説明

状態管理装置、蓄電素子の均等化方法

【課題】複数の2次電池を均等に充電する技術を提供する。
【解決手段】BMS20は、直列に接続された複数の2次電池50の状態を管理する装置であって、2次電池50の電圧値Vを個別に測定する電圧計24と、いずれか一つの2次電池50の電圧値Vの時間変化率が基準値Kに到達してから、他の2次電池50の電圧値Vの時間変化率が基準値Kに到達するまでの時間差を計時する計時部42と、2次電池50を個別に放電する放電回路26と、当該時間差を用いて放電回路26を制御する均等化制御部44と、を備えている。このBMS20によれば、蓄電素子の電圧値により蓄電素子に充電されるSOCを均等化することができない場合でも、蓄電素子の電圧の時間変化率に基づいて蓄電素子に充電されるSOCを均等化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は、複数の蓄電素子に充放電される容量を均等化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繰り返し使用可能な蓄電素子が用いられている。蓄電素子は、充電と放電を繰り返すことで何度も使用することができ、充放電不能な電池に比べて環境に優しく、電気自動車など現在その使用分野を広げている。
【0003】
複数の蓄電素子が使用される装置では、各蓄電素子の初期容量や劣化速度のバラツキ等により、蓄電素子の容量が不均等となることがある。蓄電素子の容量が不均等となると、充電時において、1個や数個の蓄電素子の電圧が他の蓄電素子に先だって又は遅れて満充電電圧に到達して充電が終了してしまい、全ての蓄電素子を十分に充電することができないことがある。また、放電時において、1個や数個の蓄電素子の電圧が他の蓄電素子に先だって又は遅れて放電終了電圧に到達して放電が終了してしまい、全ての蓄電素子に充電された電力を使いきることができないことがある。このように、蓄電素子の容量が不均等となると、蓄電素子の容量を最大限に引き出すことができない。従来から、容量が不均等となった2次電池を抵抗等の放電回路を用いて放電し、2次電池の容量を均等化させる技術が知られている(例えば、引用文献1)。この技術では、無電流状態にて得られた2次電池の電圧情報から2次電池の残エネルギー容量を求め、その容量差に基づいて各2次電池を放電することで、2次電池の容量を均等化するという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−19329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電気自動車等の2次電池として、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池(以下、オリビン鉄系電池)が注目を集めている。オリビン鉄系電池は、リチウムイオン電池の一種であり、正極にオリビン型リン酸鉄が用いられ、負極には、例えばグラファイト系材料などが用いられる。そのため、オリビン鉄系電池では、電極としてコバルト系の電極材料を用いる必要がなく、コバルト系の電極材料を用いる2次電池と比べてコストが安く安全性が高い長所を有している。
【0006】
オリビン鉄系電池は、残存容量の増加に対して電圧が急激に増加する領域(以下、変化領域という)を持ち、例えば負極としてグラファイト系材料を用いた場合、2次電池の残存容量を示すSOCが10%未満の領域、及び90%以上の領域において変化領域となることが知られている。変化領域がSOCの比較的高い、あるいはSOCの比較的低い領域に存在すると、変化領域における蓄電素子の電圧情報から蓄電素子の容量を均等化しようとしても、蓄電素子の容量を均等化する前に蓄電素子のSOCが略100%、あるいは略0%に到達してしまい、蓄電素子の充放電が終了してしまう。蓄電素子の充放電が終了してしまうと、蓄電素子の容量の均等化も終了してしまうことから、蓄電素子の容量を十分に均等化することが難しい。そのため、変化領域以外の領域を用いて、蓄電素子の容量を均等化する技術が望まれる。
【0007】
その一方、オリビン鉄系電池は、負極との組合せでプラトー領域を持ち、例えば負極としてグラファイト系材料を用いた場合、2次電池の残存容量を示すSOCが10%から90%に亘って広がるプラトー領域を持つことが知られている。ここで、プラトー領域とは、2次電池のSOCが変化しても2次電池の電圧が略一定である領域を意味する。そのため、プラトー領域を有する2次電池などの蓄電素子では、充電中において、このプラトー領域において取得された蓄電素子の電圧情報から蓄電素子の容量を推定することが難しく、蓄電素子の容量を均等化することが難しい。
【0008】
本明細書では、複数の蓄電素子に充電される容量を均等化する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する状態管理装置は、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、いずれか一つの蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達してから、他の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達するまでの時間差を計時する計時部と、前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、前記時間差を用いて前記放電部を制御する均等化制御部と、を備える。
【0010】
この状態管理装置では、各蓄電素子の電圧を測定し、当該電圧の時間変化率が基準値に到達するまでの時間差を用いて各蓄電素子の放電を制御する。この状態管理装置によれば、蓄電素子がプラトー領域を有しており、電圧に基づいて均等化を制御することが難しい場合でも、蓄電素子の電圧の時間変化率に基づいて放電を制御することができ、蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。
【0011】
上記の状態管理装置では、前記複数の蓄電素子は、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子を含み、前記均等化制御部は、前記第1の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達してから、前記第2の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達するまでの第1時間差を取得するとともに基準時間を有する構成としても良い。そして、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第1時間差が前記基準時間以上である場合、前記第1時間差を用いて前記第1の蓄電素子を放電させ、前記第1時間差が前記基準時間未満である場合、前記第1の蓄電素子及び前記第2の蓄電素子を放電させない構成としても良ければ、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第1時間差が前記基準時間以上である場合、前記第1時間差を用いて前記第2の蓄電素子を放電させ、前記第1時間差が前記基準時間未満である場合、前記第1の蓄電素子及び前記第2の蓄電素子を放電させない構成としても良い。
【0012】
この状態管理装置では、第1時間差が基準時間以上である場合に第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子を放電させる。一般に、蓄電素子が電又は放電を開始してから一定状態に到達するまでの時間を示す到達時間の差は、劣化による蓄電素子の容量の差を示している。この状態管理装置によれば、到達時間の差である第1時間差が基準時間以上である場合に第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子を放電させることで、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子とに充放電される容量の差を基準時間に対応する一定の容量差以内に保つことができる。
【0013】
上記の状態管理装置では、前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記複数の蓄電素子の充電が完了して前記第2の蓄電素子の充電が終了した場合、前記第2の蓄電素子が劣化していると判断する構成としても良ければ、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記複数の蓄電素子の放電が完了して前記第2の蓄電素子の放電が終了した場合、前記第1の蓄電素子が劣化していると判断する構成としても良い。
【0014】
蓄電素子の充電時において、第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値を超えて変化する前に第1の蓄電素子の充電が終了した場合、劣化によって第1の蓄電素子と第2の蓄電素子との容量差が基準時間に対応する一定の容量差以上に異なっていることが解かる。また、蓄電素子の放電時において、第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値を超えて変化する前に第1の蓄電素子の放電が終了した場合、劣化によって第1の蓄電素子と第2の蓄電素子との容量差が基準時間に対応する一定の容量差以上に異なっていることが解かる。この状態管理装置によれば、上記の場合に第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子が劣化していると判断することで、蓄電素子の容量の均等化や当該複数の蓄電素子の使用禁止など、これら複数の蓄電素子に対して必要な措置を取ることができる。
【0015】
上記の状態管理装置では、前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記第1の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達してからの経過時間が規定時間に到達した場合、前記第2の蓄電素子が劣化していると判断する構成としても良ければ、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記第1の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達してからの経過時間が規定時間に到達した場合、前記第1の蓄電素子が劣化していると判断する構成としても良い。
【0016】
第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値を超えて変化する前に第1の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達してからの経過時間が規定時間に到達した場合、劣化によって第2の蓄電素子の充電時間が長期化し、又は第1の蓄電素子の放電時間が短期化し、規定時間内に第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達しなかったことが解かる。この状態管理装置によれば、上記の場合に第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子が劣化していると判断することで、蓄電素子の容量の均等化や当該複数の蓄電素子の使用禁止など、これら複数の蓄電素子に対して必要な措置を取ることができる。
【0017】
上記の状態管理装置では、前記均等化制御部は、前記第1時間差を用いて前記第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子を放電させる放電時間を設定する構成としても良い。この状態管理装置によれば、第1時間差に対応する第1の2次電池に充放電された容量と第2の2次電池に充放電された容量の容量差を用いて第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子を放電させる放電時間を設定するので、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。
【0018】
上記の状態管理装置では、前記計時部は、前記蓄電素子の電圧が基準電圧に到達しており、かつ前記蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達した場合に、前記蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達したと判断する構成としても良い。この状態管理装置によれば、蓄電素子の電圧の時間変化率に加えて、蓄電素子の電圧に基づいて放電を制御するので、例えば時間変化率が基準値に到達することが複数回存在する場合には、その複数回の中から特定の1つを選出することができ、複数のの蓄電素子に充放電される容量を精度良く均等化することができる。
【0019】
上記の状態管理装置では、前記蓄電素子は、定電流充電又は定電流放電される構成としても良い。この状態管理装置によれば、蓄電素子が定電流で充放電されるので、時間差と蓄電素子の容量差を対応させやすく、蓄電素子に充放電される容量を均等化させやすい。
【0020】
上記の状態管理装置では、前記蓄電素子の充放電レートは、1C以下に設定されている構成としても良く、更に好ましくは、0.9C未満に設定されている構成としても良い。蓄電素子が定電流で充放電される場合、充放電レートが低いほど、充放電中の蓄電素子の電圧に大きな時間変化率が生じる。この状態管理装置によれば、充放電レートが比較的低く設定されていることから、蓄電素子の時間変化率を検出しやすく、時間差を取得しやすい。
【0021】
上記の状態管理装置では、前記蓄電素子の負極は、グラファイト系材料で形成される構成としても良い。負極がグラファイト系材料で形成される蓄電素子は、蓄電素子の時間変化率が他の領域に比べて大きくなる変化点が含まれる。この状態管理装置によれば、当該変曲点を用いて、蓄電素子の時間変化率を検出しやすく、時間差を取得しやすい。
【0022】
上記の状態管理装置では、前記各蓄電素子は、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池としても良い。オリビン鉄系リチウムイオン二次電池では、SOCが10%から90%に亘って広がるプラトー領域を有しており、当該プラトー領域では蓄電素子の電圧値に基づいて蓄電素子のSOCの値を推定することが難しい。この状態管理装置では、蓄電素子の電圧の時間変化率に基づいて蓄電素子のSOCの値を推定するので、当該プラトー領域においても蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。
【0023】
本明細書で開示する状態管理装置は、また、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達する順位に対応付けて放電時間が記憶された記憶部と、前記放電部を制御する均等化制御部と、を備え、前記均等化制御部は、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する順位に対応付けて記憶された前記放電時間に亘って当該蓄電素子を放電させる構成としても良い。
【0024】
この状態管理装置では、各蓄電素子の電圧を測定し、当該電圧の時間変化率が基準値に到達する順位を用いて各蓄電素子の放電を制御する。この状態管理装置によれば、蓄電素子がプラトー領域を有しており、電圧に基づいて均等化を制御することが難しい場合でも、蓄電素子の電圧の時間変化率に基づいて放電を制御することができ、蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。また、放電時間を設定する際に、予め記憶部に記憶された放電時間を用いて放電時間を設定することができ、放電時間を早期に設定することができる。
【0025】
本明細書で開示する状態管理装置は、また、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、前記放電部を制御する均等化制御部と、を備え、前記均等化制御部は、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達すると、当該蓄電素子の放電を開始させる構成としても良い。
【0026】
この状態管理装置では、各蓄電素子の電圧を測定し、当該電圧の時間変化率が基準値に到達すると当該蓄電素子を放電する。この状態管理装置によれば、蓄電素子がプラトー領域を有しており、電圧に基づいて均等化を制御することが難しい場合でも、蓄電素子の電圧の時間変化率に基づいて放電を制御することができ、蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。また、蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達すると当該蓄電素子の放電を開始させるので、当該蓄電素子の放電開始時期を早めることができる。
【0027】
本発明は、上記の状態管理装置を用いて実現される蓄電素子の均等化方法にも具現化される。本明細書で開示する蓄電素子の均等化方法は、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、いずれか一つの蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達してから、他の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達するまでの時間差を計時する計時工程と、前記時間差を用いて前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、を備える。
【0028】
また、本明細書で開示する蓄電素子の均等化方法は、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、を備え、前記放電工程では、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する順位に対応付けて予め設定された放電時間に亘って当該蓄電素子を放電させる構成としても良い。
【0029】
また、本明細書で開示する蓄電素子の均等化方法は、直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、を備え、前記放電工程では、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達すると、当該蓄電素子の放電を開始させる構成としても良い。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数の蓄電素子に充放電される容量を均等化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】充電システム(放電システム)のブロック図
【図2】放電回路の概略図
【図3】第1実施形態の均等化処理を示すフローチャート
【図4】2次電池の充放電特性を示す図
【図5】2次電池の充放電特性を示す図
【図6】2次電池の充放電特性を示す図
【図7】第2実施形態の均等化処理を示すフローチャート
【図8】第3実施形態の均等化処理を示すフローチャート
【図9】第4実施形態の均等化処理を示すフローチャート
【図10】その他の実施形態の均等化処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1について、図1ないし図6を用いて説明する。
1.状態判定装置の構成
図1は、本実施形態の充電システム(放電システム)10の構成を示す図である。充電システム(放電システム)10は、電池群12と状態管理装置(以下、BMS)20と充電器(負荷)18とによって構成される。電池群12は、電気自動車に搭載されており、
内部に直列に接続された複数の2次電池50(蓄電素子の一例)を含む。電池群12は、電気自動車等の内部または外部に設けられた充電器18に接続されることで定電流充電され、電気自動車等の内部に設けられた動力源等の負荷18に接続されることで定電流放電される。BMS20は、充電中の電池群12の各2次電池50の電圧値Vや電流値I等を監視して2次電池50の充放電状態を示す残存容量(SOC)を管理し、SOCを均等化する。
【0033】
本実施形態では、2次電池50として、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池(以下、オリビン鉄系電池)を用いた例を示す。この2次電池50は、リチウムイオン電池の一種であり、正極にオリビン型リン酸鉄が用いられ、負極にグラファイト系材料が用いられている。この2次電池50は、図4に示すように、SOCが10%未満である充電初期(放電末期)、及びSOCが90%以上である充電末期(放電初期)においてSOCの増加に対して電池電圧が急激に上昇する領域を有する。また、SOCが10%以上90%未満である充電中期(放電中期)においてSOCの増加に対して電池電圧が略一定である領域(以後、プラトー領域)を有する。
【0034】
BMS20は、中央処理装置(以下、CPU)30とアナログ−デジタル変換機(以下、ADC)34と電流計22と電圧計(電圧測定部の一例)24と放電回路(放電部の一例)26と温度計28を含む。
CPU30は、ROMやRAMなどのメモリ(記憶部の一例)32を内在しており、メモリ32には、BMS20の各構成の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されている。CPU30は、メモリ32から読み出したプログラムに従って、計時部42、均等化制御部44、劣化判断部46等として機能し、放電回路26を含むBMS20内の各部の制御を行う。
【0035】
温度計28は、接触式あるいは非接触式で電池群12の温度を測定し、測定した温度をメモリ32に記憶する。電圧計24は、図2に示すように、配線54を介して各2次電池50の両端に直接的に接続され、充放電中の2次電池50の電圧値Vを所定期間毎に個別に測定する。電池群12にはN個(N:2以上)の2次電池50A、50B、・・・50Nが含まれており、電圧計24は、各2次電池50の電圧VA、VB、・・・VNの電圧値を各々測定する。電圧計24は、測定したこれらの電圧値VをADC34に送信する。
【0036】
2次電池50と電圧計24を接続する配線54には、2次電池50を個別に放電する放電回路26が設けられている。図2に示すように、放電回路26には、各2次電池50の両端に接続される配線54の間に、各2次電池50を放電するための放電回路26A、26B、・・・26Nが設けられている。各放電回路26は、抵抗RとスイッチQによって構成されている。放電回路26のスイッチQは、均等化制御部44として機能するCPU30によって開閉が制御されており、CPU30によってスイッチQが閉状態とされると、配線54及び抵抗Rを介して2次電池50から電流が流れ、対応する2次電池50が放電する。また、CPU30によってスイッチQが開状態とされると、対応する2次電池50からの放電が停止する。
【0037】
電流計22は、電池群12と充電器18とを接続する配線52を流れる電流を計測し、2次電池50に共通して流れる充放電電流ZIの電流値を測定する。また、電流計22は、配線54を介して各2次電池50から個別に放電される電流(以下、均等化放電電流)HIの電流値IA、IB、・・・INを測定する。電流計22は、測定したこれらの電流値IをADC34に送信する。
【0038】
ADC34は、電流計22と電圧計24とCPU30に接続されており、電流計22及び電圧計24から送信されるアナログデータである電流値I及び電圧値Vを、デジタルデータに変換し、変換した電流値I及び電圧値Vをメモリ32に記憶する。計時部42及び劣化判断部46等として機能するCPU30は、メモリ32に記憶された当該電流値I及び電圧値Vを用いて後述する均等化処理を実行する。
【0039】
2.均等化処理
図3または図6を用いて、電池群12を充電する際に、BMS20で行われる均等化処理を説明する。本実施形態において、電池群12は0.5C充電の低速充電で定電流充電される。そして、均等化処理は、電池群12への充電制御処理に付随して実行される。図3は、CPU30で実行される電池群12への充電制御処理のフローチャートを示す。
【0040】
CPU30は、ユーザによって電池群12が充電器18に接続され、充電器18から電池群12への電力供給が開始されると、充電制御処理を実行するとともに均等化処理を実行する。CPU30は、均等化処理を開始すると、各2次電池50の電圧値Vを一定時間ΔX毎に繰り返し測定し、連続して測定された電圧値Vの差分値ΔVの絶対値を当該一定時間ΔXで割った電圧値Vの時間変化率DVを算出する。CPU30は、算出された時間変化率DVが基準値K(K>0)に到達するのを検出する(S2:NO)。
【0041】
上述したように、プラトー領域では、SOCの増加に対して2次電池50の電圧値Vが略一定であるので、2次電池50の電圧値Vが基準電圧値に到達するのを検出したとしても、2次電池50のSOCを精度良く推定することができない。
【0042】
本実施形態では、図5に示すように、負極にグラファイト系材料を用いたオリビン鉄系電池のプラトー領域において、充電中の2次電池50の電圧値Vの時間変化率が他の領域に比べて大きくなる変化点が存在することに注目した。負極にグラファイト系材料を用いた電池では、時間変化率が他の範囲に比べて大きく変化する変化点が存在する。そして、負極にグラファイト系材料を用いたオリビン鉄系電池では、その変化点がプラトー領域に位置することに注目した。つまり、オリビン鉄系電池では、プラトー領域において時間変化率が基準値Kを超えて大きくなる変化点が2つ(KS1、KS2)存在する。以下の説明では、これらの変化点KS1、KS2のうち、変化点に対応する電圧値が大きい側の変化点KS2に到達する場合について説明する。つまり、CPU30は、電圧値Vが変化点KS2に対応する電圧値(基準電圧の一例)KV2まで上昇し、時間変化率DVが基準値Kに到達するのを検出する。なお、変化点KS1に到達する場合に同様の処理を行っても良い。
【0043】
CPU30は、いずれかひとつの2次電池50の時間変化率DVが基準値Kに到達したのを検出すると(S2:YES)、当該到達してからの時間の計測を開始する(S4)。計時部42として機能するCPU30は、上記ひとつの2次電池50の時間変化率DVが基準値Kに到達してから他の2次電池50の時間変化率DVが基準値Kに到達するまでの経過時間(時間差の一例)ΔTを計時するとともに、当該経過時間ΔTをメモリ32に記憶されている基準時間KTと比較する(S6)。
【0044】
以下の説明では、理解のため、最も早く時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50を第1の2次電池50とし、他の2次電池50のひとつを第2の2次電池50とし、第1の2次電池50と第2の2次電池50における均等化処理を説明する。つまり、第1の2次電池50は、複数の2次電池50の中で最も早く変化点KS2にまで電圧値Vが上昇する(すなわち、SOCが大きい)ものとし、第2の2次電池50は、複数の2次電池50の中で最も遅く変化点KS2にまで電圧値Vが上昇する(すなわち、SOCが小さい)ものとする。
【0045】
図6に示すように、第1の2次電池50の時間変化率を時間変化率DV1とし、第2の2次電池50の時間変化率を時間変化率DV2とし、時間変化率DV1が基準値Kに到達してから時間変化率DV2が基準値Kに到達するまでの経過時間を経過時間(第1時間差の一例)ΔT1とする。なお、以下の説明において、第1の2次電池50を第2の2次電池50以外の各2次電池50に適用させることで、複数存在する全ての2次電池50に対して説明を行うことができる。
【0046】
CPU30は、基準時間KTが経過する前に時間変化率DV2が基準値Kに到達し、経過時間ΔT1が基準時間KT未満となる場合(S6:NO)、第1の2次電池50と第2の2次電池50は均等に充電されていると判断する。この場合、CPU30は、いずれの2次電池50をも放電させることなく、均等化処理を終了する。
【0047】
その一方、CPU30は、基準時間KTが経過する前に時間変化率DV2が基準値Kに到達せず、経過時間ΔT1が基準時間KT以上となる場合(S6:YES)、時間変化率DV2が基準値Kに到達するのを監視するとともに、2次電池50の電圧値Vの総和である総電圧が増加して充電終止電圧に到達するのを監視する(S8、S10)。
【0048】
CPU30は、総電圧が充電終止電圧に到達する前に時間変化率DV2が基準値Kに到達し、経過時間ΔT1が計時された場合(S8:YES、S10:NO)、第1の2次電池50と第2の2次電池50は、不均等に充電されていると判断する。CPU30は、第1の2次電池50と第2の2次電池50のSOCを均等化するために、第1の2次電池50を放電する放電時間HTを設定する。放電時間HTは、第1の2次電池50と第2の2次電池50のSOCを均一化するための均一化制御時間ということもできる。
【0049】
CPU30のメモリ32には、経過時間ΔT1と放電時間HTが関連付けられた対応表が予め記憶されている。均等化制御部44として機能するCPU30は、経過時間ΔT1と当該対応表に基づいて放電時間HTを設定する(S12)。放電時間HTの設定後、CPU30は、第1の2次電池50の放電を開始する(S14)。具体的には、CPU30は、第1の2次電池50に対応する放電回路26のスイッチQを閉状態とするとともに、当該スイッチQを閉状態としてからの経過時間ΔT2を計時する(S16)。CPU30は、経過時間ΔT2が放電時間HTに到達するまで(S16:NO)、第1の2次電池50を放電し、経過時間ΔT2が放電時間HTに到達すると(S16:YES)、第1の2次電池50の放電を終了し(S18)、均等化処理を終了する。
【0050】
一方、劣化判断部46として機能するCPU30は、時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に総電圧が充電終止電圧に到達した場合(S8:NO、S10:YES)、第1の2次電池50に比べて第2の2次電池50の劣化が進んでいることを検出するとともに、電池群12が寿命であると判断する(S20)。CPU30は、ディスプレイ等の表示部等を介して電池群12が劣化していること、及び電池群12の交換が必要なことをユーザに報知し、均等化処理を終了する。
【0051】
3.本実施形態の効果
(1)本実施形態のBMS20では、BMS20が充電中の2次電池50の電圧値Vを測定し、その電圧値Vから算出される時間変化率DVが基準値Kに到達した時間差である経過時間ΔT1を用いて2次電池50の均等化を制御する。このBMS20によれば、電圧値Vに基づいて2次電池50を均等化制御することが難しいプラトー領域においても、充電中の複数の2次電池50のSOCを均等化して充電することができる。
【0052】
特に、本実施形態では、2次電池50としてオリビン鉄系リチウムイオン二次電池を用いており、SOCが10%以上90%未満の範囲に広がるプラトー領域を有している。その一方、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池では、SOCが90%以上である充電末期においてSOCの増加に対して電池電圧が急激に上昇する。そのため、充電末期における2次電池50の電圧値Vを用いて複数の2次電池50を均等化しようとしても、SOCの僅かな増加によりSOCが略100%にまで到達してしまい、複数の2次電池50の均等化処理を完了させることができない。従って、充電末期よりもSOCが小さい範囲に存在するプラトー領域を用いて複数の2次電池50を均等化することが望まれる。
【0053】
このBMS20では、時間変化率DVを用いて2次電池50の放電を制御する。更に、本実施形態では、2次電池50として負極にグラファイト系材料を用いたオリビン鉄系リチウムイオン二次電池を用いており、プラトー領域に時間変化率が基準値Kを超えて大きくなる変化点KS1、KS2が存在する。そのため、当該変化点KS1、KS2を用いて時間変化率DVから2次電池50のSOCを推定することができ、プラトー領域を用いて複数の2次電池50のSOCの均等化を1回の均等化処理において完了させて、2次電池50を充電することができる。
【0054】
(2)本実施形態のBMS20では、第1の2次電池50と第2の2次電池50の間の時間差である経過時間ΔT1が基準時間KT以上である場合に、BMS20が第1の2次電池50を放電させる。一般に、経過時間ΔT1はこれらの2次電池50のSOCの差を示している。このBMS20によれば、経過時間ΔT1が基準時間KT以上である場合に第1の2次電池50を放電させることで、電池群12を充電する際の第1の2次電池50と第2の2次電池50とのSOCの差を基準時間KTに対応する一定の容量差以内に保つことができる。
【0055】
(3)本実施形態のBMS20では、経過時間ΔT1、つまり第1の2次電池50のSOCと第2の2次電池50のSOCの差に対応する時間差を用いて第1の2次電池50を均等化させる放電時間HTを設定するので、放電時間HTを精度よく設定することができ、第1の2次電池50と第2の2次電池50に充電されるSOCを均等化することができる。
【0056】
(4)本実施形態のBMS20では、経過時間ΔT1、つまり第1の2次電池50の時間変化率DV1が基準値Kに到達してから第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達するまでの時間が基準時間KT以上である場合、これらの2次電池50は不均等に充電されていると判断する。このBMS20では、上記の場合に第1の2次電池50を放電することで、電池群12を充電する際に、電池群12に含まれるこれらの2次電池50を均等化して充電することができる。
【0057】
(5)本実施形態のBMS20では、第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に、複数の2次電池50の総電圧が充電終止電圧に到達して充電が終了した場合、第2の2次電池50が劣化しており、第1の2次電池50と第2の2次電池50とのSOCを均等化することができないと判断する。このBMS20では、上記の場合に第2の2次電池50が劣化していると判断することで、劣化により均等化することができない2次電池50を含む電池群12が使用され続けることを抑制することができる。
【0058】
(6)本実施形態のBMS20では、充放電中の2次電池50が変化点に到達したか否かを検出する際に、時間変化率DVが基準値Kに到達したことを検出するとともに、電圧値Vが電圧値KV2にまで上昇したかを確認する。そのため、例えば、第1の2次電池50が変化点KS2に到達した後に第2の2次電池50が変化点KS1に到達した場合に、その間の時間差が計測されるなど、異なる変化点に到達した時間差が測定され、2次電池50が不正確に均等化されることを防止することができる。
【0059】
(7)本実施形態のBMS20では、電池群12は0.5C充電で定電流充電されるので、1C充電より大きく、更には0.9C充電以上の比較的高速で充電される場合に比べて、大きな時間変化率を生じさせることができる。2次電池50では、劣化により発生する時間変化率DVが減少し、時間変化率DVが基準値Kに到達したか否かを検出することが難しくなる。このBMS20では、2次電池50を比較的低速で充電するので、2次電池50が劣化した場合でも、時間変化率DVが基準値Kに到達したか否かを検出しやすい。
【0060】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、図7を用いて説明する。本実施形態では、実施形態1において充電システム10を用いて説明した内容について、放電システム10を用いて説明を行う。つまり、放電システム10を用いた放電制御処理に付随して実行される均等化処理について説明する。
【0061】
本実施形態において、電池群12は定電流放電される。また、本実施形態では、プラトー領域に存在する変化点KS1、KS2のうち、変化点に対応する電圧値が小さい側の変化点KS1に到達する場合について説明する。つまり、CPU30は、電圧値Vが変化点KS1に対応する電圧値KV1まで下降し、時間変化率DVが基準値Kに到達するのを検出する。また、本実施形態でも、最も早く時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50を第1の2次電池50とし、最も遅く時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50を第2の2次電池50とする。つまり、第1の2次電池50は、複数の2次電池50の中で最も早く電圧値Vが下降する(すなわち、SOCが小さい)ものとし、第2の2次電池50は、複数の2次電池50の中で最も遅く電圧値Vが下降する(すなわち、SOCが大きい)ものとする。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0062】
1.均等化処理
図7は、CPU30で実行される本実施形態の均等化処理のフローチャートを示す。
計時部42として機能するCPU30は、第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達するのを監視するとともに、2次電池50の電圧値Vの総和である総電圧が減少して放電終止電圧に到達するのを監視する(S8、S22)。均等化制御部44として機能するCPU30は、総電圧が放電終止電圧に到達する前に時間変化率DV2が基準値Kに到達し、経過時間ΔT1が計時された場合(S8:YES、S22:NO)、第1の2次電池50と第2の2次電池50は、不均等に放電されていると判断する。CPU30は、第1の2次電池50と第2の2次電池50のSOCを均等化するために、第2の2次電池50を放電する放電時間HTを設定し(S12)、当該放電時間HTに亘って第2の2次電池50を放電する(S24、S16、S26)。
【0063】
一方、劣化判断部46として機能するCPU30は、時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に総電圧が放電終止電圧に到達した場合(S8:NO、S22:YES)、第2の2次電池50に比べて第1の2次電池50の劣化が進んでいることを検出するとともに、電池群12が寿命であると判断する(S28)。CPU30は、ディスプレイ等の表示部等を介して電池群12が劣化していること、及び電池群12の交換が必要なことをユーザに報知し、均等化処理を終了する。
【0064】
2.本実施形態の効果
(1)本実施形態のBMS20では、BMS20が放電中の2次電池50の時間変化率DVを検出し、その時間変化率DVから算出される経過時間ΔT1を用いて2次電池50の均等化を制御する。このBMS20によれば、プラトー領域においても、放電中の複数の2次電池50のSOCを均等化して放電することができる。
【0065】
(2)本実施形態では、2次電池50としてオリビン鉄系リチウムイオン二次電池を用いており、SOCが10%以上90%未満の範囲に広がるプラトー領域を有している。その一方、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池では、SOCが10%未満である放電末期においてSOCの減少に対して電池電圧が急激に下降する。そのため、放電末期における2次電池50の電圧値Vを用いて複数の2次電池50を均等化しようとしても、SOCの僅かな減少によりSOCが略0%にまで到達してしまい、複数の2次電池50の均等化処理を完了させることができない。従って、放電末期よりもSOCが大きい範囲に存在するプラトー領域を用いて複数の2次電池50を均等化することが望まれる。
【0066】
このBMS20では、2次電池50の電圧値Vではなく時間変化率DVを用いて2次電池50の放電を制御する。そのため、プラトー領域を用いて複数の2次電池50のSOCの均等化を1回の均等化処理において完了させて、2次電池50を放電することができる。
【0067】
(3)本実施形態のBMS20では、経過時間ΔT1が基準時間KT以上である場合に第2の2次電池50を放電させることで、電池群12を放電する際の第1の2次電池50と第2の2次電池50とのSOCの差を基準時間KTに対応する一定の容量差以内に保つことができる。
【0068】
(4)本実施形態のBMS20では、経過時間ΔT1が基準時間KT以上である場合に、第1の2次電池50と第2の2次電池50とが不均等に放電されていると判断し、第2の2次電池50を放電することで、電池群12を放電する際に、電池群12に含まれるこれらの2次電池50を均等化して放電することができる。
【0069】
(5)本実施形態のBMS20では、第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に、複数の2次電池50の総電圧が放電終止電圧に到達して放電が終了した場合に、第1の2次電池50が劣化していると判断することで、劣化により均等化することができない2次電池50を含む電池群12が使用され続けることを抑制することができる。
【0070】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を、図8を用いて説明する。本実施形態の充電システム10では、メモリ32に予め記憶された放電時間HTに基づいて放電時間HTを設定する点で、均等化処理中に放電時間HTを設定する実施形態1の充電システム10と異なる。以下の説明では、実施形態1と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0071】
1.均等化処理
図8は、CPU30で実行される本実施形態の均等化処理のフローチャートを示す。
計時部42として機能するCPU30は、第1の2次電池50の時間変化率DV1が基準値Kに到達したのを検出すると(S2:YES)、当該到達してからの時間の計測を開始する(S4)とともに、第1の2次電池50の放電を開始する(S14)。また、CPU30は、第1、第2の2次電池50を含めた全ての2次電池50に対して、時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50の順位を検出し、メモリ32に一時的に記憶する。
【0072】
次に、均等化制御部44として機能するCPU30は、各2次電池50の放電時間HTを設定する(S32)。図1に点線で示すように、CPU30のメモリ32には、時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50の順位に対応付けられて放電時間HTが記憶されており、2次電池50の順位が高くなるに従って、放電時間HTが長くなるように設定されている。CPU30は、メモリ32において各2次電池50の順位に対応して記憶された放電時間HTを、各2次電池50の放電時間HTとして設定し、設定された放電時間HTに亘って第1の2次電池50を放電して(S34、S18)、均等化処理を終了する。
【0073】
充電システム10では、電池群12に対して充電を複数回に亘って繰り返しており、CPU30は、電池群12の充電の度に充電制御処理を繰り返し、均等化処理を繰り返す。CPU30は、均等化処理を繰り返す場合に、メモリ32に記憶された放電時間HTを用いて均等化処理を繰り返す。
【0074】
2.本実施形態の効果
(1)本実施形態のBMS20では、充電中に第1の2次電池50の時間変化率DVが基準値Kに到達すると、第1の2次電池50の放電を開始する。そのため、他の2次電池50の時間変化率DVが基準値Kに到達する前から第1の2次電池50の放電を開始させることができ、電池群12を充電する際の均等化処理において、第1の2次電池50の放電開始時期を早めることができる。
【0075】
(2)本実施形態のBMS20では、充電中において時間変化率DVが基準値Kに到達する順位と、予めメモリ32に記憶されている放電時間HTから各2次電池50の放電時間HTを設定するので、各2次電池50の放電時間HTを容易かつ早期に設定することができる。
【0076】
<実施形態4>
本発明の実施形態4を、図9を用いて説明する。本実施形態では、実施形態3において充電システム10を用いて説明した内容について、放電システム10を用いて説明を行う。つまり、放電システム10を用いた放電制御処理に付随して実行される均等化処理について説明する。
【0077】
本実施形態では、変化点KS1に到達する場合について説明する。また、本実施形態でも、最も早く電圧変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50を第1の2次電池50とし、最も遅く電圧変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50を第2の2次電池50とする。以下の説明では、実施形態1及び実施形態3と同一の内容については重複した記載を省略する。
【0078】
1.均等化処理
図9は、CPU30で実行される本実施形態の均等化処理のフローチャートを示す。
計時部42として機能するCPU30は、第2の2次電池50の時間変化率DV1が基準値Kに到達したのを検出すると(S42:YES)、当該到達してからの時間の計測を開始する(S4)とともに、第2の2次電池50の放電を開始する(S24)。次に、均等化制御部44として機能するCPU30は、メモリ32において各2次電池50の順位に対応して記憶された放電時間HTを、各2次電池50の放電時間HTとして設定し(S32)、設定された放電時間HTに亘って第2の2次電池50を放電し(S34、S26)、均等化処理を終了する。放電時間HTは、CPU30のメモリ32に時間変化率DVが基準値Kに到達した2次電池50の順位に対応付けられて記憶されており、2次電池50の順位が低くなるに従って、放電時間HTが長くなるように設定されている。
【0079】
2.本実施形態の効果
本実施形態のBMS20では、放電中に各2次電池50の放電開始時期を早めることができ、電池群12を放電する際の均等化処理において、第2の2次電池50の放電開始時期を早めることができる。
【0080】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、充電システム(放電システム)10が1つのBMS20を有し、計時部42、均等化制御部44、劣化判断部46等の機能をBMS20が有する1つのCPU30によって実行する例を用いて示したが、本発明はこれに限られない。例えば、お互いに異なるCPU、BMSなどによって各部が構成されても良ければ、これら各部が独立した機器等を用いて構成されていても良い。
【0081】
(2)上記実施形態では、2次電池50として負極にグラファイト系材料を用いたオリビン鉄系電池を用いた例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限らない。例えば、負極にグラファイト系材料を用いた他の電池においても使用が可能であり、プラトー領域を有していない電池においても使用が可能である。この場合、基準値Kは各電池の充放電特性に基づいて、適宜設定される。
【0082】
(3)上記実施形態では、2次電池50は定電流充電(定電流放電)される例を用いて説明を行ったが、2次電池50の充電方式(放電方式)はこれに限られない。例えば、2次電池50は、定電圧充電(定電圧放電)されてもよければ、定電力充電(定電力放電)されても良い。
【0083】
(4)上記実施形態では、充電システム(放電システム)10が電気自動車に搭載された電池群12に対して均等化処理を行う例について説明を行ったが、電池群12の使用用途は、本実施形態に限定されない。
【0084】
(5)上記実施形態では、経過時間ΔTを計時する際に、いずれかひとつの2次電池50の電圧値Vの時間変化率DVが基準値Kに到達してから時間の計測を開始しているが、充電制御処理(放電制御処理)の開始から時間を測定しても良い。つまり、計時部42として機能するCPU30は、充電制御処理(放電制御処理)の開始から時間を計時し、各2次電池50の電圧値Vの時間変化率DVが基準値Kに到達するまでの到達時間を測定し、その到達時間の差として経過時間ΔTを計時しても良い。
【0085】
(6)上記実施形態1では、放電時間HTを設定した後に第1の2次電池50の放電を開始する例を用いて説明を行ったが、例えば図10に示すように、放電時間HTを設定する前に放電を開始しておき、放電開始後に放電時間HTを設定しても良い。
【0086】
図10に、その他の実施形態の均等化処理のフローチャートを示す。
CPU30は、第1の2次電池50の時間変化率DV1が基準値Kに到達したのを検出すると(S2:YES)、当該到達してからの時間の計測を開始する(S4)とともに、第1の2次電池50の放電を開始する(S14)。
【0087】
次に、CPU30は、第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達するのを監視するとともに、2次電池50の電圧値Vの総和である総電圧が増加して充電終止電圧に到達するのを監視する(S8、S10)。CPU30は、総電圧が充電終止電圧に到達する前に時間変化率DV2が基準値Kに到達し、経過時間ΔT1が計時された場合(S8:YES、S10:NO)、第1の2次電池50を放電する放電時間HTを設定する(S12)。そして、設定された放電時間HTに亘って第1の2次電池50を放電し(S16、S18)、均等化処理を終了する。
【0088】
一方、CPU30は、時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に総電圧が充電終止電圧に到達した場合(S8:NO、S10:YES)、第1の2次電池50の放電を停止する(S42)とともに、第1の2次電池50に比べて第2の2次電池50の劣化が進んでいることを検出するとともに、電池群12が寿命であると判断する(S20)。CPU30は、ディスプレイ等の表示部等を介して電池群12が劣化していること、及び電池群12の交換が必要なことをユーザに報知し、均等化処理を終了する。
【0089】
(7)上記実施形態1、2では、複数の2次電池50の総電圧が充電終止電圧(放電終止電圧)に到達した場合に電池群12の寿命判断を実行する例を用いて説明を行ったが、各2次電池50に終端電圧が設定されており、いずれか1つの2次電池50が終端電圧に到達した場合に、電池群12の寿命判断を実行しても良い。つまり、第1の2次電池50の時間変化率DV1が基準値Kに到達した後、第2の2次電池50の時間変化率DV2が基準値Kに到達する前に第1の2次電池50の電圧値Vが充電上限電圧(放電終止電圧)に到達した場合に、電池群12の寿命判断を実行しても良い。
【0090】
(8)上記実施形態1、2では、経過時間ΔTを計時し、経過時間ΔTとメモリ32に記憶された対応表から放電時間HTを設定する例を用いて説明を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、電池群12への充放電電流ZIが測定されており、経過時間ΔTに当該充放電電流ZIを積して容量差ΔYを算出し、この容量差ΔYを放電回路26のスイッチQを閉状態とすることで流れる均等化制御電流HIで割って放電時間HTを求めても良い。さらには、所定の経過時間ΔTにより決まった放電時間HTのみ放電しても良い。
放電時間HT=容量差ΔY/均等化制御電流HI
【符号の説明】
【0091】
10:充電システム(放電システム)、12:電池群、20:BMS、22:電流計、24:電圧計、26:放電回路、30:CPU、42:計時部、44:均等化制御部、46:劣化判断部、50:2次電池、DV:時間変化率、HT:放電時間、KT:基準時間、K:基準値、ΔT:経過時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、
各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、
いずれか一つの蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達してから、他の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達するまでの時間差を計時する計時部と、
前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、
前記時間差を用いて前記放電部を制御する均等化制御部と、
を備える、状態管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の状態管理装置であって、
前記複数の蓄電素子は、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子を含み、
前記均等化制御部は、前記第1の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達してから、前記第2の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達するまでの第1時間差を取得するとともに基準時間を有し、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第1時間差が前記基準時間以上である場合、前記第1時間差を用いて前記第1の蓄電素子を放電させ、前記第1時間差が前記基準時間未満である場合、前記第1の蓄電素子及び前記第2の蓄電素子を放電させない、状態管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、
前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記複数の蓄電素子の充電が完了して前記第2の蓄電素子の充電が終了した場合、前記第2の蓄電素子が劣化していると判断する、状態管理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、
前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が充電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記第1の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達してからの経過時間が規定時間に到達した場合、前記第2の蓄電素子が劣化していると判断する、状態管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の状態管理装置であって、
前記複数の蓄電素子は、第1の蓄電素子と第2の蓄電素子を含み、
前記均等化制御部は、前記第1の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達してから、前記第2の蓄電素子の時間変化率が基準値に到達するまでの第1時間差を取得するとともに基準時間を有し、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第1時間差が前記基準時間以上である場合、前記第1時間差を用いて前記第2の蓄電素子を放電させ、前記第1時間差が前記基準時間未満である場合、前記第1の蓄電素子及び前記第2の蓄電素子を放電させない、状態管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、
前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記複数の蓄電素子の放電が完了して前記第2の蓄電素子の放電が終了した場合、前記第1の蓄電素子が劣化していると判断する、状態管理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の劣化を判断する劣化判断部をさらに備え、
前記劣化判断部は、前記複数の蓄電素子が放電中であって、前記第2の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する前に前記第1の蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達してからの経過時間が規定時間に到達した場合、前記第1の蓄電素子が劣化していると判断する、状態管理装置。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7に記載の状態管理装置であって、
前記均等化制御部は、前記第1時間差を用いて前記第1の蓄電素子又は第2の蓄電素子を放電させる放電時間を設定する、状態管理装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の状態管理装置であって、
前記計時部は、前記蓄電素子の電圧が基準電圧に到達しており、かつ前記蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達した場合に、前記蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達したと判断する、状態管理装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子は、定電流充電又は定電流放電される、状態管理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の充放電レートは、1C以下に設定されている、状態管理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の充放電レートは、0.9C未満に設定されている、状態管理装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子の負極は、グラファイト系材料で形成される、状態管理装置。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の状態管理装置であって、
前記蓄電素子は、オリビン鉄系リチウムイオン二次電池である、状態管理装置。
【請求項15】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、
各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、
前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、
前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達する順位に対応付けて放電時間が記憶された記憶部と、
前記放電部を制御する均等化制御部と、
を備え、
前記均等化制御部は、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する順位に対応付けて記憶された前記放電時間に亘って当該蓄電素子を放電させる、状態管理装置。
【請求項16】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を管理する状態管理装置であって、
各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定部と、
前記各蓄電素子を個別に放電する放電部と、
前記放電部を制御する均等化制御部と、
を備え、
前記均等化制御部は、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達すると、当該蓄電素子の放電を開始させる、状態管理装置。
【請求項17】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、
充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、
いずれか一つの蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達してから、他の蓄電素子の電圧の時間変化率が基準値に到達するまでの時間差を計時する計時工程と、
前記時間差を用いて前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、
を備える、蓄電素子の均等化方法。
【請求項18】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、
充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、
前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、
を備え、
前記放電工程では、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達する順位に対応付けて予め設定された放電時間に亘って当該蓄電素子を放電させる、蓄電素子の均等化方法。
【請求項19】
直列に接続された複数の蓄電素子の状態を均等化する蓄電素子の均等化方法であって、
充放電中の各蓄電素子の電圧を個別に測定する電圧測定工程と、
前記各蓄電素子を個別に放電する放電工程と、
を備え、
前記放電工程では、前記各蓄電素子の電圧の時間変化率が前記基準値に到達すると、当該蓄電素子の放電を開始させる、蓄電素子の均等化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−70599(P2013−70599A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186523(P2012−186523)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】