特別なピクチャ群を用いた非プログレッシブ・ビデオの順方向トリック・モード
本発明は、ビデオ信号を符号化する方法(200)およびシステム(100)に関する。この方法は、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信するステップ(212)と、この非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするステップ(214)とを含んでいる。全ての非予測ソース・ピクチャは少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている。また、この方法は、順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくともピクチャ群内の非予測ソース・ピクチャの数を変更して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップ(217、218)も含むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の構成は、一般にビデオ・システムに関し、特にディジタル符号化されたビデオ・シーケンスを記録または再生するビデオ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の家電製品市場では、ビデオの再生を容易にする装置の人気が高まっている。例えば、多くの消費者は、以前に録画した番組を見たり、好きな番組を録画したりする目的でディジタル・ビデオ・ディスク(DVD)のレコーダまたはプレーヤを購入している。通常、DVDレコーダまたはプレーヤは、当該レコーダまたはプレーヤが再生するディスクに記憶されたディジタル符号化されたマルチメディア・データを復号するためのMPEG(Moving Picture Expert Group)デコーダ(復号器)を内蔵している。復号されるMPEGビデオ信号は、複数のピクチャ群(GOP:Group Of Pictures)からなり、各GOPは、通常はイントラ(フレーム内)符号化画像(I(Intra)ピクチャ)、複数の予測符号化画像(P(Predictive)ピクチャ)、および複数の双方向予測符号化画像(B(Bi−predictive)ピクチャ)を含んでいる。
【0003】
ビデオ信号の再生中に、視聴者が特定のトリック・モードを実行したいと思うこともある。トリック・モード(trick mode)とは、通常速度でまたは順方向に再生を行わない任意のビデオ再生であると考えられる。例えば、高速順方向(fast−forward)トリック・モードを開始すれば、視聴者は幾つかのビデオ部分をより速く見ることができる。MPEGビデオ信号で高速順方向トリック・モードを実行するためには、DVDのデコーダは、ビデオ信号の各GOPに含まれる幾つかのピクチャをスキップする(読み飛ばす)。トリック・モードが高速になるほど、スキップする必要のある各GOP内のピクチャ数は増加する。一般に、連続したGOP内で双方向予測符号化画像(Bピクチャ)が最初にスキップされる。Bピクチャが全てスキップされた後に、予測符号化画像(Pピクチャ)がスキップされる。Pピクチャも、最終的には全てスキップされる。Pピクチャに関しては、GOPの末尾にあるPピクチャ(通常は、表示順序がGOP内で最後になるピクチャ)を最初にスキップして、その後に表示順序がその直前であるPピクチャをスキップしなければならない。このプロセスは、当該GOP内の(表示順序が)最後のPピクチャをスキップするようにして、Pピクチャが1つも残らなくなるまで続けることができる。必要なら、イントラ符号化画像(Iピクチャ)もスキップすることができ、この時点で当該GOP全体がスキップされる。
【0004】
表示順序に鑑みてBピクチャを最初にスキップし、その次にPピクチャをスキップするというこの特定のアルゴリズムの背後にある原理は、通常のGOPで利用される予測方式に基づいている。具体的には、Bピクチャはその他のピクチャの予測には使用されず、Bピクチャをスキップすることは、中程度または低程度のスピードアップを行うのに有用である。対照的に、Iピクチャは、GOP内のその他の全てのピクチャの予測に直接的にも間接的にも使用される。GOP内にIピクチャが1つしか存在しない場合には、GOP内のその他のピクチャの何れもスキップされない場合には、そのIピクチャを保持しなければならない。その他のピクチャを何れもスキップせずにIピクチャをスキップした場合には、残りのピクチャを正確に予測することが不可能になる。同様に、Pピクチャはその他のPピクチャの予測に使用され、その時のGOP内の最後のPピクチャ以外のPピクチャをスキップすると、表示順序でそのスキップしたPピクチャの後に表示される任意のピクチャの表示に悪影響が及ぶことになる。
【0005】
許容可能ではあるが、上述のアルゴリズムでは、ピクチャをスキップする特定の順序に応答して更なるマイクロプロセッサのプログラミングを行う必要がある。更に、このスキップ・アルゴリズムでは、ピクチャをスキップして最適な再生を行うことができない。例えば、視聴者が、通常の再生速度の2倍の速度でビデオを再生したいと思う場合には、ビデオ内のピクチャをスキップする最も望ましい方法は、ピクチャを1つおきにスキップする方法となる。しかし、通常のGOP構造では、上述のような制限があるためにこの方法でピクチャをスキップすることはできない。
【0006】
トリック・モードを実行すると、特にビデオ信号が非プログレッシブ・ピクチャを含み、遠隔(remote:リモート)デコーダ・システム内のデコーダがこのビデオ信号を復号している場合には、その他の問題が生じることもある。遠隔デコーダ・システムでは、非プログレッシブ・ピクチャを含むビデオ信号を記憶媒体に記録し、また記憶媒体から再生するために使用される構成要素は、デコーダを直接的に制御しない。即ち、遠隔デコーダ・システム内のデコーダは、パッシブ(受動的)デコーダと考えられる。このような構成で非プログレッシブ(非順次走査)ピクチャの繰返し表示を行うと、繰り返されるピクチャが移動オブジェクト(対象物)を含む場合に、表示に振動効果(vibration effect)が現れる可能性がある。この欠点について説明するために、非プログレッシブ・ピクチャを生成するために通常利用されるプロセスであるインタレース走査について簡単に説明する。
【0007】
多くのテレビジョンでは、インタレース走査技術を利用している。この方式では、ビデオ信号は、通常、所定数の水平線に分割される。各フィールド期間に、これらの線(ライン)のうちの2分の1だけが走査される。一般に、最初のフィールド期間の間に奇数番号の線(ライン)が走査され、次のフィールド期間の間に偶数番号の線(ライン)が走査される。各掃引(sweep)をフィールド(field)と呼び、2つのフィールドが組み合わさったときに、1つの完全なピクチャ(picture)またはフレーム(frame)が形成される。NTSCシステムでは、毎秒60個のフィールドが表示され、フレーム速度は毎秒30個となる。
【0008】
移動オブジェクト(対象物)がインタレース走査式テレビジョンの画面を横切って移動すると、各フィールドは、この移動オブジェクトの一部のみを表示する。このような部分表示になるのは、1つのフィールドではピクチャ全体の水平線が1つおきに表示されるからである。例えば、特定のフィールドnについては、奇数番号の水平線のみが走査され、フィールドn内に表示される移動オブジェクトの部分は、フィールドnで奇数番号の水平線が掃引される間に走査される部分である。次のフィールドであるフィールドn+1は、1/60秒後に生成され、同じピクチャの偶数番号の水平線を表示することになる。従って、フィールドn+1内に表示される移動オブジェクトの部分は、フィールドn+1で偶数番号の水平線が掃引される間に走査される部分である。各フィールドは時間的にずれているが、上記のようなフィールド表示速度であるために、このように順次表示されたフィールドは、人間の目には滑らかな動きとして知覚される。
【0009】
視聴者がトリック・モードを起動した場合、トリック・モード・ビデオ信号は、インタレース走査方式で記録されたピクチャである繰返しピクチャを含むことがある。例えば、視聴者が特定のピクチャについて低速順方向(slow−forward)トリック・モードを開始した場合には、このピクチャを、例えば遠隔デコーダを含むディジタル・テレビジョンに繰返し送信し、復号し、表示する。しかし、この繰返しピクチャの表示は、非プログレッシブ・ピクチャの通常表示に従って行われる。即ち、非プログレッシブ・ピクチャを構成するトップ・フィールド(top field)およびボトム・フィールド(bottom field)が交互に表示される。これらのフィールドは、低速順方向トリック・モードの再生速度に基づいて交互に表示される。例えば、1/3X(1Xは、通常の再生速度を表す)の再生速度では、各フィールドが交互に3回ずつ表示されることになる。
【0010】
インタレース走査方式で記録されたピクチャに移動オブジェクト(対象物)が現れる場合には、各フィールドは、この移動オブジェクトを1つの特定の位置に表示することになる。従って、低速順方向トリック・モードの間に1つのフレームまたはピクチャを構成する複数のフィールドが交互に表示されると、表示内の移動オブジェクトは表示内の一方の位置と他方の位置との間を速い速度で往復するので、実質的には移動オブジェクトが振動しているように見える。この振動は、各インタレース・フィールドが時間的にずれており、移動オブジェクトの現れる位置がフィールド毎に異なるために生じる。
【発明の開示】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、ディジタル・ビデオ信号を符号化する方法に関する。この方法は、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信するステップと、この非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ(prediction source picture)および少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャ(non−prediction source picture)を有する少なくとも1つのピクチャ群(GOP)にするステップとを含むことができる。全ての非予測ソース・ピクチャは少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている。
【0012】
更に、この方法は、非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録するステップと、非プログレッシブ・ビデオ信号を再生するステップとを含むことができる。また、この方法は、順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくともピクチャ群内の非予測ソース・ピクチャの数を変更して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップも含むことができる。
【0013】
一構成では、予測ソース・ピクチャは、イントラ符号化画像(Iピクチャ)にする。更に、非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を、双方向予測符号化画像(Bピクチャ)、または予測符号化画像(Pピクチャ)にする。例えば、双方向予測符号化ピクチャをそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像にする。
【0014】
本発明の一態様では、変更ステップは、ピクチャ群(GOP)内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含むことができる。或いは、変更ステップは、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製をピクチャ群に挿入して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含むことができる。
【0015】
別の態様では、少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャは、ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像にする。更に、この方法は、ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、該直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化画像に変換するステップを更に含むことができる。
【0016】
別の構成では、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャは、それぞれ表示指示を含むことができ、この方法は、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するステップを更に含むことができる。例えば、表示指示は、時間的参照フィールドとすることができる。
【0017】
また、この方法は、遠隔デコーダ・システムにおいて受信ステップおよび符号化ステップを実行するステップを含むことができることも理解されたい。更に、この方法は、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部分を符号化してフィールド・ピクチャにするステップを含むことができる。
【0018】
また、本発明は、ディジタル・ビデオ信号を符号化するシステムにも関する。このシステムは、非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするプロセッサを含んでいる。全ての非予測ソース・ピクチャは、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている。更に、このシステムは、非プログレッシブ・ビデオ信号を復号するデコーダを含んでいる。また、このシステムは、上述の方法を実施するために適当なソフトウェアおよび回路も含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の構成による様々な先進的な動作機能を実施するシステム100を、図1Aにブロック図として示す。しかし、本発明は、図1Aに示す特定のシステムに限定されるものではなく、本発明は、ビデオ信号を受信し、この信号を処理し、この信号をディスプレイ・デバイスなど任意の適当な構成要素に対して出力することができるその他任意のシステムで実施することができる。また、システム100がデータを読み取る、またはデータを書き込む記憶媒体は、いかなる特定のタイプの記憶媒体にも制限されず、ディジタル符号化データを記憶することができる任意の記憶媒体をシステム100と共に使用することができる。
【0020】
システム100は、入来するビデオ信号を符号化するエンコーダ(符号器)110と、このビデオ信号を様々な技術で符号化するようエンコーダ110に命令するマイクロプロセッサ112とを備えることができる。ビデオ信号を符号化する様々な技術のうちの幾つかについては、後述する。本発明では、エンコーダ110およびマイクロプロセッサ112の全体または一部を、プロセッサ114とみなすことができる。エンコーダ110は、マイクロプロセッサ112と同じ装置内に位置していても良いし、或いはマイクロプロセッサ112を収容した装置とは遠隔に配置されたデバイス内に配置しても良い。離れた場所に遠隔に配置される場合には、エンコーダ110は、必ずしもマイクロプロセッサ112により制御されるとは限らない。
【0021】
また、システム100は、記憶媒体118からデータを読み取り、且つこれにデータを書き込むための制御装置116も備えることができる。例えば、データは、ディジタル符号化ビデオ信号とすることができる。また、システム100は、符号化ビデオ信号が記憶媒体118から読み取られたときにこの信号を復号し、復号したビデオ信号をディスプレイ・デバイスなど適当な構成要素に転送するデコーダ120も有することができる。デコーダ120は、マイクロプロセッサ112および制御装置116を収容したのと同じ装置内に取り付けても良いし、或いは、遠隔デコーダ・システム内に見られるデバイスなど別のデバイス内に取り付けても良い。
【0022】
また、マイクロプロセッサ112が(上述のように)エンコーダ110の動作を制御し、また制御装置116およびデコーダ120の動作を制御できるようにするために、制御インタフェースおよびデータ・インタフェースを設けることもできる。マイクロプロセッサ112により従来の動作が行われるように適当なソフトウェアまたはファームウェアをメモリに記憶する。更に、本発明の構成によれば、マイクロプロセッサ112にプログラム・ルーチンを与えることもできる。
【0023】
動作中には、エンコーダ110は、入来する非プログレッシブ・ビデオ信号を受信し、符号化する。当技術分野で既知の通り、このタイプのビデオ信号は、非順次的に走査されたピクチャ、即ちインタレース走査技術で生成されたピクチャで構成される。本発明の構成によれば、マイクロプロセッサ112は、入来するビデオ信号を、トリック・モードを実行するのに特に有用な1つまたは複数のGOPに符号化するようエンコーダ110に命令する。このようなGOPの例の幾つかを、以下に挙げる。次いで、エンコーダ110は、符号化したビデオ信号を制御装置116に転送することができ、制御装置116は、この信号を記憶媒体118に記録する。エンコーダ110が遠隔に位置する場合には、エンコーダ110は、入来する非プログレッシブなビデオ信号を符号化することができるが、必ずしもマイクロプロセッサ112から符号化命令を受信するとは限らない。
【0024】
マイクロプロセッサ112が再生コマンドを受信した場合には、マイクロプロセッサ112は、記憶媒体118から符号化ビデオ信号を読み取るよう制御装置116に命令する。制御装置116は、この信号をマイクロプロセッサ112に転送することができ、マイクロプロセッサ112は、この信号をデコーダ120に送信する。デコーダ120は、ビデオ信号を復号し、適当なデバイスで表示するためにこの信号を出力する。マイクロプロセッサ112がトリック・モード・コマンドを受信した場合には、マイクロプロセッサ112は、GOP内の複数のピクチャをスキップする、またはGOPのピクチャを反復する。
【0025】
上述のように、復号ステップを実行するデコーダ120がマイクロプロセッサ112を収容している装置とは別のデバイス内に位置している例も幾つか考えられる。このような構成、即ち遠隔デコーダ・システムの一例を、図1Bに示す。この図では、デコーダ120は、マイクロプロセッサ112を収容することができるマルチメディア・デバイス124から分離したディスプレイ・デバイス122内にある。この場合には、デコーダ120が、マイクロプロセッサ112の制御の下にないこともある。この状態でも、依然としてこのシステム100内でトリック・モードを実行することができ、マイクロプロセッサ112は、ディスプレイ・デバイス122内のデコーダ120にピクチャを送信する前に、ビデオ信号中のピクチャを削除する、またはピクチャの複製をビデオ信号に挿入することができる。このタイプのシステムでは、エンコーダ110も遠隔に位置することができることを理解されたい。
【0026】
別の実施形態では、符号化ステップの間に、非プログレッシブ・ビデオ信号中のピクチャを符号化して、上述の振動アーティファクトを回避するのに役立つフィールド・ピクチャにすることができる。非プログレッシブ・ピクチャを符号化してフィールド・ピクチャにすることにより、マイクロプロセッサ112は、振動問題を抑制する助けとなるような方法で、フィールド・ピクチャを遠隔に位置するデコーダに送信することができるようになる。このプロセスについては後述する。
【0027】
図1Aおよび図1Bに関連して述べた構成の何れにおいても、符号化プロセス中に作成されるGOPにより、順方向トリック・モードの効率的な実施が容易になる。以下では、本発明の全体的な動作について詳細に述べる。
【0028】
図2を参照すると、特別なGOPを用いて非プログレッシブ・ビデオ信号のトリック・モードを実行する1つの方法を実施する方法200が示してある。この方法200は、ビデオ信号を符号化および復号することができる任意の適当なシステムで実施することができる。この方法200は、ステップ210に示すように開始する。ステップ212で、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信する。上述のように、非プログレッシブ・ビデオ信号は、非漸進的に走査されたピクチャ、即ちインタレース走査技術で操作されたピクチャを含んでいる。ステップ214に示すように、この非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのGOPにする。一構成では、全ての非予測ソース・ピクチャを予測ソース・ピクチャから予測することができ、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されることがないようになっている。
【0029】
図3を参照すると、このプロセスの一例が示してある。この特定の構成では、ビデオ信号を符号化して、1つまたは複数のGOP300にする。GOP300は、表示順序で示してある。各GOP300は、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ310と、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャ312とを含むことができる。これらのピクチャは、少なくともトップ・フィールドおよびボトム・フィールドを有する非プログレッシブ・ピクチャである。これらのピクチャは完全な形態で示してあり、この図では、それぞれのフィールドに分離した状態では示していない。予測ソース・ピクチャは、別のピクチャからは予測されないが、GOP内の他のピクチャを予測するために使用することができる、GOP内のピクチャである。更に、非予測ソース・ピクチャは、当該GOP内の予測ソース・ピクチャから予測することができる、GOP内の任意のピクチャとする。
【0030】
例えば、予測ソース・ピクチャ310をI(イントラ)ピクチャとし、非予測ソース・ピクチャ312をB(双方向予測)ピクチャおよび/またはP(予測)ピクチャとする。各非予測ソース・ピクチャ312は、予測ソース・ピクチャ310から予測する。これは、この例で言えば、各BピクチャおよびPピクチャがIピクチャから予測されるということである。Pピクチャが非予測ソース・ピクチャ312として働くので、非予測ソース・ピクチャ312が、Bピクチャなど、その他のピクチャを予測するのに利用することが出来ないピクチャに限定されないことは明らかであろう。
【0031】
しかし、本発明の構成によれば、各非予測ソース・ピクチャ312は、予測ソース・ピクチャ310からしか予測することができない。一構成では、Bピクチャを一方向予測画像とし、Iピクチャより前(表示順序)のBピクチャは、Iピクチャから逆方向に予測することができ、Iピクチャより(表示順序)後のBピクチャはIピクチャから順方向に予測することができるようにする。予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312に付した下付き数字は、これらの各ピクチャが通常の再生速度で表示される順序(当該GOP内におけるその他のピクチャとの相対的な順序)を示している。
【0032】
上述のように、GOP300は表示順序で示してある。この例ではピクチャI3である予測ソース・ピクチャ310を最初にデコーダに送信し、その後に予測ソース・ピクチャ310から予測される非予測ソース・ピクチャ312を送信することができるので、送信順序は表示順序とは若干異なる。
【0033】
本発明は、本発明の構成によるGOP構造の単なる一例を表しているだけであり、これらの特定のGOP300に限定されるものではないことに留意することは重要である。実際に、その中に含まれる全ての非予測ソース・ピクチャを当該GOP内の予測ソース・ピクチャから予測することができる任意のGOPが、本発明の構成に含まれるものとする。更に、図3には、1つの予測ソース・ピクチャ310および6個の非予測ソース・ピクチャ312をそれぞれ有する2つのGOP300しか示していないが、受信されるビデオ信号は、任意の適当な数の予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312を有する任意の適当な数のGOP300に符号化することができることを理解されたい。
【0034】
また、GOP300内に複数の予測ソース・ピクチャ310が存在する場合には、GOP300内の任意のBピクチャを両方向に予測する。例えば、複数の予測ソース・ピクチャ310をGOP300内に位置づけ、非予測ソース・ピクチャ312の幾つかをこれらの予測ソース・ピクチャ310から予測する。従って、予測ソース・ピクチャ310を、これらの予測ソース・ピクチャ310に依存してその予測が行われる非予測ソース・ピクチャ312より先にデコーダに送信することができる。
【0035】
方法200に戻ると、ステップ215で、これらのGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号を、適当な記憶媒体に記録する。一度記録されたら、これらのGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号は、ステップ216に示すように再生する。判定ブロック217で、GOP内の非予測ソース・ピクチャの数を変更するかどうかを判定する。例えば、この変更は、高速順方向や低速順方向などの順方向トリック・モード・コマンドに応答して行うことができる。変更が行われない場合には、ステップ216で方法200を再開する。変更を行う場合には、ステップ218で変更プロセスを実行する。ステップ218で行われる動作では、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換する。幾つかの例を、図4Aから図4Dに示す。ここでも、図4Aから図4Dに示すピクチャは、完全な形態で示される非プログレッシブ・ピクチャである(フィールドに分離されていない)。
【0036】
図4Aを参照すると、図3に最初に示したように、各GOP300は、幾つかの非予測ソース・ピクチャ312が除去またはスキップされた状態で示してある。具体的には、左側のGOP300では、ピクチャB0、B2、B4およびP6をスキップすることができ、右側のGOP300では、B1、B4およびP6をスキップする。これらの非予測ソース・ピクチャ312をスキップすることにより、再生速度を高めることができる。ここで、スキップされる非予測ソース・ピクチャ312の数は、2つのGOP300に含まれる総ピクチャの2分の1であるが、この数が、通常の再生速度の2倍の再生速度、即ち2X(1Xが、通常の再生速度(1倍)を表す)と関係している。
【0037】
本発明の構成によれば、GOP300内の非予測ソース・ピクチャ312のうちのどのピクチャを任意の順序でスキップしても、GOP300内の残りの任意の非予測ソース・ピクチャ312の予測に影響を及ぼすことなく、ビデオ信号の再生速度を高めることができる。この機能は、上述の符号化プロセスにより可能になるものである。例えばMPEG規格に従ってGOP300を配置するステップについては、後述する。
【0038】
言うまでもなく、本発明は図4Aに関連して述べた例に限定されるものではなく、全ての非予測ソース・ピクチャ312を任意の順序でスキップすることができるということは、予測ソース・ピクチャ310から非予測ソース・ピクチャ312が予測されるその他の任意のGOPについても当てはまることを理解されたい。また、GOP300全体をスキップして、より高速の再生を行うこともできる。
【0039】
図2に戻ると、変更ステップ218は、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製をGOP300に挿入して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを更に含むことができる。このような動作の一例を、図4Bに示す。ここで、各予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の複製を、GOP300に挿入することができる(便宜上、図3に示すGOP300のうち1つのみを示す)。この特定の例では、1/2X(1/2倍)の再生速度を生じることができる。下付き文字「d」は、それが付されたピクチャが、その直前のピクチャの複製であることを表している。
【0040】
元の非予測ソース・ピクチャ312と同様に、これらのピクチャの複製も、予測ソース・ピクチャ310から予測することができる(MPEG規格によれば、GOP300内の最後のピクチャ、ここでは複製ピクチャP6dは、その直前のPピクチャ、この場合ではピクチャP6から予測することができる)。更に、元の非予測ピクチャ312およびそれらの複製は、予測ソース・ピクチャ310の複製から予測することもできる。
【0041】
図4Bに示す例は、次のように説明される。つまり、元の予測ソース・ピクチャ310、即ちピクチャI3より前(表示順序)の全ての非予測ソース・ピクチャ312およびその複製は、ピクチャI3から予測する。更に、元の予測ソース・ピクチャ310の複製、即ちピクチャI3dより後(表示順序)の元の非予測ソース・ピクチャ312およびその複製は、複製ピクチャI3dから予測することができる(複製ピクチャP6dは例外とする)。ただし、この特定の構成は単なる例示であり、非予測ソース・ピクチャ312およびそれらの複製は、予測ソース・ピクチャ310の任意の複製も含めてその他の任意の適当な予測ソース・ピクチャ310から予測することができることを理解されたい。
【0042】
別の構成では、GOP300に挿入された複製ピクチャのうちの1つまたは複数を、ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャとすることができる。ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャとは、そのダミー・ピクチャの動きベクトルがゼロに設定され、その残りの信号がゼロに設定される、または符号化されない、BピクチャまたはPピクチャである。例えば、GOP300内の予測ソース・ピクチャ310(ピクチャI3)の複製を、ピクチャI3dなど、別のIピクチャではなく、ダミーPピクチャとする。同様に、最後の非予測ピクチャ312(ピクチャP6)の複製を、複製ピクチャP6dなど、従来のPピクチャではなくダミーPピクチャにすることもできる。トリック・モード中にダミーBピクチャまたはダミーPピクチャを使用することにより、遠隔デコーダ・システムでは必要となることもあるビデオ信号のビット・レートの低下を実現することができる。また、ピクチャをスキップすることにより実際にビデオ信号のビット・レートを高めることができるので、特に遠隔デコーダ・システムでは、ピクチャがスキップされたときに、ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャをGOP300に挿入することができることを理解されたい。
【0043】
図2に戻って、判定ブロック220で、GOP内の最後の非予測ソース・ピクチャがスキップされたかどうかを判定する。スキップされていない場合には、ジャンプ・サークルA(jump circle A)を介して判定ブロック226で方法200を再開する。スキップされている場合には、判定ブロック222で、GOP内で表示順序がその直前の非予測ソース・ピクチャがPピクチャであるかどうかを判定する。Pピクチャである場合には、方法200は、ジャンプ・サークルAを介して判定ブロック226に進むことができる。Pピクチャでない場合には、ステップ224に示すように、その直前の非予測ソース・ピクチャをPピクチャに変換する。
【0044】
この動作の一例を、図4Cに示す。MPEGビデオの仕様によれば、GOP内の最後のピクチャがPピクチャまたはIピクチャであることが必要である。従って、非予測ソース・ピクチャ312であるGOP300内のピクチャP6がトリック・モード中にスキップされた場合、GOP300内の最後のピクチャは、(スキップされていなければ)ピクチャB5となり、MPEG規格に沿わなくなる。MPEGの要件を満たすために、直前の非予測ソース・ピクチャ312、この場合はピクチャB5を、Pピクチャ、即ちピクチャP5に変換することができる。
【0045】
Bピクチャは、Bピクチャのピクチャ・ヘッダ内にあるパラメータ、picture_coding_type、full_pel_backward_vectorおよびbackward_f_codeを、Pピクチャの値に設定することにより、Pピクチャに変換する。更に、macroblock_typeについての可変長コード、macroblock_quant、macroblock_motion_forward、macroblock_motion_backward、macroblock_pattern、macroblock_intra、spatial_temporal_weight_code_flagおよびpermitted_spatial_temporal_weight_classesを、Pピクチャの値に設定する。
【0046】
このプロセスにより、このピクチャをPピクチャとして復号するようデコーダに命令することができる。従って、本発明の構成によれば、GOP内の最後のピクチャはPピクチャでなければならないというMPEG要件に背くことなく、GOP300内の最後のピクチャをスキップする。別の例として、図4Aを参照すると、両GOP300内のピクチャB5を、MPEG規格に合うようにPピクチャに変換する。
【0047】
図2の方法200に戻って、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャは、表示指示を含むことができる。ジャンプ・サークルAから判定ブロック226に進んで、これらのピクチャの表示指示を変更すると判定された場合には、この変更プロセスをステップ228で実行する。これらのピクチャの何れか1つがスキップまたは複製される場合には、これらの表示指示の変更は、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの所期の表示順序を反映して行うことができることに留意されたい。表示指示を変更しない場合には、ステップ230で方法200を終了する。
【0048】
一構成では、表示指示は、時間的参照フィールドとすることができる。時間的参照フィールドは、通常は、ディジタル符号化ピクチャのピクチャ・ヘッダに位置する10ビット・フィールドである。デコーダによっては、ビデオ信号内の特定のピクチャが、当該ビデオ信号内のその他のピクチャとの関係においていつ表示されるかを判定するのに、時間的参照フィールドに依拠するものもある。このフィールドは、通常は整数値を有する。
【0049】
例えば、再度図3を参照すると、各GOP300は7個のピクチャを含んでいる。各GOP300内の非プログレッシブ・ピクチャに付された下付き数字は、それぞれのピクチャの時間的参照フィールドの整数値に対応する。例えば、第1の非予測ソース・ピクチャ312、即ちピクチャB0の時間的参照フィールドの整数値を0とする。この0という数値は、この特定のピクチャが、各GOP300内で最初に表示されることを示している。次に表示されるピクチャであるピクチャB1の時間的参照フィールドは、整数値1を有する。このように、その後に表示される各ピクチャの時間的参照フィールドの整数値を、その時間的参照フィールドが整数値6を有することができるピクチャP6まで、1ずつ大きくする。便宜上、「時間的参照フィールドの整数値」という表現を、「整数値」とすることもできる。
【0050】
しかし、例えば、非予測ソース・ピクチャ312がスキップされた場合には、元の時間的参照フィールドに基づく表示順序が有効ではなくなる。従って、スキップされたピクチャの後に続く予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の時間的参照フィールドの整数値を変更して、適当な表示順序を示すようにする。この機能は、予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製がGOP300に挿入された場合にも適用する。
【0051】
例えば、右側のGOP300のピクチャB1がスキップされた場合には、このピクチャの後に続く予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の整数値を1ずつ減少させることができる。従って、ピクチャB2の時間的参照フィールドの整数値は2から1に変更することができ、ピクチャI3の時間的参照フィールドの整数値は3から2に変更することができ、以下同様に変更を行うことができる。この変更プロセスは、右側のGOP300の末端に到達するまで継続することができ、この変更プロセスにより、このGOP300内の残りのピクチャが適当な順序で表示されることを保証する。
【0052】
従って、GOP内の予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312がスキップされるたびに、スキップされたピクチャの後に続く当該GOP内の残りのピクチャの時間的参照フィールド(temporal reference field)の整数値を1ずつ減少させることができる。その結果を図4Dに示す。この図では、新しい整数値を示し、スキップされたピクチャB1は輪郭を破線で示し、以前の整数値は括弧書きで示してある。同様に、予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製が、GOP300に挿入されるたびに、挿入された複製の後に続くピクチャの整数値を1ずつ増加させることができる。
【0053】
本発明はこれらの特定の例に限定されるわけではなく、所期の表示順序を反映するように関連のある時間的参照フィールドの整数値を変更するその他の方法を、その他の任意の適当な形態で実行することができることを理解されたい。更に、本発明は、時間的参照フィールドの使用に限定されるわけではなく、上述の実施形態の何れにおいても、その他の任意の適当な表示指示を変更して所期の表示順序を反映することができることに留意されたい。図2に戻って、方法200はステップ230で終了する。
【0054】
図5を参照すると、特別なGOPを使用して非プログレッシブ・ビデオ信号に対してトリック・モードを実行する別の方法を実施する方法500が示してある。図2に示す方法200と同様に、この方法500は、ステップ510で開始することができ、ステップ512に示すように、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信する。また、方法200のステップ214と同様に、非プログレッシブ・ビデオは、ステップ514に示すように、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有し、全ての非予測ソース・ピクチャを予測ソース・ピクチャから予測することができる、少なくとも1つのGOPに符号化する。
【0055】
この構成では、符号化された非プログレッシブ・ビデオ信号は、最終的には遠隔デコーダ・システムで復号する。上述のように、遠隔デコーダ・システムでは、非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化し、また記憶媒体から読み取るために使用される構成要素は、デコーダを制御しない。このデコーダを制御しないことにより、特に低速順方向トリック・モードの際の非プログレッシブ・ビデオの表示に関する問題が生じることがある。
【0056】
例えば、図6Aは、図3に示すGOP300を、非プログレッシブ・ピクチャをそれぞれのフィールドに分離した状態で示す図である。この例で利用される予測方式は、図3に関連して述べたものと同じであるため、ここではこれ以上説明しない。この場合、各非予測ソース・ピクチャ312および予測ソース・ピクチャ310は、トップ・フィールドおよびボトム・フィールドを有する。下付き文字「t」は、それが付された特定のフィールドがトップ・フィールドであることを示し、同様に、下付き文字「b」は、それが付された特定のフィールドがボトム・フィールドであることを示している。ここで、GOP300は、GOP300内の各ピクチャの複製が追加されている低速順方向トリック・モードのGOPを表している。下付き文字「d」は、特定のフィールドが複製フィールドであることを示している。例えば、ピクチャB0は、トップ・フィールドB0tおよびボトム・フィールドB0bを含むことができ、ピクチャB0の複製であるピクチャB0dは、トップ・フィールドB0tdおよびボトム・フィールドB0bdを有する。
【0057】
図示のように、トップ・フィールドおよびボトム・フィールドは交互に表示される。これらのフィールド内に移動オブジェクトが現れた場合、このようなフィールドの表示方法により、このオブジェクトは振動しているように見える。例えば、ある移動オブジェクトが、フィールドB0t内である位置に現れ、フィールドB0b内で別の位置に現れた場合、複製フィールドB0tdが表示されたときに、このオブジェクトは以前の位置(ピクチャB0tに表示される位置)に戻るように見えることになる。次のフィールド、つまり複製フィールドB0bdが表示されたとき、このオブジェクトは、ピクチャB0b内に最初に表示された位置に再度飛ぶように見えることになる。従って、複製ピクチャがGOP300に追加されると、移動オブジェクトは振動するように見える。この振動効果は、1つまたは複数のGOP300に複製ピクチャが挿入される限り続くことになる。
【0058】
方法500に戻って、遠隔デコーダ・システムで特定のトリック・モードを開始したときに発生する可能性のある振動アーティファクトを解決するために、別の符号化ステップを実行することができる。ステップ515で、非予測ソース・ピクチャおよび予測ソース・ピクチャを符号化して、フィールド・ピクチャにする。以下で説明するように、これらのピクチャをフィールド・ピクチャに符号化することにより、振動問題を抑制する助けとなるような方法でフィールド・ピクチャの表示を実行する。
【0059】
この符号化ステップの一例を、図6Bに示す。この例では、図3で最初に説明したGOP300は、元の非プログレッシブ・ピクチャをフィールド・ピクチャに符号化した状態で示してある。例えば、最初にフィールドB0tおよびB0bを含んでいたピクチャB0は、符号化されてフィールド・ピクチャB0tおよびB0bになっている。最初に非予測ソース・ピクチャ312を構成していたフィールド・ピクチャも、非予測ソース・ピクチャ312と考えることができる。同様に、最初に予測ソース・ピクチャ310を構成していたフィールド・ピクチャも、予測ソース・ピクチャ310と考えることができる。従って、本発明では、「予測ソース・ピクチャ」または「非予測ソース・ピクチャ」という用語に言及したときには、仮にこれらの用語の修飾語として「フィールド」という語が特に使用されていなくても、これらの用語がフィールド・ピクチャを指すこともできることを理解されたい。
【0060】
この特定の例では、予測ソース・ピクチャ310、即ちフィールド・ピクチャI3tおよびI3bの何れか一方を使用して、任意の非予測ソース・ピクチャを予測する。フィールド・ピクチャI3t(予測ソース・ピクチャ310)が(表示順序が)ピクチャI3tより前の全ての非予測ソース・ピクチャ312を予測する、1つの適当な例を示す。更に、フィールド・ピクチャI3b(やはり予測ソース・ピクチャ310である)は、(表示順序が)ピクチャI3bより後の全ての非予測ソース・ピクチャ312を予測する。言うまでもなく、本発明は、この特定の例に限定されるわけではなく、その他の適当な予測方式を利用することができる。
【0061】
図5に示す方法500に戻って、ステップ516で、フィールド・ピクチャからなるGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号を、記憶媒体に記録する。この非プログレッシブ・ビデオ信号は、最終的に、ステップ517で再生する。
【0062】
判定ブロック518で、GOP内の非予測ソース(フィールド)ピクチャの数を変更するかどうかを判定する。変更を行わない場合には、ステップ517でこの方法500を再開する。変更を行う場合には、ステップ519でこの変更プロセスを実行する。図6Cを参照すると、図6BのGOP300が、複製フィールド・ピクチャがGOP300に挿入された状態で示してある。この特定の例では低速順方向トリック・モードについて述べているが、この変更ステップではピクチャをスキップする場合もあることを理解されたい。この特定のGOP300は、再生速度1/2Xの低速順方向トリック・モードのGOPとして示してある。即ち、各フィールド・ピクチャの複製がGOP300に挿入されており、これらのフィールド・ピクチャの複製自体も、フィールド・ピクチャとすることができる。図6Cに示すように、フィールド・ピクチャは、トップ・フィールド・ピクチャとその複製とが連続して表示され、その後にボトム・フィールド・ピクチャとその複製とが表示されるように表示される。
【0063】
例えば、フィールド・ピクチャB0tとその複製であるフィールド・ピクチャB0tdとが連続して表示され、その後にフィールド・ピクチャB0bとその複製であるフィールド・ピクチャB0bdとが表示される。従って、フィールド・ピクチャB0tおよびB0b内に移動オブジェクトが現れた場合に、複製フィールド・ピクチャを挿入しても、トップ・フィールド複製ピクチャB0tdが元のボトム・フィールド・ピクチャB0bおよびその複製B0bdより先に表示されるので、振動アーティファクトが生じない。フィールド・ピクチャ群をパリティの異なるその他のフィールド・ピクチャ群より先に表示するというこの表示方法は、予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312がフィールド・ピクチャに符号化されたときに可能となる。
【0064】
具体的には、非プログレッシブ・ピクチャをフィールド・ピクチャに符号化することにより、上述と同様の連続的な方式でフィールド・ピクチャを表示することが可能になる順序でフィールド・ピクチャを遠隔に位置するデコーダに送信することができる。例えば、トップ・フィールド・ピクチャおよびその複製を復号および表示を行うために遠隔デコーダに送信した後で、それに対応するボトム・フィールド・ピクチャおよびその複製を同じ遠隔デコーダに送信する。
【0065】
パリティの異なる複数のフィールド・ピクチャを順番に並べなければならないという表示要件に合わせるために、ピクチャ・ヘッダに示されるこれらのフィールド・ピクチャのパリティを変更する。例えば、トップ・フィールド・ピクチャが、ボトム・フィールド・ピクチャが通常表示される位置に位置している場合には、このトップ・フィールド・ピクチャが実際にはボトム・フィールド・ピクチャとして定義されるように、このトップ・フィールド・ピクチャのパリティを変更する。ただし、ピクチャのパリティを変更しても、ピクチャの内容に影響はない。
【0066】
より具体的な例を挙げると、トップ・フィールド・ピクチャである複製ピクチャB0tdのパリティは、このピクチャが実際にはボトム・フィールド・ピクチャとして定義されるように変更する。更に、トップ・フィールド・ピクチャが通常表示される位置にあるボトム・フィールド・ピクチャであるフィールド・ピクチャB0bのパリティは、ピクチャB0bがトップ・フィールド・ピクチャとして定義されるように変更する。この概念は、GOP300内の残りのフィールド・ピクチャにも適用する。ただし、これらのピクチャのパリティを変更するプロセスは、振動アーティファクトの解消には影響を及ぼさない。
【0067】
図6Cに示すトリック・モードのGOPに適当な予測技術についても説明する。フィールド・ピクチャI3tは、当該ピクチャI3tよりも(表示順序で)前に位置する任意の非予測ソース・ピクチャ312(複製フィールド・ピクチャも含む)を予測するために使用する。当業者なら理解するであろうが、ピクチャI3tは当該ピクチャI3tより前に位置する元の非予測ソース・ピクチャ312を予測するために使用されているので、これらの特定のピクチャを予測するためにピクチャI3tを使用することは有用である。更に、フィールド・ピクチャI3bdは、当該ピクチャI3bdよりも(表示順序で)後に位置する任意の非予測ソース・ピクチャ312を予測するために使用する。特定のピクチャのパリティの変更に関する上記の説明によれば、この例ではピクチャI3bdはボトム・フィールド・ピクチャとして定義され、ボトム・フィールド・ピクチャは、ピクチャI3より後の元の非ソース予測ピクチャ312を予測するために使用される使用されるタイプのピクチャであるので、ピクチャI3bdは、これらのピクチャを予測するのに有用である。
【0068】
この例の予測方式を更に改善するには、ピクチャP6tおよびP6tdをBピクチャB6tおよびB6tdに変換する。ここで、変換前の呼称は、括弧書きで示してある。当業者には明らかであろうが、これらのPフィールド・ピクチャをBフィールド・ピクチャに変換することにより、最後の2つのフィールド・ピクチャP6bおよびP6bdの予測に悪影響が及ぶことを防止する。PピクチャからBピクチャへの変換は、BピクチャからPピクチャへの変更として上述したプロセスと同様である。即ち、Pピクチャのピクチャ・ヘッダ内のパラメータ、picture_coding_type、full_pel_backward_vectorおよびbackward_f_codeを、Bピクチャの値に設定する。更に、macroblock_typeについての可変長コード、macroblock_quant、macroblock_motion_forward、macroblock_motion_backward、macroblock_pattern、macroblock_intra、spatial_temporal_weight_code_flagおよびpermitted_spatial_temporal_weight_classesを、Bピクチャの値に設定することができる。
【0069】
必要なら、GOP300に挿入された複製ピクチャのうち1つまたは複数を、ダミーBフィールド・ピクチャまたはダミーPフィールド・ピクチャにすることができ、これは、低速順方向トリック・モードおよび高速順方向トリック・モードの双方も含めたトリック・モード中にGOP300を含むビデオ信号のビット・レートを低下させる助けとなりうる。ダミーBフィールド・ピクチャまたはダミーPフィールド・ピクチャを追加することは、遠隔デコーダ・システムでは特に有用となることがある。
【0070】
図5の方法500に示す残りのステップは、図2の方法200に示すステップと同様である。従って、方法500のこれらのステップについては詳細に説明する必要はない。判定ブロック520で、GOP内の最後の非予測ソース・フィールド・ピクチャの対がスキップされていると判定された場合には、方法500は、判定ブロック522に進むことができる。スキップされていないと判定された場合には、この方法はジャンプ・サークルAを介して判定ブロック526から再開することができる。
【0071】
判定ブロック522で、直前の非予測ソース・フィールド・ピクチャの対がPフィールド・ピクチャであるかどうかを判定する。Pフィールド・ピクチャである場合には、この方法500は、ジャンプ・サークルAを介して判定ブロック526に進むことができる。Pフィールド・ピクチャでない場合には、ステップ524に示すように、直前の対の非予測ソース・フィールド・ピクチャを一対のPフィールド・ピクチャに変換する。ジャンプ・サークルAから判定ブロック526に進んで、GOP内のフィールド・ピクチャの表示指示を変更するかどうかを判定する。変更しない場合には、方法500はステップ530で終了する。フィールド・ピクチャの表示指示を変更する場合には、ステップ528でこの変更プロセスを実行する。最後に、ステップ530でこの方法を終了する。
【0072】
本明細書に開示の実施形態に関連して本発明について説明したが、上述の説明は例示を目的としたものであり、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行することができるシステムを示すブロック図である。
【図1B】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行することができる別のシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行する方法を示す流れ図である。
【図3】本発明の構成による特別なGOPの一例を示す図である。
【図4A】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップの一例を示す図である。
【図4B】本発明の構成による、図3に示す特別なGOPへの複製ピクチャの挿入の一例を示す図である。
【図4C】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップの別の例を示す図である。
【図4D】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップ、および任意の残りのピクチャの表示指示の変更の更に別の例を示す図である。
【図5】本発明の構成による、ビデオ信号を符号化して特別なGOPにし、順方向動作トリック・モードを実行する代替の方法を示す流れ図である。
【図6A】本発明の構成による、低速順方向トリック・モードのGOPを示す図である。
【図6B】本発明の構成による、フィールド・ピクチャを含むGOPを示す図である。
【図6C】本発明の構成による、フィールド・ピクチャを含む低速順方向トリック・モードのGOPを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明の構成は、一般にビデオ・システムに関し、特にディジタル符号化されたビデオ・シーケンスを記録または再生するビデオ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の家電製品市場では、ビデオの再生を容易にする装置の人気が高まっている。例えば、多くの消費者は、以前に録画した番組を見たり、好きな番組を録画したりする目的でディジタル・ビデオ・ディスク(DVD)のレコーダまたはプレーヤを購入している。通常、DVDレコーダまたはプレーヤは、当該レコーダまたはプレーヤが再生するディスクに記憶されたディジタル符号化されたマルチメディア・データを復号するためのMPEG(Moving Picture Expert Group)デコーダ(復号器)を内蔵している。復号されるMPEGビデオ信号は、複数のピクチャ群(GOP:Group Of Pictures)からなり、各GOPは、通常はイントラ(フレーム内)符号化画像(I(Intra)ピクチャ)、複数の予測符号化画像(P(Predictive)ピクチャ)、および複数の双方向予測符号化画像(B(Bi−predictive)ピクチャ)を含んでいる。
【0003】
ビデオ信号の再生中に、視聴者が特定のトリック・モードを実行したいと思うこともある。トリック・モード(trick mode)とは、通常速度でまたは順方向に再生を行わない任意のビデオ再生であると考えられる。例えば、高速順方向(fast−forward)トリック・モードを開始すれば、視聴者は幾つかのビデオ部分をより速く見ることができる。MPEGビデオ信号で高速順方向トリック・モードを実行するためには、DVDのデコーダは、ビデオ信号の各GOPに含まれる幾つかのピクチャをスキップする(読み飛ばす)。トリック・モードが高速になるほど、スキップする必要のある各GOP内のピクチャ数は増加する。一般に、連続したGOP内で双方向予測符号化画像(Bピクチャ)が最初にスキップされる。Bピクチャが全てスキップされた後に、予測符号化画像(Pピクチャ)がスキップされる。Pピクチャも、最終的には全てスキップされる。Pピクチャに関しては、GOPの末尾にあるPピクチャ(通常は、表示順序がGOP内で最後になるピクチャ)を最初にスキップして、その後に表示順序がその直前であるPピクチャをスキップしなければならない。このプロセスは、当該GOP内の(表示順序が)最後のPピクチャをスキップするようにして、Pピクチャが1つも残らなくなるまで続けることができる。必要なら、イントラ符号化画像(Iピクチャ)もスキップすることができ、この時点で当該GOP全体がスキップされる。
【0004】
表示順序に鑑みてBピクチャを最初にスキップし、その次にPピクチャをスキップするというこの特定のアルゴリズムの背後にある原理は、通常のGOPで利用される予測方式に基づいている。具体的には、Bピクチャはその他のピクチャの予測には使用されず、Bピクチャをスキップすることは、中程度または低程度のスピードアップを行うのに有用である。対照的に、Iピクチャは、GOP内のその他の全てのピクチャの予測に直接的にも間接的にも使用される。GOP内にIピクチャが1つしか存在しない場合には、GOP内のその他のピクチャの何れもスキップされない場合には、そのIピクチャを保持しなければならない。その他のピクチャを何れもスキップせずにIピクチャをスキップした場合には、残りのピクチャを正確に予測することが不可能になる。同様に、Pピクチャはその他のPピクチャの予測に使用され、その時のGOP内の最後のPピクチャ以外のPピクチャをスキップすると、表示順序でそのスキップしたPピクチャの後に表示される任意のピクチャの表示に悪影響が及ぶことになる。
【0005】
許容可能ではあるが、上述のアルゴリズムでは、ピクチャをスキップする特定の順序に応答して更なるマイクロプロセッサのプログラミングを行う必要がある。更に、このスキップ・アルゴリズムでは、ピクチャをスキップして最適な再生を行うことができない。例えば、視聴者が、通常の再生速度の2倍の速度でビデオを再生したいと思う場合には、ビデオ内のピクチャをスキップする最も望ましい方法は、ピクチャを1つおきにスキップする方法となる。しかし、通常のGOP構造では、上述のような制限があるためにこの方法でピクチャをスキップすることはできない。
【0006】
トリック・モードを実行すると、特にビデオ信号が非プログレッシブ・ピクチャを含み、遠隔(remote:リモート)デコーダ・システム内のデコーダがこのビデオ信号を復号している場合には、その他の問題が生じることもある。遠隔デコーダ・システムでは、非プログレッシブ・ピクチャを含むビデオ信号を記憶媒体に記録し、また記憶媒体から再生するために使用される構成要素は、デコーダを直接的に制御しない。即ち、遠隔デコーダ・システム内のデコーダは、パッシブ(受動的)デコーダと考えられる。このような構成で非プログレッシブ(非順次走査)ピクチャの繰返し表示を行うと、繰り返されるピクチャが移動オブジェクト(対象物)を含む場合に、表示に振動効果(vibration effect)が現れる可能性がある。この欠点について説明するために、非プログレッシブ・ピクチャを生成するために通常利用されるプロセスであるインタレース走査について簡単に説明する。
【0007】
多くのテレビジョンでは、インタレース走査技術を利用している。この方式では、ビデオ信号は、通常、所定数の水平線に分割される。各フィールド期間に、これらの線(ライン)のうちの2分の1だけが走査される。一般に、最初のフィールド期間の間に奇数番号の線(ライン)が走査され、次のフィールド期間の間に偶数番号の線(ライン)が走査される。各掃引(sweep)をフィールド(field)と呼び、2つのフィールドが組み合わさったときに、1つの完全なピクチャ(picture)またはフレーム(frame)が形成される。NTSCシステムでは、毎秒60個のフィールドが表示され、フレーム速度は毎秒30個となる。
【0008】
移動オブジェクト(対象物)がインタレース走査式テレビジョンの画面を横切って移動すると、各フィールドは、この移動オブジェクトの一部のみを表示する。このような部分表示になるのは、1つのフィールドではピクチャ全体の水平線が1つおきに表示されるからである。例えば、特定のフィールドnについては、奇数番号の水平線のみが走査され、フィールドn内に表示される移動オブジェクトの部分は、フィールドnで奇数番号の水平線が掃引される間に走査される部分である。次のフィールドであるフィールドn+1は、1/60秒後に生成され、同じピクチャの偶数番号の水平線を表示することになる。従って、フィールドn+1内に表示される移動オブジェクトの部分は、フィールドn+1で偶数番号の水平線が掃引される間に走査される部分である。各フィールドは時間的にずれているが、上記のようなフィールド表示速度であるために、このように順次表示されたフィールドは、人間の目には滑らかな動きとして知覚される。
【0009】
視聴者がトリック・モードを起動した場合、トリック・モード・ビデオ信号は、インタレース走査方式で記録されたピクチャである繰返しピクチャを含むことがある。例えば、視聴者が特定のピクチャについて低速順方向(slow−forward)トリック・モードを開始した場合には、このピクチャを、例えば遠隔デコーダを含むディジタル・テレビジョンに繰返し送信し、復号し、表示する。しかし、この繰返しピクチャの表示は、非プログレッシブ・ピクチャの通常表示に従って行われる。即ち、非プログレッシブ・ピクチャを構成するトップ・フィールド(top field)およびボトム・フィールド(bottom field)が交互に表示される。これらのフィールドは、低速順方向トリック・モードの再生速度に基づいて交互に表示される。例えば、1/3X(1Xは、通常の再生速度を表す)の再生速度では、各フィールドが交互に3回ずつ表示されることになる。
【0010】
インタレース走査方式で記録されたピクチャに移動オブジェクト(対象物)が現れる場合には、各フィールドは、この移動オブジェクトを1つの特定の位置に表示することになる。従って、低速順方向トリック・モードの間に1つのフレームまたはピクチャを構成する複数のフィールドが交互に表示されると、表示内の移動オブジェクトは表示内の一方の位置と他方の位置との間を速い速度で往復するので、実質的には移動オブジェクトが振動しているように見える。この振動は、各インタレース・フィールドが時間的にずれており、移動オブジェクトの現れる位置がフィールド毎に異なるために生じる。
【発明の開示】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、ディジタル・ビデオ信号を符号化する方法に関する。この方法は、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信するステップと、この非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ(prediction source picture)および少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャ(non−prediction source picture)を有する少なくとも1つのピクチャ群(GOP)にするステップとを含むことができる。全ての非予測ソース・ピクチャは少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている。
【0012】
更に、この方法は、非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録するステップと、非プログレッシブ・ビデオ信号を再生するステップとを含むことができる。また、この方法は、順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくともピクチャ群内の非予測ソース・ピクチャの数を変更して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップも含むことができる。
【0013】
一構成では、予測ソース・ピクチャは、イントラ符号化画像(Iピクチャ)にする。更に、非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を、双方向予測符号化画像(Bピクチャ)、または予測符号化画像(Pピクチャ)にする。例えば、双方向予測符号化ピクチャをそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像にする。
【0014】
本発明の一態様では、変更ステップは、ピクチャ群(GOP)内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含むことができる。或いは、変更ステップは、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製をピクチャ群に挿入して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含むことができる。
【0015】
別の態様では、少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャは、ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像にする。更に、この方法は、ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、該直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化画像に変換するステップを更に含むことができる。
【0016】
別の構成では、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャは、それぞれ表示指示を含むことができ、この方法は、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するステップを更に含むことができる。例えば、表示指示は、時間的参照フィールドとすることができる。
【0017】
また、この方法は、遠隔デコーダ・システムにおいて受信ステップおよび符号化ステップを実行するステップを含むことができることも理解されたい。更に、この方法は、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部分を符号化してフィールド・ピクチャにするステップを含むことができる。
【0018】
また、本発明は、ディジタル・ビデオ信号を符号化するシステムにも関する。このシステムは、非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするプロセッサを含んでいる。全ての非予測ソース・ピクチャは、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている。更に、このシステムは、非プログレッシブ・ビデオ信号を復号するデコーダを含んでいる。また、このシステムは、上述の方法を実施するために適当なソフトウェアおよび回路も含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の構成による様々な先進的な動作機能を実施するシステム100を、図1Aにブロック図として示す。しかし、本発明は、図1Aに示す特定のシステムに限定されるものではなく、本発明は、ビデオ信号を受信し、この信号を処理し、この信号をディスプレイ・デバイスなど任意の適当な構成要素に対して出力することができるその他任意のシステムで実施することができる。また、システム100がデータを読み取る、またはデータを書き込む記憶媒体は、いかなる特定のタイプの記憶媒体にも制限されず、ディジタル符号化データを記憶することができる任意の記憶媒体をシステム100と共に使用することができる。
【0020】
システム100は、入来するビデオ信号を符号化するエンコーダ(符号器)110と、このビデオ信号を様々な技術で符号化するようエンコーダ110に命令するマイクロプロセッサ112とを備えることができる。ビデオ信号を符号化する様々な技術のうちの幾つかについては、後述する。本発明では、エンコーダ110およびマイクロプロセッサ112の全体または一部を、プロセッサ114とみなすことができる。エンコーダ110は、マイクロプロセッサ112と同じ装置内に位置していても良いし、或いはマイクロプロセッサ112を収容した装置とは遠隔に配置されたデバイス内に配置しても良い。離れた場所に遠隔に配置される場合には、エンコーダ110は、必ずしもマイクロプロセッサ112により制御されるとは限らない。
【0021】
また、システム100は、記憶媒体118からデータを読み取り、且つこれにデータを書き込むための制御装置116も備えることができる。例えば、データは、ディジタル符号化ビデオ信号とすることができる。また、システム100は、符号化ビデオ信号が記憶媒体118から読み取られたときにこの信号を復号し、復号したビデオ信号をディスプレイ・デバイスなど適当な構成要素に転送するデコーダ120も有することができる。デコーダ120は、マイクロプロセッサ112および制御装置116を収容したのと同じ装置内に取り付けても良いし、或いは、遠隔デコーダ・システム内に見られるデバイスなど別のデバイス内に取り付けても良い。
【0022】
また、マイクロプロセッサ112が(上述のように)エンコーダ110の動作を制御し、また制御装置116およびデコーダ120の動作を制御できるようにするために、制御インタフェースおよびデータ・インタフェースを設けることもできる。マイクロプロセッサ112により従来の動作が行われるように適当なソフトウェアまたはファームウェアをメモリに記憶する。更に、本発明の構成によれば、マイクロプロセッサ112にプログラム・ルーチンを与えることもできる。
【0023】
動作中には、エンコーダ110は、入来する非プログレッシブ・ビデオ信号を受信し、符号化する。当技術分野で既知の通り、このタイプのビデオ信号は、非順次的に走査されたピクチャ、即ちインタレース走査技術で生成されたピクチャで構成される。本発明の構成によれば、マイクロプロセッサ112は、入来するビデオ信号を、トリック・モードを実行するのに特に有用な1つまたは複数のGOPに符号化するようエンコーダ110に命令する。このようなGOPの例の幾つかを、以下に挙げる。次いで、エンコーダ110は、符号化したビデオ信号を制御装置116に転送することができ、制御装置116は、この信号を記憶媒体118に記録する。エンコーダ110が遠隔に位置する場合には、エンコーダ110は、入来する非プログレッシブなビデオ信号を符号化することができるが、必ずしもマイクロプロセッサ112から符号化命令を受信するとは限らない。
【0024】
マイクロプロセッサ112が再生コマンドを受信した場合には、マイクロプロセッサ112は、記憶媒体118から符号化ビデオ信号を読み取るよう制御装置116に命令する。制御装置116は、この信号をマイクロプロセッサ112に転送することができ、マイクロプロセッサ112は、この信号をデコーダ120に送信する。デコーダ120は、ビデオ信号を復号し、適当なデバイスで表示するためにこの信号を出力する。マイクロプロセッサ112がトリック・モード・コマンドを受信した場合には、マイクロプロセッサ112は、GOP内の複数のピクチャをスキップする、またはGOPのピクチャを反復する。
【0025】
上述のように、復号ステップを実行するデコーダ120がマイクロプロセッサ112を収容している装置とは別のデバイス内に位置している例も幾つか考えられる。このような構成、即ち遠隔デコーダ・システムの一例を、図1Bに示す。この図では、デコーダ120は、マイクロプロセッサ112を収容することができるマルチメディア・デバイス124から分離したディスプレイ・デバイス122内にある。この場合には、デコーダ120が、マイクロプロセッサ112の制御の下にないこともある。この状態でも、依然としてこのシステム100内でトリック・モードを実行することができ、マイクロプロセッサ112は、ディスプレイ・デバイス122内のデコーダ120にピクチャを送信する前に、ビデオ信号中のピクチャを削除する、またはピクチャの複製をビデオ信号に挿入することができる。このタイプのシステムでは、エンコーダ110も遠隔に位置することができることを理解されたい。
【0026】
別の実施形態では、符号化ステップの間に、非プログレッシブ・ビデオ信号中のピクチャを符号化して、上述の振動アーティファクトを回避するのに役立つフィールド・ピクチャにすることができる。非プログレッシブ・ピクチャを符号化してフィールド・ピクチャにすることにより、マイクロプロセッサ112は、振動問題を抑制する助けとなるような方法で、フィールド・ピクチャを遠隔に位置するデコーダに送信することができるようになる。このプロセスについては後述する。
【0027】
図1Aおよび図1Bに関連して述べた構成の何れにおいても、符号化プロセス中に作成されるGOPにより、順方向トリック・モードの効率的な実施が容易になる。以下では、本発明の全体的な動作について詳細に述べる。
【0028】
図2を参照すると、特別なGOPを用いて非プログレッシブ・ビデオ信号のトリック・モードを実行する1つの方法を実施する方法200が示してある。この方法200は、ビデオ信号を符号化および復号することができる任意の適当なシステムで実施することができる。この方法200は、ステップ210に示すように開始する。ステップ212で、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信する。上述のように、非プログレッシブ・ビデオ信号は、非漸進的に走査されたピクチャ、即ちインタレース走査技術で操作されたピクチャを含んでいる。ステップ214に示すように、この非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのGOPにする。一構成では、全ての非予測ソース・ピクチャを予測ソース・ピクチャから予測することができ、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されることがないようになっている。
【0029】
図3を参照すると、このプロセスの一例が示してある。この特定の構成では、ビデオ信号を符号化して、1つまたは複数のGOP300にする。GOP300は、表示順序で示してある。各GOP300は、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ310と、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャ312とを含むことができる。これらのピクチャは、少なくともトップ・フィールドおよびボトム・フィールドを有する非プログレッシブ・ピクチャである。これらのピクチャは完全な形態で示してあり、この図では、それぞれのフィールドに分離した状態では示していない。予測ソース・ピクチャは、別のピクチャからは予測されないが、GOP内の他のピクチャを予測するために使用することができる、GOP内のピクチャである。更に、非予測ソース・ピクチャは、当該GOP内の予測ソース・ピクチャから予測することができる、GOP内の任意のピクチャとする。
【0030】
例えば、予測ソース・ピクチャ310をI(イントラ)ピクチャとし、非予測ソース・ピクチャ312をB(双方向予測)ピクチャおよび/またはP(予測)ピクチャとする。各非予測ソース・ピクチャ312は、予測ソース・ピクチャ310から予測する。これは、この例で言えば、各BピクチャおよびPピクチャがIピクチャから予測されるということである。Pピクチャが非予測ソース・ピクチャ312として働くので、非予測ソース・ピクチャ312が、Bピクチャなど、その他のピクチャを予測するのに利用することが出来ないピクチャに限定されないことは明らかであろう。
【0031】
しかし、本発明の構成によれば、各非予測ソース・ピクチャ312は、予測ソース・ピクチャ310からしか予測することができない。一構成では、Bピクチャを一方向予測画像とし、Iピクチャより前(表示順序)のBピクチャは、Iピクチャから逆方向に予測することができ、Iピクチャより(表示順序)後のBピクチャはIピクチャから順方向に予測することができるようにする。予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312に付した下付き数字は、これらの各ピクチャが通常の再生速度で表示される順序(当該GOP内におけるその他のピクチャとの相対的な順序)を示している。
【0032】
上述のように、GOP300は表示順序で示してある。この例ではピクチャI3である予測ソース・ピクチャ310を最初にデコーダに送信し、その後に予測ソース・ピクチャ310から予測される非予測ソース・ピクチャ312を送信することができるので、送信順序は表示順序とは若干異なる。
【0033】
本発明は、本発明の構成によるGOP構造の単なる一例を表しているだけであり、これらの特定のGOP300に限定されるものではないことに留意することは重要である。実際に、その中に含まれる全ての非予測ソース・ピクチャを当該GOP内の予測ソース・ピクチャから予測することができる任意のGOPが、本発明の構成に含まれるものとする。更に、図3には、1つの予測ソース・ピクチャ310および6個の非予測ソース・ピクチャ312をそれぞれ有する2つのGOP300しか示していないが、受信されるビデオ信号は、任意の適当な数の予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312を有する任意の適当な数のGOP300に符号化することができることを理解されたい。
【0034】
また、GOP300内に複数の予測ソース・ピクチャ310が存在する場合には、GOP300内の任意のBピクチャを両方向に予測する。例えば、複数の予測ソース・ピクチャ310をGOP300内に位置づけ、非予測ソース・ピクチャ312の幾つかをこれらの予測ソース・ピクチャ310から予測する。従って、予測ソース・ピクチャ310を、これらの予測ソース・ピクチャ310に依存してその予測が行われる非予測ソース・ピクチャ312より先にデコーダに送信することができる。
【0035】
方法200に戻ると、ステップ215で、これらのGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号を、適当な記憶媒体に記録する。一度記録されたら、これらのGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号は、ステップ216に示すように再生する。判定ブロック217で、GOP内の非予測ソース・ピクチャの数を変更するかどうかを判定する。例えば、この変更は、高速順方向や低速順方向などの順方向トリック・モード・コマンドに応答して行うことができる。変更が行われない場合には、ステップ216で方法200を再開する。変更を行う場合には、ステップ218で変更プロセスを実行する。ステップ218で行われる動作では、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換する。幾つかの例を、図4Aから図4Dに示す。ここでも、図4Aから図4Dに示すピクチャは、完全な形態で示される非プログレッシブ・ピクチャである(フィールドに分離されていない)。
【0036】
図4Aを参照すると、図3に最初に示したように、各GOP300は、幾つかの非予測ソース・ピクチャ312が除去またはスキップされた状態で示してある。具体的には、左側のGOP300では、ピクチャB0、B2、B4およびP6をスキップすることができ、右側のGOP300では、B1、B4およびP6をスキップする。これらの非予測ソース・ピクチャ312をスキップすることにより、再生速度を高めることができる。ここで、スキップされる非予測ソース・ピクチャ312の数は、2つのGOP300に含まれる総ピクチャの2分の1であるが、この数が、通常の再生速度の2倍の再生速度、即ち2X(1Xが、通常の再生速度(1倍)を表す)と関係している。
【0037】
本発明の構成によれば、GOP300内の非予測ソース・ピクチャ312のうちのどのピクチャを任意の順序でスキップしても、GOP300内の残りの任意の非予測ソース・ピクチャ312の予測に影響を及ぼすことなく、ビデオ信号の再生速度を高めることができる。この機能は、上述の符号化プロセスにより可能になるものである。例えばMPEG規格に従ってGOP300を配置するステップについては、後述する。
【0038】
言うまでもなく、本発明は図4Aに関連して述べた例に限定されるものではなく、全ての非予測ソース・ピクチャ312を任意の順序でスキップすることができるということは、予測ソース・ピクチャ310から非予測ソース・ピクチャ312が予測されるその他の任意のGOPについても当てはまることを理解されたい。また、GOP300全体をスキップして、より高速の再生を行うこともできる。
【0039】
図2に戻ると、変更ステップ218は、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製をGOP300に挿入して、非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを更に含むことができる。このような動作の一例を、図4Bに示す。ここで、各予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の複製を、GOP300に挿入することができる(便宜上、図3に示すGOP300のうち1つのみを示す)。この特定の例では、1/2X(1/2倍)の再生速度を生じることができる。下付き文字「d」は、それが付されたピクチャが、その直前のピクチャの複製であることを表している。
【0040】
元の非予測ソース・ピクチャ312と同様に、これらのピクチャの複製も、予測ソース・ピクチャ310から予測することができる(MPEG規格によれば、GOP300内の最後のピクチャ、ここでは複製ピクチャP6dは、その直前のPピクチャ、この場合ではピクチャP6から予測することができる)。更に、元の非予測ピクチャ312およびそれらの複製は、予測ソース・ピクチャ310の複製から予測することもできる。
【0041】
図4Bに示す例は、次のように説明される。つまり、元の予測ソース・ピクチャ310、即ちピクチャI3より前(表示順序)の全ての非予測ソース・ピクチャ312およびその複製は、ピクチャI3から予測する。更に、元の予測ソース・ピクチャ310の複製、即ちピクチャI3dより後(表示順序)の元の非予測ソース・ピクチャ312およびその複製は、複製ピクチャI3dから予測することができる(複製ピクチャP6dは例外とする)。ただし、この特定の構成は単なる例示であり、非予測ソース・ピクチャ312およびそれらの複製は、予測ソース・ピクチャ310の任意の複製も含めてその他の任意の適当な予測ソース・ピクチャ310から予測することができることを理解されたい。
【0042】
別の構成では、GOP300に挿入された複製ピクチャのうちの1つまたは複数を、ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャとすることができる。ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャとは、そのダミー・ピクチャの動きベクトルがゼロに設定され、その残りの信号がゼロに設定される、または符号化されない、BピクチャまたはPピクチャである。例えば、GOP300内の予測ソース・ピクチャ310(ピクチャI3)の複製を、ピクチャI3dなど、別のIピクチャではなく、ダミーPピクチャとする。同様に、最後の非予測ピクチャ312(ピクチャP6)の複製を、複製ピクチャP6dなど、従来のPピクチャではなくダミーPピクチャにすることもできる。トリック・モード中にダミーBピクチャまたはダミーPピクチャを使用することにより、遠隔デコーダ・システムでは必要となることもあるビデオ信号のビット・レートの低下を実現することができる。また、ピクチャをスキップすることにより実際にビデオ信号のビット・レートを高めることができるので、特に遠隔デコーダ・システムでは、ピクチャがスキップされたときに、ダミーBピクチャまたはダミーPピクチャをGOP300に挿入することができることを理解されたい。
【0043】
図2に戻って、判定ブロック220で、GOP内の最後の非予測ソース・ピクチャがスキップされたかどうかを判定する。スキップされていない場合には、ジャンプ・サークルA(jump circle A)を介して判定ブロック226で方法200を再開する。スキップされている場合には、判定ブロック222で、GOP内で表示順序がその直前の非予測ソース・ピクチャがPピクチャであるかどうかを判定する。Pピクチャである場合には、方法200は、ジャンプ・サークルAを介して判定ブロック226に進むことができる。Pピクチャでない場合には、ステップ224に示すように、その直前の非予測ソース・ピクチャをPピクチャに変換する。
【0044】
この動作の一例を、図4Cに示す。MPEGビデオの仕様によれば、GOP内の最後のピクチャがPピクチャまたはIピクチャであることが必要である。従って、非予測ソース・ピクチャ312であるGOP300内のピクチャP6がトリック・モード中にスキップされた場合、GOP300内の最後のピクチャは、(スキップされていなければ)ピクチャB5となり、MPEG規格に沿わなくなる。MPEGの要件を満たすために、直前の非予測ソース・ピクチャ312、この場合はピクチャB5を、Pピクチャ、即ちピクチャP5に変換することができる。
【0045】
Bピクチャは、Bピクチャのピクチャ・ヘッダ内にあるパラメータ、picture_coding_type、full_pel_backward_vectorおよびbackward_f_codeを、Pピクチャの値に設定することにより、Pピクチャに変換する。更に、macroblock_typeについての可変長コード、macroblock_quant、macroblock_motion_forward、macroblock_motion_backward、macroblock_pattern、macroblock_intra、spatial_temporal_weight_code_flagおよびpermitted_spatial_temporal_weight_classesを、Pピクチャの値に設定する。
【0046】
このプロセスにより、このピクチャをPピクチャとして復号するようデコーダに命令することができる。従って、本発明の構成によれば、GOP内の最後のピクチャはPピクチャでなければならないというMPEG要件に背くことなく、GOP300内の最後のピクチャをスキップする。別の例として、図4Aを参照すると、両GOP300内のピクチャB5を、MPEG規格に合うようにPピクチャに変換する。
【0047】
図2の方法200に戻って、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャは、表示指示を含むことができる。ジャンプ・サークルAから判定ブロック226に進んで、これらのピクチャの表示指示を変更すると判定された場合には、この変更プロセスをステップ228で実行する。これらのピクチャの何れか1つがスキップまたは複製される場合には、これらの表示指示の変更は、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの所期の表示順序を反映して行うことができることに留意されたい。表示指示を変更しない場合には、ステップ230で方法200を終了する。
【0048】
一構成では、表示指示は、時間的参照フィールドとすることができる。時間的参照フィールドは、通常は、ディジタル符号化ピクチャのピクチャ・ヘッダに位置する10ビット・フィールドである。デコーダによっては、ビデオ信号内の特定のピクチャが、当該ビデオ信号内のその他のピクチャとの関係においていつ表示されるかを判定するのに、時間的参照フィールドに依拠するものもある。このフィールドは、通常は整数値を有する。
【0049】
例えば、再度図3を参照すると、各GOP300は7個のピクチャを含んでいる。各GOP300内の非プログレッシブ・ピクチャに付された下付き数字は、それぞれのピクチャの時間的参照フィールドの整数値に対応する。例えば、第1の非予測ソース・ピクチャ312、即ちピクチャB0の時間的参照フィールドの整数値を0とする。この0という数値は、この特定のピクチャが、各GOP300内で最初に表示されることを示している。次に表示されるピクチャであるピクチャB1の時間的参照フィールドは、整数値1を有する。このように、その後に表示される各ピクチャの時間的参照フィールドの整数値を、その時間的参照フィールドが整数値6を有することができるピクチャP6まで、1ずつ大きくする。便宜上、「時間的参照フィールドの整数値」という表現を、「整数値」とすることもできる。
【0050】
しかし、例えば、非予測ソース・ピクチャ312がスキップされた場合には、元の時間的参照フィールドに基づく表示順序が有効ではなくなる。従って、スキップされたピクチャの後に続く予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の時間的参照フィールドの整数値を変更して、適当な表示順序を示すようにする。この機能は、予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製がGOP300に挿入された場合にも適用する。
【0051】
例えば、右側のGOP300のピクチャB1がスキップされた場合には、このピクチャの後に続く予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312の整数値を1ずつ減少させることができる。従って、ピクチャB2の時間的参照フィールドの整数値は2から1に変更することができ、ピクチャI3の時間的参照フィールドの整数値は3から2に変更することができ、以下同様に変更を行うことができる。この変更プロセスは、右側のGOP300の末端に到達するまで継続することができ、この変更プロセスにより、このGOP300内の残りのピクチャが適当な順序で表示されることを保証する。
【0052】
従って、GOP内の予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312がスキップされるたびに、スキップされたピクチャの後に続く当該GOP内の残りのピクチャの時間的参照フィールド(temporal reference field)の整数値を1ずつ減少させることができる。その結果を図4Dに示す。この図では、新しい整数値を示し、スキップされたピクチャB1は輪郭を破線で示し、以前の整数値は括弧書きで示してある。同様に、予測ソース・ピクチャ310または非予測ソース・ピクチャ312の複製が、GOP300に挿入されるたびに、挿入された複製の後に続くピクチャの整数値を1ずつ増加させることができる。
【0053】
本発明はこれらの特定の例に限定されるわけではなく、所期の表示順序を反映するように関連のある時間的参照フィールドの整数値を変更するその他の方法を、その他の任意の適当な形態で実行することができることを理解されたい。更に、本発明は、時間的参照フィールドの使用に限定されるわけではなく、上述の実施形態の何れにおいても、その他の任意の適当な表示指示を変更して所期の表示順序を反映することができることに留意されたい。図2に戻って、方法200はステップ230で終了する。
【0054】
図5を参照すると、特別なGOPを使用して非プログレッシブ・ビデオ信号に対してトリック・モードを実行する別の方法を実施する方法500が示してある。図2に示す方法200と同様に、この方法500は、ステップ510で開始することができ、ステップ512に示すように、非プログレッシブ・ビデオ信号を受信する。また、方法200のステップ214と同様に、非プログレッシブ・ビデオは、ステップ514に示すように、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有し、全ての非予測ソース・ピクチャを予測ソース・ピクチャから予測することができる、少なくとも1つのGOPに符号化する。
【0055】
この構成では、符号化された非プログレッシブ・ビデオ信号は、最終的には遠隔デコーダ・システムで復号する。上述のように、遠隔デコーダ・システムでは、非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化し、また記憶媒体から読み取るために使用される構成要素は、デコーダを制御しない。このデコーダを制御しないことにより、特に低速順方向トリック・モードの際の非プログレッシブ・ビデオの表示に関する問題が生じることがある。
【0056】
例えば、図6Aは、図3に示すGOP300を、非プログレッシブ・ピクチャをそれぞれのフィールドに分離した状態で示す図である。この例で利用される予測方式は、図3に関連して述べたものと同じであるため、ここではこれ以上説明しない。この場合、各非予測ソース・ピクチャ312および予測ソース・ピクチャ310は、トップ・フィールドおよびボトム・フィールドを有する。下付き文字「t」は、それが付された特定のフィールドがトップ・フィールドであることを示し、同様に、下付き文字「b」は、それが付された特定のフィールドがボトム・フィールドであることを示している。ここで、GOP300は、GOP300内の各ピクチャの複製が追加されている低速順方向トリック・モードのGOPを表している。下付き文字「d」は、特定のフィールドが複製フィールドであることを示している。例えば、ピクチャB0は、トップ・フィールドB0tおよびボトム・フィールドB0bを含むことができ、ピクチャB0の複製であるピクチャB0dは、トップ・フィールドB0tdおよびボトム・フィールドB0bdを有する。
【0057】
図示のように、トップ・フィールドおよびボトム・フィールドは交互に表示される。これらのフィールド内に移動オブジェクトが現れた場合、このようなフィールドの表示方法により、このオブジェクトは振動しているように見える。例えば、ある移動オブジェクトが、フィールドB0t内である位置に現れ、フィールドB0b内で別の位置に現れた場合、複製フィールドB0tdが表示されたときに、このオブジェクトは以前の位置(ピクチャB0tに表示される位置)に戻るように見えることになる。次のフィールド、つまり複製フィールドB0bdが表示されたとき、このオブジェクトは、ピクチャB0b内に最初に表示された位置に再度飛ぶように見えることになる。従って、複製ピクチャがGOP300に追加されると、移動オブジェクトは振動するように見える。この振動効果は、1つまたは複数のGOP300に複製ピクチャが挿入される限り続くことになる。
【0058】
方法500に戻って、遠隔デコーダ・システムで特定のトリック・モードを開始したときに発生する可能性のある振動アーティファクトを解決するために、別の符号化ステップを実行することができる。ステップ515で、非予測ソース・ピクチャおよび予測ソース・ピクチャを符号化して、フィールド・ピクチャにする。以下で説明するように、これらのピクチャをフィールド・ピクチャに符号化することにより、振動問題を抑制する助けとなるような方法でフィールド・ピクチャの表示を実行する。
【0059】
この符号化ステップの一例を、図6Bに示す。この例では、図3で最初に説明したGOP300は、元の非プログレッシブ・ピクチャをフィールド・ピクチャに符号化した状態で示してある。例えば、最初にフィールドB0tおよびB0bを含んでいたピクチャB0は、符号化されてフィールド・ピクチャB0tおよびB0bになっている。最初に非予測ソース・ピクチャ312を構成していたフィールド・ピクチャも、非予測ソース・ピクチャ312と考えることができる。同様に、最初に予測ソース・ピクチャ310を構成していたフィールド・ピクチャも、予測ソース・ピクチャ310と考えることができる。従って、本発明では、「予測ソース・ピクチャ」または「非予測ソース・ピクチャ」という用語に言及したときには、仮にこれらの用語の修飾語として「フィールド」という語が特に使用されていなくても、これらの用語がフィールド・ピクチャを指すこともできることを理解されたい。
【0060】
この特定の例では、予測ソース・ピクチャ310、即ちフィールド・ピクチャI3tおよびI3bの何れか一方を使用して、任意の非予測ソース・ピクチャを予測する。フィールド・ピクチャI3t(予測ソース・ピクチャ310)が(表示順序が)ピクチャI3tより前の全ての非予測ソース・ピクチャ312を予測する、1つの適当な例を示す。更に、フィールド・ピクチャI3b(やはり予測ソース・ピクチャ310である)は、(表示順序が)ピクチャI3bより後の全ての非予測ソース・ピクチャ312を予測する。言うまでもなく、本発明は、この特定の例に限定されるわけではなく、その他の適当な予測方式を利用することができる。
【0061】
図5に示す方法500に戻って、ステップ516で、フィールド・ピクチャからなるGOPを含む非プログレッシブ・ビデオ信号を、記憶媒体に記録する。この非プログレッシブ・ビデオ信号は、最終的に、ステップ517で再生する。
【0062】
判定ブロック518で、GOP内の非予測ソース(フィールド)ピクチャの数を変更するかどうかを判定する。変更を行わない場合には、ステップ517でこの方法500を再開する。変更を行う場合には、ステップ519でこの変更プロセスを実行する。図6Cを参照すると、図6BのGOP300が、複製フィールド・ピクチャがGOP300に挿入された状態で示してある。この特定の例では低速順方向トリック・モードについて述べているが、この変更ステップではピクチャをスキップする場合もあることを理解されたい。この特定のGOP300は、再生速度1/2Xの低速順方向トリック・モードのGOPとして示してある。即ち、各フィールド・ピクチャの複製がGOP300に挿入されており、これらのフィールド・ピクチャの複製自体も、フィールド・ピクチャとすることができる。図6Cに示すように、フィールド・ピクチャは、トップ・フィールド・ピクチャとその複製とが連続して表示され、その後にボトム・フィールド・ピクチャとその複製とが表示されるように表示される。
【0063】
例えば、フィールド・ピクチャB0tとその複製であるフィールド・ピクチャB0tdとが連続して表示され、その後にフィールド・ピクチャB0bとその複製であるフィールド・ピクチャB0bdとが表示される。従って、フィールド・ピクチャB0tおよびB0b内に移動オブジェクトが現れた場合に、複製フィールド・ピクチャを挿入しても、トップ・フィールド複製ピクチャB0tdが元のボトム・フィールド・ピクチャB0bおよびその複製B0bdより先に表示されるので、振動アーティファクトが生じない。フィールド・ピクチャ群をパリティの異なるその他のフィールド・ピクチャ群より先に表示するというこの表示方法は、予測ソース・ピクチャ310および非予測ソース・ピクチャ312がフィールド・ピクチャに符号化されたときに可能となる。
【0064】
具体的には、非プログレッシブ・ピクチャをフィールド・ピクチャに符号化することにより、上述と同様の連続的な方式でフィールド・ピクチャを表示することが可能になる順序でフィールド・ピクチャを遠隔に位置するデコーダに送信することができる。例えば、トップ・フィールド・ピクチャおよびその複製を復号および表示を行うために遠隔デコーダに送信した後で、それに対応するボトム・フィールド・ピクチャおよびその複製を同じ遠隔デコーダに送信する。
【0065】
パリティの異なる複数のフィールド・ピクチャを順番に並べなければならないという表示要件に合わせるために、ピクチャ・ヘッダに示されるこれらのフィールド・ピクチャのパリティを変更する。例えば、トップ・フィールド・ピクチャが、ボトム・フィールド・ピクチャが通常表示される位置に位置している場合には、このトップ・フィールド・ピクチャが実際にはボトム・フィールド・ピクチャとして定義されるように、このトップ・フィールド・ピクチャのパリティを変更する。ただし、ピクチャのパリティを変更しても、ピクチャの内容に影響はない。
【0066】
より具体的な例を挙げると、トップ・フィールド・ピクチャである複製ピクチャB0tdのパリティは、このピクチャが実際にはボトム・フィールド・ピクチャとして定義されるように変更する。更に、トップ・フィールド・ピクチャが通常表示される位置にあるボトム・フィールド・ピクチャであるフィールド・ピクチャB0bのパリティは、ピクチャB0bがトップ・フィールド・ピクチャとして定義されるように変更する。この概念は、GOP300内の残りのフィールド・ピクチャにも適用する。ただし、これらのピクチャのパリティを変更するプロセスは、振動アーティファクトの解消には影響を及ぼさない。
【0067】
図6Cに示すトリック・モードのGOPに適当な予測技術についても説明する。フィールド・ピクチャI3tは、当該ピクチャI3tよりも(表示順序で)前に位置する任意の非予測ソース・ピクチャ312(複製フィールド・ピクチャも含む)を予測するために使用する。当業者なら理解するであろうが、ピクチャI3tは当該ピクチャI3tより前に位置する元の非予測ソース・ピクチャ312を予測するために使用されているので、これらの特定のピクチャを予測するためにピクチャI3tを使用することは有用である。更に、フィールド・ピクチャI3bdは、当該ピクチャI3bdよりも(表示順序で)後に位置する任意の非予測ソース・ピクチャ312を予測するために使用する。特定のピクチャのパリティの変更に関する上記の説明によれば、この例ではピクチャI3bdはボトム・フィールド・ピクチャとして定義され、ボトム・フィールド・ピクチャは、ピクチャI3より後の元の非ソース予測ピクチャ312を予測するために使用される使用されるタイプのピクチャであるので、ピクチャI3bdは、これらのピクチャを予測するのに有用である。
【0068】
この例の予測方式を更に改善するには、ピクチャP6tおよびP6tdをBピクチャB6tおよびB6tdに変換する。ここで、変換前の呼称は、括弧書きで示してある。当業者には明らかであろうが、これらのPフィールド・ピクチャをBフィールド・ピクチャに変換することにより、最後の2つのフィールド・ピクチャP6bおよびP6bdの予測に悪影響が及ぶことを防止する。PピクチャからBピクチャへの変換は、BピクチャからPピクチャへの変更として上述したプロセスと同様である。即ち、Pピクチャのピクチャ・ヘッダ内のパラメータ、picture_coding_type、full_pel_backward_vectorおよびbackward_f_codeを、Bピクチャの値に設定する。更に、macroblock_typeについての可変長コード、macroblock_quant、macroblock_motion_forward、macroblock_motion_backward、macroblock_pattern、macroblock_intra、spatial_temporal_weight_code_flagおよびpermitted_spatial_temporal_weight_classesを、Bピクチャの値に設定することができる。
【0069】
必要なら、GOP300に挿入された複製ピクチャのうち1つまたは複数を、ダミーBフィールド・ピクチャまたはダミーPフィールド・ピクチャにすることができ、これは、低速順方向トリック・モードおよび高速順方向トリック・モードの双方も含めたトリック・モード中にGOP300を含むビデオ信号のビット・レートを低下させる助けとなりうる。ダミーBフィールド・ピクチャまたはダミーPフィールド・ピクチャを追加することは、遠隔デコーダ・システムでは特に有用となることがある。
【0070】
図5の方法500に示す残りのステップは、図2の方法200に示すステップと同様である。従って、方法500のこれらのステップについては詳細に説明する必要はない。判定ブロック520で、GOP内の最後の非予測ソース・フィールド・ピクチャの対がスキップされていると判定された場合には、方法500は、判定ブロック522に進むことができる。スキップされていないと判定された場合には、この方法はジャンプ・サークルAを介して判定ブロック526から再開することができる。
【0071】
判定ブロック522で、直前の非予測ソース・フィールド・ピクチャの対がPフィールド・ピクチャであるかどうかを判定する。Pフィールド・ピクチャである場合には、この方法500は、ジャンプ・サークルAを介して判定ブロック526に進むことができる。Pフィールド・ピクチャでない場合には、ステップ524に示すように、直前の対の非予測ソース・フィールド・ピクチャを一対のPフィールド・ピクチャに変換する。ジャンプ・サークルAから判定ブロック526に進んで、GOP内のフィールド・ピクチャの表示指示を変更するかどうかを判定する。変更しない場合には、方法500はステップ530で終了する。フィールド・ピクチャの表示指示を変更する場合には、ステップ528でこの変更プロセスを実行する。最後に、ステップ530でこの方法を終了する。
【0072】
本明細書に開示の実施形態に関連して本発明について説明したが、上述の説明は例示を目的としたものであり、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1A】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行することができるシステムを示すブロック図である。
【図1B】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行することができる別のシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の構成による、ビデオ信号を特別なGOPに符号化し、順方向動作トリック・モードを実行する方法を示す流れ図である。
【図3】本発明の構成による特別なGOPの一例を示す図である。
【図4A】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップの一例を示す図である。
【図4B】本発明の構成による、図3に示す特別なGOPへの複製ピクチャの挿入の一例を示す図である。
【図4C】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップの別の例を示す図である。
【図4D】本発明の構成による、図3に示す特別なGOP内でのピクチャのスキップ、および任意の残りのピクチャの表示指示の変更の更に別の例を示す図である。
【図5】本発明の構成による、ビデオ信号を符号化して特別なGOPにし、順方向動作トリック・モードを実行する代替の方法を示す流れ図である。
【図6A】本発明の構成による、低速順方向トリック・モードのGOPを示す図である。
【図6B】本発明の構成による、フィールド・ピクチャを含むGOPを示す図である。
【図6C】本発明の構成による、フィールド・ピクチャを含む低速順方向トリック・モードのGOPを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル・ビデオ信号を符号化する方法であって、
非プログレッシブ・ビデオ信号を受信するステップと、
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするステップと、を含み、
全ての非予測ソース・ピクチャが少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている、前記方法。
【請求項2】
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録するステップと、
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を再生するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくとも前記ピクチャ群内の非予測ソース・ピクチャの数を変更し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予測ソース・ピクチャが、イントラ符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、双方向予測符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、予測符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記双方向予測符号化画像がそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記変更ステップが、前記ピクチャ群内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記変更ステップが、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製を前記ピクチャ群に挿入して、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャが、前記ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像であり、前記方法が、前記ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、前記直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化画像に変換するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャが、それぞれ表示指示を含み、前記方法が、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記表示指示が、時間的参照フィールドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
遠隔デコーダ・システムにおいて、前記受信ステップおよび前記符号化ステップを実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を符号化してフィールド・ピクチャにするステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ディジタル・ビデオ信号を符号化するシステムであって、
非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするプロセッサであり、全ての非予測ソース・ピクチャが少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようにするプロセッサと、
前記ピクチャ群を復号するデコーダと、
を含む、前記システム。
【請求項16】
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号を再生する制御装置を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくとも前記非プログレッシブ・ビデオ信号内の非予測ソース・ピクチャの数を変更し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記予測ソース・ピクチャが、イントラ符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、双方向予測符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、予測符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記双方向予測符号化画像がそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像である、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサが、前記ピクチャ群内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサが、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製を前記ピクチャ群に挿入して、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャが、前記ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像であり、前記プロセッサが、前記ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、前記直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化ピクチャに変換するようにプログラムされる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャが、それぞれ表示指示を含み、前記プロセッサが、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
前記表示指示が、時間的参照フィールドである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記プロセッサおよび前記デコーダが、遠隔デコーダ・システムの一部である、請求項15に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサが、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を符号化してフィールド・ピクチャにするようにプログラムされる、請求項27に記載のシステム。
【請求項1】
ディジタル・ビデオ信号を符号化する方法であって、
非プログレッシブ・ビデオ信号を受信するステップと、
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするステップと、を含み、
全ての非予測ソース・ピクチャが少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようになっている、前記方法。
【請求項2】
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録するステップと、
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を再生するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくとも前記ピクチャ群内の非予測ソース・ピクチャの数を変更し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予測ソース・ピクチャが、イントラ符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、双方向予測符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、予測符号化画像である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記双方向予測符号化画像がそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記変更ステップが、前記ピクチャ群内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記変更ステップが、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製を前記ピクチャ群に挿入して、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャが、前記ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像であり、前記方法が、前記ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、前記直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化画像に変換するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャが、それぞれ表示指示を含み、前記方法が、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記表示指示が、時間的参照フィールドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
遠隔デコーダ・システムにおいて、前記受信ステップおよび前記符号化ステップを実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を符号化してフィールド・ピクチャにするステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ディジタル・ビデオ信号を符号化するシステムであって、
非プログレッシブ・ビデオ信号を符号化して、少なくとも1つの予測ソース・ピクチャおよび少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャを有する少なくとも1つのピクチャ群にするプロセッサであり、全ての非予測ソース・ピクチャが少なくとも1つの予測ソース・ピクチャから予測され、非予測ソース・ピクチャが別の非予測ソース・ピクチャから予測されないようにするプロセッサと、
前記ピクチャ群を復号するデコーダと、
を含む、前記システム。
【請求項16】
前記非プログレッシブ・ビデオ信号を記憶媒体に記録し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号を再生する制御装置を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、順方向トリック・モード・コマンドに応答して、少なくとも前記非プログレッシブ・ビデオ信号内の非予測ソース・ピクチャの数を変更し、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記予測ソース・ピクチャが、イントラ符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、双方向予測符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部が、予測符号化画像である、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記双方向予測符号化画像がそれぞれ、一方向双方向予測符号化画像である、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記プロセッサが、前記ピクチャ群内の少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャをスキップして、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサが、少なくとも1つの非予測ソース・ピクチャの複製を前記ピクチャ群に挿入して、前記非プログレッシブ・ビデオ信号をトリック・モード・ビデオ信号に変換するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つのスキップされる非予測ソース・ピクチャが、前記ピクチャ群内の表示順序が最後のピクチャである予測符号化画像であり、前記プロセッサが、前記ピクチャ群内で表示順序がその直前である非予測ソース・ピクチャを、前記直前の非予測ソース・ピクチャが予測符号化画像でない限り、予測符号化ピクチャに変換するようにプログラムされる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャが、それぞれ表示指示を含み、前記プロセッサが、所期の表示順序を反映するように、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部の表示指示を変更するようにプログラムされる、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
前記表示指示が、時間的参照フィールドである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記プロセッサおよび前記デコーダが、遠隔デコーダ・システムの一部である、請求項15に記載のシステム。
【請求項28】
前記プロセッサが、予測ソース・ピクチャおよび非予測ソース・ピクチャの少なくとも一部を符号化してフィールド・ピクチャにするようにプログラムされる、請求項27に記載のシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公表番号】特表2007−504785(P2007−504785A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532532(P2006−532532)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013551
【国際公開番号】WO2005/002192
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013551
【国際公開番号】WO2005/002192
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]