説明

現像ローラ、その製造方法、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】濃度ムラ、カブリの発生が抑制され、適正な濃度で画像形成が可能な現像ローラを提供する。
【解決手段】軸芯体、弾性層および表面層からなる現像ローラであって、該表面層が厚み5.0nm以上2.0μm未満の熱可塑性樹脂層であり、弾性層のマイクロゴム硬さHdが21以上50以下で、ローラのマイクロゴム硬さHsとの差(Hs−Hd)が0以上5以下であり、弾性層表面の表面粗さRa1と現像ローラの表面粗さRa2の差が−0.20μmから0.20μmの間にあること。なお、Ra1は0.01μmから2.00μmの範囲であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、レーザープリンタ等の電子写真装置などにおいて用いられる現像ローラとその製造方法、該現像ローラを備える電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式を用いたプリンタにおいては、その内部に画像形成部が設置されている。そして、画像はクリーニング、帯電、潜像形成、現像、転写、定着のプロセスを経て形成される。画像形成部は、電子写真感光体である感光ドラムを中心にして、その周りにクリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部および転写部を備えている。この画像形成部の現像部で感光ドラム上に形成されたトナー画像は転写部で記録材に転写された後、定着部に搬送され、そこで加熱、加圧されて、定着された記録画像とされる。
【0003】
近年ではプリンタ等のOA機器は高画質化および高寿命化が進んでいる。それに伴い、感光ドラム上に静電潜像をトナー画像とする現像プロセスにおいて、ゴム等の弾性体の層を有する現像ローラが用いられ、感光ドラムに均一に圧接して現像を行なう接触現像方式が提案されている。
【0004】
しかし、感光ドラムとの圧接で、弾性体に含まれる低分子量物質が染み出しやすく、圧接している部材へ低分子量物質が付着し、得られる画像や寿命に悪影響を与えることが多い。そのため、一般的に、現像ローラは弾性体層の上にさらに表面層が形成され、これにより弾性体からの低分子量物質の染み出しを防ぐ対策がされている(特許文献1参照)。
【0005】
また、接触現像方式の現像ローラでは、圧接する感光ドラムや現像剤への負荷を考慮して、現像ローラ自体を低硬度化することが要求されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらには、現像ローラは現像剤(トナー)を適正量搬送するため、適当な表面粗さが必要とされている(特許文献3参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、表面層の膜厚が大きくなると、現像ローラが硬くなり、そのため、圧接する感光ドラムへのストレスが高まり、寿命の低下を導く。また、現像ローラと他部材との圧接部を通過する現像剤への負荷も大きく、連続画像形成を行うと、非画像部にも現像剤が感光ドラムに付着する、いわゆる「カブリ」現象が徐々に甚だしくなってくる。
【0008】
また、特許文献2のように、現像ローラの低硬度化を考慮して、弾性体を低硬度にすることが検討されているが、弾性体の低硬度化によりローラの硬さを均一に保つことが困難となり、このような弾性体を使用した現像ローラでは画像に濃度ムラが生じやすい。
【0009】
また、特許文献3では、現像ローラの表面粗さを適正化するために表面層内に無機または有機粉末を分散、混合させることで表面に凹凸形状を形成させている。しかし、表面層の厚みを減らすと、このような手段では、表面粗さを制御するのは困難となる。
【特許文献1】特開昭63−217375号公報
【特許文献2】特開平10−268631号公報
【特許文献3】特開平07−054836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、濃度ムラ、カブリの発生を抑制し、適正な濃度で画像形成ができる現像ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、軸芯体上に形成された弾性層および表面層の硬さ、表面粗さについて特定の関係にあるときに良好な現像ローラとなることを見出し、また、表面層の形成方法を特定とすることにより現像ローラが容易に製造できることを見出し、ついに発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、軸芯体上に少なくとも1層の弾性層およびその外周に少なくとも1層の表面層を有し、現像剤を担持搬送し、感光ドラムに接触して静電潜像を可視像化する現像ローラにおいて、該表面層は熱可塑性樹脂からなり、その厚みが5.0nm以上2.0μm未満であり、弾性層表面のマイクロゴム硬さHdが21以上50以下であり、該弾性層表面のマイクロゴム硬さHdと現像ローラ表面のマイクロゴム硬さHsの差(Hs−Hd)が0以上5以下であり、弾性層表面の表面粗さRa1と現像ローラの表面粗さRa2の差(Ra1−Ra2)が−0.20μmから0.20μmの間にあることを特徴とする現像ローラである。
【0013】
なお、弾性層表面の表面粗さRa1が、0.01μm以上2.00μm以下であることが好ましい。
【0014】
さらに、表面層を形成する熱可塑性樹脂が、ふっ素樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンからなる群から選ばれることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、軸芯体上に少なくとも1層の弾性層およびその外周に少なくとも1層の表面層を有しており、現像剤を担持搬送し、感光ドラムに接触して静電潜像を可視化する現像ローラの製造方法において、該表面層が、熱可塑性樹脂を用いた物理的気相成長(PVD)法により形成されることを特徴とする現像ローラの製造方法である。
【0016】
なお、PVD法が、真空蒸着またはスパッタリングであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、上記現像ローラの製造方法で製造されたことを特徴とする現像ローラである。
【0018】
また、本発明は、電子写真画像形成装置本体に脱離可能に装着される電子写真プロセスカートリッジにおいて、現像ローラが、上記いずれかの現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジである。
【0019】
さらに、また、本発明は、静電潜像を保持するための感光ドラムに当接配置される現像ローラを有する電子写真画像形成装置において、該現像ローラが、上記いずれかの現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の現像ローラは、表面層が熱可塑性樹脂の極めて薄い層であるので、弾性層の硬さと現像ローラでの硬さが極めて小さくすることが可能となり、弾性層の硬さを現像ローラとして必要な硬さで作製することが可能となった。すなわち、表面層を形成する前に硬さが均一な弾性層を成形することが容易となり、現像ローラとしても全体の硬さムラが極めて少ないものとなる。従って、本発明の現像ローラを、現像ローラとして、電子写真プロセスカートリッジや電子写真画像形成装置に用いると、濃度ムラのない画像が得られる。
【0021】
なお、本発明の製造方法では、乾式法である物理的気相成長(PVD)法によるので、容易に表面層として熱可塑性樹脂の薄膜層を形成することができる。そして、表面層を十分に薄く形成されているので、弾性体と表面層形成後の現像ローラでは、硬さの差が小さく、必要な硬さで十分に硬い、かつ均一な硬さの弾性体の使用が可能となる。したがって、現像ローラ全体の硬さの精度が高くなり、電子写真画像形成装置に使用した際には、濃度ムラのない画像が得られる現像ローラが提供される。また、表面の硬さが十分に低く、連続画像形成においても、カブリの発生を抑制した現像ローラが提供される。
【0022】
さらには、本発明の現像ローラは、弾性層表面の表面粗さRa1と、弾性体形成後の現像ローラの表面粗さRa2の差が小さいために、所望の表面粗さを有するものを容易に作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の現像ローラの1例の断面図を図1に示す。
【0024】
本発明の現像ローラは、通常、金属などの導電性材料で形成される軸芯体1を有し、軸芯体1の外周面上に弾性層2が固定され、この弾性層2の外周面に表面層3が積層されたた構造を有している。軸芯体1は、円柱状または中空円筒状であり、金属などの導電性材料で形成されたものを用いることが多い。なお、現像ローラが電気的に絶縁された状態で利用されるものにあっては、加わる外力に対して軸芯体自体がその形状を堅固に保持できる限り、非導電性材料であってもよい。
【0025】
現像ローラは、一般的に、電気的なバイアスを印加または接地されて、使用される。そこで、軸芯体1は、支持部材であると共に、導電材として少なくとも表面が導電性であることが好ましい。すなわち、少なくとも外周面がその上に形成された弾性層2に所定の電圧を印加するに十分な導電性の材質、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、あるいは、クロム、ニッケル等でメッキを施した鉄、合成樹脂などで構成される。電子写真画像形成装置に利用される現像ローラでは、軸芯体1は、通常、外径4mmから10mmの範囲とするのが適当である。
【0026】
弾性層2は、原料主成分としてゴムを用いた成型体である。弾性層2の原料主成分のゴムとして、従来、現像ローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。そして、これらは単独であるいは2種以上を混合して用いられる。
【0027】
ゴムを主成分とした形成される成型体である弾性層2の硬さは、マイクロゴム硬さで21以上50以下であることが好ましく、より好ましくは25以上40以下である。なお、以下において、特に断らない限り、マイクロゴム硬さを「MD硬さ」と表す。
【0028】
弾性層2のMD硬さが21未満になると、弾性層全体の硬さの均一性を得ることが困難であり、作製した現像ローラを画像形成装置に使用すると、画像には濃度ムラが発生しやすい。また、弾性層2のMD硬さが50超では、現像ローラおよび現像ローラと圧接させる他の部材との圧接圧が高くなり、連続画像形成を行うとカブリが生じた。
【0029】
なお、MD硬さは、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計「MD−1型」(商品名)で、ローラの長手方向3箇所かつ周方向3箇所の合計9箇所の硬さを常温・常湿の環境下で測定し、測定した値を平均したものである。
【0030】
特に、主成分ゴムとしてシリコーン系ゴムを用いると、低硬度かつ低圧縮永久歪み性が得られやすいことから好ましい。シリコーン系ゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリトリフルオロプロピルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。
【0031】
ゴム成型体とした際、その圧縮永久歪み等が好ましい範囲なるので、シリコーン系ゴムの重合度は、3000〜15000の範囲にあることが好ましい。なお、必要に応じて、導電性弾性層を形成するゴム成型体において硬さが必要な範囲内に留まる限り、シリコーン系ゴム以外に、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、EPDM、SBR、NBR等をゴム成型体の20質量%以下の割合で含ませても良い。
【0032】
更に、本発明の現像ローラでは、その弾性層を形成するゴム成型体とする際、弾性層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤など、また、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分のゴム材料に適宜配合することができる。
【0033】
弾性層に導電性を付与する目的で添加する導電剤として、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることができる。
【0034】
これらの内、カーボンブラックは、比較的安価かつ容易に入手でき、また、主成分のゴム材料の種類に依らず、良好な帯電性が得られるため、好適に利用できる。主成分のゴム材料中に、微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーなどを、主成分のゴム材料に応じて適宜利用すればよい。
【0035】
その他、弾性層に導電性を付与する手段として、導電剤に代えて、あるいは、導電剤とともに、導電性高分子化合物を添加する手法も利用できる。導電性高分子化合物とは、ポリアセチレン等の共役系が繋がったポリマーをホストポリマーとし、これにI2等のドーパントをドープして導電化した高分子化合物である。ホストポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2、6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)等があるまた、ドーパントして、例えば、AsF5、I2、Br2、SO3、Na、K、ClO4、FeCl3、F、Cl、Br、I、Kr等の各イオン、Li、TCNQ(7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン)等を挙げることができる。
【0036】
ゴム成型体中に添加可能な非導電性充填剤として、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0037】
ゴム成型体を作製する際、例えば、液状シリコーンゴムを用いる際には、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを架橋成分として、白金系触媒を用いて、ゴム成分相互の架橋が図られる。
【0038】
なお、感光ドラムと当接して、均一なニップ幅を確保し、加えて、好適なセット性を満たすものとするためには、弾性層の厚さは、好ましくは、0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上とすることが望ましい。弾性層の厚さの上限は、作製される弾性ローラの外径精度を損なわない限り、特にない。しかし、弾性層の厚さを過度に厚くすると、作製コストが掛かるだけであり、実用上、弾性層の厚さを6.0mm以下とするのが適当であり、5.0mm以下がより好ましい。また、弾性層の厚さは、目的とするニップ幅を達成するため、その硬さに応じて、適宜選択する。
【0039】
弾性層を軸芯体上に形成する方法として、特に限定するものではないが、下記のような方法が挙げられる。本発明では何れであっても構わない。
【0040】
上記主成分ゴムに導電剤、加硫剤、安定剤、充填剤等の必要成分を混合して、弾性層原料組成物を得る。次いで、該原料組成物を軸芯体を収納した円筒状金型中に注入して、軸芯体と共に押し出し機より押し出して、あるいは、まず円筒状に押し出して原料組成物のチューブを得、このチューブに軸芯体を挿入して、軸芯体上に弾性層を形成する。
【0041】
金型中に原料組成物を注入した後、金型中で弾性層を固定するのが好ましく、熱可塑性ゴムでは冷却固化させ、加硫硬化ゴムでは加熱加硫させる。なお、金型から取り出した後に、歪みをとるためにあるいは二次加硫するために加熱炉中に置くことが好ましい。
【0042】
軸芯体を原料組成物と共に押し出す方法にあっては、軸芯体と共に押し出した原料組成物層を冷却固化あるいは加熱加硫する。この際、必要に応じて、端部を突き切り、弾性層の長さおよび端部を整えておくこともできる。
【0043】
また、原料組成物を円筒状に押し出し、冷却固化あるいは加熱加硫してチューブを得た後、所定長さに切断し、軸芯体を挿入するが、加熱加硫を軸芯体挿入後に行っても良い。
【0044】
なお、これらの他に、原料組成物を塗料とし、軸芯体に刷毛塗布、噴霧塗布、ローラ塗布あるいはディップ塗布等の方法で軸芯体上に弾性層を形成することができる。
【0045】
このようにして設けられた弾性層は、表面層を形成する前に、通常、研磨、ブラスト等により表面が整えられる。
【0046】
現像ローラは、その表面が適度な粗さであると現像剤を均一に担持し、かつ均一に帯電させる上で好ましい。そのため、上記により作製された弾性層の表面に所定の形状で凹凸加工を施すことが好ましい。なお、好ましい弾性層表面の表面粗さ(以下、「Ra1」と表す)は、算術平均粗さで0.01μm以上2.50μm以下であり、より好ましくは、0.50μm以上1.00μm以下である。Ra1が0.01μm未満である場合には、トナーの搬送性が低下し、十分な画像濃度が得られなくなる場合がある。また、Ra1が1.50μmを超える場合には、トナーの搬送量が多くなり過ぎ、トナーが十分に帯電できなくなる場合がある。ここで、弾性層が複数層である場合、表面層を形成する層で測定した表面粗さをRa1とする。
【0047】
なお、弾性層表面およびローラ表面の表面粗さは、例えば、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定機「サーフコーダーSE−3500」(商品名)を用い、送りスピード0.5mm/sec.、評価長さ2.5mm、粗さカットオフλc=0.8mm、水平方向に対するオートレベリングONにて測定できる。
【0048】
弾性層表面に所定の凹凸加工を施す手段として、ブラスト法、研磨法等が挙げられ、操作性や繰り返し再現性などの点を考慮すると、研磨法が好ましい。研磨法では、例えば、株式会社水口製作所製のゴムロール専用研削盤「LEO−600−F2」(商品名)を用い、研磨することで、容易に所望の表面粗さを有する弾性ローラとすることができる。
【0049】
本発明の現像ローラは、上記したように、弾性層の上に表面層を有する。なお、表面層は、材料としては熱可塑性樹脂が好ましく、中では、ふっ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンがより好ましい。
【0050】
なお、本発明の現像ローラでは、表面層の厚さは、5.0nm以上2.0μm未満であることが好ましく、より好ましくは、100.0nm以上1.0μm以下である。表面層の厚みが5.0nm未満では、弾性体からの低分子量物質の染み出しや磨耗による表面層がすぐに剥離する。また、表面層の厚みが2.0μm以上では、表面層には応力が発生し、ヒビ割れやシワが発生しやすくなる。なお、表面層は単層でも良いし、多層となっていても構わない。なお、表面層の厚さは、現像ローラの断面を、例えば株式会社日立ハイテク製の透過電子顕微鏡「日立電子顕微鏡H−7500」(商品名)を使用して測定することができる。
【0051】
この表面層は、ディップコート、スプレーコート、ロールコート等の湿式法、あるいは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的気相成長(PVD)法やプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学的気相成長(CVD)法での乾式法で弾性層上に形成される。
【0052】
なお、表面層の形成には、湿式法と比べ乾式法を用いることが好ましい。その理由を図2に示す表面層部分の模式断面図により説明する。
【0053】
図2(A)は湿式法による表面層の形成を行う場合を示し、弾性層の表面の凹部に液が溜まり、凸部では液流れが発生し、形成される表面層の凹凸形状が変わりやすい。そのため、所望の表面形状を有する現像ローラを製造するには、弾性層の表面の形状や表面層となる液のパラメータなど様々な条件を検討する必要がある。
【0054】
一方、乾式法により表面層を形成すると、図2(B)に示すように、表面層は弾性層の形状に沿うように、ほぼ同じ形状を維持した膜の成形を行うことが可能である。そのため、所望の表面形状を有する現像ローラを製造する際には弾性層の形状のみを所定にすれば良く、容易に所望の表面層を成形することが可能となる。
【0055】
上記したように、薄い表面層を形成する方法として、乾式法が最適であり、中では、弾性層と表面層の密着性や処理時間および処理温度、装置の簡便性などを考慮するとPVD法が好ましい。さらに、PVD法では、熱可塑性樹脂を扱う際は真空蒸着やスパッタリングは特に好ましい方法である。
【0056】
本発明で使用する真空蒸着装置の1例の模式図を図3に示す。
【0057】
真空蒸着装置201には、表面層が形成される弾性層を有するローラ202がセットされ、表面層となる蒸発物質203を加熱蒸発させるアルミナ(Al23)製のるつぼ204および真空ポンプなどの装置201内部を減圧にするための排気手段205が配置されている。
【0058】
真空蒸着処理による表面層の形成は、以下の手順により行われる。
【0059】
真空蒸着装置201内に原料ローラ202をセットし、るつぼ204内に蒸発物質203を投入する。次いで、排気手段205により装置201内を減圧する。ここで、装置201内の真空度は、蒸発物質の種類または得られる現像ローラの所望の物性により異なるが、10Torr(1.333kPa)以下とする。真空度がこの範囲を超えていると、表面層の成膜速度は極端に低下すると同時に、得られる現像ローラの表面層と弾性層の密着性が不十分となりやすい。
【0060】
所定の真空度に到達した後、るつぼ204を蒸発物質に応じて定めた温度にまで上昇させ、表面層となる蒸発物質203を蒸発させ、ローラ202表面に付着させて、表面層を形成する。なお、このとき、ローラを回転駆動させると、周方向に均一性の高い表面層を形成することができる。表面層の厚みは、例えば、この蒸着時間によりコントロール可能である。
【0061】
本発明で使用するスパッタリング装置の1例の模式図を図4に示す。
【0062】
スパッタリング装置301には表面層が形成される弾性層を有するローラ202、表面層となるターゲット302、ガス導入口303、真空ポンプなど装置301内部を減圧排気するための排気手段304およびスパッタリング用印加電源(直流305、交流電源306)が図のように配置されている。
【0063】
スパッタリング処理による表面層の形成は、以下の手順で行われる。
【0064】
表面層が形成されるローラ202および表面層となるターゲット203がセットされた、装置301内を排気手段304により減圧にしたのち、ガス導入口303より不活性ガスを導入する。この時、不活性ガスとして、通常、コストおよびスパッタ強度などからアルゴンガスを使用する。また、ガス導入後の装置内の真空度は、使用するターゲットの種類、製造する現像ローラの設定物性、装置内に発生させるプラズマの安定性を考慮して決められるが、通常、10-3Torr(0.1333Pa)から1Torr(133.3Pa)の範囲が好ましい。
【0065】
ガス導入後、装置301内の電極間に電圧を印加するとプラズマが発生し、ターゲット302表面から原子やイオンがプラズマ中に放出される。これら原子やイオンが、ターゲットに対向するように設置されたローラ202の弾性層表面に到達し、薄膜が形成される。ここで、ターゲットが導電性をもつ材料である場合には直流電源305を使用し、絶縁性である材料である場合には交流電源306を使用することで、ローラ上に薄膜を形成することが可能である。また、電圧を印加中にローラを周方向に回転させることで、均一な膜厚を有する表面層を形成することが可能である。
【0066】
これら手法による表面層形成において、表面層材料として、ほとんどの無機材料、高分子材料、金属系材料などが使用できる。しかし、現像ローラに要求される柔軟性や現像剤の帯電性、製造工程におけるコストや処理時間などを考慮すると、形成される表面層の材料は熱可塑性樹脂が好ましい。より好ましくは、ふっ素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレンである。
【0067】
また、弾性層のMD硬さHdと表面層成形後の現像ローラのMD硬さHsの差(Hs−Hd)は0以上5以下であることが好ましく、より好ましくは2以上4以下である。この差が5より大きくと、現像ローラを感光体等の他の部材へ圧接させた際、弾性層と表面層の圧縮変形量に差が生じ、表面層の剥離が生じやすい。
【0068】
さらに、表面層が成形された後の現像ローラの表面粗さ(以下、「Ra2」と表す)と前述の弾性層の表面粗さRa1との差(Ra1―Ra2)が−0.20μm以上0.20μm以下であることが好ましく、より好ましくは−0.15μm以上0.15μm以下である。表面粗さの差が絶対値で0.20μmより大きいと、所望の形状を有する現像ローラを作製する際、弾性層表面の形状の選定や表面層成形時の条件設定など様々検討する必要がある。
【0069】
本発明の電子写真画像形成装置の一例の模式説明図で図5に示す。
【0070】
静電潜像担持体である感光ドラム5が矢印方向に回転し、感光ドラム5を帯電処理するための帯電ローラ6によって一様に帯電され、感光ドラム5に静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光7により、その表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光ドラム5に対して接触配置されている現像ローラ8からトナーが付与されることにより現像され、トナー画像として可視化される。
【0071】
現像は露光部にトナー画像を形成するいわゆる反転現像を行っている。可視化された感光ドラム5上のトナー画像は、転写ローラ9によって紙などの記録材10に転写される。トナー画像が転写された記録材10は、定着装置11により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。
【0072】
一方、転写されずに感光ドラム5上に残存したトナーは、感光ドラム表面をクリーニングするためのクリーニングブレード12により剥ぎ取られる。クリーニングされた感光ドラム5は上述作用を繰り返し行う。
【0073】
現像ローラ9は、一成分現像剤である非磁性トナーを収容した現像容器(不図示)の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム5と対向設置されている。そして、画像形成時には、トナーを担持する現像ローラ9は感光ドラム5と当接幅をもって接触し、感光ドラム5上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0074】
なお、現像容器には現像ローラ9の表面にトナーを塗布担持させるためのトナー塗布部材13およびトナーの塗布量を規制するトナー規制ブレード14が設けられている。トナー塗布部材13はトナー規制ブレード14の現像ローラ9との当接部に対し、現像ローラ9の回転方向上流にて現像ローラ9に当接しており、現像ローラ9の回転と異なる回転速度で回転可能になっている。なお、トナー塗布部材13は静電潜像の顕像化に供されずに現像ローラ9の表面に担持されて戻ってきたトナーを現像ローラ9表面から剥ぎ取る役目をするので、現像ローラ9とカウンター方向に回転させることが好ましい。
【0075】
トナー塗布部材13の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や軸芯体上にレーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ9へのトナー供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。例えば、軸芯体上にポリウレタンフォームを設けた弾性ローラを用いることができる。また、このトナー塗布部材13の現像ローラ9に対する当接幅としては1mmから8mmの範囲とするのが好ましい。
【0076】
トナー規制ブレード14として、金属製の板金に弾性体を固定した部材や、SUSやリン青銅の薄板の様なバネ性を有する部材、もしくはその表面に樹脂やゴムを積層した部材が用いられる。また、トナー規制ブレード14に、現像ローラ9に印加する電圧よりも高い電圧を印加することにより、現像ローラ上のトナー層厚を制御することが可能であり、そのためにはトナー規制ブレード14はSUSやリン青銅の薄板を用いることが好ましい。
【0077】
本発明の電子写真プロセスカートリッジは、少なくとも感光ドラム5と現像装置(現像ローラ9、トナー塗布部材13、規制ブレード14および現像容器)が一体となっている。そして、現像ローラ9として、本発明の現像ローラが組み込まれている。なお、クリーンニング部材(クリーニングブレード12および廃トナー容器(不図示))も組み込まれていても構わない。
【0078】
上記電子写真画像形成装置は、現像のユニットを特に示したものであり、カラー複写機等のカラー画像形成装置にあっては、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各ユニットをタンゼム型に配置したものやドラムの周りに円筒状に配置したものがある。また、記録材上へカラートナー画像を形成する方式としても、各ユニットで形成されたトナー画像が記録材上に直接重ね合わされるもの、ベルトあるいはドラムに一旦重ね合わせ画像とされた後記録材に一括転写されるものがある。これらはいずれの形態でも構わない。その後、カラートナー画像が形成された記録材は定着装置に搬送されて、カラー画像が記録材に固定される。
【0079】
以上説明したように、本発明の現像ローラは、表面に熱可塑性樹脂からなる表面層が形成され、表面層の厚みが薄いと同時に表面層の形成前後での硬さおよび表面粗さの差が小さいので、カブリや濃度ムラの発生が抑えられた、所定の濃度の画像を形成することが可能となった。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、使用した試薬等は、特に明記しない限り、市販の高純度品である。
【0081】
なお、以下における各種データは下記によって測定した。
【0082】
1)付加反応架橋型液状シリコーンゴムの粘度
BH型粘度計を用い、ロータNo.7を4rpmで回転させ、25℃で測定した。
【0083】
2)弾性層表面および現像ローラのマイクロゴム(MD)硬さ
高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計「MD−1型」(商品名)を用い、ローラの長手方向3箇所かつ周方向3箇所の合計9箇所の硬さを常温・常湿の環境下で測定し、得られた値を平均した。なお、弾性層表面の測定値をHd、ローラ表面の測定値をHsとする。
【0084】
3)弾性層表面および現像ローラ表面の表面粗さ(算術平均粗さ)
株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定機「サーフコーダーSE−3500」(商品名)を用い、送りスピード0.5mm/sec.、評価長さ2.5mm、粗さカットオフλc=0.8mm、水平方向に対するオートレベリングONで測定した。なお、弾性層表面の測定値をRa1、ローラ表面の測定値をRa2とする。
【0085】
4)表面層の厚み
現像ローラを中央部で切断し、その端面をLeica社製のウルトラミクロトーム「クライオセクショニングシステムFCS」(商品名)にて、−100℃で厚み100nmの試料を作製した。次いでこの試料を、株式会社日立ハイテク製の透過電子顕微鏡「日立電子顕微鏡H−7500」(商品名)にて測定した。なお、加速電圧1.0kV、測定倍率10万倍とした。
【0086】
また、製造した現像ローラを、キヤノン株式会社製の電子写真式レーザープリンタ「レイザーショットLBP−1310」(商品名)のカートリッジの現像ローラとして組み込み、画像出力して、画像評価(評価項目:カブリ、濃度ムラ、画像濃度)をした。なお、この画像評価に用いたLBP−1310は、A4縦出力用のマシンで、記録メディアの出力スピード16ppmで、画像の解像度1200dpiのものである。さらに、現像ローラの感光ドラムへの当接圧力および進入量は、現像ローラ上の現像剤担持量が0.35mg/cm2となるようにした。また、評価用に、初期にベタ黒画像およびハーフトーン画像を出力し、1万枚の耐久後に、ベタ黒画像およびベタ白画像を出力した。
【0087】
(カブリ)
得られたベタ白画像で、東京電色株式会社製のフォトボルト反射濃度計「TC−6DS/A」(商品名)にて反射濃度を測定し、未印字部分との差をカブリ(%)とし、下記基準で評価した。
◎:1.5%未満。
○:1.5%以上3.0%未満。
×:3.0%以上。
【0088】
(濃度ムラ)
ハーフトーン画像を目視により観察し、下記基準で評価した。
◎:肉眼では濃度ムラは確認されず、良好である。
○:肉眼で、わずかに濃度ムラが確認できるものの、実用上問題ない。
×:肉眼で濃度ムラが確認でき、実用上問題がある。
【0089】
(画像濃度)
ベタ黒画像について、マクベス株式会社製のマクベス濃度計「マクベスカラーチェッカー RD−1255」(商品名)にて濃度測定し、下記基準にて評価した。
◎:初期および耐久後のいずれも1.3以上1.6未満。
○:初期および耐久後の一方が1.3以上1.6未満、他方は1.3未満または1.6以上。
△:初期および耐久後のいずれも1.3未満または1.6以上。
【0090】
<実施例1>
(弾性層の作製)
両末端にビニル基が置換し、粘度120Pa・sのジメチルポリシロキサン100質量部に、充填剤として石英粉末(Pennsylvania Glass Sand社製、Min−USil)7質量部、カーボンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック、粉状品)10質量部を配合したものを液状シリコーンゴムのベース材料とした。
【0091】
このベース材料に硬化触媒として白金化合物を微量配合したのち、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H基含有量0.8質量%)に微量の硬化遅延剤を配合したものを質量比で1:1となるように混合した。
【0092】
得られた混合液を直径6mm、長さ300mmのSUS製ニッケルメッキ軸芯体をセットしたパイプ型に注入し、200℃で2時間加熱加硫して、ゴム部分長さ240mm、厚み4mmの導電性弾性層を有するローラを得た。
【0093】
次いで、得られたローラを、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(株式会社水口製作所製のゴムロール専用研削盤「LEO−600−F2」(商品名))にて、研磨し、外径12.0mm、表面粗さRa1が0.50μmである弾性ローラを作製した。なお、研磨条件は、ワークの回転速度200RPM、研磨砥石の回転速度2000RPM、および送り速度500mm/分とした。得られた弾性ローラのMD硬さHdは30であった。
【0094】
(表面層の作製)
図3に示す真空蒸着装置に、作製した弾性ローラを載置し、るつぼにふっ素樹脂「ポリフロンTMPTFE M−391(商品名、ダイキン工業株式会社製)を入れ、次いで、装置内を0.1Torr(13.33Pa)まで減圧した。その状態で、るつぼ温度を650℃になるように調整し、載置したローラを30rpmで回転させながら、1分間装置内に置いて、表面層を形成して、現像ローラを得た。得た現像ローラの表面層の厚みは100nmであり、MD硬さHsは32であり、さらに、表面粗さRa2は0.40μmであった。
【0095】
<実施例2>
(弾性層の作製)
研磨砥石の回転速度を1000RPMにした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層の表面粗さRa1は0.72μmであった。
【0096】
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、上記で作製した弾性ローラおよびターゲットとして1mm厚のシート状フッ素樹脂「テフロン」(商品名、デュポン社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し、5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、高周波電源に120Wの電力を印加し、12分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは33であり、さらに、表面粗さRa2は0.85μmであった。
【0097】
<実施例3>
(弾性層の作製)
研磨砥石の回転速度を500RPMにした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層の表面粗さRa1は1.00μmであった。
【0098】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用い、処理時間を25分間にした以外は実施例2と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは1.0μmであり、MD硬さHsは34であり、さらに、表面粗さRa2は1.15μmであった。
【0099】
<実施例4>
(弾性層の作製)
粘度200Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは25であり、表面粗さRa1は0.50μmであった。
【0100】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用い、処理時間を5分間にした以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは27であり、さらに、表面粗さRa2は0.38μmであった。
【0101】
<実施例5>
(弾性層の作製)
粘度80Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用した以外は実施例2と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは40であり、表面粗さRa1は0.75μmであった。
【0102】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用いた以外は実施例4と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは43であり、さらに、表面粗さRa2は0.65μmであった。
【0103】
<実施例6>
(弾性層の作製)
研磨砥石の送り速度を1000mm/分にした以外は実施例2と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは30であり、表面粗さRa1は0.30μmであった。
【0104】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用いた以外は実施例2と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の膜みは500nmであり、MD硬さHsは33であり、さらに、表面粗さRa2は0.45μmであった。
【0105】
<実施例7>
(弾性層の作製)
粘度100Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層の研磨を、研磨砥石の回転速度1000RPM、送り速度250mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは35であり、表面粗さRa1は1.50μmであった。
【0106】
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、作製した弾性ローラおよびターゲットとして1mm厚のシート状ポリスチレン「G9401」(商品名、PSジャパン株式会社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し、5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、高周波電源に120Wの電力を印加し、20分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは100nmであり、MD硬さHsは38であり、さらに、表面粗さRa2は1.65μmであった。
【0107】
<実施例8>
(弾性層の作製)
粘度80Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を、研磨砥石の回転速度1000RPM、送り速度150mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは40であり、表面粗さRa1は1.55μmであった。
【0108】
(表面層の作製)
図3に示す真空蒸着装置に、作製したローラを設置したのち、るつぼにポリエチレンペレット「ニポロンハード6100A」(商品名、東ソー株式会社製)を入れ、次いで、装置内を0.1Torr(13.33Pa)まで減圧した。その状態で、るつぼ温度を550℃になるように調整し、設置したローラを30rpmで回転させながら、10分間装置内に置いて、表面層を形成して、現像ローラを得た。得た現像ローラの表面層の厚みは1.0μmであり、MD硬さは42であり、さらに、表面粗さRa2は1.45μmであった。
【0109】
<実施例9>
(弾性層の作製)
粘度100Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を研磨砥石の回転速度を1000RPM、送り速度200mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは35であり、表面粗さRa1は1.20μmであった。
【0110】
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、作製した弾性ローラとターゲットとして0.3mm厚のシート状ポロプロピレンシート「スミライトNS−3400」(商品名、住友ベークライト株式会社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し、5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、高周波電源に120Wの電力を印加し、30分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは1.5μmであり、MD硬さHsは39であり、さらに、表面粗さRa2は1.35μmであった。
【0111】
<実施例10>
(弾性層の作製)
粘度250Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を研磨砥石の回転速度を2000RPM、送り速度200mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さは22であり、表面粗さRa1は0.90μmであった。
【0112】
(表面層の作製)
図3に示す真空蒸着装置に、作製したローラを載置し、るつぼにポリアミド樹脂「UBEナイロン1022B」(商品名、宇部興産株式会社製)を入れ、次いで、装置内を0.1Torr(13.33Pa)まで減圧にした。その状態で、るつぼ温度を650℃になるように調整し、載置したローラを30rpmで回転させながら、1分間装置内に置いて、表面層を形成して、現像ローラを得た。得た現像ローラの表面層の厚みは10nmであり、MD硬さHsは27であり、さらに、表面粗さRa2は0.85μmであった。
【0113】
<実施例11>
(弾性層の作製)
粘度60Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を研磨砥石の回転速度を2000RPM、送り速度500mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは45であり、表面粗さRa1は0.10μmであった。
【0114】
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、上記で得た弾性ローラおよびターゲットとして1mm厚のシート状ポリアミド樹脂「UBEナイロン1022B」(商品名、宇部興産株式会社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、高周波電源に120Wの電力を印加し、5分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは100nmであり、MD硬さHsは49であり、さらに、表面粗さRa2は0.30μmであった。
【0115】
<実施例12>
(弾性層の作製)
粘度80Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を研磨砥石の回転速度を1000RPM、送り速度250mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは40であり、表面粗さRa1は1.50μmであった。
【0116】
(表面層の作製)
図3に示す真空蒸着装置に、作製した弾性ローラを載置し、るつぼにポリプロピレン樹脂「三井ポリプロE110G」(商品名、三井化学株式会社製)を入れ、次いで、装置内を0.1Torr(13.33Pa)まで減圧した。その状態で、るつぼ温度を550℃になるように調整し、載置したローラを30rpmで回転させながら20分間装置内に放置させて表面層を形成して、現像ローラを得た。得た現像ローラの表面層の厚みは2.0μmであり、MD硬さHsは43であり、さらに、表面粗さRa2は1.30μmであった。
【0117】
<実施例13>
(弾性層の作製)
粘度40Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用し、弾性層を研磨砥石の回転速度を500RPM、送り速度500mm/分で研磨した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは50であり、表面粗さRa1は2.00μmであった。
【0118】
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、作製した弾性ローラおよびターゲットとして1mm厚のシート状ポリイミド樹脂「ユーピレックス・ボードRB―100」(商品名、宇部興産株式会社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、高周波電源に120Wの電力を印加し、1分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは5nmであり、MD硬さHsは51であり、さらに、表面粗さRa2は2.20μmであった。
【0119】
<実施例14>
(弾性層の作製)
弾性層外径が12mmとなる金型を用い、成型後の弾性層の研磨を行わなかった以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは30であり、表面粗さRa1は0.10μmであった。
【0120】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用いた以外は実施例2と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは33であり、さらに、表面粗さRa2は0.13μmであった。
【0121】
<実施例15>
(表面層の作製)
エステル系熱可塑性ポリウレタン「レザミンME3612LP」(商品名、大日精化株式会社製)100質量部およびカーボンブラック「三菱カーボンブラック#1000」(商品名、三菱化学株式会社製、pH3.0)28質量部をメチルエチルケトン(MEK)で固形分を40質量%に調整した。次いで、この混合液をアイメックス株式会社製の湿式超微粒分散粉砕機「レディミル」(商品名)にて、グラインドゲージでカーボンブラックの凝集物であるブツが確認できなくなるまで循環分散を行った。得られた塗料原液を、粘度が5mPa・sとなるようMEKで希釈し、表面層の塗料を得た。
【0122】
この塗料をオーバーフロー式ディップコート装置に入れ、常にオーバーフローさせた状態となるよう循環している中へ、実施例1で作製した弾性ローラを50mm/secで浸漬させた。その後、200mm/minから50mm/minへ引上げ速度を逐次線形的に変化させながら引き上げて、弾性層の外表面に塗料をディップコートした。これを30分自然乾燥した後、140℃にて60分間加熱処理して硬化し、表面層がエステル系熱可塑性ポリウレタンよりなる現像ローラを作製した。現像ローラの表面層の厚さは2μmであり、MD硬さHsは33であり、さらに。表面粗さRa2は0.30μmであった。
【0123】
<比較例1>
(表面層の作製)
図4に示すスパッタリング装置に、実施例1で作製した弾性ローラおよびローラとターゲットとして、Si系ターゲット「スパッタリングターゲットSX」(商品名、旭硝子セラミックス株式会社製)を設置し、装置内を真空ポンプにより減圧にした。その後、装置内にアルゴンガスを導入し5mTorr(0.6667Pa)になるように調整した。調整後、直流電源に200Wの電力を印加し、5分間処理を行った。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは43であり、さらに、表面粗さRa2は0.80μmであった。
【0124】
<比較例2>
(弾性層の作製)
粘度10Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さHdは55であり、表面粗さRa1は1.20μmであった。
【0125】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用いる以外は実施例2と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは58であり、さらに、表面粗さRa2は1.30μmであった。
【0126】
<比較例3>
(弾性層の作製)
粘度300Pa・sのジメチルポリシロキサンを使用した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。弾性層のMD硬さは18であり、表面粗さRa1は1.50μmであった。
【0127】
(表面層の作製)
上記で作製した弾性ローラを用いた以外は実施例2と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは500nmであり、MD硬さHsは21であり、さらに、表面粗さRa2は1.60μmであった。
【0128】
<比較例4>
(表面層の作製)
表面層用塗料をMEKで粘度10mPa・sとなるように調整して用いた以外は実施例15と同様にして現像ローラを得た。得られた現像ローラの表面層の厚みは3.0mmであり、MD硬さHsは36であり、さらに、表面粗さRa2は0.29μmであった。
【0129】
上記実施例、比較例で作製した現像ローラを用い、画像評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0130】
【表1】

μ
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】現像ローラの1例の断面図である
【図2】表面層形成時の現像ローラの表面層部の模式断面図((A)湿式法および(B)乾式法)である。
【図3】表面層形成用の真空蒸着装置の模式図である。
【図4】表面層形成用のスパッタリング装置の模式図である。
【図5】電子写真方式の画像形成装置の一例の模式図である。
【符号の説明】
【0132】
1 軸芯体
2 弾性層
3 表面層
5 感光体
6 帯電ローラ
7 レーザー光
8 現像ローラ
9 転写ローラ
10 記録媒体
11 定着装置
12 クリーニングブレード
13 トナー塗布部材
14 トナー規制ブレード
15 帯電ローラ用バイアス電源
16 現像ローラ用バイアス電源
17 規制ブレード用バイアス電源
18 転写ローラ用バイアス電源
201 真空蒸着装置
202 ローラ
203 蒸発物質
204 るつぼ
205 排気手段
301 スパッタリング装置
302 ターゲット
303 ガス導入口
304 排気手段
305 直流電源
306 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体上に少なくとも1層の弾性層およびその外周に少なくとも1層の表面層を有し、現像剤を担持搬送し、感光ドラムに接触して静電潜像を可視像化する現像ローラにおいて、
該表面層は熱可塑性樹脂からなり、その厚みが5.0nm以上2.0μm未満であり、
弾性層表面のマイクロゴム硬さHdが21以上50以下であり、
該弾性層表面のマイクロゴム硬さHdと現像ローラ表面のマイクロゴム硬さHsの差(Hs−Hd)が0以上5以下であり、
弾性層表面の表面粗さRa1と現像ローラの表面粗さRa2の差(Ra1−Ra2)が−0.20μmから0.20μmの間にある
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
弾性層表面の表面粗さRa1が、0.01μm以上2.00μm以下であることを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、ふっ素樹脂、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリスチレンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
軸芯体上に少なくとも1層の弾性層およびその外周に少なくとも1層の表面層を有しており、現像剤を担持搬送し、感光ドラムに接触して静電潜像を可視化する現像ローラの製造方法において、該表面層が、熱可塑性樹脂を用いた物理的気相成長(PVD)法により形成されることを特徴とする現像ローラの製造方法。
【請求項5】
PVD法が、真空蒸着またはスパッタリングであることを特徴とする請求項4に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の現像ローラの製造方法で製造されたものであることを特徴とする現像ローラ。
【請求項7】
電子写真画像形成装置本体に脱離可能に装着される電子写真プロセスカートリッジにおいて、現像ローラが、請求項1〜3および6のいずれか一項に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項8】
静電潜像を保持するための感光ドラムに当接配置される現像ローラを有する電子写真画像形成装置において、該現像ローラが、請求項1〜3および6のいずれか一項に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−316524(P2007−316524A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148305(P2006−148305)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】