説明

物品加熱装置

【課題】 比較的簡単な作業で所望の透水性を有する包材を作製できるとともに、物品の加熱に適当な発熱特性(温度の立ち上がり、あるいは、上昇温度、上昇温度継続時間)を有する発熱体を使用した物品加熱装置を提供する。
【解決手段】 本発明の物品加熱装置に使用される発熱体1は、不織布11と有孔樹脂フィルム13とを反応性ホットメルト接着剤12により貼り合せた通水性を有する包材からなる袋体10と、袋体10に封入された、40〜70重量%のアルミニウム粉末、並びに、5〜40重量%の消石灰粉末及び/又は5〜40重量%の生石灰粉末からなる発熱剤20と、を含む。有孔樹脂フィルム13の孔数が、40,000個/m2以上であるとともに、開孔率が1〜7%であり、反応性ホットメルト接着剤12の塗布量が3〜9g/m2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と反応して発熱する発熱体を使用して食品(レトルト食品や缶入り飲料等の調理済み食品など)や化粧品を加熱する物品加熱装置に関する。特には、大量生産に適し、良好な加熱特性(温度の立ち上がり、温度維持性など)を有する物品加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水と反応して発熱する発熱体としては、従来より、アルミニウム粉末と生石灰(酸化カルシウム)粉末とを混合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このような発熱体を使用して日本酒や駅弁を温めたり、非常時にレトルト食品などの調理済み食品を再加熱する食品加熱装置も一般的に用いられている。
【0003】
この発熱体においては、生石灰を水と反応させて発熱させるとともに、この反応によって生成した消石灰(水酸化カルシウム)とアルミニウム粉末とを発熱反応させるものである。このような一連の反応により、食品などの物品を加熱するための十分な発熱量を短時間で得ることができる。
【0004】
一方、本発明者らは、アルミニウム粉末と生石灰粉末に、消石灰粉末を加えた発熱剤を使用するとともに、発熱剤が封入される袋体の通水性にも着目した食品加熱装置を提案した(特許文献2参照)。この食品加熱装置においては、袋体の包材として、不織布の一面に防水層(PP製)を押出しラミネート加工により設けた基材に、針穴穿孔装置を使用して種々の数の針穴を開けたものを使用している。このような針穴を有する包材を使用することにより、水の透水性が良好になり、発熱剤と水との発熱反応の立ち上がりが早くなったり、発生した熱が温水や水蒸気となって拡散していく速度が速くなり、物品の加熱に適当な発熱特性が得られると考えられる。
【0005】
なお、発熱剤の漏れや外気の浸透を防止することを目的とした袋体用の包材として、透水性のある不織布基材の表面に、膜状の水解性樹脂層を形成した包材が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3467729号
【特許文献2】特許第3921550号
【特許文献3】特開2004−331172
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した針穴を開けた包材は、不織布と防水フィルムとを貼り合せた後で、針孔穿孔装置により針穴を開けるという方法で作製されている。この方法では、所望の透水性を有する包材を得ることができるが、穿孔作業が高速化できず、大量生産には不向きであるという問題点がある。
また、針孔穿孔装置により開けた針孔は、基材巻き取り時に圧がかかると針孔がつぶれ、巻芯付近と巻きの外周付近で、巻き取り後の孔径に相違が生じる。すると、巻芯付近の基材と、巻きの外周付近の基材とで使用時の通水量が異なると思われ、そのような基材を用いて作製された袋体の発熱特性にバラツキが生じるという問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な作業で所望の透水性を有する包材を作製できるとともに、物品の加熱に適当な発熱特性(温度の立ち上がり、あるいは、上昇温度、上昇温度継続時間)を有する発熱体を使用した物品加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の物品加熱装置は、 容器に加熱される物品とともに発熱体を入れ、さらに反応用の水を加え、前記発熱体から発生した熱で物品を加熱する物品加熱装置であって、 前記発熱体が、 不織布と有孔樹脂フィルムとを反応性ホットメルト接着剤により貼り合せた通水性を有する包材からなる袋体と、 該袋体に封入された、40〜70重量%のアルミニウム粉末、並びに、5〜40重量%の消石灰粉末及び/又は5〜40重量%の生石灰粉末からなる発熱剤と、を含み、 前記有孔樹脂フィルムの孔数が、40,000個/m2以上であるとともに、開孔率が1〜7%であり、 前記反応性ホットメルト接着剤の塗布量が3〜9g/m2であることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、 前記有孔樹脂フィルムの開孔率が1〜5%であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明によれば、有孔樹脂フィルムと不織布とを、反応性ホットメルト接着剤で貼り合わせるという比較的簡単な作業で、所望の透水性を有する袋体を作製することができる。したがって、例えば、不織布と樹脂フィルムとを貼り合せた後で穿孔作業を行う場合に比べて、作業を高速化でき、大量生産が容易になる。
【0012】
この際、有孔樹脂フィルムの孔数を、40,000個/m2以上とするとともに、開孔率を1〜7%、好ましくは、1〜5%とすることにより、所望の発熱特性を得ることができる。さらに、不織布と有孔樹脂フィルムとを貼り合せる接着剤として、反応性ホットメルト接着剤を使用することにより、発熱剤の発熱反応による高温環境においても十分な耐熱性を付与できる。また、この反応性ホットメルト接着剤の塗布量を3〜9g/m2とすることにより、不織布や有孔樹脂フィルムの透水性を損なうことなく、両者を十分な強度で貼り合せることができる。
【0013】
本発明の袋体用の包材及び発熱剤の材質や物性としては、以下のようなものを挙げることができる。
本発明の袋体の不織布の材質は、コットンやパルプ羊毛などの天然繊維、ビスコース(レーヨン)やキュプラなどの再生繊維、または、6−ナイロン、6,6−ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸をはじめとする直鎖又は分岐の炭素数20までのポリエステル類、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、アクリルなどの合成繊維などを用いることができる。これらは2種類以上の素材のものを複合して使用してもよい。また、不織布の製造方法は、スパンレース法、スパンボンド法などによることができる。
【0014】
不織布の物性は、目付(秤量)(g/m2);40〜70、厚さ(μm);170〜460、縦引張強度(N/5cm);35〜380、横引張強度(N/5cm);13〜165、縦引張伸度(%);80以下、横引張伸度(%);120以下のものなどを用いることができる。
【0015】
また、有孔樹脂フィルムの材質は、例えば、ポリプロピレンなどを使用することができる。
【0016】
フィルムの融点は、150〜170℃であることが好ましい。含水した発熱剤近傍の温度は、一時的に水の沸点(100℃)以上に達しているものと考えられる。そこで、融点は少なくとも140℃以上であることが好ましい。一方、袋体製造時のヒートシール作業においては、有孔樹脂フィルムがシールされるので、できるだけ低い温度でシールできることが好ましい。例えば、ポリエステルフィルムは融点が高すぎ(260℃程度)、ヒートシール作業には適さない。そこで、融点は最高で180℃程度であることが好ましい。
また、厚さは、0.03〜0.08mmが好ましい。厚さが0.02mm以下であれば、ヒートシール強度やフィルム強度など所定の機械特性が得られず、0.10mm以上であれば、樹脂フィルムの孔開け加工に適さず、袋体作製時のヒートシール作業が低速でしか行えなくなるので好ましくない。
【0017】
反応性ホットメルト接着剤としては、ウレタン系などのホットメルト接着剤を使用できる。同接着剤の融点は、100〜120℃が好ましい。反応性ホットメルト接着剤を使用するのは以下の理由による。反応性ホットメルト接着剤は、溶融後、接着時に、何らかの反応で架橋反応を起こすことにより、接着後、融点以上の耐熱性を付与されている。架橋反応を導く反応としては、例えば、加熱、エネルギー(紫外線、電子線)照射、イオン、湿気、2液による架橋反応、などが挙げられる。本発明においては、作業上湿気による架橋反応を生じるイソシアネート基やアルコキシシリル基を含有するウレタン系ホットメルト接着剤が好ましい。
【0018】
不織布と有孔樹脂フィルムとを反応性ホットメルト接着剤で貼り合せる方法としては、ロール塗布、スプレー塗布等の方法が挙げられる。特にスプレー塗布が好ましい。
【0019】
また、発熱剤に使用するアルミニウムの粒度分布は、例えば、〜45μm;70〜95%、45〜63μm;5〜20%、63〜75μm;0〜5%、+75μm;0〜5%のものを使用できる。
消石灰の粒度分布は、〜45μm;0〜10%、45〜75μm;0〜30%、75〜150μm;20〜 45%、+150μm;30〜78%のものを使用できる。
生石灰粉末の粒度分布は、〜75μm;5〜25%、75〜150μm;20〜40%、+150μm;45〜65%のものや、〜75μm;25〜90%、75〜150μm;5〜70%、+150μm;0〜15%のものを使用できる。
【0020】
また、反応用の水としては、イオン交換水、逆浸透膜(RO膜)などを透過させた精製水、純水などや、水道水、極めて高硬度のものを除くミネラルウォーターなどを用いることができ、使用目的により、井戸水や雨水、河川水を用いることもできる。また、長期保存目的のため、防腐剤として、食品添加物の安息香酸、並びに、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩、ソルビン酸、並びに、ソルビン酸カリウムなどのソルビン酸塩を用いることができる。
【0021】
本発明においては、 前記発熱剤に、ホウ酸塩粉末、硫酸塩粉末、亜硫酸塩粉末、安息香酸塩粉末、及び、クエン酸塩粉末からなる群から選択された一つ以上の粉末からなる添加物が、前記発熱剤の混合粉を100重量部とした際、0.1〜30重量部添加されていることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、発熱剤にホウ酸塩粉末、硫酸塩粉末、亜硫酸塩粉末、安息香酸塩粉末、又は、クエン酸塩粉末からなる添加物を添加すると、良好な発熱特性が得られる。この理由は、正確には不明であるが、以下と推定している。アルミニウムと水酸化カルシウムの反応で、水酸化アルミニウムカルシウムが生成され、反応が終息すると考えられる。この生成物の発生を抑制することにより、アルミニウムを効率よく発熱反応させることができると考えられる。その結果、比較的高価なアルミニウム粉末の量を従来のものより減らしても発熱特性を維持又は向上できる。
【0023】
なお、添加物としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸鉄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸鉄、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなどを挙げることができる。これらの内で、食品添加物として使用可能な、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムが安全上好ましい。
【0024】
硫酸ナトリウムは、以下のようなものを用いることが好ましい。
粒度分布:〜53μm;40%、53〜125μm;30〜50%、125〜300μm;10〜30 %、+300μm;0%。
亜硫酸ナトリウムは、以下のようなものを用いることが好ましい。
粒度分布:〜53μm;40%、53〜125μm;30〜50%、125〜300μm;10〜30 %、+300μm;0%。
【0025】
添加物の添加量は、発熱剤の混合粉を100重量部とした際、0.1〜30重量部、好ましくは、0.5〜3重量部、さらに好ましくは0.8〜2重量部であることが好ましい。添加量が0.1重量部より少ないと、温度の持続性が悪くなる。上記範囲内では、添加量が多いほど比較的良好な発熱特性が得られるが、30重量部より多いと、温度の立ち上がりが遅くなる。
【0026】
加熱される物品の例としては、レトルト食品や缶入り飲料、ゆで卵、お弁当などの食品や化粧品を挙げることができる。
また、容器の形状としては、袋、箱や鍋を挙げることができる。容器からは、発熱剤の上記発熱反応により発生したH2やH2Oが排出される。その排出口の大きさや数は、保温性を確保しつつ容器の膨張や破壊を防止できるように選択する。
【発明の効果】
【0027】
以上の説明あるいは後述の実施例などから明らかなように、本発明によれば、不織布と有孔樹脂フィルムとを反応性ホットメルト接着剤で貼り合せるという比較的簡単な作業で所望の透水性を有する包材を作製できる。この包材を使用して袋体を製造することにより、物品の加熱に適当な発熱特性(温度の立ち上がり、あるいは、上昇温度、上昇温度継続時間)を有する発熱体を使用した物品加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る物品加熱装置の発熱体を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は断面図である。
この発熱体1は、袋体10と、同袋体10に封入された、発熱剤20とを備える。袋体10は、図1(B)に示すように、非撥水性の不織布11の一面に、有孔樹脂フィルム13が反応性ホットメルト接着剤12により貼り付けられた包材で作製されている。この包材を、有孔樹脂フィルム13を内側として折り畳み、周囲をヒートシールすることにより袋体10が作製される。
【0029】
以下に、不織布11、有孔樹脂フィルム13及び反応性ホットメルト接着剤12について説明する。
(1)不織布
不織布としては、非撥水性の不織布(100%レーヨン、MR−50、国光製紙社製)を準備した。同不織布の物性は、目付(秤量)(g/m2);50、厚さ(μm);400、縦引張強度(N/25mm);41、横引張強度(N/25mm);9.5、縦引張伸度(%);27以下、横引張伸度(%);120以下、である。今回使用した不織布はスパンレース法で作製されている。スパンレース法とは、高圧の水流を柱状に噴射して繊維を絡ませる製法で、柔軟でドレープ性に富み、羽毛立ちのない不織布を製造できる。この方法で製造された不織布は、主にオムツや医療資材、食品用や掃除用の生活資材に使用されている。
【0030】
(2)有孔樹脂フィルム
有孔樹脂フィルムとしては、表1に示すように、樹脂フィルム(材質;ポリプロピレン、融点;160℃、厚さ;50μm)に熱針方式により種々の針径、孔間隔、有孔数及び開孔率で針孔を開けたサンプル(計6点、テックインター株式会社製)を準備した。なお、表1中の針径の数字は針の根元の径を示しており、実際に加工された孔の径はそれより若干小さい。
【表1】

【0031】
(3)反応性ホットメルト接着剤
反応性ホットメルト接着剤としては、ウレタン系反応性ホットメルト(融点:110℃)を使用した。前述のように、本発明の物品加熱装置においては、発熱体の近傍では水の沸点(100℃)以上に温度が上昇していると考えられるので、反応性ホットメルト接着剤においても、融点が110℃程度のものを使用した。
【0032】
次に、袋体の作製方法について説明する。
まず、不織布11の一面に、反応性ホットメルト接着剤12を塗布(塗布量は随時変更)する。塗布方法としては、スプレー塗布等の方法が挙げられる。そして、この反応性ホットメルト接着剤12上に、有孔樹脂フィルム13を貼り合せた。貼り合せ後、所定の環境(常温・常湿・常圧)下に、所定時間(7日間)放置し、反応性ホットメルト接着剤12を硬化させて、不織布11と有孔樹脂フィルム13とを固定して包材を作製した。
その後、所定の寸法に裁断した包材を、図1(B)に示すように、不織布11を外側、有孔樹脂フィルム13を内側として折り畳み、縁部をヒートシールして袋体10を作製した。袋体10の発熱体収容部の寸法は、70mm×170mmである。
【0033】
次に、発熱体の発熱剤20について説明する。
発熱剤20は、アルミニウム粉末(♯280A、ミナルコ製)20g、消石灰粉末(特選、田源石灰製)10g、生石灰粉末(田源石灰製)20gの混合粉末(50g)を使用した。
粒度分布は、アルミニウム粉末は、〜45μm;90.80%、45〜63μm;8.30%、63〜75μm;0.64%、+75μm;0.25%、消石灰は、〜45μm;4.60%、45〜75μm;21.90%、75〜150μm;35.92%、+150μm;37.58%、生石灰は、〜75μm;15.68%、75〜150μm;34.24%、+150μm;50.07%である。
生石灰の物性は、酸化カルシウム;93%以上(EDTA滴定法(NN指示薬)により測定)、二酸化炭素;2.0%以下(ストレライン法にて測定)、不純分;3.2%以下(過塩素酸法、EDTA滴定法、吸光光度法にて測定)である。なお、不純分とは、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化マグネシウムの合計である。
【0034】
なお、上記の発熱剤に、ホウ酸塩粉末、硫酸塩粉末、亜硫酸塩粉末、安息香酸塩粉末、及び、クエン酸塩粉末からなる群から選択された一つ以上の粉末からなる添加物を、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜3重量%、さらに好ましくは0.8〜2重量%添加してもよい。このような添加物を添加することにより、アルミニウムと水酸化カルシウムの反応で生成される水酸化アルミニウムカルシウムの発生が抑制されて、アルミニウムを効率よく発熱反応させることができると考えられる。
なお、添加物としては、食品添加物として使用可能な、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムが安全上好ましい。
【0035】
この発熱剤20を、上記の袋体10に封入し、発熱体1を作製した。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態に係る物品加熱装置を示す図である。この例は、レトルトご飯1個、レトルトカレー1個及び350ミリリットルのペットボトル入りのお茶D1個を加熱する装置を示す。
物品加熱装置30は、排気口32を有する加熱袋(容器)31と、図1に示す発熱体1と、反応用の水Wとを備える。この例では、径が5mmの円形の排気口32を2個設けた。排気口32としては、径が3〜7mmの孔を2〜4個設けることができる。なお、容器によっては、径が10〜15mmの孔を1〜2個、あるいは、径が1〜2mmの孔を8〜10個設けてもよい。また、排気口の形状は、円形でなくても水蒸気や水素を逃がすことのできるものであれば可能である。さらに、三方シール袋の場合は、開口部を折り返したものでもよい。
なお、発熱体1は空気中の水分との反応を防ぐため、保管時には気密性の外袋に入れられている。
【0037】
次に、(1)この物品加熱装置30の発熱温度、及び、(2)袋体10の剥離強度、を試験した。
(1)物品加熱装置の発熱温度
(1.1)温度計測方法
図3は、温度計測方法を説明する図である。
温度が20℃に保たれた恒温室内において、図2の物品加熱装置30を断熱材71上に設置したステンレス容器73内に保持し、発熱開始から20分間、加熱袋31内のお茶Dの温度T1と環境温度を計測装置Mで計測した。
なお、参照サンプルとして、不織布と防水層を貼り合せた後で、針孔穿孔装置により針孔を開けた袋体と、上記と同じ組成を有する発熱剤を使用した発熱体を準備した(特許第3921550号参照)。
【0038】
ここでは、有孔樹脂フィルムの種類(孔数、開孔率)、及び、反応性ホットメルト接着剤の塗布量を変えた場合に、発熱特性が以下の条件を満足するかどうかについて検討した。
ア)被加熱物の温度が5分後に40℃以上であること、
イ)被加熱物の温度が10分後に60℃以上であること、
ウ)被加熱物の温度が20分後に60℃以上であること。
【0039】
(1.2)有孔樹脂フィルムの種類(孔数、開孔率)
表1に示す有孔樹脂フィルムの各サンプルを使用して、反応性ホットメルト接着剤の塗布量を5g/m2として袋体を作製して、上記の物品加熱装置を使用してお茶の温度を計測した。
【0040】
図4は、有孔樹脂フィルムの種類を変えた場合のお茶の温度と測定時間の関係を示すグラフである。
図4のグラフに示すように、サンプル1、2、3及び4のものは、参照サンプルとほぼ同様に、上記の条件を満足した。特に、サンプル1及び2のものは、参照サンプル以上の発熱特性を示している。一方サンプル5、6のものは、条件ア)及びイ)をやや満足せず、温度の立ち上がりが遅い。これらの結果を表1の右端の欄に示した。
【0041】
この結果を表1の各サンプルの針径、孔数、開孔率から考察する。
図5は、有孔樹脂フィルムの孔数と開孔率との関係を示すグラフに、各サンプルの発熱特性結果をプロットしたものである。○は発熱特性の良かったもの、×は発熱特性の悪いものを示す。
図5のグラフに示すように、孔数が49,600個(サンプル4)より多いもの(サンプル1〜3)が良好な結果が得られていることが分かる。
また、開孔率については、結果の良いもの(サンプル1、2)と悪いもの(サンプル5、6)を比較すると、開孔率は同程度である、あるいは、結果の悪いもの(サンプル5、6)の方が結果の良いもの(サンプル1、2)よりも若干高い。しかし、両者では孔数が大きく異なっている。開孔率は針径と孔数の積にほぼ比例するので、同等の開孔率でも、径の小さい孔を多数設ける方が、本発明の物品加熱装置には効果があることがわかる。この理由は、明言できないものの、発熱剤の発熱反応が生じている間、袋体内外を反応用の水が出入りするとともに、袋体内から外へ、水蒸気や、反応の際に生じる水素ガスが放出されるが、結果的に、同じ開孔率でも孔数の多い方、つまり、小径で多数の孔数が開いている袋体の方が、袋体内部へ水が浸透する際に物理的な抵抗を受け難いものと推定される。
【0042】
この結果から、具体的に、有孔樹脂フィルムの孔数が、40,000個/m2以上、かつ、開孔率が1〜7%であることが好ましいといえる。
【0043】
(1.3)反応性ホットメルト接着剤の塗布量
表1に示す有孔樹脂フィルムのサンプルNo.2(型判103)を使用して、反応性ホットメルト接着剤の塗布量を2g、3g、5g、6g、7g、9g及び10g/m2として袋体を作製して、上記の発熱剤を使用してお茶の温度を計測した。
【0044】
図6は、接着剤の塗布量を変えた場合のお茶の温度と測定時間の関係を示すグラフである。
図6に示すように、塗布量が3g〜9gのものは、参照サンプルとほぼ同様に、上記の条件を満足した。特に、塗布量が5g及び9gのものは、参照サンプル以上の発熱特性を示している。なお、塗布量が2gのものは、条件イ)をやや満足せず、温度の立ち上がりが遅い(ただし、使用に不向きとは言えない)。一方、塗布量が10gのものは、全ての条件を満足していない。
【0045】
さらには、塗布量10gのものは、使用後に発熱体が加熱袋内側底面に接着しまっていた。これは、袋体作製時に、有孔樹脂フィルムの針孔から漏れて不織布の表面に付着していた接着剤が、発熱剤の発熱により融解し加熱袋の底面に付着してしまったためと思われる。
また、基材作製においては、不織布と有孔樹脂フィルムとの反応性ホットメルト接着剤により貼り合せた直後に巻き取られるのが一般的である。接着剤の塗布量が多いほど、接着剤の硬化前に、有孔樹脂フィルムの孔部から接着剤が漏れて、重ね合わされた不織布の表面に接着してしまう、いわゆるブロッキング現象が生じやすくなる。したがって、接着剤の塗布量は、加熱特性が好ましい範囲内で、より少ないことが好ましく、3〜5g/m2であることが好ましい。
【0046】
以上の結果から、反応性ホットメルト接着剤の塗布量は、3〜9g/m2が好ましいことが分かる。
【0047】
(2)袋体の剥離強度
(2.1)剥離強度計測方法
袋体の剥離強度は、引張試験機を使用して、JIS P8113:2006に準拠した以下の方法により計測した。
まず、前述の方法で作製した包材を、常温・常湿・常圧下に7日以上放置した。その後、包材の略中央部を、幅:15±0.5mm、長さ:190±10mm(接着部160±5mm、非接着部30±5mm)の寸法にステンレス刃を使用して切り取り、サンプルとする。この剥離強度計測では、包材をドライ時とウェット時の各々で計測する。ドライサンプルは、切り取ったものをそのまま適用し、ウェットサンプルは、23±3℃のイオン交換水に30±5分間浸漬した後、非接着部の不織布をクリップ留めし、10±5分間放置して水切りしたものを適用した。この際、放置後に水の滴りがないことを確認し、滴りがある場合のみ5分ずつ放置時間を延長した。
【0048】
そして、引張試験機による試験実施前に、ドライサンプル、ウェットサンプルを1時間以上、23±3℃の常湿環境下に放置した。なお、ウェットサンプルは加圧されないようにプラスチック袋に入れて放置した。
【0049】
次に、引張試験機(MODEL−1301−D、0113、アイコーエンジニアリング株式会社製、測定範囲:−50kgf〜+50kgf、引張スピード:20mm/min〜300mm/min)の上下チャッキング部の間隔を40±5mmにセットする。そして、サンプルの有孔樹脂フィルム側(長さ:5〜10mm)を上チャッキング部(固定側)に挟み固定し、不織布側を下チャッキング部(可動側)に挟み固定する。引張スピードを300mm/minとして、測定を開始する。サンプルが破壊、又は、チャッキング部の動きが停止するまでのピーク強度(最大値)を剥離強度(単位:kgf/15mm)とする。
なお、サンプル末端では、比較的大き目の値が計測されてしまうので、接着部のうちの最後の接着部30±5mmは計測していない。
【0050】
(2.2)サンプル及び結果
準備したサンプルの仕様と剥離強度の計測結果を表2に示す。
【表2】

【0051】
これらの結果から以下のことが分かる。
(1)サンプルNo.8の結果から、塗布量が2g/m2と少ない場合には、ウェット時の剥離強度が0.05kgf/15mm未満となり、有孔樹脂フィルムと不織布の接着強度が十分でないといえる。このように剥離強度が低いと、加熱特性が安定しないことが想定される。
(2)サンプルNo.13の結果から、開孔率が6.96%と大きい場合、ウェット時の剥離強度が0.05kgf/15mm未満となり、有孔樹脂フィルムと不織布の接着面積が十分にとれず接着強度が十分でないと考えられる。
【0052】
以上の結果から、最終的に以下のことが分かる。
(1)有孔樹脂フィルムは、孔数が40,000個/m2以上であるとともに、開孔率が1〜7%、特には1〜5%であることが好ましい。
であり、
(2)反応性ホットメルト接着剤の塗布量は、3〜9g/m2であることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の物品加熱装置の実施例を図1、図2を参照して具体的に説明する。
まず、不織布11(100%レーヨン、MR−50、国光製紙社製)の一面に、反応性ホットメルト接着剤12をスプレー塗布により塗布した。そして、この反応性ホットメルト接着剤12上に、有孔樹脂フィルム13(表2のサンプルNo.7、9、10、11、13、14)を貼り合せた。反応性ホットメルト接着剤12の塗布量も表2に示す。貼り合せ後、所定の環境(常温・常湿・常圧)下に、所定時間(7日間)放置し、反応性ホットメルト接着剤12を硬化させて、不織布11と有孔樹脂フィルム13とを固定して包材を作製した。
【0054】
そして、この包材を所定の寸法に裁断し、図1(B)に示すように、不織布11を外側、有孔樹脂フィルム13を内側として折り畳み、縁部をヒートシールして袋体10を作製した。袋体10の発熱体収容部の寸法は、70mm×170mmである。
【0055】
発熱剤20は、アルミニウム粉末(♯280A、ミナルコ社製)、消石灰粉末(特選、田源石灰製)、生石灰粉末(田源石灰製)を混合したものである(アルミニウム、消石灰、生石灰の重量比;40:20:40、全重量50g)。この発熱剤20を袋体10に収容し、発熱体1を製造した。
【0056】
この発熱体1を、図2に示すように、排気口32を有する加熱袋(容器)31に入れた。加熱袋31には、径が5mmの円形の排気口32が2個設けられている。
【0057】
発熱体1が入れられた加熱袋31に、レトルトご飯1個、レトルトカレー1個、350ミリリットルペットボトル入りのお茶Dを1個を入れ、重量130gの水Wを加えて同容器31を密封した。発熱体1は発熱反応を起こし、同容器31に入れたレトルトご飯、レトルトカレー及びお茶が加熱された。発熱反応により発生した蒸気やガスは、加熱袋31の排気口32から排出された。その結果、20分後に、サンプルNo.7、9、10、11、13及び14の各々について、お茶は72.8、68.5、76.4、71.4、67.3及び62.6℃に加熱された。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係る物品加熱装置の発熱体を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る物品加熱装置を示す図である。この例は、レトルトご飯1個、レトルトカレー1個及び350ミリリットルペットボトル入りのお茶1個を加熱する装置を示す。
【図3】温度計測方法を説明する図である。
【図4】有孔樹脂フィルムの種類を変えた場合のお茶の温度と測定時間の関係を示すグラフである。
【図5】有孔樹脂フィルムの孔数と開孔率との関係を示すグラフに、各サンプルの発熱特性結果をプロットしたものである。
【図6】接着剤の塗布量を変えた場合のお茶の温度と測定時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 発熱体 10 袋体
11 不織布 12 反応性ホットメルト接着剤
13 有孔樹脂フィルム 20 発熱剤
30 物品加熱装置 31 加熱袋
32 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に加熱される物品とともに発熱体を入れ、さらに反応用の水を加え、前記発熱体から発生した熱で物品を加熱する物品加熱装置であって、
前記発熱体が、
不織布と有孔樹脂フィルムとを反応性ホットメルト接着剤により貼り合せた通水性を有する包材からなる袋体と、
該袋体に封入された、40〜70重量%のアルミニウム粉末、並びに、5〜40重量%の消石灰粉末及び/又は5〜40重量%の生石灰粉末からなる発熱剤と、
を含み、
前記有孔樹脂フィルムの孔数が、40,000個/m2以上であるとともに、開孔率が1〜7%であり、
前記反応性ホットメルト接着剤の塗布量が3〜9g/m2であることを特徴とする物品加熱装置。
【請求項2】
前記有孔樹脂フィルムの開孔率が1〜5%であることを特徴とする請求項1記載の物品加熱装置。
【請求項3】
前記発熱剤に、ホウ酸塩粉末、硫酸塩粉末、亜硫酸塩粉末、安息香酸塩粉末、及び、クエン酸塩粉末からなる群から選択された一つ以上の粉末からなる添加物が、前記発熱剤の混合粉を100重量部とした際、0.1〜30重量部添加されていることを特徴とする請求項1又は2記載の物品加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222006(P2010−222006A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185271(P2007−185271)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000113584)マイコール株式会社 (13)
【Fターム(参考)】