説明

玩具用部品素材及びその製造方法

【課題】 玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる玩具用部品素材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 一対の発砲プラスチック板11,13の間に繊維入テープ12を介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型14,15で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型14,15を加熱した後に該金型14,15を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備える。また、発砲プラスチック板11,13の間に繊維入テープ12が介装されて玩具用部品の形状に圧縮成形され、それぞれの発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルム16,17が張り付けられた構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具の構成部品に使用する軽量で破損し難い玩具用部品素材及びその玩具用部品素材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空中を飛行する模型の飛行機玩具あるいはヘリコプター玩具等の飛行玩具を構成する部品として、機体、翼、プロペラ、ローターブレード等の材料は、例えば、バルサや発砲ポリスチレン等の軽量な材料が使用されていた。また、近年では、破損し難い発砲ポリプロピレン等の材料が使用されている。本出願人は、例えば、機体に、固定垂直尾翼及び固定水平尾翼と、一組の左右のプロペラを備えた飛行機玩具に関する技術を開示している(例えば、特許文献1参照。)。これらの翼やプロペラも上記の材料を使用している。
【特許文献1】実公平6−00000号公報(第2〜3ページ、図1及び2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の飛行玩具の材料として、バルサや発砲ポリスチレンでは、衝撃等に弱く破損し易い欠点があった。一方、発砲ポリプロピレン等の材料では、衝撃に比較的に強くて破損しにくいが、薄肉に成形することが困難なため使用する部品材料に制限があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる玩具用部品素材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明にあっては、一対の発砲プラスチック板の間に繊維入テープを介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型を加熱した後に該金型を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備えたことを特徴とするものである。繊維入テープを一対の発砲プラスチック板の間に介装した3層構造材料を、金型で圧縮成形した後に加熱してから冷却し、不要な周辺部分を抜き型により打ち抜くことで、玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明にあっては、前記周辺部分を除去する工程の後に、前記発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルムを張り付ける工程を有することを特徴とするものである。プラスチックフィルムを張り付けることでさらに強度を向上させることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明にあっては、一方の表面に予めプラスチックフィルムが張り付けられた一対の発砲プラスチック板の間に繊維入テープを介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型を加熱した後に該金型を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備えたことを特徴とするものである。一方の表面に予めプラスチックフィルムが張り付けられた繊維入テープを一対の発砲プラスチック板の間に介装した3層構造材料を、金型で圧縮成形した後に加熱してから冷却し、不要な周辺部分を抜き型により打ち抜くことで、短い工程により玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる。
【0008】
請求項4に記載の発明にあっては、前記発砲プラスチック板は、発砲ポリスチレン板であり、前記プラスチックフィルムは、表面に彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルムであることを特徴とするものである。彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルムを発砲ポリスチレン板の表面に張り付けることで、表面処理が可能になる。
【0009】
請求項5に記載の発明にあっては、発砲プラスチック板の間に繊維入テープが介装されて玩具用部品の形状に圧縮成形され、それぞれの発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルムが張り付けられた構造を有することを特徴とするものである。玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形できる。
【0010】
請求項6に記載の発明にあっては、飛行玩具の機体、翼、プロペラまたはローターブレード、ホバークラフト玩具の機体、船玩具の船底または甲板のいずれかであることを特徴とするものである。軽量で破損し難い玩具の部品素材として、飛行玩具の機体、翼、プロペラまたはローターブレード、ホバークラフト玩具の機体、船玩具に使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、一対の発砲プラスチック板の間に繊維入テープを介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型を加熱した後に該金型を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備えたで、玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる。また、発砲プラスチック板の間にガラス繊維入テープが介装されて玩具用部品の形状に圧縮成形され、それぞれの発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルムが張り付けられた構造を有することで、玩具の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示の一実施形態により具体的に説明する。図1は玩具用部品素材の製造工程を説明する図、図2は図1の製造工程で製造された玩具用部品素材の斜視図である。
【0013】
図1において、本実施形態では、ヘリコプター玩具用ローターブレードの部品素材の製造工程例を示している。まず、図1(a)に示すように、発砲プラスチック材料として、例えば、厚さが2mm程度で所定の大きさの面積に形成された発砲ポリスチレン板11の一方の表面に、ガラス繊維入粘着テープ12を張り付ける。このガラス繊維入粘着テープ12は、ポリエステルフィルムの一方の表面にガラス繊維を、ゴム系、合成樹脂系、合成ゴム系等からなる粘着材とともに張り付け、幅が10〜50mm程度のテープ状に形成したものであり、一般に重量物の梱包や部品の結束等に使用されるものである。本実施形態の部品素材として使用するガラス繊維入粘着テープ12としては、製造する部品に対応して任意の幅のものを使用でき、また粘着材としてはゴム系及び合成ゴム系が良好な結果を得ることができた。
【0014】
次に、図1(b)に示すように、発砲ポリスチレン板11に張り付けたガラス繊維入粘着テープ12の表面に、同じ厚さと面積の発砲ポリスチレン板13を接着剤により張り付ける。この接着剤としては、発砲ポリスチレンとポリエステルとが接着できる任意の接着剤が使用できるが、例えば、スチレンブタジエンゴムまたはアクリルゴムを主成分とするものが良好な結果を得ることができた。すなわち、図1(a)及び(b)の工程により、発砲ポリスチレン板11,13の間にガラス繊維入粘着テープ12を介装させた3層構造の材料を形成する。
【0015】
次に、図1(c)に示すように、成形するための部品に対応した形状が彫り込まれた、例えば、アルミニューム製の一対の金型14,15を使用して3層構造の材料の両面から圧縮成形してから、金型14,15を約120℃程度に加熱して約5秒間程圧縮成形する。これにより、ガラス繊維入粘着テープ12が両面から発砲ポリスチレン板11,13で挟まれた状態で金型14,15に彫り込まれた形状に発砲ポリスチレン板11,13が圧縮されて成形される。続いて、金型14,15を圧縮させた状態で約30℃程度まで冷却し、この冷却した状態を約30秒程度維持させる。この金型14,15を圧縮させた状態で冷却させることで、成形させた形状を保つことができる。本実施形態では、発砲ポリスチレン板11,13の厚さは、例えば、それぞれ1mm程度に圧縮成形され、部品素材として全体の厚さが2mm程度に成形される。
【0016】
次に、図1(d)に示すように、上記の図1(c)の工程により圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する。このような不要な周辺部分の除去として、例えば、抜き型により部品を打ち抜くことができる。これにより、必要な部品の形状に圧縮成形された発砲ポリスチレン板11,13の間にガラス繊維入粘着テープ12を介装させ薄肉の部品素材が成形される。
【0017】
次に、図1( e)に示すように、上記の図1(d)の工程後に、圧縮成形された発砲ポリスチレン板11,13の表面に、プラスチックフィルムとして、例えば,所定の彩色で光沢を有する薄いポリエステルフィルム16,17をスチレンブタジエンゴムまたはアクリルゴムを主成分とする接着剤で張り付けることで、玩具用部品素材10が製造される。ポリエステルフィルム16,17により、彩色され光沢のある表面処理ができるだけでなく、さらに強度を向上させることができる。
【0018】
図2には、上記の製造工程により製造された玩具用部品素材10として、ヘリコプター玩具用ローターブレードを示しており、発砲ポリスチレン板11,13の間にガラス繊維入粘着テープ12を介装させて圧縮成形され、表面にポリエステルフィルム16,17が張り付けられた構造を有するものである。
【0019】
上記構成の玩具用部品素材10の製造方法では、発砲ポリスチレン板11,13の間に、ポリエステルフィルムの表面にガラス繊維を張り付けたガラス繊維入粘着テープ12を介装した3層構造の材料の両面から、金型14,15で圧縮成形してから金型14,15を加熱した後に圧縮させた状態で冷却してその状態を維持し、圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去し、その不要部分が除去された部品の表面に彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルム16,17を張り付けている。ガラス繊維入粘着テープ12が介装された3層構造を有する両面の発砲ポリスチレン板11,13は、加熱された金型14,15により圧縮成形が容易であり、かつ加熱圧縮成形の後にその圧縮状態を維持して金型14,15を冷却することで部品の形状を保った状態で成形することができる。また、ガラス繊維入粘着テープ12は、ポリエステルフィルムの一方の表面にガラス繊維を張り付けているため、発砲ポリスチレン板11,13の衝撃等に弱く破損し易い欠点を無くすことができ、かつ表面に彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルム16,17を張り付けることで、部品表面の表面処理を容易にするだけでなく、さらに強度を向上させることができる。また、上記構成の玩具用部品素材10では、発砲ポリスチレン板11,13の間に、ポリエステルフィルムの表面にガラス繊維を張り付けたガラス繊維入粘着テープ12が介装されて圧縮成形され、かつそれぞれの発砲ポリスチレン板11,13の表面にポリエステルフィルム16,17が張り付けられた構造を有するため、ガラス繊維入粘着テープ12により発砲ポリスチレン板11,13の強度を高めることができ、また表面に張り付けたポリエステルフィルム16,17がさらに強度を向上させることが可能になるだけでなく、部品素材に要求される彩色された光沢の有る表面処理が可能になる。
【0020】
図3は本発明の他の実施形態の玩具用部品素材の製造工程を説明する図である。なお、図1に対応する部分は同一の符号を記し詳細の説明を省略する。
【0021】
図3の実施形態では、前記実施形態と同様のヘリコプター玩具用ローターブレードの部品素材の製造工程例を示している。この実施形態では、図3(a)に示すように、発砲ポリスチレン板11の一方の表面に、予め所定の彩色で光沢を有する薄いポリエステルフィルム16を張り付けてあるものを使用し、その他方の表面にガラス繊維入粘着テープ12を張り付ける。次に、図3(b)に示すように、ガラス繊維入粘着テープ12の表面に、同じ厚さと面積で同様の薄いポリエステルフィルム17を張り付けた発砲ポリスチレン板13を張り付ける。すなわち、表面にそれぞれポリエステルフィルム16,17が張り付けられた砲ポリスチレン板11,13の間にガラス繊維入粘着テープ12を介装させた3層構造の材料を形成する。次に、図3(c)に示すように、一対の金型14,15を使用し、上記の工程で製造した3層構造の材料の両面から圧縮成形してから金型14,15を約120℃程度に加熱した後に金型14,15を圧縮させた状態で約30℃程度まで冷却する。次に、図3(d)に示すように、上記の図3(c)の工程により圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する。これにより、前記実施形態と同様の玩具用部品素材10が製造される。
【0022】
上記構成の他の実施形態の製造方法では、一方の表面に予めポリエステルフィルム16,17が張り付けられた砲ポリスチレン板11,13を使用してガラス繊維入粘着テープ12を介装した3層構造の材料を形成し、金型14,15により圧縮成形することで,前記の図1(e)の工程を省略することができる。この製造方法により製造される玩具用部品素材10は、前記と同様に衝撃等に弱く破損し易い欠点を無くすことができ、かつ表面に彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルム16,17により、部品表面の表面処理を容易にするだけでなく、さらに強度を向上させることができる。
【0023】
なお、上記各実施形態において、ヘリコプター玩具用ローターブレードを例に説明したが、その他の玩具用部品として、飛行玩具を構成する機体、翼、プロペラ等に適用できるだけでなく、ホバークラフト玩具の機体、船玩具の船体や甲板等のように強度と軽量さが要求される玩具用部品素材に採用することができる。また、発砲ポリスチレン板11,13の間にガラス繊維入粘着テープ12を介装させた3層構造にしているが、発砲ポリスチレン板11,13は他の加熱圧縮が容易な他の発砲プラスチック板でもよく、ガラス繊維入粘着テープ12に代わり、例えば、カーボン繊維が入った繊維入粘着テープを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
飛行玩具、ホバークラフト玩具あるいは船玩具等の部品素材として軽量で破損し難く、容易に成形することができる玩具用部品素材、及びその製造方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明実施形態の玩具用部品素材の製造工程を説明する図である。
【図2】本発明実施形態の製造工程で製造された玩具用部品素材の斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態の玩具用部品素材の製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
10 玩具用部品素材
12 ガラス繊維入粘着テープ
11,13 発砲ポリスチレン板
14,15 金型
16,17 ポリエステルフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の発砲プラスチック板の間に繊維入テープを介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型を加熱した後に該金型を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備えたことを特徴とする玩具用部品素材の製造方法。
【請求項2】
前記周辺部分を除去する工程の後に、前記発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルムを張り付ける工程を有することを特徴とする請求項1記載の玩具用部品素材の製造方法。
【請求項3】
一方の表面に予めプラスチックフィルムが張り付けられた一対の発砲プラスチック板の間に繊維入テープを介装した3層構造材料に形成する工程と、この3層構造材料を金型で玩具用部品の形状に圧縮成形してから該金型を加熱した後に該金型を冷却した状態を維持させる工程と、この冷却した状態を維持させる工程の後に圧縮成形された部品部分以外の不要な周辺部分を除去する工程とを備えたことを特徴とする玩具用部品素材の製造方法。
【請求項4】
前記発砲プラスチック板は、発砲ポリスチレン板であり、前記プラスチックフィルムは、表面に彩色され光沢を有する薄いポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項2又は3記載の玩具用部品素材の製造方法。
【請求項5】
発砲プラスチック板の間に繊維入テープが介装されて玩具用部品の形状に圧縮成形され、それぞれの発砲プラスチック板の表面にプラスチックフィルムが張り付けられた構造を有することを特徴とする玩具用部品素材。
【請求項6】
前記玩具用部品は、飛行玩具の機体、翼、プロペラまたはローターブレード、ホバークラフト玩具の機体、船玩具の船底または甲板のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の玩具用部品素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−280684(P2006−280684A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105619(P2005−105619)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(390027889)大陽工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】