説明

物品管理システム、情報コード及び情報コード読取装置

【課題】スペースが限られた物品であっても情報コードを形成して当該物品を管理することができる物品管理システム、情報コード、情報コード読取装置を提供する。
【解決手段】物品管理システム1は、物品(基板R)に対して情報コードBを形成する情報コード形成装置60と、情報コード形成装置60によって物品に形成された情報コードBを読み取り可能な情報コード読取装置10とを備えている。そして、情報コード形成装置60によって形成される情報コードBは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理システム、情報コード及び情報コード読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物流や販売或いは在庫管理などを行うために、製造番号や製造日時、価格等の情報をコード化した情報コードを印刷して物品に貼り付け、当該物品を管理するシステムが知られている。特に、近年では、物品に関する情報を追跡、遡及するトレーサビリティの重要性が高まってきており、物品(いわゆる完成品)だけでなく、物品を構成する個々の部品にも製造工程などにおいて情報コードが付されることがある。また、近年では、製造工程などにおいて、レーザやインクジェットなどを用いて物品に非接触で情報コードを形成する技術が普及しつつある。
【0003】
例えば、物品に非接触で情報コードを形成する技術として、下記特許文献1に示すものが知られている。この特許文献1には、生物・生体試料を保存する容器本体に、当該試料の情報がコード化された2次元コードを、レーザエッチングで刻印したり、レーザプリンタにより印字する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、物品の形状によっては、情報コードを形成するスペースを確保することが難しい場合がある。特に、電子部品が実装される基板など厚みが小さい板状の物品では、基板の側面(基板の厚み方向)に情報コードを形成することが難しく、基板面上に情報コードを形成せざるを得ない。このように、基板に情報コードを形成する場合には、電子部品が実装されるスペースのほかに情報コードを形成するためのスペースを基板面上にさらに設ける必要があるといった問題があった。
【0006】
また、電子部品が実装される基板は、搬送や保管のために、例えば図9(A)に示すように、各基板面を平行にして積み重ねて基板収容ラック内に収容される場合がある。しかしながら、このように基板収容ラック内に収容された各基板の情報コードB’を情報コード読取装置により読み取る場合には、基板収容ラックから各基板を引き出さなければならず(図9(B)、(C)参照)作業効率が悪かった。
【0007】
一方、上記特許文献1は、比較的表面積の大きな容器本体に2次元コードを非接触で形成する技術であり、スペースが限られた物品に情報コードを形成する点については何ら考慮されておらず、上述の問題を解決することができなかった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、スペースが限られた物品であっても情報コードを形成して当該物品を管理することができる物品管理システム、情報コード、情報コード読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、物品に対して情報コードを形成する情報コード形成装置と、前記情報コード形成装置によって物品に形成された前記情報コードを読み取り可能な情報コード読取装置と、を備えた物品管理システムであって、前記情報コード形成装置によって形成される前記情報コードは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされており、前記情報コード読取装置は、前記情報コード形成装置によって前記物品に形成された前記情報コードを撮像可能な撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された前記情報コードのコード画像を、前記所定方向に走査して読み取るデコード手段と、前記デコード手段による前記情報コードの読取結果を記憶又は出力する読取結果処理手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の物品管理システムにおいて、前記物品は、板状に構成された基板であり、前記情報コード形成装置は、前記基板の側面に前記情報コードを形成し、前記情報コード読取装置は、前記撮像手段によって前記基板の側面を撮像し、その撮像された基板側面の撮像画像に含まれる前記コード画像を、前記デコード手段によって読み取ることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の物品管理システムにおいて、前記情報コード形成装置によって側面に前記情報コードが形成された前記基板を板厚方向に複数重ねて配置すると共に、それら重ねられる複数の前記基板の板面方向一方側が開放可能とされた基板収容ラックを備え、前記情報コード読取装置は、前記基板収容ラックに収容される各基板の前記板面方向一方側の側面を前記撮像手段によって撮像し、その撮像された各基板側面の撮像画像に含まれる前記コード画像を、前記デコード手段によって読み取ることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の物品管理システムにおいて、前記情報コード形成装置は、前記情報コードの形状を特定する印字データに基づいてレーザマーキング加工を行うレーザマーキング装置からなることを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の物品管理システムにおいて、前記情報コードに含まれる複数の前記円形モジュールが、所定の径の小円形モジュール及び前記小円形モジュールよりも径の大きい大円形モジュールの2種類によって構成され、前記情報コードに含まれる前記スペースが、所定の幅の小スペース及び前記小スペースよりも幅の大きい大スペースの2種類によって構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の物品管理システムにおいて、前記情報コードに含まれる複数の前記円形モジュールが、所定の第1の径の円形モジュール、前記第1の径よりも大きい第2の径の円形モジュール、前記第2の径よりも大きい第3の径の円形モジュール、前記第3の径よりも大きい第4の径の円形モジュール、の4種類によって構成され、前記情報コードに含まれる複数の前記スペースが、所定の第1の幅のスペース、前記第1の幅よりも大きい第2の幅のスペース、前記第2の幅よりも大きい第3の幅のスペース、前記第3の幅よりも大きい第4の幅のスペース、の4種類によって構成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項7の発明は、情報コード読取装置によって読み取られる情報コードであって、略円形状に構成された複数の円形モジュールと、複数の前記円形モジュールのモジュール間にそれぞれ配される複数のスペースと、を備え、前記円形モジュールと前記スペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、且つ各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされていることを特徴としている。
【0016】
請求項8の発明は、情報コードからの反射光を受光する長手状の受光領域を備えた受光手段と、前記情報コードからの前記反射光を前記受光手段の受光面に結像させる結像手段と、前記受光手段による受光結果に基づいてデコードを行うデコード手段と、を備えた情報コード読取装置であって、読取対象となる前記情報コードは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされたものであり、前記結像手段は、前記受光手段の長手方向と直交する方向に沿って絞りが形成され、前記長手方向の像のぼけを、当該長手方向と直交する短手方向と比較して大きくするように前記情報コードの像を結像する結像レンズを有し、前記デコード手段は、前記受光手段での受光結果によって得られた前記情報コードのコード画像を、当該コード画像における前記長手方向に対応した走査方向に走査してデコードを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、情報コード形成装置によって形成される情報コードは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされている。そして、情報コード読取装置は、情報コード形成装置によって物品に形成された情報コードを撮像可能な撮像手段と、撮像手段によって撮像された情報コードのコード画像を、所定方向に走査して読み取るデコード手段と、デコード手段による情報コードの読取結果を記憶又は出力する読取結果処理手段と、を有している。
この構成によれば、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて情報コードを形成することができる。特に、情報コードの構成要素として円形モジュールを採用しており、この円形モジュールは、形成の基準位置(例えば中心位置)が特定されれば、小さなモジュールであっても正確に形成し易いため、より小さな情報コードを狭いスペースに正確に形成し易くなる。
【0018】
請求項2の発明は、情報コードの形成対象となる物品が、板状に構成された基板であり、情報コード形成装置は、基板の側面に情報コードを形成している。本発明では、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて情報コードを形成しており、このような技術を用いれば、一般的なバーコード等を形成しにくい基板側面の狭いスペースにおいて情報コードをより正確に形成し易くなる。そして、このように基板側面に形成された情報コードを撮像手段によって撮像し、デコード手段によって読み取るようにすれば、基板の実装状態や積層状態に影響を受けることなく基板に付された情報を確実に読み取ることができるようになる。
【0019】
請求項3の発明は、情報コード形成装置によって側面に情報コードが形成された基板を板厚方向に複数重ねて配置すると共に、それら重ねられる複数の基板の板面方向一方側が開放可能とされた基板収容ラックを備えている。そして、情報コード読取装置は、基板収容ラックに収容される各基板の板面方向一方側の側面を撮像手段によって撮像し、その撮像された各基板側面の撮像画像に含まれるコード画像を、デコード手段によって読み取っている。
この構成によれば、基板ラック内に複数の基板をコンパクトに収容しつつ、その収容状態を維持しながら各基板に形成された情報コードをより確実に読み取ることができる。従って、情報コードを読み取るために、あえて基板ラックから基板を取り出す必要がなく、板面に情報コードを形成する場合と比較して読取作業の効率化及び省力化が可能となる。
【0020】
請求項4の発明では、情報コード形成装置が、情報コードの形状を特定する印字データに基づいてレーザマーキング加工を行うレーザマーキング装置によって構成されている。この構成によれば、物品の狭いスペースに小さな情報コードをより正確に形成することができる好適例となる。特に、レーザマーキング加工によって円形モジュールを形成する構成であるため、レーザのパワー調整等によってモジュールのサイズ(径)を精度高く調整し易くなり、小サイズのモジュールをより一層正確に形成することができる。
【0021】
請求項5の発明では、情報コードに含まれる複数の円形モジュールが、所定の径の小円形モジュール及び小円形モジュールよりも径の大きい大円形モジュールの2種類によって構成され、情報コードに含まれるスペースが、所定の幅の小スペース及び小スペースよりも幅の大きい大スペースの2種類によって構成されている。このようにすると、小サイズの二値コードをより正確に形成することができ、且つその読み取りをより確実に行うことができる好適例となる。
【0022】
請求項6の発明は、情報コードに含まれる複数の円形モジュールが、所定の第1の径の円形モジュール、第1の径よりも大きい第2の径の円形モジュール、第2の径よりも大きい第3の径の円形モジュール、第3の径よりも大きい第4の径の円形モジュール、の4種類によって構成され、情報コードに含まれる複数のスペースが、所定の第1の幅のスペース、第1の幅よりも大きい第2の幅のスペース、第2の幅よりも大きい第3の幅のスペース、第3の幅よりも大きい第4の幅のスペース、の4種類によって構成されている。
このようにすると、小サイズの四値コードをより正確に形成することができ、且つその読み取りをより確実に行うことができる好適例となる。
【0023】
請求項7の発明によれば、請求項1と同様の効果を奏する情報コードを実現できる。
【0024】
請求項8の発明によれば、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて小型化が図られた情報コードをより良好に読み取ることができる情報コード読取装置を実現できる。特に、受光手段の長手方向と直交する方向に沿って絞りが形成され、長手方向の像のぼけを、当該長手方向と直交する短手方向と比較して大きくするように情報コードの像を結像する結像レンズが設けられ、得られたコード画像において、長手方向に対応した走査方向に走査してデコードを行っているため、受光センサの長手方向に沿って情報コードの像が結像するように読み取ることで、情報コードの横方向(モジュール配列方向)のピントを合わせ、縦方向(モジュール配列方向と直交する方向)にぼけを生じさせるようにコード画像を生成することができる。そして、このように得られるコード画像に対し、長手方向に対応した走査方向(即ちモジュール配列方向)に走査してデコードを行えば、より認識率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る物品管理システムの構成を概略的に示す説明図であり、図1(A)は、レーザマーキング装置により基板側面に情報コードを形成する様子を説明する説明図であり、図1(B)は、情報コードが形成された基板側面を概略的に示す概略図であり、図1(C)は、基板側面に形成された情報コードを情報コード読取装置により読み取る様子を説明する説明図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る物品管理システムで用いられるレーザマーキング装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係る物品管理システムでの情報コードの形成に関し、形成対象面における各円形モジュールが形成される位置を概念的に説明する説明図であり、図3(B)は、第1実施形態に係る物品管理システムでの小円形モジュールの形成を概念的に説明する説明図であり、図3(C)は、大円形モジュールの形成を概念的に説明する説明図である。
【図4】図4(A)は、公知のバーコードを概略的に説明する説明図であり、図4(B)は、図4(A)の波線部分を拡大して示す拡大図である。図4(C)は、図4(B)のバーコードに記録される情報を表わした第1実施形態に係る情報コードを説明する説明図であり、図4(D)は、図4(C)の情報コードのモジュール幅値及びモジュール間隔を説明する説明図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る情報コード読取装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係る情報コード読取装置で用いられる結像レンズの構成を概略的に例示する説明図であり、図6(A)は、結像レンズの斜視図であり、図6(B)は、図6(A)の結像レンズの縦断面図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係る物品管理システムにおいて基板収容ラックに情報コードが形成された基板が収容されている様子を概略的に説明する説明図である。
【図8】図8(A)は、公知の4値レベルコードを概略的に説明する説明図であり、図8(B)は、図8(A)の波線部分を拡大して示す拡大図であり、図8(C)は、図8(B)のバーコードに記録される情報を表わした第1実施形態に係る情報コードを説明する説明図である。
【図9】図9は、従来の物品管理システムにおける問題点を説明する説明図であり、図9(A)は、基板収容ラックに基板が収容されている様子を説明する説明図であり、図9(B)は、基板収容ラックから基板を引き出して情報コードを読み取る様子を説明する説明図である。また、図9(C)は、情報コードが形成された基板を上方から見た様子を概略的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る情報コード及び情報コード読取装置を用いる物品管理システムについて、図1〜図7を参照して説明する。
本実施形態では、板状に構成された基板Rを当該物品管理システムによって管理する例を挙げて説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態に係る物品管理システムの構成を概略的に示す説明図であり、図1(A)は、レーザマーキング装置により基板側面に情報コードを形成する様子を説明する説明図であり、図1(B)は、情報コードが形成された基板側面を概略的に示す概略図であり、図1(C)は、基板側面に形成された情報コードを情報コード読取装置により読み取る様子を説明する説明図である。図2は、第1実施形態に係る物品管理システムで用いられるレーザマーキング装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図3(A)は、第1実施形態に係る物品管理システムでの情報コードの形成に関し、形成対象面における各円形モジュールが形成される位置を概念的に説明する説明図であり、図3(B)は、第1実施形態に係る物品管理システムでの小円形モジュールの形成を概念的に説明する説明図であり、図3(C)は、大円形モジュールの形成を概念的に説明する説明図である。図4(A)は、公知のバーコードを概略的に説明する説明図であり、図4(B)は、図4(A)の波線部分を拡大して示す拡大図である。図4(C)は、図4(B)のバーコードに記録される情報を表わした第1実施形態に係る情報コードを説明する説明図であり、図4(D)は、図4(C)の情報コードのモジュール幅値及びモジュール間隔を説明する説明図である。図5は、第1実施形態に係る情報コード読取装置の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。図6は、第1実施形態に係る情報コード読取装置で用いられる結像レンズの構成を概略的に例示する説明図であり、図6(A)は、結像レンズの斜視図であり、図6(B)は、図6(A)の結像レンズの縦断面図である。図7は、第1実施形態に係る物品管理システムにおいて基板収容ラックに情報コードが形成された基板が収容されている様子を概略的に説明する説明図である。
【0027】
本実施形態に係る物品管理システム1は、図1(A)に示すように、基板Rの側面に情報コードBを形成するレーザマーキング装置60を備えている。また、図1(C)に示すように、基板Rの側面に形成された情報コードBを読み取り可能な情報コード読取装置10を備えている。なお、説明の便宜上、図1(A)では、情報コード読取装置1を省略しており、図1(C)では、レーザマーキング装置60を省略して示してある。また、レーザマーキング装置60は、「情報コード形成装置」の一例に相当する。
【0028】
物品管理システム1では、図1(A)に示すレーザマーキング装置60によって図1(B)に示す情報コードBが形成されるようになっており、この情報コードBは、図1(C)に示す情報コード読取装置10の読取対象とされている。図1(B)に示すように、情報コードBは、略円形状に構成された複数の円形モジュール(本実施形態では2種類の円形モジュールMs,Mh(図4))と、複数の円形モジュールのモジュール間にそれぞれ配される複数のスペース(本実施形態では2種類の幅のスペースSs,Sh(図4))とを備え、円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されて構成されている。また、情報コードBは、各円形モジュールMs,Mh(図4)のサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースSs,Sh(図4)のサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされている。なお、情報コードBについての更に詳しい説明は後述する。
【0029】
次に、レーザマーキング装置60について、図2を用いて説明する。
レーザマーキング装置60は、予め設定された図形データ(印字データ)に基づいて形成対象物にレーザマーキング加工を施すように構成されている。このレーザマーキング装置60は、ハードウェア的には公知のレーザマーキング装置として構成されており、図2に示すように、所定の情報を入力するための入力部61、レーザマーキング装置全体の制御を行う制御部62、レーザ光Lbを出射するレーザ出力部63、レーザ光Lbを所定位置に移動させる駆動部64、メモリ65、当該レーザマーキング装置60に電力を供給する電源部66を有している。
【0030】
本実施形態では、レーザマーキング加工を施すための図形データ(印字データ)として、情報コードBを表わす図形データを用いており、レーザマーキング装置60は、この図形データ(情報コードBの形状を特定する印字データ)に基づいてレーザ光Lbを形成対象物である基板Rの表面に照射し、当該基板R表面に情報コードBを形成するように動作している。なお、設定、記憶された図形データに基づいて当該図形を形成するようにレーザマーキング加工を施す技術そのものは、レーザマーキング装置の分野では周知であるので詳細は省略する。
【0031】
また、本実施形態では、情報コードの図形データ(印字データ)の生成がレーザマーキング装置60で行われるようになっている。具体的には、レーザマーキング装置60において、製造番号や製造日時、価格等のデータ(情報コードBに記録すべきデータ)を入力するための入力部61が設けられている。この入力部61は、例えばテンキーやキーボードなどによって構成されており、ユーザの操作に応じたデータを制御部62に出力している。そして、制御部62は、入力部61からデータが入力されると、その入力されたデータをコード化して図形データを生成し、これを印字データとしてメモリ65に一時的に記憶している。なお、メモリ65は、例えばROM、RAM、不揮発性メモリなどの半導体メモリによって構成されており、印字データなどの各種データを記憶する機能を有している。
【0032】
また、本実施形態では、入力されたデータに基づき、配列される明色モジュール及び暗色モジュールの各幅値を公知のバーコード(JANコード、EAN、UPC、ITFコードCODE39、CODE128、NW−7等)と同様の方式で設定しており、暗色モジュールの形状をバー形状に代えて円形形状にした点が公知のバーコードとは異なっている。例えば、図4(A)のようなバーコード(一部の拡大図は図4(B))と同様に、明色モジュール及び暗色モジュールの各幅値を定めて図4(C)のような情報コードBを構成している。
【0033】
この情報コードBは、所定方向に交互に配置される暗色モジュールと明色モジュール(スペース)の幅によってデータを表わしている点は公知のバーコードと同一であるが、図4(C)の情報コードBは、図4(B)のようなバー状の暗色モジュール(黒バーDs,Db)に代えて図4(C)のような円形状の円形モジュールMs,Mhを用いている。また、図4(B)のような明色モジュール(白バーWs、Wb)の代わりに、円形モジュール間においてスペース(スペースSs,Sh)が構成されている。
【0034】
そして、レーザマーキング装置60では、情報コードBの図形データを以下のように生成している。
上述したように、各円形モジュールの幅値(モジュール幅、即ち直径)は、記録すべきデータ内容に基づいて公知のバーコードと同様の方法で定められており、このように幅値(直径)が定められた各位置の円形モジュールは、図4(D)にて概念的に示すように、中心位置Pが所定方向の仮想直線α上に位置するように、順番に配されるようになっている。例えば、図4(B)と同様に、1番目の円形モジュールの幅値を「1」(幅値「1」は、例えば公知のバーコードの1モジュール分に相当)、3番目の円形モジュールの幅値を「1」、5番目の円形モジュールの幅値を「2」(幅値「2」は、例えば公知のバーコードの2モジュール分に相当)、7番目の円形モジュールの幅値を「2」とする場合には、図4(C)のように、幅値(直径)がそれぞれ「1」「1」「2」「2」の円形モジュールを順番に配置することになる。
【0035】
更に、円形モジュール間の幅値(スペース幅)も、記録すべきデータ内容に基づいて公知のバーコードと同様の方法で定められており、このように幅値が定められる各スペースは、各モジュール間の間隔を調整することで構成している。具体的には、図4(D)のように、仮想直線α上における円形モジュールの境界間距離がスペース幅となっており、各位置(各円形モジュール間)のスペース幅が、各位置で表わすべき幅値となるように各スペース位置の両側の円形モジュール間隔を設定している。例えば、図4(B)と同様に、2番目のスペースの幅値を「1」とする場合には、図4(C)のように、仮想直線α上における1番目の円形モジュールMs及び3番目の円形モジュールMsの境界A1、A2の間隔が幅値「1」となるように、これら1番目の円形モジュールMs及び3番目の円形モジュールMsの位置を設定する。図4(B)と同様に、4番目のスペースの幅値を「2」とする場合には、図4(C)のように、仮想直線α上における3番目の円形モジュールMs及び5番目の円形モジュールMsの境界A3、A4の間隔が幅値「2」となるように、これら3番目の円形モジュールMs及び5番目の円形モジュールMsの位置を設定する。
【0036】
このように、本実施形態では、入力されたデータ(即ち製造番号や製造日時、価格等のコード化すべきデータ)に基づいて、公知のバーコードと同様の方法で、各暗色モジュール及び各明色モジュールの各幅を決定した上で、決定された各暗色モジュールを円形モジュールによって表現し、明色モジュールをスペースによって表現するように図形データを生成する。そして、上述のように、この図形データでは、各円形モジュールの中心位置Pを所定の仮想直線α上に配置すると共に、各位置の円形モジュールの直径を各位置(各円形モジュールの位置)で表わすべきモジュール幅とし、更に、各モジュール間に構成されるスペース幅を各スペース位置で表わすべきモジュール幅とするように情報コードBを構成する。
【0037】
制御部62は、上記のように生成されメモリ65に記憶された情報コードBの図形データを印字データとして駆動部64を駆動すると共にレーザ出力部63へレーザ出力の信号を出力している。
【0038】
レーザ出力部63は、例えば、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ等のレーザ光Lbを出射するレーザ発振器とレーザ発振器を冷却するためのレーザ冷却装置を備えており、制御部62からの駆動信号に応じてレーザ光Lbを出射するように動作している。制御部62は、レーザ出力部63に対して駆動信号を与えるタイミングを制御することでレーザ光Lbの出射タイミングを制御している。また、駆動部64は、例えば公知のガルバノメータスキャナを備えており、制御部62からの信号に基づいて図示しないガルバノミラーを変位させ、レーザ出力部63から出射されるレーザ光Lbをこのガルバノミラーによって基板R上の対象位置(レーザによって削るべき位置)に向けて反射させている。
【0039】
電源部66は、例えば公知の電源回路などによって構成されており、外部電源(例えば商用電源)から電力供給を受けると共に、レーザマーキング装置60内の各電気部品に対し電力を供給するように構成されている。
【0040】
次に上述したレーザマーキング装置60により基板Rに対して形成される情報コードBについて図3を用いて説明する。なお、図3(A)では、各円形モジュールの形成位置を概念的に示しており、一例として、小円形モジュールMs及び大円形モジュールMhの形成位置を示している。また、小円形モジュールMsの中心位置をP1、大円形モジュールMhの中心位置をP2で表している。
【0041】
本実施形態では、レーザマーキング装置60において、所定の位置にワーク(基板R)のコード形成面(即ち、側面)が配置されるようにワーク(基板R)が固定されており、レーザマーキング装置60は、この状態で、制御部62によってレーザ光出力部63及び駆動部64を駆動し、基板Rのコード形成面(側面)に対しレーザ光Lbを照射している。この装置では、図3(B)及び図3(C)に示すように、レーザ出力部63によって出力され駆動部64によって方向を制御されたレーザ光Lbが基板R上に照射(例えば略垂直に照射)されて円形モジュールが形成されるようになっている。例えば図3(B)では、所定の中心位置P1を中心とする小円形モジュールMsを形成しており、図3(C)では、所定の中心位置P2を中心とする大円形モジュールMhを形成している。本実施形態では、例えば、レーザ光Lbの照射時間やレーザ光Lbのパワーを変更することによって円形モジュールの径を調整することができるようになっており、円形モジュールの形成中心位置付近にレーザ光Lbを照射したとき、レーザ光Lbの照射時間やレーザ光Lbのパワーを増加させるほど、円形モジュールの直径及び深さが大きくなるようになっている。例えば、所定の照射時間及び所定のパワーでレーザ光Lbを中心位置P1付近に照射することで、図3(A)(B)のように小円形モジュールMsが形成されるようになっており、小円形モジュール形成時の照射時間及びレーザパワーの少なくともいずれかを上回るように照射時間及びパワーを設定してレーザ光Lbを中心位置P2付近に照射することで、図3(A)(C)のように大円形モジュールMhが形成されるようになっている。
【0042】
次に基板Rに形成される情報コードBについて更に詳しく説明する。本発明の情報コードBは、上述したように、略円形状の円形モジュールとスペースとを所定方向に沿って交互に配置して構成されており、図4(C)の例では、図4(A)のような2値レベルコード(バーの幅値が全部で2種であって、2種類の幅の黒バー(暗色系の領域)と2種類の幅の白バー(明色系の領域)とから構成されるCODE39やNW−7などのバーコード)を略円形状の円形モジュールとスペースとで表現している。なお、2値レベルコードのバーコードを構成する黒バーDs、Dbが情報コードBの円形モジュールMs、Mhにそれぞれ対応し、白バーWs、Wbが情報コードBのスペースSs、Shにそれぞれ対応している。
【0043】
具体的には、情報コードBは、図4(C)に示すように、所定の径の小円形モジュールMs及び小円形モジュールMsよりも径の大きい大円形モジュールMhの2種類によって構成され、情報コードBに含まれるスペースが、所定の幅の小スペースSs及び小スペースよりも幅の大きい大スペースShの2種類によって構成されている。各円形モジュールMs、Mhと各スペースSs、Shは、所定の仮想直線α(図4(C)中に示す2点鎖線であり、情報コード読取装置10で読み取るときの走査方向となるべき仮想的な直線)に沿って一列に配置されている。そして、図4では、小円形モジュールMsの幅値及び黒バーDsの幅値をa、小スペースSsの幅値及び白バーWsの幅値をa’、大円形モジュールMhの直径及び黒バーDbの幅値をb、大スペースShの幅値及び白バーWbの幅値をb’で示しており、a=a’、b=b’=2aとなるように設定されている。また、各スペースの幅値は、各スペースの両側に配置される2つの円形モジュールの最短距離(図4(C)中の各実線矢印)で表される。具体的に、図4(C)のスペースSsを例にとって説明すると、スペースSs(図4(C)において最左側に位置するスペース)の両側には、1番目と3番目の小円形モジュールMsがそれぞれ配置されている。そして、これら2つの小円形モジュールMsの配列方向(仮想直線αの方向)の最短距離、即ち、これら2つの小円形モジュールMsにおける仮想直線α上の境界A1,A2間の長さがスペースSsの幅値となる。
【0044】
次に、上述のように基板Rの側面に形成された情報コードBを読み取る情報コード読取装置10について図5及び図6を参照して説明する。
この情報コード読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0045】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図5では、情報コードBが形成された基板Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0046】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、CCDエリアセンサとして構成されるものであり、情報コードB又は基板Rに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されており、長手状の受光領域を備えている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。本実施形態では、図示しないケースの端部側において照明光Lfを導出し且つ反射光Lrを導入する読取口(図示略)が形成されており、この読取口の開口領域は、所定方向の延びる長手状とされている。そして、受光センサ28は、読取口の長手方向に沿って長手状の受光領域が配されるようになっている。なお、受光センサ28は、「受光手段」及び「撮像手段」の一例に相当する。
【0047】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態で用いられる結像レンズ27は、例えば特開平9−97306公報で開示される結像レンズと同様の結像レンズが用いられており、図6(A)、(B)に示すように、結像レンズ27の近傍には、受光センサ28の長手方向と直交する方向に沿って長い絞り27aが設けられている。そして、照明光源21から照射された照明光Lfが情報コードBにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光する際に受光センサ28の長手方向と直交する方向に当該情報コードBの像のぼけを大きくして、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。すなわち、受光センサ28の長手方向と直交する方向に沿って長い絞り27aを結像レンズ27の近傍に設けることで、受光センサ28の配列方向と、この配列方向に直交する方向との被写界深度(ピントが合う位置)を異ならせている。そして、受光センサ28の配列方向にフォーカスすることにより、当該情報コードBの配列方向に直交する方向のぼけを配列方向に比較して大きくして、受光面28aに結像させている。この構成では、情報コードBに沿って読取口を配置して当該情報コードBを撮像したときに、情報コードBのモジュール配列方向(仮想直線αの方向)が受光センサ28の配列方向(受光領域の長手方向)に沿うように結像され、このような配置状態において、情報コードBが情報コード読取装置10から所定範囲内(所定の撮像可能範囲)にあるときに情報コードBのモジュール配列方向(仮想直線αの方向)のピントが合いやすくなる。なお、結像レンズ27は、「結像手段」の一例に相当する。
【0048】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0049】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、メモリ35に記憶される。
【0050】
制御回路40は、情報コード読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有するとともに、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。そして、メモリ35に記憶された画像データに基づき、制御回路40にてデコード処理が行われる。このデコード処理には、CODE39やNW−7などの2値レベルコードなどで実施される公知のデコード処理と同様の処理を用いることができる。具体的には、撮像画像において、コードらしき画像が配置される領域を特定し、この領域において所定の横方向(受光センサ28の長手方向に対応する画素方向)に走査して明色領域及び暗色領域を特定する。なお、この横方向の走査は、縦方向の複数位置で行うことができ、仮想直線α(各円形モジュールの中心位置を通る直線)付近を走査したときに良好にデコードできることとなる。
【0051】
そして、制御回路40にて行われたデコード処理の結果が、メモリ35の所定のデコード結果格納領域に格納される。また、このデコード処理の結果は、制御回路40から液晶表示器46に出力されて当該液晶表示器46の画面上に表示される。なお、メモリ35に格納されるデコード処理の結果は、液晶表示器46や通信インタフェース48を介して外部に随時、出力可能に構成されている。なお、制御回路40は、「デコード手段」の一例に相当する。また、メモリ35及び液晶表示器46は、「読取結果処理手段」の一例に相当する。
【0052】
次に、上述のように構成される物品管理システム1を用いて、基板Rを管理する一例について、図7を参照して説明する。
本実施形態では、基板Rの固有情報(例えば、製造番号、製造日時、製造ロット、価格等)を、小円形モジュールMs及び大円形モジュールMh、小スペースSs及び大スペースShにより構成された情報コードBに変換し、この情報コードBを当該基板Rの側面にレーザマーキング装置60によって形成している。そして、このように情報コードBが側面に形成された基板Rは、各種電気製品に組み込まれて使用されるまでの間、基板収容ラック70内に収容されて保管される。具体的には、図7に示すように、基板Rは、当該基板Rの板厚方向に所定の間隔で複数重ねられて、情報コードBが形成されている側の側面(基板Rの板面方向一方側)が基板収容ラック70の開放側に配置されるように収容される。なお、情報コードBは、基板Rに電子部品を実装する際に当該基板Rの側面に形成されてもよく、基板Rが基板収容ラック70に収容されている状態で当該基板Rの側面に形成されてもよい。
【0053】
このように、本実施形態では、基板収容ラック70から各基板Rを引き出すことなく、これら基板Rが基板収容ラック70に収容されている状態で基板収容ラック70の開放側から基板Rに形成された情報コードBを撮像することができ、情報コードBを読み取ることができる。これにより、例えば、基板Rを基板収容ラック70に収容して倉庫などに保管する場合や物流させる場合などに、当該基板Rの在庫管理や追跡管理等を容易に行うことができる。また、本実施形態では、基板Rの側面に情報コードBを形成することができるため、電子部品が実装される基板R面上に情報コードBを形成するためのスペースを設ける必要がない。
【0054】
また、基板Rに電子部品が実装される工程等において、正常品、表面実装不良品、修正品、リフロー処理回数などの基板Rの品質情報をコード化した情報コードBを、当該基板Rの側面に形成するようにしてもよい。このように、基板Rの品質情報に対応する情報コードBを基板Rの側面に形成することにより、基板Rが基板収容ラック70に収容されている状態で情報コードBを読み取ることができ、当該情報コードBの情報に基づく各基板Rの品質管理を容易に行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る物品管理システム1では、レーザマーキング装置60によって形成される情報コードBは、略円形状の円形モジュールMs,MhとスペースSs,Shとが所定方向(仮想直線αの方向)に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールMs,Mhのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースSs,Shのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされている。そして、情報コード読取装置10は、レーザマーキング装置60によって基板Rに形成された情報コードBを撮像可能な受光センサ28と、受光センサ28によって撮像された情報コードBのコード画像を、所定方向に走査して読み取る制御回路40と、制御回路40による情報コードBの読取結果を記憶するメモリ35及びこの読取結果を出力する液晶表示器46とを有している。
この構成によれば、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて情報コードBを形成することができる。特に、情報コードBの構成要素として円形モジュールMs,Mhを採用しており、この円形モジュールMs,Mhは、形成の基準位置(例えば中心位置)が特定されれば、小さなモジュールであっても正確に形成し易いため、より小さな情報コードBを狭いスペースに正確に形成し易くなる。
【0056】
また、情報コードBの形成対象となる物品が、板状に構成された基板Rであり、レーザマーキング装置60は、基板Rの側面に情報コードBを形成している。本発明では、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて情報コードBを形成しており、このような技術を用いれば、一般的なバーコード等を形成しにくい基板側面の狭いスペースにおいて情報コードBをより正確に形成し易くなる。そして、このように基板側面に形成された情報コードBを受光センサ28によって撮像し、制御回路40によって読み取るようにすれば、基板Rの実装状態や積層状態に影響を受けることなく基板Rに付された情報を確実に読み取ることができるようになる。
【0057】
また、本実施形態に係る物品管理システム1は、レーザマーキング装置60によって側面に情報コードBが形成された基板Rを板厚方向に複数重ねて配置すると共に、それら重ねられる複数の基板Rの板面方向一方側が開放可能とされた基板収容ラック70を備えている。そして、情報コード読取装置10は、基板収容ラック70に収容される各基板Rの板面方向一方側の側面を受光センサ28によって撮像し、その撮像された各基板側面の撮像画像に含まれるコード画像を、制御回路40によって読み取っている。
この構成によれば、基板収容ラック70内に複数の基板Rをコンパクトに収容しつつ、その収容状態を維持しながら各基板Rに形成された情報コードBをより確実に読み取ることができる。従って、情報コードBを読み取るために、あえて基板収容ラック70から基板Rを取り出す必要がなく、板面に情報コードBを形成する場合と比較して読取作業の効率化及び省力化が可能となる。
【0058】
また、情報コード形成装置が、情報コードBの形状を特定する印字データに基づいてレーザマーキング加工を行うレーザマーキング装置60によって構成されている。この構成によれば、基板Rの狭いスペースに小さな情報コードBをより正確に形成することができる好適例となる。特に、レーザマーキング加工によって円形モジュールを形成する構成であるため、レーザのパワー調整等によってモジュールのサイズ(径)を精度高く調整し易くなり、小サイズのモジュールをより一層正確に形成することができる。
【0059】
また、情報コードBに含まれる複数の円形モジュールが、所定の径の小円形モジュールMs及び小円形モジュールMsよりも径の大きい大円形モジュールMhの2種類によって構成され、情報コードBに含まれるスペースが、所定の幅の小スペースSs及び小スペースSsよりも幅の大きい大スペースShの2種類によって構成されている。このようにすると、小サイズの二値コードをより正確に形成することができ、且つその読み取りをより確実に行うことができる好適例となる。
【0060】
また、本実施形態に係る情報コード読取装置10では、モジュールの配列方向と直交する方向のサイズを抑えて小型化が図られた情報コードBをより良好に読み取ることができる。特に、受光センサ28の長手方向と直交する方向に沿って絞りが形成され、長手方向の像のぼけを、当該長手方向と直交する短手方向と比較して大きくするように情報コードBの像を結像する結像レンズ27が設けられ、得られたコード画像において、長手方向に対応した走査方向に走査してデコードを行っているため、受光センサ28の長手方向に沿って情報コードBの像が結像するように読み取ることで、情報コードBの横方向(モジュール配列方向)のピントを合わせ、縦方向(モジュール配列方向と直交する方向)にぼけを生じさせるようにコード画像を生成することができる。そして、このように得られるコード画像に対し、長手方向に対応した走査方向(即ちモジュール配列方向)に走査してデコードを行えば、より認識率を高めることができる。
【0061】
[第1実施形態の変形例]
次に、本発明の第1実施形態における変形例に係る物品管理システム1について、図8を用いて説明する。本発明の第1実施形態における変形例では、円形モジュール及びスペースがそれぞれ4種類から構成される点で、上記第1実施形態で述べた物品管理システム1と主に異なる。したがって、第1実施形態の物品管理システム1と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
本変形例では、上記第1実施形態と同様に、情報コードBは、略円形状に構成された複数の円形モジュールと、複数の円形モジュールのモジュール間にそれぞれ配される複数のスペースとを所定方向に沿って交互に配置されて構成される。そして、本変形例では、図8(A)に示すバーの幅値が全部で4種であって、黒バー(暗色系の領域)と白バー(明色系の領域)とから構成されるEAN128やCODE128などのマルチレベル(4値)コードを略円形状の円形モジュールとスペースとで表現している。また、図8(B)は、図8(A)の波線部分を拡大した図である。そして、この図8(B)に示す部分は、本発明のレーザマーキング装置60により図8(C)に示す形状の情報コードBに変換されて基板Rに印字される。なお、4値レベルコードのバーコードを構成する黒バーD1、D2、D3、D4が情報コードBの円形モジュールM1、M2、M3、M4に対応し、白バーW1、W2、W3、W4が情報コードBのスペースS1、S2、S3、S4に対応している。
【0063】
具体的には、情報コードBは、図8(C)に示すように、円形モジュールが、所定の第1の径の円形モジュールM1、第1の径よりも大きい第2の径の円形モジュールM2、第2の径よりも大きい第3の径の円形モジュールM3、第3の径よりも大きい第4の径の円形モジュールM4の4種類によって構成されている。また、スペースが、所定の第1の幅のスペースS1、第1の幅よりも大きい第2の幅のスペースS2、第2の幅よりも大きい第3の幅のスペースS3、第3の幅よりも大きい第4の幅のスペースS4の4種類によって構成されている。また、各円形モジュールM1、M2、M3、M4と各スペースS1、S2、S3、S4は、情報コード読取装置10の仮想直線α(図8(C)中2点鎖線)に沿って一列に配置されている。また、各円形モジュールM1、M2、M3、M4は、上述した第1実施形態と同様に、各円形モジュールの中心位置が仮想直線α上に位置するように配されている。また、図8では、第1の径の円形モジュールM1及び黒バーD1の幅値をa、第1の幅のスペースS1及び白バーW1の幅値をa’、 第2の径の円形モジュールM2及び黒バーD2の幅値をb、第2の幅のスペースS2及び白バーW2の幅値をb’、 第3の径の円形モジュールM3及び黒バーD3をc、第3の幅のスペースS3及び白バーW3をc’、 第4の径の円形モジュールM4及び黒バーD4をd、第4の幅のスペースS4及び白バーW4をd’ で示している。そして、a=a’、b=b’=2a、c=c’=3a、d=d’=4aとなるように設定されている。
【0064】
また、各スペースの幅値は、各スペースの両側に配置される2つの円形モジュールの最短距離(図8(C)中の各実線矢印)で表される。具体的に、図8(C)のスペースS4を例にとって説明すると、スペースS4(図8(C)において最左側に位置するスペース)の両側には、第2の径の円形モジュールM2及び第1の径の円形モジュールM1が配置されている。そして、スペースS4の両側に配置されている第2の径の円形モジュールM2及と第1の径の円形モジュールM1との最短距離(即ち、スペースS4の両側に配置されている第2の径の円形モジュールM2及と第1の径の円形モジュールM1とが最も近接する間の長さであり、仮想直線α上に位置しスペースS4に隣接する第2の径の円形モジュールM2の端部と第1の径の円形モジュールM1端部との距離)がスペースSsの幅値となる。そして、上記第1実施形態と同様に、各円形モジュールM1、M2、M3、M4の径は、レーザ光Lbの照射時間やレーザ光Lbのパワーを変更することによって調整することができるようになっている。
【0065】
以上説明したように、本変形例に係る物品管理システム1では、情報コードBに含まれる複数の円形モジュールが、所定の第1の径の円形モジュールM1、第1の径よりも大きい第2の径の円形モジュールM2、第2の径よりも大きい第3の径の円形モジュールM3、第3の径よりも大きい第4の径の円形モジュールM4、の4種類によって構成され、情報コードBに含まれる複数のスペースが、所定の第1の幅のスペースS1、第1の幅よりも大きい第2の幅のスペースS2、第2の幅よりも大きい第3の幅のスペースS3、第3の幅よりも大きい第4の幅のスペースS4、の4種類によって構成されている。
このようにすると、小サイズの四値コードをより正確に形成することができ、且つその読み取りをより確実に行うことができる好適例となる。
【0066】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施形態では、情報コード形成装置は、レーザマーキング加工を行うレーザマーキング装置60により構成される例を示したが、これに限らず、例えば、インクジェットマーキング加工を行うインクジェットマーキング装置若しくはドットインパクト方式による加工を行うドットインパクト装置により構成されていてもよい。
【0067】
上記実施形態では、基板Rに対して直接情報コードBを形成する例を示したが、別部材に形成した情報コードBを基板Rに対して貼付する構成としてもよい。
【0068】
上記実施形態では、板状に構成された基板Rを物品の一例に挙げて説明したが、当該システム1によって管理する物品の種類及び形状等は特にこれに限定されない。
【0069】
上記実施形態では、情報コードBに記録するデータを入力部61によって入力する例を示したが、情報コードBに記録すべきデータ(例えば、製造番号、製造日時、製造ロット、価格等)を外部装置(例えばコンピュータ)からレーザマーキング装置60に対してデータ送信するような構成であってもよい。
【0070】
上記実施形態では、入力部61がテンキーやキーボードによって構成され、入力部61によって入力されたデータを記録した情報コードの図形データ(印字データ)をレーザマーキング装置60で生成する例を示したが、このような構成に限られない。例えば、情報コードの図形データ(印字データ)を生成する手段が当該レーザマーキング装置60とは別体で設けられていてもよい。例えば、レーザマーキング装置60とは別体で設けられたコンピュータによって情報コードBの印字データを生成し、この印字データを無線LANやBluetooth(登録商標)などの無線通信手段若しくは有線通信手段によりレーザマーキング装置60に送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…物品管理システム
10…情報コード読取装置
27…結像レンズ(結像手段)
28…受光センサ(受光手段、撮像手段)
28a…受光面
40…制御回路(デコード手段、読取結果処理手段)
60…レーザマーキング装置(情報コード形成装置)
70…基板収容ラック
B…情報コード
Ms…小円形モジュール
Mh…大円形モジュール
M1…第1の径の円形モジュール
M2…第2の径の円形モジュール
M3…第3の径の円形モジュール
M4…第4の径の円形モジュール
Lr…反射光
R…基板(物品)
Ss…小スペース
Sh…大スペース
S1…第1の幅のスペース
S2…第2の幅のスペース
S3…第3の幅のスペース
S4…第4の幅のスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に対して情報コードを形成する情報コード形成装置と、
前記情報コード形成装置によって物品に形成された前記情報コードを読み取り可能な情報コード読取装置と、
を備えた物品管理システムであって、
前記情報コード形成装置によって形成される前記情報コードは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされており、
前記情報コード読取装置は、
前記情報コード形成装置によって前記物品に形成された前記情報コードを撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された前記情報コードのコード画像を、前記所定方向に走査して読み取るデコード手段と、
前記デコード手段による前記情報コードの読取結果を記憶又は出力する読取結果処理手段と、
を有することを特徴とする物品管理システム。
【請求項2】
前記物品は、板状に構成された基板であり、
前記情報コード形成装置は、前記基板の側面に前記情報コードを形成し、
前記情報コード読取装置は、前記撮像手段によって前記基板の側面を撮像し、その撮像された基板側面の撮像画像に含まれる前記コード画像を、前記デコード手段によって読み取ることを特徴とする請求項1に記載の物品管理システム。
【請求項3】
前記情報コード形成装置によって側面に前記情報コードが形成された前記基板を板厚方向に複数重ねて配置すると共に、それら重ねられる複数の前記基板の板面方向一方側が開放可能とされた基板収容ラックを備え、
前記情報コード読取装置は、
前記基板収容ラックに収容される各基板の前記板面方向一方側の側面を前記撮像手段によって撮像し、
その撮像された各基板側面の撮像画像に含まれる前記コード画像を、前記デコード手段によって読み取ることを特徴とする請求項2に記載の物品管理システム。
【請求項4】
前記情報コード形成装置は、前記情報コードの形状を特定する印字データに基づいてレーザマーキング加工を行うレーザマーキング装置からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の物品管理システム。
【請求項5】
前記情報コードに含まれる複数の前記円形モジュールが、所定の径の小円形モジュール及び前記小円形モジュールよりも径の大きい大円形モジュールの2種類によって構成され、
前記情報コードに含まれる前記スペースが、所定の幅の小スペース及び前記小スペースよりも幅の大きい大スペースの2種類によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の物品管理システム。
【請求項6】
前記情報コードに含まれる複数の前記円形モジュールが、所定の第1の径の円形モジュール、前記第1の径よりも大きい第2の径の円形モジュール、前記第2の径よりも大きい第3の径の円形モジュール、前記第3の径よりも大きい第4の径の円形モジュール、の4種類によって構成され、
前記情報コードに含まれる複数の前記スペースが、所定の第1の幅のスペース、前記第1の幅よりも大きい第2の幅のスペース、前記第2の幅よりも大きい第3の幅のスペース、前記第3の幅よりも大きい第4の幅のスペース、の4種類によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の物品管理システム。
【請求項7】
情報コード読取装置によって読み取られる情報コードであって、
略円形状に構成された複数の円形モジュールと、
複数の前記円形モジュールのモジュール間にそれぞれ配される複数のスペースと、
を備え、
前記円形モジュールと前記スペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、且つ各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが、各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされていることを特徴とする情報コード。
【請求項8】
情報コードからの反射光を受光する長手状の受光領域を備えた受光手段と、
前記情報コードからの前記反射光を前記受光手段の受光面に結像させる結像手段と、
前記受光手段による受光結果に基づいてデコードを行うデコード手段と、
を備えた情報コード読取装置であって、
読取対象となる前記情報コードは、略円形状の円形モジュールとスペースとが所定方向に沿って交互に配置されると共に、各円形モジュールのサイズが各円形モジュールの径によって表わされ、各スペースのサイズが各スペースの両側に配される円形モジュールの間隔によって表わされたものであり、
前記結像手段は、前記受光手段の長手方向と直交する方向に沿って絞りが形成され、前記長手方向の像のぼけを、当該長手方向と直交する短手方向と比較して大きくするように前記情報コードの像を結像する結像レンズを有し、
前記デコード手段は、前記受光手段での受光結果によって得られた前記情報コードのコード画像を、当該コード画像における前記長手方向に対応した走査方向に走査してデコードを行うことを特徴とする情報コード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−22605(P2012−22605A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161580(P2010−161580)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】