説明

物体検知方法及び装置

【課題】本発明は物体検知方法及び装置に関し、物体の検知と物体の画像の認識を簡易に行なうことができる物体検知方法及び装置を提供することを目的としている。
【解決手段】撮影手段として周波数特性の異なる、物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体検知方法及び装置に関する。例えばITVカメラ等の監視カメラから得られた画像を用いてカメラの視野内に映っている物体を検知するための装置に関するものである。
【0002】
雨天や降雪等の悪天候時にカメラによって物体を撮影する場合、太陽光が遮蔽されて暗くなるため、カメラの視野内を照らす照明を別途用意する必要がある。しかしながら、雨天や降雪等の悪天候時に照明すると、雨粒や雪粒の照明による乱反射光がカメラに映りこんでしまう。この反射光の映り込みと物体の区別がうまくつかないと、映り込みを物体と勘違いして誤検知したり、対象物体の検知もれが生じたりする。そこで、雨粒や雪粒の影響をなるべく少なくして物体を認識する必要がある。
【背景技術】
【0003】
カメラの視野内に雨粒や雪粒等の外乱物体がある場合、照明による反射光のカメラへの映り込みによって検出したい物体との区別がつかなくなってしまう。例えば図2に示すように、悪天候時に照明を使用すると、雨粒や雪粒の照明に対する乱反射光が画像に映り込んでしまう。図2の(a)は照明がついている場合の映像を、図2の(b)は照明がついていない場合の映像をそれぞれ示している。
【0004】
(a)において、1が雨粒や雪粒を示している。図2は実施例におけるディスプレイ上に表示した表示画面中のメインの画像の一例を中間調画像の写真で示す図である。そのため、例えば背景差分処理やオプティカルフロー(対象となる物体の時間的移動方向)の算出等の画像処理による物体検知処理(“コンピュータビジョン”,谷内田正彦著,丸善株式会社出版)では、乱反射光と物体との区別がつきにくいため、検知対象の物体がいない場合に物体を検知したり、検知対象の物体がいるのに検知しなかったりしてしまう。
【0005】
そのため、従来は次のような技術を用いていた。例えば、雨粒や雪粒等の外乱物体は、画像中をランダムに移動するノイズであると考え、画像中の各画素に対して、時間軸方向に中央値フィルタをかけることで、雨粒や雪粒を除去している(第1の方法)。また、物体検出にミリ波レーダ等のセンサを追加することで、雨粒や雪粒を無視して物体のみ検出している(例えば特許文献1参照:第2の方法)。
【特許文献1】特開2001−84485号公報(段落0010〜0014、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記第1の方法の場合、画像中をある程度高速で移動している物体の情報も消失してしまうという問題がある。また、前記第2の方法の場合、カメラのほかに別途センサの追加が必要であったり、カメラの映像とセンサの出力結果を統合する必要があったりする。この結果、装置の価格が高くなったり、装置の構成が煩雑になったりする。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、物体の検知と物体の画像の認識を容易に行なうことができる物体検知方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1記載の発明は、物体を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影した画像を取り込む画像取り込み手段と、該画像取り込み手段の出力を受けて物体を検知する物体検知手段と、物体を照明する照明手段とを有し、前記撮影手段と照明手段とを連動させて動作させて、照明のあたっている画像とあたっていない画像を撮影し、照明のあたっていない画像で物体を検知し、物体が検知された場合は、照明のあたっている画像を保存或いは認識処理に用いるものにおいて、前記撮影手段として周波数特性の異なる、物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうことを特徴とする。
【0009】
(2)請求項2記載の発明は、物体を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影した画像を取り込む画像取り込み手段と、該画像取り込み手段の出力を受けて物体を検知する物体検知手段と、物体を照明する照明手段とを有し、前記撮影手段と照明手段とを連動させて動作させて、照明のあたっている画像とあたっていない画像を撮影し、照明のあたっていない画像で物体を検知し、物体が検知された場合は、照明のあたっている画像を保存或いは認識処理に用いるものにおいて、前記撮影手段として周波数特性の異なる、物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
(1)請求項1記載の発明によれば、雨粒や雪粒の影響を排除して物体を検知することができ、物体が検知されたら、照明をあてて物体を撮影し、得られた画像を用いて保存或いは対象の認識処理に用いることができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、雨粒や雪粒の影響を排除して物体を検知することができ、物体が検知されたら、照明をあてて物体を撮影し、得られた画像を用いて保存或いは対象の認識処理に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。図1は本発明の原理ブロック図である。図において、3は物体を撮影する撮影手段、4は該撮影手段3により撮影した画像を取り込む画像取り込み手段、5は該画像取り込み手段4の出力を受けて物体を検知する物体検知手段、6は物体検知手段5により検知された物体検知信号を受けてオンになる照明手段である。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0012】
本発明の物体検知装置は、図1に示すように、撮影手段3と、照明手段6と、画像取り込み手段4と、物体検知手段5により構成されている。先ず、撮影手段3により物体を撮影し、得られた画像内に検知対象となる物体がいるかどうかの判定処理を行なう。判定の結果、物体がいると判定された場合には、物体が映った画像を保存したり、物体の認識
処理を行なったりする。
【0013】
前述したように、悪天候時に照明を使用すると、雨粒や雪粒の照明に対する乱反射光の画像への映り込みにより、物体検知に失敗してしまう。そこで、照明を消して物体を撮影することを考える。照明を消すと、雨粒や雪粒の画像への映り込みがなくなり、物体検知が行ないやすくなる。しかしながら、照明を消してしまうと映り込みは減るが、物体そのものが暗くなってしまい、物体の詳細な情報が得られなくなり、物体認識等の処理が行なえなくなってしまう。
【0014】
そこで、物体検知と画像保存や物体認識を各々別の状態で撮影した画像を用いて行なう方法を考えた。具体的には、物体検知は照明の影響を受けていない状態で撮影された画像を用いる。そして、物体が検知された場合に、照明の影響を受けた状態で撮影された画像を用いて画像の保存や物体認識を行なう。
【0015】
例えば、通常は照明を消しておき、その状態で物体検知を行なう。そして、物体が検知された場合に、照明をつけて物体を撮影し、照明があたっている画像を保存、或いは物体認識処理に用いる。これによって、悪天候時であっても、雨粒や雪粒の照明に対する乱反射光の映り込みが発生せず、物体検知が良好に行なえる。
【0016】
また、物体認識に照明の影響を受けて物体が明瞭に映っている画像を保存して、後で目視で物体を判別したり、コンピュータによる画像処理によって自動的に物体認識を行なったりできる。コンピュータによる物体認識については、例えば、“斎藤文彦,“ブロック照合投票処理を用いた遮蔽に強い画像マッチング”,電子情報通信学会論文誌,D−II,Vol.J84−D−II,No.10,pp.2270−2279(2001.10)”を用いれば、乱反射光による物体の遮蔽が多少あっても、物体認識を行なうことができる。
【0017】
本発明では、周波数特性の異なる物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうことを特徴とする。
【0018】
このように構成すれば、雨粒や雪粒の影響を排除して物体を検知することができ、物体が検知されたら、照明をあてて物体を撮影し、得られた画像を用いて保存或いは対象の認識処理に用いることができる。
【0019】
先ず、図1の構成を用いた詳細について説明する。先ず撮影手段としてのカメラ3等の映像入力装置からは、撮影された映像出力が画像取り込み手段としての映像取り込み装置4に送られる。映像取り込み装置4では、カメラ3から送られてきた映像出力をフレームメモリ等の画像保存用のメモリへ画像情報として取り込む。そして、映像取り込み装置4で取り込まれた画像情報は、物体検知手段としての物体検知装置5に送られる。
【0020】
物体検知装置5では、映像取り込み装置4から送られてきた画像情報から物体の物体検出処理によって物体の有無を判定する。ここで、物体検出処理としては既存の方法を用いることができる。例えば、背景差分処理を用いる。背景差分処理では、予め物体が映っていない状態を背景画像として撮影し、保持しておく。そして、現在の画像との差分処理を行ない、現在の画像と背景画像とで違いのある部分を物体として検知する。或いはまた、物体検知用に赤外線を用いることもできる。熱源を有する物体であれば、良好に物体を検知することができる。
【0021】
物体検知装置5で物体が検知された場合は、物体検知信号を照明手段としての照明装置6と映像取り込み装置4に送る。照明装置6では、画像検知装置5から物体検知信号が送られてくると、照明をオンにする。映像取り込み装置4では、物体検知信号が送られてきた場合、取り込んだ画像情報を画像保存装置や物体認識装置へ送る。
【0022】
ここで、画像保存装置とは、例えば磁気ディスク装置等の記録媒体によって構成されているものをいう。また、物体認識装置では、検出対象である物体の認識を行なう。例えば、検出対象が車であった場合には、車種の認識処理を行なう。このように、本発明によれば、照明装置6をオフの状態で物体検知装置5により物体を検知するので、物体を確実に検出することができ、そして、物体が検知されたら、物体検知装置5によって照明装置6をオンにして物体を照らし、撮影装置3により物体を撮影することができる。そして、撮影された画像を基に画像の保存をし、物体の認識を行なうことができる。
【0023】
図3は本発明の一実施の形態例を示すブロック図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態では、物体検知を行なうための映像を取得するカメラと、画像保存或いは物体認識を行なうためのカメラを分けた例を示している。図において、3aは物体検知用のカメラ、3bは物体認識用のカメラである。4aはカメラ3aの映像信号を取り込む映像取り込み装置、4bはカメラ3bの映像信号を取り込む映像取り込み装置である。
【0024】
5は映像取り込み装置4aからの画像情報を受けて物体を検知する物体検知装置である。該物体検知装置5の出力は、画像取り込み装置4bに物体検知信号として与えられる。物体を検知するカメラ3aは、照明の影響を受けない方がよい。また、物体認識を行なうカメラ3bは、照明があたっている方がよい。そこで、カメラで撮影できる光の周波数特性が異なるカメラを用いる。そして、照明装置6は物体認識用のカメラ3bの周波数特性に適した照明を用いる。該照明装置6は、例えば常時点灯している。この照明装置6は、物体検知用のカメラ3aに対して照明効果はない。
【0025】
カメラ3aの映像出力は、映像取り込み装置4aに入り、カメラ3bの映像出力は映像取り込み装置4bに入る。映像取り込み装置4aの出力は物体検知装置5に入る。そして、該物体検知装置5の出力は、映像取り込み装置4bに物体検知信号として与えられる。そして、映像取り込み装置4bからは、画像保存装置或いは物体認識装置等へ送られる。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0026】
この実施の形態例では、物体検知を行なうのは、可視光を撮影できるカメラを用いる。また、物体認識を行なうカメラは、近赤外光を撮影できるカメラを用いる。この場合、物体検知を行なうための可視光を撮影できるカメラ3aは、近赤外光の照明の影響を受けない。そのため、悪天候の場合であっても、雨粒や雪粒の影響を受けない。一方、物体認識を行なう近赤外光を撮影できるカメラでは、照明によって照らされた画像を得ることができる。
【0027】
具体的には、カメラ等の映像入力装置3aからは、撮影された映像出力が映像取り込み装置4aに送られる。映像取り込み装置4aでは、カメラから送られてきた映像信号をフレームメモリ等の画像保存用のメモリへ画像情報として取り込む。そして、映像取り込み装置4aで取り込まれた画像情報は、物体検知装置5へ送られる。そして、該物体検知装置5で物体が検知された場合には、物体検知信号を映像取り込み装置4bに送る。
【0028】
該映像取り込み装置4bでは、物体検知信号が送られてきた場合、映像入力装置(カメラ)3bから送られてきた映像信号を取り込む。そして、取り込んだ画像情報を画像保存装置や物体認識装置へ送る。この場合、照明を映像取り込み装置や物体検知装置5と連動させる必要はない。照明装置6は、常に点灯しておいてもよいし、定期的に点灯するようにしてもよい。
【0029】
この実施の形態例によれば、第1の撮影手段(カメラ3a)を用いて照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら、照明をあてて第2の撮影手段(カメラ3b)により画像を撮影することができる。この場合において、カメラ3aとカメラ3bの光の周波数特性が異なるものを用いることで、物体検知を行なうカメラ3aは近赤外光の照明の影響を受けず、そのため、悪天候の場合であっても、雨粒や雪粒の影響を受けない。一方、物体認識を行なう近赤外光を撮影できるカメラ3bでは、照明によって照らされた画像を得ることができる。
【0030】
以上、説明したように、本発明によれば、降雨や降雪等の悪天候時に、照明の影響のない画像で物体を検知することで、雨粒や雪粒の照明に対する乱反射の影響を受けることなく対象となる物体の検出を行なうことができる。また、物体が検出された場合には、照明の影響を受けている画像を保存或いは物体認識処理することで、画像の記録や物体認識を良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の原理ブロック図である。
【図2】照明による映り込みの説明図である。 照明による映り込みの説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
3a ITVカメラ
3b ITVカメラ
4a 映像取り込み装置1
4b 映像取り込み装置2
5 物体検知装置
6 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影した画像を取り込む画像取り込み手段と、該画像取り込み手段の出力を受けて物体を検知する物体検知手段と、物体を照明する照明手段とを有し、前記撮影手段と照明手段とを連動させて動作させて、照明のあたっている画像とあたっていない画像を撮影し、照明のあたっていない画像で物体を検知し、物体が検知された場合は、照明のあたっている画像を保存或いは認識処理に用いるものにおいて、
前記撮影手段として周波数特性の異なる、物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
物体を撮影する撮影手段と、該撮影手段により撮影した画像を取り込む画像取り込み手段と、該画像取り込み手段の出力を受けて物体を検知する物体検知手段と、物体を照明する照明手段とを有し、前記撮影手段と照明手段とを連動させて動作させて、照明のあたっている画像とあたっていない画像を撮影し、照明のあたっていない画像で物体を検知し、物体が検知された場合は、照明のあたっている画像を保存或いは認識処理に用いるものにおいて、
前記撮影手段として周波数特性の異なる、物体を検知するための第1の撮影手段と、物体を認識するための第2の撮影手段とを設け、前記第1の撮影手段により照明のあたっていない状態で物体を検知し、
物体を検知したら照明をあてて第2の撮影手段を用いて物体を撮影し、取得した画像に対して保存或いは認識処理を行なうことを特徴とする物体検知方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−288803(P2007−288803A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165201(P2007−165201)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【分割の表示】特願2002−230010(P2002−230010)の分割
【原出願日】平成14年8月7日(2002.8.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】