説明

物質・物体の認識・識別方法および装置、蛍光顕微鏡、ヘッドアップディスプレイ装置

【課題】蛍光顕微鏡にあっては、励起光を照射して発生した蛍光を検出するのが一般的であるが、蛍光が可視光である必要なため、可視光を発生させるための制約があり、可視光以外は検出できなかった。
【解決手段】試料・物質から発生する紫外、可視、赤外にかかわらず発生した放射線をダイクロイックミラーを介して複数の狭帯域の波長に分離・分割し、これらの各狭帯域の波長に虹色の一色を割り当て、虹色で各波長を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光をはじめ紫外線、赤外線を発生、生起する物質・物体からの光を認識、識別するための方法および装置に関し、例えば、医学・生物学分野において蛍光を発生する物質でラベリングされた生物組織を観察する装置、蛍光顕微鏡、あるいは紫外線・赤外線を発生、生起する物質、物体の認識、識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、細胞構造や分子の局在等を観察するために、蛍光顕微鏡やレーザー顕微鏡が使用されている。蛍光顕微鏡では、試料内の注目する特定分子に特異的に結合する蛍光分子をラベリングして、この分子の分布や動きを励起光の照射に伴って発生する蛍光を観察することで把握している。
【0003】
例えば動植物の細胞では、誕生から死滅まで細胞分裂を繰り返しながら生存することから、生存している状態での細胞分裂の形態変化あるいは動態変化の観察、特に外来性の物質や遺伝子等による細胞分裂の形態変化への影響を観察することは、生物学的に重要であり、この観点から従来細胞分裂に作用する物質、例えば、核膜、染色体、動原体等のダイナミックな変化が追跡されている。
【0004】
このような細胞分裂の形態(動態)変化を生きたままの状態で観察する場合、一般の顕微鏡観察では詳細な観察は困難なため、従来から細胞観察に当たっては上記のようにラベリングされた蛍光分子の分布や動きを観察するために蛍光顕微鏡が一般に用いられていた。
【0005】
図6は、この一般的な蛍光顕微鏡を例示したもので、試料Sを励起する励起光と試料から発生する蛍光とを分離するダイクロイックミラーMが用いられており、光源OSからの励起光は、開閉シャッターSH、フィルターFを経由して、ダイクロイックミラーMに至り、図では90度上方に反射されて試料Sを照射する。この結果、試料Sより照射光の波長より若干長い波長の蛍光が発生し、この蛍光は、そのままダイクロイックミラーMを通過して、例えば電子的検出器DE(CCDカメラ)で検出される。
【0006】
以上が一般的な蛍光顕微鏡の構造、機能であるが、上記のように近年、試料(細胞)内の複数物質の形態、動態を追跡するために、複数の蛍光色素で細胞をラベリングし、夫々の色素から蛍光を発現させる多色蛍光法が利用されている。
【0007】
この多色蛍光法に利用される構成として、蛍光顕微鏡に電子的検出器(CCD)などの撮像素子を採用し、一方では励起フィルター、ダイクロイックミラー、吸収フィルターの組み合わせを含む複数種類のフィルターセットを用意し、これらのフィルターセットを所定のタイミングで切り替え移動させ、夫々のタイミングで撮影した多くの観察画像を重ね合わせて試料の動態、形態映像を得る方式も行われている(特許文献1参照)。
【0008】
さらにこの多色蛍光法として、光源の前方に透過波長シフト用フィルター(干渉フィルター)を利用して複数波長の励起光を得る方式も存在している(特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2005−331887号公報
【特許文献2】特開平5−150164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記の従来技術はいずれも、選択された励起光を試料に照射して、試料から生起する蛍光を観察しようとするものであるが、この観察しようとする蛍光波長はいずれも可視光線の範疇のものである。言い換えれば、ラベリングする物質は、可視光範囲の蛍光を生起する物質に限られている。しかしながら試料から生起する一般的な光には、赤外線域、紫外線域の光も存在し、これらの赤外線、紫外線にも多くの情報が含まれ存在しているはずである。
【0011】
さらに試料から可視光の蛍光を得ようとすれば試料にラベリングされる物質は、可視光の蛍光を発生する物質が必要でありその選択のためラベリングされる物質の種類はかなり制限を受けることとなり、また試料とラベリングされる物質とが結合(ラベリング)しないこともあり、観察者の自由度が制限されることにもなる。
【0012】
一方、上記に説明した蛍光顕微鏡にかかわらず、自然界の物質・物体からは、いろいろの電磁波が発生しているはずであり、当然に赤外線、可視光線、紫外線が発生しており、現実の我々が認識しうるのはその中の可視光線のみである。
【0013】
本発明は、物質・物体に励起光を照射する、照射しないにかかわらず、また蛍光を観察するしないにかかわらず、物質・物体から発生、あるいは生起している可視光線はもとより赤外線、紫外線をも検出して、その物質、物体を認識・識別しようとする方法、装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対象物質、物体から生起する光からダイクロイックミラーを使って透過あるいは分割して複数の狭帯域の波長の光を得、この各波長帯域の光に、虹色の一色を順次分配割り当てるようにしたものである。このときの狭波長帯域の光は、可視光に限らず、赤外線、紫外線も含み、この結果、紫外線、可視光線、赤外線の全ての波長順に虹色の一色が順次割り当てられ、従来では観察できなかった紫外線、赤外線の像が観察できることになる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、対象物質、物体から生起して複数の狭い波長帯域の光のうち、可視光線以外の光に虹色の一色を順次分配割り当てることを特徴としたもので、可視光はそのままの色で表示して、紫外線、赤外線のみに虹色の一色を割り当てて表示するものである。
【0016】
また請求項3に記載の発明は、請求項1,2の発明と共同して、対象物質、物体に励起光を照射して、その結果、対象物質、物体から生起する蛍光を狭い波長帯域の光に透過、あるいは分割して、その各々に虹色の一色を割り当てて表示するものである。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3の発明に関連して、励起光の照射結果で生起する蛍光のうち、可視光はそのままの色で表示して、紫外線、赤外線のみを虹色の一色を選択して割り当てて表示するものである。
【0018】
請求項5に記載の発明は、具体的な構成に関するもので、対象物、物体から生起する光をダイクロイックミラー機構を介して複数の狭波長帯域の光として透過あるいは分割し、これらの各帯域の光を電子的検出器で検出するとともにこの出力に虹色の一色を順次割り当てる色分配器を介して色付けし表示しようとする物質、物体の認識・識別装置に関するものである。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5の発明に関連して、対象物、物体に励起光を照射して発生した蛍光をダイクロイックミラー機構を介して複数の狭波長帯域の光として透過あるいは分割し、これらの各帯域の蛍光を電子的検出器で検出するとともにこの各出力に虹色の一色を順次割り当てる色分配器を介して色付けし表示しようとする蛍光顕微鏡に関するものである。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6に記載の発明に関連して、虹色の一色に色付けされた像の表示部を蛍光顕微鏡の接眼部を介して観察できるように構成したものである。
【0021】
請求項8、9の発明は、ヘッドアップディスプレイ装置(または、ヘッドマウウントディスプレイ装置)として構成するもので、生物組織の観察以外に、産業・工業生産物等の検出、検索などに広く利用可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の構成によって、物質、物体の認識・識別観察において、可視光以外では肉眼で認識・識別できなかった物質・物体を、可視光以外の紫外光、赤外光でもこれらの光を虹色の一色に置き換えて観察できるので、今まで以上にこの方法および装置の利用範囲が大きくなる。
【0023】
特に細胞分裂などの観測においては、可視光の蛍光を生起するラベリング物質を利用しなくとも、紫外光、赤外光でも観察できるので、ラベリング物質の選択が広がりより、種々のラベリング物質を利用できるので、より利用価値の高い蛍光顕微鏡を得ることが出来る。
【0024】
また生起する光が可視光でなく肉眼で認識・識別できない物質も、(励起光に基づいて)生起する蛍光を可視光である虹色で強制的に色付けするので観察することができるようになり、例えば集積回路などに含まれている不純物質、さらには空間の浮遊物体の存在、など多色的にリアルタイムに観察可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための基本的な形態について説明する。
図1は、この発明の基本的概念を説明するもので、蛍光顕微鏡として説明する。図において、符号1は試料2を照射する光源で、この光源1からの光は光学レンズ3、反射ミラー4、光学レンズ5を介して試料2を照射する。試料2からの光は光学レンズ6を介して、ダイクロイックミラー機構7に入射し、この機構7にセットされているダイクロイックミラー8で狭帯域の波長が選択透過され、この選択透過された波長の像は、反射鏡9,10でその光路を変更され、接眼レンズ11を介して選択された波長の像として観測される。
【0026】
以上において、ダイクロイックミラー機構7以外は一般的な光学顕微鏡の構成であるが、このダイクロイックミラー機構7は、ダイクロイックミラーの特性を調整することによって、試料2からの生起する光を狭帯域の波長に分割、透過して、その選択された各特定波長域の像で、試料(物質・物体)2を認識・識別することが出来る。なお、場合によっては、光源1はなくても使用できる。
【0027】
一方、この図1において、符号12は励起光源部であり、この光源部12は、水銀ランプあるいは複数のレーザー光源13等で構成される。この光源13が水銀ランプの場合は、その前方に光軸と垂直方向の軸を持って回転可能に保持された透過波長シフト用フィルターとしての干渉フィルター14を配置して、このフィルターを回転させて水銀ランプ13から選択された複数の狭帯域の波長の光を得ることが出来る。また、光源として複数のレーザー光源を使用する場合は、特定のレーザー光源を選択することで狭帯域の波長の光を得ることが出来る。
【0028】
このように励起光源部12で選択された狭帯域の波長の光は、ダイクロイックミラー機構7に入射し、このダイクロイックミラー8の特性波長に応じて試料2方向に反射されて試料2を励起照射し、一方この結果、試料2から生起する励起光より若干波長の長い蛍光は、ダイクロイックミラー8を透過して、反射鏡9,10を経由して、接眼レンズ11を介して観察される。
【0029】
この発明は以上の構成をベースに、ダイクロイックミラーで得た複数の狭帯域の蛍光を電子的検出器(例えばCCD)15で検出し、この出力に応じて対応して虹色の一色を順次振り分ける色分配機構16を設けて、狭帯域の波長に伴う電子的検出器15からの複数の各出力に、虹色の一を順次振り分けて行くものである。
【0030】
なお、符号17は、例えば励起光源12の干渉フィルター14を動作させたり、またレーザー光源13を選択切り替えたり、あるいはダイクロイックミラー機構7の複数のダイクロイックミラー8を操作して波長選択する波長選択機構であり、この機構17は、連動調整機構18を介して、色分配機構16と連動している。この結果、ダイクロイックミラー機構7、励起光源部12での波長選択と色分配機構16とが連動し、狭帯域の励起光、これに対応する蛍光の各波長の夫々に対応して虹色の一色が選択されることとなる。
【0031】
次に、符号19は制御部であり、色分配機構16で虹色の一色に色付けされた各波長の像を個別にあるいは重畳して表示部20に表示するためのもので、この表示部20は、点線で示す位置で表示して接眼レンズで観察できるようにするか、あるいは実線で示す位置で表示して別途に観察するように出来る。なお、符号21は、レンズ22を介して、試料像あるいは表示部20の表示を撮影する撮影機である(撮影の場合は反射鏡9は光路から外す)。すなわち接眼レンズ11で試料2を観察しながら、そのときの蛍光象を直視可能とすることが出来る。
【実施例1】
【0032】
図2は、図1のダイクロイックミラー機構7を含めこの発明を実施するためより詳細に説明した実施例である。なお、図1と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
図において、符号81,82,83,84はダイクロイックミラー機構7内に設けられたダイクロイックミラーで、励起光源部13からの点線で示す励起光は、励起フィルター71を介してダイクロイックミラー81に入射する。このミラー81へ入射した光は、このミラーの波長特性に応じて反射されてレンズ6を介して励起光として試料2を照射する。次いで、この試料2から生起する照射光の波長より若干長い波長の蛍光は、ダイクロイックミラー81を透過してダイクロイックミラー82に至り、このミラー82でも一部は反射し、一部は透過して、透過した光は次段のダイクロイックミラー83に入射して、同じく一部は透過し、一部は反射される。
【0033】
上記のダイクロイックミラー82で反射した光は、同じくダイクロイックミラー84に入射して、やはり一部は透過し、一部は反射され、反射された光はミラー72でも反射され方向を転換される。
【0034】
以下に図2と図3において動作を説明する。
例えば、励起光源部12から、図3に示す可視光域の励起光A(波長433nm),B(波長488nm),C(波長548nm),D(568nm)が、励起フィルター71を介して照射されるとする。このときダイクロイックミラー81には、これらの波長の光は全て反射する特性を持たせておくと、これらの光は、ミラー81で反射され、レンズ6を介して試料2を励起する。この結果、これらの試料から上記の励起光A,B,C,Dの励起波長より若干波長の長い可視光の蛍光a(波長457nm),b(波長507nm),c(波長559nm),d(波長582nm)が生起する。このときダイクロイックミラー81の光学特性を、図3のD2の一点差線で示すように励起光A,B,C,Dは反射し、蛍光a,b,c,dのみを透過するようにしておくと、生起した蛍光のみが次段のダイクロイックミラー82に入射する。
【0035】
次に、ミラー82の波長特性を、図3のD4の点線で示すように、例えば蛍光a,bは透過し、蛍光c,dは反射するようにしておけば、このダイクロイックミラー82で、蛍光a,bと蛍光c,dとを分離することが出来る。
【0036】
次いで、ダイクロイックミラー83の波長特性を、蛍光aは透過し、蛍光bは反射するようにしておけば、蛍光aは、吸収フィルター73を介して、電子的検出器(CCD等)74で検出される。同じく蛍光bは、吸収フィルター73を介して、電子的検出器75で検出される。
【0037】
また、上記したダイクロイックミラー82で反射された蛍光c,dは、次段のダイクロイックミラー84に入射し、蛍光cは反射されてさらにミラー72でも反射されて方向転換し、一方蛍光dは透過され、夫々の蛍光c,dは吸収フィルター73を介して、電子的検出器76、77で夫々検出される。この結果、各電子的検出器74,75,76,77には、4種類の波長の相違している蛍光象a,b,c,dが得られる。
【0038】
次いで、この電子的検出器の各々の出力は、色分配機構16により虹色の一色を割り当てられ、制御部19を介して、個別にあるいは重畳されて表示部20上で表示される。この表示部20は、実線と点線で示しているが、点線位置では、顕微鏡の接眼レンズ11で観察できる。また、撮影機21は、レンズ22を介して、制御部19の動作のもとに表示部20を撮影することが出来る。
【0039】
以上のように、波長選択機構17によって励起光源部12とダイクロイックミラー機構7を操作し、かつ連動調整機構18を介して色分配機構16を動作させることで選択された励起光、これに伴って生起する蛍光、およびこの蛍光の各々に虹色の一色の割り当てが、自動的にあるいは、可視像はそのままの表示等、必要に応じて調整されての表示が行われる。よって、複数の励起光を試料に照射しても、ダイクロイックミラーの光学特性を複数の波長を透過し、反射するように調整しておけば、同時に複数の蛍光像を検出でき、虹色の一色に色づけされた像を得ることが出来ることは明らかである。
【0040】
以上の説明に使用した励起光、蛍光の波長のいずれもが可視光の範囲であれば、虹色の一色に変換しなくともそのまま表示して可視像として観察できる。また、蛍光の波長が、可視光の範囲外の場合は、範囲外の蛍光に虹色を割り当てることで観察できる。
【実施例2】
【0041】
次に図4において、さらにこの発明の他の実施例を説明をする。
図において、複数波長の励起光A,B〜E,Fをダイクロイックミラーを介して、試料に照射する。この結果、試料から夫々に対応する蛍光a,b〜e,fが生起する。このとき、最初の第1段のダイクロイックミラーには、図中のD1の一点差線で示す光学特性を持たせ、励起光A,B〜E,Fは試料方向に反射させて試料を励起し、一方これらの励起光で試料から生起した蛍光a,b〜e,fは透過するようにその光学特性を持たせておく。
【0042】
次いで、この第1段のミラーを透過した蛍光a,b〜e,fは、図4のD2として点線で示す光学特性を持たせた次段のダイクロイックミラーに入射させ、例えば蛍光a,b,cは透過させ、蛍光d,e,fは反射させて2つのグループに分離する。
【0043】
そして、以後のダイクロイックミラーで、蛍光aを透過し、蛍光b,cを反射させ、さらにそれ以降のダイクロイックミラーで蛍光bを透過し、蛍光cを反射する等の特性を持つダイクロイックミラーを用いて、生起した蛍光を順次分離してゆく。また、同じような形体で、蛍光d,e,fも分離してゆくことが出来る。
【0044】
その結果、発生した、あるいは生起した複数の蛍光は、夫々の波長域の光に分離され、図1,図2で説明したように、夫々が電子的検出器に検出され、この出力に次段の色分配機構の虹色の一色が順次割り当てられる。したがって、励起光あるいはその結果の蛍光が、紫外、可視、赤外の波長領域にあるかどうかに関係なく虹色の表示で観察できることとなり、未知のものの探索、可視光以外の光の認識、等が可能となり、しかもリアルタイムで励起光を照射しながら発生する蛍光を観察できる。
【実施例3】
【0045】
図5は、さらに他の実施例を示したもので、へッドアップディスプレイ(ヘッドマウウントディスプレイ装置)を説明するものである。
図において、符号61は、ホルダー部としての例えばめがね形状の保持部(へッドマウントディスプレイ)、62,63はレンズ部で表示部を形成する。符号65,66はフレームで例えば一般のめがねと同じように耳部に懸架保持されるようなものでもよい。符号67は励起光発生部で、ここで発生された励起光は物体・物質に照射され、68は蛍光検出部で、この励起光で照射された物体・物質からの蛍光を、ダイクロイックミラーで反射、透過させて電子的検出器で検出する機能を持っており、この結果は62,63のレンズ部で表示される。符号69は、これらの制御回路部である。
【0046】
この結果、めがねをかけた感覚で、物体・物質に励起光を照射し、発生・生起する蛍光を蛍光検出部8で上記に説明したダイクロイックミラー機構を利用して、反射、透過させて電子的検出器で検出し、この結果をレンズ部2で表示することが出来る。この場合、この実施例では、めがねで見ているような臨場感を持って物体・物質を観察できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上に説明したように、この発明によって、物体・物質などから発生する、生起する可視光以外の紫外線、赤外線に伴う像も、夫々の狭波長範囲の一つ一つを虹色の一色に順次置き換え、当てはめて検出表示するため、本来肉眼で観察し得ない像が観察でき、今まで以上に実態を解明でき、かつリアルタイムで次の追跡行動に移ることが出来る。
【0048】
さらに、従来肉眼で観察するために可視光を発生・生起するラベリング剤を必要としていたが、この発明ではその必要もないので、簡単に観察できこの分野での利用価値が一段と上昇する。また可視光で認識・識別できない物質も、励起光に基づいて生起する蛍光を虹色で強制的に色付けするので観察することができ、例えば集積回路などに含まれている不純物質、さらには空間の浮遊物体の存在、など多色的にリアルタイムに観察できる。
【0049】
また、めがねタイプ(ヘッドマウウントディスプレイ)にあっては、励起光を照射してその蛍光を観察する時と、生起した光そのものを観察する時とのいずれにあっても、可視、紫外、赤外を問わず、虹色の一色を光に割り当てて表示するので、従来に増してより物質、物体の観察が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の基本構想を説明する図。
【図2】この発明の実施例を説明する図1をより詳細に説明した図。
【図3】この発明の原理を図2に関して説明する図。
【図4】この発明の一般的原理を説明する図。
【図5】この発明をヘッドアップディスプレイ(ヘッドマウウントディスプレイ)に応用した図。
【図6】従来の一般的な蛍光顕微鏡を説明する図。
【符号の説明】
【0051】
1,13 光源
2 試料
3,5,6,22 光学レンズ
4,9,10,72 反射ミラー
7 ダイクロイックミラー機構
8,81,82,83,84 ダイクロイックミラー
11 接眼レンズ
12 励起光源部
14 干渉フィルター
15 電子的検出器(CCD)
16 色分配機構
17 波長選択機構
18 連動機構
19 制御部
20 表示部
21 撮影機
71 励起フィルター
73 吸収フィルター
74,75,76,77 電子的検出器(CCD)
61 ホルダー部(めがね形状保持部)
62,63 レンズ部(表示部)
65,66 フレーム部
67 励起光発生部
68,蛍光検出部
69 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物からの光を観察し、認識・識別するものにおいて、対象物からの光をダクロイックミラーを介して透過あるいは分割して複数の狭い波長帯域の光を得、この各波長帯域の光に虹色の一色を順次分配割り当てるとともに、この分配割り当てられた虹色をもって各波長帯域を表示するようにしたことを特徴とする物質・物体の認識・識別方法。
【請求項2】
ダイクロイックミラーを介して複数の狭い波長帯域の光を得、この光のうち可視光以外の各波長帯域の光に虹色の一色を順次分配割り当てることを特徴とする請求項1に記載の物質・物体の認識・識別方法。
【請求項3】
対象物に励起光を照射し、その対象物からの蛍光を観察し認識・識別することを特徴とする請求項1または2に記載の物質・物体の認識・識別方法。
【請求項4】
対象物に励起光を照射し、その対象物からの蛍光を観察し認識・識別するものにおいて、複数の狭い波長帯域の光を得、この光のうち可視光以外の各波長帯域の光に虹色の一色を順次分配割り当てることを特徴とする請求項3に記載の物質・物体の認識・識別方法。
【請求項5】
対象物から生起する光を複数の狭波長帯域の光に透過あるいは分割するためのダイクロイックミラー機構と、この透過あるいは分割された各波長帯域の光を夫々検出する複数の電子的検出器と、この各電子的検出器出力に虹色の一色を順次分配し割り当てる色分配機構と、ダイクロイックミラー機構を駆動して複数の狭波長帯域の光を選択する波長選択機構と、この波長選択機構と色分配機構と間の連動調整機構と、この色分配機構の出力の表示部とを有することを特徴とする物質・物体の認識・識別装置。
【請求項6】
蛍光を発生する試料に励起光を照射し、試料から生起する蛍光を観察するものにおいて、試料から生起する蛍光を複数の狭波長帯域の光に透過あるいは分割するためのダイクロイックミラー機構と、この透過あるいは分割された各波長帯域の光を夫々検出する複数の電子的検出器と、この各電子的検出器出力に虹色の一色を順次分配し割り当てる色分配機構と、ダイクロイックミラー機構を駆動して複数の狭波長帯域の光を選択する波長選択機構と、この波長選択機構と色分配機構と間の連動調整機構と、この色分配機構の出力の表示部とを有することを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項7】
接眼部を介して表示部が観察できることを特徴とする請求項5に記載の蛍光顕微鏡。
【請求項8】
対象物からの生起光を複数の波長帯域の光として透過あるいは分割するためのダイクロイックミラー機構と、このミラー機構からの各波長出力を検出する電子的検出器と、この電子的検出器からの各波長出力を波長順に虹色の一色に関係付づけて処理する信号処理部と、この出力の表示部と、少なくともこの表示部を、眼前に支持するためのホルダー部とから成ることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
対象物を照準して蛍光を発生させる励起光を照射することができる光源部を有することを特徴とする請求項7に記載のヘッドアップディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−249669(P2008−249669A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95039(P2007−95039)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】