説明

犠牲連結要素を有するモールド内張り

本発明は、内張り組立体(14)に関し、内張り組立体(14)は、タイヤモールドのセクタ(10)の支持ブロック(12)に取り付けられるようになった複数個の内張り要素(18)を含み、内張り要素(18)は、タイヤのトレッドの一部のトレッドパターンを形成するようになっており、内張り組立体(14)は、内張り要素(18)を互いに接合する少なくとも1つの犠牲要素(24)を更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ加硫モールドの分野、特にセグメント化形式のモールドに関する。
【背景技術】
【0002】
セグメント化モールドは、比較的互いに密接配置すると、疑似ドーナツ形の成形空間を形成する数個の別々の部品から成る。具体的に言えば、セグメント化モールドは、タイヤのサイドウォールを成形する2つの側方シェルと、シェル相互間に位置し、タイヤのトレッドバンドを成形する数個の周辺セグメントとを有している。これら部品の全ては、適当な機構体により、適当な挙動で互いに密接配置される。後でタイヤになる素材としての生又は未硬化プレフォームは、幾何学的寸法形状及び正確なアーキテクチャを得ると共にトレッドバンドにトレッドパターンを与えるために、モールドにしっかりと押し付けられ、これに当てた状態で保持されなければならない。
【0003】
トレッドバンドのトレッドパターンを形成するため、モールドのセグメントは、セグメントの半径方向内面から突き出た要素を有し、これら要素は、成形されるべきトレッドパターンのネガを形成する。
【0004】
同一のモールドがトレッドパターンの種々の設計例を備えたタイヤを製造することができるようにするため、例えば、欧州特許第0523958号明細書(特許文献1)から、モールドセグメントを多数の要素、即ち、第1に、タイヤのトレッドバンドの全体的曲率を定める全体的形状の支持ブロック及び第2に、支持ブロックに取り付けられると共にタイヤトレッドバンドのトレッドパターンを形成するようになった複数個の内張り要素で構成することが知られている。
【0005】
所与のトレッドパターンのタイヤの製造に合うようモールドを改造するためには、種々の内張り要素をモールドセグメントの各支持ブロックに取り付けることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0523958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらモールド改造作業は、時間がかかり且つうんざりするほど退屈である。したがって、本発明の特定の目的は、製造及び改造作業を簡単且つ迅速に実施できるタイヤの加硫用セグメント化モールドを提供することにある。
【0008】
この目的のため、本発明の一要旨は、内張り組立体において、内張り組立体は、レーザ焼結によって製作され、内張り組立体は、タイヤのためのモールドの支持ブロックに取り付けられるようになった複数個の内張り要素を含み、内張り要素は、タイヤのトレッドバンドの一部のトレッドブロックを形成するようになっており、内張り組立体は、内張り要素を互いに接合する少なくとも1つの犠牲連結要素を更に有し、内張り要素と犠牲連結要素は、一体品として製作されていることを特徴とする内張り組立体にある。
【0009】
本発明により、モールドの一セグメントの同一支持ブロックに取り付けられるようになった内張り要素は全て、同一セグメントの内張り要素の全てを単一ステップで支持ブロックに取り付けることができるよう互いに接合される。
【0010】
さらに、連結要素は、同一セグメントの種々の内張り要素の相対的位置決めを保証する要素としての役目も果たす。かくして、内張り要素のうちの一方を一セグメントの支持ブロック上に位置決めすることが必要なだけであり、他方の内張り要素も又、連結要素により間接的に正確に位置決めされることになろう。
【0011】
連結要素は、犠牲要素と呼ばれる。というのは、連結要素は、内張り要素から外されると共に内張り組立体がいったんセグメント支持ブロックに取り付けられると、内張り組立体から取り外されるようになっているからである。タイヤが本発明の組立体を有するモールドで成型されているとき、連結要素は、モールド内に存在していない。換言すると、連結要素は、タイヤのトレッドバンドのトレッドパターンを形成するようにはなってはおらず、内張り要素が、例えば支持ブロックに取り付けられる時点まで内張り要素を互いに接合するようになっているに過ぎない。
【0012】
内張り組立体は、SLMと通称されている選択的レーザ溶融又はレーザ焼結によって製作される。物品は、粉末の選択的溶融により製作され、層の重ね合わせによって集積される。このコンポーネントの製造技術の利点は、コンポーネントの形状をコンピュータによってモデル化することができ、コンポーネントをこのモデル化に基づいて焼結によって容易に製造することができるということにある。具体的に説明すると、レーザをコンピュータによって制御することができ、コンピュータは、コンポーネントのモデルを備えており、次に、重ね合わされた粉末層の連続焼結によってコンポーネントを製造することができる。モールド内張りの製造の場合、この技術は、特に好適である。というのは、この技術により、小形内張り要素、例えばサイプブレード、バンド又は犠牲連結要素を製造することができるからである。
【0013】
最後に、レーザ焼結の利用により、犠牲要素によって互いに接合された内張り要素の離脱性を向上させることができる。具体的に説明すると、レーザ焼結により、先ず最初に、軽量ではあるが、内張り要素の正確な位置決めを可能にするのに十分に剛性である犠牲要素を製作し、第2に、内張り要素の迅速且つ容易な相互分離を可能にする仕方で寸法決めされた犠牲要素を製作することができる。
【0014】
本発明の組立体は、以下の特徴を更に有するのが良い。この組立体は、犠牲連結要素が内張り要素を互いに接合したところに破裂イニシエータを有する。連結要素を内張り要素から容易に取り外すことができる。破裂イニシエータは、例えば連結要素の厚さの局所的減少によって得られるのが良い。
【0015】
本発明のもう1つの要旨は、タイヤ加硫モールドのセグメントであって、セグメントは、支持ブロックと、支持ブロックに取り付けられた上述の内張り組立体とを有することを特徴とするセグメントにある。
【0016】
本発明のもう1つの要素は、タイヤ加硫モールドにおいて、モールドは、側方シェルを2つ有すると共に上述のセグメントを複数個有し、セグメントは、シェルの縁部に沿って周方向に分布して配置されていることを特徴とするモールドにある。
【0017】
本発明のもう1つの要旨は、タイヤ加硫モールドを得る方法において、
上述の内張り組立体を製造するステップと、
内張り組立体を支持ブロックに取り付けるステップと、
犠牲連結要素をなくすステップとを有することを特徴とする方法にある。
【0018】
加硫モールドのセグメントを得る方法又はこれを適合させる方法は、特に簡単である。というのは、かかる方法では、内張り組立体全体を支持ブロックに対して位置決めし、この内張り要素を取り付けるちょうど1つのステップしか必要でないからである。先行技術の場合のように、種々の内張り要素を次々に支持ブロック上に位置決めする必要がない。
【0019】
この取り付けステップをいったん実施すると、必要なことは、犠牲要素をなくすことだけである。というのは、これら犠牲要素は、タイヤのトレッドバンドのトレッドパターンを形成するようにはなっておらず、種々の内張り要素が支持ブロック上に組み付けられている間、種々の内張り要素を互いに保持するようになっているに過ぎないからである。
【0020】
本発明の方法は、内張り要素がレーザ焼結により得られるという特徴を更に有するのが良い。上述したように、レーザ焼結技術により、内張り組立体を、金属粉末に基づく所望の形状を備えた一体品として設計することができる。これに対し、先行技術では、種々の内張り要素は、これらを製造するのが容易にするためにサイズが小さいので、レーザ焼結技術により、特に所与の厚さの種々の形式のリブ又はブレードを備えた寸法が大きく且つ形状が複雑な内張り組立体を製作することができる。
【0021】
有利には、内張り組立体は、結合、ねじ留め又はクリップ留めによって支持ブロックに取り付けられる。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して例示として与えられている以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】製造における予備ステップにおける本発明のタイヤ加硫モールドの一セグメントの斜視図である。
【図2】製造における中間段階における図1のセグメントの斜視図である。
【図3】製造完了時における図2のセグメントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、製造における予備段階におけるタイヤ加硫モールド(図示せず)の全体が参照符号10で示されたセグメントを示している。
【0025】
タイヤを加硫するセグメント化モールドは、図1に示されたセグメントと同一又はほぼ同一のセグメントを複数個有している。セグメントは、周方向に互いに並んで位置決めされており、かくして、タイヤのトレッドバンドを成形する筒体を構成する。
【0026】
したがって、所与の一セグメント10は、タイヤのトレッドバンドの一部を形成するようになっている。
【0027】
セグメント10は、支持ブロック12及び支持ブロック12に取り付けられた内張り組立体14を有している。
【0028】
例えば中実スチール(鋼)で作られた支持ブロック12は、特に、内張り組立体14のための支持体を形成する半径方向内側の表面16を有している。この表面16は、実質的に滑らかであり、その全体的形状は、成形中、この支持ブロックに向いたタイヤトレッドバンドの部分の全体的形状と実質的に同一である。換言すると、表面16は、タイヤの軸線を含む半径方向平面に曲率を有すると共にタイヤの軸線に垂直な半径方向平面内に曲率を有し、これら曲率は、タイヤの曲率と実質的に同一である。
【0029】
内張り組立体14は、セグメント10に向いたタイヤのトレッドバンド部分にトレッドパターンを形成するようになった複数個の内張り要素18を含む。
【0030】
これら要素18は、特に、周方向ブレード20、周方向フィレット又はフィレット22を互いに接合する軸方向ブレード23を有する。
【0031】
内張り要素18のうちの大抵のものは、互いに接合され、例えばフィレット22と軸方向ブレード23とから成る格子を形成している。しかしながら、幾つかの要素、例えば周方向ブレードは、他の要素18とは別体である。
【0032】
内張り組立体14は、或る特定の内張り要素14を互いに接合する犠牲連結要素24を更に含む。これら犠牲要素24は、種々の内張り要素18を接合するブリッジを形成した薄いリブの形態をしている。
【0033】
特に、図1に示されているように、連結要素24は、他の要素18とは別体であるブレード20をフィレット22に接合している。
【0034】
連結要素24により、同一セグメントの内張り要素18の組立体14全体は、組立体14がちょうど1つの部品から成るように連結状態の網状組織を形成している。連結要素は、タイヤのトレッドバンドにトレッドパターンを形成するようにはなっておらず、種々の内張り要素を互いに接合するようになっているに過ぎない。
【0035】
内張り要素14は、セグメント10を形成するよう支持ブロック12の半径方向内側の表面16に取り付けられるようになっている。これを行なうため、第1のステップの際、組立体14の内張り要素18の全てを単一作業で支持ブロック12に取り付けて図2に示された中間セグメント10を得る。要素18を単一作業で取り付けるのが良い。要素18は、組立体14がたった1つの部品から成っているので、単一作業で取り付け可能である。
【0036】
次に、組立体14を支持ブロック12に対して位置決めする。
【0037】
内張り組立体14を表面16上にいったん正確に位置決めすると、この組立体14を支持ブロック12に取り付ける。この取り付けは、例えば、結合、ねじ留め又はクリップ留めによって達成されるのが良い。
【0038】
次に、次のステップの際、犠牲連結要素24をセグメント10からなくす。その目的は、図3に示されているセグメントと同様のセグメント10を得ることにある。注目できるように、このセグメント10では、組立体14の種々の内張り要素18は全て、もはや、連結状態の網状組織の形態では互いに接合されていない。特に、ブレード20は、周方向フィレット22から分離されている。
【0039】
犠牲連結要素14をなくすこのステップは、これら連結要素が内張り要素18と結合している場所でこれら連結要素24を破断することにより簡単な仕方で実施できる。この破断作業を容易に行なうため、連結要素24を弱くするよう連結要素24をできるだけ薄く作るか、例えばこれら連結要素24が内張り要素18と接合している場所でこれら連結要素24の厚さの減少部を作ってこれらの離脱を容易に且つ誘導するかのいずれかが可能である。
【0040】
好ましくは、図1に示された内張り組立体14は、レーザ焼結により製作される。この技術により、粉末状金属材料の層を連続的に重ねることによりこの組立体14を比較的簡単な仕方で一体品として製造することができる。
【0041】
本発明をセグメント化モールドと関連して説明した。しかしながら、本発明は、タイヤを加硫するために用いられる別の形式のモールドに同様に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内張り組立体(14)において、前記内張り組立体は、レーザ焼結によって製作され、前記内張り組立体は、タイヤのためのモールドの支持ブロック(12)に取り付けられるようになった複数個の内張り要素(18)を含み、前記内張り要素(18)は、タイヤのトレッドバンドの一部のトレッドブロックを形成するようになっており、前記内張り組立体(14)は、前記内張り要素(18)を互いに接合する少なくとも1つの犠牲連結要素(24)を更に有し、前記内張り要素(18)と前記犠牲連結要素(24)は、一体品として製作されている、
ことを特徴とする内張り組立体(14)。
【請求項2】
前記内張り組立体は、前記犠牲連結要素(24)が前記内張り要素(18)を互いに接合したところに破裂イニシエータを有する、
請求項1記載の内張り組立体(10)。
【請求項3】
タイヤ加硫モールドのセグメント(10)であって、前記セグメントは、支持ブロック(12)と、前記支持ブロック(12)に取り付けられた請求項1又は2記載の内張り組立体(14)とを有するセグメント(10)。
【請求項4】
タイヤ加硫モールドにおいて、前記モールドは、側方シェルを2つ有すると共に請求項3記載のセグメント(10)を複数個有し、前記セグメント(10)は、前記シェルの縁部に沿って周方向に分布して配置されているモールド。
【請求項5】
タイヤ加硫モールドを得る方法において、
‐請求項1又は2記載の内張り組立体(14)を製造するステップと、
‐前記内張り組立体(14)を支持ブロック(12)に取り付けるステップと、
‐犠牲連結要素(24)をなくすステップと、備えている
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記内張り組立体(14)は、レーザ焼結により得られる、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記内張り組立体(14)は、結合、ねじ留め又はクリップ留めによって前記支持ブロック(12)に取り付けられる、
請求項5又は6記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−512071(P2012−512071A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541559(P2011−541559)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052570
【国際公開番号】WO2010/076504
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】