説明

物品仕分装置

【課題】物品仕分装置1において、形状や重心高さの関係等で座りの悪い物品であっても、搬送中の転倒及び落下を確実に防止できるようにする。
【解決手段】本願発明の物品仕分装置1は、物品Mを載置する多数の搬送ユニット3を列状に並べて搬送する搬送ライン2と、搬送ライン2中の仕分け箇所Soから搬送ライン2の搬送方向Xと交差する仕分け方向Yに分岐した仕分けライン4とを備える。各搬送ユニット3は、仕分け箇所Soに到達したときに仕分けライン4に向けて物品Mを送り出す仕分け機構10を有する。仕分けライン4には、仕分け箇所Soから送り込まれた物品Mに付与される搬送方向Xへの移動力Fxを吸収する移動力吸収部材43を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、果実や野菜等の物品が載置される多数の搬送ユニットを列状に並べて搬送する搬送ラインと、これから交差方向に分岐した仕分けラインとを備えている物品仕分装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、搬送ラインにて連続的に搬送される物品を所定のグループ毎に仕分けるための物品仕分装置には様々なタイプが存在する。
【0003】
この種の物品仕分装置の代表例として特許文献1には、クロスベルト式コンベヤの構造が開示されている。クロスベルト式コンベヤは、多数の搬送ユニットを一列状に並べて搬送する搬送ラインと、これから直交方向に分岐した仕分けラインとを備えている。各搬送ユニットには、その上面に載置された果実や野菜等の物品を仕分けラインに向けて送り出すクロスベルトソータが設けられている。この場合、搬送ライン中における所定の仕分け箇所に、仕分け対象となる物品を載せた搬送ユニットが到達すると、クロスベルトソータの作動にて物品が仕分けラインに向けて送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−53275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の物品仕分装置において、トマト、桃、梨又はメロンといった物品を仕分けることはよく行われている。しかし、前記特許文献1の物品仕分装置では、搬送ラインから仕分けラインに物品を受け渡すに際して、搬送ラインに沿った物品の移動(搬送方向の移動)がクロスベルトソータにて急激に規制されるから、搬送ラインに沿った慣性の作用によって、物品が仕分けライン上で斜め方向に勢いよく移動して転倒し易く、物品に傷みを招来するおそれが高いという問題があった。
【0006】
そこで、本願発明は上記の問題点を解消することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る物品仕分装置は、物品を載置する多数の搬送ユニットを列状に並べて搬送する搬送ラインと、前記搬送ライン中の仕分け箇所から前記搬送ラインの搬送方向と交差する仕分け方向に分岐した仕分けラインとを備えており、前記各搬送ユニットは、前記仕分け箇所に到達したときに前記仕分けラインに向けて前記物品を送り出す仕分け機構を有しており、前記仕分けラインには、前記仕分け箇所から送り込まれた前記物品に付与される前記搬送方向への移動力を吸収する移動力吸収部材を有しているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した物品仕分装置において、前記移動力吸収部材は、前記仕分けラインを構成する仕分けベルトの表面全周にわたって設けられているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した物品仕分装置において、前記仕分けラインは、複数本を前記仕分け方向に対して並列に近接並置した構成である
というものである。
【発明の効果】
【0010】
本願発明の物品仕分装置によると、物品を載置する多数の搬送ユニットを列状に並べて搬送する搬送ラインと、前記搬送ライン中の仕分け箇所から前記搬送ラインの搬送方向と交差する仕分け方向に分岐した仕分けラインとを備えており、前記各搬送ユニットは、前記仕分け箇所に到達したときに前記仕分けラインに向けて前記物品を送り出す仕分け機構を有しており、前記仕分けラインには、前記仕分け箇所から送り込まれた前記物品に付与される前記搬送方向への移動力を吸収する移動力吸収部材を有しているから、前記物品が乗り掛かった両移動力吸収部材によって、前記物品に付与された前記移動力(慣性)の悪影響がなくなることになる。従って、前記搬送ラインから前記仕分けラインに前記物品を受け渡すに際しては、前記搬送ラインに沿った移動力(慣性)の作用によって、前記物品が前記仕分けライン上を斜め方向に勢いよく進んで転倒するおそれを確実に低減でき、仕分けに際して前記物品に傷みが生じ難くなる。その結果、転倒や接触にて傷み易い前記物品(例えばトマトや桃等)を安全に仕分けできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】物品仕分装置の概略平面図である。
【図2】クロスベルトソータの駆動態様を説明する側面図であり、(a)は送り出し前、(b)は送り出し後の状態を示す図である。
【図3】搬送ユニットを省略した状態での物品仕分装置の概略平面図である。
【図4】仕分けコンベヤラインの概略断面図である。
【図5】(a)(b)は仕分け態様を説明する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。まず始めに、図1〜図4を参照しながら、物品仕分装置1の概要を説明する。物品仕分装置1は、トマト、桃、梨又はメロンといった物品Mを、等級(品質)や階級(サイズ及び形状)に応じたグループ毎に仕分けるものであり、多数の搬送ユニット3を列状に並べて搬送する搬送コンベヤライン2と、当該搬送コンベヤライン2から分岐した少なくとも1つの仕分けコンベヤライン4とを備えている。各仕分けコンベヤライン4は、搬送コンベヤライン2から送り込まれた物品Mを一時的に滞留させながら搬送する目的で、間欠的に駆動するように構成されている。各仕分けコンベヤライン4上に滞留している物品Mは、例えばオペレータの手作業にて透明合成樹脂製の包装パックや段ボール箱等の包装用容器にパッキング(箱詰め)される。
【0013】
図2及び図3に示すように、搬送コンベヤライン2は、その長手方向に沿って延びる左右一対の走行レール5を備えている。これら走行レール5上に、台車タイプの搬送ユニット3群が走行可能に配置されている。図示は省略するが、搬送コンベヤライン2の長手両端部には、駆動スプロケットと従動スプロケットとがそれぞれ振り分けて配置されている。両スプロケットに巻き掛けられた無端チェンに、各搬送ユニット3が所定のピッチ間隔で連結されている。両スプロケット及び無端チェンの駆動にて、搬送ユニット3群は搬送コンベヤライン2を循環移動する。実施形態の搬送ユニット3群は、搬送コンベヤライン2の上部側で搬送方向Xに沿って移動する。なお、各搬送ユニット3の位置は、駆動スプロケットの駆動量をロータリエンコーダ(図示省略)でカウントすることによって計測される。
【0014】
図1〜図3に示すように、各搬送ユニット3は、搬送コンベヤライン2中における所定の仕分け箇所So(仕分けコンベヤライン4との分岐箇所)にて、搬送方向Xと交差する仕分け方向Yに搬送ユニット3上の物品Mを送り出す仕分け機構としてのクロスベルトソータ10を備えている。実施形態のクロスベルトソータ10は、搬送ユニット3における一対のフレーム板11の間に回転可能に軸支された回転ローラ対14と、当該回転ローラ対14に巻き掛けられた無端帯としてのクロスベルト13とを備えている。回転ローラ対14は搬送方向Xに沿って互いに平行状に延びている。このため、クロスベルト13は搬送方向Xと直交する方向に回行移動可能である。すなわち、実施形態では、仕分け方向Yが搬送方向Xと直交する関係にある。
【0015】
クロスベルト13の下面側には、搬送方向Xと交差する方向に往復動してクロスベルト13を回行移動させるベルト駆動シュー16が取り付けられている。ベルト駆動シュー16の下面側にはガイドピン17が下向きに突設されている。この場合、ベルト駆動シュー16を仕分け方向Yと逆方向に移動させると、これに連動してクロスベルト13の上面側が仕分け方向Yに移動する。クロスベルト13の上面側には物品Mが載置される。従って、クロスベルト13上の物品Mは、クロスベルト13上面側の仕分け方向Yへの回行移動にて仕分けコンベヤライン4に向けて搬出される。
【0016】
なお、クロスベルトソータ10の内部には、クロスベルト13の上面側を下方から支持する支持板18が配置されている。支持板18は、クロスベルト13上の物品Mの重量を受け止めるためのものであり、一対のフレーム板11の内面側に固着されている。また、クロスベルト13の上面側には、回行移動時に物品Mを仕分け方向Yに押し出すための押し出し突起19が設けられている。
【0017】
図3に示すように、搬送コンベヤライン2における一対の走行レール5の間のうち仕分けコンベヤライン4寄りの箇所には、搬送方向Xに沿って延びる上向き開放の溝状経路21が設けられている。溝状経路21には、各搬送ユニット3のガイドピン17が上方から嵌り込む。各搬送ユニット3の搬送方向Xに沿った移動によって、ガイドピン17が搬送方向Xに案内される。他方、搬送コンベヤライン2中の仕分け箇所Soには、搬送ユニット3の搬送方向Xに沿った移動によってガイドピン17を仕分け方向Yと逆方向に案内する誘導板22が配置されている。誘導板22は、平面視で搬送コンベヤライン2の搬送下流側に行くに連れて仕分けコンベヤライン4から離れる斜め方向に傾斜している。誘導板22における仕分けコンベヤライン4寄りの一端部は、溝状経路21の適宜箇所に形成された連通隙間23に臨ませている。
【0018】
連通隙間23の箇所には、電磁ソレノイド25の駆動にて上下回動可能な切換片24が配置されている。案内プレート22の近傍には、駆動プーリ27及び従動プーリ28に巻き掛けられた補助ベルト26が配置されている。補助ベルト26において搬送コンベヤライン2の搬送上流側の部分は、誘導板22における前記搬送上流側の平坦面に重なっている。駆動プーリ27に連結された駆動モータ29の駆動にて、補助ベルト26は循環移動するように構成されている。実施形態の補助ベルト26は常時、図3の平面視で反時計回りに循環移動する。従って、補助ベルト26のうち誘導板22と重なる部位は、誘導板22に沿った斜め方向に移動する。
【0019】
切換片24を上向き回動させた場合は、溝状経路21が切換片24にて遮断され、ガイドピン17は切換片24に突き当たる。そうすると、ガイドピン17は、搬送ユニット3の搬送方向Xに沿った移動と補助ベルト26の送り作用とによって、誘導板22に沿った斜め方向にスライド移動する。そして、ガイドピン17の斜め方向の移動に伴い、ベルト駆動シュー16が仕分け方向Yと逆方向に移動し、これに連動してクロスベルト13の上面側が仕分け方向Yに移動する。その結果、クロスベルト13上の物品Mが中継コンベヤ装置40に向けて送り出される。切換片24を下向き回動させた場合は、搬送ユニット3の搬送方向Xに沿った移動によって、ガイドピン17がそのまま溝状経路21に沿って進むことになる。溝状経路21、誘導板22、連通隙間23、切換片24及び補助ベルト26の組合せは、ガイドピン17に対する案内手段20を構成している。
【0020】
なお、搬送コンベヤライン2における最上流の仕分け箇所Soよりも搬送上流側には、物品Mの等級を判定する判定手段30が配置されている。判定手段30は、仕分けの目的や物品Mの種類に応じて採用される。例えばサイズや形状で仕分ける場合は、光学センサや画像処理装置等を採用すればよく、品質で仕分ける場合は糖度計等を採用すれば足りる。また、図示は省略するが、搬送コンベヤライン2における最下流の仕分け箇所Soよりも更に搬送下流側には、各搬送ユニット3のガイドピン17を溝状経路21の位置に戻す戻し誘導板が配置されている。
【0021】
図1及び図4に示すように、実施形態の仕分けコンベヤライン4は、複数本を仕分け方向Yに対して並列に近接並置して構成されている。各仕分けコンベヤライン4は、一対の略平行なコンベヤフレーム41を備えている。図示は省略するが、各仕分けコンベヤライン4の長手両端部には、駆動プーリと従動プーリとがそれぞれ振り分けて配置されている。両プーリに仕分けベルト42が巻き掛けられている。両プーリ及び仕分けベルト42は、駆動源である電動モータからの動力伝達にて駆動するように構成されていて、仕分けベルト42の上面側が仕分け方向Yに移動することになる。
【0022】
各仕分けベルト42の表面側には、仕分け箇所Soから送り込まれた物品Mに付与される搬送方向Xへの移動力Fx(慣性)を吸収する移動力吸収部材43が設けられている。実施形態の移動力吸収部材43は、例えばスポンジ状の多孔質材料のように、弾性を有する素材製で断面多角形状のものであり、各仕分けベルト42の表面側のうち仕分け方向Yと直交する横幅の両端部に、その表面全周にわたって貼り付けられている。従って、一本の仕分けコンベヤライン4に対して二列一組の移動力吸収部材43が設けられていることになる。
【0023】
以上の構成において、仕分け箇所Soに到達した搬送ユニット3上の物品Mがクロスベルト13の回行移動にて各仕分けコンベヤライン4に搬出されるに際しては、搬送コンベヤライン2による搬送方向Xの移動力Fx(慣性)と、クロスベルトソータ10による仕分け方向Yの押し出し力Fyとが物品Mに作用する(図5(a)参照)。このため、物品Mは、移動力Fxと押し出し力Fyとの合力F(x+y)に沿った斜め方向にスライド移動しようとして、各仕分けコンベヤライン4の仕分けベルト42上に、両移動力吸収部材43に跨るようにして乗り移る。
【0024】
そうすると、物品Mが乗り掛かった両移動力吸収部材43は、弾性復原力によって、物品Mに付与された移動力Fxを吸収してしまう。そして、移動力Fxを弾性復原力にて打ち消された物品Mは、両移動力吸収部材43にて安定姿勢に保持された状態で、仕分けコンベヤライン4によって、搬送方向Xと直交する仕分け方向Yに搬送される。
【0025】
従って、搬送コンベヤライン2から各仕分けコンベヤライン4に物品Mを受け渡す際には、搬送コンベヤライン2に沿った移動力Fx(慣性)の作用によって、物品Mが各仕分けコンベヤライン4上を斜め方向に勢いよく進んで転倒するおそれを確実に低減でき、仕分けに際して物品Mに傷みが生じ難くなる。このため、実施形態の物品仕分装置1によれば、転倒や接触にて傷み易い物品M(例えばトマトや桃等)を安全に仕分けできる。
【0026】
特に実施形態の移動力吸収部材43は、例えばスポンジ状の多孔質材料のような弾性材製であり、当該弾性材の弾性復原力を利用して、物品Mの搬送コンベヤライン2に沿った移動力Fx(慣性)を吸収するから、移動力Fx吸収のために例えば電力のような駆動源が不要なのであり、簡単な構成でありながら、移動力Fx(慣性)吸収作用を確実に発揮できる。製造コストやランニングコストも低廉に抑制できるという利点もある。
【0027】
また、各仕分けコンベヤライン4を構成する仕分けベルト42の表面全周にわたって移動力吸収部材43を設けているから、各仕分けコンベヤライン4上での物品Mの姿勢安定性向上にも効果を発揮でき、搬送・仕分け作業による物品Mの品質低下を防止できる。
【0028】
更に、移動力吸収部材43の存在によって、各仕分けコンベヤライン4において仕分け方向Yと直交する横幅の寸法を大きくとる必要がないから、実施形態の仕分けコンベヤライン4では、複数本を仕分け方向Yに対して並列に近接並置した構成になっている。その結果、複数本の仕分けコンベヤライン4の配置効率を向上でき、各仕分けコンベヤライン4ひいては物品仕分装置1の設置スペースをコンパクト化できる。
【0029】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、農産物以外の様々な種類の物品を搬送・仕分する物品仕分装置として広く適用できる。物品の種類や大きさ等に応じて、仕分けコンベヤライン4の幅寸法や誘導板22及び切換片24の個数等は適宜設定できる。仕分け機構はクロスベルトソータ10に限らず、スライドシューソータでもよいし、回転押し出し式のものでもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
M 物品
So 仕分け箇所
X 搬送方向
Y 仕分け方向
Fx 慣性
Fy 押し出し力
F(x+y) 合力
1 物品仕分装置
2 搬送コンベヤライン
3 搬送ユニット
4 仕分けコンベヤライン
10 クロスベルトソータ(仕分け機構)
13 クロスベルト
20 案内手段
42 仕分けベルト
43 移動力吸収部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置する多数の搬送ユニットを列状に並べて搬送する搬送ラインと、
前記搬送ライン中の仕分け箇所から前記搬送ラインの搬送方向と交差する仕分け方向に分岐した仕分けラインと
を備えており、
前記各搬送ユニットは、前記仕分け箇所に到達したときに前記仕分けラインに向けて前記物品を送り出す仕分け機構を有しており、
前記仕分けラインには、前記仕分け箇所から送り込まれた前記物品に付与される前記搬送方向への移動力を吸収する移動力吸収部材を有している、
物品仕分装置。
【請求項2】
前記移動力吸収部材は、前記仕分けラインを構成する仕分けベルトの表面全周にわたって設けられている、
請求項1に記載した物品仕分装置。
【請求項3】
前記仕分けラインは、複数本を前記仕分け方向に対して並列に近接並置した構成である、
請求項1又は2に記載した物品仕分装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56288(P2013−56288A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195072(P2011−195072)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】