説明

物体識別装置及び物体識別プログラム

【課題】検知対象物の一部が他の障害物によって隠れているような状況下でも、その検知対象物の形状を正確に識別することができるようにする。
【解決手段】検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出処理部3と、検知対象物上の各点を通過する直線を生成する直線生成処理部4と、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、直線生成処理部4により生成された直線が通過する格子を特定する通過格子特定処理部5と、通過格子特定処理部5により特定された格子に対する投票を行う投票処理部6とを設け、形状推定処理部7が、3次元空間内の各格子に対する投票処理部6の投票結果から検知対象物の形状を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検知対象物の形状及び大きさを識別する物体識別装置及び物体識別プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS受信機、ジャイロやレーザスキャナなどを搭載している車両を利用して、車両の走行中に周辺の情報を連続的に取得するモービルマッピングシステム技術が発展してきている。
例えば、モービルマッピングシステムにより取得された情報から、周辺に存在している地物を識別する技術の適用などが期待される。
【0003】
モービルマッピングシステムにより取得される情報は、レーザスキャナから発信されたレーザが当たる範囲に限られ、他の障害物によって一部が隠れているような地物については、一部の情報しか得ることができない。
例えば、地面の中に一部が埋め込まれている地物の情報は、多くても地面から露出した部分の情報に限られる。
【0004】
以下の特許文献1には、レーザスキャナから発信されたレーザの照射結果から、検知対象物である航空機の特徴点を抽出し、その特徴点とデータベースに記録されている各種の航空機の特徴点とをマッチングさせることで、その検知対象物である航空機が、どの航空機に最も近いかを判別する物体識別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−529665号公報(段落番号[0006])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の物体識別装置は以上のように構成されているので、検知対象物である航空機の一部が他の障害物によって隠れている場合などの状況化では、レーザの照射結果から検知対象物の十分な特徴点を抽出することができず、検知対象物の識別精度が劣化してしまう課題があった。
また、検知対象物である航空機の形状を識別することができても、その航空機の形状と大きさがリンクしていない限り、その航空機の大きさを特定することができない課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、検知対象物の一部が他の障害物によって隠れているような状況下でも、その検知対象物の形状を正確に識別することができる物体識別装置及び物体識別プログラムを得ることを目的とする。
また、この発明は、検知対象物の大きさを識別することができる物体識別装置及び物体識別プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る物体識別装置は、レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出手段と、検知対象物上の各点の3次元座標と法線算出手段により算出された各点の法線から各点を通過する直線を求め、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、その直線が通過する格子を特定し、その格子に対する投票を行う投票処理手段とを設け、形状推定手段が、3次元空間内の各格子に対する投票処理手段の投票結果から検知対象物の形状を推定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出手段と、検知対象物上の各点の3次元座標と法線算出手段により算出された各点の法線から各点を通過する直線を求め、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、その直線が通過する格子を特定し、その格子に対する投票を行う投票処理手段とを設け、形状推定手段が、3次元空間内の各格子に対する投票処理手段の投票結果から検知対象物の形状を推定するように構成したので、検知対象物の一部が他の障害物によって隠れているような状況下でも、その検知対象物の形状を正確に識別することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による物体識別装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による物体識別装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】点群データ記憶部1に記憶されている点群データ(検知対象物上の各点の3次元座標)を示す説明図である。
【図4】指定部分の点群データ(検知対象物上の各点の3次元座標)を示す説明図である。
【図5】各種の形状の特徴を示す説明図である。
【図6】点群と投票結果の一例を示す説明図である。
【図7】点群と投票結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による物体識別装置を示す構成図である。
図1において、点群データ記憶部1は例えばRAMやハードディスクなどの記憶装置から構成されており、レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標を点群データとして記憶している。
点群入力部2は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコン、あるいは、キーボードやマウスなどのマンマシンインタフェースなどから構成されており、点群データ記憶部1により記憶されている点群データの中から、特定部分の点群データ(例えば、金属で構成されている地物上の点群に係るデータ、指定された部分の点群に係るデータ)を抽出する処理を実施する。なお、点群入力部2は3次元座標抽出手段を構成している。
【0012】
法線算出処理部3は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する処理を実施する。なお、法線算出処理部3は法線算出手段を構成している。
直線生成処理部4は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、点群入力部2により抽出された点群データと法線算出処理部3により算出された各点の法線から各点を通過する直線を生成する処理を実施する。
【0013】
通過格子特定処理部5は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、直線生成処理部4により生成された直線が通過する格子を特定する処理を実施する。
投票処理部6は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、通過格子特定処理部5により特定された格子に対する投票を行う。
なお、直線生成処理部4、通過格子特定処理部5及び投票処理部6から投票処理手段が構成されている。
【0014】
形状推定処理部7は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、3次元空間内の各格子に対する投票処理部6の投票結果から検知対象物の形状を推定する処理を実施する。
即ち、形状推定処理部7は投票数が多い格子が集中している場合、検知対象物の形状が球であると推定し、投票数が多い格子が直線状に並んでいる場合、検知対象物の形状が円柱であると推定する。また、投票数が多い格子が集中しておらず、投票数が多い格子が直線状に並んでもいない場合、法線算出処理部3により算出された各点の法線の値が一定範囲内であれば、検知対象物の形状が平面であると推定する。なお、形状推定処理部7は形状推定手段を構成している。
【0015】
大きさ算出処理部8は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、形状推定処理部7により推定された形状に対応する大きさ算出処理を実施することで、検知対象物の大きさを算出する。
即ち、大きさ算出処理部8は形状推定処理部7により推定された形状が球である場合、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、投票数が多い格子が集中している範囲の重心の位置を求め、その重心の位置と各点との距離に対する投票を実施し、その投票結果が最も多い距離を球の半径として、検知対象物の大きさを算出する。
また、形状推定処理部7により推定された形状が円柱である場合、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、投票数が多い格子が並んでいる範囲の重心の位置を求めて、その重心の位置から円柱の軸を算出し、その円柱の軸と各点との距離に対する投票を実施し、その投票結果が最も多い距離を円柱の半径として、検知対象物の大きさを算出する。なお、大きさ算出処理部8は大きさ算出手段を構成している。
【0016】
図1の例では、物体識別装置の構成要素である点群データ記憶部1、点群入力部2、 法線算出処理部3、直線生成処理部4、通過格子特定処理部5、投票処理部6、形状推定処理部7及び大きさ算出処理部8のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、物体識別装置がコンピュータで構成されていてもよい。
物体識別装置がコンピュータで構成されている場合、点群データ記憶部1の記憶内容をコンピュータのメモリに格納するとともに、点群入力部2、法線算出処理部3、直線生成処理部4、通過格子特定処理部5、投票処理部6、形状推定処理部7及び大きさ算出処理部8の処理内容を記述している物体識別プログラムをコンピュータのメモリに格納し、コンピュータのCPUが当該メモリに格納されている物体識別プログラムを実行するようにすればよい。
図2はこの発明の実施の形態1による物体識別装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0017】
次に動作について説明する。
点群データ記憶部1に記憶される点群データは、レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標であるが、そのレーザ測量が、偏光レーザの測量器を用いて行われている場合、一般的なレーザ測量器と異なり、金属等の物体判別が可能である。
この実施の形態1では、一般的なレーザ測量器によるレーザ測量でもよいが、偏光レーザの測量器によるレーザ測量であるものとして説明する。
ここで、図3は点群データ記憶部1に記憶されている点群データ(検知対象物上の各点の3次元座標)が画像化されたものであり、各点の色(画像が白黒画像であれば、各点の濃淡)が距離を表している。
【0018】
点群入力部2は、点群データ記憶部1により記憶されている点群データの中から、特定部分の点群データを抽出する(図2のステップST1)。
上述したように、偏光レーザの測量器によるレーザ測量である場合、金属等の物体判別が可能であるため、他の物体(障害物)の中に紛れ込んでいる金属地物上の点群データを検知対象物の点群データとして抽出する。
これにより、検知対象物が金属地物である場合、その検知対象物が他の物体(障害物)の中に紛れ込んでいても識別することが可能になる。
また、検知対象物が存在している場所の概略を把握しているような場合には、図4に示すように、内蔵しているマンマシンインタフェースを用いて指定された領域内の点群データを検知対象物の点群データとして抽出する。
これにより、処理対象の点群データが限定されるため、処理速度の高速化を図ることができる。
【0019】
なお、この実施の形態1では、点群入力部2が点群データ記憶部1により記憶されている点群データの中から、特定部分の点群データを抽出するものを示したが、点群入力部2を実装せずに、点群データ記憶部1により記憶されている点群データの全てが、後段の法線算出処理部3等に与えられるようにしてもよい。
【0020】
法線算出処理部3は、点群入力部2から検知対象物の点群データを受けると、その点群データを用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する(ステップST2)。
各点の法線の算出方法としては、例えば、次のような方法を用いることができる。
まず、点群データをTIN(不規則三角形網)化することでポリゴンを形成し、そのポリゴンの面の法線の平均値を算出する。
そして、ポリゴンを構成する点の法線として、そのポリゴンの面の法線の平均値を与えるものとする。
なお、TINは、平面を三角形の集合体として表現するものであり、TIN化は、点群データからTINを生成することを意味する。
TIN化については、例えば、下記の非特許文献1に開示されている。
[非特許文献1]
ArcGIS,「TINサーフェスとは」
http://help.arcgis.com/ja/arcgisdesktop/10.0/help/index.html#//006000000001000000.htm
【0021】
直線生成処理部4は、法線算出処理部3が各点の法線を算出すると、各点の法線と点群入力部2により抽出された点群データから、各点を通過する直線を生成する(ステップST3)。
例えば、各点をi、点iの法線をベクトルn(明細書中では、電子出願の関係上、ベクトルを示す“→”の記号を文字の上部に付記することができないため、「ベクトルn」のように表記している)、点iの位置を示すベクトルp、媒介変数をtとすると、点iを通過する直線lは、下記の式(1)のように表される。

【0022】
通過格子特定処理部5は、3次元空間内を格子状に分割(例えば、10cm立方の立方体に分割)する。
そして、通過格子特定処理部5は、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、直線生成処理部4により生成された直線lが通過する格子を特定する(ステップST4)。
投票処理部6は、通過格子特定処理部5が、直線lが通過する格子を特定すると、その格子に対する投票を行う(ステップST5)。
即ち、点iを通過する直線lが通過する格子の投票数を1インクリメントする。なお、3次元空間内の各格子の投票数は、起動時に“0”に初期化されているものとする。
【0023】
形状推定処理部7は、予め、各種の形状の特徴(大きさに依存しない形状の特徴)を形状パラメータとして記憶している。
図5は各種の形状の特徴を示す説明図である。
例えば、形状が球である場合、「表面上の各点の法線は、1点(球の中心)に集中する」という特徴がある。
形状が円柱である場合、「表面上の各点の法線は、円柱の中心軸に向かう」という特徴がある。
形状が直方体の平面である場合、「隣接する点の法線がほぼ等しい(近隣点の法線の方向が略同一)」という特徴がある。
【0024】
形状推定処理部7は、予め記憶している各種の形状の特徴を考慮して、3次元空間内の各格子に対する投票処理部6の投票結果から、検知対象物の形状を推定する(ステップST6)。
即ち、形状推定処理部7は、投票数が多い格子が集中している場合、検知対象物の形状が球であると推定する。
具体的には、3次元空間内の格子毎に、全ての格子の投票数の合計に対する当該格子の投票数の比Pを算出し、ある格子の投票数の比Pが閾値α(例えば、0.5)を上回る場合、検知対象物の形状が球であると推定する。
ここでは、ある格子の投票数の比Pが閾値αを上回る場合に、検知対象物の形状が球であると推定するものを示したが、格子のサイズが小さい場合、投票数が必ずしも1個の格子に集中せずに、例えば、3〜4個の格子に分散する。
このような場合には、3〜4個の格子の合計投票数の比Pが閾値αを上回る場合に、検知対象物の形状が球であると推定するようにする。
【0025】
また、形状推定処理部7は、投票数が多い格子が直線状に並んでいる場合、検知対象物の形状が円柱であると推定する。
具体的には、3次元空間内の格子毎に、全ての格子の投票数の合計に対する当該格子の投票数の比Pを算出し、直線状に並んでいるN個(例えば、N=5)の格子の投票数の比Pのそれぞれが閾値β(例えば、0.05)を上回る場合、検知対象物の形状が円柱であると推定する。
【0026】
また、形状推定処理部7は、投票数が多い格子が集中しておらず、また、投票数が多い格子が直線状に並んでもいない場合、法線算出処理部3により算出された各点の法線の値が一定範囲内であれば(近隣点の法線の方向が略同一である場合)、検知対象物の形状が平面であると推定する。
【0027】
ここで、図6及び図7は点群と投票結果の一例を示す説明図である。図6と図7は同じ点群データを別方向の視点から表示している。
図6中の右側の楕円に囲まれている部分と、図7中の円に囲まれている部分とが投票数が多い箇所を表している。
この例では、点群が円柱の一部であると推定される。
【0028】
ここでは、形状推定処理部7が、検知対象物の形状が球、円柱又は平面であると推定するものを示したが、これは一例に過ぎず、他の形状を推定するようにしてもよいことは言うまでもない。
ただし、他の形状を推定する場合には、他の形状の特徴を形状パラメータとして記憶しておく必要がある。
【0029】
大きさ算出処理部8は、形状推定処理部7が検知対象物の形状を推定すると、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、その検知対象物の形状に対応する大きさ算出処理を実施することで、検知対象物の大きさを算出する(ステップST7)。
即ち、大きさ算出処理部8は、形状推定処理部7により推定された形状が球である場合、投票数が多い格子が集中している範囲(例えば、投票数が多いN個の格子が集まっている範囲)をさらに細分化(例えば、1cm立方の立方体に分割)する。
そして、大きさ算出処理部8は、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、各細分化した範囲の重心の位置を求めて、その重心の位置と各点との距離rを算出し、その距離rに対する投票を実施する。
【0030】
大きさ算出処理部8は、実際の球の半径に近い距離に投票数が増えるため、投票数が最も多い距離rを球の半径として、検知対象物の大きさを算出する。
なお、投票の際には、距離を一定範囲(例えば、0.5cm)に区切り、算出した距離rが、どの範囲に収まるかで投票を行うものとする。
【0031】
また、球の半径を求める際、投票数に閾値を設け、投票数が閾値を越える距離に対して重み付けを行っても構わない。
例えば、閾値を越える投票数がvであり、その投票数vを有する距離(範囲の中心)がrである場合、球の半径rは、以下の式(2)のように算出される。

【0032】
また、大きさ算出処理部8は、形状推定処理部7により推定された形状が円柱である場合、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、投票数が多い格子が並んでいる範囲(投票数の比Pが閾値βを上回る格子が集まっている範囲)の重心の位置を求め、その重心の位置に対して主成分分析を行うことで、円柱の軸(断面の円の中心を通る直線)のベクトルを算出する。
この際、主成分分析の第3成分(3次元のデータに対する主成分分析を行った結果、最も分散が少ない方向)を軸ベクトルとする。
【0033】
大きさ算出処理部8は、円柱の軸ベクトルを算出すると、下記の式(3)に示すように、投票数が最も多い範囲の重心の位置を示すベクトルP、媒介変数tを用いて、円柱の軸を示す直線lを求める。

【0034】
大きさ算出処理部8は、円柱の軸を示す直線lを求めると、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、検知対象物上の各点と円柱の軸との距離(円柱の半径)を算出する。
即ち、検知対象物上の各点iの位置を示すベクトルpに対し、直線l上に下ろした垂線の足をベクトルPiaとすると、下記の式(4)のように表すことができ、さらに、下記の式(5)が成立する。

【0035】
そこで、大きさ算出処理部8は、式(4)からt’を求め、t’を利用して、各点iについて、検知対象物上の各点と円柱の軸との距離rを算出し、その距離rに対する投票を実施する。

大きさ算出処理部8は、実際の円柱の半径に近い距離に投票数が増えるため、投票数が最も多い距離rを円柱の半径として、検知対象物の大きさを算出する。
【0036】
なお、形状推定処理部7により推定された形状が平面である場合、大きさ算出処理部8は、検知対象物の大きさを算出しない。
形状が平面である場合、球や円柱と違って、平面がどこまでの大きさになっているのかを判断する情報が存在しないからである。
【0037】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出処理部3と、検知対象物上の各点の3次元座標と法線算出処理部3により算出された各点の法線から各点を通過する直線を生成する直線生成処理部4と、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、直線生成処理部4により生成された直線が通過する格子を特定する通過格子特定処理部5と、通過格子特定処理部5により特定された格子に対する投票を行う投票処理部6とを設け、形状推定処理部7が、3次元空間内の各格子に対する投票処理部6の投票結果から検知対象物の形状を推定するように構成したので、検知対象物の一部が他の障害物によって隠れているような状況下でも、その検知対象物の形状を正確に識別することができる効果を奏する。
【0038】
また、この実施の形態1によれば、大きさ算出処理部8が、点群入力部2により抽出された点群データを用いて、形状推定処理部7により推定された形状に対応する大きさ算出処理を実施することで、検知対象物の大きさを算出するように構成したので、検知対象物の大きさを識別することができる効果を奏する。
【0039】
また、この実施の形態1によれば、点群入力部2が、点群データ記憶部1により記憶されている点群データの中から、特定部分の点群データを抽出するように構成したので、特定部分の点群データが、他の物体(障害物)の中に紛れ込んでいる金属地物上の点群データであれば、検知対象物である金属地物が他の物体(障害物)の中に紛れ込んでいても識別することができる効果を奏する。
また、特定部分の点群データが、マンマシンインタフェースを用いて指定された領域内の点群データであれば、処理対象の点群データが限定されるため、処理速度の高速化を図ることができる効果を奏する。
【0040】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、法線算出処理部3が、検知対象物の点群データを用いて、検知対象物上の各点の法線を算出する際、その点群データをTIN化することでポリゴンを形成し、そのポリゴンの面の法線の平均値を算出するものを示したが、距離画像(点群データを一定の大きさの画像上にマッピングし、各点の距離(基準点からの距離)を色で示している画像)を利用して、検知対象物上の各点の法線を算出するようにしてもよい。
距離画像を利用して、検知対象物上の各点の法線を算出する場合、距離画像上で、互いに隣接している点であって、距離が近い(色が近い)点を探索し、それらの点で三角形を構成する。
そして、その三角形の法線の平均値を求め、その平均値を当該三角形を構成する点の法線として与えるようにする。
【0041】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 点群データ記憶部、2 点群入力部(3次元座標抽出手段)、3 法線算出処理部(法線算出手段)、4 直線生成処理部(投票処理手段)、5 通過格子特定処理部(投票処理手段)、6 投票処理部(投票処理手段)、7 形状推定処理部(形状推定手段)、8 大きさ算出処理部(大きさ算出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、上記検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出手段と、上記検知対象物上の各点の3次元座標と上記法線算出手段により算出された各点の法線から各点を通過する直線を求め、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、上記直線が通過する格子を特定し、上記格子に対する投票を行う投票処理手段と、上記3次元空間内の各格子に対する上記投票処理手段の投票結果から上記検知対象物の形状を推定する形状推定手段とを備えた物体識別装置。
【請求項2】
検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、形状推定手段により推定された形状に対応する大きさ算出処理を実施することで、上記検知対象物の大きさを算出する大きさ算出手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の物体識別装置。
【請求項3】
形状推定手段は、投票数が多い格子が集中している場合、検知対象物の形状が球であると推定し、投票数が多い格子が直線状に並んでいる場合、上記検知対象物の形状が円柱であると推定することを特徴とする請求項2記載の物体識別装置。
【請求項4】
形状推定手段は、投票数が多い格子が集中しておらず、投票数が多い格子が直線状に並んでもいない場合、法線算出手段により算出された各点の法線の値が一定範囲内であれば、検知対象物の形状が平面であると推定することを特徴とする請求項3記載の物体識別装置。
【請求項5】
大きさ算出手段は、形状推定手段により推定された形状が球である場合、検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、投票数が多い格子が集中している範囲の重心の位置を求め、上記重心の位置と各点との距離に対する投票を実施し、その投票結果が最も多い距離を球の半径として、上記検知対象物の大きさを算出することを特徴とする請求項3記載の物体識別装置。
【請求項6】
大きさ算出手段は、形状推定手段により推定された形状が円柱である場合、検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、投票数が多い格子が並んでいる範囲の重心の位置を求めて、上記重心の位置から円柱の軸を算出し、上記円柱の軸と各点との距離に対する投票を実施し、その投票結果が最も多い距離を円柱の半径として、上記検知対象物の大きさを算出することを特徴とする請求項3記載の物体識別装置。
【請求項7】
レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標の中から、金属で構成されている地物上の各点の3次元座標を抽出し、上記地物上の各点の3次元座標を上記検知対象物上の各点の3次元座標として法線算出手段、投票処理手段及び大きさ算出手段に出力する3次元座標抽出手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の物体識別装置。
【請求項8】
レーザ測量の測量結果が示す検知対象物上の各点の3次元座標の中から、指定された領域内の3次元座標を抽出し、その3次元座標を法線算出手段、投票処理手段及び大きさ算出手段に出力する3次元座標抽出手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の物体識別装置。
【請求項9】
検知対象物の形状及び大きさを識別するコンピュータの処理内容を記述している物体識別プログラムであって、
レーザ測量の測量結果が示す上記検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、上記検知対象物上の各点の法線を算出する法線算出処理手順と、上記検知対象物上の各点の3次元座標と上記法線算出処理手順により算出された各点の法線から各点を通過する直線を求め、3次元空間内の一定範囲の区切りである格子の中で、上記直線が通過する格子を特定し、上記格子に対する投票を行う投票処理手順と、上記3次元空間内の各格子に対する上記投票処理手順の投票結果から上記検知対象物の形状を推定する形状推定処理手順とから構成されていることを特徴とする物体識別プログラム。
【請求項10】
検知対象物上の各点の3次元座標を用いて、形状推定処理手順により推定された形状に対応する大きさ算出処理を実施することで、上記検知対象物の大きさを算出する大きさ算出処理手順を備えていることを特徴とする請求項9記載の物体識別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2909(P2013−2909A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133283(P2011−133283)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】