説明

現像ローラとその製造方法、プロセスカートリッジ、電子写真装置

【課題】高温高湿環境下での圧縮永久歪の発生の抑制と、低温低湿下でのトナーに対する過剰な摩擦帯電の抑制とを高いレベルで両立し得る表面層を備えた現像ローラを提供する。
【解決手段】カーボンブラックと、ポリウレタン樹脂とを含む表面層を有しており、該ポリウレタン樹脂は、特定の構造を有しており、また、該表面層は、特定のエステル基濃度および特定のウレタン基濃度を有している現像ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリの受信装置の如き電子写真装置に組み込まれる感光体に接触させて使用される現像ローラ及び現像ローラの製造方法、これを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる現像ローラとして、特許文献1および特許文献2は、軸芯体と、その周面にポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたポリウレタンを含む弾性層とを有している構成を開示している。
【0003】
ところで、現像ローラは、基本的な機能として、トナーを適度に摩擦帯電させる機能を備えていることが求められているが、低温低湿環境、例えば、温度10℃、湿度10%RHの環境下では、トナーに対する摩擦帯電性が高くなりすぎることがある。その結果、局所的にトナーが現像ローラ表面に静電的に付着し、それに起因して、電子写真画像に斑点状のムラ(以降「ブロッチ」ともいう)が発生することがある。
【0004】
一方、現像ローラは、プロセスカートリッジや電子写真装置に装着された場合に、現像ブレードや感光体等と静止状態で長期間にわたって接触したままとなることがある。このような場合に、上記したウレタン樹脂層を表面層として有する現像ローラの、現像ブレードや感光ドラムとの接触部には、容易には回復しない変形(以降「永久圧縮歪」という)が生じることがあった。永久圧縮歪は、特に、高温高湿環境、例えば温度40℃、湿度95%RHといった環境下で顕著に生じやすい。これは、高温高湿下においては、現像ローラの表面が柔軟になり易いためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−12192号公報
【特許文献2】特開平8−208087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、ポリウレタン樹脂を含む表面層中にポリオレフィン樹脂を含有させることで、表面層のトナーに対する摩擦帯電性能を調整できることが分かった。しかし、そのような表面層は柔軟化しやすいため、当該表面層を備えた現像ローラが感光体と高温高湿条件下で長期にわたって静止状態で当節した場合に、表面層が永久変形してしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、現像ローラの、ウレタン樹脂をバインダー樹脂として含んでいる表面層について、下記1〜2の特性を両立させることが、高品位な電子写真画像を安定して製造する上で重要となるとの認識を得た。
1.低温低湿環境下で、トナーに対する摩擦帯電が過剰となりにくいこと。
2.高温高湿環境下において、永久圧縮歪が生じにくいこと。
【0008】
本発明は、上記1及び2の要求を高いレベルで満たしている表面層を備えた現像ローラおよびその製造方法を提供することを対象とする。また、本発明は、多様な環境下で、安定して高品質な電子写真画像を提供することのできる電子写真装置およびプロセスカートリッジを提供することを対象とする。
【0009】
本発明者等は、種々の検討の結果、ウレタン樹脂を含み、かつ、厚さ方向におけるエステル基濃度およびウレタン基濃度を最適化した表面層が、上記1、2の要求を高いレベルで両立できることを見出し、本発明を成すに至ったものである。
【0010】
本発明の一態様に係る現像ローラは、感光体にトナーを供給し、該感光体に形成された静電潜像を現像するための現像ローラであって、
カーボンブラックと、ポリウレタン樹脂とを含む表面層を有しており、該ポリウレタン樹脂は、下記化学式(a)及び(b)で示される構造から選ばれる少なくとも一方と、ポリブタジエン骨格及びポリイソプレン骨格から選ばれる少なくとも一方の骨格とを有しており、
【化1】

該表面層は、該カーボンブラックを該ポリウレタン樹脂の100質量部に対して18質量部以上30質量部含有し、かつ、該表面層の膜厚をt、該表面層の表面をX、該表面層の表面からの深さがt/4の位置をYおよび該表面層の表面からの深さがt/2の位置をZとしたときに、下記式(1)乃至(4)を同時に満たすことを特徴とする現像ローラ:
式(1)
7.5≦EcX≦10.0
式(2)
11.0≦EcZ≦14.0
式(3)
EcX<EcY<EcZ
式(4)
0.5≦UrcX≦2.0
(上記式(1)〜(3)中、EcX、EcYおよびEcZは、位置X、YおよびZにおけるエステル基濃度であり、上記式(4)において、UrcXは、位置Xにおけるウレタン基濃度である)。
【0011】
また、本発明の一態様に係るプロセスカートリッジは、上記の現像ローラと、該現像ローラに接触して配置されている感光ドラムとを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る電子写真装置は、上記の現像ローラと、該現像ローラに接触して配置されている感光ドラムとを具備していることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の一態様に係る、上記の現像ローラの製造方法は、樹脂層の周面に、ポリオール、カーボンブラックおよびイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂原料混合物を含む表面層形成用の塗料の塗膜を形成し、次いで該塗膜を硬化させる工程を有し、
該ポリウレタン樹脂原料混合物は、下記(D1)および(D2)から選ばれる少なくとも一方と、下記(E)とを含んでいることを特徴とする:
(D1)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2000の範囲にあり、かつ上記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方を含むポリエステルポリオール、
(D2)数平均分子量(Mn)が4000≦Mn≦8000の範囲にあり、かつ上記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方とウレタン基を含むポリオール、
(E)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2800の範囲にあり、かつポリブタジエン骨格もしくはポリイソプレン骨格の少なくとも一方を含むポリオール。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高温高湿環境下での圧縮永久歪の発生の抑制と、低温低湿下でのトナーに対する過剰な摩擦帯電の抑制とを高いレベルで両立し得る表面層を備えた現像ローラを得ることができる。また、本発明によれば、多様な環境下において、安定して高品質な電子写真画像を与える電子写真装置、プロセスカートリッジを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る現像ローラの軸に直交する方向の断面図である。
【図2】表面層形成に使用する液循環型浸漬塗工装置の説明図である。
【図3】本発明に係る電子写真画像形成装置の断面図である。
【図4】本発明に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る現像ローラの軸に直交する方向の切断図である。現像ローラ1は、導電性の軸芯体2、該軸芯体の周囲に形成された樹脂層3、該樹脂層の外周に形成された表面層4を有している。
【0017】
<表面層>
表面層は、カーボンブラックとポリウレタン樹脂とを含んでいる。ここで、当該ポリウレタン樹脂は、下記化学式(a)及び(b)で示される構造から選ばれる少なくとも一方と、ポリブタジエン骨格及びポリイソプレン骨格から選ばれる少なくとも一方の骨格とを有している。
【化2】

【0018】
また、該表面層は、該カーボンブラックを該ポリウレタン樹脂の100質量部に対して18質量部以上30質量部含有している。
【0019】
更に、該表面層は、該表面層の膜厚をt、該表面層の表面をX、該表面層の表面からの深さがt/4の位置をYおよび該表面層の表面からの深さがt/2の位置をZとしたときに、下記式(1)乃至(4)を同時に満たしている:
式(1)
7.5≦EcX≦10.0
式(2)
11.0≦EcZ≦14.0
式(3)
EcX<EcY<EcZ
式(4)
0.5≦UrcX≦2.0
ここで、上記式(1)〜(3)において、EcX、EcYおよびEcZは、各々上記の位置X、YおよびZにおけるエステル基濃度である。また、上記式(4)において、UrcXは、上記の位置Xにおけるウレタン基濃度である。
【0020】
また、上記のエステル基濃度は、以下のように定義されるものである。そして、[COO結合比率(%)]、[NH結合比率]および[C−C結合比率(%)]は、表面層をESCA(X線光電子分光法)を用いて測定される値である。
・エステル基濃度={[COO結合比率(%)]−[NH結合比率(%)]}/[C−C結合比率(%)]×100。
【0021】
更に、ウレタン基濃度は、以下のように定義されるものである。
・ウレタン基濃度=ESCAで測定されたN(窒素)元素の原子%
【0022】
ポリウレタン樹脂とは、単一の組成を持つポリマーを指す名称ではなく、ウレタン結合を含むポリマーの総称であり、ウレタン結合、アロファネート結合、ビュレット結合等のハードセグメントとソフトセグメントから構成される。ポリウレタンは一般にソフトセグメントを形成する化学結合種によって、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、アクリルポリウレタン、ポリオレフィンポリウレタン等といった分類がされる。
【0023】
本発明に係るポリウレタン樹脂は熱硬化させたポリウレタン樹脂である。熱硬化したポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む表面層は、熱可塑性又は未硬化のポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む表面層と比較して、表面層の圧縮永久歪みを小さくすることができ、また、耐磨耗性及びトナーを摩擦帯電性が優れている。
【0024】
また、本発明に係るポリウレタン樹脂は、下記化学式(a)及び(b)で示される構造から選ばれる少なくとも一方と、ポリブタジエン骨格及びポリイソプレン骨格から選ばれる少なくとも一方の骨格とを有している:
【化3】


【0025】
ウレタン樹脂中、上記化学式(a)、(b)は表面層の機械的物性の適正化に寄与し、また、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格は、表面層のトナーに対する摩擦帯電性能の適正化に寄与しているものと考えられる。
【0026】
上記化学式(a)及び(b)は、ポリウレタン樹脂中のソフトセグメントを構成するエステル基を含有するユニットである。上記ユニットは、エステル基の存在により、樹脂材料の極性に強い影響を及ぼす。特に、これらのユニットを有する樹脂材料は、ポリオレフィン、ポリエーテルポリウレタンといった樹脂材料と比較して高い親水性を示す。また、ソフトセグメントの構造はポリウレタン樹脂の物性、特に機械的物性に大きな影響を及ぼす。具体的には、上記化学式(a)または(b)で示される、エステル基を含むユニットにより、分子鎖間力が強くなり、ポリマー鎖同士の結合が強固となる。そのため、耐磨耗性、ヤング率及び破断強度に優れるポリウレタン樹脂となる。
【0027】
さらに、上記に挙げたエステル基濃度及びメチル基等の側鎖の有無等といった因子は、ソフトセグメントの結晶性に影響を与える。当該結晶性もまた、ポリウレタン樹脂の機械的物性に影響を与える。
【0028】
一方、ポリブタジエン骨格およびポリイソプレン骨格から選ばれる少なくとも一方を含むウレタン樹脂材料は、一般的にポリオレフィン樹脂に分類される。一般的にポリオレフィン樹脂は、ポリエステル樹脂よりも疎水性を示し、末端基以外のソフトセグメント構造中に酸素分子を含有しないために分極しにくく、帯電付与性が比較的低い。一方、当該ポリオレフィン樹脂は、化学結合間の結合強度が弱く、ポリエーテル、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネートウレタンといった樹脂材料と比較して機械的物性に劣る。特に、ポリエステル中の脂肪族部分の炭素数は、ポリマーの基本物性に影響を与える、いわゆる奇偶効果をもたらすことが知られている。
【0029】
本発明者らは、現像ローラの表面層のバインダー樹脂として、上記化学式(a)、(b)で示されるユニットと、ポリブタジエン骨格,ポリイソプレン骨格とを含むポリウレタン樹脂を用い、かつ、表面層の厚さ方向におけるエステル基濃度およびウレタン基濃度を後述するように調整した。その結果、表面層の機械的強度およびトナーの帯電性能を最適化できることを見出した。
【0030】
本発明に係る表面層は、その膜厚をt、該表面層の表面をX、該表面層の表面からの深さがt/4の位置をYおよび該表面層の表面からの深さがt/2の位置をZとしたときに、下記式(1)乃至(4)を同時に満たしている:
式(1)
7.5≦EcX≦10.0;
式(2)
11.0≦EcZ≦14.0;
式(3)
EcX<EcY<EcZ;
式(4)
0.5≦UrcX≦2.0。
ここで、上記式(1)〜(3)において、EcX、EcYおよびEcZは、各々上記の位置X、YおよびZにおけるエステル基濃度である。また、上記式(4)において、UrcXは、上記の位置Xにおけるウレタン基濃度である。
【0031】
上記エステル基濃度は、以下のように定義されるものである。
・エステル基濃度={[COO結合比率(%)]−[NH結合比率(%)]}/[C−C結合比率(%)]×100。
【0032】
ここで、[COO結合比率(%)]、[NH結合比率]および[C−C結合比率(%)]は、表面層をESCA(X線光電子分光法)を用いて測定される値である。
【0033】
また、ウレタン基濃度は、以下のように定義されるものである。
ウレタン基濃度 = ESCAで測定されたN(窒素)元素の原子%。
【0034】
上記式(1)乃至(3)によって示されているように、表面層はその深さ方向に、エステル基の濃度が高くなっている。言い換えると、表面層の表面側ほど、ポリブタジエン骨格またはポリイソプレン骨格の濃度が高くなっている。
【0035】
更に、ポリウレタン樹脂のエステル基濃度(EcX、EcY及びEcZ)、及びウレタン基濃度(UrcX)が特定の範囲にあることにより、表面層は、永久圧縮歪が小さく、また、トナーの過剰帯電を抑制することができる。
【0036】
上記化学式(a)および(b)で示される構造は分子鎖間力の強いエステル基を含んでいるため、上記化学式(a)および(b)から選ばれる少なくとも一方で示される構造を含むポリウレタン樹脂は、ポリマー鎖同士の結合が強固となっている。その結果として、このポリウレタン樹脂をバインダー樹脂として含む表面層は、耐磨耗性、ヤング率及び破断強度に優れており、また、当該表面層は、小さい圧縮永久歪みを有する。更に、エステル基は電子受容性である最低占有分子軌道電子雲(LUMO)が集中している。そのため、当該表面層は、トナーへの摩擦帯電性を適正化されることとなる。
【0037】
つまり、EcXを7.5%以上にすることで、表面層は十分な機械的物性を有し、永久圧縮歪が抑えられる。一方で、EcXを10.0%以下にすることで、表面層のトナーへの帯電付与性が過剰となることが抑制され、電子写真画像へのブロッチ等の発生を抑制できる。
【0038】
表面層の厚さ方向の中点Zにおけるエステル基濃度EcZを11.0%≦EcZ≦14.0%の範囲とする。表面層の機械的物性とトナーへの帯電付与性のバランスを高次元で両立させることができるからである。
【0039】
更に、XとZの中間点に位置するエステル基濃度EcYを9.0%≦EcY≦13.0%の範囲とすることが好ましい。表面層の機械的物性を向上させ、永久圧縮歪の発生を抑えるために有効だからである。
【0040】
ウレタン基濃度(UrcX)は、表面層の表面近傍における窒素元素の割合を示す値である。UrcXを0.5%以上にすることで、高温高湿環境においても十分な機械的物性が得られ、現像ブレード接触部における、画像スジ等の画像弊害が抑制される。一方で、UrcXを2.0%以下にすることで、過剰な帯電付与を抑制し、低温低湿下におけるブロッチ等の画像弊害を抑制することができる。
【0041】
EcX、EcY、EcZ及びUrcXはESCA(またはXPS)と呼ばれるX線光電子分光法によって測定される値である。ESCAは、現像ローラ表面層のごく表面近傍(深さ方向で数十nm)の元素組成や化学結合状態の同定が可能な分析方法である。さらには、フラーレン(C60)イオン等を用いて、表面層を精度良くエッチングしながら、膜厚方向における化学結合状態の分布を定量することが可能な分析方法である。本発明におけるESCA(X線光電子分光法)により測定された表面層のEcX、EcY、EcZ及びUrcXの定義に関する詳細は後述する。
【0042】
ポリウレタン樹脂中の、上記化学式(a)、(b)、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格の存在は、赤外分光(IR)法、又は樹脂材料を加水分解した後、熱分解ガスクロマトグラフィー(Pyr―GC)法を用いることによって確認できる。
【0043】
また、本発明に係る表面層は、カーボンブラック(C)を含む。カーボンブラック(C)は、表面層の機械的物性及び導電性の適正化に寄与する。ポリウレタン樹脂の機械的物性向上のために、架橋点密度の向上、又はカーボンブラック等の補強性フィラーの充填といった手法が取られる。架橋点密度の向上は、ウレタン基濃度の上昇をもたらす。しかし、ウレタン基は窒素原子に孤立電子対を有し、優れた負帯電付与性を示すため、ウレタン基濃度が過度に増加すると、過剰な帯電付与性を示す場合がある。従って、本発明においては機械的物性と帯電付与性の適正化という観点で、カーボンブラックを必須成分として含有する必要がある。従って、本発明に係るポリウレタン樹脂原料混合物は、該ポリウレタン樹脂原料混合物の樹脂成分100質量部に対して、カーボンブラック(C)を、18質量部以上30質量部以下の範囲で含有する。
【0044】
カーボンブラックの表面層中の含有量としては、ポリウレタン樹脂成分100質量部に対して、18〜30質量部の範囲である必要がある。カーボンブラックの含有量が18質量部以上であることで、適度な導電性が得られるだけでなく、帯電付与性の適正化及び圧縮永久歪の抑制が可能である。一方で、30質量部以下であることで、ポリウレタン樹脂成分に対するカーボンブラックの分散均一性が得られ、良好な耐リーク特性が得られることから好ましい。
【0045】
表面層4は、現像ローラの表面に適度な表面粗さを付与するため、表面に凹凸形状を形成する球状微粒子を含有していてもよい。表面層4が球状微粒子を含有することによって、現像ローラ表面の表面粗度を均一にすることが容易となると同時に、表面層4が磨耗した場合でも、表面粗度の変動を少なくし表面状態を一定に保持することができる。球状微粒子としては、体積平均粒径が8〜30μmであることが好ましい。微粒子の体積粒径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名:LS−230型;コールター社製)に、リキッドモジュールを取り付けたものを用いることができる。測定は、水約10ccに微量の界面活性剤を添加し、これに微粒子約10mgを加え、超音波分散機で10分間分散した後、測定時間90秒間、測定回数1回の条件で測定を行う。上記の測定方法により測定した値を体積平均粒径の値として採用することができる。球状微粒子の含有量としては、表面層4の樹脂100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましい。
【0046】
球状微粒子の材質としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂を挙げることができる。これらの球状微粒子は、例えば、懸濁重合、又は分散重合法により製造することができる。
【0047】
上記表面層4には、上記成分の他、上記成分の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて、充填剤、増量剤、加硫剤、架橋剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤の如き各種添加剤を含有させることができる。
【0048】
上記表面層4の厚さとしては、1〜50μmが好ましく、より好ましくは3〜25μmである。表面層4の厚さが1μm以上であれば、表面層4より下の層が含有する低分子量成分の析出を抑制することができる。さらには、厚さが1μm以上であることで、ESCA分析によって、本発明におけるエステル基、ウレタン基濃度を精度良く測定することができる。表面層4の厚さが50μm以下であれば、現像ローラが高硬度となるのを抑制し、トナーの融着を抑制することができる。
【0049】
<表面層4の製造方法>
上記したように、本発明に係る表面層においては、表面近傍のエステル基の濃度および厚さ方向におけるエステル基の分布、ならびに表面近傍のウレタン基の濃度を適正に制御する必要がある。表面層の表面近傍のエステル基濃度およびウレタン基濃度が、表面層の帯電付与性に強く影響し、また、表面層の厚さ方向のエステル基濃度は、表面層中のウレタン樹脂の機械的物性に強く影響するからである。そこで、このような表面層を形成するためには、原料としてのポリオールの選択が重要である。
【0050】
上記した構成を有する表面層4の製造方法は、ポリオール、カーボンブラックおよびイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂原料混合物を含む表面層形成用の塗料の塗膜を形成し、次いで該塗膜を硬化させる工程を有する。そして、該ポリウレタン樹脂原料混合物には、下記(D1)および(D2)から選ばれる少なくとも一方と、下記(E)とを含有させる。
(D1)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2000の範囲にあり、かつ下記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方を含むポリエステルポリオール、
(D2)数平均分子量(Mn)が4000≦Mn≦8000の範囲にあり、かつ下記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方とウレタン基を含むポリエステルポリオール、
(E)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2800の範囲にあり、かつポリブタジエン骨格もしくはポリイソプレン骨格の少なくとも一方を含むポリオレフィンポリオール:
【化4】


【0051】
(E)は、(D1)および(D2)と比較して極性が低い。そのため、(D1)または(D2)に対する(E)のモル比は、塗膜の表面に近いほど大きくなる。しかしながら、(D1)または(D2)と(E)とは、極性の差が適度であるため塗膜中で完全には相溶しないものの相分離を生じることもない。このような塗膜を硬化させて得られる表面層は、その厚さ方向において、(E)とイソシアネートとの反応に係るポリウレタン樹脂の、(D)とイソシアネートとの反応に係るポリウレタン樹脂に対する比率が、表面近傍ほど高いものとなる。
【0052】
上記塗料中における前記(D1)および(D2)の質量含有率をM(D)、並びに前記(E)の質量含有率をM(E)としたとき、M(D)/M(E)の値が8.8以上82.8以下であることが好ましい。M(D)/M(E)の値を8.8以上であることで、得られる表面層中のEcY及びEcZの値が小さくなることを確実に抑制できる。また、(D1)および(D2)と(E)との不相溶をより一層確実に抑制できる。表面層の永久圧縮歪の抑制、トナーの摩擦帯電性能の適正化をよりが得ることができる。さらには、カーボンブラックの分散不良を抑制し、均一帯電付与性及び適度な導電性を得ることができる。
【0053】
また、M(D)/M(E)の値が82.8以下とすることで、塗膜の表面近傍における(E)成分の量を適度なものとでき、表面層のトナーへの摩擦帯電性能のより一層の適正化を図ることができる。
【0054】
<<(D1)、(D2)>>
上記(D1)および(D2)に係るポリエステルポリオールは、式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方を含む。かかるポリエステルポリオールとしては、直接エステル化反応、開環重合反応で得られたポリエステルポリオールを用いることができる。もしくはポリエステルポリオールとイソシアネート化合物を鎖延長させたポリウレタンポリオールプレポリマーを好適に用いることができる。
【0055】
直接エステル化反応で合成されるポリエステルポリオールは、原料として多塩基酸と多価アルコールを脱水縮合することで得られる。この多塩基酸としては、アジピン酸、イソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水フタル酸、ハソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、セバシン酸、フマル酸、トリメリット酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、1,12−ドデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ソディオスルホイソフタル酸などを例として挙げることができる。この中でも、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸が容易に入手できることから特に好ましい。
【0056】
また、一般的なエステルポリオール原料の多価アルコールには例えば以下のものがある。1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、グリセリン、ペンタエリストール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール。
【0057】
本発明においては、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを原料とするポリエステルポリオールが特に好ましい。3−メチル−1,5−ペンタンジオールは、一般的な多価アルコールの融点(−10℃〜200℃)と比較して、特異的に低い融点(−50℃)を示す。従って、ウレタン樹脂中のエステル基を有するソフトセグメントにおける結晶化度の制御が容易であるため、後述する(E)との相溶性向上による機械的物性の発現に寄与する。また、化学構造中にメチル基を有するために、一般的なエステルポリオール材料の中では疎水性を示し、(E)との相溶性が適度なものとなるため特に好ましい。
【0058】
さらに、ε−カプロラクトンを原料として開環重合反応で得られたポリカプロラクトンジオール、もしくはポリカプロラクトンジオールをプレポリマー化して合成されたエステルポリオール(プレポリマー型エステルポリオール)も特に好ましい。上記ポリカプロラクトンジオールの中でも、非結晶性もしくは、低融点の性質を示すタイプのものが、(E)との相溶性から特に好ましい。
【0059】
また、(D1)のMnは、1200≦Mn≦2000の範囲にある。Mnが1200以上あることで、表面層のウレタン基濃度(UrcX)の上昇を抑制し、低温低湿下におけるトナーへの過剰帯電の抑制に効果を奏する。また、Mnが2000以下であることで、表面層の表面におけるUrcXの過度の低下を抑制し、高温高湿条件下での表面層の圧縮永久歪が大きくなるのを抑制できる。一方(D2)のMnは、4000≦Mn≦8000の範囲にある。
【0060】
<<(E)>>
(E)は、ポリブタジエン骨格もしくはポリイソプレン骨格の少なくとも一方を有するポリオレフィンポリオールである。このポリオレフィンポリオールの具体例として、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0061】
また、適宜必要な機械的物性、極性に調整するために、プレポリマー化したものも好適に用いることができる。これらは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。
【0062】
また、前記(E)の数平均分子量(Mn)は、1200≦Mn≦2800の範囲にある。数平均分子量がこの範囲にあることによって、樹脂材料(D1)または(D2)との不相溶を抑制することができる。さらに、Mnが1200以上であることで、表面層のウレタン基濃度(UrcX)の上昇を抑制し、低温低湿下におけるトナーへの過剰帯電を抑制することができる。また、Mnが2800以下であることで、ウレタン基濃度の過度の低下を抑制し、圧縮永久歪の上昇を防ぐことができる。また、十分な表面配向性が得られる。
【0063】
<<イソシアネート>>
硬化剤であるイソシアネ−ト化合物は特に限定されるものではない。以下のものを例として挙げることができる。ジフェニルメタン4−,4'−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェニル−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性MDI、キシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニルレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、これらの共重合物や、そのブロック体及び混合物。
【0064】
上記に例示した中でも、変性部(ソフトセグメント部)に、前記化学式(a)、(b)で示されるユニットの少なくとも一方を含有するプレポリマー型イソシアネートがポリオールとの相溶性及び物性調整が容易であることから、特に好ましい。前記化学式(a)、(b)で示されるユニットを含有する変性部を構成する原料として、上記ポリオールに用いたものと同じものを好適に用いることができる。
【0065】
イソシアネート化合物は、ポリオール化合物に対して、イソシアネートインデックスが1.0から1.5の範囲となるように配合することが特に好ましい。上記範囲の配合によって、未反応ポリオールによる圧縮永久歪の上昇や、過度な硬度の上昇を抑制することができる。なお、イソシアネートインデックスとは、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数とポリオール成分中の水酸基のモル数との比([NCO]/[OH])を示す。
【0066】
塗料中に良好に分散させるために、カーボンブラックとしては、酸化処理により表面官能基を付与した酸化処理カーボンブラックを用いることが好ましい。酸化処理カーボンブラックのpH値は5.0以下であることが好ましい。酸化処理カーボンブラックは表面に極性基を有するために、表面層を形成する樹脂成分との親和性が向上する。このため、充分な導電性を付与できる範囲でカーボンブラックを使用しても均一に分散することができ、経時に伴う凝集を抑制することができ、ゴースト等画像不具合やリークの発生を抑制することができる。上記カーボンブラックの平均粒径は、現像ローラの表面層の強度を維持し、適切な導電性を発揮させることを考慮すると、15〜40nmとすることが好ましい。また、カーボンブラックのDBP吸油量としては、同様の理由から例えば、60〜180ml/100gとすることが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、チャンネル法、ファーネス法などで製造したものを好適に使用することができる。更に、必要な物性に合わせて、2種以上のカーボンブラックを配合してもよい。
【0067】
上記(D1)および(D2)から選ばれる少なくとも一方と、(E)とを含む表面層形成用の塗料に用い得る溶媒としてメチルエチルケトン、トルエン、又はアルコールが挙げられる。また、この塗料の塗膜を弾性層上に形成する方法としては、スプレー、浸漬、又はロールコートの如き塗工方法を使用することができる。そして、樹脂層上に形成した塗膜を、乾燥して溶媒を除去し、硬化させることで、表面層が形成できる。硬化は、加熱、電子線照射のいずれの方法によっても可能である。
【0068】
上記塗膜形成に浸漬塗工を使用する場合、図2の概略構成図に示す塗料の循環機構を有する塗布装置を用いることが好ましい。図2に示す塗布装置は浸漬槽205を有する。浸漬槽205は樹脂層3が形成されたローラ206の外径よりわずかに大きな内径と、ローラ206の軸方向長より長い深さを備えた円筒形を有し、軸方向を垂直方向にして設置される。その上端部外周には環状の液受け部208が設けられ、液受け部208はその底面に接続される管209により、攪拌タンク207に接続されている。一方、浸漬槽205の底部は管213を介して表面層形成用塗料210を循環させるポンプ211に接続されている。また、ポンプ211と攪拌タンク207とは、接続管212によって接続されている。攪拌タンク207には内部に収納する表面層形成用塗料210を攪拌するための攪拌翼214が設けられる。この塗布装置には、浸漬槽205の上部において昇降板216を浸漬槽205の軸方向に昇降させる昇降装置215が設けられている。そして、昇降板216に懸架されるローラ206を浸漬槽205に進入、後退可能となっている。このような塗布装置を用いて樹脂層3上に表面層4を成形するには、ポンプ211を駆動し、攪拌タンク207に収納する表面層形成用塗料210を管212、213を通って浸漬槽205に供給する。昇降装置215を駆動させ昇降板216を降下させ、ローラ206を表面層形成用塗料210が充填された浸漬槽205に進入させる。ローラ206の進入により浸漬槽の上端205aから溢れ出た表面層形成用塗料210は液受け部208に受けられ、管209を通って攪拌タンク207に戻される。その後、昇降装置を駆動して昇降板を上昇させ、ローラ206を所定の速度で浸漬槽205から後退させ、樹脂層3上に塗布膜を形成する。この間、攪拌タンク7内で攪拌翼214を回転させ、塗布液を攪拌して含有物の沈降を抑制し、塗布液の均一性を維持する。塗膜が形成されたローラは、昇降板216から取り外され、塗膜を乾燥硬化して、表面層4が成形される。
【0069】
<軸芯体2>
軸芯体2は、現像ローラに必要な強度と、帯電したトナーを感光体へ移動可能な電極となり得る導電性を有するものであればよい。材質としては、アルミニウム、ステンレス、銅合金等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、導電性を有する合成樹脂が挙げられる。
【0070】
<樹脂層3>
樹脂層3の厚みとしては1mm以上5mm以下が適当であり、その硬さはアスカーC硬度が20以上80以下であることが好ましい。「アスカーC硬度」とは、日本ゴム協会標準規格SRIS101に準拠したAsker−C硬度型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)社製)を用いて測定した硬度である。本発明では、常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)の環境中に12時間以上放置した現像ローラに対して、上記硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後の測定値とした。
【0071】
樹脂層3は発泡体、非発泡体の体いずれであってもよい。樹脂層3の材質を以下に列挙する。エチレン−プロピレン−ジエン共重合物ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシゴム、ユリアゴム、メラミンゴム、ジアリルフタレートゴム、ポリカーボネートゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチロール系ゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴム材。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
現像ローラが半導体領域の電気抵抗値を有するために、樹脂層3は導電性を有することが好ましい。樹脂層3において、導電性を有するものとするために、イオン導電機構、または電子導電機構による導電付与剤を含有することが好ましい。導電性付与剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アルミニウム、銅等の導電性金属;酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン等の導電性金属酸化物などの微粒子を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、カーボンブラックは比較的容易に入手することができ、良好な帯電性が得られるので好ましい。樹脂層3の体積抵抗率は1×103〜1×1011Ω・cmの範囲にあることが好ましい。樹脂層3の体積抵抗率が1×103〜1×1011Ω・cmであれば、トナーを均一に帯電することができる。樹脂層3の体積抵抗率のより好ましい範囲は1×103〜1×108Ω・cmである。
【0073】
図3及び図4は各々、本発明に係る現像ローラを搭載したカラー電子写真画像形成装置およびプロセスカートリッジの断面を示す。
【0074】
図3に示したカラー電子写真画像形成装置は、イエローY、マゼンダM、シアンC及びブラックBKの色トナー毎に設けられた画像形成部10a〜10dをタンデム形式で有している。該画像形成部10a、10b、10c及び10dは、基本的に同じ構成を有する。画像形成部10a〜10dには、矢印方向に回転する潜像担持体としての感光体21が設けられている。その周囲には、感光ドラムの感光体21を一様に帯電するための帯電ローラ26、一様に帯電した感光体21にレーザー光25を照射して静電潜像を形成する露光手段、静電潜像を形成した感光体21にトナーを供給し静電潜像を現像する現像装置22が設けられている。更に、感光体21上のトナー画像を、給紙ローラ37により供給され搬送ベルト34によって搬送される紙の如き記録媒体(転写材)36の裏面からバイアス電源32を印加して記録媒体36上に転写する転写ローラ31を有する転写部材が設けられている。搬送ベルト34は、駆動ローラ30、従動ローラ35及びテンションローラ33に懸架され、各画像形成部で形成されたトナー像を記録媒体36上に順次重畳して転写するように、画像形成部と同期して移動して記録媒体36を搬送するよう制御されている。なお、記録媒体36は、搬送ベルト34にさしかかる直前に設けられた吸着ローラ38の働きにより、搬送ベルト34に静電的に吸着されて、搬送されるようになっている。
【0075】
感光体21と現像ローラ1は所定の当接圧で接触して配置されており、それらは感光体21と現像ローラ1の接触箇所において同方向に回転している。なお、現像ローラ1は、感光体21と非接触形態で用いることも可能であり、その際には感光体に近接して設けられている。更に、記録媒体36上に重畳転写したトナー画像は、定着装置29により定着された後、不図示の搬送装置により電子写真画像形成装置の外に排出される。なお、記録媒体36は剥離装置39の働きにより搬送ベルト34から剥がされて定着装置29に送られるようになっている。画像形成部10には感光体21上に転写されずに残存するトナーを除去するクリーニングブレード28を有するクリーニング部材と、感光体から掻き取られたトナーを収納する廃トナー容器27とが設けられている。クリーニングされた感光体21は画像形成可能となって次の画像形成に待機するようになっている。なお、現像装置22のみ、もしくは感光体21、帯電部材26、現像装置22、クリーニングブレード28及び廃トナー容器27を一体として、電子写真装置本体に着脱可能である、着脱式のプロセスカートリッジとすることも可能である。上記画像形成部10a〜10dの各々に設けられる現像装置22には、トナー23を収容したトナー容器24と、トナー容器の開口を閉塞するように設置され、トナー容器から露出した部分で感光体と対向する現像ローラ1が設けられている。トナー容器24内には、現像ローラ1に当接し現像ローラ1にトナーを供給するローラ状のトナー塗布部材7と、現像ローラ1に供給したトナーを薄膜状に形成すると共に、摩擦帯電を行う現像ブレード9が設けられている。現像ブレード9として、金属製の板金にゴム弾性体を固定した部材や、SUSやリン青銅の薄板の様なバネ性を有する部材、もしくはその表面に樹脂やゴムを積層した部材が用いられる。また、現像ブレード9に、現像ローラ1に印加する電圧よりも高い電圧を印加することにより、現像ローラ上のトナー層を制御することが可能である。そのためには現像ブレード9はSUSやリン青銅の薄板を用いることが好ましい。なお、現像ローラ1及び現像ブレード9の各々には不図示のバイアス電源から電圧が印加される。そして、現像ブレード9に印加する電圧は、現像ローラ1に印加する電圧と比較して、絶対値で100〜300V、大きくすることが好ましい。トナー塗布部材7としては、例えば、軸芯体上に、発泡スポンジ体やポリウレタンフォームを設けたものや、レーヨン又はポリアミドのような繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ1上に残留するトナーを除去する点から好ましい。このトナー塗布部材7は現像ローラ1と適切な当接幅を有して配置することが好ましく、また、現像ローラ1に対してその当接部において逆方向に回転することが好ましい。
【0076】
図4に示した本発明に係るプロセスカートリッジ301は、上記した電子写真画像形成装置の本体に脱着可能である。プロセスカートリッジ301は、本発明に係る現像ローラ1、感光体21、トナー塗布部材7、現像ブレード9、トナー23、トナー容器24、帯電ローラ26及びクリーニングブレード28が一体に枠体302により保持されている。
【実施例】
【0077】
以下に本発明の実施例及び比較例における樹脂層ローラの作製方法を具体的に例示して説明する。
【0078】
(樹脂層付き軸芯体の作製)
以下のようにして、実施例および比較例に係る現像ローラの製造に用いる樹脂層付き軸芯体を作成した。
【0079】
軸芯体としてステンレス(SUS304)製の、直径8mmの芯金を用意した。この軸芯体の周面に、プライマー(商品名:DY35−051、東レダウコーニング社製)を塗布し、温度150℃で30分間焼き付けた。焼き付け後のプライマーの厚さは1μmであった。
【0080】
下記の材料を混合してビニル基を有する液状シリコーンゴムのベース材料Aを調製した。
・両末端にビニル基を有し、重量平均分子量(Mw)が10000のジメチルポリシロキサン:50質量部、
・両末端にビニル基を有し、Mwが2000000のジメチルポリシロキサン:50質量部、
・カーボンブラック(商品名:Raven860Ultra、ColumbianChemical製):6質量部。
【0081】
下記の材料を混合してSiH基及びビニル基を有する液状シリコーンゴムのベース材料Bを調製した。
・両末端にビニル基を有し重量平均分子量(Mw)が10000のジメチルポリシロキサン:50質量部、
・両末端にビニル基を有し、Mwが2000000のジメチルポリシロキサン:50質量部、
・カーボンブラック(商品名:Raven860Ultra、ColumbianChemical製):6質量部、
・硬化触媒(2質量%の塩化白金酸のイソプロパノール溶液をジメチルポリシロキサンに対して10ppm配合したもの):0.5質量部、
・メチルハイドロジェンポリシロキサン:3質量部(液状シリコーンベース材料Aおよび液状シリコーンゴムベース材料Bに含有するビニル基1モルに対して、SiH基が1.1モルとなる量)。
【0082】
上記ベース材料A及びベース材料Bを質量比1:1で混合して未加硫のシリコーンゴム材料を得た。
【0083】
ついで、軸芯体を円筒状の金型の内部に配置し、上記の未加硫のシリコーンゴム材料を金型内(キャビティ)に注入した。続いて、金型を加熱してシリコーンゴム材料を150℃で15分間加硫硬化した後、冷却して脱型した。その後に、180℃で1時間加熱し硬化反応を完結させ、シリコーンゴムからなる樹脂層を軸芯体の周囲に設けた。作製した樹脂層の直径は16mmであった。
【0084】
<プレポリマー型ポリオール、イソシアネート化合物の合成方法>
[プレポリマー型ポリオール1(Pre−P1)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=1000)
(商品名:P−1010、株式会社クラレ製)
・イソシアネート化合物 43質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
【0085】
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて6時間反応させて、数平均分子量Mn=5,400のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール1(Pre−P1)を得た。
【0086】
[プレポリマー型ポリオール2(Pre−P2)の合成方法]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=500)
(商品名:P−510、株式会社クラレ製)
・イソシアネート化合物 54質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させて、数平均分子量Mn=3,600のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール2(Pre−P2)を得た。
【0087】
[プレポリマー型ポリオール3(Pre−P3)の合成方法]
・エステルジオール 100質量部
(イソフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=500)
(商品名:P−530、株式会社クラレ製)
・イソシアネート化合物 52質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて5時間反応させて、数平均分子量Mn=4,000のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール3(Pre−P3)を得た。
【0088】
[プレポリマー型ポリオール4(Pre−P4)の合成方法]
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:L−220AL、ダイセル化学株式会社製、Mn=1900)
・イソシアネート化合物 32質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて8時間反応させて、数平均分子量Mn=8,000のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール4(Pre−P4)を得た。
【0089】
[プレポリマー型ポリオール5(Pre−P5)の合成方法]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=2000)
(商品名:P−2010、株式会社クラレ製)
・イソシアネート化合物 31質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
【0090】
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて8時間反応させて、数平均分子量Mn=8,200のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール5(Pre−P5)を得た。
【0091】
[プレポリマー型ポリオール6(Pre−P6)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる。Mn=900)
(商品名:アデカニューエースYG−108、ADEKA株式会社製)
・イソシアネート化合物 38質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
【0092】
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて7時間反応させて、数平均分子量Mn=6,200のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール6(Pre−P6)を得た。
【0093】
[プレポリマー型ポリオール7(Pre−P7)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と1,4−ブタンジオールからなる。Mn=1000)
(商品名:アデカニューエースYG−108、ADEKA株式会社製)
・イソシアネート化合物 33質量部
(商品名:ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業社製)
【0094】
上記成分をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて6時間反応させて、数平均分子量Mn=5,000のエステル変性型のプレポリマー型ポリオール7(Pre−P7)を得た。
【0095】
[プレポリマー型イソシアネート1(Pre−BI1)の合成]
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:L−212AL、ダイセル化学株式会社製、Mn=1200)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 90質量部
(商品名:コスモネートM−100、三井化学ポリウレタン社製)
【0096】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを28質量部滴下し、数平均分子量が5800のエステル変性プレポリマー型イソシアネート1(Pre−BI1)を得た。
【0097】
[プレポリマー型イソシアネート2(Pre−BI2)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=1000)
(商品名:P−1010、株式会社クラレ製)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 140質量部
(商品名:コスモネートM−100、三井化学ポリウレタン社製)
【0098】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを36質量部滴下し、数平均分子量が5300のエステル変性プレポリマー型イソシアネート2(Pre−BI2)を得た。
【0099】
[プレポリマー型イソシアネート3(Pre−BI3)の合成]
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:L−212AL、ダイセル化学株式会社製、Mn=1200)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 124質量部
(商品名:コスモネートM−100、三井化学ポリウレタン社製)
【0100】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを32質量部滴下し、数平均分子量が4600のエステル変性プレポリマー型イソシアネート3(Pre−BI3)を得た。
【0101】
[プレポリマー型イソシアネート4(Pre−BI4)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=1000)
(商品名:P−1010、株式会社クラレ製)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 92質量部
(商品名:コスモネートM−100、三井化学ポリウレタン社製)
【0102】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを27質量部滴下し、数平均分子量が6800のエステル変性プレポリマー型イソシアネート4(Pre−BI4)を得た。
【0103】
[プレポリマー型イソシアネート5(Pre−BI5)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる。Mn=900)
(商品名:アデカニューエースYG−108、ADEKA株式会社製)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 78質量部
(商品名:コスモネートM−200、三井化学ポリウレタン社製)
【0104】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを42質量部滴下し、数平均分子量が4000のエステル変性プレポリマー型イソシアネート5(Pre−BI5)を得た。
【0105】
[プレポリマー型イソシアネート6(Pre−BI6)の合成]
・エステルジオール 100質量部
(アジピン酸と1,4−ブタンジオールからなる。Mn=1000)
(商品名:アデカニューエースYG−108、ADEKA株式会社製)
・ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート 86質量部
(商品名:コスモネートM−200、三井化学ポリウレタン社製)
【0106】
窒素雰囲気下において、上記成分を90℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブを固形分70質量%になるように加えた。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシムを36質量部滴下し、数平均分子量が4200のエステル変性プレポリマー型イソシアネート6(Pre−BI6)を得た。
【0107】
なお、上記で合成したイソシアネート(Pre−BI1〜Pre−BI6)は、いずれもイソシアネート基とウレタン基とを分子内に有するポリオールである。つまりめ、本発明に係る(D2)であって、かつ、イソシアネート化合物でもある。
【0108】
「表面層形成用塗料液(1)の調製」
・Pre−P1(Mn:5400)100質量部
・ポリブタジエンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI1 37.8質量部
【0109】
樹脂成分として上記の材料を用いた。上記の材料の混合物100質量部に対して、カーボンブラック(商品名:X−15、旭カーボン社製)18質量部及びMEKを加え、一時間混合攪拌した。続いて、総固形分比33質量%になるようにMEKをさらに加え、更に一時間混合攪拌をした。得られた混合溶液を、横型式ビーズミル(商品名:NVM−03、アイメックス社製)で周速7m/sec、流量1cc/min、分散液温度15℃の条件下で、3時間分散した。なお、この分散の際に、SΦ=1.5mmのガラスビーズ(商品名:DMB503B、ポッターズ・バロティ−ニ社製)を用いた。次に、粗さ調整用樹脂粒子として、ウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールCF−600T、根上工業社製)を樹脂成分の固形分100質量部に対して5質量部添加し、さらに1時間分散した。次に、この溶液を固形分23質量%になるようにMEKで希釈し、この溶液を300メッシュの網でろ過したものを表面層形成用塗料(1)とした。
【0110】
「表面層形成用塗料液(2)の調製」
カーボンブラック(商品名:X−15、旭カーボン社製)18質量部を23質量部に変更した以外は、表面層形成用塗料液(1)と同様の方法で表面層形成用塗料液(2)を調製した。
【0111】
「表面層形成用塗料液(3)の調製」
カーボンブラック(商品名:X−15、旭カーボン社製)18質量部を30質量部に変更した以外は、表面層形成用塗料液(1)と同様の方法で表面層形成用塗料液(3)を調製した。
【0112】
「表面層形成用塗料液(4)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL212AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,200)
・ポリブタジエンポリオール 12質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI2 240.3質量部
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で表面層形成用塗料液(4)を調製した。
【0113】
「表面層形成用塗料液(5)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL212AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,200)
・ポリブタジエンポリオール 4質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI2 231.3質量部
【0114】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で表面層形成用塗料液(5)を調製した。
【0115】
「表面層形成用塗料液(6)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL212AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,200)
・ポリブタジエンポリオール 5質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI3 183.7質量部
【0116】
樹脂成分を上記の材料に変え、カーボンブラックをカーボンブラック(商品名:X−55、旭カーボン社製)に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で表面層形成用塗料液(6)を調製した。
【0117】
「表面層形成用塗料液(7)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL212AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,200)
・ポリブタジエンポリオール 15質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI3 213.2質量部
【0118】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(6)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(7)を調製した。
【0119】
「表面層形成用塗料液(8)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL212AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,200)
・ポリブタジエンポリオール 3質量部
(商品名:Poly−Bd R−15HT、出光石油化学株式会社製、Mn=1,200)
・Pre−BI3 205.0質量部
【0120】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(6)と同様の方法で表面層形成用塗料液(8)を調製した。
【0121】
「表面層形成用塗料液(9)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,900)
・ポリイソプレンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−ip、出光石油化学株式会社製、Mn=2,500)
・Pre−BI3 135.4質量部
【0122】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(6)と同様の方法で表面層形成用塗料液(9)を調製した。
【0123】
「表面層形成用塗料液(10)の調製」
・エステルジオール 100質量部
(商品名:NS2400、ADEKA株式会社製、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる。Mn=2,000)
・ポリイソプレンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−ip、出光石油化学株式会社製、Mn=2,500)
・Pre−BI3 111.4質量部
【0124】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(10)を調製した。
【0125】
「表面層形成用塗料液(11)の調製」
固形分が12質量%になるようにMEKで希釈した以外は、表面層形成用塗料液(10)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(11)を調製した。
【0126】
「表面層形成用塗料液(12)の調製」
固形分が32質量%になるようにMEKで希釈した以外は、表面層形成用塗料液(10)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(12)を調製した。
【0127】
「表面層形成用塗料液(13)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL205AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=500)
・ポリイソプレンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−ip、出光石油化学株式会社製、Mn=2,500)
・Pre−BI2 560.2質量部
【0128】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(13)を調製した。
【0129】
「表面層形成用塗料液(14)の調製」
・Pre−P2(Mn:3600) 100質量部
・水素添加ポリイソプレンポリオール 20質量部
(商品名:TH−21、クラレ化学株式会社製、Mn=2,700)
・Pre−BI2 76.1質量部
【0130】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(14)を調製した。
【0131】
「表面層形成用塗料液(15)の調製」
・Pre−P3(Mn:4000) 100質量部
・水素添加ポリイソプレンポリオール 5質量部
(商品名:TH−21、クラレ化学株式会社製、Mn=2,700)
・Pre−BI2 56.8質量部
【0132】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(15)を調製した。
【0133】
「表面層形成用塗料液(16)の調製」
・Pre−P4(Mn:8000) 100質量部
・ポリブタジエンポリオール 22質量部
(商品名:Poly−Bd R−15HT、出光石油化学株式会社製、Mn=1,200)
・Pre−BI1 78.6質量部
【0134】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(16)を調製した。
【0135】
「表面層形成用塗料液(17)の調製」
・Pre−P4(Mn:8000) 100質量部
・ポリブタジエンポリオール 5質量部
(商品名:Poly−Bd R−15HT、出光石油化学株式会社製、Mn=1,200)
・Pre−BI1 36.2質量部
【0136】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(17)を調製した。
【0137】
「表面層形成用塗料液(18)の調製」
・Pre−P5(Mn:8200) 100質量部
・ポリブタジエンポリオール 15質量部
(商品名:NISSO−B3000、曹達化学株式会社製、Mn=3,200)
・Pre−BI1 26.4質量部
【0138】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(18)を調製した。
【0139】
「表面層形成用塗料液(19)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,900)
・ポリブタジエンポリオール 10質量部
(商品名:NISSO−B1000、曹達化学株式会社製、Mn=1,000)
・Pre−BI3 151.8質量部
【0140】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(19)を調製した。
【0141】
「表面層形成用塗料液(20)の調製」
カーボンブラックの量を15質量部に変えた以外は、表面層形成用塗料液(1)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(20)を調製した。
【0142】
「表面層形成用塗料液(21)の調製」
カーボンブラックの量を32質量部に変えた以外は、表面層形成用塗料液(1)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(21)を調製した。
【0143】
「表面層形成用塗料液(22)の調製」
・エステルジオール 100質量部
(商品名:YG−108、ADEKA株式会社製、Mn=900)
・ポリブタジエンポリオール 15質量部
(商品名:NISSO−B1000、曹達化学株式会社製、Mn=1,000)
・Pre−BI5 311.7質量部
【0144】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(22)を調製した。
【0145】
「表面層形成用塗料液(23)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,900)
・ポリブタジエンポリオール 2質量部
(商品名:NISSO−B1000、曹達化学株式会社製、Mn=1,000)
・Pre−BI6 153.1質量部
【0146】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(23)を調製した。
【0147】
「表面層形成用塗料液(24)の調製」
・Pre−P6(Mn:5600) 100質量部
・ポリイソプレンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−ip、出光石油化学株式会社製、Mn=2,500)
・Pre−BI5 51.6質量部
【0148】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(24)を調製した。
【0149】
「表面層形成用塗料液(25)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,900)
・ポリイソプレンポリオール 10質量部
(商品名:Poly−ip、出光石油化学株式会社製、Mn=2,500)
・Pre−BI6 158.5質量部
【0150】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(25)を調製した。
【0151】
「表面層形成用塗料液(26)の調製」
・Pre−P7(Mn:5000) 100質量部
・ポリブタジエンポリオール 5質量部
(商品名:Poly−Bd R−45HT、出光石油化学株式会社製、Mn=2,800)
・Pre−BI6 47.9質量部
【0152】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(26)を調製した。
【0153】
「表面層形成用塗料液(27)の調製」
・Pre−P5(Mn:8200) 100質量部
・ポリブタジエンポリオール 18.5質量部
(商品名:NISSO−B3000、曹達化学株式会社製、Mn=3,200)
・Pre−BI2 38.4質量部
【0154】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(27)を調製した。
【0155】
「表面層形成用塗料液(28)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL205AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=500)
・ポリブタジエンポリオール 2質量部
(商品名:NISSO−B1000、曹達化学株式会社製、Mn=1,000)
・Pre−BI1 431.7質量部
【0156】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(28)を調製した。
【0157】
「表面層形成用塗料液(29)の調製」
・カプロラクトンジオール 100質量部
(商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業株式会社製、Mn=1,900)
・ポリプロピレンポリオール 10質量部
(商品名:EXCENOL 3020、旭硝子株式会社、Mn=3,200)
・Pre−BI2 154.2質量部
【0158】
樹脂成分を上記の材料に変えた以外は、表面層形成用塗料液(2)と同様の方法で、表面層形成用塗料液(29)を調製した。
【0159】
表面層形成用塗料(1)〜(29)の組成を下記表1−1〜1−5にまとめて示した。
【0160】
【表1】



【0161】
【表2】

【0162】
【表3】

【0163】
【表4】

【0164】
【表5】

【0165】
[実施例1]
内径32mm、長さ300mmのシリンダーの下方から、液温を23℃に保った表面層形成用塗料(1)を毎分250cc注入し、該シリンダーの上端からあふれ出た液を再び該シリンダーの下方に循環させた。シリンダーに浸入速度100mm/sで、先に製造した樹脂層付き軸芯体を浸漬させ、10秒間停止させた後に、初速300mm/s、終速200mm/sとなるように引き上げて60分間、自然乾燥させた。次いで、140℃にて2時間加熱処理することで、樹脂層の周面に形成された塗膜を硬化させ、厚さ10μmの表面層を有する実施例1の現像ローラ(1)を作製した。結果を表2−1に示す。
【0166】
[実施例2]〜[実施例10]
表面層形成用塗料(1)の代わりに、表面層形成用塗料(2)〜(10)を用いた以外は実施例1と同様の方法で各実施例に係る現像ローラを作製した。結果を表2−1〜表2−2に示す。
【0167】
[実施例11]
表面層形成用塗料(1)の代わりに、表面層形成用塗料(11)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、厚さ3μmの樹脂層を有する実施例11の現像ローラ(11)を作製した。結果を表2−2に示す。
【0168】
[実施例12]
表面層形成用塗料(1)の代わりに、表面層形成用塗料(12)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、厚さ25μmの樹脂層を有する実施例12の現像ローラ(12)を作製した。結果を表2−2に示す。
【0169】
[実施例13]〜[実施例19]
表面層形成用塗料(1)の代わりに、表面層形成用塗料(13)〜(19)を用いた以外は実施例1と同様の方法で各実施例に係る現像ローラを作製した。結果を表2−2に示す。
【0170】
[比較例1]〜[比較例10]
表面層形成用塗料(1)の代わりに、表面層形成用塗料(20)〜(29)を用いた以外は実施例1と同様の方法で各比較例に係る現像ローラを作製した。結果を表2−3に示す。
【0171】
次に、本発明の実施例、比較例中におけるESCA測定、構造解析、表面層膜厚測定及びGPCの測定方法、並びに本発明で定義したEcX、EcY、EcZ及びUrcXに関して説明する。
【0172】
[現像ローラの評価/表面層原料の評価]
(ESCA測定方法)
ESCA分析はアルバックファイ(株)社のQuantum2000を用い、以下の条件で行った。
X線源 ;モノクロ AI Kα
Xray Setting;100μmφ(25W(15KV))
光電子取り出し角 ;45度
中和条件 ;中和銃とイオン銃の併用
分析領域 ;φ100μm
Pass Energy ;23.5eV
ステップサイズ ;0.1eV
【0173】
EcX、EcY、EcZ及びUrcXは、ESCA測定の定量分析で検出された炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)及び樹脂層起因のケイ素(Si)元素の原子%、及び状態分析で検出されたC 1sピーク及びN 1sピークの面積比率から決定される。また、C 1sピークにおいては、285.0eVにおける検出ピークをC−C結合、286.6eVにおける検出ピークをC−O結合、289.3eVにおける検出ピークをCOO結合に帰属した。N 1sピークにおいては、400.4eVにおけるピークをNH結合に帰属した。O 1sピークにおいては、532.4eVにおける検出ピークをSi−O結合とし、533.7eVにおける検出ピークをC−O結合に帰属した。Si 2pピークにおいては、102.5eVにおけるピーク強度をSi−O結合に帰属した。
【0174】
ここで、ポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度において、硬化したポリウレタン樹脂の窒素(N)量はウレタン基に由来するものであるため、最表面近傍における窒素の原子%の数値をUrcXと定義した。C 1sピークの状態分析における289.3eVのピーク強度はCOO結合に帰属されるが、該COO結合(以後、前COO結合と称する)は、エステル基に由来するCOO結合とウレタン基に由来するCOO結合の和として計測される。ここで、ウレタン基のNH結合の数とCOO結合の数の比は1:1であるので、本発明では、全COO結合からNH結合を引いた値をエステル基に由来するCOO結合とし、本発明におけるエステル基濃度を下記式に定義した。
エステル基濃度={[COO結合比率(%)]−[NH結合比率(%)]}/[C−C結合比率(%)]×100
【0175】
また、本発明におけるEcX、EcY、EcZ及びUrcXの測定は、X、Y、Zの各々において、異なる場所を3点測定し、その相加平均値を用いた。ここで各元素の定量分析は、C 1S(B.E.280〜295eV)、N 1S(B.E.395〜410eV)、O 1S(B.E.525〜540eV)ピークを使用し、各々の原子%を求めた。
【0176】
例えば、現像ローラ(1)の表面層最表面(X)における元素の定量分析の結果、C、N、O及びSiの原子%は各々70.8%、1.4%、20.9%、6.9%であったことから、UrcXは1.4である。また、現像ローラ(1)の状態分析によるC 1sスペクトルのC−O結合(ウレタン基とエステル基に由来する)、C−C結合及びCOO結合のピーク面積比率は、各々10.9%、80.9%及び8.2%であった。この値から、現像ローラ(1)の表面層最表面(X)におけるC−C及びCOO結合の比率は、各々57.2%(0.708×0.809×100)及び5.8%(0.708×0.082×100)であった。この値及びUrcXを元にEcXを算出したところ、現像ローラ(1)のEcXは、8.7%であった。
【0177】
また、EcY及びEcZの値は、下記条件で表面層をエッチングした後で評価を行った。
・スパッタリングイオン ;C60イオン
・スパッタリング加速電圧 ;4kV
・ラスターサイズ ;2×0.5mm2
【0178】
EcXと同様の手順で、EcY、EcZの測定を行ったところ、EcY及びEcZは各々9.9%及び12.5%であった。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0179】
(表面層構造解析)
得られた現像ローラ表面層の構造は、熱分解GC−MS法及び1H−NMRにより分析して決定した。まず、現像ローラの表面層を、バイオカッターで薄く削りとった後、水酸化ナトリウムでアルカリ加水分解を行った。その後、耐圧分解容器内でさらに加熱分解を行い、ポリオール、二塩基酸やイソシアネートに分離を行った。その後、分離したものを熱分解GC−MS及び1H−NMRで評価を行ったところ、化学式(a)及び(b)のセグメントが混在し、さらに、ブタジエン骨格を有することが確認された。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0180】
(表面層膜厚測定方法)
表面層の膜厚は、現像ローラを切り出し、断面観察を観察することで測定することができる。具体的には、後述の画像評価後、現像ローラ上のトナーを、メタノールを染み込ました布で拭き取り、現像ローラの両端から5mmの位置及び長手方向中央部を、剃刀で芯金に達するまで、厚さ1mmの大きさに切り出して測定サンプルを作成する。この各測定サンプルの断面をデジタルマイクロスコープ(VH−2450:キーエンス株式会社)を用いて観察する。上記測定方法により、各現像ローラの周方向の異なる3点についてそれぞれ測定を行い、9点の相加平均を現像ローラ表面層の膜厚と定義した。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける測定結果を表2−1〜2−3に示す。
【0181】
(ポリオールの数平均分子量)
GPCカラム「TSKgel SuperHM−M」(商品名、東ソー株式会社製)2本を直列につないだ高速液体クロマトグラフ分析装置「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー株式会社製)を用いた。溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、温度40℃、流速0.6 ml/min、RI(屈折率)検出器の測定条件下において、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液として測定した。検量線作成用の標準試料として数種の単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて検量線の作成を行い、これを基に得られた測定サンプルの保持時間から、数平均分子量(Mn)を求めた。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0182】
[画像評価]
[低温低湿環境下におけるブロッチ]
現像ローラを、改造した電子写真プロセスカートリッジEP−85K(商品名、キヤノン株式会社製、色:黒、現像ブレードとして、厚み100μmのリン青銅ブレードを用いたもの)に組み込んだ。この電子写真プロセスカートリッジを温度10℃、湿度10%RHの環境に3日間放置した。放置後、同環境において、該電子写真プロセスカートリッジをキヤノン製プリンターLBP5500(商品名)改造機(現像ブレードにブレードバイアスを印加できるように、かつ40rpmでフルカラー印字ができるように改造したもの)に組み込んだ。現像ブレードバイアスに印加するブレードバイアスを現像ローラに印加する現像バイアスに対して、−200Vのバイアス条件でハーフトーン画像を10枚出力した。このハーフトーン画像において、下記評価条件で、低温低湿環境下におけるブロッチを評価した。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0183】
A:初期1枚目の画像から、斑点状のムラが全く認められない。
B:初期5枚以内に、極わずかに斑点状のムラが認められる。実用上問題なし。
C:初期10枚以内に、斑点状のムラが確認される。写真画像等で問題なし。
D:10枚以上画像を出力しても、斑点状のムラが確認される。
【0184】
[ブレードバイアスリーク]
ブロッチの評価後に、同環境下で、現像バイアスに対して、0Vから−400Vの間において、100V刻みでブレードバイアスを振って、ハーフトーン画像を1枚出力した。このハーフトーン画像において、下記評価条件で、現像ローラのブレードバイアスに対する耐リーク性を評価した。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0185】
A:現像バイアスに対して、−400Vのブレードバイアスを印加して画像出力しても、黒い横スジが全く確認されない。
B:現像バイアスに対して−300Vのブレードバイアスを印加して画像出力しても、黒い横スジが全く確認されない。しかし、現像バイアスに対して、−400Vのブレードバイアスを印加して画像出力すると、黒い横スジが確認される。
C:現像バイアスに対して、−200Vのブレードバイアスを印加して画像出力しても、黒い横スジが全く確認されない。しかし、−300Vのブレードバイアスを印加して画像出力すると、黒い横スジが確認される。
D:現像バイアスに対して、−100Vのブレードバイアスを印加して画像出力すると、黒い横スジが確認される。
【0186】
[高温高湿下における現像ブレード長期当接による画像スジの評価]
現像ローラを、改造した電子写真プロセスカートリッジEP−85K(商品名、キヤノン株式会社製、色:黒、現像ブレードとして、厚み100μmのリン青銅ブレードを用いたもの)に組み込み、温度40℃、湿度95%RHの環境に20日間放置した。その後、さらに温度30℃、湿度85%RHの環境に24時間放置した。放置後、同環境において、電子写真プロセスカートリッジをキヤノン製プリンターLBP5500(商品名)改造機(現像ブレードにブレードバイアスを印加できるように改造したもの、かつ40rpmでフルカラー印字ができるように改造したもの)に組み込んだ。ブレードバイアスを現像バイアスに対して、−150Vに設定して、ベタ黒画像を3枚出力した。このベタ黒画像において、下記評価条件で、放置中の現像ブレードとの当接による現像ローラの表面層の変形に起因する画像スジを評価した。各実施例及び比較例で作製した現像ローラにおける結果を表2−1〜2−3に示す。
【0187】
A:ベタ黒画像において、表面層の変形に起因する画像スジがほとんど確認できない。
B:ベタ黒画像において、表面層の変形に起因する画像スジがわずかに確認できる。
C:ベタ黒画像において、表面層の変形に起因する画像スジがはっきりと確認できる。しかし、常温常湿環境下(温度23℃、湿度50%RH)に、カートリッジを24時間放置し、再度ベタ黒画像形成すると、画像スジは認められない。
D:ベタ黒画像において、表面層の変形に起因する画像スジがはっきりと確認できる。しかし、常温常湿環境下(温度23℃、湿度50%RH)に、カートリッジを24時間放置し、再度ベタ黒画像形成しても、画像スジが認められる。
【0188】
【表6】

【0189】
【表7】

【0190】
【表8】

【0191】
表2−1及び表2−2に示したように、実施例1〜19で作製した現像ローラの表面層は、優れた機械的物性とトナーに対する適度な帯電付与性能とを兼ね備えており、高品位な電子写真画像を形成できた。さらに、耐ブレードバイアスリーク特性に優れていた。特に、実施例9、10及び12で作製した現像ローラにおいて、高温高湿下における現像ローラの表面層の変形に起因する画像スジの抑制、低温低湿下におけるブロッチとリーク画像の抑制を高次元なレベルで達成できた。
【0192】
なお、実施例9乃至12で作製した現像ローラは、表面層のEcX、EcY、EcZ及びUrcXのバランスが良好であり、さらにカーボンブラックの配合量が特に最適である。
【0193】
比較例1の現像ローラの表面層は、カーボンブラックの配合量が少ないため、表面層の永久変形量の増大に伴って画像スジが確認された。また、ローラ抵抗が上昇し、チャージアップ起因による低温低湿下のブロッチが確認された。比較例2の現像ローラの表面層は、カーボンブラックの含有量が過多であるため、カーボンブラックの分散が不良であり、ブレードバイアスリークが顕著に確認された。比較例3の現像ローラは、表面層の表面にポリオレフィン骨格が過剰に偏在しEcXの値が低くなり過ぎている。そのため、ブレードバイアスリークが顕著に確認された。さらに、ポリウレタン樹脂が化学式(a)及び(b)で示される構造を有しないため、EcZの値が十分に高いにも関わらず、機械的物性が低かった。そのため、現像ローラの表面層の永久変形に起因する画像スジも確認された。比較例4の現像ローラの表面層は、EcXの値が高く、顕著なブロッチ画像が確認された。 比較例5の現像ローラは、EcZの値が低く、機械的物性が不十分であるために、現像ローラの変形に起因する顕著な画像スジが確認された。比較例6の現像ローラの表面層はEcZの値が高く、顕著なブレードバイアスリークが確認された。さらに、(D)成分と(E)成分との不相溶から機械的物性が低下し、EcZの値が高いが、現像ローラの表面層の永久変形に起因する画像スジが確認された。比較例7の現像ローラの表面層は、ポリウレタン樹脂中に化学式(a)及び(b)で示される構造を含有しないため、EcX、EcY、EcZのバランスが悪く、機械的物性が著しく低下した。また、現像ローラの表面層の永久変形に起因する著しい画像スジが確認された。また表面層中のカーボンブラックの分散性が著しく低下し、ブレードバイアスリーク画像の発生も顕著に確認された。比較例8の現像ローラの表面層は、機械的物性に劣り、UrcXの値が低すぎるために、現像ローラの変形に起因する画像スジが著しく確認された。比較例9の現像ローラの表面層は、UrcXの値が高すぎるために、トナーに対して過剰に帯電性を付与し、低温低湿環境における顕著なブロッチ画像が確認された。比較例10の現像ローラの表面層は、ポリブタジエン骨格およびポリイソプレン骨格を含有しないために、機械的物性が著しく低下し、現像ローラの変形に起因する画像スジが著しく確認された。またさらに、樹脂材料間の不相溶により、カーボンブラックの分散性が著しく低下し、ブレードバイアスリーク画像の発生も顕著に確認された。
【0194】
上記のことから、本発明に規定した条件を満たすことにより、高温高湿下における現像ローラの変形に起因する画像スジ、低温低湿下におけるブロッチとブレードバイアスリーク画像の抑制を両立できたことは明らかである。
【符号の説明】
【0195】
1 現像ローラ
2 軸芯体
3 樹脂層
4 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体にトナーを供給し、該感光体に形成された静電潜像を現像するための現像ローラであって、
カーボンブラックと、ポリウレタン樹脂とを含む表面層を有しており、
該ポリウレタン樹脂は、下記化学式(a)及び(b)で示される構造から選ばれる少なくとも一方と、ポリブタジエン骨格及びポリイソプレン骨格から選ばれる少なくとも一方の骨格とを有しており、
【化1】

該表面層は、該カーボンブラックを該ポリウレタン樹脂の100質量部に対して18質量部以上30質量部含有し、かつ、
該表面層の膜厚をt、該表面層の表面をX、該表面層の表面からの深さがt/4の位置をYおよび該表面層の表面からの深さがt/2の位置をZとしたときに、下記式(1)乃至(4)を同時に満たすことを特徴とする現像ローラ:
式(1)
7.5≦EcX≦10.0
式(2)
11.0≦EcZ≦14.0
式(3)
EcX<EcY<EcZ
式(4)
0.5≦UrcX≦2.0
(上記式(1)〜(3)中、EcX、EcYおよびEcZは、位置X、YおよびZにおけるエステル基濃度であり、上記式(4)において、UrcXは、位置Xにおけるウレタン基濃度である)。
【請求項2】
請求項1に記載の現像ローラの製造方法であって、
前記樹脂層の周面に、ポリオール、カーボンブラックおよびイソシアネート化合物を含むポリウレタン樹脂原料混合物を含む表面層形成用の塗料の塗膜を形成し、次いで該塗膜を硬化させる工程を有し、
該ポリウレタン樹脂原料混合物は、下記(D1)および(D2)から選ばれる少なくとも一方と、下記(E)とを含んでいることを特徴とする現像ローラの製造方法。
(D1)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2000の範囲にあり、かつ下記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方を含むポリエステルポリオール、
(D2)数平均分子量(Mn)が4000≦Mn≦8000の範囲にあり、かつ下記化学式(a)及び(b)で示されるユニットの少なくとも一方とウレタン基を含むポリオール、
(E)数平均分子量(Mn)が1200≦Mn≦2800の範囲にあり、かつポリブタジエン骨格もしくはポリイソプレン骨格の少なくとも一方を含むポリオール:
【化2】



【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂原料混合物が、前記(D1)を含み、かつ、前記(D1)が、3−メチル−1,5−ペンタンジオールもしくカプロラクトンジオールから選ばれる少なくとも一方を原料とするポリエステルポリオールである請求項2に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂原料混合物が、前記(D2)を含み、かつ、前記(D2)が、3−メチル−1,5−ペンタンジオールもしくはカプロラクトンジオールから選ばれる少なくとも一方を原料とするポリエステルポリオールと、イソシアネート化合物とを反応させて得られたプレポリマー型エステルポリオールである請求項2に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の現像ローラと、該現像ローラに接触して配置されている感光ドラムとを備え、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1に記載の現像ローラと、該現像ローラに接触して配置されている感光ドラムとを具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−107968(P2010−107968A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222695(P2009−222695)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】