説明

牽引フックの取付構造

【課題】 着脱式の牽引フックをパイプ状のバンパービームの取付部に設けた牽引フックの取付構造を提供すること。
【解決手段】 バンパービームアッシ1は車幅方向に延び、上下方向に並べたパイプ2,3と、このパイプ2,3をサイドフレームに取付けるビーム取付部材8及び上部ブラケット11とを備えている。パイプ2,3の外周面の前部側には前部ブラケット9を設け、ビーム取付部材8と前部ブラケット9に支持パイプ14を取付けている。そして、支持パイプ14の内周部に雌ネジ14aを形成する一方、牽引フック7に雄ネジ部7aを形成し、牽引フック7を支持パイプ14に螺合させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の故障時などの牽引時にロープが引っ掛けられる牽引フックの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
故障時などにおける車両の牽引のために、車体には牽引フックが設けられている。自動車の前部にはバンパーが配設されているため、牽引フックはバンパーの下端縁と干渉を避ける必要がある。そのため、車体のサイドメンバなどの下面から牽引フックを下向きに突出させているものがある。このように、牽引フックをサイドメンバから下側に突出させた場合、路面に著しい段差や障害物などがある場合に、それらと牽引フックとが接触するおそれがある。
【0003】
そのため、牽引フックをサイドメンバの先端側に取付け、バンパービームアッシを貫通させて取付けているものがある。また、このような牽引フックは、フックを車体に溶接で固定したものや、普段(未使用時)は車体に取付けないで、牽引時にのみ車体側に取付ける着脱式のものがある。
後者の着脱式の牽引フックは一端にフックが設けられ、他端に雄ネジが設けられ、車体側に設けられたネジ部に牽引フックを螺着することにより、車体に取付けられるものがある。
【特許文献1】特開2002−53066号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、バンパービームアッシについて、汎用性を与えるために、ビーム本体にパイプ材を使用したバンパービームアッシについて、出願人が提案している(特願2003−396437号)。
本発明は、このようなビーム本体にパイプ材を用い、かつ着脱式の牽引フックをバンパービームアッシに取付けるようにした牽引フックの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、車幅方向に延びるビーム本体と、該ビーム本体をサイドフレームに取付けるビーム取付部材とを備えたバンパービームアッシに牽引フックを設け、前記バンパービームアッシを覆うバンパーカバーに形成した牽引用の孔を介し、前記牽引フックに連結して車両の牽引が行われる牽引フックの取付構造において、前記ビーム本体を上下方向に並べたパイプ材で形成し、これらのパイプ材の外周面の後部側に前記ビーム取付部材を設けるとともに前記外周面の前部側に前部ブラケットを設け、前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットに前記牽引フックを取付けた。
上記発明は、前記前部ブラケットと前記ビーム取付部材に支持パイプを取付け、該支持パイプの内周部に雌ネジを形成する一方前記牽引フックに雄ネジを形成し、前記牽引フックを前記支持パイプに螺合させることができる。
また、上記発明は、前記支持パイプを前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットとを貫通させて取付けることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、車幅方向に延びるビーム本体と、該ビーム本体をサイドフレームに取付けるビーム取付部材とを備えたバンパービームアッシに牽引フックを設け、前記バンパービームアッシを覆うバンパーカバーに形成した牽引用の孔を介し、前記牽引フックに連結して車両の牽引が行われる牽引フックの取付構造において、前記ビーム本体を上下方向に並べたパイプ材で形成し、これらのパイプ材の外周面の後部側に前記ビーム取付部材を設けるとともに前記外周面の前部側に前部ブラケットを設け、前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットに前記牽引フックを取付けたので、支持パイプの取付部の剛性が向上するとともに、バンパービームアッシの強度が向上する。
上記発明は、前記前部ブラケットと前記ビーム取付部材に支持パイプを取付け、該支持パイプの内周部に雌ネジを形成する一方前記牽引フックに雄ネジを形成し、前記牽引フックを前記支持パイプに螺合させるようにしたので、バンパービームアッシの取付強度が大きい部分に支持パイプの取付部を配置できる。
また、上記発明は、前記支持パイプを前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットとを貫通させて取付けたので、支持パイプの貫通部と前後ブラケットとを溶接することにより、溶接部の強度を大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態による牽引フックの取付構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、自動車のバンパーカバーの内側に配設されているバンパービームアッシの正面図であり、図2は、バンパービームアッシとフレームの取付部の斜視図であり、図3は図2の分解斜視図であり、図4はバンパービームアッシと牽引フックの取付部との係合関係を示す斜視図であり、図5はバンパービームアッシに牽引フックが取付けられた状態の図4のA−A方向断面図であり、図6は図4のB−B線方向の断面図である。
【0008】
図1に示すように、車両のフロント側のバンパービームアッシ1は同じ材質で、同じ太さの2本の上下パイプ2,3と、パイプ2,3の車幅方向の両端部を固定する左右のビーム取付部4,5と、パイプ2,3の車幅方向の中央部前側に設けられた前面ブラケット6とを備えている。
バンパービームアッシ1に使用されるパイプ2,3は、中央部がやや前方に突出する円弧形状(図3参照)であり、上下に間隔を空けて配設され、それらの両側に設けられたサイドフレーム10よりも車幅方向に、僅かに突出する長さに形成されている。各々のパイプ2,3の長さは、本実施の形態では一致するように配置され、パイプ2,3がそれぞれ平行に、かつ、車体の上方から見て(平面視)重なるように揃えられている。
【0009】
車体の右側にあるビーム取付部5は、図2及び図3に示すように、ビーム取付ブラケット8と、上部ブラケット11とを備え、ビーム取付ブラケット8はパイプ2,3の後側に溶接によって固定され、上部ブラケット11の前部とビーム取付ブラケット8の背面とが溶接により固着させる。
ビーム取付ブラケット8は、前側に折り曲げられた左右フランジ部8a,8bの上側及び下側に、パイプ2,3の外周に対応させた円弧部8dを形成し、この円弧部8dとパイプ2,3の外周部を溶接で固定している。また、ビーム取付ブラケット8の下部には、横方向に長い長円形の貫通孔8eが2箇所設けられている。貫通孔8eは、サイドフレーム10の下部に形成された、ネジ孔10cの位置に対応するように形成されている。
【0010】
図4又は図5に示すように、前部ブラケット9はパイプ2,3の前周面側に配置される。前部ブラケット9には、左右側壁9a,9bを設け、これらの側壁9a,9bと上下パイプ2,3の外周面とを溶接で固着している。左右側壁9a,9bの端部には、外側フランジ9d,9eを形成し、この外側フランジ9d,9eはビーム取付ブラケット8の前端部と溶接で固定される。
図6に示すように、上部ブラケット11の後端には、上部ブラケット11の後端部を下方向に折り曲げた係止部11aを形成し、係止部11aの前側には貫通孔11bを形成している。一方、サイドフレーム10の上面には、ネジ孔10dが設けられ、ネジ孔10dの後側に係止孔10eを形成している。
【0011】
ビーム取付ブラケット8及び前部ブラケット9には、図3に示すように、車両の前後方向に対応させた位置に孔8c,9cを形成し、この孔8c,9cを貫通させて支持パイプ14を設けている。支持パイプ14の内周面には、雌ネジ14aを形成している。支持パイプ14の外周面は、前端側が前部ブラケット9の孔9cの貫通部と溶接により固定され、後端側がビーム取付ブラケット8の孔8cの貫通部と溶接で固定されている。支持パイプ14は前後端部の突出させた部分の接合部に溶接をしているので、取付強度が向上する。支持パイプ14の後端側は、サイドフレーム10の前端面10aに位置する開口10b部が形成されている。
なお、左右のビーム取付部4,5のうち、右側のビーム取付部5のみについて説明したが、他方の左側のビーム取付部4には、前部ブラケット9、支持パイプ14及び牽引フック7は設けられておらず、その他の構成は右側のビーム取付部5と、実質的には大きな相違がないので省略する。
【0012】
バンパービームアッシ1をサイドフレーム10に取付ける場合は、ビーム取付ブラケット8と上部ブラケット11を備えたバンパービームアッシ1に、前部ブラケット9と支持パイプ14を固定した状態で、サイドフレーム10に固定する。すなわち、図3に示すように、上部ブラケット11を、サイドフレーム10の上面に重ね合わせ、係止部11aを係止孔10eに差し込むことにより(図6参照)、サイドフレーム10に位置合わせをする。そして、ボルト13をネジ孔10dに螺着させて、上部ブラケット11をサイドフレーム10に締結させる。同様に、ビーム取付ブラケット8の下部では、サイドフレーム10の前端面10aのネジ孔10cにボルト12を螺着させて、ビーム取付ブラケット8を前端面10aに締結させる。
【0013】
牽引フック7は、先端側にロープなどに取付けられているフック状の牽引具が係止される環状の引っ掛け部7bが設けられ、牽引フック7の基端側には、ボルト状の雄ネジ部7aが形成されている。
図5及び図6に示すように、バンパービームアッシ1の前側には、樹脂製のバンパー表皮15が配設され、バンパー表皮15はバンパービームアッシ1の前面を覆っている。支持パイプ14の前方に位置するバンパー表皮15の部位には孔17が形成され、孔17には着脱自在のキャップ16が取付けられている。車両の牽引時には、キャップ16を外して、支持パイプ14の雌ネジ14aに、牽引フック7の雄ネジ部7aを螺着して、牽引フック7を車体側に取付ける。
車両の牽引時には、支持パイプ14が間隔を空けて配置したビーム取付ブラケット8と前部ブラケット9に溶接で固定されているので、いずれか一方のブラケット8,9で固定するよりも固定力が大きい。
牽引が終了した後は、牽引フック7を外し、バンパー表皮15の孔17にキャップ16を被せて孔17を閉塞するので、牽引フック7の取付部が見えることがない。また、牽引フック7の引っ掛け部7bがバンパー表皮15よりも前方に配置されるので。牽引時のロープなどとバンパー表皮15の干渉を防止できる。
【0014】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、牽引フック7を支持パイプ14に螺合させたが、牽引フック7は、ビーム取付ブラケット8又は(及び)前部ブラケット9にナットを溶接で固定し、ナットに牽引フック7を螺着させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における牽引フックの取付構造のバンパービームアッシの正面図である。
【図2】図1に示すバンパービームアッシとサイドフレームとの取付部の斜視図である。
【図3】図1に示すバンパービームアッシとサイドフレームとの取付部の分解斜視図である。
【図4】図1に示すバンパービームアッシと牽引フックの取付部との係合関係を示す斜視図である。
【図5】バンパービームアッシに牽引フックが取付けられた状態の図4のA−A方向断面図である。
【図6】バンパービームアッシに牽引フックが取付けられた状態の図4のB−B線方向の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 バンパービームアッシ
2,3 パイプ
4,5 ビーム取付部
6 前面ブラケット
7 牽引フック
7a 雄ネジ部
8 ビーム取付ブラケット
9 前部ブラケット
10 サイドフレーム
11 上部ブラケット
14 支持パイプ
14a 雌ネジ
15 バンパー表皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるビーム本体と、該ビーム本体をサイドフレームに取付けるビーム取付部材とを備えたバンパービームアッシに牽引フックを設け、前記バンパービームアッシを覆うバンパーカバーに形成した牽引用の孔を介し、前記牽引フックに連結して車両の牽引が行われる牽引フックの取付構造において、
前記ビーム本体を上下方向に並べたパイプ材で形成し、これらのパイプ材の外周面の後部側に前記ビーム取付部材を設けるとともに前記外周面の前部側に前部ブラケットを設け、前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットに前記牽引フックを取付けたことを特徴とする牽引フックの取付構造。
【請求項2】
前記前部ブラケットと前記ビーム取付部材に支持パイプを取付け、該支持パイプの内周部に雌ネジを形成する一方前記牽引フックに雄ネジを形成し、前記牽引フックを前記支持パイプに螺合させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の牽引フックの取付構造。
【請求項3】
前記支持パイプを前記ビーム取付部材と前記前部ブラケットとを貫通させて取付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の牽引フックの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−88742(P2006−88742A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273268(P2004−273268)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】