説明

特異的分子の存在および過剰発現によるTR1調節リンパ球の同定法およびその応用方法

本発明は、分子群CD4、CD18および/またはCD11a、CD49bが同時に存在するという決定に基づいて、ならびに適当であれば、CD4、PSGL-1、PECAM-1およびαV/β3分子をコードする遺伝子の過剰発現を示すことによって、生体試料におけるTr1リンパ球調節因子を同定する方法に関する。本発明はさらに、該同定法に基づいて、自己免疫もしくは炎症疾患に関する定量法、および予後または診断法に関する。本発明はまた、該分子の同時存在の決定に基づいて、Tr1リンパ球調節因子の濃縮法、および最終的に、自己免疫または炎症疾患、特にクローン病の治療のための該濃縮法から濃縮された組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD4、CD18、および/またはCD11a、CD49b分子群が同時に存在するという決定に基づいて、ならびに適当であれば、CD4、PSGL-1、PECAM-1、およびαV/β3分子をコードする遺伝子の過剰発現を証明することによって、生体試料におけるTr1-調節リンパ球を同定する方法に関する。本発明はまた、該同定法に基づいて、自己免疫または炎症疾患のための定量法、および予後または診断のための方法に関する。本発明はまた、これらの分子が同時に存在するという決定に基づくTr1調節リンパ球の濃縮法にも関する。最後に、本発明は、自己免疫または炎症疾患、特にクローン病を治療するために、該濃縮法に従って濃縮された組成物を利用することに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫寛容は、それによって免疫系が自己を異物と区別することができる様々なメカニズムによって得られる。さらに、免疫系は、非病原性の抗原刺激に繰り返し曝露される。望ましくない細胞の活性化および慢性炎症を予防するために、免疫系は、アネルギーT細胞(Blackmanら、1990、Nature 345:540〜542;Jonesら、1990b、J Exp Med. 172:1277〜1285)、アポトーシスによるT細胞の不活化(Jonesら、1990a、Science 250:1726〜1729;Webbら、1990、Cell 63:1249〜1256)、および能動的免疫抑制(Rockenら、1996、Immunol. Rev. 149:175〜194;Weinerら、1997、Annu. Rev. Med. 48:341〜351)を含む、寛容を維持するために協調して作用するメカニズムを有する。能動的免疫抑制は、その機能が有効なT細胞の増殖および活性化を抑制することである専門的なT細胞によって媒介される。最近の研究から、Tr1と呼ばれる調節性の細胞がCD4+ T細胞に属すること(Chenら、1994、Science 265:1237〜1240;Grouxら、1997、Nature 389:737〜742;Mc Guirckら、2002、J Exp Med. 195:221〜231;Powrieら、1994、J Exp Med. 179:589〜600)、およびその機能がIL-10(Assemanら、1999、J Exp Med. 190:995〜1004;Barratら、2002、J Exp Med. 195:603〜616;Grouxら、1997)およびTGF-β(Grouxら、1997;Kitaniら、2000、J. Immunol. 165:691〜702)の存在に依存することが証明された。
【0003】
Tヘルパー細胞とも呼ばれるT CD4+リンパ球の中で、二つの主なタイプのTヘルパー細胞が区別されている:すなわち、細胞性免疫応答の発達に関与して、インターロイキン-2(IL-2)およびインターフェロンγ(IFNγ)のような前炎症性サイトカインを産生し、マクロファージ活性化作用を有するTh1リンパ球;インターロイキンIL-4、IL-6、IL-10、およびIL-13のようなサイトカインを産生して、抗体分泌を促進するTh2リンパ球。
【0004】
胸腺において、中心的な寛容は、骨髄由来の樹状細胞(DC)との相互作用後の自己反応性T細胞の欠失を伴う十分に確立されたメカニズムである。
【0005】
しかし、それによってTr細胞がインビボで形成して、その免疫調節作用を実行するメカニズムはまだ定義されておらず、集中的な研究の主題である。
【0006】
特に、いくつかの自己免疫および/または炎症疾患がTr1細胞を含む。
【0007】
自己免疫疾患は、免疫系の脱調節によって引き起こされ、これは自身の抗原に関する体の望ましくない免疫応答を伴う。これらの疾患の起源である抗原、またはこれらの抗原に対して特異的な攻撃的T細胞を操作しようとする試みが行われているが、得られた結果はしばしば、特に関係する疾患に関与する抗原の全てに関する知識がないために非常に限られている。実際に、いわゆる自己抗原または炎症および自己免疫障害に関与する抗原はまだわかっていないか、または互いに区別することができない(遺伝により)。
【0008】
これらの疾患に現在用いられている治療は、待期的治療(糖尿病に対するインスリン、アレルギー障害に対する抗ヒスタミン剤)であるか、または抗炎症剤(NSAIDs)および/または免疫抑制剤(グルココルチコイド、シクロスポリン、抗体等)による全身治療のいずれかである。したがって、明らかに強力な免疫抑制剤治療が必要であるが、これは罹患臓器またはより詳しくは免疫系の過敏反応領域に限定すべきである。
【0009】
Tr1細胞は、その誘導のために用いられる抗原によって再刺激しても、ほとんど増殖せず、非常に大量のIL-10を産生して、非常に少量のIL-2を産生し、IL-4を産生しない。活性化Tr1細胞を他のT CD4+細胞の存在下で培養すると、それらは抗原に反応した後者の増殖を抑制し、この作用は、Trリンパ球によるサイトカイン、特にIL-10の分泌に起因して、T CD4+細胞に対する後者の直接作用ではない。したがって、これらの細胞の増殖に関与する抗原を認識する必要なく、これを得ることができる。このことは、病原性細胞が向けられる正確な抗原を知る必要なく治療を検討することができることから、自己免疫疾患の場合には有意な長所となる。
【0010】
このように、前炎症細胞が消化管菌叢の常在菌に対して向けられるマウスクローン病実験モデルにおいて、食物中の卵白アルブミンの投与に伴って、卵白アルブミンに対するTr1細胞を動物に投与すると、結腸における慢性的な炎症の発症を予防することが可能となる(Grouxら、1997、Nature 389:737〜742)。
【0011】
その上、クローン病、多発性硬化症、または移植片対宿主反応の異なる動物モデルに関する研究において、本発明者らは、Tr1阻害細胞がこれらの異なる病態を予防できるのみならず、治癒できることを示した(Foussatら、提出中、Barratら、J Exp Med. 2002、4:603)。
【0012】
MOTTETらの文書(Journal of Immunology 170:8、4月15日、2003、3939〜3943頁)は、確立された炎症を改善するために、T細胞によって媒介される免疫疾患の予防においてその役割がわかっているCD4+ CD25+調節T細胞の能力に関する研究に関する。この試験は、CD4+ CD25+ T細胞が腸管の炎症を治療することができることを示しており、CD4+ CD25+ T細胞が慢性炎症疾患の治療において有益となりうることを示唆している。
【0013】
したがって、患者のT細胞から得られたTr1細胞は、この患者における免疫応答を調節するために細胞治療の状況においておそらく用いることができる。それらはまた、特に、上記の自己免疫および炎症疾患のみならず、糖尿病、乾癬、アテローム性動脈硬化症、リウマチ性多発関節炎、または喘息のような異常な炎症反応を特徴とする如何なる他の病態も予防または治療するために用いることができる。それらはまた、移植片の拒絶、または移植片対宿主反応の治療において用いることができる。
【0014】
このように、Tr1細胞を用いることができる自己免疫疾患において例となるのは、慢性活動型肝炎、アジソン病、抗リン脂質症候群、アトピー性アレルギー、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性無塩酸症、小児脂肪便症、クローン病、クッシング症候群、皮膚筋炎、I型糖尿病、円板状紅斑性狼瘡、グッドパスチャー症候群、グレーヴス病、橋本甲状腺炎、特発性副腎萎縮、インスリン依存型糖尿病、ランバート・イートン症候群、ルポイド肝炎、リンパ球減少症の特定の症例、多発性硬化症、尋常性または落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、悪性貧血、水晶体原性ブドウ膜炎、多発関節炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、乾癬、ライター症候群、多発性軟骨炎、リウマチ性関節炎、シュミット症候群、強皮症、シェーグレン症候群、全身性紅斑性狼瘡、高安動脈炎、一過性動脈炎、甲状腺薬中毒症、B型インスリン抵抗性、潰瘍性大腸炎、ウェゲナー肉芽腫、重症筋無力症、ギランバレー症候群、自己免疫性ureitis、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性卵巣炎、ベーチェット病、疱疹状皮膚炎、多発筋炎、皮膚筋炎、強直性脊椎炎のような脊椎関節症、および白斑からなる群において選択された疾患である。
【0015】
Tr1調節リンパ球を用いる場合の困難の一つは、それらをリンパ球集団から単純にしかも確実に同定できることである。Tr1-調節リンパ球を同定する現在の技術は、Tr1調節リンパ球を含むことができるリンパ球集団によるサイトカイン産生プロフィールを調べることからなる。特に、Grouxら(Nature 389:737〜742、1997)は、このリンパ球集団が非常に大量のインターロイキン10(IL-10)、大量のTGF-β(腫瘍増殖因子β)、非常に少量のインターロイキン2(IL-2)を生じるが、インターロイキン-4(IL-4)を産生しないことに注目している。当業者は、該集団に存在するCD4+ Tリンパ球の増殖反応を調べることによって、リンパ球集団にTr1-調節リンパ球が存在することを確認することができる。Tr1-調節リンパ球をCD4+ Tリンパ球の存在下で培養した場合、Tr1調節リンパ球は、抗原に反応したCD4+ T細胞の増殖を抑制する(Grouxら、Nature 389:737〜742、1997)。これらの同定技法は、時間と労力がかかるという短所を有する。
【0016】
このように、現在、リンパ球集団を含む試料からTr1調節リンパ球の有無を同定するための迅速かつ有効な技法が必要である。そのような方法はまた、Tr1調節リンパ球によってリンパ球集団を濃縮することができるであろうことから、長所となりうる。
【0017】
これは、まさに本発明の主題である。
【発明の開示】
【0018】
このように、本発明は、以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1調節リンパ球を同定する方法に関する:
(a)CD4分子、ならびにCD18および/またはCD11a、およびCD49b分子からなるA群の分子全てをコードする遺伝子の該リンパ球による発現産物が同時に存在することを決定する段階;ならびに
(b)CD4分子、およびA群の全ての分子をコードする遺伝子を同時に発現するリンパ球を、Tr1調節リンパ球であると同定する段階。
【0019】
CD18および/またはCD11a、およびCD49a分子からなるA群とは、以下からなるA群を意味する:
−CD18およびCD49b分子;
−CD11aおよびCD49b分子;または
−CD18、CD11a、およびCD49b分子。
【0020】
Tr1調節リンパ球の存在を同定すべき、リンパ球を含む生体試料の中では、被験者から採取した末梢血からの生体試料、細胞集団、特にリンパ球集団からTr1調節リンパ球をインビトロで調製する方法からの生体試料、適用可能な場合は被験者の試料からの生体試料、または前駆細胞からの生体試料が好ましい。
【0021】
本発明に従うTr1調節リンパ球を同定する方法は、Tr1調節リンパ球の有無を決定すべきリンパ球集団を含む如何なる生体試料においても行うことができる。
【0022】
生体試料を採取する対象は、任意の哺乳類、特にマウス、好ましくはヒトとなりうる。対象は好ましくは健康であるかまたは自己免疫もしくは炎症疾患に罹患しうる。本発明に従う「健康な対象」という用語には、任意の対象、好ましくはヒト、自己免疫または炎症疾患に罹患していないヒトが含まれる。自己免疫疾患の一覧は先に提供している;炎症疾患とは、単核球の浸潤、線維芽細胞および新しい血管の増殖を認め、結合組織および組織破壊の増加に至る疾患である。腸の慢性炎症疾患は特に注目される。
【0023】
生体試料はまた、Tr1調節リンパ球のインビトロ調製法から得ることができ、その方法は当業者に周知である。これらの調製法には、例えば、IL-10の存在下で抗原によってCD4+ T細胞を繰り返し刺激することからなる、本発明者の刊行物に記述される方法(Grouxら、Nature 389:737〜742、1997)が含まれる。2002年11月21日に公表された、国際公開公報02/092793号の本発明者らの国際特許出願に記述されるTr1調節リンパ球をインビトロで調製する方法も同様に引用することができる。この方法は、HLAクラスII分子とヒトLFA-3(CD58)分子とを発現するが、如何なる共刺激分子B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、B7-H1、CD40、CD23、およびICAM-1(CD54)も発現しない人工的な抗原提示細胞の存在下でCD4+ Tリンパ球を培養することからなる。Tr1-調節リンパ球をインビトロで調製するためのもう一つの方法は、以下の実施例5に記述され、この方法は、インビトロでヒト前駆細胞からヒト樹状細胞集団を得ることからなり、樹状細胞はヒトTリンパ球のTr1調節リンパ球への分化を誘導することができる。
【0024】
本発明に従うTr1調節リンパ球を同定する方法において分子をコードする遺伝子の発現産物とは、これらの分子のそれぞれに関して、該遺伝子の翻訳産物、すなわち該遺伝子によってコードされるペプチド、または該遺伝子の転写産物、すなわち該分子をコードするmRNAのいずれかとなりうる該分子をコードする遺伝子の発現産物を指す。好ましくは、発現産物は、該リンパ球の表面で発現される分子、またはその代表的な断片、すなわちリンパ球の表面に存在することによって、リンパ球の表面でのこの分子の発現を決定することができる(該分子に関して表現型「+」)該分子の断片である。
【0025】
本発明者らは、実際に、CD4分子をコードする遺伝子およびA群の分子をコードする遺伝子のリンパ球による発現産物が同時に存在することを決定することによって、Tr1調節リンパ球を同定することができることを示している(実施例2および3を参照されたい)。
【0026】
分子CD11aおよびCD18はリンパ球の表面と会合して、二量体β2-インテグリンCD11a/CD18を形成し、これはまたリンパ球機能関連抗原-1、LFA-1とも呼ばれる。したがって、このβ2-インテグリンの存在は、CD11a分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現産物が存在すること、CD18分子をコードする遺伝子の発現産物が存在すること、またはこれらの二つの発現産物が同時に存在することを決定することによって同定することができる。
【0027】
本発明者らはまた、Tr1-調節リンパ球を、CD11a、CD18、PSGL-1、PECAM-1、および/またはαV/β3分子をコードする遺伝子の少なくとも1個、好ましくは少なくとも2、3、4個または全ての過剰発現によって、Th1またはTh2型であることがわかっているリンパ球、特にクローンからのTh1またはTh2リンパ球による発現と比較することによって、上記の同定法とは無関係に同様に同定することができることを証明した(実施例4を参照されたい)。
【0028】
PSGL-1分子、またはP-セレクチン糖タンパク質リガンド1は、セレクチンファミリーに属する細胞接着分子(CAM)である。
【0029】
CD31分子とも呼ばれるPECAM-1分子または血小板-内皮細胞接着分子-1は、Ig様分子ファミリーに属するCAM分子である。
【0030】
CD51/CD61分子またはビトロネクチン受容体のVNRとも呼ばれるαV/β3a分子は、β3-インテグリンのサブファミリーに属するCAM分子である。
【0031】
本発明の特定の態様に従って、A群の分子の発現に基づいてTr1-調節リンパ球を同定する上記の方法は、以下を特徴とする:
−段階(a)において、以下のB群の分子:CD11a、CD18、PSGL-1、PECAM-1、および/またはαV/β3をコードする遺伝子から選択される少なくとも一つの遺伝子の該リンパ球による発現を比較して、その発現がTh1またはTh2リンパ球による該同じ遺伝子の発現と比較される;ならびに
−段階(b)において、B群の分子をコードする該遺伝子の少なくとも一つを過剰発現するリンパ球が、Tr1-調節リンパ球であると同定される。
【0032】
B群の分子をコードする該遺伝子の少なくとも一つを過剰発現するリンパ球とは、該遺伝子の少なくとも一つの発現が、Th1またはTh2リンパ球によるこれらの同じ分子の発現より有意に高いリンパ球を指す。好ましくは、Th1またはTh2リンパ球によって得られる発現と比較したTr1-調節リンパ球による過剰発現は、Th1またはTh2リンパ球の発現より少なくとも2、3、4、5、7、または10倍高い。
【0033】
好ましくは、Th1またはTh2リンパ球は、炎症部位、特に皮膚の炎症部位において通常得られるクローンからのTh1またはTh2リンパ球であり、これらはTh2に関してIL-4、またはTh1に関してIL-12の存在下でインビトロで分化する。
【0034】
本発明のもう一つの特定の態様に従って、Tr1-調節リンパ球を同定する方法は、段階(a)において、B群の遺伝子の少なくとも二つの発現が比較され、および段階(b)において、B群の該二つの遺伝子を過剰発現するリンパ球がTr1-調節リンパ球であると同定される、という特徴を有する。
【0035】
本発明のもう一つの特定の態様に従って、Tr1-調節リンパ球を同定する方法は、段階(a)において、B群の遺伝子の全ての発現が比較され、および段階(b)において、B群の遺伝子の全てを過剰発現するリンパ球がTr1-調節リンパ球であると同定される、という特徴を有する。
【0036】
本発明に従う同定法は、好ましくは、段階(a)において、B群の該遺伝子の少なくとも三つの発現が比較され、および段階(b)において、B群の該遺伝子を過剰発現するリンパ球がTr1-調節リンパ球であると同定される、という特徴を有する。
【0037】
本発明に従う同定法はまた、段階(a)において、B群の該遺伝子の少なくとも四つの発現が比較され、および段階(b)において、B群の四つの該遺伝子を過剰発現するリンパ球がTr1-調節リンパ球であると同定される、ことを特徴とする。
【0038】
本発明はまた、以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1-調節リンパ球を同定する方法にも関しうる:
(a)B群の以下の分子:CD11a、CD18、PSGL-1、PECAM-1、および/またはαV/β3をコードする遺伝子から選択された少なくとも一つの遺伝子の該リンパ球による発現を比較する段階であって、該発現がTh1またはTh2リンパ球による該同じ遺伝子の発現と比較される段階;ならびに
(b)B群の分子をコードする該遺伝子の少なくとも一つを過剰発現するリンパ球が、Tr1-調節リンパ球であると同定される段階。
【0039】
さらに、Tr1-調節リンパ球はまた、CD3分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現産物の存在を決定することを同様に含む、本発明に従う同定法によって同定することができる。
【0040】
このように、本発明はまた、好ましくは、段階(a)がCD3分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現産物の存在をさらにおよび同時に決定することからなり、ならびに段階(b)がCD3分子をコードする遺伝子を同時に発現するリンパ球をTr1-調節リンパ球であると同定することからなる、ことを特徴とする本発明に従う同定法にも関する。
【0041】
本発明の方法に従って、リンパ球の表面での分子の同定は、これらの分子が同時に存在することを特異的に同定することができる任意の適した方法を用いて行うことができる。
【0042】
これらの方法において、好ましい方法は、適当であれば標識してもよい、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、もしくは組換え型抗体もしくはその断片、またはこれらの分子、これらの抗体、もしくは抗体断片を特異的に認識することができるリガンドを用いて、リンパ球の表面でこれらの分子の同定が行われる方法である。
【0043】
本発明に従う同定法は、好ましくは、段階(a)において、該リンパ球の表面で発現されるA群の分子が同時に存在することが決定されることを特徴とする。
【0044】
本発明に従う同定法の好ましい態様は、段階(a)が、該リンパ球の表面に発現される該分子の同時存在を、該分子に対して特異的な抗体によって決定することからなる、ことを特徴とする。
【0045】
本発明に従う同定法において用いることができる、該分子に対して特異的な抗体には、クローンRPA-T4およびH129-19(Becton Dickinson、Le Pont de Claix、フランス)によって分泌される抗体のようなヒトまたはマウス抗CD4抗体、クローン6.7、C71/16、およびGame-46(Becton Dickinson)によって分泌される抗体のようなヒトまたはマウス抗CD18抗体、クローンM17/4(Biocompare、サウスサンフランシスコ、アメリカ)によって分泌される抗体のようなマウス抗CD11a抗体、クローンAK-7およびHal/29(Becton Dickinson)によって分泌される抗体のようなヒトまたはマウス抗CD49b抗体、クローンMEC13.3(Becton Dickinson)によって分泌される抗体のような抗マウスCD31抗体、クローンUCHT-1(Caltag、バーリンガム、イギリス)によって分泌される抗体のような抗ヒトCD3が含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
これらの分子を認識することができる抗体以外の天然のリガンドの非制限的な例として、例えば以下の抗体を引用することができる:CD18分子(LFA-1)、hu可溶型ICAM-1(CD54)、hu-ICAM-1Fcキメラ、hu-ICAM-2Fcキメラ(CD102)、huICAM-3Fcキメラ(CD50)、mu-ICAM-1(CD54)、muICAM-2Fcキメラ(CD102)、muICAM-3Fcキメラ(CD50)、muICAM-5Fcキメラ(CD50)、JAM-1、JAM-2、JAM-3。これらのリガンドは全て、市販されている(特に、R&D Systems、ミネアポリス、アメリカ)。
【0047】
本発明に従う同定法の特に好ましい態様において、試験すべき該生体試料に存在するリンパ球の表面に同時に存在することを決定すべき分子の同定は、好ましくは免疫蛍光によって、または放射免疫学的もしくは免疫酵素的方法によって行われる。
【0048】
一般的に、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、もしくはその断片、または組換え型抗体を調製するために、マニュアル「抗体」(Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Publications、726頁、1988)に記述されている当業者に周知の技術、またはKohlerら(Kohler and Milstein、Nature 256:495〜497、1975)によって記述されるハイブリドーマを用いる調製技術を参照することができる。本発明に従う方法に対して特異的な抗体は、例えば、これらの分子に対して特異的に免疫した動物の血清または細胞から得ることができる。
【0049】
これらの分子を特異的に認識することができる抗体断片とは、特に、そこから該断片が得られる抗体が結合する該分子のエピトープに対して特異的に結合することができる該抗体の任意の断片を含む抗体断片を指す。そのような断片の例には、特に、そこからそれらが得られる抗体と同じ結合特異性を有する、一本鎖抗体(scFv)、または一価断片FabもしくはFab'、およびF(ab')2のような二価断片が含まれる。これらの抗体断片は、ペプシンまたはパインのような酵素による消化、および/または化学的還元によるジスルフィド結合の切断のような方法を用いて、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体から得ることができる。これらの抗体またはその断片はまた、遺伝子組み換え(組換え抗体)によっても得ることができる。
【0050】
これらの分子を特異的に認識することができる抗体またはその断片はまた、直接または間接的に検出可能である、および好ましくは定量可能であるシグナルを得るために、標識抗体の形で存在しうる。
【0051】
本発明に従う同定法において用いることができる標識抗体またはその断片は、例えば、および好ましくは、蛍光マーカーに結合したいわゆる免疫結合抗体であり、これには特にフルオレセインおよびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)のようなその誘導体、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン-シアニン5(PC5)およびフィコエリスリン(PE)、緑色蛍光二酢酸フルオレセイン、カルセインAM、赤色蛍光テトラメチルローダミンまたはローダミンおよびその誘導体、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ダンシル、ウンベリフェロン等が含まれる。
【0052】
そのような免疫結合抗体は、市販されており、特にヒトにおけるAPC結合抗CD4(RPA-T4、Becton Dickinson)、PC5-結合抗CD3(UCHT-1、Caltag、バーリンガム、アメリカ)、PE-結合抗CD18(6.7、Becton Dickinson)、およびFITC-結合抗CD49b(AK-7、Becton Dickinson)、ならびにPC5結合マウス抗CD4(H129-19、Becton Dickinson)、PE-結合マウス抗CD18(C71/16、Becton Dickinson)、およびFITC結合マウス抗CD49b(Ha1/29、Becton Dickinson)である。
【0053】
本発明に従う同定法において同様に用いることができる市販の抗体またはその断片にはまた、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水素酵素、アセチルコリンエステラーゼ、ライソザイム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、またはグルコース-6リン酸デヒドロゲナーゼのような酵素、またはビオチン、ジゴキシゲニン、もしくは5-ブロモ-デオキシウリジンのような分子に結合した免疫結合抗体が含まれる。
【0054】
そのような結合体において、抗体またはその断片は、当業者に既知の方法を用いて調製することができる。それらは、直接、またはグルタルアルデヒドのようなポリアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)の場合のようにスペーサー基もしくは結合基によって、もしくは過ヨウ素酸等のような結合物質の存在下で、酵素または蛍光マーカーに結合させることができる。フルオレセイン型のマーカーを含む結合体は、イソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
【0055】
他の結合体にはまた、ルミノールおよびジオキセタンのような化学発光マーカー、またはルシフェラーゼおよびルシフェリンのような生物発光マーカーが含まれうる。
【0056】
本発明に従う同定法において用いることができるこれらの抗体またはその断片に結合することができるマーカーの中で、以下の放射活性マーカー:14C、36Cl、57Co、58Co、51Cr、152Eu、59Fe、3H、125I、131I、32P、35S、75Se、および99mTcを引用することができ、これらはγカウンター、シンチレーションカウンター、オートラジオグラフィー等のような既知の手段によって検出することができる。
【0057】
抗体分子免疫複合体(抗原)の形成に依存する如何なる通常の方法も、そのような同定を行うために実行することができる。該方法は、それが放射免疫学的または免疫酵素的であれ、競合的もしくはサンドイッチ法、または当業者に既知の任意の方法となりうる。
【0058】
特に好ましい態様において、本発明に従う同定法の決定段階(a)は、蛍光マーカーによって標識した抗体を用いて行われる。また好ましくは、その存在を決定すべき分子に対して特異的な該抗体または抗体断片のそれぞれは、それぞれの特異性に関して異なるマーカーによって標識されるであろう。さらにより好ましくは、該同定法によって、非制限的な例として下記の実施例2、3および4において用いられる同定および定量法のように、試験すべき生体試料において、その存在を同定すべき該分子を同時に有するリンパ球の数または比率も定量することができる。
【0059】
本発明の特定の態様に従って、方法は、該マーカーが蛍光であって、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン-シアニン5(PC5)、フィコエリスリン(PE)、緑色蛍光二酢酸フルオレセイン、カルセインAMおよび赤色蛍光テトラメチルローダミンからなる群より選択されるという特徴を有する。
【0060】
用いることができる同定法には、細胞の大きさ、および様々な標識後にそれらが放出する蛍光の強度に従って細胞を分離する電子系からなるFACS(蛍光活性化細胞ソーティング)技術が含まれる。この装置は、細胞浮遊液の微小水滴を調製して、これを水滴が細胞1個のみを含むように希釈する。微小水滴がレーザー光の前を通過して、細胞が分析され(ヒストグラム)、その蛍光および/または大きさに基づいて分離される。
【0061】
好ましい態様において、本発明に従う同定法は、段階(a)において、該リンパ球の表面で発現されたA群の分子の同時存在の定量がフローサイトメトリーによって行われることを特徴とする。
【0062】
フローサイトメトリーという用語は、特に上記のFACS技術において、細胞を計数および測定することができる任意の技術を指す。
【0063】
本発明に従う同定法の決定段階(a)を、蛍光免疫結合体(蛍光抗体のような)を用いて行う場合、本発明に従う同定法を用いることが好ましく、この場合、該方法の段階(a)において、CD18分子に関して得られた蛍光強度のレベルが、単球細胞(「CD18bright」)の表面の同じ分子について得られたレベルに対応すれば、CD18分子が該リンパ球の表面に存在すると決定される。
【0064】
好ましい態様に従って、本発明に従う同定法は、方法の段階(a)において、CD18分子に関してCD18bright蛍光強度の存在が決定されることを特徴とする。
【0065】
このように、例えば、ヒトTリンパ球に関する「CD3+ CD4+ CD18bright」表現型とは、CD3、CD4およびCD18分子または抗原をその細胞表面に発現するリンパ球を指し、CD18分子の標識の蛍光強度は単球細胞において認められる同じ標識の蛍光強度と等しい(図15を参照されたい)。
【0066】
B群の分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現の比較は、これらの遺伝子に関して発現されたmRNAの量を比較することによって行うことができる。
【0067】
mRNAの発現に関するそのような比較は、逆転写段階を先に行うポリメラーゼ連鎖反応増幅技術(RT-PCR)を用いることによって行うことができる。
【0068】
一つの態様において、本発明に従う同定法は、以下を特徴とする:
−段階(a)において、B群の分子をコードする少なくとも一つの遺伝子の該リンパ球による発現の比較が、該遺伝子に関して発現されたmRNAの量を比較することによって行われる;および
−段階(b)において、該遺伝子のmRNAを過剰発現するリンパ球がTr1-調節リンパ球であると同定される。
【0069】
もう一つの態様に従って、本発明に従う同定法は、mRNAの量が定量的RT-PCRによって測定されることを特徴とする。
【0070】
もう一つの好ましい態様に従って、本発明に従う同定法は、生体試料が対象における末梢血試料または炎症臓器から得られることを特徴とする。
【0071】
好ましくは、本発明に従う方法において、該生体試料は、自己免疫または炎症疾患に罹患している、または罹患する可能性がある対象から採取される。
【0072】
さらにより好ましくは、該対象はクローン病または多発性硬化症に罹患している。
【0073】
もう一つの態様において、本発明に従うTr1調節リンパ球を同定する方法は、生体試料が、対象からの試料において得られたリンパ球集団からTr1調節リンパ球をインビトロで調製する方法から得られることを特徴とする。
【0074】
リンパ球集団からTr1-調節リンパ球をインビトロで調製するための該方法には、好ましくは該リンパ球集団のCD4+ Tリンパ球が抗原およびインターロイキン10の存在下で活性化される、少なくとも一つの段階が含まれる。
【0075】
さらに、Tr1-調節リンパ球のインビトロ調製法は、以下の段階を含む:
(a)HLAクラスII系の分子と、ヒトLFA-3分子とを発現し、如何なる共刺激分子B7-1、B7-2、B7-H1、CD40、CD23、またはICAM-1も発現しない人工的な抗原提示細胞を含む生体試料を得る段階;
(b)(a)において得られた人工的な抗原提示細胞によって提示される選択された抗原の存在下で、該リンパ球集団のCD4+ Tリンパ球をインビトロで活性化する段階;および
(c)選択された抗原に対して特異的なTr1リンパ球少なくとも10%を含む活性化CD4+リンパ球集団を、該リンパ球から採取する段階。
【0076】
Tr1-調節リンパ球の該インビトロ調製法はまた、好ましくは以下の段階を含む:
(a)樹状細胞へ分化することができるヒト前駆細胞の集団をインビトロで得る段階;
(b)該樹状細胞の集団を得るために、IL-10の存在下で該ヒト前駆細胞を培養する段階;および
(c)(b)において得られた樹状細胞集団の存在下に該ヒトリンパ球集団を置く段階。
【0077】
このタイプの調製法は、下記の実施例(実施例5)として提供される。
【0078】
もう一つの態様において、本発明に従う同定法は、A群の分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現の産物がmRNAであり、および段階(a)において該mRNAの同時存在の決定がRT-PCRによって行われることを特徴とする。
【0079】
mRNAの同時存在が決定される本発明に従う同定法は、例えば逆転写段階を先に行うポリメラーゼ連鎖反応増幅技法(RT-PCR)となりうる。
【0080】
もう一つの特徴に従って、本発明はまた、以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1-調節リンパ球を定量する方法にも関する:
(a)本発明に従う同定法を用いてTr1調節リンパ球を同定する段階;および
(b)該生体試料に存在するリンパ球の全量またはリンパ球の特定の分画に対する、(a)において同定されたTr1調節リンパ球の比率を決定する段階。
【0081】
そのような定量法は、例えば、上記のようにフローサイトメトリーによって行うことができる。
【0082】
本発明はまた、以下の段階を含むことを特徴とする、該対象から予め採取した生体試料を用いて、対象における自己免疫または炎症疾患のインビトロでの予後または診断法にも関する:
(a)本発明の方法に従う定量法に従って、またはTr1調節リンパ球を定量することができる任意の方法に従って、リンパ球の全量またはリンパ球の特定の分画に対する、該生体試料に存在するTr1-調節リンパ球の比率を決定する段階;および
(b)段階(a)において得られた該Tr1調節リンパ球の比率を、健康な対象から採取した生体試料に存在する比率と比較する段階。
【0083】
上記の予後または診断法において、段階(a)において、該Tr1調節リンパ球を定量することができる任意の方法とは、特に、「Grouxら、1997」および国際公開公報第02/092793号において公表された特許文書において記述されるように、サイトカイン産生プロフィールを有するおよび/またはCD4+ T細胞の増殖を減少させることができるリンパ球の比率の評価を含む方法を指す。
【0084】
好ましい態様において、本発明に従う自己免疫または炎症疾患のインビトロ予後または診断のための方法は、該方法の段階(b)において、試験すべき対象において該比率の減少が認められることを特徴とする。
【0085】
実際に、健康な対象、すなわち該疾患に罹患していない対象に存在する比率と比較して、Tr1調節リンパ球の比率の減少を示す自己免疫または炎症疾患に罹患した患者を観察することは可能であった。
【0086】
自己免疫または炎症疾患のインビトロでの予後または診断のための方法は、迅速かつ有効である、および例えば該疾患に罹患している対象または該疾患に罹患する可能性がある対象から採取した血液試料について行うことができるという主要な長所を有する。このように、侵襲的な方法または入院を必要とする方法を回避することができる。
【0087】
本発明はまた、以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1調節リンパ球の濃縮法にも関する:
(a)本発明に従う同定法を用いてTr1-調節リンパ球を同定する段階;および
(b)該試料から該分子を同時に有しないリンパ球の有意な比率を除去する段階。
【0088】
本発明に従う濃縮法において行うことができる方法において、該分子の同時認識に基づいて、特に表面での存在を決定すべき分子を同時に有する全ての細胞をソーティングおよび分離することができるフローサトメーターのような、セルソーターを実行する方法を用いることが好ましい。
【0089】
それにもかかわらず、本発明に従う濃縮法はまた、フローサイトメトリーを含まない方法で行うことができる。実際に、Tr1リンパ球の濃縮は、特に例えばリンパ球集団からその表面でのCD3、CD4、CD18、およびCD49b分子(CD3+CD4+CD18brightCD49b+)の発現によって、本発明の同定法に従って同定されたTr1リンパ球は、二つの段階で磁気ビーズを用いて行うことができる:第一段階では、抗マウスIg抗体によって吸着させた磁気ビーズを用いて、総集団から抗マウスCD8、CD14、およびCD56抗体ならびに抗ヒトCD19抗体によって標識した細胞を枯渇させることができるであろう。実際に、Tr1細胞は、ヒトCD8、CD14、CD56、およびCD19分子を発現しない。第二段階は、マウス抗ヒトCD49b抗体による濃縮細胞の標識による、CD49bを発現する細胞(CD49b+)の陽性選択、および抗マウスIg抗体によって吸着させた磁気ビーズによって標識した細胞の陽性選択である。Tr1リンパ球、例えばCD3+CD4+CD18brightCD49b+の発現によって同定された細胞を精製するために、磁気ビーズ細胞浮遊液およびフローサイトメトリー法を組み合わせることができる。例えばCD4を発現する細胞(CD4+)の磁気ビーズによる陽性選択を行って、その後CD3、CD18、およびCD49b分子のフローサイトメトリー検出を行う、(CD3+)を発現する細胞の磁気ビーズによる陽性選択の後に、CD4、CD18、およびCD49b分子のフローサイトメトリーによる検出を行う、または(CD49b+)を発現する細胞の磁気ビーズによる陽性選択の後、CD3、CD18、およびCD49b分子のフローサイトメトリー検出を行う。そのような技法は、本発明に従う同定法において他の分子(CD11a、PSGL-1、PECAM-1、αV/β3分子等)の検出に応用することができる。
【0090】
もう一つの特徴に従って、本発明は、先に引用したような自己免疫または炎症疾患を予防および/または治療することを意図した薬剤を製造するために、本発明に従う濃縮法によって濃縮されたTr1調節リンパ球集団を用いることに関する。
【0091】
本発明に従う使用は、好ましくは、Tr1-調節リンパ球が炎症領域のレベルで投与されることを特徴とする。
【0092】
本出願において、炎症または炎症領域という用語は、その蓄積が局所損傷、感染症、または局所免疫損傷による液体、血漿タンパク質、免疫細胞、タンパク質のような物質の蓄積領域を指す。炎症は、散発性または慢性となりうる。
【0093】
より好ましくは、本発明に従う使用は、Tr1調節リンパ球がインビボで該リンパ球を活性化することができる抗原と共に投与されることを特徴とする。
【0094】
このように、炎症領域のレベルで存在するTr1調節リンパ球は、該抗原によってインビボで活性化されうる。
【0095】
もう一つの態様に従って、インビトロまたはインビボで既に活性化されているTr1調節リンパ球が投与される。
【0096】
最後に、本発明はまた、本発明に従う濃縮法によってTr1調節リンパ球に関して濃縮された集団を患者に投与する段階を含む、自己免疫または炎症疾患を治療する方法にも関する。
【0097】
以下の図の説明文および実施例は、本発明を説明するためであって、その範囲を如何なるようにも制限することを意図していない。
【0098】
実施例
実施例1:材料および方法
実施例2および3に関する材料および方法
マウス:
BALB/cおよびC. B-17 scidマウスは、CERJ(Le Genest Saint Isle、フランス)から得た。DO11-10ホモ接合マウスは、S.D. Hurst博士(DNAX Research Institute、パロアルト、カリフォルニア州)から寄贈された。マウスは全て雌性で、各実験開始時4〜8週齢であった。
【0099】
抗体、培地、および試薬:
T細胞培養のために用いた培地は、10%ウシ胎児血清(Roche、Meylan、フランス)および2×10-5 Mβ2-メルカプトエタノール(Invitrogen)を添加したYssel培地であった。組換え型マウスIL-10およびIL-4は、R.L. Coffman博士(DNAX Research Institute、パロアルト、カリフォルニア州)から寄贈された。組換え型マウスIFN-γおよびIL-12はR&D Systemsから得た。精製抗体抗IL-4(11B11)、抗IL-10(2A5)、抗IFN-γ(XGM1.2)、およびビオチン化抗体抗IL-4(24G2)、抗IL-10(SXC1)、および抗IFN-γ(R4-6A2)(Pharmingen Becton Dickinson)を、ELISA試験のために用いた。以下のモノクローナル抗体をマウス細胞の精製および表現型決定のために用いた:抗I-Ad(AMS-32.1)、抗CD8(2-43)、抗CD11b(M1/70)、抗-B220(RA36B2)、FITC-抗-CD45RB(16A)、PC5-抗-CD4(H129-19)、PE-抗-CD18(C71/16)、FITC-抗-CD49b(Hal/29)、FITC-抗-クロノタイプ(clonotype)Kj1-26、およびFITCまたはPEに結合させたアイソタイプ対照(BD-Pharmingen、Le Pont de Claix、フランス)。ヒト表面分子に対する抗体は、FITC-またはPC5抗-CD3(UCHT-1)(Caltag)、PC5-またはAPC抗CD4(RPA-T4)、PE-抗CD18、およびFITC-抗CD49b(AK-7)(BD Pharmingen)である。OVA323-339ペプチド、卵白アルブミンおよびオキサゾロンはSigma(Saint Quentin Fallavier、フランス)から得る。OVA323-339リポペプチドは、Bachem(Voisin-le-Bretonneux、フランス)から得る。
【0100】
フローサイトメトリーおよび細胞の精製:
CD4+マウス細胞は、上記のように精製した(Grouxら、Nature 1997)。脾細胞をB220+、Mac-1+、I-Ad+、およびCD8+細胞において、ヒツジ抗ラットIg抗体によって吸着させた磁気ビーズ(Dynabeads、Dynal Biotech、オスロ、ノルウェー)上で陰性選択によって枯渇させた。残りの細胞を、FITC-抗CD49b、PE-抗-CD18、およびPC5-抗-CD4抗体によって標識して、FACStar SE(Becton Dickinson、フランス)での細胞ソーティングによってCD4+CD18brightCD49b+およびCD4+CD18intCD49b-に分離した。末梢血のヒトCD4+CD18brightCD49b+およびCD4+CD18intCD49b-細胞は、フィコール勾配遠心によって単核球を分離した後、抗CD4磁気ビーズ(Dynal Biotech)上でのCD4+細胞の陽性選択およびPC5-抗CD3、PE-抗CD18およびFITC抗-CD49b抗体によるCD4+細胞の標識によってソーティングした。このプロトコールに従って、細胞集団は純度が98%より高い。
【0101】
ELISA:
ELISA試験を用いてヒトおよびマウスIL-4、IL-10、およびIFN-γを測定した。サイトカイン濃度を、吸着させた抗CD3抗体(10 μg/ml)および可溶性抗CD28抗体(1μg/ml)によって48時間活性化させたBalb/cまたはヒトCD4+CD18brightCD49b+ 細胞(2.105個/ウェル)の上清において測定した。
【0102】
慢性炎症性大腸炎の誘導:
炎症性大腸炎は、C.B-17 SCIDマウスにCD4+CD45RBhi T細胞2.105個をPBS 100μlにおいて腹腔内注射することによって誘導した。一群のマウスに、DO11-10マウスからのCD4+CD18brightCD49b+ T細胞1.105個を処置した。これらのマウスに、飲料水において卵白アルブミンを投与した。処置5週間後、マウスを屠殺して、コラゲナーゼ/ディスパーゼによって結腸の粘膜を消化した後、結腸におけるTCD4+細胞の比率をフローサイトメトリーによって分析した。
【0103】
遅延型過敏反応:
オキサゾロンに対する遅延型過敏反応は、20 mg/mlオキサゾロン25 mlを腹部皮膚に適用することによって、0日目にマウスを感作することによって誘導した。次に、4 mg/mlオキサゾロン4 μlを耳の表面のそれぞれに適用することによって、遅延型過敏反応が5日目に出現した。4時間後、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞2.105個をマウスに静脈内注射した。オリーブ油において500 μMに希釈したOVA323-339リポペプチド溶液20μlを炎症を有する耳に4、5、および6日目に適用した。耳の肥厚を毎日1回6日間測定した。
【0104】
トランスウェル細胞培養:
CD4+ T細胞5.105個を放射線照射脾細胞4.105個および可溶性抗CD3抗体(10μg/ml)の存在下で培養ウェルに加えた。CD4+CD18brightCD49b+ T細胞またはCD4+CD18int T細胞2.105個を同様に活性化して、CD4+細胞を含むウェルに入れたトランスウェルインサート(孔径0.4 μm)(Dutscher、Brumath、フランス)において培養した。標的CD4+細胞によるトリチウムチミジンの取り込みを培養72時間後に測定した。
【0105】
実施例4の材料および方法
マウス
如何なる特定病原体も含まないBALB/cおよびC.B-17 scidマウスを、CERJ(Le Genest Saint Isle、フランス)から得た。マウスを動物施設において維持した。C.B-17 scidマウスを滅菌濾過空気を有する微小隔離箱(Rec Biozone、Margate、イギリス)に収容した。用いた雌性マウスは8〜12週齢であった。
【0106】
抗体
以下のモノクローナル抗体をマウス細胞の精製のために用いた:AMS-32.1、抗-Iad、2-43、抗マウスCD8、MI/70、抗マウスCD11b、RA36B2、抗マウスB220、FITC-結合16A、抗マウスCD45RB、PEまたはTC-結合GK1.5、抗マウスCD4、ビオチン化KJ-1,26 mAb、またはPE標識ストレプトアビジンによって顕色されたFITC、FITCおよびPE結合アイソタイプの対照抗体(BD-Pharmingen、Le Pont de Claix、フランス)。
【0107】
接着分子に対する抗体(BD-Pharmingen)は以下の通りであった:αVインテグリン(23C6)、αLインテグリン(M17/4)、β2インテグリン(Game-46)、β1インテグリン(HMβ1-1)、およびPECAM-1(MEC 13.3)。PECAM-1、αLインテグリンおよびβ2インテグリンの発現の分析に関して、FITC結合ウサギ抗ラット免疫グロブリン(Dako、Trappes、フランス)によって染色を顕色した。
【0108】
細胞の精製およびサイトメトリー
CD4+ T細胞のサブセットを上記のようにマウス脾臓から精製した(Grouxら、1997)。簡単に説明すると、細胞をヒツジの抗ラット(Dynal、オスロ、ノルウェー)によってコーティングしたダイナビーズを用いて陰性選択によってB220+、Mac-1+、I-Ad+およびCD8+細胞から濃縮した。残っている細胞を、FITCを結合させた抗CD45RB(25μg/ml)、およびPEを結合させた抗CD4(10μg/ml)によって標識して、CD4+CD45RbhiおよびCD4+CD45Rblo分画に分離して、これをFACStar SE(Becton Dickinson、フランス)において二色にソーティングした。新たに分析した後、集団は全て純度が98%より高かった。結腸に浸潤するT細胞の分析に関して、結腸部分を刺激してコラゲナーゼ(Life Technologies、Cergy Pontoise、フランス)によって37℃で2時間消化した。ヒツジの抗ラットによってコーティングしたダイナビーズを用いる負の選択によってB220+、Mac-1+、I-Ad+、およびCD8+細胞から細胞を濃縮した。次に、T細胞を、FITCによって標識した抗CD4およびKJ-1,26 mAd Tricolorによってサイトメトリーによって分析した。腸間膜リンパ節(MLN)の分析に関して、合わせた腸間膜リンパ節を刺激して、細胞を、FITCによって標識した抗CD4 mAbおよびPEストレプトアビジンによって顕色されたビオチン化KJ-1,26 mAbによってサイトメトリーによって分析した。遊走試験に関して、コラゲナーゼによる消化後、結腸のCD4+細胞を、PEを結合させた抗CD4を用いてソーティングした。炎症細胞のリンパ球を採取するために、耳をPBS IXに軽く浸した。次に、組織片をPBS IXによって1回洗浄して、トリプシンEDTAのハンクス液溶液(いずれもLife Technologies)によって37℃で30分間消化した。トリプシン処理した組織を、絶えず攪拌しながら1 mg/mlコラゲナーゼ-ディスパーゼによって37℃で1時間洗浄した。細胞浮遊液をPBS IXにおいて洗浄し、リンパ球を含む上清を回収した。
【0109】
T細胞
マウスT細胞クローンを、上記のように(Grouxら、1997)インビトロ分化後DO11-10マウスから得た。無処置KJ-1,26+ CD4+細胞(MEL-14hngnt)を、Th2、Th1、またはTr1細胞に関してそれぞれ、IL-4および抗IL-12、IL-12および抗IL-4、またはIL-10の存在下で、OVA323-339ペプチドによって毎週3週間繰り返し刺激した。3週間分化した集団を試験に用いた。T細胞クローンを作製するために、T細胞の異なる集団をサイトメトリー(FACS vantage SE、Becton Dickinson)によって細胞1個/ウェルでクローニングして、放射線照射した脾細胞(4500 rad)およびOVAペプチドによって刺激した。次にクローンを膨張させてAPCおよびOVAペプチドによる活性化後、サイトカインの分泌に関して分析した。選択されたクローンを、放射線照射脾細胞およびOVAペプチドによって2週間毎に刺激して、IL-2(R&D Systems、ミネアポリス、ミネソタ州、10 ng/ml)によって少し膨張させた。T細胞クローンを最後の刺激の少なくとも10日後に用いた。
【0110】
異なるヒトJDB T細胞クローンは既に記述されており(Grouxら、1997)、これをIL-10の存在下または非存在下でMLR刺激後に得た。用いた他のT細胞クローンは、記述のように皮膚生検から単離した(Lecartら、J. Invest. Dermatol. 2001、8月;117(2):318〜25)。
【0111】
サイトカインアッセイ
サンドイッチELISA試験を用いて、先に記述したようにヒトおよびマウスIL-4、IL-10、およびIFN-γをアッセイした(Grouxら、1997)。
【0112】
炎症性腸疾患の誘導
CD4+CD45Rbhi T細胞をPBS 100 μlにおいて腹腔内注射して、IBDをCB-17 scidマウスにおいて誘導した。炎症は、表記のようにCD4+CD45Rblo T細胞または異なるOVA特異的T細胞2×105個の注射によって制御した。
【0113】
顕微鏡による結腸の検査
結腸をマウスから採取して10%ホルムアルデヒドを含むPBSにおいて固定した。パラフィン封入した6 mmの断面を切断して、ヘマトキシリン-エオジンによって染色した。組織を0〜5まで半定量的に盲検的に評価した。変化を認めない場合、0スコアを割付した。他のスコアに典型的に関連した変化は以下の通りであった:スコア1、最小の上皮過形成を伴うまたは伴わない、粘膜の炎症細胞の浸潤の散在;スコア2、時に粘膜まで伸展し、びらんに関連し、良性の最小の上皮過形成および良性の最小の杯細胞のムチン欠失に関連する、広汎に散在した良性の炎症細胞浸潤;スコア3、時に粘膜を貫通し、しばしば潰瘍化、中等度の上皮過形成およびムチン欠失に関連する良性から中等度の炎症細胞浸潤;スコア4、しばしば粘膜を貫通し、潰瘍化、上皮過形成および有意なムチン欠失に関連する有意な炎症細胞浸潤;ならびにスコア5、急性の潰瘍化および腸線の喪失を伴う有意な粘膜を貫通する炎症。
【0114】
免疫組織化学
結腸の部分を液体窒素において凍結して、-70℃で保存した。5 μm凍結断面を切断して、スライドガラスに接着させた。それらを室温で1時間、完全に乾燥させて、アセトンにおいて4℃で15分間固定した。ペルオキシダーゼ-アビジン-ビオチン系を用いて、断面を免疫酵素学的技術によって染色した。簡単に説明すると、断面をPBSにおいて5分間洗浄した。その後、製造元の説明書に従って断面をビオチンおよびアビジン(Vector)によって飽和して、KJ-1,26ビオチンまたは対照アイソタイプと共にインキュベートした。PBSにおいて5分間洗浄した後、断面をペルオキシダーゼ-ストレプトアビジンと共にインキュベートした。最後に洗浄した後、ペルオキシダーゼをDABベクター染色キット(Vectastain、Vector)を用いて顕色すると、茶色が得られた。
【0115】
蛍光染色
Molecular Probes(Molecular Probes、ユージン、オレゴン州、アメリカ)の異なる染色を本試験に用いた。カルセインブルーは、322 nmでの励起および435 nmでの放射を有する蛍光青色マーカーである。緑色蛍光二酢酸フルオレセインは、522 nmでの励起および529 nmでの放射を有する蛍光緑色マーカーであり、カルセインAMは、494 nmでの励起および517 nmでの放射を有する蛍光緑色マーカーである。オレンジ色の蛍光であるテトラメチルローダミンは、541 nmでの励起および567 nmでの放射を有する蛍光赤色マーカーである。T細胞は、異なるプローブ(1μg/ml)によって培地中で37℃の暗所で30分間標識して、使用前に3回洗浄した。
【0116】
インビトロフローおよびフローチャンバー試験
形質転換ヒト臍帯静脈EA hy926の内皮細胞は、Edgell博士(ノースカロライナ大学、チャペルヒル、ノースカロライナ州)によって寄贈され、20%FCSを添加したDMEM(Life Technologies、Cergy Pontoise、フランス)において培養した。形質転換マウス内皮細胞株SVEC4-10は、ATCCから購入して、10%FCSを添加したDMEMにおいて培養した。フローチャンバーはImmuneties(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)から購入した。これは、0.1〜2 dyn/cm2の安定化層流を可能にするように設計した。1 mM CaCl2およびMgCl2を添加したHBSS(Life Technologies)においてT細胞1×106個を、試料採取用シリンジポンプ(Harvard Apparatus、ボストン、マサチューセッツ州)を用いて内皮細胞の単層上でチャンバーを通して潅流した。ほとんどの実験において、異なるT細胞株を蛍光染色によって染色して、3回洗浄した後、マウス内皮細胞株SVEC4-10またはヒトEA細胞株において15分潅流した。堅固に接着しなかったリンパ球を除去するために培地を潅流した後、0.65 mm2の無作為視野10個において倍率10倍で定量した。阻害試験に関して、可溶性組換え型mVCAM-1、抗β1および抗β2インテグリン鎖を10 μg/mlで用いて、細胞と共に+4℃で30分間インキュベートしてから試験を行った。組換え型mICAM-1 Fcキメラ、組換え型mVCAM-1 FcキメラおよびセレクチンmP Feにおける組換え型キメラを、2μg/ml(R&D Systems)によってコーティングした。ローリング試験に関して、潅流した細胞をビデオの記録によってモニターして、移動する細胞を蛍光T細胞の各サブセットに関して異なる視野9個において計数した。
【0117】
インビボ遊走試験
Tリンパ球をまず、蛍光色素によって標識した。Th1、Th2、およびTr1細胞をPBS IXにおいて2,106個/mlの密度でインキュベートして、1μg/mlカルセインAM、2μg/mlオレンジCMTMR、または2μg/mlカルセインブルーによって37℃で30分間標識した。次に細胞をPBS IX(Life Technologies)によって2回洗浄した。蛍光細胞浮遊液を混合した。マウスに各細胞集団100万個を含むPBS IX 100μlを静脈内投与した。細胞移入の24時間後、蛍光細胞組織の分布をFACS SE装置(Becton Dickinson、Le Pont de Claix、フランス)においてサイトメトリーによって分析した。注射したT細胞を特に分析するために、細胞移入の前に採取した混合蛍光細胞のSSC-FSCパラメータ(SSCは側方光散乱、およびFSCは前方光散乱)に関して定義されたゲートを用いてFACS事象の獲得を行った。各臓器におけるTh1、Th2、またはTr1の数を、獲得した細胞全体で106個について評価した。LFA-1を遮断するために、ICAM 1Fcキメラ(R&D Systems)を10 μg/mlで4℃で30分間用いた後、細胞を注射した。
【0118】
オキサゾロン接触過敏症
オキサゾロンの接触過敏症(Sigma、L'Isle d'Abeau、フランス)は、右耳の皮膚上部に50 mg/mlオキサゾロンのオリーブ油/アセトン(4:1、容積:容積)溶液20 μlを1日1回、3日間適用することによって行った。左耳には、担体のみを投与した。耳の肥厚を毎日チェックした。
【0119】
インビトロ化学遊走性
遊走前、Th1およびTh2細胞を、最初に、上記のようにカルセインAMおよびオレンジCMTMRによって標識した。Tr1細胞は非標識のままとした。各集団の細胞105個を、加熱したRPMI、20 mM Hepes、1%FCS(全て、Life Technologies)150μlにおいて孔径5μmのウェル(Corning Costar、Brumath、フランス)のあいだのインサートに適用した。遊走培地またはSDF-1/CXCL12(Prepotech、ロッキーヒル、ニュージャージー州)、Mig/CXCL9、またはSLC/CCL21(R&D Systems)600 μlのみを、ウェルのあいだのインサートに隣接する下のチャンバーに入れた。37℃で3時間後、下のチャンバーに向かって遊走した細胞を回収して、各細胞集団の異なる遊走をサイトメトリーによって分析した。
【0120】
リアルタイム定量的RT-PCR試験
総RNAをトリゾル(Life Technologies)を用いて調製して、混入の可能性がある如何なる染色体DNAも、製造元の説明書(Gene Hunter、ナッシュビル、テキサス州)に従ってDNアーゼIによって消化した。次に、オリゴ(dT)12-18およびSuperscript II逆転写酵素(Life Technologies)を用いてRNAを逆転写した。リアルタイム定量的PCRは、ABI PRISM 5700配列検出システム(Applied Biosystems)において製造元の説明書に従って、96光学ウェル(Applied Biosystems、Courtaboeuf、フランス)を有する特殊なマイクロタイトレーションプレートにおいて緑色PCR SYBR試薬キットによって行った。蛍光シグナルは、リアルタイムで定量的PCR情報を提供するために、各PCRサイクルのあいだに緑色の二本鎖SYBR DNAを直接取り込むことによって生成された。プライマー(MWG Biotech、Ebersbert、ドイツ)は、ゲノムDNA増幅を防止するためにエキソン-イントロン接合部を測定するように、そしてPCRの増幅効率を増加させるために100〜150 bpのアンプリマーが得られるように設計した。プライマーは全て、二量体の形成を防止する条件で用い、増幅された産物の精度を、電気泳動および制限酵素消化マップによって試験した。cDNAは全て、異なるドメスティック(domestic)遺伝子4個の発現の平均値についてアッセイした。PCR条件は94℃で10分、各増幅に関して20μlの最終容積で、94℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で30秒を40サイクルであった。標的遺伝子発現は、異なるドメスティック遺伝子4個によってRNA濃度を標準化した後に測定して、値を陰性対照に対する発現の増加に関して表記する。
【0121】
実施例2:マウスTr1細胞のようなCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の特徴付け
マウス脾細胞の生体試料からのCD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACS分析
BALB/cマウス脾細胞をFITC結合抗CD3抗体、PC5-結合抗CD4抗体、およびPE結合CD18抗体によって標識した。CD3+CD4+ T細胞のFACS分析によって、CD18抗原を過剰発現することができる集団の存在が示され、これはCD4+ T細胞全体の14%を占める(図1A)。BALB/cマウス脾細胞をPC5-結合抗CD4抗体、PE結合CD18抗体およびFITC結合抗CD49b抗体によって標識した。CD4+ T細胞のFACS分析により、マウスにおいてCD18brightCD4+ T細胞の35%が同様に、CD49b抗原を過剰発現することが示される(図1B)。
【0122】
CD4+CD18brightCD49b+ T細胞のサイトカイン産生プロフィール
CD4+CD18brightCD49b+ T細胞を、BALB/cマウス脾細胞のCD4、CD18、およびCD49b検出後にFACS技術によってソーティングした。次に、標識抗CD3抗体(10μg/ml)および可溶性抗CD28抗体(1μg/ml)を用いて、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞をインビトロで活性化した。培養48時間後に上清を回収して、ELISA試験を行ってIL-10、IL-4、IFN-γの有無を決定した。結果から、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞は、Tr1 T細胞に関して記述されるプロフィールと同じサイトカイン産生プロフィールを有することが示される(大量のIL-10産生、IFNγ産生、ならびにIL-4産生を認めない)(図1c)。
【0123】
3H-チミジン取り込みによるCD4+ T細胞の増殖試験
ソーティングしたCD4+CD18brightCD49b+またはCD4+CD18brightCD49- T細胞およびCD4+細胞を、放射線照射した脾細胞および可溶性抗CD3抗体(10 μg/ml)の存在下で培養した。二つの細胞集団をポリカーボネートメンブレン(孔径0.4 μm)によって分離した。3日間培養後、総CD4+ T細胞集団の増殖を3H-チミジンの取り込みによって測定した。これらの実験は、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞が、可溶性因子に依存するメカニズム、Tr1細胞に対して特異的なメカニズムに従ってバイスタンダーCD4+ T細胞の増殖を阻害できることを示している(図1D)。
【0124】
耳の炎症を有するマウスにおけるCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の注射
ハプテンであるオキサゾロンに対する遅延型皮膚過敏症を、BALB/cマウスにおいてハプテンを皮膚上部に塗布することによって誘導した。オキサゾロンによって処置したマウスに、抗卵白アルブミンTCR(T細胞受容体)に関するDO11-10トランスジェニックマウスからのソーティングしたCD4+CD18brightCD49b+ T細胞を注射した。次に、注射した細胞を特異的に活性化するために、マウスの炎症を有する耳において卵白アルブミンリポペプチドを処置するか、または無処置とした。細胞の注射時から開始して耳の腫脹を経時的に4日間測定した。結果は、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞が、インビボで卵白アルブミンリポペプチドによって活性化された場合に限って、皮膚炎症を阻害することができることを示している。これらの結果は、同じ病態モデルにおけるTr1 T細胞クローンのインビボ阻害作用に対応する(図1E)。
【0125】
CD4+CD18brightCD49b+ T細胞の注射後の腸疾患を有するマウスにおけるCD4+ T細胞の増殖試験
SCIDマウスにCD4+CD45RBhighを注射して炎症性腸疾患を誘導した。1群のマウスを同様に、DO11-10トランスジェニックマウスからのソーティングしたCD4+CD18brightCD49b+ T細胞によって処置して、卵白アルブミンを与えた。細胞を注射した8日後、結腸粘膜におけるCD4+ T細胞の比率をフローサイトメトリーによって分析した。対照マウスは重度の腸炎症を有し、細胞浸潤物内部に高い比率のCD4+ T細胞を有するが、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞を処置したマウスは、炎症から保護されて、結腸におけるCD4+ T細胞の浸潤は少ない。これらの実験は、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞が、Tr1 T細胞として、炎症性腸疾患からマウスを保護できることを示している(図1F)。
【0126】
実施例3:ヒトCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の特徴付け
PBMC細胞の生体試料からのCD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACS分析。
末梢血単核球をフィコール勾配遠心によって分離して、APC結合抗CD4抗体、PC5-結合抗CD3抗体、PE-結合抗CD18抗体、およびFITC結合抗CD49b抗体によって標識した。CD3+CD4+ T細胞のFACS分析により、CD18抗原を過剰発現することができ、ヒト血液中でCD3+CD4+ T細胞の20%を占める集団が存在することが示される(図2A)。CD3+CD4+ T細胞のFACS分析では、ヒト血液中のCD18brightCD4+ T細胞がCD49b抗原も過剰発現することが示される(図2B)。
【0127】
CD4+CD18brightCD49b+ T細胞によるサイトカイン産生プロフィール
ヒトCD4+CD18brightT細胞を、単核球のCD4およびCD18標識後にFACS技術に従う細胞ソーティングによって分離した。次に、CD4+CD18brightT細胞を、抗CD3標識抗体(10 μg/ml)および可溶性抗CD28抗体(1μg/ml)によってインビトロで活性化した。培養48時間後に上清を回収して、IL-10、IL-4、およびIFN-γの有無を検出するためにELISA試験を行った。結果は、ヒトCD4+CD18brightT細胞がそのマウス相同体と同様に、Tr1 Tリンパ球に関する記述と同じサイトカイン産生プロフィールを有することを示している(IL-10の大規模産生、IFNγの産生およびIL-4産生を認めない)(図2C)。
【0128】
健康対象およびクローン病患者に存在するCD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACS分析の比較
血液中のCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の割合を、健康対象およびクローン病患者のあいだで比較した。CD3+CD4+ T細胞の分析から、各群の代表である対象に関して、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞の比率がクローン病患者において減少していることが示される(図2D)。
【0129】
健康対象およびクローン病患者におけるCD4+CD18bright T細胞の比率は、フローサイトメトリーによって示されるように、活性化CD25+CD4+ T細胞の比率と反比例した。クローン病患者(n=4)は、健康対象(n=5)と比較してCD25+CD4+ T細胞数の増加およびCD4+CD18bright T細胞数の減少を示す(図2E)。
【0130】
実施例4:炎症組織への特異的遊走を可能にするTr1-調節リンパ球の接着分子の組の過剰発現
インビボにおいて、現在、有害な免疫病理学的反応を調節するCD4+調節T細胞の亜集団が存在する明白な証拠がある。これらの細胞は、自己免疫疾患を治療する場合には治療的長所を有する可能性があるが、これらの調節メカニズムの多くの主たる長所は、特にその遊走挙動、正確な作用部位、およびこれらのメカニズムに関与する分子経路に関してなおも見落とされている。異なる二つの炎症モデルにおいて、Tr1細胞の遊走ダイアグラムを、インビトロ分化後に得られたTh1およびTh2エフェクター細胞のダイアグラムと比較した。Tr1細胞は、Th1およびTh2細胞とは異なり、炎症組織に選択的に遊走し、二次免疫臓器にはほとんど遊走しないことが示された。既知の全てのケモカイン受容体の分析を行っても、Tr1細胞に対して特異的な遊走を説明する如何なる特異的発現も判明しなかった。しかし、流動的な条件で、ヒトまたはマウスTr1細胞は、炎症性血管内皮でより大きい停止を示す。接着細胞の分析から、PSGL-1、LFA-1、αV/β3、およびPECAM-1の調節機能および発現の増加を有するTr1細胞に対して特異的な分子デザインが存在することが判明した。これらの結果は、Tr1細胞が炎症部位の制御を専門とする調節性T細胞のサブセットを表すことを示している。
【0131】
Tr1細胞は炎症を有する結腸に選択的に遊走する
これまでの実験において、本発明者らは、scidマウスにおいて実験的に引き起こされた炎症性腸疾患(IBS)モデルにおいて、Tr1細胞が炎症を防止できることを示した(Grouxら、1997;Immunol Today. 1999、10月、20(10):442〜5)。IBDの制御におけるインビボでのTr1細胞の作用部位を決定するため、IBDを引き起こすために、CB-17 scidマウスを病原性CD4+CD45RBhi T+細胞によって再構成した。移入の4週間後、マウスに、異なる特異的細胞OVA Th1、Th2、およびTr1(2×106個)を静脈内注射して、飲料水にOVAを投与したが、これはTr1細胞による結腸炎の完全な阻害が認められる状況であった。1週間後、マウスを屠殺して、KJ-1,26+細胞(OVA特異的T細胞)の存在を結腸、脾臓、および腸間膜リンパ節において分析した。Tr1細胞によって処置したマウスの炎症を有する結腸では、多くのKJ-1,26+細胞を認めた(図3A)。対照的に、OVA特異的Th1およびTh2細胞を処置したマウスでは、結腸に浸潤した細胞において検出されたCD4+ KJ-1,26+ T細胞はより少なかった。排液腸間膜リンパ節および脾臓(示していない)の分析から、Th1またはTh2細胞が蓄積していることが判明したが、Tr1細胞はごくわずか認められたに過ぎなかった(図3A)。異なるT細胞を、病原性CD4+CD45RBhi T+細胞と同時に0日目に注射した場合にも類似の結果を認めた(示していない)。本発明者および他の研究者(Grouxら、1997;Barratら、J Exp Med 2002 3月4日;195(5):603〜16)は、二つの異なる炎症モデルにおいて、Tr1細胞の保護作用を導入するために、特異的抗原(卵白アルブミン)を、IBDモデル(Grouxら、1997)では局所(経口)、またはEAEモデル(Barratら、2002)では頭蓋内注射しなければならないこと、および抗原の全身注射(静脈内または腹腔内注射)は無効であることを示した。これらの結果は、Tr1細胞の局所活性化が必要であることを示唆した。したがって、本発明者らは、炎症結腸へのTr1細胞の遊走にとって、炎症部位での抗原の存在が必要であるか否かを調べるために分析を行った。CD17 scidマウスに、CD4+CD45RBhi T細胞およびOVA特異的Tr1細胞を同時に(図3C)または再構成後4週目(図3B)に、OVAの存在下または非存在下で注射した。注射したKJ1-26+ Tr1細胞の免疫化学(図3C)またはフローサイトメトリー(図3B)による分析から、Tr1細胞が、その特異的抗原の非存在下であっても炎症結腸に対して特異的に遊走することが示された。しかし、白血球の浸潤によって示されるように、その調節機能を活性化するためには、Tr1細胞に対して特異的な抗原の活性化が必要であり、卵白アルブミンによって処置していないマウスでは、浸潤性Tr1細胞が存在するにもかかわらず、炎症が認められた(図3C)。
【0132】
Tr1細胞の遊走が、その特異的抗原の存在に依存しなかったことから、本発明者らは、エクスビボで精製した細胞に対するその遊走を比較することができた。第一に、炎症結腸に対するTr1細胞の遊走がTh1細胞と比較してより大きいことが、インビトロで分化したTh1細胞集団の遊走が比較的弱いことが原因ではないことを確認するために、本発明者らは、Tr1細胞の遊走を、総細胞浸潤物(80%多形核好中球)またはCD4+CD45RBhi T細胞によって再構成したscidマウスの炎症結腸から単離した精製CD4+ T細胞と比較した(図4A)。異なる細胞集団を、異なる蛍光プローブによって標識して、4週間前にCD4+CD45Rbhi T細胞によって再構成したscidマウスに同時に静脈内注射した。注射の24時間後、炎症結腸に対する蛍光細胞の遊走をフローサイトメトリーによって分析した。炎症結腸に対するその遊走が、総白血球集団の遊走より3倍大きく、そして炎症結腸から単離した精製CD4+ T細胞の遊走より30倍大きかったことから、炎症組織に対するTr1細胞の遊走がより大きいことを確認した(図4A)。
【0133】
Tr1細胞特異的遊走は炎症を有する腸に限定されない
無処置scidマウスまたは正常BALB/cマウスにTr1、Th1、およびTh2細胞を注射しても、正常な腸組織へのTr1細胞の特異的向性は示されなかった(データは示していない)。この理由から、抗原の非存在下でのTr1細胞特異的遊走が炎症を有する腸組織に限定されるか否か、またはこれが如何なる所定の組織にも存在する炎症シグナルに対して特異的であるか否かを分析するために、本発明者らは、耳の皮膚にハプテンであるオキサゾロンを適用することによって、皮膚炎症モデルを作製した(図5A)。炎症は、CD4+CD8+ T細胞(示していない)を含む白血球の浸潤(図5B)を特徴とした。
【0134】
炎症を有する皮膚におけるT細胞の遊走を分析するために、Th1、Th2、およびTr1細胞を蛍光カルセインによって標識して、オキサゾロン処置の5日後に注射した。IBDモデルと同様に、排液リンパ節および脾臓に対して選択的に遊走するTh1およびTh2細胞と比較すると(図5CおよびD)、Tr1細胞は、炎症を有する耳へのより大きい遊走を示した(図5CおよびD)。各集団に関して、回収した細胞の総数に関して所定の組織における細胞の割合は、これらの細胞のこれらの臓器への相対的移動能の測定とすることができる。これらの割合は、分析した四つの集団において有意に異なる:炎症を有する耳では、Tr1細胞に関して90%、Th1細胞に関して60%、およびTh2細胞に関して30%、およびリンパ様臓器ではTr1細胞に関して10%、Th1細胞に関して40%、およびTh2細胞に関して70%(図5E)。全てにおいて、データは、Tr1細胞が炎症組織に向かって遊走することを示しており、Tr1細胞の専門的な遊走は炎症シグナルに依存するのであって、抗原特異的でも組織特異的でもないことを示唆している。
【0135】
流動的条件で活性化された血管内皮細胞に対するTr1細胞の堅固な接着
炎症を有する細静脈に対する接着は、炎症部位の方向への循環白血球の動員における初期の本質的な事象である。炎症組織に対するTr1細胞のより大きい遊走が起こるメカニズムの分析をさらに調べるために、Tr1およびTh1細胞と活性化TNF-α内皮細胞との相互作用を比較した。このプロセスを分析するために、本発明者らは、活性化TNF-α血管内皮細胞株(SVEC4-10)をコーティングしたフローチャンバーにおいて実験を行い、蛍光標識に対するT細胞の接着を上記のようにビデオ画像によって分析した(Ticchioniら、FASEB J. 2001、2月;15(2):341〜50)。インビボ実験に関して、蛍光染色を用いてTr1およびTh1マウス細胞を標識した。T細胞を同数混合して、2 dyn/cm2の速度でSVEC4-10の単層上で潅流した。結果は、Tr1細胞がTh1細胞と比較して活性化血管内皮細胞上でより大きい停止能を有することを示した(図6AおよびB)。類似の実験において、Th2細胞は、活性化内皮細胞において最小の停止を示した(示していない)。
【0136】
活性化血管内皮細胞に対するこの堅固な接着がTr1細胞の特徴であることを確認するために、本発明者らは、ヒトTr1、Th1、およびTh2細胞において類似のフローチャンバー実験を行った(表1)(Grouxら、1997;Lecartら、J Invest Dermatol. 2001、8月;117(2):318〜25)。異なるドナーから単離したヒトTh1、Th2、およびTr1細胞を、緑色蛍光二酢酸フルオレセインによって標識し、TNF-αによって予め活性化した形質転換ヒト細胞株において個別に潅流した。図8Cは、Th1およびTh2細胞と比較してヒトTr1細胞が、活性化内皮細胞においてより高レベルの堅固な停止を示すことを示している。この結果は、インビボの炎症組織において認められたTr1細胞の蓄積が、部分的に、活性化内皮に対する循環中のTr1細胞のより大きい接着によることを示唆している。
【0137】
Tr1細胞接着メカニズム
接着の初期事象を最初に、移動相において分析した。フローチャンバー接着試験の際の移動細胞数を、蛍光カルセインによって標識した異なるTr1およびTh1細胞のあいだで比較した。さらに、Th1リンパ球と比較して多数のTr1リンパ球が、活性化内皮細胞上でローリングを示した(図7A)。P-セレクチンが、インビボで炎症を有する細静脈においてTリンパ球のローリングを引き起こす高分子であることを考慮して(Hirataら、J Exp Med. 2000、12月4日;192(11):1669〜76)、P-セレクチンをコーティングしたスライドガラス上で移動するTr1およびTh1細胞数に注目した。Tr1リンパ球はTh1細胞より大きいP-セレクチン上でのローリング能を示した(図7A)。P-セレクチンをコーティングしたスライドガラス上でのTr1細胞のローリングが大きかったことは、ヒトおよびマウスTr1細胞の双方におけるPSGL-1(P-セレクチン糖タンパク質-リガンド-1)のmRNA発現がより高いことと相関する(図8AおよびB)。これらの結果は、Tr1細胞上でのPSGL-1の過剰発現が、炎症組織に対するこれらの細胞の優れた遊走能において重要な役割を果たすことを示唆している。
【0138】
LFA-1/ICAM-1およびVLA-4/VCAMは、炎症プロセスにおけるT細胞接着の重要なメディエータである(Alonら、Semin. Immunol. 2002、4月;14(2):93〜104)。その結果、LFA-1およびVLA-4の双方が、活性化内皮に対するTr1細胞の接着の増加に関与しているか否かを調べた。基質として組換え型ICAM-1をコーティングしたフローチャンバーにおける接着試験を用いたところ、ICAM-1に対するTr1細胞の接着はTh1細胞と比較してより大きいことが認められた。これらの結果は、活性化内皮細胞に関して得られた結果と一致し、LFA-1/ICAM-1が、炎症内皮に対するTr1細胞の接着において主要な役割を果たすことを示唆している(図7B)。
【0139】
Tr1細胞の接着におけるLFA-1細胞の重要な役割を、フローチャンバー実験において(図7C)、およびTr1細胞をICAM-1-Fc分子と共に予めインキュベートすることによって炎症を有する耳へのその遊走が阻害されるインビボ実験(図7D)において、活性化内皮でのTr1細胞の停止を阻害する抗β2-インテグリン鎖ブロック抗体を用いる実験によって確認した。Tr1細胞がVCAM-1によってコーティングしたスライドガラス上で停止しないことから(図7B)、LFA-1が示す肝要な役割とは対照的に、VLA-4/ICAM-1相互作用はTr1細胞の接着にとって重要ではないように思われる。さらに、抗β1ブロック抗体または可溶性VCAM-1は活性化内皮でのTr1細胞の停止を防止しなかったが、それらはTh1細胞の接着を阻害した(図7C)。
【0140】
Tr1細胞上での接着分子の発現
インビボでのTr1細胞の選択的遊走を説明するメカニズムに関する研究を行うために、多数のヒトおよびマウスTr1、Th1およびTh2細胞における最も既知の接着分子に関する完全な定量的分析を行った(図8AおよびB)。機能的試験に従って、Tr1細胞上のmRNAαLおよびβ2インテグリン鎖(LFA-1)を、分析した他の細胞集団との比較によって観察した。この結果をフローサイトメトリーによって確認したが、αLおよびβ2の双方が膜に発現されると、Th1およびTh2細胞と比較して、Tr1リンパ球に対する調節の増加を示した(図8C)。Th1およびTh2細胞(図8B)と比較すると、Tr1細胞ではCD31/PECAM-1分子のより高いmRNAおよび膜発現を認めた(図8AおよびB)。CD31/PECAM-1分子は、血管外漏出において重要な役割を有する(Liaoら、J Exp Med. 1997、4月7日;185(7):1349〜57)。Tr1細胞上でこの分子がより多く発現されれば、内皮下区画へのこれらの通過を促進することができるであろう。本発明者らはまた、二つのαVおよびβ3インテグリン鎖の遺伝子および膜の発現がより高いことを発見し(図8A、BおよびC)、これらのインテグリン鎖が二量体形成すると、フィブロネクチンおよびビトロネクチン受容体、ならびに細胞外マトリクスの他の成分を生じる(Huangら、Oncogene 2000、4月6日;19(15):1915〜23)。αVの膜発現がより高いことはまた、ヒトTr1細胞においても確認された(図8B)。Tr1細胞上でのαV/β3の発現が高ければ、炎症臓器内の深部での他の細胞区画の方向に内皮下区画からの細胞の進行を加速するであろう。
【0141】
考察
本発明者らはこのように、Tr1細胞が炎症組織に対するより大きく選択的な遊走能を示すことを証明した。二つの異なるモデルにおいてインビトロで認められたように、炎症臓器におけるTr1 T細胞に対するこの特異的な遊走は、これが炎症結腸および皮膚において同じように認められたことから、組織のタイプに依存せず、または炎症のタイプ、IBDモデルにおいてCD4+ Th1 T細胞によって誘導されたか否か(Powrie、Immunity. 1994、10月;1(7):553〜62)、もしくは皮膚刺激モデルにおいてCD8+ T細胞によって誘導されたか否か(Kehrenら、J Exp Med. 1999、3月1日;189(5):779〜86;Bourら、Acta Derm Venereol 1995、5月;75(3):218〜21)に依存せず、特異的抗原の存在にも依存しない。これらの結果は、ほとんどの組織および異なるタイプの免疫応答において生成された炎症シグナルが、Tr1細胞の動員を迅速に活性化することができること、ならびにその遊走能と相関して、これらの細胞の阻害作用が、局所および選択的に末梢炎症組織において起こることを示唆している。最近の研究が、二つの異なる移植モデルを用いてこれらの知見を間接的に確認したことに注目することは興味深い:著者らは調節性T細胞が二次リンパ様組織と比較して寛容移植片において濃縮されていることを示した(Sawitzki、Transplant Proc. 2001、5月;33(3):2092〜3;Graca、J Exp Med. 2002、6月17;195(12):1641〜6)。末梢炎症臓器に対するこの選択的向性は、調節T細胞の機能の逆説の一つを説明するために役立つ。実際に、近傍が抑制される抗原誘導メカニズムによって調節T細胞が機能することは今では明白であるが、このことは調節されるT細胞と調節性のT細胞とが非常に近傍に存在しなければならないが、必ずしも同じ抗原を認識する必要はないことを意味しいている(Grouxら、1997)。さらに、いくつかの報告は、天然の調節T細胞が、それ自身または一般的に遭遇する抗原に対して向けられることを示唆した(Congら、J Immunol. 2002、12月1日;169(11):6111〜9)。その結果、調節T細胞に依存する保護メカニズムが、インビボで病原体に対して有用な免疫応答をどのように発生させるかを調べることができる。保護免疫応答が始まる二次リンパ様臓器の方向へのTr1細胞の遊走が、Th1およびTh2エフェクターT細胞と比較して少ないことは、これらの知見を説明することができる。
【0142】
血流から組織への白血球の遊走は、いくつかの相からなるプロセスによって促進され、これは多くの場合、(i)セレクチンによる白血球の捕獲およびローリング;(ii)白血球インテグリンの迅速な活性化、(iii)活性化インテグリンを通しての内皮リガンドへの接着;および(iv)血管外漏出を含む(Kubes、Semin. Immunol.2002、4月;14(2):65〜72、総説;Springer、Cell 1994、1月28日;76(2):301〜14、総説;Butcherら、Science 1996、4月5日、272(5258):60〜6、総説)。ケモカインおよびケモカイン受容体は、様々な組織における白血球の選択的サブセットの化学誘引に重要に関与することが示されているが、活性化内皮細胞において堅固な停止を誘導するために白血球におけるインテグリンの活性化にも関与することが示されている(Constantinら、Immunity 2000、12月;13(6):759〜69;Campbell、Science 1988、1月16日;279(5349):381〜4)。しかし、Tr1、Th1、およびTh2細胞上でのケモカイン受容体の発現の分析により、Tr1細胞では、Th1およびTh2細胞と比較して、既知の全てのケモカイン受容体の発現の調節が驚くほど減少することが示された。この調節の減少は、炎症(MIG)またはリンパ様臓器への遊走(SLCおよびSDF-1)に関与するケモカインに反応する遊走が減少することによって確認された(Baggiolini、1998)。これらの結果は、特定のケモカイン受容体の過剰発現だけでは、炎症部位の方向へのTr1細胞特異的遊走を説明することができないことを示唆している。ケモカイン受容体がこのように過剰発現されないにもかかわらず、ヒトおよびマウスTr1細胞はいずれも、活性化血管内皮細胞に対してTh1およびTh2細胞より大きい接着を示す。
【0143】
本発明者らは、Tr1細胞が、活性化血管内皮細胞およびP-セレクチン上で流動条件でローリング能を示すことを初めて発見した。Th1リンパ球と比較して、活性化血管内皮細胞上でTr1細胞のより良好な堅固な停止も同様に認めた。活性化血管内皮細胞に対するTr1細胞の接着に関するこれらのメカニズムの増強を調べるために、LFA-1の膜の発現および機能は、他のT細胞サブセットと比較してTr1細胞での調節が増加していることを示した。Tr1細胞に対して特異的な遊走に関するLFA-1の役割の重要性は、ICAM-Fc分子によってLFA-1を遮断すると、炎症組織の方向へのTr1細胞の遊走が阻害されたインビボ環境において確認された。
【0144】
実際に、CD4+ T細胞のサブセット上での接着分子の発現の完全な分析を行ったところ、Tr1細胞が、損傷組織に対するその遊走を誘導するように協調して作用する特定の組の接着分子、PSGL-1、LFA-1、αV/β3、およびPECAM-1を過剰発現することを示した。実際に、PSGL-1が過剰発現されると、Tr1細胞のローリング能が増加する。LFA-1は、停止および血管外浸出段階に関係していることが示されている。PECAM-1はまた、血管外浸出段階において重要な役割を果たす分子でもあり、最後にαV/β3は、細胞外マトリクスを通して組織内で細胞の遊走を誘導することが示されている(Liaoら、1997;Huangら、2000)。複数の接着分子の過剰発現に関して論争されているように、Tr1細胞は、Th1細胞と比較して、VCAM-1に対する接着能が減少していることに注目することは興味深い。VCAM-1の発現は炎症部位において誘導されるが、VCAM-1は、T-B細胞相互作用を通しての液性反応の生成において中心的な分子であることが報告されている。このように、本発明者らは、Tr1リンパ球上でVLA-4機能がないことは、調節T細胞が、B細胞によって媒介される免疫応答の開始においてB細胞区画から除外される(Leukerら、J Exp Med. 2001、3月19日;193(6):755〜68)ことを確実にできるという仮説を立てた。
【0145】
(表1)用いた様々なT細胞のクローンおよび集団のサイトカインプロフィール


【0146】
T細胞クローンおよびヒトおよびマウスT細胞集団を、上記のように作製した。マウスT細胞をOVAペプチド(0.6μM)および総放射線照射脾細胞(2×106個/ml)によって刺激した。IL-2およびIL-4に関して24時間後、およびIL-10およびIFN-γに関して48時間後に回収した培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。ヒトT細胞クローンをクロスリンクしたモノクローナル抗体抗CD3(10 μg/ml)および抗CD28(1μg/ml)によって活性化して、上清をIL-2およびIL-4に関して24時間後、ならびにIL-10およびIFN-γに関して48時間後に回収した。結果は、代表的な3回の実験からの複合データを示す。
【0147】
実施例5:CD4+CD18brightCD49b+ Tr1細胞の特徴を調べるためのT細胞および樹状細胞の調製法
実験法
マウス
BALB/cAnNマウスをCERJ(Le Genest Saint Isle、フランス)から得て、DO11-10ホモ接合マウスは、S.D. Hurst博士(DNAX Research Institute、パロアルト、カリフォルニア州)から寄贈された。BALB/c IL-10トランスジェニックマウスは、MHCクラスII Eaプロモーター10の制御下でcDNA hIL-10を用いて得た。動物は全て、本発明者らの動物施設において標準的な無菌的条件で飼育した。マウスは全て雌性で、各実験の開始時に4〜8週齢であった。
【0148】
培地、抗体、および試薬
T細胞培養のために用いた試薬はYssel培地(Ysselら、1984)であった。樹状細胞は10%SVF(Roche、Meylan、フランス)、2 mM L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、2×10-5 Mβ2-メルカプトエタノール(全てInvitrogen)を添加したRPMI 1640において培養した。樹状細胞の精製に関して、本発明者らは、2 mM EDTA(全てInvitrogen)およびコラゲナーゼD(Roche、Meylan、フランス)を含み、Ca++およびMg++を含まないHBSS培地を用いた。
【0149】
組換え型マウスGM-CSF、TNF-α、およびIFN-γは、R&D Systems、アビントン、イギリスから得た。組換え型マウスIL-10およびIL-4は、R.L. Coffman博士、DNAX Research Institute、パロアルト、カリフォルニア州から寄贈された。
【0150】
DCの精製および特徴付けは、抗CD3(17A2)、抗CD4(GK1.5)、抗CD8(53-6.7)、抗CD11b(M1/70)、抗CD11c(HL3)、CD28(37.51)、抗I-Ad(AMS-32.1)、抗CD62L(Mel-14)、抗CD80(16-10A1)、抗CD86(GL1)、抗B220(RA3-6B2)、CD45RB(16A)、抗Gr1(RB6-8C5)(全て、Pharmingen Becton Dickinsonから)、およびDEC-205(NLDC-145)抗体(Serotec、イギリス)によって行った。
【0151】
サイトカインアッセイは、精製抗体抗IL-4-PEまたは-FITC(11B11)、抗IFN-γ-PE(XGM1.2)、抗IL-10-FITC(JES-16E3)、抗IL-4(11B11)および抗IL-10(2A5)、抗IFN-γ(XGM1.2)、およびビオチン化抗体抗IL-4(24G2)、抗IL-10(SXC1)、抗IFN-γ(R4-6A2)(全て、Pharmingen Becton Dickinsonから)によって行った。
【0152】
OVA特異的血清IgGの分析のために用いた抗IgE(R35-72)、および抗IgG1(A85-1)抗体は、Pharmingen Becton Dickinsonから得た。
【0153】
溶解緩衝液、メトリザミド、LPS、OVA323-339ペプチド、卵白アルブミン、およびミョウバンは、Sigma、Saint Quentin Fallavier、フランスから得た。
【0154】
フローサイトメトリー
DCサブセットの表現型分析は、ビオチン化抗体抗CD11cによる二重または三重染色の後に、ストレプトアビジン-Cy-Chrome、PEに結合させた抗CD45RB、およびFITCに結合させた第三の抗体によって行った。染色段階は全て、0.1%SABおよび0.02 mM NaN3を含むPBS緩衝液において4℃で行った。3回洗浄後、標識細胞をFACScan(Becton Dickinson)において分析した。
【0155】
細胞内サイトカインの染色
フローサイトメトリーによる細胞内サイトカインの分析は、記述されたとおりに行った(Grouxら、1997)。細胞(106個/ml)を固定した抗CD3および抗CD28 ACmによって6時間活性化した。モネンシンを10 μg/mlで加えて、4時間後に細胞を回収して洗浄し、2%ホルムアルデヒドにおいて固定した。細胞内染色に関して、細胞を以下のACmと共にインキュベートした:抗IL4-FITCもしくは-PE、抗IFN-γ-PE、および抗IL-10-FITC、または対応するアイソタイプの対照を全て5μg/ml。試料をFACScan(Becton Dickinson)において分析した。
【0156】
骨髄由来の樹状細胞(DC-MO)
DC-MOを、上記にいくつかの改変を加えて髄様先駆細胞から作製した(Inabaら、1992)。簡単に説明すると、脛骨および大腿骨をすすぐことによって骨髄を抽出した後、0.83%塩化アンモニウムによって赤血球を除去した。細胞を24ウェルプレート(Becton Dickinson)において(106個/ml/ウェル)、10 ng/ml組換え型マウスGM-CSF、および2.5 ng/ml組換え型マウスTNF-αを添加した完全なRPMI培地において、組換え型マウスIL-10(500 ng/ml)の存在下または非存在下で37℃で培養した。DC-MOはD6で回収した。
【0157】
脾臓樹状細胞の精製
脾臓を小片に切断して、これをコラゲナーゼD(1 mg/ml)のHBSS溶液によって、絶えず攪拌しながら37℃で20分間消化した。消化した断片を0.7μmのスクリーン(Becton Dickinson)において濾過して、細胞浮遊液を精製培地において2回洗浄した。次に、細胞をメトリザミド勾配において層状に沈降させて、600gで10分間遠心した。界面上で濃縮された細胞を回収して、1回洗浄し、リンパ球からDCを分離するために、精製培地における浮遊液に戻した。回収した低密度細胞を抗CD3、抗B220、および抗GR-1からなるモノクローナル抗体混合物によって4℃で30分間処理することによって、異なるT細胞株、B細胞、および顆粒球を枯渇した。抗ラットIgをコーティングした磁気ビーズと共にビーズ対細胞が10:1の比率で4℃で1時間インキュベートした後、陽性細胞を磁石によって回収した。
【0158】
「無処置」トランスジェニックTCR T細胞の調製
DO11.10 OVA TCRトランスジェニックマウスの脾臓T細胞を、既に記述されているとおりに調製した(Grouxら、1997)。簡単に説明すると、CD4+ T細胞を、磁気ビーズを用いて、ACm抗CD8、抗B220、および抗CD11bの混合物による負の選択によって濃縮した。CD4+/Mel14brightT細胞を、抗CD4-PEおよび抗CD62L-FITC抗体(Mel14)を用いてフローサイトメトリーによってソーティングした。ソーティングしたT細胞集団は典型的に、二つのマーカーに関して99%陽性であった。
【0159】
樹状細胞によるTCRトランスジェニックT細胞の分化
インビトロT細胞分化試験をYssel培地において行った。精製「無処置」CD4+ T細胞(2.5×105個)を樹状細胞集団によって活性化することによって、一次刺激培養物を確立して、これをソーティングし、24ウェルプレート(Becton Dickinson)においてOVA323-339ペプチド(0.6 μM)によって総容量1 mlでパルスした。次に、細胞を増殖させてD7で回収して、3回洗浄して計数し、第二の分化のために、新たにソーティングした樹状細胞集団+0.3 μM OVA323-339ペプチドによって再刺激した。同じ技法を第三の分化サイクルに適用した。分化後、T細胞を回収して洗浄し、0.3 μM OVA323-339によって再刺激して、脾臓CPAを放射線照射した。T細胞の増殖は、72時間インキュベーションの最後の12時間での3H-チミジンの取り込みによって測定した。IL-4、IL-10、およびIFN-γの産生は、T細胞の再刺激後48時間目に回収した上清においてELISAによって測定した。
【0160】
トランスウェル実験
トランスウェルシステム(0.4μM Costar-Dutscher、Brumath、フランス)の下位区画において、正常BALB/cマウスから単離した精製CD4+ T細胞106個を、放射線照射したBALB/cマウス脾細胞106個およびACm抗CD3(10μg/ml)によって刺激した。上の区画において、樹状細胞による1回刺激によって分化したCD4+ T細胞を0.3μM OVApおよび放射線照射脾細胞106個によって刺激した。3日後、スライドトレーを除去して、下位ウェルのT細胞を96ウェルプレートに移した。増殖反応は、培養の最後の12時間での3H-チミジンの取り込みによって分析した。
【0161】
細胞学
インビトロで生成した、またはBALB/cマウス脾臓から単離したソーティングしたCD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB-を、GM-CSF(10 ng/ml)の存在下でLPS(1μg/ml)と共に24時間インキュベートした。新たにソーティングしたまたは刺激したDCを遠心して(Cytospin2、Shandon)、メイ-グリュンワルド-ギムザによって染色した。
【0162】
リアルタイム定量的PCRアッセイ
ソーティングしたDC(1×106個;純度>99%)のサブセットの総RNAを、既に記述されているように(Cottrezら、1994)トリゾル(Life Technologies)によって調製して、混入している可能性がある如何なる微量の染色体DNAも、製造元の説明書(Gene Hunter、ナッシュビル、テキサス州)に従ってDNアーゼIによって消化した。次に、既に記述されているように(Cottrezら、1994)、RNAに、オリゴ(dT)12-18およびSuperscript II逆転写酵素(Life Technologies)による逆転写を行った。リアルタイム定量的PCRは、SYBR Green PCRコア試薬キットによって、特殊なマイクロタイトレーションプレートにおいて、製造元の説明書に従ってABI PRISM 5700配列検出システム(Applied Biosystems、Courtaboeuf、フランス)において96ウェルで行った。二本鎖DNA鎖におけるSYBERグリーンの直接取り込みによって各PCRサイクルにおいて蛍光シグナルを産生して、リアルタイムで定量的情報を得た。ゲノムRNAの増幅を防止するために、およびPCRによる増幅効率を増強するために100〜150 pbのアンプリコンを生じるように、エキソン-イントロン接合部を含むプライマー(MWG Biotech、Ebersberg、ドイツ)を設計した。プライマーは全て、二量体の形成を防止する条件で用い、増幅産物の信頼性を電気泳動および酵素的制限マップによって確認した。cDNAは全て、4つの異なるハウスキーピング遺伝子発現の平均値に関してアッセイした。PCRの実験条件は、以下の通りであった:94℃で10分、および各増幅に関して94℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で30秒を最終容積20 μlで40サイクル。標的遺伝子の発現を、ハウスキーピング遺伝子4個と共に、RNA濃度を標準化した後に測定して、値を陰性対照に対する発現の増加倍数として表記する。
【0163】
サイトカインアッセイ
IL-4、IL-10、およびIFN-γを、既に記述されているように(Cottrezら、2000)ELISAサンドイッチ法を用いてアッセイした。簡単に説明すると、ELISAプレート(Polylabo、フランス)を、適した抗サイトカインACmのカーボネート緩衝液溶液によってコーティングして、4℃で一晩インキュベートした。反応を、各ウェルにおいて20%PBS/SVF 150μlによって室温で30分間ブロックした;インビトロで刺激したCD4+ T細胞の希釈した上清50μlをウェルに加えてから、4℃で一晩プレートをインキュベートした。洗浄段階の後、第二段階のビオチン化抗体50μlを各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートして、洗浄した。酵素結合体(ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ)を各ウェルに加えた。次に、プレートを室温で1時間インキュベートして、洗浄し、基質(ABTS、1 mg/ml)100 μlを各ウェルに加えた。発色後、プレートをELISAリーダーにおいて405 nmで読み取った(Labsystems iEMSリーダー、ヘルシンキ、フィンランド)。
【0164】
IL-10は異なるDCサブセットの分化を誘導する。
IL-10は、間接作用によってTr1細胞の分化を誘導することが知られている(Wakkachら、2001)。DCがT細胞の分化において本質的な役割を果たすことを考慮して、本発明者らは、GM-CSFおよびTNF-αの存在下で培養した骨髄前駆細胞からのDCの分化に及ぼすIL-10の作用を分析した(予備実験では、TNF-αの存在がDCの表現型および機能に影響を及ぼさないが、それにもかかわらず樹状細胞集団の収率および生存率を増加させるために役立つことが示された[データは示していない])。培養物に0日目にIL-10を加えると、CD11cの低い発現およびCD45RBの高い発現を有するDC集団の分化が誘導された(図9A)。しかし、IL-10の非存在下では、GM-CSFおよびTNF-αを加えると、高濃度のCD11cを発現するDCの分化が誘導された(図9A)(Inabaら、1992)。CD11cおよびCD45RBの特異的発現に従ってFACSによって細胞をソーティングした後、インビトロで分化したCD11clowCD45RB+は、滑らかな原形質膜および偏心性の核を有するプラズマ細胞様の形態を有した(図9B-1)。しかし、CD11chighDCは小さい樹状突起が存在する異なる形態を有した(図9B-3)。LPSによる新たな成熟後では、二つの集団は、完全に成熟したDCの形態を獲得して、長い樹状突起を有した(図9B-2および4)。MHC II分子および共刺激因子の発現の分析を行ったところ、CD11chighDCと比較してCD11clowCD45RB+ DC(図9C)におけるCD80、CD86、およびI-Aの発現は低レベルであることが示された。LPSによって樹状細胞が成熟しても、CD11clowCD45RB+の表現型は改変されなかったが(図9C)、CD11chighDC上でのCD80、CD86、およびI-A分子の発現を強化した。これらの結果は、IL-10が、LPSによる刺激によって改変することができない偽未成熟表現型を有するCD45RBの特異的発現を特徴とするDCの別個のサブセットの分化を誘導することを示している。
【0165】
IL-10に由来するDCの天然の同等物の単離
したがって、本発明者らは、樹状細胞の分化に及ぼすインビボでのIL-10の影響に関する疑問に取り組む。Tg IL-10非トランスジェニックマウスまたはBALB/cマウスから単離した濃縮された脾臓DCを、CD11cマウスDCに対して特異的なマーカーの発現に関して分析した(図10A)。Tg IL-10マウスにおいて、正常BALB/cマウス(図10A)または非トランスジェニック対照(データは示していない)と比較して、CD11cを弱く発現する多数のDCが認められた。IL-10の存在下でインビトロで分化したCD11clow DCに関して、脾臓CD11clow DCは、CD45RBマーカーを強く発現した(図10B)。さらに、インビトロに由来するDCおよび脾臓CD11clowCD45RB+はいずれも、小さい樹状突起を有するCD11chigh DC(図10C-3)とは異なり、プラズマ細胞様の形態を有した(図10C-1)。LPSによる完全な成熟後、二つの脾臓DC集団は、長い樹状突起を有する完全な成熟DCへと分化した(図10C-2および4)。
【0166】
次に、本発明者らは、Tg IL-10マウスおよびBALB/c対照マウスからの、FACSにおいてソーティングしたCD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB- DC上のMHCのI-Ad分子ならびに共刺激因子CD80およびCD86の発現を調べた。図10Dに示すように、精製CD11clowCD45RB+DCは、CD11chighCD45RB- DCと比較してエクスビボでクラスII MHC、CD80、およびCD86分子を弱く発現することが認められた。CD11clowCD45RB+DCが異なるDCサブセットおよび異なる発達系列の産物を表すか否か、またはそれらがより通常の未成熟なDCの段階を表すか否かを調べるために、GM-CSF(寿命と回収率を増加させるために)およびLPSの存在下で短期間培養することによって、単離したDCのインビトロ成熟を誘導した。これらの条件で、LPSによるインビトロ成熟後、CD11clowCD45RB+ DCはなおもクラスII MHCおよびCD86分子の低い発現を保持し、このことは、CD80の過剰発現を除き、その偽未成熟表現型が安定であることを示唆している。しかし、LPSと共にインビトロでインキュベートした後、CD11chighCD45RB- DCは成熟の増加を示し、クラスII MHC分子および二つの共刺激因子(CD80およびCD86)の発現が増加する(図10D)。全体として、これらの結果は、脾臓から単離されたCD11clowCD45RB+ DCがIL-10に由来するDCのインビボでの同等物を表すことを示している。
【0167】
CD11clowCD45RB+ 樹状細胞サブセットの表現型特徴付けおよびサイトカイン分泌
CD11clowCD45RB+DCサブセットの特徴をよりよく調べるために、本発明者らは、BALB/cマウスからのソーティングしたCD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB-細胞集団上の異なる樹状細胞マーカーの発現を分析した(図11A)。CD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB- DCは、CD11bおよびDEC205を弱く発現し、CD8αを全く発現せず、このことはそれらが「標準的な」骨髄系列(CD11chigh)またはリンパ様(CD8α+)DC(Shortman and Liu、2002)に属さないことを示唆している。その上、B細胞前駆体から分化した最近記述されたDC集団とは異なり、CD11clowCD45RB+ DCは、B220において陰性である(Luら、2001;Martinら、2002)。最後に、これらの細胞はT細胞に対して特異的なマーカー(CD4およびCD2)を発現しない(データは示していない)。
【0168】
DCの特異的機能の重要な部分は、異なる組のサイトカインの分泌によって示される。したがって、本発明者らは、定量的RT-PCRによって、新たにソーティングしたまたはLPSによって活性化したCD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB-樹状細胞上のいくつかの重要なサイトカインの相対的発現を分析した。LPSによる活性化後、CD11clowCD45RB+DCは、IL-10を分泌したのに対し、CD11chighCD45RB- DCはIL-12を分泌した。いずれの集団もIL-1βの分泌を示し、これはLPSによる活性化によってさらに増加したが、IFN-αは、LPSによる活性化の24時間後でも分泌しなかった(図11B)。これらの結果は、CD11clowCD45RB+DCが、活性化後主にIL-10を分泌する樹状細胞の異なるサブセットを表すことを示している。
【0169】
CD11clowCD45RB+ DCは、インビトロでTr1細胞に分化する
DO11-10マウスから単離されてOVAに曝露されていない(「無処置」)特異的T細胞のプライミングおよび分化に及ぼす様々なDCサブセットの影響を分析するために、BALB/cマウスの脾臓から単離した(図12A)、またはインビトロで分化させた(図12B)ソーティングしたCD11clowCD45RB+およびCD11chighCD45RB- DCによるいくつかのT細胞刺激サイクルを確立した。精製「無処置」CD4+ T細胞をOVA(0.6μM)によって、異なるDC/T比で1週間刺激した。次に、T細胞を回収して洗浄し、同じ条件で0.3μM OVAによって再度刺激した。同じ条件で3回刺激した後、分極したT細胞集団を回収して洗浄し、そのサイトカインプロフィールを分析するために、放射線照射したBALB/cマウスの脾細胞および0.3 μM OVAによって再度刺激した(図12A)。本発明者らの結果は、エクスビボで精製された、またインビトロで分化したCD11clowCD45RB+DCが、用いたDC/T比によらず、IL-10を強く分泌する、IFN-γを弱く分泌する、そしてIL-4を分泌しない(または無視できる量)Tr1細胞の分化を誘導したことを示している(Grouxら、1997)(図12AおよびB)。CD11clowCD45RB+樹状細胞とは異なり、CD11chighCD45RB- サブセットの細胞は、IFN-γを強く分泌するTh1細胞をプライミングした(図12AおよびB)。これらの結果は、樹状細胞集団のサイトカインプロフィールに対応し、すなわちTr1細胞を分化させるCD11clowCD45RB+は、IL-10を分泌するが、CD11chighCD45RB- DCによって分泌されるIL-12はTh1細胞の分化を誘導する。
【0170】
さらに、CD11clowCD45RB+DCによるTr1細胞の特異的分化は、異なるT細胞亜集団におけるサイトカイン分泌の細胞質内分析によって示されるように、1回刺激後に認められた(図12C)。CD11clowCD45RB+DCによる1回刺激後に得られたT細胞の機能的特性を分析するために、トランスウェル実験を行った。BALB/cマウスのCD11clowCD45RB+DCによる刺激後に得られたT細胞は、放射線照射脾細胞およびモノクローナル抗CD3抗体によって刺激されたバイスタンダーCD4+ T細胞の増殖を阻害した(図12D)。しかし、マウス抗IL-10および抗TGF-βのACm阻害剤を加えると、これらのT細胞の抑制作用は消失し、Tr1細胞の表現型および機能的分化を確認した(図12D)。対照として、Th1細胞集団(CD11chighCD45RB- DCによって誘導される)は、バイスタンダーCD4+ T細胞の増殖に阻害作用を示さなかった(図12D)。全体として、これらの結果は、CD11clowCD45RB+DCがインビトロでTr1細胞の分化を誘導することを示している。
【0171】
ヒト細胞
示されるように、樹状細胞を、IL-10の存在下または非存在下でGM-CSFおよびIL-4によって前駆細胞CD34+から分化させた。
【0172】
6日後、樹状細胞をCD11cの発現に従ってソーティングして、表記の抗体によって標識した。
【0173】
精製細胞を同様に、LPSによって24時間刺激した後、サイトフルオロメトリーによって分析した。
【0174】
IL-10の存在下で分化した寛容原樹状細胞は、低レベルのCD11c、ならびに低レベルのHLA-DR、CD80、およびCD86分子を発現した。
【0175】
LPSによる活性化は、調べた他のDC集団に及ぼすLPSの作用とは異なり、この集団に関してHLA-DRおよびCD86の発現を増加させなかった。
【0176】
(表)IL-10の存在下または非存在下で分化したソーティングした樹状細胞集団に及ぼすLPS活性化の影響


【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】マウスTr1細胞のようなCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の特徴付け。A)抗CD4、抗CD18、および抗CD49b抗体を用いるCD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACSによる分析。B)CD4+CD18brightCD49b+ T細胞のサイトカイン産生プロフィール。C)単独培養(対照)または透過性膜によって分離してCD4+CD18brightCD49b+ またはCD4+CD18int細胞と共に同時培養したCD4+ T細胞の48時間の増殖の測定。D)ハプテンであるオキサゾロンの皮膚上部適用後にCD4+CD18brightCD49b+ T細胞を注射した後のマウス、およびハプテンによって処置したが注射していないマウスにおける耳の肥厚に関する試験。E)腸の慢性炎症が誘導されていて、CD4+CD18brightCD49b+ T細胞を注射または注射していないマウスの結腸におけるCD4+ Tリンパ球の比率に関する試験。
【図2】ヒトTr1細胞のようなCD4+CD18brightCD49b+ T細胞の特徴付け。A)抗CD3、抗CD4、抗CD18、および抗CD49b抗体を用いるCD3+CD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACSによる分析。B)CD4+CD18brightCD49b+ T細胞のサイトカイン産生プロフィール。C)健康対象およびクローン病患者の血液中に存在するCD3+CD4+CD18brightCD49b+ T細胞のFACSによる比較分析。D)健康対象およびクローン病の患者の血液中に存在するCD3+CD4+CD18brightおよびCD4+CD25+ T細胞のFACSによる比較分析。
【図3】Tr1細胞は炎症を有する結腸に選択的に遊走する。A-B)CD4+CD45Rbhi T細胞によって回復したCB-17 scidマウスに、示すようにTr1 T細胞(Tr1 1:N10-7およびTr1-2:A-10-9)、Th1(N12-8)およびTh2 T細胞(N4-9)のクローン5×105個を4週間後に処置した。マウスの飲料水にOVA(100 ng/ml)を加えて与え(A)、またはOVAを与えなかった(B)。1週間後、マウスを屠殺して、各群5匹のマウスから結腸および腸間膜リンパ節(MLN)に存在する細胞を合わせた。CD4+KJ-1, 26+細胞の存在をサイトメトリーによって分析して、結果を四分割して示す。結果は、Tr1 T細胞N-12-4およびN-4-12、ならびにT細胞クローンTh1およびTh2に関してそれぞれ、Tr1 T細胞集団Th1もしくはTh2、またはT細胞クローンA-10-11、N-10-11を用いて、四つのうちの一つの代表的な実験を示す。C)CB-17 scidマウスをCD4+CD45Rbhi T細胞によって回復させて、Tr1クローンを0日目に処置した(Nice-2、4×105個/マウス)。1群のマウス(1および3)には、OVAを与えなかったが、他の群のマウス(2および4)には、その飲料水にOVAを与えた。8週間後、マウスを屠殺して、その結腸を組織学によって調べた(1および2群)。Tr1細胞の存在を、ビオチン化KJ-1, 26抗体を用いて免疫組織化学によって分析した(3および4群)。OVAを与えていないマウス(1、3)の結腸には高度の炎症を検出したのに対し、Tr1クローンの特異的活性化は炎症を阻害した(2、4)。OVAが存在しないにもかかわらず、多くのKJ-1, 26+細胞が炎症結腸において検出された(3群)。同じまたは異なるTr1集団またはクローンを用いる他の実験においても、類似の結果を得た。
【図4】Tr1細胞の遊走は抗原依存的である。(A)CD4+CD45Rbhi T細胞によって再構成したCB-17 scidマウスの炎症結腸に浸潤した細胞を、再構成の4週間後に回収した。好中球、好塩基球、およびリンパ球の混合物を含むこれらの細胞を、蛍光カルセインAMによって標識した。これらの蛍光細胞(灰色の棒グラフ)105個を、オレンジ色のCMTMRによって標識したTr1細胞(黒い棒グラフ)106個と共に、CD4+CD45Rbhi T細胞によって4週間前に再構成したCB-17 scidマウスに腹腔内注射した。類似の実験を4週間炎症を起こした結腸から単離したCD4+ T細胞についても行った(白い棒グラフ)。24時間後、マウス2匹の群の炎症を有する結腸の細胞内容物を、サイトメトリーによって調べた。ヒストグラムは、獲得した総細胞100万個あたりに回収した蛍光細胞の絶対数を示す。結果は、3回の実験のうち1回の代表的な実験を示す。B)回収した蛍光細胞の総数に対する、回収した蛍光Tr1細胞の絶対数の割合を、分析した各臓器に関して示す。
【図5】Tr1細胞は炎症を有する耳に遊走する。A)オキサゾロンに対する接触過敏症の速度論。BALB/cマウスに0、1および2日目にオキサゾロン(1 mg/耳)を処置した。オキサゾロンを処置した耳の腫脹(黒四角)を、対照担体を22日間処置した耳と比較した。B)オキサゾロンまたは担体を処置した耳の組織学的分析を示す(倍率40倍)。C-E)Th1、Th2、およびTr1細胞のインビボ遊走。Tr1、Th1、およびTh2細胞をそれぞれ、カルセインブルー、AMおよびオレンジCMTMRによって標識して、オキサゾロン処置の5日前にBALB/cマウスに同時注射した。24時間後、オキサゾロンによって処置した耳、排液リンパ節、および脾臓の蛍光Tリンパ球の含有量をCに示すようにサイトメトリーによって分析した。実験は、表記のようにTr1クローン(A-10-11、最初の黒いバー)またはT細胞集団Tr1(第二の黒いバー)、Th1およびTh2細胞について行った。(D)炎症を有する耳、排液リンパ節および脾臓において測定した、獲得事象106個あたりのTr1、Th1、およびTh2細胞の絶対数。示した結果は、マウス4〜10匹の群の平均値である。(E)採取した蛍光細胞の総数に対する蛍光Th1、Th2、またはTr1細胞の絶対数の割合を、分析した各臓器に関して示す。
【図6】Tr1細胞は、流動的条件で活性化した血管内皮細胞においてより頻繁な停止を示す。A)本試験において異なる二つの蛍光色素を用いた:Th1およびTr1細胞を標識するために、カルセインAMおよびオレンジCMTMR。細胞を同数混合して、フローチャンバーを通してTNF-αによって活性化したマウス内皮細胞株SVEC4-10において流速2 dyn/cm2で15分間潅流した。堅固に停止した細胞数を異なる視野10個において定量した。結果は、各群において二つのクローンおよび二つの集団に関する独立した5回の測定の平均値±SDを示す。細胞を異なる色素によって公平に標識して、類似の結果を得た。B)TNF-αによって活性化されたマウス内皮細胞株SVEC4-10において堅固に停止した、緑色のカルセインによって標識されたThr細胞およびオレンジ色のCMTMRによって標識されたTr1細胞を示す典型的な視野。倍率10倍。C)ヒトT細胞クローンに関して、上記と同じ実験技法を用いて、TNF-α EAによって活性化されたマウス内皮細胞株における堅固な接着を分析した。いくつかのクローンを用いた:それぞれ、Tr1クローンに関してJDV 15、BJF 308、およびBJF 161、ならびにTh1クローンに関してJDV 305、BJF 180、およびHAT 203。
【図7】活性化内皮に対するTr1細胞のより大きい接着に関するメカニズム。流速2 dyn/cm2でのフローチャンバーにおける接着試験を用いて、Tr1接着メカニズムを詳細に分析した。ローリングおよび接着を、カルセインAMおよびオレンジCMTMRによってそれぞれTh1およびTr1細胞に関して比較した。結果は、各群に関して二つのクローンおよび二つの集団に関して代表的な一つの実験の平均値±SDを示す。A)TNF-αによって活性化された内皮細胞株SVEC4-10上(EC)での、または組換え型P-セレクチン分子によってコーティングしたスライドガラス上でのTh1およびTr1細胞のローリング事象を、異なる視野9個のビデオ記録後に計数した。1実験5回。B)Th1およびTr1細胞の堅固な接着を、組換え型mICAM-1またはmVCAM-1によってコーティングしたスライドガラスにおいてフローによって分析した。1実験3回。C)TNF-αによって活性化されたSVEC4-10上でのTr1およびTh1リンパ球の堅固な停止に及ぼす抗β2、抗β1 mAbインテグリン鎖およびsVCAM-1分子の阻害作用をフローによって分析した。1実験5回。D)炎症を有する耳におけるLFA-1遮断Tr1細胞によって阻害された遊走。Tr1細胞をICAM-Fc(10 μg/ml)によって4℃で30分間処置して、カルセインブルーによって標識した。無処置Tr1細胞をオレンジCMTMRによって標識した。無処置ICAM-1 Feによって処置したTr1細胞の混合物を、図5に示すように、オキサゾロンによる感作の5日前にBALB/cマウスに同時注射した。24時間後、オキサゾロンによって処置した耳の蛍光T細胞の含有量をサイトメトリーによって分析した。結果は、獲得事象106個あたりの炎症を有する耳において測定されたTr1細胞の絶対数を示す。示した結果は、マウス4匹の群から得られ、異なる二つのTr1クローン(A10.11およびA10.9)について繰り返した。
【図8】Tr1細胞上での接着分子の発現。A-B)ヒトおよびマウスT細胞Tr1(灰色の棒グラフ)、Th2(白い棒グラフ)、およびTh1(黒い棒グラフ)のクローンおよび集団におけるαL、β2、αV、β3、PECAM-1およびPSGL-1分子の遺伝子発現レベル。マウスT細胞クローンに関して、結果は、分析した異なる三つのクローンの二つの平均値を示す。マウス集団に関して、異なる二つの集団を分析して、結果を二つの値の平均値で示す。ヒトT細胞クローンに関して、異なる三つのTr1クローンならびに一つのTh1およびTh2の代表的なクローンを分析した。値は、陰性対照に対する発現の増加率で表し、三つの実験の一つを示す。ヒトおよびマウスT細胞に関して試験した接着分子をコードする異なる遺伝子45個において、Tr1とTh1/Th2細胞との差が非常に大きい遺伝子のみを示す。C)代表的なTh1およびTh2クローンと比較した、代表的なTr1マウスクローン上のαL、β2、およびPECAM-1インテグリン鎖、ならびに代表的なTr1ヒトクローン上のαVインテグリン鎖のFACS分析。1実験2回。
【図9】IL-10は樹状細胞CD11clowCD45RB+の分化を誘導する。A)骨髄細胞を、示すようにIL-10(50または500 ng/ml)の存在下または非存在下でGM-CSFおよびTNF-αと共に6日間培養した後、LPSによって24時間活性化した。このように生成された骨髄樹状細胞を、ビオチン化抗CD11c抗体によって染色した後、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ結合体(PE)によって染色した。次に、細胞をFITCに結合させた抗CD45RB抗体に結合させて、フローサイトメトリーによって分析した。データは、七つの試験の一つの代表的な結果を示す。B)図11Aに示すように、CD11cおよびCD45RBの発現に従って樹状細胞をソーティングした。表記のソーティングした細胞を遠心して、メイグリュンワルドギムザによって染色した。1−分化6日後の樹状細胞CD11clowCD45RB+、2−LPSによる活性化後の樹状細胞CD11clowCD45RB+、3−分化6日後の樹状細胞CD11chighCD45RB-、4−LPSによる活性化後の樹状細胞CD11chighCD45RB+。C)GM-CSFおよびTNF-αの存在下でIL-10の存在下または非存在下でインビトロ分化後に得られた樹状細胞を、図11Aに示すように、CD11cおよびCD45RBの発現に基づいてソーティングした。ソーティングした細胞を、示すようにFITCによって標識した抗体によって染色して、FACSによって再度分析した。それらをまたLPS(1μg/ml)によって24時間刺激して、表記のようにACmによって染色して、再分析した。細かい線のあるヒストグラムは、対応するアイソタイプの対照ACmによって染色した細胞を示す。データは、三つのうち代表的な一つの実験の結果を示す。
【図10】インビボでIL-10に由来する樹状細胞の同定。A)BALB/cまたはC57Bl/6 IL-10、IL-10-/-、および正常トランスジェニックマウスの脾臓樹状細胞(DC)を単離して、抗体カクテル(ACm抗B220、Gr1およびCD3)による細胞の枯渇によって濃縮して、特異的マーカーCD11の表面発現をフローサイトメトリーによって分析した。B)抗体カクテル(ACm抗B220、Gr1およびCD3)による細胞枯渇によって濃縮したDCの調製物を、BALB/cまたはC57Bl/6 IL-10、IL-10-/-および正常トランスジェニックマウス脾臓から単離して、二つの異なるDC集団を区別するためにCD11c-cy5およびCD45RB-PEの発現に関して分析した。異なる四区分における割合を示す。10回より多い実験の結果は典型的である。BALB/c非トランスジェニックマウスと対照マウスのあいだには差を認めなかった。C)BALB/cマウス脾臓から単離したソーティングされたCD11clowCD45RB+(1)およびCD11chighCD45RB-(3)細胞を遠心して、メイ-グリュンワルド-ギムザによって染色した。ソーティングしたCD11clowCD45RB+(2)およびCD11chighCD45RB-(4)細胞も同様に、GM-CSFの存在下でLPS(1 μg/ml)によって24時間刺激して、遠心し、メイ-グリュンワルド-ギムザによって染色した。D)BALB/c、またはC57Bl/6 IL-10 Tgマウスからの濃縮DC調製物をCD11c-cy5およびCD45RB-PEによって染色した。細胞をCD11clowCD45RB+またはCD11chighCD45RB-の発現に基づいてFACSによってソーティングして、示すように再分析した。ソーティングした細胞を、FITCに結合した第三のマーカーによって染色して、サイトフルオロメトリー(空のヒストグラム)によって分析した。ソーティングしたDCを同様に、GM-CSFの存在下でLPS(1μg/ml)によって24時間刺激して、表記のACmによって染色し、再分析した(完全なヒストグラム)。細かい線のあるヒストグラムは、対応するイソ型の対照ACmを示す。
【図11】樹状細胞CD11clowCD45RB+/B220-のサブセットの表現型特徴およびサイトカインの分泌。A)樹状細胞CD11clowCD45RB+を、CD11cを弱く発現するがB220およびGr1マーカーを発現しない上記のプラスマ細胞腫様細胞と比較するために、(ACm抗CD19およびCD3)を含む抗体カクテルによる細胞枯渇によって濃縮した樹状細胞の調製物に関して分析を行った。正常BALB/cまたはC57Bl/6マウスの脾臓から単離した樹状細胞を、CD11c-cy5およびB220-PEの発現に関して分析した。B)BALB/cまたはC57BL/6マウスの樹状細胞の濃縮調製物をCD11-cy5およびB220-PEによって染色して、示すようにFITCに結合させた抗体によって標識した。細胞をCD11clowCD45RB+(完全なヒストグラム)、またはCD11chighCD45RB-(空のヒストグラム、直線)の発現に基づいてソーティングして、第三のマーカーに関する染色を様々な集団に関して分析した。細かい線のあるヒストグラムは対応するアイソタイプの対照ACmを示す。C)ACm抗CD3およびCD19のカクテルによって濃縮したBALB/cマウスから単離した樹状細胞の調製物を、CD11cy5およびB220-PEによって染色した。CD11clowCD45RB+、CD11chighCD45RB-、またはCD11chighの発現に基づいて、細胞をFACSによってソーティングした。次に、ソーティングされた細胞をFITCに結合させた第三のマーカーによって染色して、サイトフルオロメトリーによって分析した(空のヒストグラム)。ソーティングされた樹状細胞を同様に、GM-CSFの存在下でCpG(xxxμg/ml)によって24時間刺激して、表記のようにACmによって染色し、再度分析した(完全なヒストグラム)。細かい線のあるヒストグラムは対応するアイソタイプの対照ACmを示す。D-E)樹状細胞の異なる亜集団のサイトカインプロフィール。D)第一のシリーズの実験において、樹状細胞CD11chighCD45RB-(空のヒストグラム)またはCD11clowCD45RB+(完全なヒストグラム)のサブセットを、ACm抗CD3、B220、およびGr1のカクテルによって濃縮した脾臓樹状細胞から、CD11cおよびCD45Bの発現に基づいてソーティングした。ソーティングしたCD11chighCD45RB-(白色の細かい線のあるヒストグラム)およびCD11clowCD45RB+(黒色の細かい線のあるヒストグラム)を同様に、GM-CSFの存在下でLPS(μg/ml)によって24時間刺激した。リアルタイム定量的RT-PCRを異なる試料について行い、それぞれの与えられた分析された転写産物に関して陰性対照と比較した。値は、陰性対照に対する発現の増加倍数として提供し、三つの異なる試料の平均値±SDを示す。E)樹状細胞集団を同様に、ACm抗CD3およびCD19を含むカクテルによって調製して、CD11cおよびB220の発現に基づいてソーティングした。細胞をLPSまたはCpGによって24または48時間刺激して、IFN-αまたはIL-10の如何なる分泌も測定するために上清を上記のように分析した。
【図12】CD11clowCD45RB+樹状細胞は、インビトロでTr1-調節細胞の分化を誘導する。A)CD11clowCD45RB+細胞は、インビトロで抗原を処理して提示する。DO11-10 CD4+ T細胞を、OVAペプチド(0.6 μM)またはOVAタンパク質(示すように、500または250 μg/ml)の存在下でソーティングしたCD11chiCD45RB-およびCD11clowCD45RB+ DCによって刺激した。増殖反応またはIFN-γの分泌をそれぞれ、刺激後D3または48時間で分析した。結果は、3回の測定の平均値を示し、IFN-γに関してng/mlで表す。データは類似の結果を有する異なる実験2回の代表である。B)エクスビボでソーティングした樹状細胞によって活性化したCD4+ T細胞集団によって分泌されたサイトカインの分析。「無処置」DO11-10 OVA TCRトランスジェニックT細胞を、ソーティングしたDC CD11chighCD45RB-(白い棒グラフ)またはCD11clowCD45RB+(黒い棒グラフ)によってOVAペプチドの存在下で3週間分化させた。樹状細胞を、表記のように異なるDC/T比で正常BALB/cマウスから単離した。3週間培養後、T細胞を回収して、放射線照射したBALB/c脾細胞およびOVAペプチド(0.3μM)によって刺激した。48時間後、培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。結果は、3回の測定の平均値を示し、IL-10およびIFN-γに関してng/mlで、およびIL-4に関してpg/mlで示す。データは類似の結果を示す異なる実験5回の代表である。B)インビボで誘導した樹状細胞によって分化したCD4+ T細胞の集団によって分泌されたサイトカイン。GM-CSF、TNF-α、およびIL-10の存在下で骨髄細胞を培養することによって、樹状細胞を得た。次に、それらを二つのサブセットにソーティングした:CD11chighCD45RB-およびCD11clowCD45RB+。ソーティングされた樹状細胞を用いて「無処置」CD4+ DO11-10 T細胞をDC/T比1/20で、OVAペプチド(0.6μM)の存在下で分化させた。1週間終了時、T細胞を回収して、放射線照射した脾臓CPAおよびOVAペプチド(0.3μM)によって刺激した。48時間後、培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。結果は、3回の測定の平均値を示し、ng/mlで表す。データは、類似の結果を示す異なる2つの実験の代表である。C)OVAペプチドによる「無処置」DO11-10 T細胞、およびソーティングしたCD11clowCD45RB+またはCD11chighCD45RB-ソーティングDCの細胞内サイトカインアッセイ。CD11clowCD45RB+またはCD11chighCD45RB-樹状細胞を、正常なBALB/cマウスから単離して、FACSにおいてソーティングし、OVAペプチドの存在下で「無処置」DO11-10 T細胞と同時培養した。7日後、細胞を回収して、クロスリンクしたACm抗CD3およびCD28によって6時間刺激した。モネンシンを培養の最後の4時間に加えた。次に細胞を結合させて、表記のように、FITCまたはPEに結合させた特異的ACmによって細胞内サイトカインアッセイのために染色した。3回の実験のうち1回をここに示す。D)CD11clowCD45RB+樹状細胞によって分化したT細胞の調節機能。トランスウェルシステムの下位区画において、正常BALB/cマウスから単離した精製CD4+ T細胞を、放射線照射BALB/c脾細胞およびACM抗CD3(白い棒グラフ)によって刺激した。上の区画において、CD11clowCD45RB+またはCD11chighCD45RB-樹状細胞による1回刺激によって分化したCD4+ T細胞を、OVAペプチドおよび放射線照射脾細胞によって刺激した。抗IL-10マウスACm(10 μg/ml)(白い棒グラフ)、抗TGF-βマウスACm(40μg/ml)(黒い棒グラフ)、またはその双方(灰色の棒グラフ)の存在下において、同時培養実験も行った。3日後、スライドトレイを除去して、72時間培養の最後の12時間に3H-チミジン0.5μCiによるパルス後に、バイスタンダーCD4+ T細胞の増殖反応を測定した。結果は、3回の実験の1回の代表的な実験の測定値3個の平均値±SDを示す。E)IL-10の分泌は、CD11clowCD45RB+樹状細胞によるTr1細胞の分化にとって必要ではない。「無処置」CD4+ DO11-10 T細胞を、抗IL10R T細胞の存在下または比存在下でCD11clowCD45RB+樹状細胞によって1週間分化させた。1週間後、細胞を回収して、放射線照射BALB/c脾細胞およびOVAペプチド(0.3μM)によって刺激した。48時間後、培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。結果は、3回の測定の平均値を示し、IL-10およびIFN-γに関してng/ml、およびIL-4に関してpg/mlで表す。データは、類似の結果を示す異なる実験5回の代表である。同様に、C57Bl/6マウスから単離した「無処置」CD4+ T細胞は、可溶性ACm抗CD3およびIL-10-/-またはC57Bl/6マウスから単離した、ソーティングされたCD11clowCD45RB+樹状細胞によって分化した。1週間後、細胞を回収して、放射線照射C57BL/6脾細胞および可溶性ACm抗CD3(10 μg/ml)によって刺激した。48時間後、培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。結果は3回の測定の平均値を示し、IL-10およびIFN-γに関してng/ml、およびIL-4に関してpg/mlで表記する。
【図13】ヒト寛容原性樹状細胞(TDC)の分析。A)末梢血単核球のTおよびB細胞を、抗体および磁気ビーズによって抑制して、残った集団をサイトメトリーによってCD11cおよびCD4の発現に関して分析した。四角の枠は、「Siegalら、1999、Science 281:1835〜7」によるDC1およびDC2であると定義される二つの集団を示す。四角の枠は、寛容原性DC(TDC)の集団を示す。B)CD34+前駆細胞を、実施例8に示すように、インビトロでIL-10(200 μg/ml)の存在下または非存在下でGM-CSF(800 U/ml)およびIL-4(1000 U/ml)によって分化させた。TDCおよびDC1の集団を枠で囲んだ。C)TDCおよびDC1細胞を、CD11cの発現に従ってFACSによってソーティングして、HLA-DR、CD-80およびCD86の発現に関してサイトフルオロメトリーによって分析した。結果は、TDCがDC1細胞より低いレベルでこれらの分子を発現することを示している。D)TDCおよびDC1細胞を、CD11cの発現に従ってFACSによってソーティングして、LPSによって24時間刺激した。次に、上清をIL-10およびIL-12の存在に関してELISAによって分析した。
【図14】高レベルのIL-10を分泌するTr1細胞の分化を誘導するTDC。A)ソーティングした樹状細胞によって活性化されたCD4+ T細胞集団によって分泌されたサイトカインの分析。ヒトCD4+ T細胞を、ソーティングした同種異系DC1(白い棒グラフ)またはTDC(黒い棒グラフ)細胞によって3週間刺激した。IL-10の存在下(TDC)または非存在下(DC1)でのインビトロ培養を用いるDCを、表記のように異なるDC/T比で用いた。3週間の培養後、T細胞を回収して、放射線照射PBMCおよび抗CD3モノクローナル抗体(10μg/ml)によって刺激した。48時間後、培養上清におけるサイトカインをELISAによって分析した。結果は、3回の測定の平均値を示し、ng/mlで表記する。B)TDCによって分化したT細胞の調節機能。トランスウェル系の下位分画において、精製ヒトCD4+ T細胞を放射線照射PBMCおよび抗CD3モノクローナル抗体(白い棒グラフ)によって刺激した。上の分画において、表記のように同種異系TDCまたはDC1細胞によって分化したCD4+ T細胞を、放射線照射した同種異系PBMCによって刺激した。抗IL-10(10 μg/ml)(斜線の棒グラフ)を遮断するマウスモノクローナル抗体、抗TGF-βモノクローナル抗体(40μg/ml)(黒い棒グラフ)または双方(灰色の棒グラフ)の存在下で、同時培養実験も同様に行った。3日後、レシピエントを回収して、CD4+ T細胞の増殖反応を、72時間培養の最後の12時間に3H-チミジン0.5 μCiを加えることによって測定した。
【図15】ヒトCD3+CD4+CD18brightの定義。CD3+CD4+CD18bright細胞は、細胞表面にCD3およびCD4抗原が発現されること、ならびに単球細胞において認められるCD18マーカーの蛍光強度によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1調節リンパ球を同定する方法:
a)CD4分子、ならびにCD18および/またはCD11a、およびCD49b分子で構成されるA群の全ての分子をコードする遺伝子の該リンパ球による発現産物が同時に存在することを決定する段階;ならびに
b)CD4分子、およびA群の全ての分子をコードする遺伝子を同時に発現するリンパ球を、Tr1調節リンパ球であると同定する段階。
【請求項2】
以下を特徴とする、請求項1記載の方法:
−段階(a)が、以下のB群、すなわちCD11a、CD18、PSGL-1、PECAM-1およびαV/β3分子をコードする遺伝子から選択される少なくとも一つの遺伝子の該リンパ球による発現を比較することを含み、該発現がTh1またはTh2リンパ球による該同じ遺伝子の発現と比較されること;ならびに
−段階(b)がB群の分子をコードする該遺伝子の少なくとも一つを過剰発現するリンパ球を、Tr1調節リンパ球であると同定することを含むこと。
【請求項3】
段階(a)がB群の遺伝子の少なくとも二つの発現を比較することを含み、および段階(b)がB群の該二つの遺伝子を過剰発現するリンパ球をTr1調節リンパ球であると同定することを含むことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
段階(a)がB群の遺伝子の全ての発現を比較することを含み、および段階(b)がB群の遺伝子の全てを過剰発現するリンパ球をTr1調節リンパ球であると同定することを含むことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
段階(a)がCD3分子をコードする遺伝子のリンパ球による発現産物の存在をさらにおよび同時に決定することからなり、および段階(b)がCD3分子をコードする遺伝子を同時に発現するリンパ球をTr1調節リンパ球であると同定することからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の同定法。
【請求項6】
段階(a)が、リンパ球の表面で発現されるA群の分子が同時に存在することを決定することからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
段階(a)が、該分子に対して特異的な抗体によって、該リンパ球の表面で発現される該分子が同時に存在することを決定することからなることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
特異的抗体が、直接または間接的に検出することができるマーカーによって標識されることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
抗体のそれぞれが、異なるマーカーによって標識されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マーカーが蛍光であって、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アロフィコシアニン(APC)、フィコエリスリン-シアニン5(PC5)、フィコエリスリン(PE)、緑色蛍光二酢酸フルオレセイン、カルセインAMおよび赤色蛍光テトラメチルローダミンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
段階(a)がリンパ球の表面で発現されたA群の分子の同時存在を決定することおよびフローサイトメトリーによって実行することからなることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
方法の段階(a)が、CD18分子に関して、CD18bright蛍光強度の存在を決定することからなることを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
以下を特徴とする、請求項2〜12のいずれか一項記載の方法:
−段階(a)において、B群の分子をコードする少なくとも一つの遺伝子のリンパ球による発現の比較が、該遺伝子に関して発現されたmRNAの量を比較することによって行われる;および
−段階(b)が、該遺伝子のmRNAを過剰発現するリンパ球をTr1-調節リンパ球であると同定することを含む。
【請求項14】
mRNAの量が定量的RT-PCRによって測定されることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
生体試料が、被験者における末梢血試料または炎症臓器に由来することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
試料が、自己免疫もしくは炎症疾患に罹患している、または罹患する可能性がある被験者から採取されることを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
被験者がクローン病または多発性硬化症を有することを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
生体試料が、被験者の試料から得られたリンパ球集団を用いてTr1調節リンパ球をインビトロで調製する方法から得られることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
Tr1調節リンパ球の調製法が、抗原およびインターロイキン10の存在下でリンパ球集団のCD4+ Tリンパ球を活性化する少なくとも一つの段階を含むことを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Tr1調節リンパ球の調製法が以下の段階を含むことを特徴とする、請求項18記載の方法:
(a)HLAクラスII系の分子と、ヒトLFA-3分子とを発現するが、如何なる共刺激分子B7-1、B7-2、B7-H1、CD40、CD23、またはICAM-1も発現しない人工的な抗原提示細胞を含む生体試料を得る段階;
(b)(a)において得られた人工的な抗原提示細胞によって提示される選択された抗原の存在下で、該リンパ球集団のCD4+ Tリンパ球をインビトロで活性化する段階;および
(c)選択された抗原に対して特異的なTr1リンパ球の少なくとも10%を含む活性化CD4+リンパ球集団を該リンパ球から回収する段階。
【請求項21】
Tr1調節リンパ球の調製法が以下の段階を含むことを特徴とする、請求項18記載の方法:
(a)樹状細胞に分化することができるヒト前駆細胞の集団をインビトロで得る段階;
(b)該樹状細胞の集団を得るために、IL-10の存在下で該ヒト前駆細胞を培養する段階;および
(c)(b)において得られた樹状細胞集団の存在下に該ヒトリンパ球集団を置く段階。
【請求項22】
A群の分子をコードする遺伝子のリンパ球による発現産物がmRNAであって、段階(a)において、該mRNAの同時存在の決定がRT-PCRによって行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1調節リンパ球の定量法:
(a)請求項1〜21のいずれか一項記載の同定法を用いてTr1調節リンパ球を同定する段階;および
(b)該生体試料に存在するリンパ球の全量、またはリンパ球の特定の分画に関して、(a)において同定されたTr1調節リンパ球の比率を決定する段階。
【請求項24】
以下の段階を含むことを特徴とする、被験者から予め採取した生体試料を用いて、被験者における自己免疫または炎症疾患のインビトロでの予後または診断のための方法:
(a)請求項23記載の定量法に従って、リンパ球の全量またはリンパ球の特定の分画に関して、該生体試料に存在するTr1調節リンパ球の比率を決定する段階;および;
(b)段階(a)において得られたTr1調節リンパ球の比率を、健康な被験者から採取した生体試料に存在する比率と比較する段階。
【請求項25】
段階(b)において、試験すべき被験者において該比率の減少が認められることを特徴とする、請求項24記載の自己免疫または炎症疾患のインビトロでの予後または診断のための方法。
【請求項26】
以下の段階を含むことを特徴とする、リンパ球を含む生体試料に存在するTr1調節リンパ球の濃縮法:
(a)請求項1〜22のいずれか一項記載の同定法を用いてTr1調節リンパ球を同定する段階;および
(b)該試料からの該分子を同時に有しないリンパ球の有意な部分を除去する段階。
【請求項27】
自己免疫または炎症疾患を予防および/または治療することを意図した薬剤を製造するための、請求項26記載の濃縮法によって濃縮されたTr1調節リンパ球集団の利用。
【請求項28】
Tr1調節リンパ球が炎症領域のレベルで投与されることを特徴とする、請求項27記載の利用。
【請求項29】
Tr1調節リンパ球が、インビボで該リンパ球を活性化することができる抗原と共に投与されることを特徴とする、請求項27または28記載の利用。
【請求項30】
Tr1調節リンパ球がインビトロまたはインビボで予め活性化されていることを特徴とする、請求項27または28記載の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−520197(P2007−520197A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516319(P2006−516319)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001583
【国際公開番号】WO2005/000344
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505474946)
【Fターム(参考)】