説明

物理量検出装置、手ぶれ補正装置及びカメラ

【課題】比較的簡単な構成でありながら、重力加速度の影響が補正された物理量を検出可能な物理量検出装置、手ぶれ補正装置及びカメラを提供すること。
【解決手段】物理量検出装置1は、第1の周波数信号906を出力する第1の発振部10、第2の周波数信号908を出力する第2の発振部20、第2の発振部20に対する発振制御電圧904を生成する発振制御部50、第1、第2の周波数信号の位相差を検出して速度検出信号902を生成する速度検出部40、物理量検出信号910を生成する検出信号生成部30を含む。第1、第2の振動子の少なくとも一方は発振周波数が変化する加速度検出素子であり、発振制御部は、制御信号912に基づいて、第2の周波数信号の周波数を第1の周波数信号の周波数と一致させるように発振制御電圧を生成するか保持するかを選択し、検出信号生成部は、保持された発振制御電圧と速度検出信号に基づいて物理量検出信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量検出装置、手ぶれ補正装置及びカメラ等に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の速度や移動距離等の物理量を検出するために、用途に応じて様々なセンサーが用いられている。例えば、送波器から信号反射面に向けてパルス変調された送波信号を出射し、信号反射面で散乱された送波信号を各受波器で受信して、ドップラー効果によって生じた周波数差等から移動体の走行速度を検出する速度センサーが知られている。
【0003】
この速度センサーに対し、特許文献1の速度センサーは送波信号を必要とせず、少なくとも一方が加速度検出片である2つの周波数信号発生源からの信号に基づいて、より簡単な構成で速度を検出することができるという利点を有する。また、特許文献1の速度センサーが検出した速度を積分すれば移動距離が得られるため、特許文献1の速度センサーを応用して簡単な構成の移動距離センサーを実現することも可能であり、従来にない新たな用途への利用も考えられる。
【0004】
例えば、カメラの手ぶれ補正には一般に角速度センサーを用いて移動距離を検出する方法が利用されているが、この種の手ぶれ補正装置は構成が複雑であり、また、カメラが光軸に対して回転せずに平行移動するような手ぶれを有効に補正することが困難である。特に、マクロ撮影時には、回転方向の手ぶれよりも平行移動方向手ぶれの方が影響が大きく、角速度センサーのみで精度の高い手ぶれ補正を実現することは困難である。
【0005】
一方、マクロ撮影では、構図を決めて被写体にピントを合わせてから撮影が行われるため、被写体にピントが合わされた後の手ぶれを補正できればよい。従って、被写体にピントが合わされた後のカメラの移動距離のみ正確に検出できればよい。
【0006】
このようなマクロ撮影時における平行移動方向の手ぶれを補正する目的では、被写体にピントが合った後の手ぶれによる移動距離を検出可能なセンサーがあればよく、特許文献1の速度センサーを応用した移動距離センサーを利用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−76166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の速度センサーでは、加速度検出片による加速度の検出方向が水平面と平行でなければ、重力加速度の影響を受けて検出精度が劣化する可能性があり、マクロ撮影時の手ぶれ補正のように高い検出精度が要求される用途にそのまま利用することは難しい。
【0009】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、比較的簡単な構成でありながら、重力加速度の影響が補正された物理量(速度、移動距離、加速度等)を検出可能な物理量検出装置、手ぶれ補正装置及びカメラを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、所定の物理量を検出して物理量検出信号を出力する物理量検出装置であって、第1の振動子と、前記第1の振動子を発振させる第1の発振駆動部と、を含み、第1の振動子の発振周波数と対応づけられた周波数を有する第1の周波数信号を出力する第1の発振部と、第2の振動子と、前記第2の振動子を発振させるとともに発振制御電圧に基づいて前記第2の振動子の発振周波数を調整可能に構成された第2の発振駆動部と、を含み、前記第2の振動子の発振周波数と対応づけられた周波数を有する第2の周波数信号を出力する第2の発振部と、前記第2の発振駆動部の前記発振制御電圧を生成する発振制御部と、前記第1の周波数信号と前記第2の周波数信号の位相差を検出し、検出した位相差に応じた電圧レベルの速度検出信号を生成する速度検出部と、前記速度検出信号に基づいて前記物理量検出信号を生成する検出信号生成部と、を含み、前記第1の振動子及び前記第2の振動子の少なくとも一方は、印加された加速度に応じて発振周波数が変化する加速度検出素子であり、前記発振制御部は、所定の制御信号に基づいて、前記第2の周波数信号の周波数を前記第1の周波数信号の周波数と一致させるように前記速度検出信号の電圧値に応じた前記発振制御電圧を生成するか、又は前記発振制御電圧を保持するかを選択し、前記検出信号生成部は、保持された前記発振制御電圧と前記速度検出信号に基づいて前記物理量検出信号を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明の物理量検出装置では、加速度検出素子の検出方向に働く重力加速度成分の大きさや向きによらず、発振制御電圧を保持するまでは第1の周波数信号の周波数と第2の周波数信号の周波数が一致するため、これら2つの周波数信号の位相差は一定である。そして、発振制御電圧が保持された後は、加速度検出素子の周波数変化に応じて第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差が変化する。そのため、発振制御電圧が保持された後、加速度検出素子の検出軸方向に働く重力加速度成分の大きさや向きが変化しない方向に移動すれば、第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差に基づいて速度を検出することができるし、検出した速度に基づいて移動距離や加速度等を検出することもできる。従って、本発明によれば、比較的簡単な構成でありながら、重力加速度の影響が補正された物理量(速度、移動距離、加速度等)を検出可能な物理量検出装置を実現することができる。
【0012】
(2)この物理量検出装置において、前記第1の発振部及び前記第2の発振部は、当該物理量検出装置が静止している状態における前記第1の周波数信号と前記第2の周波数信号の位相差が90°になるように前記第1の振動子及び前記第2の振動子をぞれぞれ発振させるようにしてもよい。
【0013】
第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差が0°〜180°の範囲を超えると、誤った検出結果を出力する可能性がある。そこで、本発明の物理量検出装置では、静止状態における第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差を90°にすることにより、物理量の検出可能範囲を最大にすることができる。
【0014】
(3)この物理量検出装置において、前記第1の振動子及び前記第2の振動子は、いずれも前記加速度検出素子であり、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されているようにしてもよい。
【0015】
本発明の物理量検出装置では、第1の振動子と第2の振動子は互いに発振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差の変動範囲がより広くなる。従って、本発明の物理量検出装置によれば、物理量の検出感度をより高くすることができる。
【0016】
(4)この物理量検出装置において、前記第1の発振部は、前記第1の振動子を発振させる駆動信号を所定の分周比で分周する第1の分周器を含み、前記第1の分周器が分周した信号を前記第1の周波数信号として出力し、前記第2の発振部は、前記第2の振動子を発振させる駆動信号を前記分周比で分周する第2の分周器を含み、前記第2の分周器が分周した信号を前記第2の周波数信号として出力するようにしてもよい。
【0017】
加速度検出素子の検出感度が高すぎる場合、第1の周波数信号と第2の周波数信号の位相差の変動範囲が0°〜180°の範囲を超える可能性がある。本発明の物理量検出装置では、2つの分周器により、第1の振動子及び第2の振動子をそれぞれ発振させる駆動信号を分周して第1の周波数信号及び第2の周波数信号を生成するので、これら2つの周波数信号の位相差の変動範囲を分周比に応じて狭くすることができる。すなわち、本発明の物理量検出装置によれば、加速度検出素子の検出感度が高すぎる場合でも見かけ上の検出感度を低くすることにより、誤った検出結果を出力する可能性を低減することができる。
【0018】
(5)この物理量検出装置は、前記発振制御電圧を外部に出力するための端子を含むようにしてもよい。
【0019】
本発明の物理量検出装置によれば、発振制御電圧が安定したか否か(ロックしたか否か)を外部から判断することができる。従って、例えば、当該物理量検出装置に対して、発振制御電圧が安定しているのを確認して発振制御電圧を保持することが可能である。
【0020】
(6)この物理量検出装置において、前記検出信号生成部は、保持された前記発振制御電圧を基準として前記速度検出信号を積分することにより移動距離を表す前記物理量検出信号を生成するようにしてもよい。
【0021】
本発明の物理量検出装置によれば、重力加速度の影響を補正した移動距離を検出可能である。
【0022】
(7)本発明は、上記のいずれかの物理量検出装置と、マクロ撮影時において、前記制御信号を生成するとともに、前記物理量検出信号に基づいて手ぶれ量を計算し、計算した手ぶれ量に基づいて、撮影用光学部品を駆動するアクチュエーターを制御する制御装置と、を含むことを特徴とする手ぶれ補正装置である。
【0023】
本発明の手ぶれ補正装置によれば、重力加速度の影響を補正した手ぶれ補正を実現可能である。
【0024】
(8)本発明は、上記の手ぶれ補正装置と、撮影用光学部品と、前記手ぶれ補正装置の制御に基づいて前記撮影用光学部品を駆動するアクチュエーターと、を含むカメラである。
【0025】
本発明のカメラによれば、重力加速度の影響を補正した手ぶれ補正を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る物理量検出装置のブロック図の一例。
【図2】第1実施例の移動距離検出装置の構成を示す図。
【図3】第1実施例における水晶発振器(XO)の構成例を示す図。
【図4】第1実施例における電圧制御水晶発振器(VCXO)の構成例を示す図。
【図5】図5(A)は第1実施例における水晶振動子(加速度検出素子)に含まれる加速度検出片の構造を示す図。図5(B)は第1実施例における水晶振動子(加速度検出素子)の構造を示す図。図5(C)は第1実施例における水晶振動子(加速度検出素子)の形状変化の一例を示す図。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、第1実施例における水晶振動子(加速度検出素子)に対する重力加速度の影響について説明するための図。
【図7】第1実施例の移動距離検出装置の動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図8】第1実施例の移動距離検出装置の動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図9】図9(A)は第2実施例における水晶振動子(加速度検出素子)の構造を示す図。図9(B)は第2実施例における水晶振動子(加速度検出素子)の形状変化の一例を示す図。
【図10】図10(A)〜図10(C)は、第2実施例における水晶振動子(加速度検出素子)に対する重力加速度の影響について説明するための図。
【図11】第2実施例の移動距離検出装置の動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図12】第3実施例の移動距離検出装置の構成を示す図。
【図13】第3実施例の移動距離検出装置の動作の一例について説明するためのタイミングチャート図。
【図14】図14(A)〜図14(C)は、マクロ撮影時の手ぶれについて説明するための図。
【図15】本実施形態のカメラの概略ブロック図。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、本実施形態のカメラによるマクロ撮影時の手ぶれ補正について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
1.物理量検出装置
図1は、本実施形態に係る物理量検出装置のブロック図の一例である。
【0029】
物理量検出装置1は、第1の発振部10、第2の発振部20、検出信号生成部30、速度検出部40及び発振制御部50を含む。
【0030】
第1の発振部10は、第1の振動子100と、第1の振動子100を発振させる第1の発振駆動部110とを含み、第1の周波数信号906を出力する。
【0031】
第2の発振部20は、第2の振動子200と、第2の振動子200を発振させる第2の発振駆動部210とを含み、第2の周波数信号908を出力する。第2の発振駆動部210は、発振制御電圧904に基づいて第2の振動子200の発振周波数を調整することができる。
【0032】
ここで、第1の振動子100及び第2の振動子200の少なくとも一方は、加わった加速度に応じて発振周波数が変化する加速度検出素子である。なお、第1の振動子100及び第2の振動子200は、例えば、水晶振動子やセラミック振動子、ニオブ酸リチウム振動子、タンタル酸リチウム振動子などの単結晶材料を用いた振動子や、酸化亜鉛圧電薄膜振動子、酸化アルミニウム圧電薄膜振動子などの圧電性薄膜を用いた振動子等のいずれであってもよい。
【0033】
第1の周波数信号906及び第2の周波数信号908は、それぞれ第1の振動子100の発振周波数及び第2の振動子200の発振周波数と対応づけられた周波数を有する。例えば、第1の周波数信号906及び第2の周波数信号908は、第1の振動子100の発振周波数及び第2の振動子200の発振周波数とそれぞれ等しい周波数を有していてもよいし、それぞれ第1の振動子100の発振周波数及び第2の振動子200の発振周波数を所定の分周比で割った周波数を有していてもよい。
【0034】
速度検出部40は、第1の周波数信号906及び第2の周波数信号908を取り込み、これら2つの周波数信号の位相差を検出し、検出した位相差に応じた電圧レベルの速度検出信号902を生成して出力する。
【0035】
検出信号生成部30は、速度検出信号902に基づいて、所定の物理量の大きさを示す物理量検出信号910を生成する。ここで、所定の物理量は、例えば、物理量検出装置1の速度、加速度、移動距離等である。
【0036】
発振制御部50は、制御信号912に基づいて、第2の周波数信号908の周波数を第1の周波数信号906の周波数と一致させるように速度検出信号902の電圧値に応じた発振制御電圧904を生成するか、又は発振制御電圧904を保持するかを選択する。
【0037】
物理量検出装置1は、発振制御電圧904を外部に出力するための端子60を含むようにしてもよい。
【0038】
以下、物理量として移動距離を検出する移動距離検出装置を例にとり、図1に示した物理量検出装置の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0039】
(第1実施例)
図2は、第1実施例の移動距離検出装置の構成を示す図である。
【0040】
第1実施例の移動距離検出装置1Aは、水晶発振器(XO:Xtal Oscillator)10a、電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Xtal Oscillator)20a、積分器300、減算器310、排他的論理和回路400、低域通過フィルター410、フィードバック制御回路500を含んで構成されている。
【0041】
水晶発振器(XO)10aは、例えば、図3に示すように、水晶振動子100a及び発振回路110aを含んで構成されている。
【0042】
本実施例では、水晶振動子100aは加速度検出素子として構成されている。そして、発振回路110aに含まれるキャパシター111、112、抵抗113、114、インバーター115により水晶振動子100aを発振させる発振ループが形成され、水晶振動子100aは加わった加速度に応じた発振周波数で発振する。そして、水晶振動子100aの駆動信号すなわちインバーター115の出力信号が出力端子11を介して周波数信号906aとして出力される。
【0043】
なお、水晶発振器(XO)10aは、図1で説明した第1の発振部10に対応し、出力端子11から出力される周波数信号906aは図1における第1の周波数信号906に対応する。また、水晶振動子100a及び発振回路110aは、それぞれ図1で説明した第1の振動子100及び第1の発振駆動部110に対応する。
【0044】
電圧制御水晶発振器(VCXO)20aは、例えば、図4に示すように、水晶振動子200a及び発振回路210aを含んで構成されている。
【0045】
本実施例では、水晶振動子200aは共振周波数が一定の水晶発振子として構成されている。そして、発振回路210aに含まれるキャパシター211、212、抵抗213、214、インバーター215、バリキャップ216により水晶振動子200aを発振させる発振ループが形成され、水晶振動子200aは所定の発振周波数で発振する。そして、水晶振動子200aの駆動信号すなわちインバーター215の出力信号が出力端子21を介して周波数信号908aとして出力される。ここで、バリキャップ216は、アノード端子が接地され、カソード端子が抵抗24を介して入力端子22と接続されている。従って、入力端子22から印加される発振制御電圧904のレベルに応じてバリキャップ216の容量が変動し、その容量の変動に応じて水晶振動子200aの発振周波数が変化する。発振制御電圧904が高いほどバリキャップ216の容量は小さくなり、水晶振動子200aの発振周波数は高くなる。逆に、発振制御電圧904が低いほどバリキャップ216の容量は大きくなり、水晶振動子200aの発振周波数は低くなる。
【0046】
なお、電圧制御水晶発振器(VCXO)20aは、図1で説明した第2の発振部20に対応し、出力端子21から出力される周波数信号908aは図1における第2の周波数信号908に対応する。また、水晶振動子200a及び発振回路210aは、それぞれ図1で説明した第2の振動子200及び第2の発振駆動部210に対応する。
【0047】
図2に示すように、排他的論理和回路400は、周波数信号906aと周波数信号908aの位相差に応じたデューティー比となる位相差信号914を生成する。すなわち、排他的論理和回路400は位相検波器として機能する。
【0048】
低域通過フィルター410は、位相差信号914を直流化して速度検出信号902aを生成して出力する。
【0049】
なお、排他的論理和回路400及び低域通過フィルター410により構成される回路は、図1で説明した速度検出部40に対応する。
【0050】
フィードバック制御回路500は、オペアンプ502、抵抗504、キャパシター506及びアナログスイッチ508を含んで構成されている。オペアンプ502の出力端子と反転入力端子(−入力端子)が接続されている。また、抵抗504がオペアンプ502の非反転入力端子(+入力端子)に接続されており、オペアンプ502の非反転入力端子(+入力端子)とグランドの間にキャパシター506が接続されている。さらに、低域通過フィルター410の出力端子と抵抗504の間にアナログスイッチ508が接続されており、スイッチ制御端子62から供給される制御信号912aの電圧レベルに応じてアナログスイッチ508のオン/オフが制御される。本実施例では、制御信号912aが高電位の時はアナログスイッチ508がオフし、制御信号912aが低電位の時はアナログスイッチ508がオンする。
【0051】
このような構成のフィードバック制御回路500では、制御信号912aが低電位の時は、速度検出信号902aの電圧レベルに応じた電荷が抵抗504を介してキャパシター506にチャージされ、オペアンプ502の出力電圧は速度検出信号902aの電圧レベルに等しくなる。そして、このオペアンプ502の出力電圧が発振制御電圧904aとして電圧制御水晶発振器(VCXO)20aに供給される。
【0052】
一方、制御信号912aが高電位の時は、アナログスイッチ508がオフし、キャパシター506に蓄えられた電荷によりアナログスイッチ508がオフする直前の発振制御電圧904aが保持される。
【0053】
本実施例では、発振制御電圧904aは、ロック信号918としてモニター端子68を介して外部からモニターすることができるように構成されている。ロック信号918をモニターすることにより、発振制御電圧904aが安定したか否か(ロックしたか否か)を外部から判断することができる。
【0054】
なお、フィードバック制御回路500は、図1で説明した発振制御部50に対応する。また、発振制御電圧904aは、図1で説明した発振制御電圧904に対応し、制御信号912aは、図1で説明した制御信号912に対応する。また、モニター端子68は、図1で説明した端子60に対応する。
【0055】
積分器300は、オペアンプ302、抵抗304、キャパシター306及びアナログスイッチ308を含んで構成されている。低域通過フィルター410の出力端子とオペアンプ302の反転入力端子(−入力端子)の間に抵抗304が接続されている。また、オペアンプ302の非反転入力端子(+入力端子)には基準電位として発振制御電圧904aが供給される。さらに、オペアンプ302の出力端子と反転入力端子(−入力端子)の間にキャパシター306及びアナログスイッチ308が並列に接続されており、制御信号912aの電圧レベルに応じてアナログスイッチ308のオン/オフが制御される。本実施例では、制御信号912aが高電位の時はアナログスイッチ308がオフし、制御信号912aが低電位の時はアナログスイッチ308がオンする。
【0056】
このような構成の積分器300では、制御信号912aが低電位の時は、オペアンプ302の出力端子と反転入力端子(−入力端子)がショートされる。そして、オペアンプ302の反転入力端子(−入力端子)は非反転入力端子(+入力端子)と仮想短絡されるので、積分信号916の電圧レベルは発振制御電圧904aの電圧レベルと等しい。
【0057】
一方、制御信号912aが高電位の時は、アナログスイッチ308がオフすることにより、積分信号916は、発振制御電圧904aの電圧レベルを基準として速度検出信号902aの極性を反転して積分した電圧レベルになる。
【0058】
なお、オペアンプ302はオフセット調整端子66の電圧レベルに応じてオフセット電圧を調整可能に構成されていてもよい。
【0059】
減算器310は、発振制御電圧904aの電圧レベルから積分信号916の電圧レベルを減算することにより、発振制御電圧904aの電圧レベルを基準とする積分信号916を所定の基準電位(Vref)を基準とする積分信号に変換する。減算器310が出力する積分信号は、基準電位Vrefに対する電圧レベルにより移動距離を示す移動距離検出信号910aとしてデータ出力端子64から出力される。
【0060】
なお、積分器300及び減算器310により構成される回路は、図1で説明した検出信号生成部30に対応する。また、移動距離検出信号910aは、図1で説明した物理量検出信号910に対応する。
【0061】
図5(A)〜図5(C)は、本実施例における水晶振動子100a(加速度検出素子)の一例について説明するための図である。水晶振動子100aは、図5(A)〜図5(C)に示す双音叉振動片101とカンチレバー106がパッケージ(図示せず)の内部に気密封止された双音叉振動子として構成される。水晶振動子100aとして、優れた安定性と速い応答性を有する双音叉型振動子を使用することで正確な加速度検出を行うことができる。
【0062】
図5(A)は、双音叉振動片101の正面図であり、双音叉振動片101の概略的な構造を示している。図5(A)において、102、103は基部であり、2つの振動腕104、105がそれらをつないでいる。
【0063】
図5(B)は、カンチレバー106に固定された双音叉振動片101を示す側面図である。図5(B)において、カンチレバー106は、固定端部107と自由端部108を有し、連結部109がそれらをつないでいる。固定端部107は直接に、又はパッケージ(図示せず)などにより間接的に、移動距離検出装置1Aに固定されている。そして、双音叉振動片101の基部103はカンチレバー106の固定端部107に固着され、双音叉振動片101の基部102はカンチレバー106の自由端部108に固着されている。
【0064】
図5(C)は、移動距離検出装置1Aが加速したときの双音叉振動片101の形状の変化を示している。移動距離検出装置1Aが、カンチレバー106の固定端部107、連結部109、自由端部108で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー106から双音叉振動片101へ向かう方向に加速した場合、カンチレバー106の自由端部108に加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー106の連結部109は加速と反対方向に曲がる。
【0065】
双音叉振動片101はカンチレバー106に固着されているため、引張力Fが作用する。双音叉振動片101は接続電極(図示せず)を介して発振回路110aと接続されているので、この引張力Fの作用により水晶振動子100aの発振周波数が変化する。例えば、移動距離検出装置1Aが加速していないときの水晶振動子100aの発振周波数が40.00kHzであったとすると、図5(C)の場合の水晶振動子100aの発振周波数は例えば40.01kHzに変化する。
【0066】
なお、図示していないが、移動距離検出装置1Aが図5(C)の場合と逆方向に加速したときには、慣性力Fも図5(C)の場合と反対方向に作用し、双音叉振動片101を縮めようとする圧縮力が作用する。例えば、移動距離検出装置1Aが加速していないときの水晶振動子100aの発振周波数が40.00kHzであったとすると、移動距離検出装置1Aが図5(C)の場合と逆方向に加速したときの水晶振動子100aの発振周波数は例えば39.99kHzに変化する。
【0067】
図6(A)〜図6(C)は、加速度検出素子である水晶振動子100aに対する重力加速度の影響について説明するための図である。図6(A)〜図6(C)において、点線は水平面と平行な面を表し、水晶振動子100aは、一点鎖線で示す方向の加速度を正の加速度、二点鎖線で示す方向の加速度を負の加速度として検出するものとする。
【0068】
図6(A)は、水晶振動子100aの検出軸が水平面と平行になっている場合の図である。重力加速度をgとすると、図6(A)の場合、水晶振動子100aには検出軸と直交する方向にm・gの力が働く。従って、重力加速度gは水晶振動子100aによる加速度検出に影響を与えない。
【0069】
図6(B)は、水晶振動子100aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ下方向に傾いている場合の図である。図6(B)の場合、水晶振動子100aには検出軸の正方向にm・g・sinθの力が働くため、図5(B)に示した双音叉振動片101には圧縮力が作用する。そのため、水晶振動子100aは−g・sinθを加速度として検出してしまう。すなわち、水晶振動子100aは、静止している場合でも水平面上を−g・sinθの加速度で移動しているのと等価な周波数信号906aを出力することになる。
【0070】
図6(C)は、水晶振動子100aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ上方向に傾いている場合の図である。図6(C)の場合、水晶振動子100aには検出軸の負方向にm・g・sinθの力が働くため、図5(B)に示した双音叉振動片101には引張力が作用する。そのため、水晶振動子100aは+g・sinθを加速度として検出してしまう。すなわち、水晶振動子100aは、静止している場合でも水平面上を+g・sinθの加速度で移動しているのと等価な周波数信号906aを出力することになる。
【0071】
図7は、本実施例の移動距離検出装置1Aの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0072】
図7は、移動距離検出装置1Aが次のように移動するケースのタイミングチャート図である。まず、移動距離検出装置1Aは、時刻t以前は加速度検出素子である水晶振動子100aの検出軸が水平面と平行な状態(図6(A)の状態)で静止している。そして、移動距離検出装置1Aは、時刻t〜tにかけて回転し、時刻t〜tにおいて水晶振動子100aの検出軸が水平面に対してθだけ上方向に傾いた状態(図6(C)の状態)で静止している。さらに、移動距離検出装置1Aは、時刻t〜tにかけて、水晶振動子100aの検出軸が水平面に対してθだけ上方向に傾いた状態(図6(C)の状態)のまま、水晶振動子100aの検出軸の正方向に移動し、時刻tにおいて停止する。
【0073】
図7において、時刻t以前は制御信号912aが低電位になっているので、アナログスイッチ508がオンになっており、周波数信号908aの周波数を周波数信号906aの周波数と一致させるようにフィードバック制御がかかる。
【0074】
時刻t以前は、水晶振動子100aは図6(A)に示した状態で静止しているので、水晶振動子100aが検出する加速度は0である。この状態では、発振制御電圧904aの電圧レベルがVになっており、周波数信号906aと周波数信号908aの位相差が90°になっている。そして、位相差信号914のデューティー比が50%であるため、これに対応して速度検出信号902aの電圧レベルがVになり、その結果、発振制御電圧904aの電圧レベルもVで安定している。
【0075】
時刻t〜tにかけて移動距離検出装置1Aが回転し、時刻t〜tにかけて水晶振動子100aは図6(C)の状態で静止するので、水晶振動子100aは+g・sinθの加速度を検出する。従って、時刻t〜tにおいて、周波数信号906aの周波数が高くなるため、位相差信号914のデューティー比が上昇し、これに対応して速度検出信号902aの電圧レベルがVからVに上昇する。そのため、発振制御電圧904aの電圧レベルもVからVに上昇し、周波数信号908aの周波数を周波数信号906aの周波数と一致させるように、周波数信号908aの周波数を高くする方向にフィードバック制御がかかる。
【0076】
時刻tにおいて制御信号912aが高電位になるとアナログスイッチ508がオフになるため、フィードバック制御回路500は、時刻tの直前の発振制御電圧904aの電圧レベルVを保持する。
【0077】
水晶振動子100aは、時刻t〜tにかけて図6(C)の状態のまま検出軸の正方向に移動し、時刻tにおいて停止する。そのため、水晶振動子100aは、時刻t〜t、時刻t〜t、時刻t〜tにおいて、それぞれg・sinθ+Δα、g・sinθ、g・sinθ−Δαの加速度を検出する。その結果、周波数信号906aは、時刻tにおける周波数に対して、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が高くなり、時刻t〜tでは周波数が変化せず、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が低くなる。
【0078】
一方、時刻t以降は、発振制御電圧904aの電圧レベルVが保持されており、フィードバック制御がかからないため、周波数信号908aの周波数は一定のままである。
【0079】
そのため、位相差信号914は、時刻tにおけるデューティー比に対して、時刻t〜tではデューティー比が大きくなり、時刻t〜tではデューティー比が等しくなり、時刻t〜tではデューティー比が小さくなる。従って、速度検出信号902aの電圧レベルは、時刻t〜tにおいてVからVに上昇し、時刻t〜tではVのままであり、時刻t〜tにおいてVからVに下降する。
【0080】
ここで、時刻t以前は、制御信号912aが低電位になっている。そのため、アナログスイッチ308がオンになっており、積分器300が積分動作を行わないので、積分信号916の電圧レベルは発振制御電圧904aの電圧レベルと一致する。その結果、時刻t以前は、移動距離検出信号910aの電圧レベルは基準電位Vrefになっている。
【0081】
一方、時刻t以降は、制御信号912aが高電位になっている。そのため、アナログスイッチ308がオフになっており、積分器300は、Vを基準として速度検出信号902aの積分動作を行う。その結果、移動距離検出信号910aは、基準電位Vrefを基準とする電圧レベルにより時刻t以降の移動距離の軌跡を示すことになる。
【0082】
図8は、本実施例の移動距離検出装置1Aの動作の他の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0083】
図8のケースは、図7のケースに対して、時刻t以降のみ異なる。すなわち、移動距離検出装置1Aは、時刻t〜tにかけて、加速度検出素子である水晶振動子100aの検出軸が水平面に対してθだけ上方向に傾いた状態(図6(C)の状態)のまま、水晶振動子100aの検出軸の負方向に移動し、時刻tにおいて停止する。
【0084】
図8において、時刻t〜tにおける移動距離検出装置1Aの動作は図7とまったく同じであるため、その説明を省略する。
【0085】
水晶振動子100aは、時刻t〜tにかけて図6(C)の状態のまま検出軸の負方向に移動し、時刻tにおいて停止する。そのため、水晶振動子100aは、時刻t〜t、時刻t〜t、時刻t〜tにおいて、それぞれg・sinθ−Δα、g・sinθ、g・sin+Δαの加速度を検出する。その結果、周波数信号906aは、時刻tにおける周波数に対して、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が低くなり、時刻t〜tでは周波数が変化せず、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が高くなる。
【0086】
一方、時刻t以降は、発振制御電圧904aの電圧レベルVが保持されており、フィードバック制御がかからないため、周波数信号908aの周波数は一定のままである。
【0087】
そのため、位相差信号914は、時刻tにおけるデューティー比に対して、時刻t〜tではデューティー比が小さくなり、時刻t〜tではデューティー比が等しくなり、時刻t〜tではデューティー比が大きくなる。従って、速度検出信号902aの電圧レベルは、時刻t〜tにおいてVからVに下降し、時刻t〜tではVのままであり、時刻t〜tにおいてVからVに上昇する。
【0088】
従って、移動距離検出信号910aの電圧レベルは、時刻t以前は基準電位Vrefになっており、時刻t以降は、基準電位Vrefを基準とする電圧レベルにより時刻t以降の移動距離の軌跡を示すことになる。
【0089】
以上説明したように、第1実施例では、制御信号912aが高電位になるまでは、周波数信号908aの周波数が周波数信号906aの周波数と一致するように水晶振動子200aの発振周波数が調整される。そして、制御信号912aが高電位になるまでは、積分信号916の電圧レベルは発振制御電圧904aの電圧レベルと等しく、その結果、移動距離検出装置1Aは、基準電位(Vref)と等しい電圧レベルの移動距離検出信号910aを出力する。
【0090】
一方、制御信号912aが高電位になると、水晶振動子200aの発振周波数は変化しないが、移動距離検出装置1Aが移動すると、水晶振動子100aの発振周波数が変化するため、速度検出信号902aの電圧レベルが変化する。ここで、移動距離検出装置1Aが水晶振動子100aの検出軸方向に移動すれば、水晶振動子100aの検出軸方向の重力加速度成分の向き及び大きさが変化しない。従って、水晶振動子100aの発振周波数は移動により生じた加速度の大きさ及び向きのみに応じて変化し、その結果、速度検出信号902aの電圧レベルも移動により生じた加速度の大きさ及び向きのみに応じて変化する。そして、移動距離検出装置1Aは、発振制御電圧904aの電圧レベルを基準として速度検出信号902aの電圧レベルの変化量を積分した後、基準電位(Vref)を基準とする電圧レベルに変換して移動距離検出信号910aを出力する。
【0091】
従って、本実施例の移動距離検出装置1Aによれば、制御信号912aが低電位から高電位に変化する直前の位置を基準として、重力加速度による影響が補正された移動距離を検出することができる。
【0092】
ここで、周波数信号906aと周波数信号908aの位相差が0°〜180°の範囲を超えると誤った検出結果を出力する可能性があるが、第1実施例の移動距離検出装置1Aによれば、静止状態における周波数信号906aと周波数信号908aの位相差を90°にすることにより、移動距離の検出可能範囲を最大にすることができる。
【0093】
なお、発振制御電圧904aの電圧レベルが安定していない状態で制御信号912aを低電位から高電位にすると、変化中の発振制御電圧904aを保持することになり移動距離検出に誤差が生じる。しかし、本実施例の移動距離検出装置1Aによれば、モニター端子68を介してロック信号918すなわち発振制御電圧904aの電圧レベルを外部からモニターすることにより、発振制御電圧904aが安定したか否か(ロックしたか否か)を外部から判断することができるので、不要な誤差が生じないようにすることができる。
【0094】
(第2実施例)
第2実施例の移動距離検出装置1Bの構成は、図2〜図4に示した第1実施例の移動距離検出装置1Aの構成と同様である。ただし、第2実施例においては、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、いずれも加速度検出素子である。
【0095】
本実施例では、図9(A)に示すように、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、検出方向が互いに逆方向になるように配置されている。なお、本実施例における水晶振動子100aは、図5(A)及び図5(B)に示した構造と同じであるため、図9(A)において、水晶振動子100aの各要素に対して図5(A)及び図5(B)と同じ番号を付しており、その説明を省略する。また、水晶振動子200aの構造は水晶振動子100aの構造と同じであり、水晶振動子200aの各要素201〜209は、それぞれ水晶振動子100aの各要素101〜109に対応する。
【0096】
図9(B)は、移動距離検出装置1Bが加速したときの双音叉振動片101、201の形状の変化を示している。移動距離検出装置1Bが、カンチレバー106の固定端部107、連結部109、自由端部108で作られる軸に対して垂直方向に、かつ、カンチレバー106から双音叉振動片101へ向かう方向に加速した場合、双音叉振動片101の変化は図5(C)と同じであり、説明を省略する。この場合、カンチレバー206の自由端部208に加速と反対方向に慣性力Fが作用するので、カンチレバー206の自由端部208は加速と反対方向に曲がる。
【0097】
双音叉振動片201はカンチレバー206に固着されているため、圧縮力Fが作用する。双音叉振動片201は接続電極(図示せず)を介して発振回路210aと接続されているので、この圧縮力Fの作用により水晶振動子200aの発振周波数が変化する。例えば、移動距離検出装置1Bが加速していないときの水晶振動子200aの発振周波数が40.00kHzであったとすると、図9(B)の場合の水晶振動子200aの発振周波数は例えば39.99kHzに変化する。
【0098】
このように、ともに加速度検出素子(双音叉振動子)である水晶振動子100aと水晶振動子200aを検出方向が互いに逆方向になるように配置すると、互いに発振周波数の変化の方向が逆になる。そのため、第2実施例の移動距離検出装置1Bでは、位相差信号914のデューティー比の変化量が第1実施例の移動距離検出装置1Aの2倍になることで移動距離の検出感度を高めることができる。
【0099】
なお、水晶振動子100a及び水晶振動子200aが同じ特性を有する加速度検出素子であることが好ましい。このようにすれば、例えば、温度ドリフトに伴う周波数信号906aと周波数信号908aの位相差の誤差を抑えることができるので、温度変化に対して安定した位相比較を行うことが可能となる。
【0100】
図10(A)〜図10(C)は、ともに加速度検出素子である水晶振動子100a及び水晶振動子200aに対する重力加速度の影響について説明するための図である。図10(A)〜図10(C)において、点線は水平面と平行な面を表し、水晶振動子100aは、一点鎖線で示す方向の加速度を正の加速度、二点鎖線で示す方向の加速度を負の加速度として検出するものとする。また、水晶振動子200aは、一点鎖線で示す方向の加速度を負の加速度、二点鎖線で示す方向の加速度を正の加速度として検出する。
【0101】
図10(A)は、水晶振動子100a及び水晶振動子200aの検出軸がともに水平面と平行になっている場合の図である。図10(A)の場合、水晶振動子100a及び水晶振動子200aにはともに検出軸と直交する方向にm・gの力が働く。従って、重力加速度gは水晶振動子100a及び水晶振動子200aによる加速度検出に影響を与えない。
【0102】
図10(B)は、水晶振動子100aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ下方向に傾いており、水晶振動子200aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ上方向に傾いている場合の図である。図10(B)の場合、水晶振動子100aには検出軸の正方向にm・g・sinθの力が働くため、図9(A)に示した双音叉振動片101には圧縮力が作用する。そのため、水晶振動子100aは−g・sinθを加速度として検出してしまう。一方、水晶振動子200aには検出軸の負方向にm・g・sinθの力が働くため、図9(A)に示した双音叉振動片201には引張力が作用する。そのため、水晶振動子200aは+g・sinθを加速度として検出してしまう。すなわち、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、静止している場合でも水平面上をそれぞれ−g・sinθ及び+g・sinθの加速度で移動しているのと等価な周波数信号906a、908aをそれぞれ出力することになる。
【0103】
図10(C)は、水晶振動子100aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ上方向に傾いており、水晶振動子200aの検出軸の正方向が水平面に対してθだけ下方向に傾いている場合の図である。図10(C)の場合、水晶振動子100aには検出軸の負方向にm・g・sinθの力が働くため、図9(A)に示した双音叉振動片101には引張力が作用する。そのため、水晶振動子100aは+g・sinθを加速度として検出してしまう。一方、水晶振動子200aには検出軸の正方向にm・g・sinθの力が働くため、図9(A)に示した双音叉振動片201には圧縮力が作用する。そのため、水晶振動子200aは−g・sinθを加速度として検出してしまう。すなわち、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、静止している場合でも水平面上をそれぞれ+g・sinθ及び−g・sinθの加速度で移動しているのと等価な周波数信号906a、908aをそれぞれ出力することになる。
【0104】
図11は、本実施例の移動距離検出装置1Bの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0105】
図11は、移動距離検出装置1Bが図7と同じように移動するケースのタイミングチャート図であり、時刻t〜tは、それぞれ図7の時刻t〜tと対応している。図11の説明において、図7と同様の内容については省略又は簡略する。
【0106】
図7と同様に、図11においても、時刻t以前は、速度検出信号902aの電圧レベルがVになっており、その結果、発振制御電圧904aの電圧レベルもVで安定している。
【0107】
時刻t以降、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、重力加速度の影響を受けて、それぞれ正方向及び負方向の加速度を検出する。時刻tの直後は、周波数信号906aの周波数が高くなるとともに周波数信号908aの周波数が低くなるため、位相差信号914のデューティー比が上昇し、これに対応して速度検出信号902aの電圧レベルが上昇する。そのため、発振制御電圧904aの電圧レベルが上昇し、周波数信号908aの周波数を周波数信号906aの周波数と一致させるように、周波数信号908aの周波数を高くする方向にフィードバック制御がかかる。結果的に、時刻t〜tにかけて速度検出信号902aの電圧レベルがVからVに上昇する。
【0108】
なお、時刻t以降、水晶振動子200aは図10(C)のように変形するため、水晶振動子200aの共振周波数は低くなるが、フィードバック制御により発振制御電圧904aの電圧レベルが高くなり、水晶振動子200aの発振周波数は水晶振動子100aの発振周波数と一致する。すなわち、発振制御電圧904aの電圧レベルがVになることにより、水晶振動子100aが+g・sinθの加速度を検出する時の発振周波数と水晶振動子200aが−g・sinθの加速度を検出する時の発振周波数が一致するようになっている。
【0109】
水晶振動子100aは、時刻t〜t、時刻t〜t、時刻t〜tにおいて、それぞれg・sinθ+Δα、g・sinθ、g・sinθ−Δαの加速度を検出する。その結果、周波数信号906aは、時刻tにおける周波数に対して、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が高くなり、時刻t〜tでは周波数が変化せず、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が低くなる。
【0110】
一方、水晶振動子200aは、時刻t〜t、時刻t〜t、時刻t〜tにおいて、それぞれ−g・sinθ−Δα、−g・sinθ、−g・sinθ+Δαの加速度を検出する。ここで、時刻t以降は、発振制御電圧904aの電圧レベルVが保持されており、フィードバック制御がかからない。その結果、周波数信号908aは、時刻tにおける周波数に対して、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が低くなり、時刻t〜tでは周波数が変化せず、時刻t〜tではΔα分だけ周波数が高くなる。
【0111】
そのため、位相差信号914は、時刻tにおけるデューティー比に対して、時刻t〜tではデューティー比が大きくなり、時刻t〜tではデューティー比が等しくなり、時刻t〜tではデューティー比が小さくなる。従って、速度検出信号902aの電圧レベルは、時刻t〜tにおいてVからVに上昇し、時刻t〜tではVのままであり、時刻t〜tにおいてVからVに下降する。
【0112】
従って、移動距離検出信号910aは、基準電位Vrefを基準とする電圧レベルにより時刻t以降の移動距離の軌跡を示すことになる。
【0113】
ここで、移動距離検出装置1Bでは、水晶振動子100aと水晶振動子200aが、ともに加速度検出素子であり、検出軸の正方向が互いに逆方向を向いているので、水晶振動子100aのみが加速度検出素子である第1実施例の移動距離検出1Aに対して、位相差信号914のデューティー比の変化量が2倍になる。従って、移動距離検出1Bでは、移動距離検出1Aに対して、移動距離検出信号910aの電圧レベルの変化量も2倍になる。すなわち、第2実施例によれば、移動距離の検出感度をより高くすることができる。
【0114】
また、第2実施例によれば、水晶振動子100a及び水晶振動子200aに同じ特性を有する加速度検出素子を用いることにより、例えば、温度ドリフトに伴う発振周波数誤差をキャンセルすることができるので、検出時の温度によらず安定した検出結果を出力することができる。
【0115】
(第3実施例)
第2実施例では、ともに加速度検出素子である水晶振動子100aと水晶振動子200aを検出方向が互いに逆方向になるように配置することにより、移動距離の検出感度を高めている。しかし、検出感度が高すぎると周波数信号906aと周波数信号908aの位相差が0°〜180°の範囲を超えてしまい、誤った検出結果が出力されるおそれがある。そこで、第3実施形態では、検出感度を低下させるために、第2実施例の構成に対して2つの分周器が追加される。
【0116】
図12は第3実施例の移動距離検出装置の構成を示す図である。図12において、図1と同じ構成には同じ番号を付している。
【0117】
第3実施例の移動距離検出装置1Cは、第2実施例の移動距離検出装置1Bと同様に、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、いずれも加速度検出素子であり、図9(A)と同様に、水晶振動子100a及び水晶振動子200aは、検出方向が互いに逆方向になるように配置されている。
【0118】
図12に示すように、第3実施例の移動距離検出装置1Cでは、第2実施例の移動距離検出装置1Bに対して分周器10bと分周器20bが追加されている。分周器10bは、水晶振動子10aが出力する周波数信号906aを分周して周波数信号906bを出力する。分周器20bは、水晶振動子20aが出力する周波数信号908aを分周して周波数信号908bを出力する。そして、排他的論理和回路400は、周波数信号906bと周波数信号908bの位相差に応じたデューティー比となる位相差信号914を生成する。
【0119】
ここで、分周器10bの分周比はNであり、周波数信号906bの周波数は周波数信号906aの周波数の1/Nである。分周器10bの分周比Nは、図示しない所定のレジスタ(分周比設定レジスタ)に設定されるようにしてもよいし、固定値(例えばN=2)であってもよい。
【0120】
同様に、分周器20bの分周比はNであり、周波数信号908bの周波数は周波数信号908aの周波数の1/Nである。分周器20bの分周比Nは、図示しない所定のレジスタ(分周比設定レジスタ)に設定されるようにしてもよいし、固定値(例えばN=2)であってもよい。分周器20bの分周比設定レジスタは、分周器10bの分周比設定レジスタと別個に設けてもよいし共通であってもよい。
【0121】
なお、水晶振動子100aと水晶振動子200aの発振特性が異なる場合、初期状態における周波数信号906bと周波数信号908bの位相差は不定である。そこで、図示しない所定のレジスタ(位相調整用レジスタ)の設定値に基づいて、分周器20bの分周タイミングを制御可能に構成することもできる。例えば、分周器20bは、位相調整用レジスタの設定値に応じて、周波数信号908bの位相をN通りのいずれかに調整可能に構成される。さらに、周波数信号906bを外部からモニター可能に構成すれば、移動距離検出装置1Cが静止状態の時の周波数信号906bと周波数信号908bの位相差が初期状態に関係なく90°になるように位相調整レジスタの調整値を設定することができる。
【0122】
図12におけるその他の構成は、図1の構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0123】
なお、水晶発振器(XO)10aと分周器10bにより構成される回路は、図1で説明した第1の発振部10に対応し、周波数信号906bは図1における第1の周波数信号906に対応する。また、電圧制御水晶発振器(VCXO)20aと分周器20bにより構成される回路は、図1で説明した第2の発振部20に対応し、周波数信号908bは図1における第2の周波数信号908に対応する。
【0124】
図13は、本実施例の移動距離検出装置1Cの動作の一例について説明するためのタイミングチャート図である。
【0125】
図13は、移動距離検出装置1Cが図11と同じように移動するケースのタイミングチャート図であり、t〜tは、それぞれ図11の時刻t〜tと対応している。なお、分周器10bの分周比Nと分周器20bの分周比Nはともに2に設定されているものとする。
【0126】
図13において、位相差信号914のデューティー比は、周波数信号906bと周波数信号908bの位相差に応じて変化している。そのため、図11のケースと比較して、位相差信号914のデューティー比の変化量が1/2(=1/N=1/N)になり、速度検出信号902aの電圧レベルの変化量も1/2になっている。その結果、図11のケースと比較して、移動距離検出信号910aも1/2に、すなわち移動距離の検出感度が1/2になっている。
【0127】
このように、第3実施例の移動距離検出1Cでは、2つの分周器10b及び20bにより分周した周波数信号906b及び第2の周波数信号を生成するので、これら2つの周波数信号の位相差の変動範囲を分周比に応じて狭くすることができる。すなわち、第3実施例の移動距離検出1Cによれば、水晶振動子100a、200aの加速度検出感度が高すぎる場合でも見かけ上の検出感度を低くすることにより、誤った検出結果を出力する可能性を低減することができる。
【0128】
2.手ぶれ補正装置及びカメラ
被写体に接近した状態での撮影、すなわちマクロ撮影が可能なカメラ(特にデジタルカメラ)が一般的に使用されるようになっている。マクロ撮影においては、まず、カメラの撮影レンズ部分を被写体に接近させて静止し、シャッターボタンを半押しする等して被写体にピントを合わせる操作(フォーカス操作)が行われる。そして、カメラを静止させたままシャッターボタンを押下することによりマクロ撮影が行われる。従って、マクロ撮影では、フォーカス操作後の手ぶれを補正することが要求される。
【0129】
図14(A)〜図14(C)は、マクロ撮影時の手ぶれについて説明するための図である。図14(A)〜図14(C)において、1100、1200、1300は、それぞれカメラのシャッターボタン、撮影レンズ、筐体を表す。また、水平面と平行であり互いに直交する2つの軸をX軸とZ軸とし、X軸、Z軸と直交する軸をY軸とする。
【0130】
図14(A)に示すように、カメラ1000がZ軸を中心として回転(ロール)することによって手ぶれが生じる。また、図14(B)に示すように、カメラ1000がX軸を中心として回転(ピッチ)することによっても手ぶれが生じる。さらに、図14(C)に示すように、カメラ1000がX軸方向やY軸方向に平行移動するなどX−Y平面内で平行移動することによっても手ぶれが生じる。
【0131】
図14(A)及び図14(B)に示す手ぶれは、例えば、2つの角速度センサーを設けてZ軸回り及びX軸回りの角速度をそれぞれ検出し、Z軸回りの回転角(ヨー角)及びX軸回りの回転角(ピッチ角)を計算することで補正することができる。
【0132】
しかし、図14(C)に示す手ぶれは、回転運動によるものではないので角速度センサーを用いて補正することが困難である。特に、マクロ撮影時は被写体と撮影レンズ1200の距離が近いので、カメラ1000がX−Y平面内でわずかに平行移動するだけで大きな手ぶれが発生するため、この手ぶれを補正することが重要になる。そこで、本実施形態のカメラ1000は、図1〜図14で説明した移動距離検出装置を用いた手ぶれ補正装置を備えることにより、図14(C)に示す手ぶれを補正する。
【0133】
図15は、本実施形態のカメラの概略ブロック図である。
【0134】
本実施形態のカメラ1000は、シャッターボタン1100、入力インターフェース部1010、手ぶれ補正装置1020、アクチュエーター1050、CCD(Charge Coupled Device)センサー1060、信号処理部1070、液晶表示部1080、液晶表示パネル1090、撮影レンズ1200を含んで構成されている。
【0135】
ユーザーによりシャッターボタン1100の押下操作が行われる。シャッターボタン1100が全押しされると被写体の撮影が行われる。一方、シャッターボタン1100が半押しされるとフォーカス処理が行われる。
【0136】
入力インターフェース1010は、シャッターボタン1100が全押し又は半押しされたか否かを検出する。入力インターフェース1010は、シャッターボタン1100の半押しを検出するとフォーカス操作が行われたと判断して手ぶれ補正装置1020にフォーカス信号1012を供給する。
【0137】
手ぶれ補正装置1020は、移動距離検出装置1030と制御装置1040を含んで構成されている。
【0138】
移動距離検出装置1030は、例えば、前述した第1実施例〜第3実施例の移動距離検出装置1A、1B、1C等であり、制御信号1042が非アクティブ(例えば低電位)からアクティブ(例えば高電位)になった時の位置を基準とするカメラ1000の移動距離を検出して移動距離検出信号1032(前述した移動距離検出信号910aに対応する)を出力する。また、移動距離検出装置1030は、カメラ1000が静止している時に高電位となるロック信号1034(前述したロック信号918に対応する)を出力するように構成してもよい。
【0139】
制御装置1040は、マクロ撮影モード時にフォーカス信号1012を受け取ると、制御信号1042(前述した制御信号912aに対応する)を非アクティブ(例えば低電位)からアクティブ(例えば高電位)にする。あるいは、移動距離検出装置1030がロック信号1034を出力するように構成されていれば、制御装置1040は、マクロ撮影モード時にフォーカス信号1012を受け取ると、ロック信号1034が高電位の場合のみ制御信号1042を非アクティブ(例えば低電位)からアクティブ(例えば高電位)にするように構成してもよい。
【0140】
そして、制御装置1040は、移動距離検出信号1032に基づいて、手ぶれ量を計算し、計算した手ぶれ量に応じた手ぶれ補正量の情報を含む制御信号1044を生成してアクチュエーター1050に供給する。制御装置1040は、例えば、マイクロコンピューターとして実現することができ、図示しない記憶部に格納された所定のプログラムを実行することにより手ぶれ補正量の計算を行うようにしてもよい。
【0141】
アクチュエーター1050は、制御信号1044に従い、CCDセンサー1060を手ぶれ補正量に応じた距離だけ移動させる。あるいは、アクチュエーター1050は、制御信号1044に従い、撮影レンズ1200を手ぶれ補正量に応じた距離だけ移動させるようにしてもよい。なお、CCDセンサー1060や撮影レンズ1200は、本発明における撮影用光学部品の一例であり、アクチュエーター1050は、その他の撮影用光学部品を手ぶれ補正量に応じて制御するようにしてもよい。
【0142】
信号処理部1070は、CCDセンサー1060の出力信号を受け取り、各画素データ1072を生成して液晶駆動部1080に供給する。
【0143】
液晶駆動部1080は、画素毎に画素データ1072に応じた駆動信号1082を生成して液晶表示パネル1090に供給し、液晶表示パネル1090に被写体の画像が写し出される。
【0144】
図16(A)〜図16(C)は、本実施形態のカメラ1000によるマクロ撮影時の手ぶれ補正について説明するための図である。図16(A)〜図16(C)において、1030、1100、1200、1300は、それぞれ移動距離検出装置、シャッターボタン、撮影レンズ、筐体を表す。また、水平面と平行であり互いに直交する2つの軸をX軸とZ軸とし、X軸、Z軸と直交する軸をY軸とする。そして、移動距離検出装置1030は、カメラ1000が水平な状態で、移動距離の検出方向がX軸の正方向と一致するように、筐体1300の内部に配置されているものとする。
【0145】
図16(A)に示すように、カメラ1000が水平状態に保たれていれば、移動距離検出装置1030には移動距離の検出方向と直交する方向にm・gの力が働く。従って、移動距離検出装置1030は、重力加速度による影響を受けず、シャッターボタン1100が半押しされるまで移動距離が0であることを示す移動距離検出信号1032を出力する。
【0146】
一方、図16(B)に示すように、カメラ1000が水平状態に対してZ軸を中心として時計回りに角度θだけ回転した状態であれば、移動距離検出装置1030には移動距離の検出方向にm・g・sinθの力が働く。また、図16(C)に示すように、カメラ1000が水平状態に対してZ軸を中心として反時計回りに角度θだけ回転した状態であれば、移動距離検出装置1030には移動距離の検出方向と反対方向にm・g・sinθの力が働く。しかし、いずれの場合であっても、移動距離検出装置1030は、この重力加速度による影響を補正し、シャッターボタン1100が半押しされるまで移動距離が0であることを示す移動距離検出信号1032を出力する。
【0147】
そして、図16(A)〜図16(C)のいずれの状態であっても、移動距離検出装置1030は、シャッターボタン1100が半押しされた後は、手ぶれにより、カメラ1000が移動距離の検出方向と水平な方向(点線矢印の方向)に平行移動した距離を示す移動距離検出信号1032を出力する。従って、手ぶれ補正装置1020は、図15で説明したように、この移動距離検出信号1032に基づいて手ぶれ補正を行うことができる。
【0148】
なお、図16(A)〜図16(C)において、移動距離検出装置1030は、移動距離の検出方向と直交する方向への平行移動を検出することができず、また、移動距離の検出方向と平行でない方向への平行移動に対しては、近似的な平行移動距離を検出することになる。そこで、例えば、移動距離の検出方向が違いに直交するように2つの移動距離検出装置を配置し、これら2つの移動距離検出装置がそれぞれ出力する2つの移動距離検出信号に基づいて正確な平行移動距離を求めて手ぶれ補正を行うように手ぶれ補正装置1020を構成することもできる。
【0149】
このように、本実施形態のカメラ1000によれば、移動距離検出装置1030により、重力加速度の影響を補正し、フォーカス操作が行われた後の移動距離をより正確に検出することができるので、マクロ撮影時の手ぶれ補正機能を実現することができる。
【0150】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0151】
例えば、本発明は移動距離以外の物理量を検出する物理量検出装置にも適用することができる。例えば、図2や図12において積分器300を増幅器に置き換えることにより速度検出信号を出力する速度検出装置を実現することができる。図2や図12において、キャパシター306を抵抗に置き換えれば増幅器を実現することができる。また、例えば、図2や図12において積分器300を微分器に置き換えることにより、加速度検出信号を出力する加速度検出装置を実現することができる。図2や図12において、抵抗304とキャパシター306を入れ替えれば微分器を実現することができる。
【0152】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0153】
1 物理量検出装置、1A〜1C 移動距離検出装置、10 第1の発振部、10a 水晶発振器(XO)、10b 分周器、11 出力端子、20 第2の発振部、20a 電圧制御水晶発振器(VCXO)、20b 分周器、21 出力端子、22 入力端子、24 抵抗、30 検出信号生成部、40 速度検出部、50 発振制御部、60 端子、62 スイッチ制御端子、64 データ出力端子、66 オフセット調整端子、68 モニター端子、100 第1の振動子、100a 水晶振動子、101 双音叉振動片、102〜103 基部、104〜105 振動腕、106 カンチレバー、107 固定端部、108 自由端部、109 連結部、110 第1の発振駆動部、110a 発振回路、111〜112 キャパシター、113〜114 抵抗、115 インバーター、200 第2の振動子、200a 水晶振動子、201 双音叉振動片、202〜203 基部、204〜205 振動腕、206 カンチレバー、207 固定端部、208 自由端部、209 連結部、210 第2の発振駆動部、210a 発振回路、211〜212 キャパシター、213〜214 抵抗、215 インバーター、216 バリキャップ、300 積分器、302 オペアンプ、304 抵抗、306 キャパシター、308 アナログスイッチ、310 減算器、400 排他的論理和回路、410 低域通過フィルター、500 フィードバック制御回路、502 オペアンプ、504 抵抗、506 キャパシター、508 アナログスイッチ、902 速度検出信号、902a 速度検出信号、904 発振制御電圧、904a 発振制御電圧、906 第1の周波数信号、906a〜906b 周波数信号、908 第2の周波数信号、908a〜908b 周波数信号、910 物理量検出信号、910a 移動距離検出信号、912 制御信号、912a 制御信号、914 位相差信号、916 積分信号、918 ロック信号、1000 カメラ、1010 入力インターフェース部、1012 フォーカス信号、1020 手ぶれ補正装置、1030 移動距離検出装置、1032 移動距離検出信号、1034 ロック信号、1040 制御装置、1042 制御信号、1044 制御信号、1050 アクチュエーター、1060 CCDセンサー、1070 信号処理部、1072 画素データ、1080 液晶表示部、1082 駆動信号、1090 液晶表示パネル、1100 シャッターボタン、1200 撮影レンズ、1300 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理量を検出して物理量検出信号を出力する物理量検出装置であって、
第1の振動子と、前記第1の振動子を発振させる第1の発振駆動部と、を含み、第1の振動子の発振周波数と対応づけられた周波数を有する第1の周波数信号を出力する第1の発振部と、
第2の振動子と、前記第2の振動子を発振させるとともに発振制御電圧に基づいて前記第2の振動子の発振周波数を調整可能に構成された第2の発振駆動部と、を含み、前記第2の振動子の発振周波数と対応づけられた周波数を有する第2の周波数信号を出力する第2の発振部と、
前記第2の発振駆動部の前記発振制御電圧を生成する発振制御部と、
前記第1の周波数信号と前記第2の周波数信号の位相差を検出し、検出した位相差に応じた電圧レベルの速度検出信号を生成する速度検出部と、
前記速度検出信号に基づいて前記物理量検出信号を生成する検出信号生成部と、を含み、
前記第1の振動子及び前記第2の振動子の少なくとも一方は、
印加された加速度に応じて発振周波数が変化する加速度検出素子であり、
前記発振制御部は、
所定の制御信号に基づいて、前記第2の周波数信号の周波数を前記第1の周波数信号の周波数と一致させるように前記速度検出信号の電圧値に応じた前記発振制御電圧を生成するか、又は前記発振制御電圧を保持するかを選択し、
前記検出信号生成部は、
保持された前記発振制御電圧と前記速度検出信号に基づいて前記物理量検出信号を生成することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の発振部及び前記第2の発振部は、
当該物理量検出装置が静止している状態における前記第1の周波数信号と前記第2の周波数信号の位相差が90°になるように前記第1の振動子及び前記第2の振動子をぞれぞれ発振させることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記第1の振動子及び前記第2の振動子は、
いずれも前記加速度検出素子であり、加速度の検出方向が互いに逆方向になるように配置されていることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記第1の発振部は、
前記第1の振動子を発振させる駆動信号を所定の分周比で分周する第1の分周器を含み、前記第1の分周器が分周した信号を前記第1の周波数信号として出力し、
前記第2の発振部は、
前記第2の振動子を発振させる駆動信号を前記分周比で分周する第2の分周器を含み、前記第2の分周器が分周した信号を前記第2の周波数信号として出力することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記発振制御電圧を外部に出力するための端子を含むことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記検出信号生成部は、
保持された前記発振制御電圧を基準として前記速度検出信号を積分することにより移動距離を表す前記物理量検出信号を生成することを特徴とする物理量検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の物理量検出装置と、
マクロ撮影時において、前記制御信号を生成するとともに、前記物理量検出信号に基づいて手ぶれ量を計算し、計算した手ぶれ量に基づいて、撮影用光学部品を駆動するアクチュエーターを制御する制御装置と、を含むことを特徴とする手ぶれ補正装置。
【請求項8】
請求項7に記載の手ぶれ補正装置と、
撮影用光学部品と、
前記手ぶれ補正装置の制御に基づいて前記撮影用光学部品を駆動するアクチュエーターと、を含むカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−271169(P2010−271169A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123059(P2009−123059)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】