代表部分領域に対応するデータ列は「サンプル速度分布」と呼ばれることがある)が得られるので、データ列同士の相関値を算出することにより、速度値についての相関値が求められる。そして、誤結合補正処理部131は、算出された相関値の分布に基づいて、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を補正することにより、最終的な検出物体領域を設定する。
【0069】
図11は、検出物体領域補正処理の説明に供する図である。図11Aには、検出物体領域設定部102によって設定された検出物体領域の一例が示されている。誤結合補正処理部131は、設定された検出物体領域を、U’座標単位で複数の部分領域に分割する。そして、ここでは、誤結合補正処理部131は、最もU’座標の小さい部分領域(つまり、U’座標がU’0である部分領域)を代表部分領域として選択している。
【0070】
この代表部分領域に対応するサンプル速度分布の一例が、図11Bに示されている。そして、誤結合補正処理部131は、サンプル速度分布と、代表部分領域を除く各部分領域に対応する速度分布との相関値を算出する。サンプル速度分布(U’=U’0)と、他のU’座標の速度分布(U’=x)とすると、両分布の相関値z(U’0,x)は、次の式(3)によって算出される。
【数3】

ただし、式(3)において、v(U’,d)は、(U’,d)座標に対応する速度値である。
【0071】
そして、誤結合補正処理部131は、算出された相関値の分布のパターンが分割条件を満たす場合に、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を分割する。
【0072】
図11Cは、代表部分領域を除く各部分領域について算出された相関値が視差軸に対してプロットされた相関値分布を示す。図11Cに示される相関値分布では、U’3において相関値が大きく変化する。相関値分布がこのようなパターンを示す場合には、誤結合補正処理部131は、検出物体領域設定部102において設定された1つの検出物体領域を、U’3を境界として2つの検出物体領域に分割する。図11Dは、分割された2つの検出物体領域を例示する。この2つの検出物体領域が、実施の形態1では、最終的な検出物体領域となる。
【0073】
このような分割処理を行う理由は、相関値が大きく変化する箇所がある場合には、検出物体領域設定部102における誤結合によって複数の物体が同一物体として検出されており、相関値が大きく変化した座標に物体の境界が存在するものと判断できるからである。
【0074】
こうして設定された最終的な検出物体領域(つまり、物体検出結果)は、例えば、表示装置(図示せず)に出力されて、右画像(又は左画像)と重畳されて表示されても良いし、交通信号制御装置などの制御装置(図示せず)へ出力されて活用されても良い。
【0075】
以上のように本実施の形態によれば、物体検出装置200において、検出物体領域補正部103が、基準画像平面内の座標群と、レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、検出物体領域設定部102によって設定された検出物体領域を補正する。
【0076】
こうすることで、検出物体領域が誤結合の結果として得られたものであっても、その検出物体領域を移動速度マップ情報を用いて修正することができる。この結果、物体検出精度を向上させることができる。
【0077】
なお、上記説明では、複数の部分領域は、U’座標方向で検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域が分割されることにより形成されたが、これに限定されるものではなく、視差軸方向で分割されることにより形成されても良い。要は、誤結合補正処理部131は、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域に対応する移動速度マップ情報における対応領域がU’軸方向又は視差軸方向で同じ大きさに分割された複数の部分領域における、部分領域間の相関値に基づいて、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を分割できれば良い。
【0078】
[実施の形態2]
実施の形態2では、検出物体領域補正処理に用いられる移動速度マップ情報に対してフィルタリング処理を事前に行う。
【0079】
図12は、本発明の実施の形態2に係る物体検出装置300の構成を示す。図12において、物体検出装置300は、フィルタ部301を有する。
【0080】
フィルタ部301は、速度分布生成部209によって生成された移動速度マップ情報に対して、平滑化処理を施す。これにより、移動速度マップ情報の(U’,視差)平面内における速度値分布を滑らかにすることができる。図13には、平滑化処理後の移動速度マップ情報の一例が示されている。
【0081】
一般に、ステレオカメラによって生成される距離マップ情報の解像度は、ミリ波レーダによって生成される距離マップ情報の解像度よりも高い。従って、座標変換部208において得られる移動速度マップ情報の分布は、座標変換部205において得られるカメラ距離マップ情報の分布よりも粗くなる傾向がある。そこで、速度分布生成部209によって生成された移動速度マップ情報に対して、平滑化処理を施すことにより、移動速度マップ情報の(U’,視差)平面内における速度値分布を滑らかにする。これにより、後段の検出物体領域補正処理において、例えば領域長補正の解像度を高めることができ、より正確な検出物体領域補正が可能となる。
【0082】
[実施の形態3]
実施の形態3では、検出物体領域補正処理として、誤結合補正処理に加えて、検出長補正処理が行われる。実施の形態3で説明する処理は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれにも適用可能である。実施の形態3に係る物体検出装置の基本構成は、実施の形態1に係る物体検出装置200と同様であるので、図2を援用して説明する。
【0083】
実施の形態3における物体検出装置200の検出物体領域補正部103は、図14に示すように、誤結合補正処理部131と、検出長補正処理部141とを有する。
【0084】
検出長補正処理部141は、誤結合補正処理部131において分割された複数の検出物体領域のそれぞれに対して、基本的には、誤結合補正処理部131と同じ処理を行う。すなわち、検出長補正処理部141は、誤結合補正処理部131において設定された検出物体領域に対応する、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報における対応領域を同じ大きさを持つ複数の部分領域にU’軸方向又は視差軸方向で分割する。
【0085】
ただし、検出長補正処理部141は、誤結合補正処理部131において分割した方向と異なる方向で分割する。すなわち、誤結合補正処理部131においてU’軸方向で分割された場合には、検出長補正処理部141は、視差軸方向で分割し、誤結合補正処理部131において視差軸方向で分割された場合には、検出長補正処理部141は、U’軸方向で分割する。ここでは、検出長補正処理部141が視差軸方向で分割する場合について説明する。
【0086】
そして、検出長補正処理部141は、その複数の部分領域の内の代表部分領域と、当該代表部分領域を除く各部分領域との、速度値についての相関値を算出する。すなわち、各部分領域から(U’,視差)座標に対応する速度値から構成されるデータ列(つまり、「サンプル速度分布」)が得られるので、データ列同士の相関値を算出することにより、速度値についての相関値が求められる。
【0087】
そして、検出長補正処理部141は、算出された相関値の分布に基づいて、検出物体領域設定部102において設定された検出物体領域を補正することにより、最終的な検出物体領域を設定する。
【0088】
図15は、検出物体領域補正処理の説明に供する図である。図15Aは、誤結合補正処理部131において設定された2つの検出物体領域の一例を示す。
【0089】
検出長補正処理部141は、設定された検出物体領域を、視差座標単位で複数の部分領域に分割する。そして、ここでは、検出長補正処理部141は、最も視差座標の大きい部分領域(つまり、視差座標がd0である部分領域)を代表部分領域として選択している。そして、検出長補正処理部141は、この代表部分領域に対応するサンプル速度分布(図示せず)と、代表部分領域を除く各部分領域に対応する速度分布との相関値を算出する。サンプル速度分布の視差dをd0、他の視差座標の速度分布の視差をd=xとすると、両分布の相関値z(d0,x)は、次の式(4)によって算出される。
【数4】

ただし、式(4)において、v(U’,d)は、(U’,d)座標に対応する速度値である。
【0090】
そして、検出長補正処理部141は、算出された相関値の分布のパターンが分割条件を満たす場合に、誤結合補正処理部131において設定された検出物体領域を分割する。図15Bは、代表部分領域を除く各部分領域について算出された相関値が視差軸に対してプロットされた相関値分布を示す。図15Bに示される相関値分布では、d3において相関値が大きく変化する。相関値分布がこのようなパターンを示す場合には、検出長補正処理部141は、誤結合補正処理部131において設定された1つの検出物体領域を、d3を境界として2つの検出物体領域に分割する。図15Cに分割された2つの検出物体領域を例示する。
【0091】
ただし、検出長補正処理部141は、誤結合補正処理部131と異なり、この2つの検出物体領域の内、代表部分領域が含まれる検出物体領域のみを最終的な検出物体領域として設定する。
【0092】
以上の処理構成により、本物体検出装置は、検出物体領域の大きさを補正することが出来るようになるため、より検出対象物体の実際の大きさに合わせた検出物体領域を生成することが出来る。
【0093】
[実施の形態4]
実施の形態4では、検出物体領域補正処理として、誤結合補正処理に加えて、誤分離補正処理が行われる。実施の形態4で説明する処理は、実施の形態1及び実施の形態2のいずれにも適用可能である。実施の形態4に係る物体検出装置の基本構成は、実施の形態1に係る物体検出装置200と同様であるので、図2を援用して説明する。
【0094】
実施の形態4における物体検出装置200の検出物体領域補正部103は、図16に示すように、誤結合補正処理部131と、誤分離補正処理部151とを有する。
【0095】
誤分離補正処理部151は、処理対象である複数の検出物体領域のそれぞれにおいて、平均速度分布を算出する。この処理対象である複数の検出物体領域には、検出物体領域設定部102において設定され且つ誤結合補正処理部131において分割されなかった検出物体領域又は誤結合補正処理部131において設定された検出物体領域が含まれる。誤分離補正処理部151は、処理対象である各検出物体領域において、U’軸方向又は視差軸方向で速度値の平均値を算出することにより、平均速度分布を算出する。
【0096】
例えば、誤分離補正処理部151は、処理対象の検出物体領域において、U’軸座標が共通し且つ視差座標が異なる複数の座標に対応する複数の速度値を平均化することにより、1つのU’軸座標に対応する平均値を算出する。そして、誤分離補正処理部151は、処理対象の検出物体領域における、全てのU’軸座標について平均値を算出する。これにより、誤分離補正処理部151は、処理対象の検出物体領域における、各U’座標に対応する速度平均値から構成されるデータ列(つまり、「平均速度分布」)が算出される。
【0097】
そして、誤分離補正処理部151は、処理対象である複数の検出物体領域のそれぞれについて算出された平均速度分布の間の相関値を算出する。
【0098】
そして、誤分離補正処理部151は、算出された相関値が結合基準閾値を超える場合には、その相関値の算出に用いられた2つの平均速度分布に対応する2つの検出物体領域を含む矩形領域を1つの検出物体領域として設定する。
【0099】
図17は、検出物体領域補正処理の説明に供する図である。図17Aには、処理対象である3つの検出物体領域(A〜C)が示されている。誤分離補正処理部151は、検出物体領域A〜Cのそれぞれについて平均速度分布を算出する。図17Bには、検出物体領域A〜Cのそれぞれについて算出された平均速度分布の一例が示されている。そして、誤分離補正処理部151は、検出物体領域A〜Cのそれぞれについて算出された平均速度分布の間の相関値を算出する。そして、誤分離補正処理部151は、算出された相関値が結合基準閾値を超える場合には、その相関値の算出に用いられた2つの平均速度分布に対応する2つの検出物体領域を含む矩形領域を1つの検出物体領域として設定する。図17Cには、検出物体領域A,Bの平均速度分布間の相関値が結合基準閾値を超えており、検出物体領域A,Bを含む矩形領域(同図では、検出物体領域A+B)が1つの検出物体領域として設定された様子が示されている。
【0100】
以上のように、実施の形態4における物体検出装置200によれば、複数の検出物体領域が同一の物体から生成された領域であるかどうか判断することが可能となり、同一の物体から生成された領域であると判断された場合、その検出物体領域を結合することで、誤分離検出を補正することができる。
【0101】
[実施の形態5]
実施の形態5では、検出物体領域補正処理に用いられる移動速度マップ情報に対してフィルタリング処理を事前に行う。実施の形態5で説明する処理は、実施の形態1、実施の形態3、及び実施の形態4のいずれにも適用可能である。
【0102】
図18は、本発明の実施の形態5に係る物体検出装置400の構成を示す。図18において、物体検出装置400は、フィルタ部401を有する。
【0103】
フィルタ部401は、速度分布生成部209によって生成された移動速度マップ情報に対して、平滑化処理を施す。この平滑化処理において用いられる平滑化フィルタは、移動速度マップ情報の視差座標を物体検出装置400の設置高さに応じた分だけ視差が大きくなる方向にシフトさせる特性を有している。すなわち、この平滑化フィルタは、移動速度マップ情報の視差座標を物体検出装置400の設置高さに応じた分だけ視差が大きくなる方向にシフトさせるような、重み付けが施されている。例えば、この平滑化フィルタを表すフィルタ係数は、式(5)に示す行列式で表される。
【数5】

【0104】
なお、式(5)で表されるフィルタ係数は、平滑化処理及びシフト処理の両方について反映されたものである。また、式(5)で表されるフィルタ係数によるシフト量は、視差が大きくなる方向に1視差座標である。また、図19は、フィルタ部401による処理の説明に供する図である。図19Aは、速度分布生成部209によって生成された移動速度マップ情報を示す。そして、図19Bは、図19Aの移動速度マップ情報に対してシフト量(d’0−d0)である平滑化フィルタが適用された後の移動速度マップ情報が示されている。
【0105】
ここで、物体検出装置400の設置位置の高さhが大きい場合(例えば、物体検出装置400が信号機の上に設置される場合)、座標変換部208によって変換された、物体検出装置400の仮想設置位置を路面上とした場合の移動速度マップ情報には、速度発生位置及び速度値に多少の誤差が含まれてしまう。
【0106】
図20は、速度発生位置及び速度値についての誤差の説明に供する図である。図20Aには、座標d0において速度v0で物体検出装置400へ近づく車両が示されている。通常、ミリ波レーダ202のアンテナビーム幅は、数度である。このため、図20Aに示されるように、ミリ波レーダ202の1つのアンテナでは、車両の高さが比較的高い場合、車両の路面近くからの反射波、及び、車両天井近くからの反射波の両方が受信されることになる。
【0107】
ここで、車両の天井に近い部分に対応する反射点をP1、物体検出装置400からP1までの距離をd1、車両の路面に近く部分に対応する反射点をP2、物体検出装置400からP2までの距離をd2とする。上述の通り、座標変換部208では、ミリ波レーダ202によって直接的に取得された移動速度マップ情報が、物体検出装置400の仮想設置位置を路面上とした場合の移動速度マップ情報に変換される。そのため、P1で検出された速度値をv1、P2で検出された速度値をv2とし、それぞれの変換後の値をv1’、v2’とすると、v1’及びv2’は、次の式(6)によって表される。
【数6】

【0108】
ここで、hは物体検出装置400の設置高を表す。物体検出装置400と反射点P2との高さの差はhと等しいので、v2’は、車両の速度v0に等しくなる。しかしながら、反射点P1と物体検出装置400との高さの差はhよりも小さくなるので、v1’は車両速度v0よりも大きくなる。すなわち、v1’には、誤差が含まれる。また、速度発生地点も、図20Bに示すように、実際の速度発生地点d0より近い点に変換されてしまう。このように誤差を含んだ速度発生位置及び速度値が、速度分布生成部209に入力されることになる。
【0109】
そこで、本実施の形態では、フィルタ部401において、速度分布生成部209によって生成された移動速度マップ情報に対して、移動速度マップ情報の視差座標を物体検出装置400の設置高さに応じた分だけ視差が大きくなる方向にシフトさせる特性を有する平滑化フィルタを用いた平滑化処理が施される。これにより、速度発生位置及び速度値に含まれる誤差に対応する誤差成分を移動速度マップ情報から除去することができる。そして、検出物体領域補正部103がこの誤差成分が除去された移動速度マップ情報に基づいて検出物体領域補正処理を行うことができるので、物体検出精度を向上させることができる。
【0110】
[実施の形態6]
実施の形態5では、フィルタを用いて速度発生位置及び速度値に含まれる誤差に対応する誤差成分を移動速度マップ情報から除去した。これに対して、実施の形態6では、座標変換後のカメラマップ情報を用いて速度発生位置及び速度値に含まれる誤差に対応する誤差成分を移動速度マップ情報から除去する。実施の形態6で説明する処理は、実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、及び実施の形態4のいずれにも適用可能である。
【0111】
図21は、本発明の実施の形態6に係る物体検出装置500の構成を示す。図21において、物体検出装置500は、速度マップ情報補正部501を有する。
【0112】
速度マップ情報補正部501は、座標変換部205において算出される、画像平面座標(U,V)内のカメラ距離マップ情報(図22A参照)が画像平面座標(U’,V’)に投影されたカメラ距離マップ情報(図22B参照)を取得する。
【0113】
そして、速度マップ情報補正部501は、この画像平面座標(U’,V’)に投影されたカメラ距離マップ情報を用いて、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報を補正する。
【0114】
具体的には、速度マップ情報補正部501は、画像平面座標(U’,V’)に投影されたカメラ距離マップ情報において、V’座標(つまり、物体の高さ情報に相当する)と視差値(つまり、物体の距離値に相当する)とに基づいて、実際の距離よりも物体検出装置500に近い側(つまり、視差値が小さい側)に変換された(U’,V’)座標を特定する。そして、速度マップ情報補正部501は、当該特定された(U’,V’)座標に対応する移動速度マップ情報における(U’,d)座標の速度値をゼロにすることにより、移動速度マップ情報を補正する。
【0115】
速度値がゼロに補正される、(U’,d)座標系における座標は、次のように表される。
【数7】

ただし、hは、物体検出装置500の設置位置の高さを表す。
【0116】
速度値がゼロに補正される、(U’,d)座標系における座標は、図20Bにおけるd0’に相当する。すなわち、速度マップ情報補正部501による補正処理によって、このd0’に対応する誤差成分を除去することができる。この誤差成分の除去により、物体検出装置500は、対象物体の高さに影響されることなく正確な物体位置と速度の検出が可能となる。
【0117】
[他の実施の形態]
(1)実施の形態1乃至6においては、物体候補点抽出処理の対象を合成マップ情報として説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、距離マップ情報算出部203において得られるカメラ距離マップ情報を物体候補点抽出処理の対象としても良い。すなわち、合成部207は、必須の構成要素ではない。また、この場合には、距離マップ情報算出部204及び座標変換部206も必須の構成要素ではない。
【0118】
(2)実施の形態1乃至6では、検出物体領域設定部102が物体候補点群に対してラベリングする際に移動速度マップ情報を用いていないが、用いることもできる。この場合には、上記した(条件1)及び(条件2)に続く(条件3)として次の条件が用いられる。
【0119】
(条件3)条件2にて第2種ラベルが付与された物体候補点群のそれぞれに対応する速度値を移動速度マップ情報から取得し、取得した複数の速度値の平均値を算出し、条件2にて第2種ラベルが付与された物体候補点群の内、その算出された平均値との差が予め決められた値Vの範囲内に収まる速度値を持つ物体候補点に対して、第1種ラベル及び第2種ラベルと異なる第3種ラベルを付与する。
【0120】
そして、検出物体領域設定部102は、第3種ラベルが付与された物体候補点群をすべて含む矩形(つまり、検出物体領域候補)を生成し、当該検出物体領域候補によって規定される検出物体領域を設定する。ただし、生成しようとする検出物体領域候補の内側に他の検出物体領域候補が存在する場合、その検出物体領域候補を含まない矩形を生成する。また、生成した検出物体領域候補内に当てはまらなかった物体候補点に関しては、再度、条件1からラベリング処理を施す。
【0121】
このように検出物体領域設定処理においても、速度分布生成部209において生成された移動速度マップ情報(又は、フィルタ等によって補正された移動速度マップ情報)を用いることにより、物体検出精度を向上させることができる。
【0122】
(3)実施の形態3では、検出物体領域補正部103が誤結合補正処理部131と検出長補正処理部141とを有する構成を説明し、実施の形態4では、検出物体領域補正部103が誤結合補正処理部131と誤分離補正処理部151とを有する構成を説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、検出物体領域補正部103が誤結合補正処理部131と検出長補正処理部141と誤分離補正処理部151とを有する構成としても良い。この場合には、誤結合補正処理部131と検出長補正処理部141と誤分離補正処理部151とは、この順番で接続される。そして、誤結合補正処理部131及び検出長補正処理部141の処理が終わった後に、誤分離補正処理部151が処理対象である複数の検出物体領域に対して処理を行う。
【0123】
(4)上記各実施の形態において説明した物体検出装置では、ミリ波レーダ202のアンテナ及びステレオカメラ201の撮像素子の光学部分と、その他の機能部とをそれぞれ別の筐体に分けて配置しても良い。その場合の物体検出装置からの距離は、ミリ波レーダ202のアンテナ及びステレオカメラ201の撮像素子の光学部分を含むセンサー部分からの距離と定義される。
【0124】
(5)上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0125】
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0126】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
【0127】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の物体検出装置及び物体検出方法は、誤結合検出を防止することにより、物体検出精度を向上させることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0129】
100 物体検出処理装置
101 物体候補点抽出部
102 検出物体領域設定部
103 検出物体領域補正部
131 誤結合補正処理部
141 検出長補正処理部
151 誤分離補正処理部
200,300,400,500 物体検出装置
201 ステレオカメラ
202 ミリ波レーダ
203,204 距離マップ情報算出部
205,206,208 座標変換部
207 合成部
209 速度分布生成部
301,401 フィルタ部
501 速度マップ情報補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像平面内の座標群とステレオカメラによって撮影された画像に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたカメラ距離マップ情報、又は、前記カメラ距離マップ情報と、前記画像平面内の座標群とレーダによって検出された情報に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたレーダ距離マップ情報との合成マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び前記所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出する候補点抽出手段と、
前記抽出された候補点群を、各候補点に対応付けられた物体の存在に関する情報に基づいてグルーピングし、1つのグループに含まれるすべての候補点を含む、前記画像平面内の領域を、第1検出物体領域として設定する設定手段と、
前記画像平面内の座標群と、前記レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、前記第1検出物体領域を補正する補正手段と、
を具備する物体検出装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記設定手段によって設定された検出物体領域に対応する、前記移動速度マップ情報における第1対応領域を、前記画像平面を規定する2つの座標軸の内の一方の座標軸の方向で所定サイズの複数の部分領域に分割し、
前記複数の部分領域の内の代表部分領域と前記代表部分領域を除く部分領域のそれぞれとの、前記検出移動速度に関する相関値を算出し、
前記算出された相関値に基づいて、前記第1検出物体領域を複数の第2検出物体領域に分割する、誤結合補正手段、
を具備する、
請求項1に記載の物体検出装置。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記複数の第2検出物体領域に対応する前記移動速度マップ情報における複数の第2対応領域のそれぞれを、前記画像平面を規定する2つの座標軸の内の他方の座標軸の方向で所定サイズの複数の部分領域に分割し、
各第2対応領域において、前記複数の部分領域の内の代表部分領域と前記代表部分領域を除く部分領域のそれぞれとの、前記検出移動速度に関する相関値を算出し、
各第2対応領域を前記算出された相関値に基づいて縮減することにより、第3検出物体領域を形成する、領域長補正手段、
を具備する、
請求項2に記載の物体検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記複数の第2検出物体領域及び前記第3検出物体領域の内の少なくとも2つを処理対象領域群とし、
各処理対象領域において、前記画像平面を規定する2つの座標軸の内の一方の座標軸の任意の座標が共通し且つ他方の座標軸の座標が異なる複数の座標に対応付けられた複数の検出速度値を平均化することにより前記任意の座標の平均値を算出し、
前記各処理対象領域における前記一方の座標軸の全ての座標についての平均値から構成される平均速度分布を算出し、
前記処理対象領域群の内の各2つの処理対象領間域間で平均速度分布の相関値を算出し、
前記算出された平均速度分布間の相関値に基づいて、前記各2つの処理対象領域を含む領域を第4検出物体領域として設定する、誤分離補正手段、
を具備する、
請求項2又は3に記載の物体検出装置。
【請求項5】
前記補正手段において用いられる前記移動速度マップ情報を、平滑化フィルタを用いて平滑化する平滑化処理手段、
を具備する請求項1から4のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項6】
前記平滑化フィルタは、前記画像平面を規定する2つの座標軸の内の一方の座標軸の各座標を、自装置が設置される高さに応じた量だけシフトさせる特性を有する、
請求項5に記載の物体検出装置。
【請求項7】
前記画像平面を規定する座標系は、自装置の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系の内の一方の座標軸と視差とによって規定される座標系である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項8】
自装置の仮想設置位置を路面上とした場合の画像平面座標系内の座標群と各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられた第2のカメラ距離マップ情報に基づいて、前記移動速度マップ情報を補正する速度マップ情報補正手段、
を具備する請求項1から4のいずれか一項に記載の物体検出装置。
【請求項9】
画像平面内の座標群とステレオカメラによって撮影された画像に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたカメラ距離マップ情報、又は、前記カメラ距離マップ情報と、前記画像平面内の座標群とレーダによって検出された情報に基づいて得られた、各座標における物体の存在に関する情報とが対応付けられたレーダ距離マップ情報との合成マップ情報から、所定値以上の物体の存在に関する情報及び前記所定値以上の物体の存在に関する情報と対応付けられた座標により定義される候補点を抽出し、
前記抽出された候補点群を、各候補点に対応付けられた物体の存在に関する情報に基づいてグルーピングし、1つのグループに含まれるすべての候補点を含む、前記画像平面内の領域を、検出物体領域として設定し、
前記画像平面内の座標群と、前記レーダによって検出された、各座標における検出移動速度とが対応付けられた移動速度マップ情報に基づいて、前記検出物体領域を補正する、
物体検出方法。

【図2】
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【図6】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−189445(P2012−189445A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53166(P2011−53166)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】