説明

独立した位相整合およびロックピン制御を行うカムシャフト位相器

【課題】エンジン内のクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を変更するためのカムシャフト位相器を提供すること。
【解決手段】このカムシャフト位相器はローブを有するステータを含む。ステータ内に配置されるロータがステータローブが差し込まれたベーンを有し、互い違いの進角室および遅角室を画定する。ロータとステータとの間での相対回転を防止するためにロックピンシートに選択的に係合されるロックピンが設けられる。圧縮オイルによりロックピンがシートから外され、一方でロックピンをシートに係合させるためにオイルが排出される。位相関係制御バルブがロータ内に同軸に配置され、室に入るおよび室から出るオイルの流れを制御する。ロックピンオイル通路が、カムシャフト位相器の外側に配置されるロックピン制御バルブからの入力に基づいてロックピンまでオイルを連通させたりロックピンからオイルを連通させたりする。制御バルブは互いに無関係に動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、内燃エンジンにおいてクランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を変更するための油圧駆動カムシャフト位相器に関し、より詳細には、ベーンタイプのカムシャフト位相器であるそのようなカムシャフト位相器に関し、より詳細には、クランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を変更するための、カムシャフト位相器内に同軸に配置される位相関係制御バルブと、カムシャフト位相器の外側に配置されるロックピンオイル制御バルブを使用してロックピンへとオイルを連通させたりロックピンからオイルを連通させたりするためのロックピンオイル通路と、を有するベーンタイプのカムシャフト位相器に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]一般的なベーンタイプのカムシャフト位相器は、通常、ステータ上で内向きに延在する複数のローブが差し込まれた、ロータ上で外向きに延在する複数のベーンを有し、それによりベーンとローブとの間で互い違いの進角室および遅角室が形成される。ステータ内でロータを回転させてそれによりエンジンカムシャフトとエンジンクランクシャフトとの間の位相関係を変更するために、エンジンオイルが進角室および遅角室のうちの一方に選択的に供給されて進角室および遅角室のもう一方から排出される。カムシャフト位相器はまた、通常、フル進角位置とフル遅角位置との中間の角度位置においてロータとステータとの間での相対回転を選択的に防止する中間ロックピンを有する。この中間ロックピンは、中間ロックピンからオイルを排出したり中間ロックピンに圧縮オイルを供給したりすることにより、それぞれ係合されたり係合を外されたりする。
【0003】
[0003]一部のカムシャフト位相器は、内燃エンジン内に配置される1つまたは複数のオイル制御バルブを使用して、進角室、遅角室およびロックピンへの圧縮オイルの流れまたはそれらからの圧縮オイルの流れを制御する。このようなカムシャフト位相器の一例が、米国特許出願公開第2010/0288215号に示されている。この構成では、カムシャフト位相器との連絡のために、カムシャフトベアリングには3つの別個の供給信号が含まれる必要がある。より具体的には、カムシャフトベアリングには、進角室のための第1の通路、遅角室のための第2の通路、および、ロックピンのための第3の通路が含まれる。3つの別個の通路がカムシャフトベアリング内に含まれることにより、望ましくなく、カムシャフトの長さが増す。さらに、3つの各々の通路へのオイルまたはそれらからのオイルを制御するのに必要であるオイル制御バルブを中に実装するための内燃エンジン内での空間が制限される可能性がある。
【0004】
[0004]実装に関する懸念事項、および、内燃エンジン内にオイル制御バルブを実装することに付随してカムシャフトベアリングの長さが増すという問題を排除するために、一部の製造業者は、カムシャフト位相器内に同軸のオイル制御バルブを設けている。この構成は、進角室および遅角室のみにオイルを供給するオイル制御バルブためには良好に機能するが、同じバルブを用いてロックピンを制御することは不利である。このようなカムシャフト位相器の一例が米国特許出願公開第2004/0055550号に示されている。進角室および遅角室に加えてロックピンへのオイルを制御するために、カムシャフト位相器内に同軸のオイル制御バルブを1つ含むことの1つの欠点は、カムシャフトの厚さが増すことであり、これは、ロックピンへさらにはロックピンからオイルを供給するための通路を収容するために必要なことである。また、オイル制御バルブが1つであることにより、ロックピン機能および位相整合機能を独立させて制御することが妨げられ、それにより中間ロックピンをそのロックピンシートに係合させることが困難となる可能性がある。
【0005】
[0005]カムシャフトベアリング内に3つの別個の供給通路を必要としないような、位相関係を制御するためのさらにはロックピンを制御するためのバルブ機構を備える軸方向にコンパクトなカムシャフト位相器が必要とされている。また、ロックピンを制御するのに使用されるオイルとは無関係に、位相関係を変更するのに使用されるオイルを制御することを可能にするカムシャフト位相器が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0288215号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0055550号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0006]簡単に言うと、内燃エンジン内のクランクシャフトとカムシャフトとの位相関係を制御可能に変更するためのカムシャフト位相器が提供される。このカムシャフト位相器は複数のローブを有するステータを含み、また、ステータとクランクシャフトとの間の回転比を固定するために内燃エンジンのクランクシャフトに接続可能である。このカムシャフト位相器はまた、ステータ内に同軸に配置されて複数のベーンを有するロータを含み、これらの複数のベーンにはステータローブが差し込まれ、それにより互い違いの進角室および遅角室が画定される。進角室は、クランクシャフトとカムシャフトとの間の位相関係を進角方向に変更するために圧縮オイルを受け、一方遅角室は、カムシャフトとクランクシャフトとの間の位相関係を遅角方向に変更するために圧縮オイルを受ける。ロータは、ロータとカムシャフトとの間で相対回転が起こるのを防止するために内燃エンジンのカムシャフトに取付可能である。ロータおよびステータのうちの一方の中にロックピンが配置されるが、これは、ロックピンがロックピンシートに係合されているときにロータとステータとの間の位相関係が変更されるのを防止するためにロータおよびステータのもう一方に選択的に係合されるためのものである。ロックピンをロックピンシートから外すために、圧縮オイルが選択的にロックピンに供給され、ロックピンをロックピンシートに係合させるために、オイルが選択的にロックピンから排出される。進角室および遅角室に入るオイルの流れおよびそれらから出るオイルの流れを制御するために、位相関係制御バルブがロータ内に同軸に配置される。ロックピンへとオイルを連通させたりロックピンからオイルを連通させたりするためのロックピンオイル通路が設けられる。このロックピンオイル通路は、カムシャフト位相器が内燃エンジンに取り付けられるときに、カムシャフト位相器の外側に配置されるロックピンオイル制御バルブに接続可能である。ロックピン制御バルブはロックピンへのオイルの流れおよびロックピンからのオイルの流れを制御するものであり、位相関係制御バルブとは無関係に作動する。
【0008】
[0007]非限定の例としてのみ与えられる、添付図面を参照する本発明の好適な実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより本発明のさらなる特徴および利点がより明確となる。
【0009】
[0008]添付図面を参照して本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】[0009]本発明によるカムシャフト位相器を示す分解等角図である。
【図2】[0010]図1のカムシャフト位相器を示す軸方向断面図である。
【図3】[0011]図2の矢印3の方向に沿った、本発明によるカムシャフト位相器を示す径方向断面図である。
【図4A】[0012]圧縮オイルを遅角室に供給するためのさらには進角室からオイルを排出するための第1の位置にある位相関係制御バルブを示している、図3に示される断面線4−4を通る、図1のカムシャフト位相器を示す軸方向断面図である。
【図4A1】[0013]カムシャフト位相器を通るオイル流れを明瞭に示すために参照符号をなくした、図4Aの関連要素を示す拡大図である。
【図4B】[0014]進角室に圧縮オイルを供給するためのさらには遅角室からオイルを排出するための第2の位置にある位相関係制御バルブを示す、図4Aの軸方向断面図である。
【図4B1】[0015]カムシャフト位相器を通るオイル流れを明瞭に示すために参照符号をなくした、図4Bの関連要素を示す拡大図である。
【図5】[0016]図5Aは、図1のカムシャフト位相器のブシュアダプタを示す拡大等角図である。[0017]図5Bは、図5Aのブシュアダプタを示す等角断面図である。
【図6】[0018]図2の円6を示す拡大図である。
【図7A】[0019]一次ロックピンおよび二次ロックピンに圧縮オイルを供給するためのオイル供給位置にあるロックピン制御バルブを示している、図3に示される断面線7−7を通る、図1のカムシャフト位相器を示す軸方向断面図である。
【図7B】[0020]一次ロックピンおよび二次ロックピンからオイルを排出するためのオイル排出位置にあるロックピン制御バルブを示す、図7Aの軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0021]本発明の好適な実施形態に従い、図1、2および3を参照すると、カムシャフト位相器12を含む内燃エンジン10が示されている。内燃エンジン10はまた、複数の往復ピストン(図示せず)によって駆動されるクランクシャフト及びチェーン(図示せず)からの回転入力に基づいて回転可能であるカムシャフト14を有する。カムシャフト14が回転すると、内燃エンジンの技術分野でよく知られているように、吸気バルブおよび/または排気バルブ(図示せず)にバルブ上げ動作およびバルブ閉じ動作が与えられる。カムシャフト位相器12は、クランクシャフトとカムシャフト14との間のタイミングを変更することが可能である。このようにして、吸気バルブおよび/または排気バルブの開閉は、所望のエンジン性能を達成するために進角または遅角させることができる。
【0012】
[0022]カムシャフト位相器12は、内燃エンジン10のクランクシャフトによって駆動されるチェーンまたはギア(図示せず)によって駆動されるスプロケット16を有する。別法として、スプロケット16はベルトによって駆動されるプーリであってもよい。スプロケット16はカムシャフト14を受け入れるための中央孔18を同軸で有しており、カムシャフト14はその中央孔18内でスプロケット16に対して相対的に回転することが可能である。スプロケット16は、後でより詳細に説明するように、スプロケットボルト22によりステータ20に密封状態で固定される。
【0013】
[0023]ステータ20は概して円筒形であり、径方向内向きに延在する複数のローブ26によって画定される複数の径方向(換言すれば、放射状)チャンバ24を有する。示される実施形態では、4つの径方向チャンバ24を画定する4つのローブ26が存在するが、異なる数のローブが設けられてその数のローブと同数の径方向チャンバが画定されてよいことを理解されたい。
【0014】
[0024]ロータ28は中央ハブ30を有し、この中央ハブ30は、そこから径方向外向きに延在する複数のベーン32と、中央ハブ30を軸方向に貫通して延在する中央貫通孔34とを有する。ベーン32の数はステータ20内に設けられる径方向チャンバ24の数に等しい。ロータ28はステータ20内に同軸に配置され、それにより、各ベーン32が各径方向チャンバ24を進角室36および遅角室38に分割する。ローブ26の径方向先端部は、径方向チャンバ24を互いから分割するように中央ハブ30に噛み合い可能である。好適には、ベーン32の径方向先端部の各々は、隣接する進角室36および遅角室38を互いから実質的に密封するために複数のワイパーシール40のうちの1つを有する。図示されないが、ローブ26の径方向先端部の各々が、ワイパーシール40の形態と同様のワイパーシールを有することができる。
【0015】
[0025]中央ハブ30は、そこを径方向に貫通して形成される複数のオイル通路42A、42Rを有する(図3の隠れ線で最もよく確認できる)。複数のオイル通路42Aは、各々、進角室36のうちの1つにオイルを供給するためにさらにはそこからオイルを供給するために進角室36のうちの1つに流体連通され、一方、複数のオイル通路42Rは、各々、遅角室38のうちの1つにオイルを供給するためにさらにはそこからオイルを供給するために遅角室38のうちの1つに流体連通される。
【0016】
[0026]バイアスばね(換言すれば、付勢ばね)44が、ロータ28内に形成された環状ポケット46の中かつカムシャフト位相器カバー50の中央孔48の中に配置される。バイアスばね44はその一方の端部がカムシャフト位相器カバー50に取り付けられており、他方の端部がロータ28に取り付けられる。内燃エンジン10が停止するとき、後のバラグラフでより詳細に説明するように、バイアスばね44がロータ28をステータ20内の所定の角度位置まで付勢する。
【0017】
[0027]カムシャフト位相器12は、最大進角位置と最大遅角位置との間にある所定の角度位置においてロータ28とステータ20との間での相対回転を選択的に防止するための段階的デュアルロックピンシステム(staged dual lock pin system)を有する。一次ロックピン52が、ロータ28の複数のベーン32のうちの1つの中に形成される一次ロックピン孔54内に摺動可能に配置される。一次ロックピン52を中で選択的に受け入れるために、カムシャフト位相器カバー50内に一次ロックピンシート56が形成される。一次ロックピンシート56は一次ロックピン52より大きく、それにより、一次ロックピン52が一次ロックピンシート56内に着座されているときに、ロータ28が所定の角度位置から各側に約5°だけステータ20に対して相対的に回転することが可能となる。一次ロックピンシート56が大きいことで、一次ロックピン52を中で受け入れることがより容易になる。一次ロックピン52が一次ロックピンシート56内に着座されることが望まれない場合、圧縮オイルが一次ロックピン52に供給され、それにより一次ロックピン52が一次ロックピンシート56から出るように押圧され、一次ロックピンばね58が圧縮される。逆に、一次ロックピン52が一次ロックピンシート56内に着座されることが望まれる場合、圧縮オイルが一次ロックピン52から排出され、それにより一次ロックピンばね58が一次ロックピン52をカムシャフト位相器カバー50に向かって押圧することが可能となる。このようにして、一次ロックピン52を一次ロックピンシート56に位置合わせするのを可能にするようにロータ28がステータ20内に配置されると、一次ロックピン52が一次ロックピンばね58により一次ロックピンシート56内に着座されるようになる。
【0018】
[0028]二次ロックピン60がロータ28の複数のベーン32のうちの1つの中に形成される二次ロックピン孔62内に摺動可能に配置される。二次ロックピン60を中で選択的に受け入れるために、カムシャフト位相器カバー50内に二次ロックピンシート64が形成される。二次ロックピン60は密接に摺動する関係で二次ロックピンシート64内に嵌合されることから、二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内で受け入れられているとき、ロータ28とステータ20との間での相対回転が実質的に防止される。二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内に着座されることが望まれない場合、圧縮オイルが二次ロックピン60に供給され、それにより二次ロックピン60が二次ロックピンシート64から出るように押圧され、二次ロックピンばね66が圧縮される。逆に、二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内に着座されることが望まれる場合、圧縮オイルが二次ロックピン60から排出され、それにより二次ロックピンばね66が二次ロックピン60をカムシャフト位相器カバー50に向かって押圧することが可能となる。このようにして、二次ロックピン60を二次ロックピンシート64に位置合わせするのを可能にするようにロータ28がステータ20内に配置されると、二次ロックピン60が二次ロックピンばね66により二次ロックピンシート64内に着座されるようになる。
【0019】
[0029]所定の角度位置においてロータ28とステータ20との間での相対回転を防止することが望まれる場合、圧縮オイルが一次ロックピン52および二次ロックピン60の両方から排出され、それにより、一次ロックピンばね58および二次ロックピンばね66が、それぞれ、一次ロックピン52および二次ロックピン60をカムシャフト位相器カバー50に向かって押圧することが可能となる。一次ロックピン52および二次ロックピン60を一次ロックピンシート56および二次ロックピンシート64にそれぞれ整合するために、圧縮オイルを進角室36に供給すること、圧縮オイルを遅角室38に供給すること、バイアスばね44により押圧すること、および、カムシャフト14からのトルクを使用すること、のうちの1つまたは複数により、ロータ28がステータ20に対して相対的に回転され得る。一次ロックピンシート56は大きいため、二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内に着座される前に、一次ロックピン52が一次ロックピンシート56内に着座される。一次ロックピン52が一次ロックピンシート56内に着座されている状態では、ロータ28がステータ20に対して相対的に約10°回転することが可能である。二次ロックピン60を二次ロックピンシート64に位置合わせしてそれにより二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内に着座されるのを可能にするために、圧縮オイルを進角室36に供給すること、圧縮オイルを遅角室38に供給すること、バイアスばね44により付勢すること、および、カムシャフト14からのトルクを使用すること、のうちの1つまたは複数により、ロータ28はステータ20に対して相対的にさらに回転され得る。進角室36、遅角室38、一次ロックピン52、および、二次ロックピン60へのオイルの供給およびそれらからのオイルを排出は後でより詳細に説明する。
【0020】
[0030]カムシャフト位相器カバー50は、スプロケット16およびステータ20を通って延在してカムシャフト位相器カバー50にねじ込み式に係合されるスプロケットボルト22により、ステータ20に密封状態で取り付けられる。このようにして、スプロケット16、ステータ20およびカムシャフトカバー50を軸方向および径方向において互いに固定するために、ステータ20がスプロケット16とカムシャフト位相器カバー50との間でしっかりとクランプされる。
【0021】
[0031]次に図1、2、5Aおよび5Bを参照すると、ブシュアダプタ68が密嵌状態でカムシャフト14のポケット70内に同軸に配置されている。ブシュアダプタ68はまた、圧力嵌め状態でロータ28の中央貫通孔34内に同軸で配置されてそれらの間での相対回転を防止しており、また、中央貫通孔34の段差特徴によって画定される中央貫通孔34の停止面72に当接されるまで中央貫通孔34内に圧力嵌めされてよい。カムシャフト位相器12がカムシャフト14に取り付けられるとき、ブシュアダプタ68がカムシャフト位相器12をカムシャフト14に同軸に整合する。これにより、カムシャフト14を中で受けてカムシャフト位相器12をカムシャフト14に同軸に位置合わせするためにロータ28内で軸方向の空間が必要とされないことから、ロータ28を軸方向においてよりコンパクトにすることが可能となる。オイル通路の回路網は、後で詳細に説明するようにブシュアダプタ68によって部分的に画定される。
【0022】
[0032]カムシャフト位相器12は、密接な嵌合状態でブシュアダプタ68を通って軸方向に延在するカムシャフト位相器取付ボルト74によりカムシャフト14に取り付けられる。ロータ28は、ポケット70からカムシャフト14内に軸方向に延在するねじ穴78を備えるカムシャフト14の軸方向面76に接触して配置される。
【0023】
[0033]カムシャフト14を貫通して径方向に形成されるカムシャフト位相整合用オイル通路82からオイルを受けるために、カムシャフト位相器取付ボルト74とポケット70との間で径方向に環状オイル室80が形成される。オイルは、カムシャフトベアリング84内の油孔(oil gallery)(図示せず)を通して、内燃エンジン10からカムシャフトオイル通路82まで供給される。カムシャフト位相器取付ボルト74が所定のトルクまで締め付けられると、カムシャフト位相器取付ボルト74のヘッド86が軸方向においてロータ28のボルト表面88に作用する。このようにして、カムシャフト位相器12が軸方向においてカムシャフト14に固定され、それによりロータ28とカムシャフト14との間での相対回転が防止される。
【0024】
[0034]次に図1、3、4A、5Aおよび5Bを参照すると、ブシュアダプタ68が、内燃エンジン10から位相関係制御バルブ92まで圧縮オイルを連通させるための供給通路90を少なくとも部分的に画定している。供給通路90は、ブシュアダプタ68の内径上に形成される第1の環状溝94によって部分的に画定されてよい。第1の環状溝94は軸方向においてロータ28内に配置されてよい。
【0025】
[0035]供給通路90はさらに、軸方向においてロータ28の中央ハブ30内の途中まで延在する軸方向溝96によって画定されてよい。軸方向溝96は、ブシュアダプタ68を通って径方向に延在する第1の接続通路98を通して第1の環状溝94に流体連通され得る。
【0026】
[0036]供給通路90はさらに、ブシュアダプタ68の内径上に形成されかつ軸方向においてカムシャフト14のポケット70内に配置され得る第2の環状溝100により、画定されてよい。第2の環状溝100は、ブシュアダプタ68を通って径方向に延在する第2の接続通路102を通して軸方向溝96に流体連通され得る。
【0027】
[0037]供給通路90はさらに、ブシュアダプタ68の外径上で、軸方向において第1の環状溝94と第2の環状溝100との間に形成される第3の環状溝104によって画定されてよい。第3の環状溝104は第2の接続通路102を通して第2の環状溝100に流体連通され得、また、ブシュアダプタ68の外径上で軸方向に配置されることによって軸方向溝96に流体連通され得、したがって、軸方向溝96は少なくとも部分的に軸方向において第3の環状溝104に重なる。
【0028】
[0038]供給通路90はさらに、カムシャフト位相器取付ボルト74内で軸方向に形成される盲孔106によって画定されてよい。盲孔106は、ヘッド86によって画定されるカムシャフト位相器取付ボルト74の端部から始まり、軸方向において環状オイル室80に位置合わせされる、カムシャフト位相器取付ボルト74内の位置まで延在してよい。第1の径方向ドリル孔108がカムシャフト位相器取付ボルト74を通って径方向に延在しており、環状オイル室80から盲孔106までの流体連通を実現しており、一方で、第2の径方向ドリル孔110が軸方向において第1の径方向ドリル孔108から離間されてカムシャフト位相器取付ボルト74を通って径方向に延在しており、盲孔106から第2の環状溝100までの流体連通を実現している。
【0029】
[0039]位相関係制御バルブ92から内燃エンジン10までオイルが逆流するのを防止しながら圧縮オイルが内燃エンジン10から位相関係制御バルブ92まで供給されるのを可能するために、軸方向において第1の径方向ドリル孔108と第2の径方向ドリル孔110との間にチェックバルブ組立体112が配置されてよい。チェックバルブ組立体112は、圧縮オイル内に存在する可能性がある異物が位相関係制御バルブ92に到達するのを一切防止するためにフィルタ114を有する。チェックバルブ組立体112は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、本出願人に譲渡された米国特許出願第12/912,338号により詳細に記載されている。
【0030】
[0040]カムシャフト位相器取付ボルト74は、第1の環状溝94と盲孔106との間で流体連通を実現するために、そこを貫通して径方向に延在する供給用ドリル孔116を有する。供給用ドリル孔116は圧縮オイルが位相関係制御バルブ92に供給されるのを可能にする。
【0031】
[0041]供給通路90の少なくとも一部分を画定することに加えて、ブシュアダプタ68はさらに、圧縮オイルを位相関係制御バルブ92から進角室36まで選択的に連通させるためのさらにはオイルをそこから排出するための進角通路118を少なくとも部分的に画定する。進角通路118は、ブシュアダプタ68の内径上で軸方向において第1の環状溝94と第2の環状溝100との間に形成される第4の環状溝120により少なくとも部分的に画定され得る。第4の環状溝120は進角オイル接続通路122を通してオイル通路42Aに流体連通され、このオイル通路42Aは進角室36に流体連通されている。進角オイル接続通路122は第4の環状溝120からブシュアダプタ68を通って軸方向に延在する。
【0032】
[0042]カムシャフト位相器取付ボルト74は、第4の環状溝120と盲孔106との間で流体連通を実現するための、そこを貫通して径方向に延在する進角ドリル孔124を有する。進角ドリル孔124は、圧縮オイルが位相関係制御バルブ92から進角室36まで選択的に供給されるのを可能にする。
【0033】
[0043]供給通路90および進角通路118の少なくとも一部分を画定することに加えて、ブシュアダプタ68はさらに、位相関係制御バルブ92から遅角室38まで圧縮オイルを選択的に連通させるための遅角通路126を少なくとも部分的に画定する。遅角通路126は、軸方向においてブシュアダプタ68の軸方向端部130とヘッド86との間に形成される軸方向空間128によって画定され得る。軸方向端部130はブシュアダプタ68の小径区間132によって画定されてよく、それによりロータ28の中央貫通孔34と小径区間132との間に径方向のクリアランスが設けられる。軸方向空間128はさらに、径方向においてロータ28とカムシャフト位相器取付ボルト74との間に画定される。軸方向空間128は、遅角室38に流体連通されているオイル通路42Rに流体連通される。
【0034】
[0044]カムシャフト位相器取付ボルト74は、軸方向空間128と盲孔106との間で流体連通を実現するための、カムシャフト位相器取付ボルト74を貫通して径方向に延在する遅角ドリル孔134を有する。遅角ドリル孔134は、圧縮オイルが位相関係制御バルブ92から遅角室38まで選択的に供給されるのを可能にする。
【0035】
[0045]位相関係制御バルブ92はカムシャフト位相器取付ボルト74内に配置され、カムシャフト位相器取付ボルト74の溝138内に嵌合される保持リング136によりその中で保持される。位相関係制御バルブ92は本体142を備えるバルブスプール140を有し、この本体142は、本体142とカムシャフト取付ボルト74の盲孔106との間に環状のクリアランスを設けるように概して円筒形で中空であり、そのように寸法決定される。
【0036】
[0046]バルブスプール140はまた、供給用ドリル孔116と進角ドリル孔124との間の流体連通を選択的に遮断するために、本体142から径方向外向きに延在する進角ランド部144を有する。進角ランド部144は、進角ランド部144と盲孔106との間をオイルが通過するのを実質的に防止するために、密嵌状態でカムシャフト位相器取付ボルト74の盲孔106内に装着される。
【0037】
[0047]バルブスプール140はまた、供給用ドリル孔116と遅角ドリル孔134との間の流体連通を選択的に遮断するために、本体142から径方向外向きに延在する遅角ランド部146を有する。遅角ランド部146は軸方向において進角ランド部144から離れるように位置決めされ、遅角ランド部146と盲孔106との間をオイルが通過するのを実質的に防止するために、密接な嵌合状態でカムシャフト位相器取付ボルト74の盲孔106内に装着される。
【0038】
[0048]次に図1、4Aおよび6を参照すると、バルブスプール140が、位相関係制御バルブアクチュエータ148およびスプールばね150からの入力により盲孔106内で軸方向に移動可能である。スプールばね150は、第2の径方向ドリル孔110と進角ドリル孔124との間で盲孔106内に密封状態で固定されるシート152によりカムシャフト位相器取付ボルト74に取り付けられている。シート152は盲孔106をスプール区間154とチェックバルブ区間156とに密封状態で分離する。スプールばね150の第1の端部がシート152の環状凹部158内に着座され、一方、スプールばね150の第2の端部がバルブスプール140の一方の端部内に形成されるばねポケット160内に着座される。このようにして、スプールばね150は、位相関係制御バルブアクチュエータ148が付勢されていないときにバルブスプール140をシート152から離れるように付勢し、それにより、圧縮オイルが供給用ドリル孔116から遅角ドリル孔134まで供給されかつオイルが進角ドリル孔124からバルブスプール140の中央通路162を通してさらにはヘッド86に隣接する盲孔106の端部を通して排出されるように、スプール区間154内でバルブスプール140が位置決めされる。逆に、位相関係制御バルブアクチュエータ148が作動しているとき、圧縮オイルが進角ドリル孔124に供給されかつオイルが遅角ドリル孔134からヘッド86に隣接する盲孔106の端部まで排出されるようにスプール区間154内でバルブスプール140を位置決めするために、スプールばね150の付勢力が打ち負かされる。
【0039】
[0049]次に図4A、7Aおよび7Bを参照すると、当技術分野で知られている従来の3ウェイバルブであるロックピン制御バルブ164が概略的に示されている。ロックピン制御バルブ164はカムシャフト位相器12の外側でカムシャフト位相器12から離れて位置しており、好適には内燃エンジン10内に位置する。ロックピン制御バルブ164はポンプ166から圧縮オイルを受け入れ、このポンプ166は好適には位相関係制御バルブ92にも圧縮オイルを供給する。ロックピン制御バルブアクチュエータ168は、オイル供給位置とオイル排出位置との間でロックピン制御バルブ164を移動させる。
【0040】
[0050]図7Aに示されるようにオイル供給位置では、ポンプ166からの圧縮オイルがロックピン制御バルブ164を通過して、カムシャフト14の周りで周方向に形成され、かつ軸方向においてカムシャフト14を貫通して形成されたカムシャフト一次ロックピンオイル通路172およびカムシャフト二次ロックピンオイル通路174に流体連通される環状ロックピンオイル溝170まで供給される。カムシャフト一次ロックピンオイル通路172は、ロータ28を貫通して形成されかつ一次ロックピン52に流体連通されるロータ一次ロックピンオイル通路176に位置合わせされる。同様に、カムシャフト二次ロックピンオイル通路174は、ロータ28を貫通して形成されかつ二次ロックピン60に流体連通されるロータ二次ロックピンオイル通路178に位置合わせされる。
【0041】
[0051]図7Bに示されるようにオイル排出位置では、ポンプ166からの圧縮オイルがロックピン制御バルブ164を通過して環状ロックピンオイル溝170まで達することが防止される。同時に、一次ロックピン52および二次ロックピン60からオイルを排出するために、環状ロックピンオイル溝170とオイルリザーバ180との間で流体連通が実現される。
【0042】
[0052]図7Aを参照すると、作動時、内燃エンジン10のカムシャフト14とクランクシャフトとの間の位相関係が変更されることが望まれる場合、内燃エンジン10からの圧縮オイルが一次ロックピン52および二次ロックピン60に供給される。ここでの圧縮オイルの経路は矢印Pで示されている。これは、ロックピン制御バルブアクチュエータ168を使用してロックピン制御バルブ164をオイル供給位置に配置することによって達成される。このようにして、圧縮オイルが、環状ロックピンオイル溝170を通して、ポンプ166からカムシャフト一次ロックピンオイル通路172およびカムシャフト二次ロックピンオイル通路174まで供給される。圧縮オイルは、カムシャフト一次ロックピンオイル通路172およびカムシャフト二次ロックピンオイル通路174から、それぞれロータ一次ロックピンオイル通路176およびロータ二次ロックピンオイル通路178を通して、一次ロックピン52および二次ロックピン60にそれぞれ供給される。一次ロックピン52および二次ロックピン60に供給された圧縮オイルは、一次ロックピン52および二次ロックピン60を一次ロックピンシート56および二次ロックピンシート64からそれぞれ後退させる。
【0043】
[0053]一次ロックピン52および二次ロックピン60が一次ロックピンシート56および二次ロックピンシート64からそれぞれ後退している状態の図4Aおよび4Bを参照すると、ここでは、内燃エンジン10のカムシャフト14とクランクシャフトと間の位相関係が変更され得る。これは、圧縮オイルを進角室36または遅角室38のいずれかに供給しかつ圧縮オイルを受け入れない方の室からオイルを排出することによって達成される。圧縮オイルは、カムシャフト位相整合用オイル通路82を通して内燃エンジン10のポンプ166から環状オイル室80まで供給される。次いで、圧縮オイルは、第1の径方向ドリル孔108を通過して盲孔106のチェックバルブ区間156に到達し、その後チェックバルブ組立体112およびフィルタ114を通過する。次いで、圧縮オイルは第2の径方向ドリル孔110を通って第2の環状溝100に達する。圧縮オイルは、第2の環状溝100から第2の接続通路102を通って第3の環状溝104に送られる。次いで、圧縮オイルは、軸方向溝96および第1の接続通路98を通して第1の環状溝94に送られる。圧縮オイルは、第1の環状溝94に到達すると、供給用ドリル孔116を通して位相関係制御バルブ92に送られる。
【0044】
[0054]圧縮オイルが遅角室38に供給されることが望まれる場合、位相関係制御バルブアクチュエータ148が図4Aに示されるように付勢されない動作状態に置かれる。この動作状態では、第1の接続通路98から遅角ドリル孔134まで圧縮オイルを連通させるのを可能にするようにバルブスプール140が盲孔106内で位置決めされる。ここでの圧縮オイルの経路は矢印Pで示される。ここでは、遅角ドリル孔134が圧縮オイルを軸方向空間128まで連通させ、圧縮オイルはさらにオイル通路42Rを通して遅角室38に連通される。
【0045】
[0055]同時に、進角ランド部144により、圧縮オイルが第1の接続通路98から進角ドリル孔124まで連通されることが防止される。さらに同時に、進角ランド部144が、中央通路162に流体連通されるように進角ドリル孔124を配置することにより進角室36からオイルを排出することを可能にする。ここでの排出されるオイルの経路は矢印Vで示される。このようにして、オイル通路42Aを通してオイルが進角室36から排出されることが可能となる。次いで、排出されたオイルは、進角オイル接続通路122を通して、オイル通路42Aから第4の環状溝120まで通過する。ここではオイルは進角ドリル孔124を通して中央通路162に連通されており、オイルはカムシャフト位相器取付ボルト74の端部を通して排出される。見易いように、図4A1には参照符号がなく、さらに、矢印Pで示される圧縮オイルの経路および矢印Vで示される排出されるオイルの経路を明確に示すために、オイル通路を画定していない要素も示されていない。
【0046】
[0056]しかし、圧縮オイルが進角室36に供給されることが望まれる場合、位相関係制御バルブアクチュエータ148が図4Bに示されるように付勢される動作状態に置かれる。この動作状態では、第1の接続通路98から進角ドリル孔124まで圧縮オイルを連通させるのを可能にするためにバルブスプール140が盲孔106内で位置決めされる。ここでの圧縮オイルの経路は矢印Pで示される。ここでは、進角ドリル孔124が圧縮オイルを第4の環状溝120まで連通させ、圧縮オイルはさらに進角オイル接続通路122およびオイル通路42Rを通して進角室36に連通される。
【0047】
[0057]同時に、遅角ランド部146により、圧縮オイルが第1の接続通路98から遅角ドリル孔134まで連通されることが防止される。さらに同時に、遅角ランド部146が、中央通路162に流体連通されるように遅角ドリル孔134を配置することにより遅角室38からオイルを排出することを可能にする。ここでの排出されるオイルの経路は矢印Vで示される。このようにして、オイル通路42Rを通してオイルが遅角室38から排出されることが可能となる。次いで、排出されたオイルは、オイル通路42Rから軸方向空間128まで通過し、さらに、遅角ドリル孔134を通して中央通路162まで通過する。次いで、オイルはカムシャフト位相器取付ボルト74の端部を通って排出される。見易いように、図4B1には参照符号がなく、さらに、矢印Pで示される圧縮オイルの経路および矢印Vで示される排出されるオイルの経路を明確に示すために、オイル通路を画定していない要素も示されていない。
【0048】
[0058]図7Bを参照すると、作動時、ロータ28をステータ20に対して所定の角度位置でロックすることが望まれる場合、一次ロックピン52および二次ロックピン60を一次ロックピンシート56および二次ロックピンシート64内にそれぞれ着座させるために、オイルが一次ロックピン52および二次ロックピン60から排出される。これは、ロックピン制御バルブアクチュエータ168をオイル排出位置に配置することによって達成される。オイル排出位置では、ポンプ166からの圧縮オイルがロックピン制御バルブ164を通過して環状ロックピンオイル溝170まで到達することが防止される。同時に、環状ロックピンオイル溝170とオイルリザーバ180との間で流体連通が実現される。このようにして、オイルが一次ロックピン52および二次ロックピン60から排出される。ここでの排出されるオイルの経路は矢印Vで示される。一次ロックピン52および二次ロックピン60から排出されるオイルは最初に、ロータ一次ロックピンオイル通路176およびロータ二次ロックピンオイル通路178をそれぞれ通ってカムシャフト一次ロックピンオイル通路172およびカムシャフト二次ロックピンオイル通路174まで通過する。次いで、オイルは環状ロックピン溝170を通ってオイルリザーバ180まで通過する。
【0049】
[0059]一次ロックピン52および二次ロックピン60から排出されるオイルにより、一次ロックピンばね58および二次ロックピンばね66がカムシャフト位相器カバー50に向かわせるように一次ロックピン52および二次ロックピン60をそれぞれ押圧する。しかし、一次ロックピン52および二次ロックピン60がすでに一次ロックピンシート56および二次ロックピンシート64にそれぞれ位置合わせされていない限り、一次ロックピン52および二次ロックピン60の一方または両方が一次ロックピンシート56内および二次ロックピンシート64内にそれぞれ着座されることはない。一次ロックピン52および二次ロックピン60を一次ロックピンシート56内および二次ロックピンシート64内にそれぞれ着座させるために、ロータ28とステータ20との位相関係を変更する必要がある場合がある。これは、ステータ20内でロータ28の所定の角度関係を実現するために必要に応じて、圧縮オイルを進角室36または遅角室38のいずれかに供給することによって達成され得る。また、これは、バイアスばね44によりロータ28を所定の角度位置まで押圧することによっても達成され得る。さらに、これは、カムシャフト14からのトルクによりロータ28を所定の角度位置まで押圧することによっても達成され得る。上で説明したように、一次ロックピン52が最初に一次ロックピンシート56内に着座され、それによりロータ28が所定の角度位置の近くで保持されるようになる。次いで、二次ロックピン60が二次ロックピンシート64に位置合わせされている場合、二次ロックピン60が二次ロックピンシート64内に着座される。
【0050】
[0060]カムシャフト14に加えられるカムシャフト位相器12を有する内燃エンジン10を説明してきたが、ここでは、内燃エンジン10が複数のカムシャフトを有してよいことおよび各カムシャフトがそれ自体のカムシャフト位相器を有してよいことを理解されたい。また、1つのカムシャフト位相器が本発明によるカムシャフト位相器を使用することができ、一方で第2のカムシャフト位相器が例えば電気作動式カムシャフト位相器といったような別のタイプのカムシャフト位相器であってよいことを理解されたい。さらに、本発明が単一バンクのシリンダを備える内燃エンジンおよび複数バンクのシリンダを備える内燃エンジンの両方に適用されることを理解されたい。
【0051】
[0061]位相関係制御バルブアクチュエータ148が付勢されていないときに遅角室38に圧縮オイルを供給し同時に進角室36からオイルを排出するものとしてカムシャフト位相器12の動作を説明してきた。ここでは、カムシャフト位相器12の動作が、位相関係制御バルブアクチュエータ148が付勢されていないときに進角室36に圧縮オイルを供給し同時に遅角室38からオイルを排出するようにも構成され得ることを理解されたい。同様に、位相関係制御バルブアクチュエータ148が付勢されているときに進角室36に圧縮オイルを供給し同時に遅角室38からオイルを排出するものとしてカムシャフト位相器12の動作を説明してきた。ここでは、カムシャフト位相器12の動作が、位相関係制御バルブアクチュエータ148が作動されているときに遅角室38に圧縮オイルを供給し同時に進角室36からオイルを排出するようにも構成され得ることを理解されたい。
【0052】
[0062]本発明を本発明の好適な実施形態に関連させて説明してきたが、本発明はそれらの好適な実施形態のみに限定されることを意図せず、むしろ以下の特許請求の範囲に記載される範囲のみに限定されることを意図する。
【符号の説明】
【0053】
10 内燃エンジン
12 カムシャフト位相器
14 カムシャフト
16 スプロケット
18 中央孔
20 ステータ
22 スプロケットボルト
24 径方向チャンバ
26 ローブ
28 ロータ
30 中央ハブ
32 ベーン
34 中央貫通孔
36 進角室
38 遅角室
40 ワイパーシール
42 オイル通路
44 バイアスばね
46 環状ポケット
48 カムシャフト位相器カバーの中央孔
50 カムシャフト位相器カバー
52 一次ロックピン
54 一次ロックピン孔
56 一次ロックピンシート
58 一次ロックピンばね
60 二次ロックピン
62 二次ロックピン孔
64 二次ロックピンシート
66 二次ロックピンばね
68 ブシュアダプタ
70 カムシャフトのポケット
72 停止面
74 カムシャフト位相器取付ボルト
76 カムシャフトの軸方向面
78 ねじ穴
80 環状オイル室
82 カムシャフト位相整合用オイル通路
84 カムシャフトベアリング
86 カムシャフト位相器取付ボルトのヘッド
88 ボルト表面
90 供給通路
92 位相関係制御バルブ
94 第1の環状溝
96 軸方向溝
98 第1の接続通路
100 第2の環状溝
102 第2の接続通路
104 第3の環状溝
106 盲孔
108 第1の径方向ドリル孔
110 第2の径方向ドリル孔
112 チェックバルブ組立体
114 フィルタ
116 供給用ドリル孔
118 進角通路
120 第4の環状溝
122 進角オイル接続通路
124 進角ドリル孔
126 遅角通路
128 軸方向空間
130 ブシュアダプタの軸方向端部
132 ブシュアダプタの小径区間
134 遅角ドリル孔
136 保持リング
138 カムシャフト位相器取付ボルトの溝
140 バルブスプール
142 バルブスプールの本体
144 進角ランド部
146 遅角ランド部
148 位相関係制御バルブアクチュエータ
150 スプールばね
152 シート
154 スプール区間
156 チェックバルブ区間
158 シートの環状凹部
160 ばねポケット
162 バルブスプールの中央通路
164 ロックピン制御バルブ
166 ポンプ
168 ロックピン制御バルブアクチュエータ
170環状ロックピンオイル溝
172 カムシャフト一次ロックピンオイル通路
174 カムシャフト二次ロックピンオイル通路
176 ロータ一次ロックピンオイル通路
178 ロータ二次ロックピンオイル通路
180 オイルリザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンのクランクシャフトとカムシャフトとの位相関係を制御可能に変更するために内燃エンジンに使用されるカムシャフト位相器であって、
複数のローブを有するステータであって、ステータと前記クランクシャフトとの間の回転比を固定するように前記内燃エンジンの前記クランクシャフトに接続可能である、ステータと、
前記ステータ内に同軸に配置される、複数のベーンを有するロータであって、前記ベーンの間に前記ステータのローブが差し込まれて互い違いの進角室および遅角室を画定し、前記進角室は、前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの間の位相関係を進角方向に変更するように圧縮オイルを受け入れ、前記遅角室は、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の位相関係を遅角方向に変更するように圧縮オイルを受け入れ、前記ロータは、前記ロータと前記カムシャフトとの間で相対回転が起こるのを防止するように前記内燃エンジンの前記カムシャフトに取付可能である、ロータと、
前記ロータおよび前記ステータのうちの一方の中に配置されて前記ロータおよび前記ステータのうちの他方のロックピンシートに選択的に係合するロックピンであって、前記ロックピンが前記ロックピンシートに係合されているときに前記ロータと前記ステータとの間の位相関係が変更されることが防止され、前記ロックピンを前記ロックピンシートから外すように、圧縮オイルが選択的に前記ロックピンに供給され、前記ロックピンを前記ロックピンシートに係合させるように、オイルが選択的に前記ロックピンから排出される、ロックピンと、
前記進角室および前記遅角室に入るオイルの流れと前記進角室および前記遅角室から出るオイルの流れを制御するための、前記ロータ内に同軸に配置される位相関係制御バルブと、
前記ロックピンへとオイルを連通させ前記ロックピンからオイルを連通させるための第1のロックピンオイル通路であって、前記第1のロックピンオイル通路は、前記カムシャフト位相器が前記内燃エンジンに取り付けられるときに前記カムシャフト位相器の外側に配置されるロックピンオイル制御バルブに流体連通され、且つ、前記ロックピンオイル制御バルブが、前記ロックピンへのオイルの流れおよび前記ロックピンからのオイルの流れを制御し、前記位相関係制御バルブとは独立して作動する、第1のロックピンオイル通路と
を有するカムシャフト位相器。
【請求項2】
前記第1のロックピンオイル通路が前記ロータに配置され、前記ロータと前記カムシャフトとの接続時に前記カムシャフトに配置される第2のロックピンオイル通路に流体連通される、請求項1に記載のカムシャフト位相器。
【請求項3】
前記カムシャフト位相器がさらに
前記カムシャフトのポケット内に同軸に配置可能であり、前記ロータ内に同軸に配置されるブシュアダプタと、
密な嵌合状態で前記ブシュアダプタを貫通して同軸に延在し、前記カムシャフト位相器を前記カムシャフトに取り付けるように前記カムシャフト内にねじ込み式に係合され得る、カムシャフト位相器取付ボルトと、
を有し、
前記ブシュアダプタが少なくとも部分的に
前記内燃エンジンから前記位相関係制御バルブまで圧縮オイルを連通させる供給通路であって、前記ブシュアダプタの内径を画定する内側表面上に形成される第1の環状溝により少なくとも部分的に画定される、供給通路と、
前記位相関係制御バルブから前記進角室まで圧縮オイルを選択的に連通させる進角通路と、
前記位相関係制御バルブから前記遅角室まで圧縮オイルを選択的に連通させる遅角通路と
を画定する、
請求項1に記載のカムシャフト位相器。
【請求項4】
前記供給通路がさらに、前記ロータの前記内側表面および前記ロータと前記ブシュアダプタとの間に同軸に配置される円筒形スリーブのうちの一方に形成される軸方向溝によって画定され、前記軸方向溝が、前記ブシュアダプタを貫通して径方向に延在する第1の接続通路を通して前記第1の環状溝に流体連通される、請求項3に記載のカムシャフト位相器。
【請求項5】
前記供給通路がさらに、前記ブシュアダプタの内径上に形成される第2の環状溝によって画定され、前記第2の環状溝が、前記ブシュアダプタを貫通して径方向に延在する第2の接続通路を通して前記軸方向溝に流体連通される、請求項4に記載のカムシャフト位相器。
【請求項6】
前記第2の環状溝が前記カムシャフトの前記ポケット内に配置可能である、請求項5に記載のカムシャフト位相器。
【請求項7】
前記供給通路がさらに、前記ブシュアダプタの外径上に形成される第3の環状溝によって画定され、前記第3の環状溝が前記軸方向溝および前記第2の接続通路に流体連通される、請求項5に記載のカムシャフト位相器。
【請求項8】
前記進角通路および前記遅角通路のうちの一方が、前記ブシュアダプタの内径上に形成される第4の環状溝によって画定される、請求項3に記載のカムシャフト位相器。
【請求項9】
前記進角通路および前記遅角通路の他方が、前記ブシュアダプタの軸方向端部と前記カムシャフト位相器取付ボルトとの間に形成される軸方向空間によって画定される、請求項8に記載のカムシャフト位相器。
【請求項10】
前記カムシャフト位相器取付ボルトが、前記位相関係制御バルブを収容する軸方向孔を有する、請求項3に記載のカムシャフト位相器。
【請求項11】
前記カムシャフト位相器取付ボルトが
前記内燃エンジンから前記軸方向孔まで圧縮オイルを連通させるように前記カムシャフト位相器取付ボルトを貫通する第1の径方向通路と、
前記軸方向孔から前記ブシュアダプタの前記供給通路まで圧縮オイルを連通させるように前記カムシャフト位相器取付ボルトを貫通する第2の径方向通路と
を有する、請求項10に記載のカムシャフト位相器。
【請求項12】
チェックバルブ組立体が前記第1の径方向通路と前記第2の径方向通路との間に配置され、これにより圧縮オイルが前記第1の径方向通路から前記第2の径方向通路まで連通されることが可能となり、且つ、前記第2の径方向通路から前記第1の径方向通路まで圧縮オイルが連通されることが実質的に防止される、請求項11に記載のカムシャフト位相器。
【請求項13】
前記ブシュアダプタが前記カムシャフト位相器を前記カムシャフトに同軸に整合する、請求項3に記載のカムシャフト位相器。
【請求項14】
クランクシャフトおよびカムシャフトを備える内燃エンジンであって、
前記内燃エンジンの前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの位相関係を制御可能に変更するためのカムシャフト位相器と、前記カムシャフト位相器の外側に配置されるロックピンオイル制御バルブとを備えており、
前記カムシャフト位相器は、
複数のローブを有するステータであって、ステータと前記クランクシャフトとの間の回転比を固定するように前記内燃エンジンの前記クランクシャフトに接続されるステータと、
前記ステータ内に同軸に配置される、複数のベーンを有するロータであって、前記ベーンの間に前記ステータのローブが差し込まれて互い違いの進角室および遅角室を画定し、前記進角室は、前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの間の位相関係を進角方向に変更するように圧縮オイルを受け入れ、前記遅角室は、前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の位相関係を遅角方向に変更するように圧縮オイルを受け入れ、前記ロータは、前記ロータと前記カムシャフトとの間で相対回転が起こるのを防止するように前記内燃エンジンの前記カムシャフトに取り付けられる、ロータと、
前記ロータおよび前記ステータのうちの一方の中に配置されて前記ロータおよび前記ステータのうちの他方のロックピンシートに選択的に係合するロックピンであって、前記ロックピンが前記ロックピンシートに係合されているときに前記ロータと前記ステータとの間の位相関係が変更されることが防止され、前記ロックピンを前記ロックピンシートから外すように、圧縮オイルが選択的に前記ロックピンに供給され、前記ロックピンを前記ロックピンシートに係合させるように、オイルが選択的に前記ロックピンから排出される、ロックピンと、
前記進角室および前記遅角室に入るオイルの流れと前記進角室および前記遅角室から出るオイルの流れを制御するための、前記ロータ内に同軸に配置される位相関係制御バルブと、
前記ロックピンへとオイルを連通させ前記ロックピンからオイルを連通させる第1のロックピンオイル通路とを含み、
前記ロックピンオイル制御バルブは、前記第1のロックピンオイル通路を通して前記ロックピンへのオイルの流れおよび前記ロックピンからのオイルの流れを制御し、前記位相関係制御バルブとは独立して作動する、
内燃エンジン。
【請求項15】
前記第1のロックピンオイル通路が前記ロータに配置され、前記カムシャフトに配置される第2のロックピンオイル通路に流体連通される、請求項14に記載の内燃エンジン。
【請求項16】
前記カムシャフト位相器がさらに
前記カムシャフトのポケット内に同軸に配置され且つ前記ロータ内に同軸に配置されるブシュアダプタと、
密な嵌合状態で前記ブシュアダプタを貫通して同軸に延在し、前記カムシャフト位相器を前記カムシャフトに取り付けるように前記カムシャフト内にねじ込み式に係合可能である、カムシャフト位相器取付ボルトと、
を有し、
前記ブシュアダプタが少なくとも部分的に
前記内燃エンジンから前記位相関係制御バルブまで圧縮オイルを連通させる供給通路であって、前記ブシュアダプタの内径を画定する内側表面上に形成される第1の環状溝により少なくとも部分的に画定される、供給通路と、
前記位相関係制御バルブから前記進角室まで圧縮オイルを選択的に連通させる進角通路と、
前記位相関係制御バルブから前記遅角室まで圧縮オイルを選択的に連通させる遅角通路と
を画定する、
請求項14に記載の内燃エンジン。
【請求項17】
前記供給通路がさらに、前記ロータの前記内側表面および前記ロータと前記ブシュアダプタとの間に同軸に配置される円筒形スリーブのうちの一方に形成される軸方向溝によって画定され、前記軸方向溝が、前記ブシュアダプタを貫通して径方向に延在する第1の接続通路を通して前記第1の環状溝に流体連通される、請求項16に記載の内燃エンジン。
【請求項18】
前記供給通路がさらに、前記ブシュアダプタの内径上に形成される第2の環状溝によって画定され、前記第2の環状溝が、前記ブシュアダプタを貫通して径方向に延在する第2の接続通路を通して前記軸方向溝に流体連通される、請求項17に記載の内燃エンジン。
【請求項19】
前記第2の環状溝が前記カムシャフトの前記ポケット内に配置される、請求項18に記載の内燃エンジン。
【請求項20】
前記供給通路がさらに、前記ブシュアダプタの外径上に形成される第3の環状溝によって画定され、前記第3の環状溝が前記軸方向溝および前記第2の接続通路に流体連通される、請求項19に記載の内燃エンジン。
【請求項21】
前記進角通路および前記遅角通路のうちの一方が、前記ブシュアダプタの内径上に形成される第4の環状溝によって画定される、請求項16に記載の内燃エンジン。
【請求項22】
前記進角通路および前記遅角通路の他方が、前記ブシュアダプタの軸方向端部と前記カムシャフト位相器取付ボルトとの間に形成される軸方向空間によって画定される、請求項21に記載の内燃エンジン。
【請求項23】
前記カムシャフト位相器取付ボルトが、前記制御バルブを収容する軸方向孔を有する、請求項16に記載の内燃エンジン。
【請求項24】
前記カムシャフト位相器取付ボルトが
前記内燃エンジンから前記軸方向孔まで圧縮オイルを連通させるように前記カムシャフト位相器取付ボルトを貫通する第1の径方向通路と、
前記軸方向孔から前記ブシュアダプタの前記供給通路まで圧縮オイルを連通させるように前記カムシャフト位相器取付ボルトを貫通する第2の径方向通路と
を有する、請求項23に記載の内燃エンジン。
【請求項25】
チェックバルブ組立体が前記第1の径方向通路と前記第2の径方向通路との間に配置され、これにより圧縮オイルが前記第1の径方向通路から前記第2の径方向通路まで連通されることが可能となり、且つ、前記第2の径方向通路から前記第1の径方向通路まで圧縮オイルが連通されることが実質的に防止される、請求項24に記載の内燃エンジン。
【請求項26】
前記ブシュアダプタが前記カムシャフト位相器を前記カムシャフトに同軸に整合する、請求項16に記載の内燃エンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4A1】
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【図4B】
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【図4B1】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−219815(P2012−219815A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−87442(P2012−87442)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】